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特許7250698中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療するための新規組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療するための新規組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 215/44 20060101AFI20230327BHJP
   C07C 233/23 20060101ALI20230327BHJP
   A61K 31/136 20060101ALN20230327BHJP
   A61K 31/198 20060101ALN20230327BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALN20230327BHJP
   A61K 38/47 20060101ALN20230327BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20230327BHJP
   A61P 25/16 20060101ALN20230327BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20230327BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20230327BHJP
【FI】
C07C215/44 CSP
C07C233/23
A61K31/136
A61K31/198
A61K31/7004
A61K38/47
A61K45/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019557812
(86)(22)【出願日】2018-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 US2018029275
(87)【国際公開番号】W WO2018200618
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/489,621
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507170099
【氏名又は名称】アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボイド, ロバート
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-158523(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0255239(US,A1)
【文献】特開2003-155229(JP,A)
【文献】特表2013-508366(JP,A)
【文献】特表2013-508367(JP,A)
【文献】特表2015-502964(JP,A)
【文献】Ogawa, Seiichiro; Kanto, Miki; Suzuki, Yoshiyuki,Development and medical application of unsaturated carbaglycosylamine glycosidase inhibitors,Mini-Reviews in Medicinal Chemistry ,2007年,7(7),,679-691
【文献】GIRAULT Y,OUVERTURE PAR HF-PYRIDINE DES AZIRIDINES BICYCLIQUES. II. DERIVES [ALPHA],[BETA]-以下備考,JOURNAL OF FLUORINE CHEMISTRY,NL,1984年08月,VOL:25, NR:4,,PAGE(S):465 - 479,http://dx.doi.org/10.1016/S0022-1139(00)81478-5,ETHYLENIQUES DIVERSEMENT SUBSTITUES
【文献】Cassan, J.; Girault, Y.; Decouzon, M.; Azzaro, M.,Mass spectral fragmentation of cyclohexanic and cyclohexenic fluoroamines,Spectroscopy (Amsterdam, Netherlands) ,1984年,3(4-5),,269-81
【文献】Tongco, Emily C.; Prakash, G. K. Surya; Olah, George A.,Considered synthetic methods and reactions. Part 198. One-flask preparation of trifluoromethylated amides from ketones and (trifluoromethyl)trimethylsilane via Ritter reaction with nitriles,Synlett,1997年,(10),,1193-1195
【文献】C.G.WERMUTH,最新創薬化学,上巻,1998年,p.375-80
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
から選択される化合物、又はこれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理シャペロンとして知られる新規な化合物、並びに中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療するためにこれを用いる組成物及び方法を提供し、具体的には、本発明は、パーキンソン病、アルツハイマー病、及び/又はゴーシェ病を予防及び/又は治療するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系の多くの変性疾患が、タンパク質又は脂質の異常凝集に関連している。例えば、シヌクレイン症は、シヌクレインタンパク質の恒常性が破壊されることから生じる疾患群である。特に、α-シヌクレイン凝集は、パーキンソン病、レーヴィ小体認知症、及び多系統萎縮症といったレーヴィ小体を特徴とする病態を伴う。同様に、α-シヌクレイン断片である非Aβ成分は、アルツハイマー病のアミロイド斑内で見出される。近年、脳内におけるグルコセレブロシダーゼ(β-グルコシダーゼ;GCase)活性の亢進が、脳内におけるシヌクレイン蓄積を防ぐことが示されている(Sean Clark,Ying Sun,You-Hai Xu,Gregory Grabowski,and Brandon Wustman,“A biochemical link between Gaucher’s and Parkinson’s disease and a potential new approach to treating synucleinopathies:a pharmacological chaperone for beta-glucocerebrosidase prevents accumulation of alpha-synuclein in a Parkinson’s mouse model,”(Society for Neuroscienceの年次総会(San Diego,CA,2007)で発表)。従って、GCase活性を亢進する薬剤は、中枢神経系の変性疾患を発症するリスクがあるか、又はそれと診断される患者に解決を提供し得る。
【0003】
リソソーム蓄積疾患は、細胞のリソソーム内に物質の蓄積をもたらすリソソーム機能の障害によって発生する。この障害は、通常、脂質、グリコーゲン、糖タンパク質、又はムコ多糖の代謝に必要な単一の酵素が欠乏した結果である。最も一般的なリソソーム蓄積疾患であるゴーシェ病は、糖脂質グルコセレブロシド(グルコシルセラミドとしても知られる)の蓄積を特徴とする。ゴーシェ病の症状としては、脾腫及び肥大肝、肝機能不全、苦痛を伴う場合のある骨障害及び骨病変、重篤な神経学的合併症、リンパ節及び(場合により)隣接する関節の腫脹、膨隆腹、茶色がかった皮膚の着色、貧血、血小板低下、並びに強膜の黄色脂肪性沈着物が挙げられる。更に、ゴーシェ病に罹患した人々は感染症に感染しやすくなる場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より高い生活の質を患者に提供し、より優れた臨床結果を達成する、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患の予防及び/又は治療に使用可能な新たな治療化合物が必要とされている。具体的には、より高い生活の質を患者に提供し、より優れた臨床結果を達成する、パーキンソン病及びアルツハイマー病などのシヌクレイン症並びにゴーシェ病などのリソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療するための新たな治療化合物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を発症するリスクがあるか、又はそれと診断される患者において、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療するための新規な化合物、並びにそれを用いる組成物及び方法を提供し、方法は、これを必要とする患者に、有効量の本明細書で説明される化合物を投与することを含む。
【0006】
一態様では、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を発症するリスクがあるか、又はそれと診断される患者において、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療するための化合物、並びにそれを用いる組成物及び方法が提供され、方法は、これを必要とする患者に、有効量の式Iで定められる化合物を投与することを含み、
式中、
はC(R)(R)(R)であり、
は水素、-OH、又はハロゲンであり、
は水素、-OH、ハロゲン、又はC1~8アルキルであり、
は水素、-OH、ハロゲン、C1~8アルキル、置換C1~8アルキル、アリール、置換アリール、アルキルシクロアルキル、又は置換アルキルシクロアルキルであり、
及びRは、R及びRが結合した炭素と共に、任意選択的に、好ましくはハロゲン、より好ましくは1つ以上のフッ素原子で置換されてもよいシクロアルキル環を形成してもよく、
Zは任意選択的であり、存在する場合、Zは、-(CH1~8-、-C(=O)-、-S(=O)NH-、-S(=O)-、-C(=S)NH-、-S(=O)-CH、C(=O)-NH-、-S(=O)-NR1213、-C(=O)C1~8アルキル又は-C(=O)CH(NH)CHであり、
12は水素、C1~8アルキル、又は置換C1~8アルキルであり、
13は水素、C1~8アルキル、又は置換C1~8アルキルであり、
は水素、C1~8アルキル、置換C1~8アルキル、アリール、置換アリール、C1~8アルケニル、置換C1~8アルケニル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アミノアリールアルキル、又は置換アミノアリールアルキルであり、
は水素、ハロゲン、C1~8アルキル、置換C1~8アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アルキルアリール、又は置換アルキルアリールであり、
は水素、-OH、又はハロゲンであり、
は水素、ハロゲン、C1~8アルキル、置換C1~8アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アルキルアリール、又は置換アルキルアリールであり、
は水素、-OH、又はハロゲンであり、
10は水素、ハロゲン、C1~8アルキル、置換C1~8アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アルキルアリール、又は置換アルキルアリールであり、
11は水素、-OH、又はハロゲンであるが、
但し、R、R、R、R、R、R、R、R10、又はR11のうちの少なくとも1つがハロゲンを含むことを条件とする。
【0007】
別の態様では、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を発症するリスクがあるか、又はそれと診断される患者において、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療するため化合物、並びにそれを用いる組成物及び方法が提供され、方法は、これを必要とする患者に、有効量の式IIで定められる化合物を投与することを含み、
式中、
はC(R)(R)(R)であり、
は水素、-OH、又はハロゲンであり、
は水素、-OH、ハロゲン、又は-CHであり、
は水素、ハロゲン、-CH、フェニル、フルオロフェニル、メチルフェニル、又はシクロヘキシルメチルであり、
及びRは、R及びRが結合した炭素と共に、任意選択的に1つ以上のハロゲン原子で置換され得るシクロアルキル環を形成してもよく、
Zは任意であり、存在する場合、Zは、-(CH)-、-C(=O)-、-S(=O)NH-、-S(=O)-、-S(=O)-CH、C(=O)-NH-、-S(=O)NR1213、-C(=S)-NH-、又は-C(=O)-CHであり、
12は水素又はCHであり、
13は水素又はCHであり、
は水素又はアミノフェニルアルキルであり、
は水素、ハロゲン、又は-CHであり、
は水素、-OH、又はハロゲンであり、
は水素、ハロゲン、又は-CHであり、
は水素、-OH、又はハロゲンであり、
10は水素、ハロゲン、又は-CHであり、
11は水素、-OH、又はハロゲンであるが、
但し、R、R、R、R、R、R、R、R10、又はR11のうちの少なくとも1つがハロゲンを含むことを条件とする。
【0008】
更に別の態様では、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を発症するリスクがあるか、又はそれと診断される患者において、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療するため化合物、並びにそれを用いる組成物及び方法が提供され、方法は、これを必要とする患者に、有効量の式IIIで定められる化合物を投与することを含み、
式中、
はC(R)(R)(R)であり、
は水素、-OH、又はハロゲンであり、
は水素、-OH、ハロゲン、又は-CHであり、
は水素、ハロゲン、-CH、フェニル、フルオロフェニル、メチルフェニル、又はシクロヘキシルメチルであり、
及びRは、R及びRが結合した炭素と共に、任意選択的に1つ以上のハロゲン原子で置換され得るシクロアルキル環を形成してもよく、
は-OH、又はハロゲンであり、
は-OH、又はハロゲンであり、
10は-OH、又はハロゲンであるが、
但し、R、R、R、R、R、又はR10のうちの少なくとも1つがハロゲンを含むことを条件とする。当業者には、上記の式I、II、及びIIIのR、R、及びRは、不安定分子が生じるようには選択されないことが理解されよう。
【0009】
なお別の態様では、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を発症するリスクがあるか、又はそれと診断される患者において、中枢神経系の変性疾患及び/又はリソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療するため化合物、並びにそれを用いる組成物及び方法が提供され、方法は、これを必要とする患者に、有効量の、以下から選択される化合物、
又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを投与することを含む。
【0010】
一実施形態では、化合物は、(1S,2S,3R,6S)-6-アミノ-4-(フルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、(1S,2S,3R,6R)-6-アミノ-4-(フルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、(1S,2S,3S,6S)-6-アミノ-4-(フルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、(1S,2S,3S,6R)-6-アミノ-4-(フルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。一実施形態では、化合物は、(1S,2S,3R,6S)-6-アミノ-4-(フルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。一実施形態では、化合物は、(1S,2S,3R,6R)-6-アミノ-4-(フルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。一実施形態では、化合物は、((1S,2S,3S,6S)-6-アミノ-4-(フルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。一実施形態では、化合物は、((1S,2S,3S,6R)-6-アミノ-4-(フルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。
【0011】
一実施形態では、化合物は、(1S,2S,3R,6S)-6-アミノ-4-(ジフルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、(1S,2S,3R,6R)-6-アミノ-4-(ジフルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、(1S,2S,3S,6S)-6-アミノ-4-(ジフルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、(1S,2S,3S,6R)-6-アミノ-4-(ジフルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。一実施形態では、化合物は、(1S,2S,3R,6S)-6-アミノ-4-(ジフルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。一実施形態では、化合物は、(1S,2S,3R,6R)-6-アミノ-4-(ジフルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。一実施形態では、化合物は、((1S,2S,3S,6S)-6-アミノ-4-(ジフルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。一実施形態では、化合物は、((1S,2S,3S,6R)-6-アミノ-4-(ジフルオロメチル)シクロヘキセ-4-エン-1,2,3-トリオール、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。
【0012】
一実施形態では、化合物は、N-((1S,4R,5S,6R)-3-(フルオロメチル)-4,5,6-トリヒドロキシシクロヘキセ-2-エン-1-イル)アセトアミド、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグである。
【0013】
一実施形態では、変性疾患はシヌクレイン症である。一実施形態では、変性疾患はレーヴィ小体を特徴とする。一実施形態では、変性疾患はパーキンソン病、レーヴィ小体認知症、多系統萎縮症、又はアルツハイマー病である。一実施形態では、変性疾患は少なくとも1種類のタンパク質の凝集を伴う。一実施形態では、変性疾患はα-シヌクレインの凝集を伴う。一実施形態では、変性疾患は非Aβ成分の凝集を伴う。一実施形態では、変性疾患は少なくとも1種類の糖脂質の蓄積を伴う。一実施形態では、変性疾患は少なくとも1種類のスフィンゴ糖脂質の蓄積を伴う。一実施形態では、変性疾患はグルコセレブロシドの蓄積を伴う。一実施形態では、変性疾患はグルコセレブロシダーゼの変異を伴う。
【0014】
本発明は、更に、中枢神経系の変性疾患を発症するリスクがあるか又はそれと診断される患者において、有効量の上記の化合物のいずれか、若しくはこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組み合わせを、それを必要とする患者に投与することを含む、中枢神経系の変性疾患を予防及び/又は治療するための方法を提供する。
【0015】
一実施形態では、中枢神経系の変性疾患はα-シヌクレイン症である。一実施形態では、中枢神経系の変性疾患はパーキンソン病である。一実施形態では、中枢神経系の変性疾患はアルツハイマー病である。
【0016】
一実施形態では、中枢神経系の変性疾患を予防及び/又は治療する方法は、有効量の少なくとも1つの他の治療薬を投与することを更に含む。一実施形態では、少なくとも1つの他の治療薬は、レボドパ、抗コリン作用薬、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ阻害薬、ドーパミン受容体作動薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、末梢デカルボキシラーゼ阻害薬、又は抗炎症薬である。
【0017】
一実施形態では、リソソーム蓄積疾患は少なくとも1種類の糖脂質の蓄積を伴う。一実施形態では、リソソーム蓄積疾患は少なくとも1種類のスフィンゴ糖脂質の蓄積を伴う。一実施形態では、リソソーム蓄積疾患はグルコセレブロシドの蓄積を伴う。一実施形態では、リソソーム蓄積疾患はグルコセレブロシダーゼの欠乏を伴う。一実施形態では、リソソーム蓄積疾患はグルコセレブロシダーゼの変異を伴う。一実施形態では、リソソーム蓄積症はニーマン-ピック病である。一実施形態では、リソソーム蓄積症はゴーシェ病である。
【0018】
本発明は、更に、リソソーム蓄積疾患を発症するリスクがあるか、又はそれと診断される患者において、式Iの化合物、又はこれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを含む有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、リソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療するための方法を提供する。
【0019】
一実施形態では、リソソーム蓄積疾患はゴーシェ病である。
【0020】
一実施形態では、リソソーム蓄積疾患を予防及び/又は治療する方法は、有効量の少なくとも1つの他の治療薬を投与することを更に含む。一実施形態では、少なくとも1つの他の治療薬はイミグルセラーゼ又は1,5-(ブチルイミノ)-1,5-ジデオキシ-D-グルシトールである。
【0021】
本発明は、更に、
・有効量の本発明の化合物のうちのいずれかを、単独又は組み合わせで有する容器と、
・中枢神経系の変性疾患又はリソソーム蓄積疾患を予防又は治療するための容器の使用方法の指示と、を備えるキットを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で用いられるとき、以下の用語は以下で定める定義を有するものとする。
【0023】
本明細書で使用するとき、語句「中枢神経系の変性疾患」とは、ニューロン、ミエリン鞘、又は軸索などの中枢神経系の任意の構成要素の早期の変性を伴う任意の疾患を意味する。こうした疾患としては、多発梗塞性認知症、ハンチントン病、ピック病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、前頭葉変性症、大脳皮質基底核変性症、進行性核上麻痺、パーキンソン病、レーヴィ小体認知症、多系統萎縮症、又はアルツハイマー病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用するとき、語句「リソソーム蓄積疾患」とは、リソソーム内での基質蓄積をもたらす異常代謝から生じる疾患群のうちいずれかを指す。表1は例示的なリソソーム蓄積疾患、及びこれらに関連する欠陥酵素の非限定的な一覧を含む。
【0025】
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「治療すること」とは、引用される疾患に関連する1つ以上の症状を改善することを意味する。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「予防すること」とは、引用される疾患の症状を緩和することを意味する。
【0028】
本明細書で使用されるとき、語句「有効量」とは、引用される障害を発症するリスクがあるか、又はそれと診断される患者において、患者を予防及び/又は治療し、従って所望の治療効果をもたらすために有効な量を意味する。
【0029】
本明細書で使用されるとき、用語「患者」は、哺乳類(例えば、ヒト)を意味する。
【0030】
本発明を説明するために用いられる種々の用語の化学的な定義を以下に列挙する。これらの定義は、特定の場合において個別に又はより大きな群の一部としてのいずれかで別途限定されない限り、本明細書の全体を通して使用される用語に適用される。
【0031】
用語「アルキル」は、1~20個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子からなる直鎖又は分岐鎖状の非置換炭化水素基を指す。「低級アルキル」という表現は、1~4個の炭素原子からなる非置換のアルキル基を指す。
【0032】
用語「置換アルキル」とは、例えば、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、オキソ、アルカノイル、アリールオキシ、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、二置換アミン(2個のアミノ置換基がアルキル、アリール、又はアラルキルから選択される)、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ(aralkanoylamino)、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、アルキルチオノ、アリールチオノ、アラルキルチオノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、スルホンアミド(例えばSONH)、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル(例えば、CONH)、置換カルバミル(例えば、CONHアルキル、CONHアリール、CONHアラルキル、又は窒素上にアルキル、アリール、若しくはアラルキルから選択される2個の置換基が存在する場合)、アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、グアニジノ、及びヘテロシクロ(インドリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジルなど)などといった、1~4個の置換基によって置換されるアルキル基を指す。上記において、置換基が更に置換される場合は、それはアルキル、アルコキシ、アリール、又はアラルキルによってである。
【0033】
用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0034】
用語「アリール」とは、それぞれが置換され得る、フェニル、ナフチル、ビフェニル、及びジフェニル基などの、環部分に6~12個の炭素原子を有する単環又は二環式芳香族炭化水素基を指す。
【0035】
用語「アラルキル」は、ベンジルなどの、アルキル基を介して直接結合されたアリール基を指す。同様に、用語「アルキルアリール」は、メチルベンジルなどの、アリール基を介して直接結合されたアルキル基を指す。
【0036】
用語「置換アリール」は、例えば、アルキル、置換アルキル、ハロ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アラルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、ウレイド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルバミル、アルコキシカルボニル、アルキルチオノ、アリールチオノ、アリールスルホニルアミン、スルホン酸、アルキスルホニル(alkysulfonyl)、スルホンアミド、アリールオキシなどの1~4個の置換基によって置換されたアリール基を指す。置換基は、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリール、置換アリール、置換アルキル又はアラルキルによって更に置換されていてもよい。
【0037】
用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのヘテロ原子及び少なくとも1つの炭素原子含有環、例えば、ピリジン、テトラゾール、インダゾールを有する、例えば、4~7員単環式、7~11員二環式、又は10~15員三環式環系である、任意選択的に置換される芳香族基を指す。
【0038】
用語「アルケニル」は、1~4個の二重結合を有する、2~20個の炭素原子、好ましくは2~15個の炭素原子、最も好ましくは2~8個の炭素原子からなる直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。
【0039】
用語「置換アルケニル」は、例えば、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アルキルチオノ、アルキルスルホニル、スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、置換カルバミル、グアニジノ、インドリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジルなどの1~2個の置換基によって置換されたアルケニル基を指す。
【0040】
用語「アルキニル」は、1~4個の三重結合を有する、2~20個の炭素原子、好ましくは2~15個の炭素原子、最も好ましくは2~8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。
【0041】
用語「置換アルキニル」は、例えば、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アルキルチオノ、アルキルスルホニル、スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、置換カルバミル、グアニジノ、及びヘテロシクロ(例えば、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジルなど)などの置換基によって置換されたアルキニル基を指す。
【0042】
用語「シクロアルキル」は、好ましくは1~3個の環を含有し、1つの環ごとに3~7個の炭素を含有する、任意選択的に置換される飽和環状炭化水素環系を指し、これは更に不飽和C3~C7炭素環式環と縮合されてもよい。例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロクチル(cycloctyl)、シクロデシル、シクロドデシル、及びアダマンチルが挙げられる。例示的な置換基としては、上記のような1つ又は複数のアルキル基、或いはアルキル置換基として上述された1つ又は複数の基が挙げられる。
【0043】
用語「複素環」、「複素環式」及び「ヘテロシクロ」は、例えば4~7員単環式、7~11員二環式、又は10~15員三環式環系である、少なくとも1つの炭素原子含有環内に少なくとも1つのヘテロ原子を有する、任意選択式に置換される完全飽和又は不飽和の芳香族又は非芳香族環状基を指す。ヘテロ原子を含有する複素環式基の各環は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1、2又は3個のヘテロ原子を有することができ、ここで窒素及び硫黄ヘテロ原子は更に任意選択的に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は更に任意選択的に四級化されていてもよい。複素環式基は、任意のヘテロ原子又は炭素原子において結合され得る。
【0044】
例示的な単環式複素環式基としては、ピロリジニル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、2-オキサゼピニル、アゼピニル、4-ピペリドニル、ピリジル、N-オキソ-ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン及びテトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニル、ジオキサニル、イソチアゾリジニル、チエタニル、チイラニル、トリアジニル、並びにトリアゾリルなどが挙げられる。
【0045】
例示的な二環式複素環式(hetrocyclic)基としては、2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、キヌクリジニル、キノリニル、キノリニル-N-オキシド、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフリル、クロモニル、クマリニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジニル(フロ[2,3-c]ピリジニル、フロ[3,1-b]ピリジニル]又はフロ[2,3-b]ピリジニルなど)、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキナゾリニル(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-キナゾリニルなど)、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾジアジニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズピラゾリル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾチオピラニル、ジヒドロベンゾチオピラニルスルホン、ジヒドロベンゾピラニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、ナフチリジニル、フタラジニル、ピペロニル、プリニル、ピリドピリジル、キナゾリニル、テトラヒドロキノリニル、チエノフリル、チエノピリジル、チエノチエニルなどが挙げられる。
【0046】
例示的な置換基としては、上記で説明された1つ又は複数のアルキル基又はアラルキル基、或いはアルキル置換基として上述された1つ又は複数の基が挙げられる。
【0047】
また、エポキシド及びアジリジンなどのより小さいヘテロシクロも挙げられる。
【0048】
用語「ヘテロ原子」は、酸素、硫黄、及び窒素を含むものとする。
中枢神経系の変性疾患
【0049】
パーキンソン病は、英国パーキンソン病協会(United Kingdom Parkinson’s Disease Society)の脳バンク臨床診断基準(Hughes et al.,Accuracy of clinical diagnosis of idiopathic Parkinson’s disease:a clinico-pathological study of 100 cases.J Neurol Neurosurg Psychiatry 1992;55:181-184を参照)、及び/又はGelb et al.,Diagnostic Criteria for Parkinson’s Disease.Arch Neurol.1999;58(1):33-39によって記載される基準に従って患者において診断され得る。同様に、パーキンソン病の重症度は、Unified Parkinson’s Disease Rating Scaleを用いて確認され得る。例えば、Fahn et al.,Recent developments in Parkinson’s disease.New York:Macmillan,1987;153-163中の、Fahn and Elton,Members of the Unified Parkinson’s Disease Rating Scale Development Committee.Unified Parkinson’s Disease Rating Scaleを参照されたい。
【0050】
アルツハイマー病は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,4th ed.:DSM-IV.Washington,D.C.:American Psychiatric Association,1994のアルツハイマー型認知症の基準に従って患者において診断され得る。同様に、推定(probable)アルツハイマー病の基準は、国立神経障害脳卒中研究所(National Institute of Neurological and Communicative Disorders)及びアルツハイマー病関連障害協会(Stroke and the Alzheimer‘s Disease and Related Disorders Association)の基準に基づいて確認され得る。McKhann et al.,Clinical diagnosis of Alzheimer’s disease:report of the NINCDS-ADRDA work group under the auspices of Department of Health and Human Services Task Force on Alzheimer’s Disease.Neurology 1984;34:939-944も参照されたい。
【0051】
多系統萎縮症(MSA)は、脳の運動、平衡、及び自動調節中枢内のグリア細胞質内封入体(パップ-ラントス(Papp-Lantos)体としても知られる)を特徴とする。MSAの最も一般的な最初の徴候は、最初の症状の62%において見られる「無動・固縮(akinetic-rigid)症候群」の出現(すなわち、パーキンソン病に類似した動作の開始の緩慢さ)である。発症時の他の一般的な徴候としては、平衡に関する問題(22%において見られる)、次に尿生殖器の問題(9%)が挙げられる。男性では、最初の徴候は勃起不全(勃起を達成又は維持することができない)である場合がある。男性及び女性の両方が、多くの場合、切迫、頻度、排尿不全、又は放尿不能(滞留)を含む膀胱に関する問題を経験する。約5人に1人のMSA患者が、疾患の最初の年に転倒を経験する。疾患が進行するにつれて、3つの症状群が優勢になる。これらは、(i)パーキンソニズム(緩慢で固縮した動作、筆跡が小さく細長く(spidery)なる)、(ii)小脳機能不全(運動及び平衡の調整困難)、並びに(iii)体位性又は起立性低血圧(起立時に眩暈又は失神を引き起こす)、尿失禁、インポテンス、便秘、口渇及び乾燥肌、異常発汗による体温調節困難、睡眠中の異常呼吸を含む自律神経機能不全(自動的な身体機能の障害)である。特に、これらの症状の全てが全ての患者によって経験されるわけではない。
【0052】
レーヴィ小体認知症(DLB)は、進行性認知症の最も一般的なタイプの1つである。DLBの中心的な特徴は、3つの付加的な決定的特徴:(1)頻繁な眠気、嗜眠、宙を見つめて長期間過ごす、又は解体した会話などの警戒及び注意の顕著な「動揺」、(2)再発性の幻視、並びに(3)固縮及び自発運動の減少などのパーキンソン病様運動症状と組み合わされた進行性の認知低下である。また、人々は鬱病を患っている場合もある。DLBの症状は、記憶及び運動制御の特定の態様を制御する脳の領域におけるニューロン核内のレーヴィ小体(蓄積されたα-シヌクレインタンパク質の小片)の増加によって引き起こされる。研究者らは、α-シヌクレインが何故レーヴィ小体内に蓄積するのか、或いはレーヴィ小体がどのようにしてDLBの症状を引き起こすのかを正確には知らないが、α-シヌクレインの蓄積が、パーキンソン病、多系統萎縮症、及びいくつかの他の障害(「シヌクレイン症」とも呼ばれる)にも関係していることは知っている。DLBとパーキンソン病との間、及びDLBとアルツハイマー病との間の症状の類似性は、多くの場合、医師が確定診断を行うことを困難にし得る。更に、レーヴィ小体は、パーキンソン病及びアルツハイマー病の人々の脳においても見出される場合が多い。これらの知見は、DLBが認知症のこれらの他の原因と関係しているか、或いは個人が両方の疾患を同時に有し得ることを示唆する。DLBは、通常、疾患の家族歴が不明の人々において孤発的に生じる。しかしながら、時折、稀な家族性症例が報告されている。
【0053】
リソソーム蓄積疾患
最も一般的なリソソーム蓄積疾患であるゴーシェ病は、糖脂質グルコセレブロシド(グルコシルセラミドとしても知られる)の蓄積を特徴とする。神経障害の不在(1型)又は幼児期の神経障害の存在(2型)若しくは青年期の神経障害の存在(3型)によって示されるゴーシェ病の3つの表現型が記載されている。例えば、Grabowski,Gaucher’s disease.Adv Hum Genet 1993;21:377-441を参照されたい。
【0054】
ゴーシェ病の3つの型は、常染色体劣性式で遺伝する。子供が罹患するには両親共にキャリアでなければならない。両親が共にキャリアであれば、それぞれの妊娠で、子供が罹患する可能性は4人に1人、すなわち25%である。変異体のキャリアである可能性がある家族に対しては、遺伝カウンセリング及び遺伝子検査が推奨される。それぞれの型は特定の変異に関連している。ゴーシェ病をもたらす既知の変異は全部で約80存在する(例えば、McKusick,V.A.:Mendelian Inheritance in Man.A Catalog of Human Genes and Genetic Disorders.Baltimore:Johns Hopkins University Press,1998(12th edition)を参照)。
【0055】
1型ゴーシェ病は汎民族性(panethnic)であるが、特にアシュケナージ系ユダヤ人家系の人々の間で広がっており、アシュケナージ系ユダヤ人のキャリア率は17人に1人である。N370S及び84GG変異はアシュケナージ系ユダヤ人の間で最も頻度の高いグルコセレブロシダーゼ遺伝子の変異であり、概ね健康なアシュケナージの人々において、N370Sについては17.5人に1人、また84GGについては400人に1人の割合であり、それぞれ軽度及び重度のゴーシェ病に関連する。84GG変異は、ほぼアシュケナージ系ユダヤ人の間でのみ生じる。ゴーシェ病を有するアシュケナージ系の患者において確認される他の稀なグルコセレブロシダーゼ遺伝子の変異形には、L444P、IVS2+1G→A、V394L、及びR496Hが含まれる。アシュケナージ系ユダヤ人における1型ゴーシェ病の症状とは対照的に、日本人の患者では、1型ゴーシェ病は重篤かつ進行性になる傾向がある(Ida et al.,Type 1 Gaucher Disease Patients:Phenotypic Expression and Natural History in Japanese Patients,Blood Cells,Molecules and Diseases,1984,24(5):73-81を参照されたい)。更にグルコセレブロシダーゼ遺伝子変異体L444Pの1つ又は2つのコピーに関連する3型ゴーシェ病はノルボッテン地方出身のスウェーデン人患者において広く見られる。
【0056】
ゴーシェ病の確定診断は遺伝子検査により行われる。多くの異なる変異が存在するため、診断を確認するためにグルコセレブロシダーゼ遺伝子の配列決定が必要とされる場合もある。出生前診断が利用可能であり、これは既知の遺伝的リスク因子が存在する場合に有用である。しかしながら、ゴーシェ病の診断は、高いアルカリ性ホスファターゼ、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、及び免疫グロブリンレベルなどの生化学的異常によって、又は「縮緬紙(crinkled paper)」の細胞質及び糖脂質沈着マクロファージ(glycolipid-laden macrophages)を示す細胞分析によっても暗示され得る。特に、ニーマン-ピック病は、グルコセレブロシドに加えてGM2-ガングリオシド及びGM1-ガングリオシドの蓄積を特徴とする点で類似している(Vanier et al.,Brain Pathology.1998;8:163-74)。
【0057】
ゴーシェ病の症状としては、以下のものが挙げられる。
・無痛肝腫大及び脾腫(脾臓の大きさが、正常な大きさが50~200mlであるのとは対照的に1500~3000mlとなり得る)。
・脾機能亢進:血液細胞の急速かつ早期の破壊であり、貧血、好中球減少及び血小板減少をもたらす(感染症及び出血の危険性の増大を伴う)。
・肝硬変(稀である)。
・神経的症状はゴーシェ病のいくつかの型においてのみ発生する(以下を参照)
o II型:重篤な痙攣、筋緊張亢進、精神遅滞、無呼吸。
o III型:ミオクローヌスとして知られている筋収縮、痙攣、認知症、眼筋失行。
・骨粗鬆症:75%がグルコシルセラミド蓄積のために目に見える骨異常を発症する。エルレンマイアーフラスコ形状の大腿遠位の変形が一般的に記載される。
・黄褐色の皮膚色素沈着。
【0058】
化合物
本発明の新規な化合物が以下に提供される。
【0059】
化学的プロセス
バリエナミン核の合成は、当該技術分野で説明される様々な経路を用いて達成することができる(例えば、Kok et al,(2001),“A New Synthesis of Valienamine,”J.Org.Chem.,66:7184-90を参照)。本発明の組成物は、バリエナミン合成プロセス中にハロゲン化によって合成可能である。
【0060】
1つの例示的な合成をプロセススキーム1に示す。当業者には、所望の立体化学及び所望の生成物の成分は、合成経路の適切な段階で類似の試薬及び置換を用いて得ることができることが理解される。
プロセススキーム1
【0061】
塩、溶媒、及びプロドラッグ
本発明の化合物は、本明細書で開示される化合物の薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、及びプロドラッグを含む。薬学的に許容可能な塩としては、Li、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Zn、Mnなどの無機塩基由来の塩、N,N’-ジアセチルエチレンジアミン、グルカミン、トリエチルアミン、コリン、水酸化物、ジシクロヘキシルアミン、メトホルミン、ベンジルアミン、トリアルキルアミン、チアミンなどの有機塩基の塩、アルキルフェニルアミン、グリシノール、フェニルグリシノールなどのキラル塩基、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、チロシン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、ヒスチジン、オルニチン、リジン、アルギニン、セリンなどの天然アミノ酸の塩、D-異性体又は置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、グアニジン、置換グアニジン(置換基はニトロ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アンモニウム又は置換アンモニウム塩及びアルミニウム塩から選択される)が挙げられる。塩は、適切である場合は、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、ハロゲン化水素酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、パルモエート(palmoate)、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、グリセロリン酸塩、ケトグルタル酸塩である酸付加塩を含むことができる。一実施形態では、本明細書で開示される化合物の薬学的に許容可能な塩は塩酸塩である。
【0062】
「溶媒和物」は、化合物と、1つ又は複数の溶媒分子との物理的結合を意味する。この物理的結合は、水素結合を含む様々な度合いのイオン結合及び共有結合を伴う。特定の場合には、例えば1つ又は複数の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれると、溶媒和物は単離することが可能である。「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。「水和物」は、溶媒分子がHOである溶媒和物である。好適な溶媒和物のその他の非限定例としては、アルコール(例えば、エタノレート、メタノレートなど)が挙げられる。
【0063】
プロドラッグは、インビボで活性型に変換される化合物である(例えば、参照により本明細書中に組み込まれるR.B.Silverman,1992,“The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action”Academic Press,Chapter8を参照)。更に、プロドラッグについての議論は、A.C.S.Symposium SeriesのT.Higuchi and V.Stella,Prodrugs as Novel Delivery Systems,Volume 14、及びBioreversible Carriers in Drug Design,Edward B.Roche ed.,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987で提供され、このいずれも参照により本明細書に組み込まれる。プロドラッグは、特定の化合物の体内分布(例えば、プロテアーゼの反応部位に典型的には入らない化合物を可能にするため)又は薬物動態を変更するために使用することができる。例えば、カルボン酸基は、例えばメチル基又はエチル基によりエステル化されて、エステルを生じさせることができる。エステルが被験者に投与されると、エステルは酵素的若しくは非酵素的に、還元的に、酸化的に、又は加水分解的に開裂されてアニオン基を現す。アニオン基は、開裂して中間体化合物を現す部分(例えば、アシルオキシメチルエステル)によりエステル化することができ、これは続いて分解して活性化合物を生じさせる。
【0064】
プロドラッグの例及びその使用は当該技術分野においてよく知られている(例えば、Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照)。プロドラッグは化合物の最終的な単離及び精製の間にその場で調製することもでき、又は、精製した化合物を好適な誘導体化剤と単独で反応させることによって調製することもできる。例えば、ヒドロキシ基は、触媒の存在下でのカルボン酸による処理によってエステルに変換させることができる。開裂可能なアルコールプロドラッグ部分の例としては、置換及び非置換の分岐状又は非分岐状の低級アルキルエステル部分(例えば、エチルエステル)、低級アルケニルエステル、ジ-低級アルキル-アミノ低級アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール-低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、置換(例えば、メチル、ハロ、又はメトキシ置換基による)アリール及びアリール-低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ-低級アルキルアミド、並びにヒドロキシアミドが挙げられる。
【0065】
鏡像異性体型(不斉炭素が存在しなくても存在し得る)、回転異性体型、アトロプ異性体、及びジアステレオマー型を含む種々の置換基上の不斉炭素のために存在し得る異性体などの、本明細書で開示される化合物の全ての立体異性体(例えば、幾何異性体、光学異性体など)(これらの化合物の塩、溶媒和物及びプロドラッグ、並びにプロドラッグの塩及び溶媒和物の立体異性体を含む)は、本発明の範囲内であると考えられる。これらの化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体を実質的に含んでいなくてもよく、或いは、例えばラセミ体として、又は他の全て若しくは他の選択された立体異性体と混合されてもよい。上記の化合物のキラル中心は、IUPAC1974勧告により定義されるようにS配置又はR配置を有することができる。用語「塩」、「溶媒和物」、「プロドラッグ」などの使用は、本明細書で開示される本発明の化合物の鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ラセミ体又はプロドラッグの塩、溶媒和物及びプロドラッグに等しく適用されることが意図される。
【0066】
配合物
治療薬は、例えば、経口的な錠剤又はカプセル又は液体形態、或いは注射用の無菌水溶液形態を含む、任意の投与経路で好適となるように配合することができる。治療薬が経口投与用に配合される場合、錠剤又はカプセルは、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、若しくはリン酸水素カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、若しくはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン若しくはグリコール酸ナトリウムデンプン)、又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容可能な賦形剤と共に、従来の手段によって調製され得る。錠剤は、当該技術分野においてよく知られている方法によってコーティングされてもよい。経口投与用の液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、又は懸濁液の形態を取ってもよく、或いは使用前に水又は別の好適な媒剤を用いて構成するための乾燥生成物として提供されてもよい。このような液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、若しくは水素化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチン若しくはアカシア)、非水性媒剤(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、若しくは分画植物油)、又は防腐剤(例えば、メチル若しくはプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸、若しくはソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤と共に、従来の手段によって調製され得る。液体調製物は、更に、必要に応じて緩衝塩、香味料、着色剤又は甘味剤を含有してもよい。経口投与用調製物は、治療薬の制御された又は持続的な放出を与えるように適切に配合されてもよい。
【0067】
本発明の特定の実施形態では、治療薬は、治療薬が血液脳関門を越えて神経細胞に効果を及ぼすことができるように全身的な摂取を可能にする剤形で投与される。例えば、非経口/注射可能用途に適した治療薬の医薬配合物としては、一般的には、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び注入可能な無菌溶液又は分散液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。全ての場合において、剤形(form)は無菌でなければならず、そして注射が容易となる程度に流動的でなければならない。剤形は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌及び菌類のような微生物の汚染作用を受けないように保護されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、又は植物油を含有する溶媒又は分散媒体であってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の活動の予防は、様々な抗菌薬及び抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸などによってもたらされ得る。多くの場合で、例えば糖又は塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことは合理的となるであろう。注射可能組成物の長期にわたる吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム(aluminum monosterate)又はゼラチンを組成物中で使用することによってもたらされ得る。
【0068】
注入可能な無菌溶液は、必要量の治療薬を、必要に応じて上記で列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒中に組み込み、続いてろ過又は最終滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、塩基性分散媒体及び上記で列挙したものの中から必要な他の成分を含有する無菌媒剤中に、様々な滅菌された活性成分を組み込むことによって調製される。注入可能な無菌溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、予め無菌ろ過されたその溶液から、活性成分及び任意の付加的な所望の成分の粉末が得られる。
【0069】
配合物は、賦形剤を含有することができる。配合物中に含まれ得る薬学的に許容可能な賦形剤は、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、及び重炭酸緩衝液などの緩衝液、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、血清アルブミン、コラーゲン、及びゼラチンなどのタンパク質、EDTA又はEGTA、及び塩化ナトリウムなどの塩、リポソーム、ポリビニルピロリドン、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールなどの糖、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(例えば、PEG-4000、PEG-6000)、グリセロール、グリシン又は他のアミノ酸、並びに脂質である。配合物と共に使用するための緩衝系としては、クエン酸、酢酸、重炭酸、及びリン酸緩衝液が挙げられる。リン酸緩衝液は好ましい実施形態である。
【0070】
配合物は、更に非イオン性洗剤を含有することもできる。好ましい非イオン性洗剤としては、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Triton X-100、Triton X-114、Nonidet P-40、オクチルα-グルコシド、オクチルβ-グルコシド、Brij 35、Pluronic、及びTween20が挙げられる。
【0071】
投与経路
治療薬は、経口又は非経口(静脈内、皮下、動脈内、腹腔内、点眼、筋肉内、経頬、経直腸、経膣、眼窩内、脳内、皮内、頭蓋内、脊髄内、脳室内、髄腔内、大槽内、関節包内、肺内、鼻腔内、経粘膜、経皮、又は吸入を含む)で投与することができる。1つの好ましい実施形態では、治療薬は経口投与される。
【0072】
治療薬の投与は定期的な配合物のボーラス注射によるものでもよいし、或いは外部(例えば、点滴袋)又は内部(例えば、生体分解性埋没物)のリザーバから静脈内又は腹腔内投与されてもよい。例えば、それぞれ参照によって本明細書中に組み込まれる米国特許第4,407,957号明細書及び同第5,798,113号明細書を参照されたい。肺内送達方法及び装置は、例えば、それぞれ参照によって本明細書中に組み込まれる米国特許第5,654,007号明細書、同第5,780,014号明細書、及び同第5,814,607号明細書に記載されている。その他の有用な非経口送達システムとしては、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型点滴システム、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、針送達注射、無針注射、噴霧器、エアロゾライザ、電気穿孔法、及び経皮貼布が挙げられる。無針注射デバイスは、その明細が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,879,327号明細書、同第5,520,639号明細書、同第5,846,233号明細書及び同第5,704,911号明細書に記載されている。上記の配合物のいずれもこれらの方法を用いて投与することができる。
【0073】
皮下注射は自己投与を可能にする利点を有し、更に静脈内投与と比べてより長期の血中濃度半減期をもたらす。更に、患者の利便性のために設計された再充填式注射ペン及び無針注射デバイスなどの様々なデバイスを、本明細書において論じられる本発明の配合物と共に使用することができる。
【0074】
用量
好適な製剤は単位剤形である。このような剤形では、調製物は、適切な量、例えば所望の目的を達成するために有効量の活性成分を含有する好適なサイズの単位用量に細分される。特定の実施形態では、治療薬は、1日に1回又は複数回の用量(例えば、1日1回、1日2回、1日3回)で投与される。特定の実施形態では、治療薬は断続的に投与される。
【0075】
例示的な投薬計画は、そのいずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2008年6月11日に国際公開第2008/134628号パンフレットとして公開された国際特許出願第PCT/US08/61764号明細書、及び2008年10月24日出願の米国仮特許出願第61/108,192号明細書に記載されている。一実施形態では、治療薬は、初期の「負荷用量」が毎日与えられ、続いて毎日でない間隔の投与が行われることを含む、断続的な投薬計画で投与される。
【0076】
引用された障害を予防又は治療するために有効な治療薬の量は、当業者によって個別的に決定することができる。治療薬の投与量及び頻度は、患者の年齢、健康状態及び寸法、並びに障害を発症する危険度、又は治療中の引用された障害の症状の重症度などの因子を考慮して、担当臨床医(医師)の判断に従って調整される。
【0077】
併用薬物療法
本発明の治療薬は、少なくとも1つの他の治療薬と併用して投与できる。少なくとも1つの他の治療薬を伴う本発明の治療薬の投与は、連続的又は同時の投与を包含すると理解される。一実施形態では、治療薬は、個別の剤形で投与される。別の実施形態では、2つ以上の治療薬が同一の剤形で同時に投与される。
【0078】
特定の実施形態では、本発明の治療薬は、抗ジスキネジア薬(例えば、カルビドパ、レボドパ)、抗感染症薬(例えば、ミグルスタット)、抗腫瘍薬(例えば、ブスルファン、シクロホスファミド)、胃腸薬(例えば、メチルプレドニゾロン)、微量栄養素(例えば、カルシトリオール、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、ビタミンD)、血管収縮薬(例えば、カルシトリオール)である少なくとも1つの他の治療薬と併用して投与される。
【0079】
特定の実施形態では、本発明の治療薬は、アロプレグナノロン、低コレステロール食、又はスタチン(例えば、Lipitor(登録商標))などのコレステロール低下剤、フェノフィブラート(Lipidil(登録商標))などのフィブラート、ナイアシン、及び/又はコレスチラミン(Questran(登録商標))などの結合樹脂と併用して投与される。
【0080】
一実施形態では、本発明の治療薬は、遺伝子治療と併用して投与される。遺伝子治療は、グルコセレブロシダーゼなどの置換遺伝子、又はSNCA遺伝子の抑制RNA(siRNA)の両方によるものが企図される。遺伝子治療は、2004年2月17日出願の米国特許第7,446,098号明細書でより詳細に説明されている。
【0081】
一実施形態では、本発明の治療薬は、抗炎症薬(例えば、イブプロフェン又は他のNSAID)である少なくとも1つの他の治療薬と併用して投与される。
【0082】
一実施形態では、本発明の治療薬は、N-ブチル-デオキシノジリマイシン(Zavesca(登録商標)、Actelion Pharmaceuticals,US,Inc.,South San Francisco,CA,USから入手可能なミグルスタット)などのグルコセレブロシダーゼの基質阻害薬と併用して投与される。
【0083】
本発明の治療薬と、1つ又は複数の他のリソソーム酵素の治療薬である少なくとも1つの他の治療薬と、の併用も企図される。表2は、リソソーム酵素の治療薬の非限定的な一覧である。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
特定の実施形態では、本発明の治療薬は、抗ジスキネジア薬(例えば、カルビドパ、レボドパ)、抗感染症薬(例えば、シクロスポリン、ミグルスタット、ピリメタミン)、抗腫瘍薬(例えば、アレムツズマブ、アザチオプリン、ブスルファン、クロファラビン、シクロホスファミド、メルファラン、メトトレキサート、リツキシマブ)、抗リウマチ薬(例えば、リツキシマブ)、胃腸薬(例えば、メチルプレドニゾロン)、微量栄養素(例えば、カルシトリオール、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、葉酸、ビタミンD)、妊娠調節薬(例えば、メトトレキサート)、呼吸器系作用薬(例えば、テトラヒドロゾリン)、血管収縮薬(例えば、カルシトリオール、テトラヒドロゾリン)である少なくとも1つの治療薬と併用して投与される。
【0088】
特定の実施形態では、本発明の治療薬は、β-ヘキソサミニダーゼAの治療薬及び/又は酸β-ガラクトシダーゼの治療薬である少なくとも1つの治療薬と併用して投与される。特定の実施形態では、本発明の治療薬は、抗感染症薬(例えば、ミグルスタット)、抗腫瘍薬(例えば、アレムツズマブ、ブスルファン、シクロホスファミド)、胃腸薬(例えば、メチルプレドニゾロン)である少なくとも1つの治療薬と併用して投与される。
【0089】
本発明の治療薬としては、RNAi、ドーパミン置換薬(例えば、レボドパ(levadopa)(L-DOPA))、ドーパミン置換安定剤(例えば、カルビドパ、及びエンタカポン)、抗コリン薬(例えば、トリヘキシフェニジル、ベンゾトロピンメシラート(Cogentin(登録商標))、トリヘキシフェニジルHCL(Artane(登録商標))、及びプロシクリジン)、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤(例えば、エンタカポン(Comtan(登録商標))及びトルカポン(Tasmar(登録商標))、ドーパミン受容体アゴニスト(例えば、ブロモクリプチン(Parlodel(登録商標))、プラミペキソール(Mirapex(登録商標))、ロピニロール(Requip(登録商標))、ペルゴリド(Permax)、及びAPOKYN(商標)注射薬(アポモルフィン塩酸塩)、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤(すなわち、MAO-A及び/又はMAO-B阻害薬、例えば、セレギリン(Deprenyl、Eldepryl(登録商標)、Carbex(登録商標))、セレギリンHCI口腔内崩壊錠(Zelapar(登録商標))、及びラサギリン(Azilect(登録商標)))、末梢デカルボキシラーゼ阻害剤、アマンタジン(Symmetrel(登録商標))、並びに酒石酸リバスチグミン(Exelon(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない少なくとも1つの他の治療薬と併用して投与することができる。
【0090】
また、本発明の治療薬と、2つ以上の他の治療薬との併用も企図される。他の治療薬の例示的な組み合わせとしては、カルビドパ/レボドパ(Sinemet(登録商標)又はParcopa(登録商標))、カルビドパ、レボドパ及びエンタカポン(Stalevo(登録商標))、レボドパ及びドーパミン受容体アゴニスト(ブロモクリプチン(Parlodel(登録商標))、プラミペキソール(Mirapex(登録商標))、ロピニロール(Requip(登録商標)))、ペルゴリド(Permax)、又はAPOKYN(商標)注射薬(アポモルフィン塩酸塩)など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
一実施形態では、本発明の治療薬は、α-シヌクレイン及びアジュバントを含むワクチンなどのワクチン治療と併用して投与される(Pilcher et al.,Lancet Neurol.2005;4(8):458-9)。
【0092】
一実施形態では、本発明の治療薬は、デキストロメトルファン(Li et al.,FASEB J.2005;Apr;19(6):489-96)、ゲニステイン(Wang et al.,Neuroreport.2005;Feb 28;16(3):267-70)、又はミノサイクリン(Blum et al.,Neurobiol Dis.2004;Dec;17(3):359-66)などの保護的であり得る少なくとも1つの他の治療薬と併用して投与される。
【0093】
一実施形態では、本発明の治療薬は、α-シヌクレインの治療薬(例えば、Hsp70)である少なくとも1つの他の治療薬と併用して投与される。
【0094】
パーキンソン病を有する患者は、振戦、固縮、運動緩徐、及び姿勢のアンバランスを経験する。レーヴィ小体認知症を有する患者は、記憶喪失、及び単純作業の実行不能などの精神的退化に加えて、強い精神病の症状(幻視)を経験する。観測可能な症状の改善、又は障害を発症するリスクのある患者における特定の症状の発症の遅延、若しくは障害の進行の遅延は、本明細書で提供される治療に対する良好な応答の証拠になるであろう。
【0095】
更に、測定可能な代理マーカーも、治療応答を評価するのに有用となり得る。例えば、ある研究者らは、パーキンソン病の患者の血漿中でより高いレベルのα-シヌクレイン又はα-シヌクレインのオリゴマー形態を検出したことを報告している(Lee et al.,J Neural Transm.2006;113(10):1435-9;El-Agnaf et al.,FASEB J.2006;20(3):419-25)が、一方である研究者らは、正常対照と比較してのパーキンソン病患者の血漿α-シヌクレインの低下を報告している(Li et al.,Exp Neurol.2007;204(2):583-8)。
【0096】
特定の実施形態では、本発明の治療薬は、嫌酒薬(例えば、アカンプロセート)、麻薬性鎮痛薬(例えば、レミフェンタニル)、抗ジスキネジア薬(例えば、アマンタジン、アポモルフィン、ベンセラジド、ブロモクリプチン、カベルゴリン、カルビドパ、デキセチミド、ドロキシドパ、エンタカポン、レボドパ、リスリド、メマンチン、ピリベジル、プラミペキソール、ロピニロール、セレギリン、シネメット)、抗感染症薬(例えば、アマンタジン、アモキシシリン、クラリスロマイシン、エタノール、インターフェロン、ミノサイクリン、PS-K)、抗肥満薬(例えば、フェニルプロパノールアミン、トピラマート)、鎮痙薬(例えば、エチラセタム、トピラマート)、制吐剤(例えば、トリメトベンズアミド)、降圧薬(例えば、トランドラプリル)、抗腫瘍薬(例えば、カベルゴリン、PS-K)、中枢神経抑制薬(例えば、アリピプラゾール、ベンゾカイン、クロザピン、コカイン、デクスメデトミジン、ジフェンヒドラミン、イソフルラン、リチウム、炭酸リチウム、メチルペロン(Metylperon)、モルヒネ、プロポフォール、クエチアピン、ラクロプリド、レミフェンタニル、ナトリウムオキシベート)、中枢神経刺激薬(例えば、クエン酸カフェイン、モダフィニル、ニコチンポラクリレックス)、凝固剤(例えば、アルギニンバソプレシン、デアミノアルギニンバソプレシン、バソプレシン)、外皮用剤(例えば、ロラタジン、プロメタジン)、胃腸薬(例えば、ジフェンヒドラミン、ドンペリドン、オメプラゾール、トリメトベンズアミド)、睡眠薬及び/又は鎮静薬(例えば、レミフェンタニル)、微量栄養素(例えば、α-トコフェロール、補酵素Q10、エルゴカルシフェロール、ヒドロキソコバラミン、鉄、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE)、神経保護薬(例えば、エリプロディル、モダフィニル、ラサギリン、リバスチグミン、トピラマート)、向知性薬(例えば、ドネペジル、エチラセタム)、向精神薬(例えば、アリピプラゾール、シタロプラム、クロザピン、デュロキセチン、リチウム、炭酸リチウム、メチルペロン、ノルトリプチリン、パロキセチン、クエチアピン、ラクロプリド、ベンラファキシン)、呼吸器系作用薬(例えば、デキストロメトルファン、グアイフェネシン、イプラトロピウム、ナファゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン)、血管収縮薬(例えば、ナファゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン)である少なくとも1つの他の治療薬と併用して投与される。
【0097】
1つの好ましい実施形態では、上記の他の治療薬は、障害がパーキンソン病である場合に投与される。
【0098】
特定の実施形態では、本発明の治療薬は、ニコチン性α-7アゴニスト(例えば、いずれもMemory Pharmaceuticalsから入手可能なMEM3454又はMEM63908)である少なくとも1つの他の治療薬と併用して投与される。特定の実施形態では、本発明の治療薬は、R3487及び/又はR4996(これらはいずれもRocheから入手可能)である少なくとも1つの他の治療薬と併用して投与される。また、本発明の治療薬と、2つ以上の他の治療薬との併用も企図される。他の治療薬の例示的な組み合わせとしては、R3487/MEM3454、及びR4996/MEM63908が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
特定の実施形態では、本発明の治療薬は、少なくとも1つのコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、ドネペジル(商標名Aricept)、ガランタミン(商標名Razadyne)、及びリバスチグミン(Exelon及びExelon Patchとしての商標)と併用して投与される。
【0100】
特定の実施形態では、本発明の治療薬は、少なくとも1つの非競合性NMDA受容体アンタゴニスト(例えば、メマンチン(商標名Akatinol、Axura、Ebixa/Abixa、Memox及びNamenda))と併用して投与される。
【0101】
特定の実施形態では、本発明の治療薬は、非麻薬性鎮痛薬(例えば、セレコキシブ、レスベラトロル、ロフェコキシブ、TNFR-Fc融合タンパク質)、抗ジスキネジア薬(例えば、デキセチミド、ガバペンチン、レボドパ、メマンチン)、抗感染症薬(例えば、アセチルシステイン、アシクロビル、安息香酸エステル、デオキシグルコース、ドキシサイクリン、インターフェロンα-2a、インターフェロン-α、インターフェロン、モキシフロキサシン、PS-K、キナクリン、リファンピン、サリチル酸、バラシクロビル)、抗炎症薬(例えば、アスピリン、セレコキシブ、クルクミン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、レスベラトロル、ロフェコキシブ、TNFR-Fc融合タンパク質)、抗肥満薬(例えば、フェニルプロパノールアミン)、鎮痙薬(例えば、ガバペンチン、ホモタウリン、ラモトリギン)、制吐剤(例えば、オランザピン)、降圧薬(例えば、トランドラプリル)、抗高脂血症薬(例えば、アトルバスタチン、コリン、クロフィブリン酸、プラバスタチン、シンバスタチン)、抗腫瘍薬(例えば、ブリオスタチン1、カルムスチン、シクロホスファミド、インターフェロンα-2a、ロイプロリド、メドロキシプロゲステロン17-アセタート、メチルテストステロン、PK11195、プレドニゾン、PS-K、レスベラトロル、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ(1,2-b)ピラゾール)、抗リウマチ薬(例えば、アスピリン、セレコキシブ、クルクミン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、リスベラトロール、ロフェコキシブ、TNFR-Fc融合タンパク質)、中枢神経抑制薬(例えば、アリピプラゾール、ベンゾカイン、コカイン、ガバペンチン、ハロペリドール、デカン酸ハロペリドール、リチウム、炭酸リチウム、ロラゼパム、ミダゾラム、オランザピン、ペルフェナジン、プロポフォール、クエチアピン、リスペリドン、ナトリウムオキシベート、トラゾドン、バルプロ酸、ゾルピデム)、中枢神経刺激薬(例えば、クエン酸カフェイン、モダフィニル、ニコチンポラクリレックス)、チャネル遮断薬(例えば、ガバペンチン、ラモトリギン)、凝固剤(例えば、抗プラスミン薬、ビタミンK)、外皮用剤(例えば、鉱油、サリチル酸)、胃腸薬(例えば、コリン、ハロペリドール、ロラゼパム、オランザピン、オメプラゾール、TNFR-Fc融合タンパク質)、睡眠薬及び/又は鎮静薬(例えば、ゾルピデム)、血糖降下剤(例えば、インスリン、Asp(B28)-、ロシグリタゾン)、微量栄養素(例えば、α-トコフェロール、アスコルビン酸、補酵素Q10、銅、葉酸、ヒドロキソコバラミン、イノシトール、鉄、ナイアシン、ナイアシンアミド、ニコチン酸、ピリドキシン、セレニウム、チオクト酸、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ビタミンB12、ビタミンB6、ビタミンE、ビタミンK)、神経保護薬(例えば、フペルジンA、モダフィニル、ネフィラセタム、ラサギリン、リバスチグミン、(3-アミノプロピル)(n-ブチル)ホスフィン酸)、向知性薬(例えば、ドネペジル、ネフィラセタム)、血小板凝集阻害薬(例えば、リスベラトロール)、向精神薬(例えば、アリピプラゾール、ブプロピオン、シタロプラム、デュロキセチン、ガバペンチン、ハロペリドール、デカン酸ハロペリドール、リチウム、炭酸リチウム、ロラゼパム、ミダゾラム、ネフィラセタム、オランザピン、パロキセチン、ペルフェナジン、クエチアピン、リスペリドン、セルトラリン、トラゾドン、トリプトファン、バルプロ酸、ベンラファキシン)、妊娠調節薬(例えば、エストラジオール17β-シピオネート、エストラジオール3-ベンゾアート、吉草酸エストラジオール、インドメタシン、ロイプロリド、メドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン17-アセタート、ミフェプリストン)、呼吸器系作用薬(例えば、アセチルシステイン、デキストロメトルファン、グアイフェネシン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン)、又は血管収縮薬(例えば、ナファゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン)である少なくとも1つの他の治療薬と併用して投与される。