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特許7250731脱分化したリプログラミングされた細胞から導出された細胞組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】脱分化したリプログラミングされた細胞から導出された細胞組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230327BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20230327BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20230327BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/071
A61K35/39
A61P3/10
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020104982
(22)【出願日】2020-06-18
(62)【分割の表示】P 2019078983の分割
【原出願日】2014-02-06
(65)【公開番号】P2020178694
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】13/761,078
(32)【優先日】2013-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508255333
【氏名又は名称】ヴィアサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】アグルニック、 アラン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ケリー、 オリビア
(72)【発明者】
【氏名】オオイ ユキ
(72)【発明者】
【氏名】ロビンス、 アラン
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ、 トーマス
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-508584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0272695(US,A1)
【文献】特表2012-525148(JP,A)
【文献】NATURE BIOTECHNOLOGY,2008年,Vol. 26, No. 4,pp. 443-452
【文献】STEM CELLS,2007年,Vol. 25,pp. 1940-1953
【文献】J. Biol. Chem.,2008年,Vol. 283, No. 46,pp. 31601-31607
【文献】PLoS ONE,2011年12月01日,Vol. 6, Issue 12,e28209
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/071-5/035
C12N 5/10
C12N 15/00-15/90
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透膜と、NKX6.1およびPDX1共陽性である細胞を含む膵臓前駆細胞集団とを含む移植デバイスであって、前記細胞集団はヘレグリン-1(ニューレグリン-1)、ヘレグリン-2(ニューレグリン-2)、またはヘレグリン-1βを含む培地中の脱分化した遺伝的にリプログラミング化された哺乳動物細胞に由来する細胞集団であり、前記培地はさらにrhoキナーゼ阻害剤を含み、
前記膵臓前駆細胞集団は、ヘレグリンとrhoキナーゼ阻害剤を欠く培地中の脱分化した遺伝的にリプログラミング化された哺乳動物細胞に由来するNKX6.1およびPDX1共陽性である細胞を含む膵臓前駆細胞集団と比べて増加されたERBB3活性化およびrhoキナーゼ阻害を有し、
前記半透膜が前記膵臓前駆細胞集団を封入する、移植デバイス。
【請求項2】
前記脱分化した遺伝的にリプログラミング化された哺乳動物細胞は、人工多能性幹細胞である、請求項1に記載の移植デバイス。
【請求項3】
前記膵臓前駆細胞集団は、クロモグラニンA陽性(CHGA+)内分泌細胞およびクロモグラニンA陰性(CHGA-)非内分泌細胞を含む、請求項1または2に記載の移植デバイス。
【請求項4】
前記膵臓前駆細胞集団の少なくとも5%がCHGA- 非内分泌細胞を含む、請求項3に記載の移植デバイス。
【請求項5】
(a)前記デバイスは微穿孔を含むか、または
(b)前記デバイスは生分解性である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の移植デバイス。
【請求項6】
前記哺乳動物細胞はヒト細胞である、請求項1~5のいずれか一項に記載の移植デバイス。
【請求項7】
前記膵臓前駆細胞集団は、膵臓前駆細胞の凝集懸濁物の状態にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の移植デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年2月6日に出願された米国特許出願第13/761,078号、
表題CELL COMPOSITIONS DERIVED FROM DEDIFFE
RENTIATED REPROGRAMMED CELLSの優先権を主張し、それは
、2010年4月22日に出願された米国特許出願第12/765,714号、表題CE
LL COMPOSITIONS DERIVED FROM DEDIFFERENT
IATED REPROGRAMMED CELLSの一部継続出願であり、それは、米
国特許法第119(e)条の下で、2009年4月22日に出願された米国特許仮出願第
61/171,759号、表題CELL COMPOSITIONS DERIVED
FROM DEDIFFERENTIATED REPROGRAMMED CELLS
の優先権を主張する非仮出願であり、それらの開示は参照により完全に本明細書に組み込
まれる。
【0002】
配列表
本出願は、電子フォーマットの配列表とともに出願されている。配列表は、2013年
1月28日に作成された、CYTHERA068P1.TXTという名称のサイズが8.
92Kbのファイルで提供される。配列表の電子フォーマットの情報は、参照により本明
細書に完全に組み込まれる。
【0003】
本発明は、一般に、細胞培養物の単離、維持および使用に関する。より具体的には、本
発明は、人工多能性幹細胞から導出された細胞組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
多能性細胞の重要な用途は、細胞療法でのそれらの使用である。多能性幹細胞には、ヒ
ト胚性幹(hES)細胞、ヒト胚性生殖(hEG)細胞が含まれるが、これらに限定され
ない。さらに他のタイプの多能性細胞が存在し、例えば、脱分化したマウスおよびヒトの
幹細胞、すなわち分化した体性成体細胞は脱分化して多能性様幹細胞になる。ES細胞に
類似した多能性および成長能力を有する細胞を確立するために誘導されるこれらの脱分化
した細胞は、「人工多能性幹(iPS)細胞」、「胚性幹細胞様細胞」、「ES様細胞」
またはそれらの同等物とも呼ばれる。そのような細胞は、潜在的に存続可能な代替多能性
細胞である。iPS細胞の治療的適用には、糖尿病および他の疾患を治療するための前臨
床研究でこれらの細胞が安定であり、適当な安全性プロファイルを示すことを実証するこ
とが必要である。多能性状態への分化したヒト体性細胞のリプログラミングは、患者およ
び疾患特異的幹細胞を可能にする。Takahashi,K.らCell、1~12、2
007およびJu,J.らScience 2007を参照されたい。Takahash
iらおよびJuらは、iPS細胞を生成するために4つの遺伝子を成体および胎児/新生
児の線維芽細胞に各々導入した:Oct4、Sox2、Klf4およびc-myc、Ta
kahashiら;Oct4、Sox2、NanogおよびLin28、Juら。いずれ
の場合にも、iPS細胞は、hES細胞形態、マーカー発現、長期にわたる増殖、正常な
核型および多能性などの、hES細胞の一部の特徴を有していた。
【0005】
iPS細胞は関連する倫理論争なしで細胞療法に基づく再生医療を提供することができ
るが、iPS細胞の分化特性、例えばin vitroでの分化潜在能力および分化効率
はなお不明であり、iPS細胞のための指向性分化方法は実証されていない。したがって
、iPS細胞の詳細な分化特性および指向性分化効率を判定し、実証する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書に記載される実施形態は、多能性細胞、例えば人工多能性幹(iPS)細胞な
どの脱分化したリプログラミングされた細胞から導出された細胞組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、ヒト細胞を含む組成物およびヒト細胞を含むin vitro細胞培養
物を作製する方法を提供し、ヒト細胞の少なくとも約15%は胚体内胚葉細胞であり、胚
体細胞は脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞から導出される。一態様では、
胚体内胚葉細胞は、それから導出される腸管または器官の細胞に分化することができる多
分化能細胞である。
【0008】
別の実施形態は、ヒト細胞を含む組成物およびヒト細胞を含むin vitro細胞培
養物を作製する方法を提供し、ヒト細胞の少なくとも約15%は膵臓-十二指腸ホメオボ
ックス因子1(PDX1)陽性の前腸内胚葉細胞であり、PDX1陽性の前腸内胚葉細胞
は脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞から導出される。一態様では、PDX
1陽性の前腸内胚葉細胞は、PDX1、SOX9、PROX1およびHNF6に関して共
陽性である。
【0009】
さらなる実施形態は、ヒト細胞を含む組成物およびヒト細胞を含むin vitro細
胞培養物を作製する方法を提供し、ヒト細胞の少なくとも約15%は膵臓-十二指腸ホメ
オボックス因子1(PDX1)陽性の膵臓前駆細胞であり、PDX1陽性の膵臓前駆細胞
は脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞から導出される。一態様では、PDX
1陽性の膵臓前駆細胞は、PDX1およびNKX6.1に関して共陽性である。
【0010】
さらなる別の実施形態は、ヒト細胞を含む組成物およびヒト細胞を含むin vitr
o細胞培養物を作製する方法を提供し、ヒト細胞の少なくとも約15%はNeuroge
nin3(NGN3)陽性の内分泌先駆細胞であり、NGN3内分泌先駆細胞は脱分化し
た遺伝的にリプログラミングされた細胞から導出される。一態様では、NGN3陽性の内
分泌先駆細胞は、NGN3、PAX4およびNKX2.2に関して共陽性である。
本明細書に記載される細胞培養組成物のさらなる実施形態は、脱分化した遺伝的にリプ
ログラミングされた細胞から導出された分化した細胞およびERBB受容体チロシンキナ
ーゼ活性化作用物質を含む、in vitroヒト膵臓内胚葉細胞培養物を含む。
本明細書に記載される追加の実施形態は、インスリンを生成する方法に関する。一部の
そのような実施形態では、この方法は、(a)脱分化した遺伝的にリプログラミングされ
た細胞から導出された少なくとも前腸内胚葉細胞培養物および/または少なくともPDX
1陰性前腸内胚葉細胞培養物をERBB受容体チロシンキナーゼ活性化作用物質とin
vitroで接触させ、それにより、内分泌細胞および非内分泌細胞亜集団を含む膵臓内
胚葉細胞集団を生成するステップと、(b)ステップ(a)の膵臓内胚葉細胞集団または
ステップ(a)の細胞亜集団をin vivoで移植し、成熟させ、それによりインスリ
ン分泌細胞を得るステップであって、インスリン分泌細胞がグルコース刺激に応答してイ
ンスリンを分泌する、ステップとを含む。
本明細書に記載されるさらなる他の実施形態は、インスリンを生成する方法であって、
(a)脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞を、TGFβ受容体ファミリーメ
ンバーを活性化する作用物質を含む第1の培地とin vitroで接触させるステップ
と、(b)TGFβ受容体ファミリーメンバーを活性化する作用物質を欠く第2の培地で
ステップ(a)の細胞をin vitroで培養し、それにより、少なくとも前腸内胚葉
細胞および/または少なくともPDX1陰性前腸内胚葉細胞を生成するステップと、(c
)ステップ(b)の細胞をERBB受容体チロシンキナーゼ活性化作用物質と接触させ、
それにより、内分泌細胞および非内分泌細胞亜集団を含む細胞集団を生成するステップと
、(d)ステップ(c)の細胞集団またはステップ(c)の細胞亜集団をin vivo
で移植し、成熟させ、それによりインスリン分泌細胞を得るステップであって、インスリ
ン分泌細胞がグルコース刺激に応答してインスリンを分泌する、ステップとを含む方法に
関する。本明細書に記載されるさらに他の実施形態は、少なくとも前腸内胚葉細胞、少な
くともPDX1陰性前腸内胚葉細胞および/または少なくともPDX1陽性膵臓内胚葉細
胞を含む集団を、ERBB受容体チロシンキナーゼ活性化作用物質と接触させ、それによ
り、in vivoでグルコース応答性インスリン分泌細胞に成熟することが可能な細胞
集団を生成することに関する。
本明細書に記載されるさらに他の実施形態は、少なくとも前腸内胚葉細胞、少なくとも
PDX1陰性前腸内胚葉細胞および/または少なくともPDX1陽性膵臓内胚葉細胞を含
む集団を、ERBB受容体チロシンキナーゼ活性化作用物質およびrhoキナーゼ阻害剤
と接触させ、それにより、in vivoでグルコース応答性インスリン分泌細胞に成熟
することが可能な細胞集団を生成することに関する。
本明細書で使用される場合、語句「少なくとも前腸内胚葉細胞」、「少なくともPDX
1陰性前腸内胚葉細胞」および「少なくともPDX1陽性膵臓内胚葉細胞」は、細胞集団
の細胞のいくつかまたは一部が、膵島細胞へのそれらの分化の中で、iPSCから前腸内
胚葉細胞またはそれ以上、iPSCからPDX1陰性前腸内胚葉細胞またはそれ以上、お
よび/またはiPSCからPDX1陽性膵臓内胚葉細胞またはそれ以上に分化しているこ
とを意味する。
本明細書で使用される場合、細胞集団の細胞に言及するとき、語句「いくつか」および
/または「一部」は、細胞集団が、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15
%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少な
くとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも6
0%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少
なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも95%を超える
指定された細胞型の細胞を含むことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】脱分化したリプログラミングされた細胞、または本明細書でiPS細胞とも呼ばれる細胞の凝集懸濁培養の写真画像である。
【0012】
図2A-L】OCT4(図2A)、BRACHYURY(図2B)、CER1(図2C)、GSC(図2D)、FOXA2(図2E)、FOXA1(図2F)、HNF6(図2G)、PDX1(図2H)、PTF1A(図2I)、NKX6.1(図2J)、NGN3(図2K)およびINS(図2L)の相対的な遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子、サイクロフィリンGおよびTATA結合タンパク質(TBP)発現の平均発現レベルに標準化される。グラフは、データセット中の最も低いデータポイントからの上方制御倍率を表す。
【0013】
図3A-3D】(3A)PDX-1;(3B)NKX6.1;(3C)PTF1A;および(3D)Dapiに特異的な抗体を使用したステージ4分化からのヒトiPS細胞培養物の免疫細胞化学(ICC)の顕微鏡写真である。
【0014】
図4A-4D】(図4A)グルカゴン、(図4B)インスリン、(図4C)ソマトスタチンおよび(図4D)Dapiに特異的なリガンドを使用した、ステージ4分化からのiPS細胞培養の免疫細胞化学(ICC)の写真である。
図5A-B】R&D SystemsからのProteome Profiler(商標)ヒトホスホRTK抗体アレイで提供されるアレイ位置図およびアレイキーを示す図である。図5Aの位置図は、RTK抗体の座標または位置を示す。RTKファミリーおよび抗体のアイデンティティまたは名前は、図5Bのキーに記載される。したがって、現像したフィルムで観察される陽性シグナルは、図5Aのように透明画をオーバレイし、図5BのRTKの名前でオーバレイ(図5A)の上の座標を参照することによってシグナルを同定することによって、同定することができる。
図6A-D】4つの異なる条件(実施例5に記載されるように、図A、B、CおよびD)下のiPS細胞導出膵臓内胚葉細胞(PEC)のRTKアレイ分析を示す図である。特定のRTKのチロシンリン酸化が、高強度から低強度のシグナルの同定によって観察される。IGF 1R/IRおよびERBB(EGFR)ファミリーメンバーが同定されるか、四角で囲まれる。
図7A-C】表9に示すように、実験E2314、E2356およびE2380(図7A)、E2347(図7B)ならびにE2354(図7C)の移植されたマウスの血清中のヒトCペプチドおよびインスリンの濃度を示すグラフである。空腹時、ならびに腹腔内グルコース投与の30分および60分後に、ヒトCペプチドの血清レベルについてPECを移植したマウスを指示された移植後時点で分析した。図7Cで、細胞封入デバイス(Encaptra(登録商標)EN20またはEN20、ViaCyte、San Diego、CA)でPECを封入し、一部の場合には、デバイスは微穿孔を有した(pEN20、ViaCyte、San Diego、CA)。そのようなデバイスは、米国特許第8,278,106号に記載され、その開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
図8A-8B】実験#2347のSTZ処置マウスの血中グルコース分析の結果を示すグラフである。図8Aは、13匹の各マウスの血中グルコースを示し(ヘレグリンの有る無しによるベースライン)、図8Bは、各処置の合わせた平均測定値を示す(ヘレグリンの有る無しによるベースライン)。STZによる処置(0日目)の最大14日前までにiPEC移植片を移植した13匹のマウスについて、同じマウスについてSTZ処置の後、および移植片を外植した後の、ランダムな非絶食血中グルコースレベルの測定値を示す。STZ処置動物は、移植片の移植から約26週後にSTZを与えられた(0日目)。移植片移植から28週後、STZ処置の開始からおよそ2週後に、iPEC移植片を外植した(取り出した)。各動物につき、非絶食血中グルコース測定値を経時的に収集した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、本明細書に含まれる本発明の好ましい実施形態および実施例の以下の詳細な
説明を参照することによって容易に理解することができる。しかし、本化合物、組成物、
および方法の開示および記載の前に、本発明は、特定の細胞型、特定のフィーダー細胞層
、特定の条件、または特定の方法などに限定されず、それ自体変わり得ることが理解され
るべきである。多数の改変および変形が当業者には明らかであろう。本明細書において使
用される用語は、単に特定の実施形態を記載するためのものであり、限定的なものではな
いことも理解されるべきである。
【0016】
定義
本明細書で表される数値範囲は、記載されている終点を含み、示された数値範囲の終点
間の全ての整数を記載するものであることが理解されよう。
【0017】
特に断りのない限り、本明細書で使用される用語は、当業者による従来の使用に従って
理解される。また、本明細書および添付の特許請求の範囲の目的に関して、別段に特定さ
れていない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の分量、材料の
百分率または割合、反応条件を表す数、および他の数値は全て、全ての場合に「約」とい
う用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、それに反する指示
がない限り、以下の明細書および添付されている特許請求の範囲に記載されている数値パ
ラメータは、本発明によって得られるべき所望の性質に応じて変動し得る近似値である。
最低限、かつ特許請求の範囲への均等論の適用を限定しようとするものではなく、各数値
パラメータは、少なくとも、報告されている有意な桁数に照らして、および通常の丸め技
法を適用することによって解釈されるべきである。
【0018】
本明細書に記載の実施形態の実施には、別段に特定されていない限り、細胞生物学、分
子生物学、遺伝学、化学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技法が使用さ
れる。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「th
e」には、文脈が明らかに別に指示しない限り、複数形が含まれることを理解するべきで
ある。したがって、例えば、「細胞」への言及には1つまたは複数のそのような異なる細
胞が含まれ、「方法」への言及には、本明細書に記載される方法に代えて改変または置換
することができる、当業者に公知である同等のステップおよび方法への言及が含まれる。
【0020】
「細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、個々の細胞、細胞系、またはその
ような細胞から導出される培養物を指す。「培養物」とは、同じまたは異なる種類の単離
された細胞を含む組成物を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「全能性幹細胞」という句は、卵細胞と精子細胞の融合か
ら生成する細胞などの、生物体を構成する全ての細胞に分化する能力を有する細胞を指す
。受精卵の最初の数回の分裂によって生成する細胞も全能性であり得る。これらの細胞は
、胚および胚体外細胞系列に分化することができる。例えばES細胞などの多能性幹細胞
は、いかなる胎児または成体の細胞型も生じ得る。しかし、これらは、胚体外組織に発達
する能力を欠くので、単独では胎児または成体動物に発達することはできない。胚体外組
織は、一部において、胚体外内胚葉から導出され、遠位内胚葉(parietal en
doderm)(ライヘルト膜)および近位内胚葉(visceral endoder
m)(卵黄嚢の一部を形成する)にさらに分類することができる。遠位内胚葉および近位
内胚葉はどちらも胚の発生を支持するが、それら自体は胚構造を形成しない。胚体外中胚
葉および胚体外外胚葉を含めた他の胚体外組織も存在する。
【0022】
一部の実施形態では、「多能性細胞」を、内胚葉系列、より詳細には、膵臓内胚葉型細
胞に分化させるための出発材料として使用する。本明細書で使用される場合、「多能性」
または「多能性細胞」またはその等価物とは、細胞培養物中で増殖することができ、かつ
多分化能の性質を示す種々の系列限定的な細胞集団に分化することができる細胞を指し、
例えば、多能性ES細胞および人工多能性幹(iPS)細胞はどちらも、3種の胚細胞系
列のそれぞれを生じ得る。しかし、多能性細胞は、生物体全体を生成することはできない
場合がある。すなわち、多能性細胞は全能性ではない。
【0023】
ある特定の実施形態では、出発材料として使用される多能性細胞は、hES細胞、hE
G細胞、iPS細胞、さらには単為発生細胞などを含めた幹細胞である。本明細書で使用
される場合、「胚(embryonic)」とは、単一の接合体から始まり、もはや発生
した配偶子細胞以外の多能性または全能性細胞を含まない多細胞構造で終わる生物体の様
々な発生ステージを指す。「胚(embryonic)」という用語は、配偶子融合によ
って導出された胚に加えて、体細胞核移植によって導出された胚も指す。さらに別の実施
形態では、多能性細胞は胚から導出されたまたは直接導出されたものではなく、例えば、
iPS細胞は、非多能性細胞、例えば多分化能細胞または最終分化した細胞から導出され
たものである。
【0024】
ヒト多能性幹細胞は、分化を導く遺伝子の抑制および多能性の維持を確実にするコア調
節複合体を形成する転写因子Oct-4、Nanog、およびSox-2などのいくつか
の転写因子および細胞表面タンパク質、ならびに糖脂質SSEA3、SSEA4およびケ
ラタン硫酸抗原、Tra-1-60およびTra-1-81などの細胞表面抗原が存在す
ると定義または特徴付けることもできる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞」または「iPS細胞」または「iP
SC」という句は、非多能性細胞、一般には成体の体細胞、または、例えば線維芽細胞、
造血細胞、筋細胞、ニューロン、表皮細胞などの最終分化した細胞から、リプログラミン
グ因子と称される特定の遺伝子または遺伝子産物を挿入することによって人工的に調製さ
れた多能性幹細胞の一種を指す。その開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる、
Takahashiら、Cell、131:861-872(2007);Wernig
ら、Nature、448:318-324(2007);Parkら、Nature、
451:141-146(2008)を参照されたい。人工多能性幹細胞は、hES細胞
などの天然のヒト多能性幹細胞と、ある特定の幹細胞遺伝子およびタンパク質の発現、ク
ロマチンメチル化パターン、倍加時間、胚葉体形成、奇形腫形成、生存可能なキメラ形成
、ならびに発生能および分化可能性(differentiability)を含めた多
くの点で実質的に類似している。ヒトiPS細胞により、胚の使用を伴うことなく多能性
幹細胞の供給源がもたらされる。
【0026】
iPS細胞を生成するために様々な方法を用いることができ、それらは本明細書におい
て下でさらに詳細に記載される。しかし、全ての方法は、Sox-2、Oct-4、Na
nogおよび任意選択でLin-28をコードする発現カセット、またはSox-2、O
ct-4、Klf4および任意選択でc-mycをコードする発現カセット、またはSo
x-2、Oct-4および任意選択でEsrrbをコードする発現カセットなどの特定の
リプログラミング因子を用いる。これらのリプログラミング因子をコードする核酸は、同
じ発現カセット、異なる発現カセット、同じリプログラミングベクター、または異なるリ
プログラミングベクターの中にあってもよい。Oct-3/4およびSox遺伝子ファミ
リーの特定のメンバー(Sox-1、Sox-2、Sox-3およびSox-15)は、
その不在により誘導を不可能にする、誘導プロセスに関与する大事な転写制御因子である
。Oct-3/4(Pou5f1)は八量体(「Oct」)転写因子のファミリーの1つ
であり、多能性の維持で重要な役割をする。例えば、通常Oct-3/4+の細胞、例え
ば割球および胚性幹細胞中のOct-3/4の不在は、自発的な栄養芽細胞分化につなが
り、一方、Oct-3/4の存在は、胚性幹細胞の多能性および分化潜在能力をもたらす
。さらに、「Oct」ファミリーの他の遺伝子、例えばOct1およびOct6は多能性
を誘導せず、したがって、この多能性誘導プロセスはOct-3/4に帰することができ
る。Oct-3/4に類似の多能性の維持に関連する遺伝子の別のファミリーは、Sox
ファミリーである。しかし、Soxファミリーは多能性細胞型に限定的でなく、多分化能
および単能性幹細胞にも関連する。Soxファミリーは誘導プロセスでも働くことが見出
されている。上記Takahashiら、2006による初期研究では、Sox2が使用
された。それ以来、Sox1、Sox3、Sox15およびSox18遺伝子によっても
iPS細胞が生成されている。Klfファミリーの遺伝子(Klf-1、Klf2、Kl
f4およびKlf5)のKlf4は、当初はマウスiPS細胞の生成の因子として、上記
Yamanakaら2006によって同定された。本明細書において、S.Yamana
kaからのヒトiPS細胞は、hIPS細胞の細胞療法適用を探索するために使用した。
しかし、上記Yuら2007は、Klf4が必要とされないこと、および実際ヒトiPS
細胞を生成することができなかったことを報告した。Klf1、Klf2およびKlf5
を含むKlfファミリーの他のメンバーは、iPS細胞を生成することが可能である。最
後に、Mycファミリー(C-myc、L-mycおよびN-myc)、がんと結びつけ
られているがん原遺伝子;c-mycは、マウスおよびヒトのiPS細胞の生成と結びつ
けられた因子であったが、上記Yuら(2007)は、c-mycがヒトiPS細胞の生
成のために必要とされなかったことを報告した。
【0027】
本明細書で使用される場合、「多分化能」または「多分化能細胞」またはその等価物は
、限られた数の他の特定の細胞型を生じさせることができる細胞型を指す。すなわち、多
分化能細胞は1つまたは複数の胚細胞の運命に傾倒し、したがって、多能性細胞とは対照
的に、3種の胚細胞系列のそれぞれ、ならびに胚体外細胞を生じさせることができない。
多分化能体細胞は、多能性細胞よりも分化しているが、最終分化はしていない。したがっ
て、多能性細胞の発生能は多分化能細胞よりも高い。体細胞をリプログラミングすること
またはiPS細胞を生じさせるために使用することができる発生能決定因子としては、こ
れだけに限定されないが、Oct-4、Sox2、FoxD3、UTF1、Stella
、Rexl、ZNF206、Soxl5、Mybl2、Lin28、Nanog、DPP
A2、ESG1、Otx2またはこれらの組合せなどの因子が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「ERBB受容体チロシンキナーゼ活性化作用物質」とし
ては、これだけに限定されないが、ERBB受容体に結合する少なくとも16種の異なる
EGFファミリーリガンド:EGF(上皮成長因子)、AGまたはAREG(アンフィレ
ギュリン)、およびTGF-アルファ(形質転換成長因子-アルファ)、Btc(ベータ
セルリン)、HBEGF(ヘパリン結合性EGF)、およびEreg(エピレギュリン)
)、ニューレグリン-1、-2、-3および-4(またはヘレグリン-1、-2、-3お
よび-4などのニューグレリン(またはヘレグリン)が挙げられる。しかし、本発明では
、4種のERBB受容体のいずれか1つまたはこれらの組合せに結合して、内因性キナー
ゼドメインの活性化およびその後のリン酸化を導くホモ二量体受容体複合体およびヘテロ
二量体受容体複合体の形成を誘導することができる任意のリガンドが意図されている。表
11も参照されたい。
本明細書に記載されるインスリンの生成方法の一部の実施形態は、グルコース刺激に応
答してインスリンを分泌するインスリン生成細胞にin vivoで成熟することができ
る膵臓内胚葉細胞を動物に提供することによって、糖尿病の動物を処置するか、動物の血
液中のグルコース濃度を制御することを含むことができる。
【0028】
本明細書に記載される一態様は、適当な条件の下で培養されるときに異なる細胞系統に
選択的に、および一部の態様では選択的、可逆的に発達することが可能である、多能性ま
たは先駆細胞の集団を含む。本明細書で使用される場合、「集団」という用語は、同じ識
別特徴を有する複数の細胞の細胞培養物を指す。「細胞系列」という用語は、最も早期の
先駆細胞から完全成熟細胞(すなわち特殊化した細胞)までの細胞型の発達の全ステージ
を指す。「先駆細胞」または「前駆細胞」とは、細胞分化経路内の、より成熟した細胞に
分化することができる任意の細胞であってよい。そのように、先駆細胞は、多能性細胞で
あってもよく、部分的に分化した多分化能細胞または可逆的に分化した細胞であってもよ
い。「先駆細胞集団」という用語は、より成熟または分化した細胞型に発達することがで
きる細胞の群を指す。先駆細胞集団は、多能性の細胞、幹細胞系列に制限された細胞(す
なわち、外胚葉系列の全てには発達できない細胞、または、例えばニューロン系列の細胞
にのみ発達することができる細胞)、および可逆的に幹細胞系列に制限された細胞を含み
得る。したがって、「前駆細胞」または「先駆細胞」という用語は、「多能性細胞」また
は「多分化能細胞」であり得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「リプログラミング」、「リプログラミングされた」とい
う用語またはそれと同等の用語は、培養またはin vivoにおいて、リプログラミン
グなしで同じ条件下でそれが有するであろう能力よりも測定可能な程度高い、少なくとも
1つの新しい細胞型の後代を形成する能力を細胞に付与するプロセスを指す。本明細書に
記載される特定の実施形態では、体細胞は、多能性細胞に「リプログラミングされる」。
特定の態様では、十分な増殖の後に、in vivoまたはin vitro細胞培養に
おいて、測定可能な程度の割合の細胞が新しい多能性細胞型の表現型の特徴を提示すると
き、体細胞はリプログラミングされている。リプログラミングなしでは、そのような体細
胞は、新しい多能性細胞型の表現型の特徴を提示する後代を生成しないだろう。リプログ
ラミングなしでも体細胞が新しい多能性細胞型の表現型の特徴を提示する後代を生成する
ことができた場合は、これらの体細胞からの新しい多能性細胞型の表現型の特徴を提示す
る後代の割合は、リプログラミング前よりも測定可能な程度高い。
【0030】
本明細書で使用される場合、語句「分化プログラミング」は、培養またはin viv
oにおいて、分化リプログラミングなしで同じ条件下でそれが有するであろうよりも、新
しい分化状態の少なくとも1つの新しい細胞型の後代を形成するように細胞を変化させる
プロセスを指す。このプロセスには、分化、脱分化および分化転換が含まれる。したがっ
て、本明細書で使用される場合、語句「分化」は、より特殊化していない細胞がより特殊
化した細胞型になるプロセスを指す。対照的に、語句「脱分化」は、部分的または最終的
に分化した細胞がより初期の発達段階、例えば多能性または多分化能を有する細胞に戻る
細胞プロセスを指す。さらに対照的に、語句「分化転換」は、1つの分化細胞型を別の分
化細胞型に転換するプロセスを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「多能性細胞から発達する」、「多能性細胞から分化する
」、「多能性細胞から成熟する」または「多能性細胞から生成する」、「多能性細胞から
導出された」、「多能性細胞から分化する」という用語および等価の表現は、例えば、そ
の開示が参照により本明細書に完全に組み込まれる国際特許出願第PCT/US2007
/015536号、表題「METHODS OF PRODUCING PANCREA
TIC HORMONES」に記載の、in vivoにおいて移植されたPDX1膵臓
内胚葉細胞から成熟する内分泌細胞の場合では、in vitroまたはin vivo
において多能性細胞から分化した細胞型が生成することを指す。そのような用語は全て、
少なくとも2種の異なる細胞系列に分化する潜在性を有するステージから特殊化および最
終分化した細胞になるまでの細胞の進行を指す。そのような用語は、本出願の目的に関し
て互換的に使用することができる。本明細書に記載の実施形態では、そのような分化を可
逆的なものにし、したがって、多能性または少なくとも2種以上の細胞系列に分化する能
力を選択的に取り戻すことができるような培養条件が意図されている。
【0032】
「フィーダー細胞」という用語は、in vitroで成長し、少なくとも1種の因子
を細胞培養中に分泌し、また、培養物中の別の目的の細胞の成長を支持するために使用す
ることができる細胞培養物を指す。本明細書で使用される場合、「フィーダー細胞層」は
、「フィーダー細胞」という用語と互換的に使用され得る。フィーダー細胞は、培養皿の
表面がフィーダー細胞で、重なり合って増幅する前の完全な層で覆われた単層を含んでも
よく、細胞のクラスターを含んでよい。好ましい実施形態では、フィーダー細胞は、接着
性の単層を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、「クラスター」、「凝集塊」または「凝集体」という用語
は互換的に使用することができ、単細胞に解離していない一群の細胞を一般に指す。クラ
スターは、より小さいクラスターに解離することができる。この解離は本来一般的に手動
である(例えば、パスツールピペットを使用する)が、他の解離手段が企図される。凝集
懸濁多能性または多分化能細胞培養物は、実質的に、国際公開PCT/US2007/0
62755、表題COMPOSITIONS AND METHODS FOR CUL
TURING DIFFERENTIAL CELLSおよびPCT/US2008/0
82356、表題STEM CELL AGGREGATE SUSPENSION C
OMPOSITIONS AND METHODS OF DIFFERENTIATI
ON THEREOFに記載されている通りであり、それらは参照により本明細書に完全
に組み込まれる。
【0034】
同様に、多能性細胞培養物または多能性凝集懸濁培養物をフィーダー細胞の使用を伴わ
ない規定された条件において成長させる実施形態は「フィーダーフリー」である。フィー
ダーフリー培養方法では、多能性細胞培養物のスケーラビリティおよび再現性が増し、例
えばフィーダー細胞または他の動物を供給源とする培養物構成成分に由来する感染因子に
よるコンタミネーションのリスクが低下する。フィーダーフリー方法は、Bodnarら
に対する米国特許第6,800,480号(Geron Corporation、Me
nlo Park、Californiaに譲渡された)にも記載されている。しかし、
米国特許第6,800,480号特許とは対照的に、本明細書に記載の実施形態は、多能
性細胞培養物、多分化能細胞培養物または分化した細胞培養物のいずれであるかにかかわ
らず、フィーダーフリーであり、内在性または外因性の細胞外マトリックスをさらに含有
しない;すなわち、本明細書に記載の培養物は、フィーダーフリーであるだけでなく、細
胞外マトリックスフリーでもある。例えば、米国特許第6,800,480号では、線維
芽細胞を培養し、線維芽細胞をin situで溶解し、次いで、溶解後に残ったものを
洗浄することによって細胞外マトリックスが調製される。あるいは、米国特許第6,80
0,480号では、コラーゲン、胎盤マトリックス、フィブロネクチン、ラミニン、メロ
シン、テネイシン、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、アグリカン、
ビグリカン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、およびデコリンから選択される単離
されたマトリックス構成成分または構成成分の組合せからも細胞外マトリックスが調製さ
れ得る。本明細書に記載の実施形態では、フィーダー層または線維芽細胞層を成長させ、
細胞を溶解して細胞外マトリックスを生成することによって細胞外マトリックスを生成す
ることもなく、最初にコラーゲン、胎盤マトリックス、フィブロネクチン、ラミニン、メ
ロシン、テネイシン、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、アグリカン
、ビグリカン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、およびデコリンから選択される細
胞外マトリックス構成成分または細胞外マトリックス構成成分の組合せを用いて組織培養
容器をコーティングする必要もない。したがって、多能性細胞、多分化能細胞および分化
した細胞用の本明細書に記載の凝集懸濁培養物には、外因的に添加された細胞外マトリッ
クスまたはマトリックス構成成分である細胞外マトリックスコーティングを生成するフィ
ーダー層、溶解したフィーダー細胞または線維芽細胞は必要なく、参照により本明細書に
完全に組み込まれる国際出願PCT/US2008/080516、表題METHODS
AND COMPOSITIONS FOR FEEDER-FREE PLURIP
OTENT STEM CELL MEDIA CONTAINING HUMAN S
ERUMに記載の通り、可溶性ヒト血清構成成分の使用により、フィーダー細胞またはフ
ィーダー単層の必要性を克服し、同様に、フィーダー細胞もしくは線維芽細胞または外因
的に添加された細胞外マトリックス構成成分に由来する内在性の細胞外マトリックスの必
要性も克服される。
【0035】
好ましい実施形態では、培養方法は、動物を供給源とする産物を含まない。別の好まし
い実施形態では、培養方法はゼノフリーである。さらに好ましい実施形態では、本明細書
に記載の培養方法はヒト細胞治療薬の商業的な製造のための1つまたは複数の条件または
要件を満たすかまたはそれを上回っていた。
【0036】
多能性細胞の集団をある特定の補足的な成長因子の存在下でさらに培養して、異なる細
胞系列であるか、またはそれに発達することになる細胞の集団を得ることができ、または
、異なる細胞系列に発達することが可能になるように選択的に逆行させることができる。
「補足的な成長因子」という用語は、その最も広範な文脈で使用され、多能性細胞の成長
を促進するため、細胞の生存を維持するため、細胞の分化を刺激するため、および/また
は、細胞の分化の逆行を刺激するために有効である物質を指す。さらに、補足的な成長因
子は、フィーダー細胞からその培地中に分泌される物質であってよい。そのような物質と
しては、これだけに限定されないが、サイトカイン、ケモカイン、小分子、中和抗体、お
よびタンパク質が挙げられる。成長因子は、細胞の発生および維持ならびに組織の形態お
よび機能を制御する細胞間シグナル伝達ポリペプチドも含んでよい。好ましい実施形態で
は、補足的な成長因子は、幹細胞因子(steel cell factor)(SCF
)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン
-6(IL-6)と可溶性インターロイキン-6受容体(IL-6R)の組合せ、線維芽
細胞成長因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、腫瘍壊死因子(TNF)、およ
び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)からなる群から選択される。
【0037】
本明細書に記載の細胞を生成するためのある特定のプロセスでは、成長因子を、添加後
に細胞培養物または細胞集団から除去する。例えば、アクチビンA、アクチビンB、GD
F-8、またはGDF-11などの成長因子を添加し、それらを添加してから約1日以内
、約2日以内、約3日以内、約4日以内、約5日以内、約6日以内、約7日以内、約8日
以内、約9日以内または約10日以内に除去することができる。一部の実施形態では、分
化因子を細胞培養物から除去することはしない。
【0038】
分化プロセスの効率は、これだけに限定されないが、細胞の成長条件、成長因子濃度お
よび培養ステップのタイミングを含めたある特定のパラメータを改変することによって調
整することができるので、本明細書に記載の分化手順により、約5%、約10%、約15
%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55
%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95
%、または約95%超の、人工多能性細胞を含む多能性細胞から多分化能細胞または分化
した細胞、例えば、胚体内胚葉、前腸内胚葉、PDX1陽性前腸内胚葉、PDX1陽性膵
臓内胚葉またはPDX1/NKX6.1共陽性膵臓内胚葉、内分泌先駆体またはNGN3
/NKX2.2共陽性内分泌先駆体、およびホルモン分泌内分泌細胞またはINS、GC
G、GHRL、SST、PP単独陽性内分泌細胞への変換をもたらすことができる。前原
条(preprimitive streak)細胞または中内胚葉細胞の単離を使用す
るプロセスでは、実質的に純粋な前原条細胞または中内胚葉細胞集団を回収することがで
きる。
【0039】
多能性幹細胞から導出された様々な細胞組成物が、本明細書に記載される。一実施形態
は、iPS細胞およびそれから導出された細胞を含む。本明細書に記載される実施形態に
関連するが異なるさらに他のプロセスおよび組成物は、2003年12月23日に出願の
米国特許仮出願第60/532,004号、表題DEFINITIVE ENDODER
M;2004年4月27日に出願の米国特許仮出願第60/566,293号、表題PD
X1 EXPRESSING ENDODERM;2004年7月9日に出願の米国特許
仮出願第60/586,566号、表題CHEMOKINE CELL SURFACE
RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIV
E ENDODERM;2004年7月14日に出願の米国特許仮出願第60/587,
942号、表題CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR F
OR THE ISOLATION OF DEFINITIVE ENDODERM;
2004年12月23日に出願の米国特許出願第11/021,618号、表題DEFI
NITIVE ENDODERM、および2005年4月26日に出願の米国特許出願第
11/115,868号、表題PDX1 EXPRESSING ENDODERM;2
005年6月23日に出願の米国特許出願第11/165,305号、表題METHOD
S FOR IDENTIFYING FACTORS FOR DIFFERENTI
ATING DEFINITIVE ENDODERM;2005年10月27日に出願
の米国特許仮出願第60/730,917号、表題PDX1-EXPRESSING D
ORSAL AND VENTRAL FOREGUT ENDODERM;2005年
11月14日に出願の米国特許仮出願第60/736,598号、表題MARKERS
OF DEFINITIVE ENDODERM;2006年3月2日に出願の米国特許
仮出願第60/778,649号、表題INSULIN-PRODUCING CELL
S AND METHOD OF PRODUCTION;2006年7月26日に出願
の米国特許仮出願第60/833,633号、表題INSULIN-PRODUCING
CELLS AND METHOD OF PRODUCTION;2006年10月
18日に出願の米国特許仮出願第60/852,878号、表題ENRICHMENT
OF ENDOCRINE PRECURSOR CELLS,IMMATURE PA
NCREATIC ISLET CELLS AND MATURE PANCREAT
IC ISLET CELLS USING NCAM;2006年10月27日に出願
の米国特許出願第11/588,693号、表題PDX1-EXPRESSING DO
RSAL AND VENTRAL FOREGUT ENDODERM;2007年3
月2日に出願の米国特許出願第11/681,687号、表題ENDOCRINE PR
ECURSOR CELLS,PANCREATIC HORMONE-EXPRESS
ING CELLS AND METHODS OF PRODUCTION;2007
年7月5日に出願の米国特許出願第11/773,944号、表題METHODS OF
PRODUCING PANCREATIC HORMONES;2007年9月13
日に出願の米国特許出願第60/972,174号、表題METHODS OF TRE
ATMENT FOR DIABETES;2007年9月24日に出願の米国特許出願
第11/860,494号、表題METHODS FOR INCREASING DE
FINITIVE ENDODERM PRODUCTION;2007年10月3日に
出願の米国特許出願第60/977,349号、表題CELL SURFACE MAR
KERS OF HUMAN EMBRYONIC STEM CELLS AND C
ANCER STEM CELLS;および2008年4月8日に出願の米国特許出願第
12/099,759号、表題METHODS OF PRODUCING PANCR
EATIC HORMONES;および2008年4月21日を出願の米国特許出願第1
2/107,020号、表題METHODS FOR PURIFYING ENDOD
ERM AND PANCREATIC ENDODERM CELLS DERIVE
D FORM HUMANE EMBRYONIC STEM CELLSに見出すこと
ができ、それらの開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0040】
hES細胞から導出された内胚葉系列細胞を生成するための一般的な方法は、上記の関
連する米国特許出願、ならびにD’Amourら、2005 Nat Biotechn
ol.23:1534-41、およびD’Amourら、2006 Nat Biote
chnol.24(11):1392-401に記載され、それらの開示は参照により本
明細書に完全に組み込まれる。D’Amourらにより、5段階の分化プロトコル:ステ
ージ1(大部分は胚体内胚葉生成がもたらされる)、ステージ2(大部分はPDX1陰性
前腸内胚葉生成がもたらされる)、ステージ3(大部分はPDX1陽性前腸内胚葉生成が
もたらされる)、ステージ4(大部分は膵臓内胚葉または膵臓内分泌前駆体生成がもたら
される)およびステージ5(大部分はホルモン発現内分泌細胞生成がもたらされる)が記
載されている。
【0041】
「栄養外胚葉」という用語は、HAND1、Eomes、MASH2、ESXL1、H
CG、KRT18、PSG3、SFXN5、DLX3、PSX1、ETS2、およびER
BB遺伝子からなる群から選択されるマーカーの発現が、非栄養外胚葉細胞または細胞集
団におけるHAND1、Eomes、MASH2、ESXL1、HCG、KRT18、P
SG3、SFXN5、DLX3、PSX1、ETS2、およびERBBの発現レベルと比
較して相対的に高い多分化能細胞を指す。
【0042】
「胚体外内胚葉」は、SOX7遺伝子、SOX17遺伝子、THBD遺伝子、SPAR
C遺伝子、DAB1遺伝子、またはAFP遺伝子からなる群から選択されるマーカーの発
現レベルが、非胚体外内胚葉細胞または細胞集団におけるSOX7、SOX17、THB
D、SPARC、DAB1、またはAFPの発現レベルと比較して相対的に高い多分化能
細胞を指す。
【0043】
「前原条細胞」という用語は、FGF8マーカー遺伝子および/またはNODALマー
カー遺伝子の発現レベルが、BRACHURY低、FGF4低、SNAI1低、SOX1
7低、FOXA2低、SOX7低およびSOX1低と比較して相対的に高い多分化能細胞
を指す。
【0044】
「中内胚葉細胞」という用語は、brachyuryマーカー遺伝子、FGF4、SN
AI1、MIXL1および/またはWNT3マーカー遺伝子の発現レベルが、SOX17
低、CXCR4低、FOXA2低、SOX7低およびSOX1低と比較して相対的に高い
多分化能細胞を指す。
【0045】
「胚体内胚葉(DE)」という用語は、腸管または腸管から導出された器官の細胞に分
化することができる多分化能内胚葉系列細胞を指す。ある特定の実施形態によると、胚体
内胚葉細胞は哺乳動物細胞であり、好ましい実施形態では、胚体内胚葉細胞はヒト細胞で
ある。本発明の一部の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、ある特定のマーカーを発現する
、またはある特定のマーカーを有意に発現することができない。一部の実施形態では、S
OX17、CXCR4、MIXL1、GATA4、HNF3β、GSC、FGF17、V
WF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1およびCRIP1から選択される1種また
は複数種のマーカーが胚体内胚葉細胞において発現される。他の実施形態では、OCT4
、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、トロンボモジュリン(TM)、SPARC、
SOX7およびHNF4アルファから選択される1種または複数種のマーカーが胚体内胚
葉細胞において発現されないまたは有意には発現されない。胚体内胚葉細胞集団およびそ
れを生成する方法は、米国特許出願第11/021,618号、表題DEFINITIV
E ENDODERM、2004年12月23日出願にも記載され、それは本明細書に完
全に組み込まれる。
【0046】
さらに他の実施形態は、「PDX1陰性前腸内胚葉細胞」または「前腸内胚葉細胞」と
呼ばれる細胞培養物、またはその同等物に関する。一部の実施形態では、前腸内胚葉細胞
は、SOX17、HNF1β(HNF1B)、HNF4アルファ(HNF4A)およびF
OXA1マーカーを発現するが、PDX1、AFP、SOX7またはSOX1を実質的に
発現しない。PDX1陰性前腸内胚葉細胞集団およびその生成方法も、2006年10月
27日に出願の米国特許出願第11/588,693号、表題PDX1-express
ing dorsal and ventral foregut endodermに
記載され、それは参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0047】
本明細書に記載される他の実施形態は、「PDX1陽性の背側に偏った前腸内胚葉細胞
」(背側のPDX1陽性前腸内胚葉細胞)または単に「PDX1陽性内胚葉」の細胞培養
物に関する。一部の実施形態では、PDX1陽性内胚葉細胞は、表1から選択される1つ
または複数のマーカーおよび/または表2から選択される1つまたは複数のマーカーを発
現し、これらも同様に、2006年10月27日に出願の関連する米国特許出願第11/
588,693号、表題PDX1 EXPRESSING DOSAL AND VEN
TRAL FOREGUT ENDODERM、および2005年4月26日に出願の米
国特許出願第11/115,868号、表題PDX1-expressing endo
dermに記載され、これらは参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【表1】
【表2】
【0048】
本明細書に記載される方法によって生成されるものなどのPDX1陽性前腸内胚葉細胞
は、完全に分化した膵臓ホルモン分泌または内分泌細胞、例えばインスリン生成β細胞を
生成するために使用することができる前駆体である。本発明の一部の実施形態では、PD
X1陽性前腸内胚葉細胞は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞を形成するように、PDX1を
実質的に発現しない胚体内胚葉細胞(PDX1陰性胚体内胚葉細胞;本明細書では胚体内
胚葉とも呼ばれる)を分化させることによって生成される。
【0049】
本明細書で使用される場合、「膵臓内胚葉」、「膵臓上皮(pancreatic e
pithelial)」、「膵臓上皮(pancreatic epithelium)
」(全て「PE」と省略することができる)「膵臓前駆体」、「PDX-1陽性膵臓内胚
葉または膵臓内胚葉細胞(「PEC」)などのその等価物は全て、先駆または前駆膵臓細
胞である。本明細書に記載のPECは、ステージ4分化(約12~14日目)後の前駆細
胞集団であり、少なくとも2つの主要な別個の集団:i)NKX6.1を発現するが、C
HGAを発現しない(またはCHGA陰性、CHGA-)膵臓前駆細胞;およびii)C
HGAを発現する複数ホルモン性(polyhormonal)内分泌細胞(CHGA陽
性、CHGA+)を含む。理論に束縛されることなく、NKX6.1を発現するがCHG
Aを発現しない細胞集団は、PECのより活性かつ治療的な構成成分であると仮定され、
一方、CHGA陽性複数ホルモン性内分泌細胞の集団はin vivoでグルカゴン発現
膵島細胞にさらに分化および成熟すると仮定される。それらの開示はともに参照により本
明細書に完全に組み込まれる、Kellyら(2011)Cell-surface m
arkers for the isolation of pancreatic c
ell types derived from human embryonic s
tem cells、Nat Biotechnol.29(8):750-756、2
011年7月31日オンライン出版およびSchulzら(2012)、A Scala
ble System for Production of Functional
Pancreatic Progenitors from Human Embryo
nic Stem Cells、PLosOne 7(5):1-17、e37004を
参照されたい。
さらに、時には、膵臓内胚葉細胞は、すぐ上に記載されているPECを指すのではなく
、一般に少なくともステージ3およびステージ4型細胞を指して使用される。使用および
意味は文脈から明らかになろう。このように多能性幹細胞、ならびに少なくともhES細
胞およびhIPS細胞から導出される膵臓内胚葉は、他の内胚葉系の系列細胞型とは、P
DX1、NKX6.1、PTF1A、CPA1、cMYC、NGN3、PAX4、ARX
およびNKX2.2マーカーから選択されるマーカーの発現が差次的または高いレベルで
あるが、膵臓内分泌細胞の特質である遺伝子、例えばCHGA、INS、GCG、GHR
L、SST、MAFA、PCSK1およびGLUT1は実質的に発現しないことに基づい
て区別される。さらに、NGN3を発現するいくつかの「内分泌前駆細胞」は他の非膵臓
構造(例えば、十二指腸)に分化することができる。一実施形態では、本明細書に記載さ
れるNGN3発現内分泌前駆体は、成熟した膵臓系列細胞、例えば膵臓内分泌細胞に分化
する。膵臓内胚葉または内分泌前駆細胞集団およびその方法は、米国特許出願第11/7
73,944号、表題Methods of producing pancreati
c hormones、2007年7月5日出願、および米国特許出願第12/107,
020号、表題METHODS FOR PURIFYING ENDODERM AN
D PANCREATIC ENDODERM CELLS DERIVED FORM
HUMAN EMBRYONIC STEM CELLS、2008年4月21日出願
にも記載され、それらの開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「内分泌先駆細胞」は、ニューロゲニン3(NEUROG
3)を発現し、限定されずに膵島ホルモン発現細胞などの内分泌系の細胞にさらに分化す
ることができる、胚体内胚葉系列の多分化能細胞を指す。内分泌先駆細胞は、より低い特
異性で分化した胚体内胚葉系列細胞、例えばPDX1陽性膵臓内胚葉細胞と比較して、同
じくらい多くの異なる細胞、組織および/または器官タイプには分化することができない
【0051】
本明細書で使用される場合、「膵島ホルモン発現細胞」、「膵臓内分泌細胞」またはそ
の同等物は、in vitroで多能性細胞から誘導された、複数ホルモン性または単一
ホルモン性であってもよい細胞を指す。したがって、内分泌細胞は、ヒト膵島細胞の機能
の少なくとも一部を有する、1つまたは複数の膵臓ホルモンを発現することができる。膵
島ホルモン発現細胞は、成熟していても未熟であってもよい。未熟な膵島ホルモン発現細
胞は、特定のマーカーの差次的発現に基づくか、それらの機能的能力、例えばグルコース
応答性に基づいて、成熟した膵島ホルモン発現細胞から区別することができる。
【0052】
本明細書に記載の実施形態では、限定培地、馴化培地、フィーダーフリー培地、無血清
培地などを含めた多くの幹細胞培地培養物または成長環境が想定される。本明細書で使用
される場合、「成長環境」または「環境」という用語またはその等価物は、未分化の幹細
胞または分化した幹細胞(例えば、霊長類胚性幹細胞)がin vitroで増殖する環
境である。環境の特徴は、細胞を培養する培地、および存在する場合には支持構造(例え
ば、固体表面上の基質など)を含む。多能性細胞を培養または維持するためおよび/また
は多能性細胞を分化させるための方法は、PCT/US2007/062755、表題C
OMPOSITIONS AND METHODS USEFUL FOR CULTU
RING DIFFERENTIABLE CELLS、2007年2月23日出願;米
国特許出願第11/993,399号、表題EMBRYONIC STEM CELL
CULTURE COMPOSITIONS AND METHODS OF USE
THEREOF、2007年12月20日出願;および米国特許出願第11/875,0
57号、表題Methods and compositions for feede
r-free pluripotent stem cell media conta
ining human serum、2007年10月19日出願にも記載され、それ
らの開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0053】
「本質的に」または「実質的に」という用語は、ある成分または細胞が、最小または少
ない量で任意の細胞凝集懸濁液タイプ、例えば本明細書に記載される懸濁液中の細胞凝集
体中に存在することが、「本質的または実質的に均一」、「本質的または実質的にホモ細
胞性」であること、あるいは、「本質的にhES細胞」、「本質的または実質的に胚体内
胚葉細胞」、「本質的または実質的に前腸内胚葉細胞」、「本質的または実質的にPDX
1陰性前腸内胚葉細胞」、「本質的または実質的にPDX1陽性前膵臓内胚葉細胞」、「
本質的または実質的にPDX1陽性膵臓内胚葉または前駆細胞」、「本質的または実質的
にPDX1陽性膵臓内胚葉端細胞」、「本質的または実質的に膵臓内分泌先駆細胞」、「
本質的または実質的に膵臓内分泌細胞」等で構成されることを意味する。
【0054】
細胞培養中または細胞集団内の細胞に関して、「を実質的に含まない」という用語は、
細胞培養物または細胞集団が含まれないと特定された細胞型が、細胞培養物または細胞集
団中に存在する細胞の総数の約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6
%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満の量で存在
することを意味する。
【0055】
細胞培養物は、含有する血清が減少しているまたは血清を実質的に含まないまたは血清
を含まない培地中で成長させることができる。ある特定の培養条件下で、血清濃度は約0
%(v/v)から約10%(v/v)の範囲とすることができる。例えば、いくつかの分
化プロセスでは、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v
)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)
未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未
満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%未満(v/v)、約
2%未満(v/v)、約3%未満(v/v)、約4%未満(v/v)、約5%未満(v/
v)、約6%未満(v/v)、約7%未満(v/v)、約8%未満(v/v)、約9%未
満(v/v)または約10%(v/v)未満であってよい。いくつかのプロセスでは、血
清を用いずに、または血清代替物を用いずに前原条細胞を成長させる。さらに他のプロセ
スでは、B27の存在下で前原条細胞を成長させる。そのようなプロセスでは、B27サ
プリメントの濃度は約0.1%(v/v)から約20%(v/v)までにわたってよい。
【0056】
さらに他のプロセスでは、B27の存在下で未成熟膵島ホルモン発現細胞を成長させる
。そのようなプロセスでは、B27サプリメントの濃度は約0.1%(v/v)から約2
0%(v/v)までの範囲であってもよく、約20%(v/v)を超える濃度であっても
よい。ある特定のプロセスでは、培地中のB27の濃度は、約0.1%(v/v)、約0
.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v
)、約0.6%(v/v)、約0.7%(v/v)、約0.8%(v/v)、約0.9%
(v/v)、約1%(v/v)、約2%(v/v)、約3%(v/v)、約4%(v/v
)、約5%(v/v)、約6%(v/v)、約7%(v/v)、約8%(v/v)、約9
%(v/v)、約10%(v/v)、約15%(v/v)または約20%(v/v)であ
る。あるいは、添加するB27サプリメントの濃度は、市販のB27ストック溶液の強度
の倍数として測定することができる。例えば、B27はInvitrogen(Carl
sbad、CA)から50×ストック溶液として入手可能である。十分な量のこのストッ
ク溶液を十分な体積の成長培地に添加することにより、所望の量のB27が補充された培
地を生成する。例えば、50×B27ストック溶液10mlを成長培地90mlに添加す
ることにより、5×B27が補充された成長培地を生成することになる。培地中のB27
サプリメントの濃度は、約0.1×、約0.2×、約0.3×、約0.4×、約0.5×
、約0.6×、約0.7×、約0.8×、約0.9×、約1×、約1.1×、約1.2×
、約1.3×、約1.4×、約1.5×、約1.6×、約1.7×、約1.8×、約1.
9×、約2×、約2.5×、約3×、約3.5×、約4×、約4.5×、約5×、約6×
、約7×、約8×、約9×、約10×、約11×、約12×、約13×、約14×、約1
5×、約16×、約17×、約18×、約19×、約20×および約20×超であってよ
い。
【0057】
本明細書で使用される場合、例えば成長因子、分化因子などの「外因的に添加された」
化合物とは、培養物または馴化培地に関しては、培養物または培地にすでに存在していて
もよい任意の化合物または成長因子を補うために培養物または培地に添加される成長因子
を指す。例えば、一部の実施形態では、細胞培養物および/または細胞集団は、外因的に
添加されたレチノイドを含まない。
【0058】
本明細書で使用される場合、「レチノイド」とは、レチノール、レチナールまたはレチ
ノイン酸ならびにこれらの化合物のいずれかの誘導体を指す。好ましい実施形態では、レ
チノイドはレチノイン酸である。
【0059】
「FGFファミリー成長因子」、「線維芽細胞成長因子」または「線維芽細胞成長因子
ファミリーのメンバー」は、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FG
F6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF1
3、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FG
F20、FGF21、FGF22およびFGF23からなる群から選択されるFGFを意
味する。一部の実施形態では、「FGFファミリー成長因子」、「線維芽細胞成長因子」
または「線維芽細胞成長因子ファミリーのメンバー」とは、公知の線維芽細胞成長因子フ
ァミリーのメンバーとの相同性および/またはそれと同様の機能を有する任意の成長因子
を意味する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「発現」は、材料または物質の生成ならびに材料または物
質の生成のレベルまたは量を指す。したがって、特定のマーカーの発現を決定することと
は、発現されるマーカーの相対量または絶対量を検出することまたは単にマーカーが存在
するかしないかを検出することを指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「マーカー」は、観察または検出することができる任意の
分子を指す。例えば、マーカーとしては、これだけに限定されないが、特定の遺伝子の転
写物などの核酸、遺伝子のポリペプチド産物、非遺伝子産物ポリペプチド、糖タンパク質
、炭水化物、糖脂質、脂質、リポタンパク質または小分子(例えば、分子量が10,00
0amu未満の分子)を挙げることができる。
【0062】
本明細書に記載の大多数のマーカーについて、公式のHuman Genome Or
ganization(HUGO)遺伝子記号が提供される。HUGO Gene No
menclature Committeeにより開発されるそのような記号により、命
名されたヒト遺伝子および遺伝子産物のそれぞれに対して特有の略語が提供される。当業
者はこれらの遺伝子記号を容易に認識することができ、また、対応する独特のヒト遺伝子
および/またはタンパク質配列と容易に関連付けることができる。
【0063】
HUGOによる名称によると、以下の遺伝子記号は次のように定義される:GHRL-
グレリン;IAPP-島アミロイドポリペプチド;INS-インスリン;GCG-グルカ
ゴン;ISL1-ISL1転写因子;PAX6-ペアードボックス遺伝子6;PAX4-
ペアードボックス遺伝子4;NEUROG3-ニューロゲニン3(NGN3);NKX2
-2-NKX2転写因子関連遺伝子座2(NKX2.2);NKX6-1-NKX6転写
因子関連遺伝子座1(NKX6.1);IPF1-インスリンプロモーター 因子1(P
DX1);ONECUT1-ワンカットドメイン、ファミリーメンバー1(HNF6);
HLXB9-ホメオボックスB9(HB9);TCF2-転写因子2、肝臓(HNF1b
);FOXA1-フォークヘッドボックスA1;HGF-肝細胞成長因子;IGF1-イ
ンスリン様成長因子1;POU5F1-POUドメイン、クラス5、転写因子1(OCT
4);NANOG-Nanogホメオボックス;SOX2-SRY(性決定領域Y)-ボ
ックス2;CDH1-カドヘリン1、1型、E-カドヘリン(ECAD);T-brac
hyuryホモログ(BRACH);FGF4-線維芽細胞成長因子4;WNT3-無翅
型MMTV組み込み部位ファミリー、メンバー3;SOX17-SRY(性決定領域Y)
-ボックス17;GSC-グースコイド;CER1-(ケルベロス1、システインノット
スーパーファミリー、ホモログ(CER);CXCR4-ケモカイン(C-X-Cモチー
フ)受容体4;FGF17-線維芽細胞成長因子17;FOXA2-フォークヘッドボッ
クスA2;SOX7-SRY(性決定領域Y)-ボックス7;SOX1-SRY(性決定
領域Y)-ボックス1;AFP-アルファ-フェトプロテイン;SPARC-分泌タンパ
ク質、酸性、システインリッチ(オステオネクチン);およびTHBD-トロンボモジュ
リン(TM)、NCAM-神経系細胞接着分子;SYP-シナプトフィジン;ZIC1-
Zicファミリーメンバー1;NEF3-神経フィラメント3(NFM);SST-ソマ
トスタチン;MAFA-v-maf筋腱膜線維肉腫癌遺伝子ホモログA;MAFB-v-
maf筋腱膜線維肉腫癌遺伝子ホモログB;SYP-シナプトフィジン;CHGA-クロ
モグラニンA(副甲状腺分泌型タンパク質1)。
【0064】
非HUGO遺伝子記号に対応する完全遺伝子名、ならびに本明細書で使用することがで
きる他の略記号を以下に提供する:SS-ソマトスタチン(SOM);PP-膵臓ポリペ
プチド;Cペプチド-接続ペプチド;Ex4-エキセンディン4;NIC-ニコチンアミ
ドおよびDAPT-N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル)-L-アラニル]-
S-フェニルグリシンt-ブチルエステル;RA-レチノイン酸;RPMI-Roswe
ll Park Memorial Institute培地;CMRL-Connau
ght Medical Research Labs培地;FBS-ウシ胎児血清;N
BP 10-NCAM結合タンパク質10;PTF1a-膵臓特異的転写因子1a。
【0065】
多能性細胞から種々の多分化能および/または分化した細胞への進行は、遺伝子、また
は遺伝子マーカーの相対的な発現量、特定の細胞の特性を、第2の遺伝子または対照遺伝
子、例えばハウスキーピング遺伝子の発現と比較して決定することによってモニタリング
することができる。いくつかのプロセスでは、ある特定のマーカーの発現を、マーカーが
存在するかしないかを検出することによって決定する。あるいは、ある特定のマーカーの
発現は、細胞培養物または細胞集団の細胞中でマーカーが存在するレベルを測定すること
によって決定することができる。そのようなプロセスでは、マーカーの発現の測定は定性
的であっても定量的であってもよい。マーカー遺伝子によって生成するマーカーの発現を
定量化する1つの方法は、定量的PCR(Q-PCR)を使用することによるものである
。Q-PCRを実施する方法は当技術分野で周知である。当技術分野で公知の他の方法も
、マーカー遺伝子発現を定量化するために使用することができる。例えば、マーカー遺伝
子の発現産物は、目的のマーカー遺伝子産物に特異的な抗体を使用することによって検出
することができる。
【0066】
いくつかのプロセスでは、以下の遺伝子の高発現により、細胞のある特定の集団が示さ
れる。例えば、SOX17、SOX7、AFPまたはTHBDにより胚体外内胚葉が示さ
れ、NODALおよび/またはFGF8により前原条が示され、brachyury、F
GF4、SNAI1および/またはWNT3により中内胚葉が示され、CER、GSC、
CXCR4、SOX17およびFOXA2により胚体内胚葉細胞が示され、SOX17、
FOXA2、FOXA1、HNF1BおよびHNF4Aにより前腸内胚葉(またはPDX
1陰性内胚葉)が示され、PDX1、HNF6、SOX9およびPROX1によりPDX
1陽性内胚葉が示され、PDX1、NKX6.1、PTFA1、CPAおよびcMYCに
より膵臓上皮(PEまたは膵臓前駆体)が示され、NGN3、PAX4、ARXおよびN
KX2.2により内分泌先駆細胞が示され、INS、GCG、GHRL、SSTおよびP
Pにより種々の内分泌細胞が示され、MAFA遺伝子発現がMAFB遺伝子発現に対して
相対的に高いことにより、インスリン分泌内分泌細胞が示され、MAFA遺伝子発現に対
するMAFBの相対的な高発現により、グルカゴン分泌内分泌細胞が示される。
【0067】
用語線維芽細胞成長因子7(FGF7)およびケラチノサイト成長因子(KGF)は、
同義である。
【0068】
人工多能性幹(iPS)細胞を生成するための方法
本明細書に記載の実施形態は、いかなる1つの型のiPS細胞にも、いかなる1つのi
PS細胞の生成方法にも限定されない。種々の方法が存在するので、実施形態は限定的な
ものではない、またはiPS細胞の生成の効率のレベルに左右される。本明細書に記載の
実施形態はiPS細胞の内胚葉系列細胞への分化およびその使用にあてはまる。
【0069】
アデノウイルス、プラスミド、またはCre-loxP3もしくはpiggy BAC
転位を使用したリプログラミング因子の切除を使用する、人工多能性幹細胞(iPSC)
を生じさせるためのウイルスによる方法、ウイルスによらない方法および非組込み型ウイ
ルスによる方法が記載されている。参照により本明細書に完全に組み込まれる、Stad
tfeld,M.ら、Science 322、945-949(2008);Okit
a,K.ら、Science 322、949-953(2008);Kaji,K.ら
、Nature 458、771-775(2009);Soldner,F.ら、Ce
ll 136、964-977(2009);およびWoltjen,K.ら、Natu
re 458、766-770(2009)を参照されたい。同様に、それらもまた参照
により本明細書に完全に組み込まれる、Mack,A.らに対する米国特許出願公開第2
0100003757号(2010年1月7日公開)およびShiらに対するPCT/U
S2009/037429も参照されたい。しかし、これらの方法のリプログラミング効
率は低く(<0.003%)、切除にもかかわらずベクター配列が残留する可能性があり
、それにより、それらの治療への適用が限定される。例えば、上記の転写因子の宿主ゲノ
ムへのウイルスによる組み込みおよび過剰発現は腫瘍形成に関連付けられており、導入遺
伝子の発現が残留することは、ES細胞およびiPS細胞を区別する潜在的な特徴である
。参照により本明細書に完全に組み込まれる、Solder,F.ら、Cell 136
:964-977(2009);Fosterら、Oncogene 24:1491-
1500(2005);およびHochedlinger,K.ら、Cell 121:
465-477(2005)を参照されたい。
【0070】
本発明の他の実施形態では、iPSCを生じさせるための方法はエプスタイン・バーウ
イルス由来のエピソームベクターを含む。参照により本明細書に完全に組み込まれる、Y
u,J.ら、Science324、797-801(2009)およびMack,A.
らに対する米国特許出願公開第20100003757号、2010年1月7日公開を参
照されたい。これらの方法では、癌遺伝子SV40を含めた7種の因子の組合せを有する
3つの別々のプラスミドが必要である。
【0071】
本発明の別の実施形態では、iPSCを生じさせるための方法は、マウス細胞およびヒ
ト胎児細胞および新生児細胞由来のタンパク質に基づくiPSCを含む。参照により本明
細書に完全に組み込まれる、Zhou,H.ら、Cell Stem Cell 4、3
81-384(2009);およびKim,D.ら、Cell Stem Cell 4
、472-476(2009)を参照されたい。これらの方法体系は、化学的処理(例え
ば、Zhouら、2009、上記の場合ではバルプロ酸)または多数回の処理(Kimら
、2009、上記)を使用して実現される。
【0072】
本発明の別の実施形態では、細菌の複製開始点および抗生物質耐性遺伝子を欠くスーパ
ーコイルDNA分子であるミニサークルベクターまたはプラスミドを使用することができ
る。参照により本明細書に完全に組み込まれる、Chen、Z.-Y.ら、Mol. T
her. 8、495-500(2003);Chen、Z.-Y.ら、Hum. Ge
ne Ther. 16、126-131(2005);およびJia,Fら、Natu
re Methods Advance Publication Online 7
February 2010を参照されたい。これらの方法体系では、外因性サイレンシ
ング機構の活性化が低いので、より高いトランスフェクション効率およびより長期の異所
性発現でiPSCが生じる。
【0073】
本発明のさらに別の実施形態では、糖尿病患者、ALS、脊椎筋ジストロフィーおよび
パーキンソン患者を含めた種々の疾患のヒト患者からiPS細胞を生じさせることができ
る。参照により本明細書に完全に組み込まれる、Maehrら、PNAS USA 10
6(37):15768-73(2009);Dimosら、Science、321:
1218-21(2008);Ebertら、Nature 457:277-80(2
009);Parkら、Cell 134:877-886(2008);およびSol
dnerら、Cell 136:964-977を参照されたい。特定の疾患を有する患
者からhIPS細胞を生成することの少なくとも1つの利点は、導出された細胞がヒト疾
患の遺伝子型および細胞応答を含有することである。現存するヒトiPS細胞株の少なく
とも一部が列挙されている表3も参照されたい。この情報は、文献および例えばNati
onal Institutes of Health(NIH) Stem Cell
Registry,the Human Embryonic Stem Cell
RegistryおよびUniversity of Massachusetts M
edical School,Worcester,Massachusetts,US
AにあるInternational Stem Cell Registryを含めた
公的に利用可能なデータベースから得られるものである。これらのデータベースは、細胞
株が利用可能になり登録が得られた時に定期的に更新されている。
本明細書に記載の組成物および方法の複数の実施形態では、これだけに限定されないが
、CyT49、CyT212、CyT203、CyT25、(少なくとも本出願の出願時
に、ViaCyte Inc.、3550 General Atpmics Cour
t、San Deigo CA 92121から市販されていた)、BGO1、BG02
およびMEL1を含めたhESCなどのヒト多能性幹細胞、ならびにiPSC-482c
7およびiPSC-603(Cellular Dynamics Internati
onal、Inc.、Madison、Wisconsin)、ならびにiPSC-G4
(以下「G4」)およびiPSC-B7(以下、「B7」)(Shinya Yaman
aka、Center for iPS Cell Research、Kyoto U
niversity)などの人工多能性幹(iPS)細胞を含めた種々の分化可能な霊長
類多能性幹細胞の使用が意図されており、G4およびB7を使用した試験は、本明細書に
詳しく記載されている。ある特定のこれらのヒト多能性幹細胞はNational In
stitutes of Health(NIH)などの国際登録機関に登録され、NI
H Human Stem Cell Registryに列挙されている(例えば、C
yT49の登録番号は0041である)。他の入手可能な細胞株はstemcells.
nih.gov/research/registryのワールドワイドウェブにも見出
すことができる。さらに他の細胞株、例えば、BG01およびBGO1vは、それぞれW
isconsin International Stem Cell(WISC)Ba
nkの関係団体であるWiCell(登録商標)(カタログ名、BG01)およびATC
C(カタログ番号SCRC-2002)によって第三者に販売および配布されている。本
明細書に記載の他の細胞株はWiCell(登録商標)またはATCCなどの生物学的リ
ポジトリによって登録または配布されていない場合があるが、そのような細胞株は原理研
究者、研究室および/または施設から直接または間接的に公に入手可能である。細胞株お
よび試薬の公開要求は、例えば生命科学の当業者にとっては通例である。一般には、これ
らの細胞または材料の譲渡は、細胞株または材料の所有者と受取人の間の標準の材料譲渡
契約を介する。これらの型の材料譲渡は、特に生命科学における研究環境では頻繁に生じ
る。実際、出願人は、CyT49(2006)、CyT203(2005)、Cyt21
2(2009)、CyT25(2002)、BG01(2001)、BG02(2001
)、BG03(2001)およびBGOlv(2004)を含めた細胞が導出され特徴付
けられた時から、営利および非営利産業パートナーおよび共同研究者とのそのような契約
を通じて常套的に細胞の譲渡を受けてきた。前記の一覧の各細胞株の隣の括弧内の年は、
細胞株または材料が公的に入手可能かつ不死のものになった(例えば細胞バンクが作製さ
れた)年を示し、したがって、組成物を作製するためおよび本明細書に記載の方法を実施
するためにこれらの細胞株が樹立された時から別の胚の破壊は実施または要求されていな
い。
2006年8月、Klimanskayaらは、hESCは単一の割球から誘導するこ
とができ、したがって胚を無傷にしておき、それらの破壊を引き起こさないことを実証し
た。顕微操作技術を使用して各胚から生検を実施し、十九(19)個のES細胞様増生お
よび二(2)個の安定したhESC系が得られた。これらのhESC系は六(6)カ月以
上も未分化状態に維持することができ、正常な核型、ならびにOct-4、SSEA-3
、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、Nanogおよびアルカリ性ホ
スファターゼを含む多能性のマーカーの発現を示した。これらのhESCは、in vi
troで全て三つ(3つ)の胚性胚葉の誘導体を分化、形成すること、およびin vi
voでテラトーマの形で形成することができる。胚の破壊なしで新しい幹細胞系を作製す
るこれらの方法は、ヒト胚を使用することの倫理上の懸念に対処する。その開示が参照に
より本明細書に完全に組み込まれる、Klimanskayaら(2006)Natur
e 444:481~5頁、Epub 2006年8月23日を参照。しかし、Klim
anskayaらは、誘導したhESC系を他のhESCと共培養した。後に、2008
年に、Chung Y.らは、hESCとの共培養なしで単一の割球から再びhES細胞
系を得ることができた。参照により本明細書に完全に組み込まれる、Chung Y.ら
、Cell Stem Cell 2008、2(2)、113~117頁を参照。した
がって、本明細書に記載される組成物および方法、特に人工多能性幹細胞または遺伝的に
脱分化した多能性幹細胞に関連するようなそのような組成物および方法は、ヒト胚の破壊
を必要としない。
表3および表4は、それぞれ、ある特定のiPSCおよびhESCの包括的ではない一
覧であり、研究目的および/または商業目的で世界的に利用可能であり、本発明の方法お
よび組成物での使用に適している。表3および表4の情報は、文献および例えばNati
onal Institutes of Health(NIH)Human Stem
Cell Registry、Human Embryonic Stem Cell
RegistryおよびUniversity of Massachusetts
Medical School、Worcester、Massachusetts、U
SAにあるInternational Stem Cell Registryを含め
た公的に利用可能なデータベースから得られるものである。これらのデータベースは、細
胞株が利用可能になり登録が得られた時に定期的に更新されている。
本明細書に記載のヒトiPSC(少なくともiPSC-603およびiPSC-482
-c7)はCellular Dynamics International,Inc
.(Madison、Wisconsin、USA)により提供されたものである。
【表3】
【0074】
別の利点は、そのようなhIPS細胞が免疫学的に適合した自己細胞集団であり、患者
に特異的な細胞により、疾患の起源および進行を試験することが可能になることである。
したがって、疾患の根本原因を理解することが可能であり、それにより、疾患に対する予
防的処置および治療的処置の開発を導く洞察がもたらされ得る。
【0075】
多能性ヒト胚性幹(hES)細胞
一部の実施形態は、胚体内胚葉細胞および最終的には、これだけに限定されないが、前
腸内胚葉、膵臓内胚葉、内分泌先駆細胞および/または膵島ホルモン発現細胞を含めた任
意の内胚葉系列由来細胞型を、ヒト胚性幹(hES)細胞を出発材料として使用して導出
するための方法を対象とする。これらのhES細胞は、桑実胚、胚内部細胞塊または胚の
生殖隆起から得られるものを起源とする細胞であってよい。ヒト胚性幹細胞は、当技術分
野で公知の方法を使用して、培養物中、実質的な分化を伴わずに多能性の状態で維持する
ことができる。そのような方法は、例えば、米国特許第5,453,357号、同第5,
670,372号、同第5,690,926号、同第5,843,780号、同第6,2
00,806号および同第6,251,671号に記載され、その開示は参照により本明
細書に完全に組み込まれる。
【0076】
いくつかのプロセスでは、多能性幹細胞、例えばhES細胞は、フィーダー層上で維持
される。そのようなプロセスでは、多能性細胞を多能性の状態で維持することを可能にす
る任意のフィーダー層を使用することができる。ヒト胚性幹細胞の培養(cultiva
tion)に一般に使用されるフィーダー層の1つは、マウス線維芽細胞の層である。つ
い最近、多能性細胞の培養(cultivation)において使用するためのヒト線維
芽細胞フィーダー層が開発された(その開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる
米国特許出願公開第2002/0072117号)。代替のプロセスでは、フィーダー層
を使用せずに多能性細胞を維持することが可能になる。多能性細胞をフィーダーフリー条
件下で維持する方法は、米国特許出願公開第2003/0,175,956号に記載され
ており、その開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0077】
本明細書に記載の多能性細胞は、血清を含むまたは含まない、細胞外マトリックスを含
むまたは含まない、FGFを含むまたは含まない培養物中で維持することができる。いく
つかの多能性細胞の維持手順では、血清代替物を使用する。多能性細胞または多分化能細
胞を培養し、分化させるためのこれらおよび他の方法は、それぞれ、PCT/US200
7/062755、2007年2月23日出願、表題COMPOSITIONS AND
METHODS FOR CULTURING DIFFERENTIAL CELL
SおよびPCT/US2008/080516、2008年10月20日出願、表題ME
THODS AND COMPOSITIONS FOR FEEDER-FREE P
LURIPOTENT STEM CELL MEDIA CONTAINING HU
MAN SERUMに記載され、それらは参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0078】
本明細書に記載の発明は全てのhES細胞株、および少なくとも、表4に列挙されてい
るものと共に有用である。この情報は、文献および例えば、National Inst
itutes of Health(NIH) Stem Cell Registry
、Human Embryonic Stem Cell RegistryおよびUn
iversity of Massachusetts Medical School
、Worcester、Massachusetts、USAにあるInternati
onal Stem Cell Registryを含めた公的に利用可能なデータベー
スから得られるものである。これらのデータベースは、細胞株が利用可能になり登録が得
られた時に定期的に更新されている。本出願の出願日現在、Internation S
tem Cell Registryに掲載された254個のiPSC系、および121
1個のhESC系があった。以下の表4は列挙されているhESCおよびiPSCの全て
を含むものではなく、潜在的に入手可能な多能性幹細胞の例である。
【表4】
【0079】
多能性脱分化体細胞
最近、ある特定の核リプログラミング因子を使用した試験により、多能性幹細胞または
多能性様幹細胞を患者自身の体細胞から導出することが可能になった。これらの細胞は人
工多能性幹(iPS)細胞とも称される。本発明では、Shinya Yamanaka
、Kyoto Universityにより提供された種々のiPS細胞株について記載
されている。しかし、他のiPS細胞株、例えばJames Thomsonら、A1.
に記載されているものは本発明によるものである。参照により本明細書に完全に組み込ま
れる、米国特許出願公開第20090047263号、国際公開WO2005/8059
8、米国特許出願公開第20080233610号および国際公開WO2008/118
82を参照されたい。したがって、本明細書で使用される場合、「人工多能性幹(iPS
)細胞」とは、他の多能性幹細胞、例えばhES細胞、hEG細胞、pPS(霊長類多能
性幹)細胞、単為発生細胞などと同様の性質を有する細胞を意味する。
【0080】
核プログラミング因子は、米国特許出願公開第20090047263号、国際公開W
O2005/80598、米国特許出願公開第20080233610号および国際公開
WO2008/11882に記載されており、卵、胚、またはES細胞を使用せずに、分
化した細胞のリプログラミングを誘導するために使用される。本発明で使用され、記載さ
れているものと同様の核リプログラミング因子を使用することによって体細胞から誘導さ
れたiPS細胞を調製するための方法は特に限定されない。好ましい実施形態では、体細
胞および人工多能性幹細胞が増殖し得る環境で核リプログラミング因子を体細胞と接触さ
せる。本明細書に記載のある特定の実施形態の利点は、卵、胚、または胚性幹(ES)細
胞の不在下で核リプログラミング因子を体細胞と接触させることによって人工多能性幹細
胞を調製することができることである。核リプログラミング因子を使用することによって
、体細胞の核をリプログラミングしてiPS細胞または「ES様細胞」を得ることができ
る。
【0081】
本明細書に記載の多能性幹細胞は、hES細胞であるかiPS細胞であるかにかかわら
ず、これだけに限定されないが、アルカリホスファターゼ(AP);ABCG2;ステー
ジ特異的胚抗原-1(SSEA-1);SSEA-3;SSEA-4;TRA-1-60
;TRA-1-81;Tra-2-49/6E;ERas/ECAT5、E-カドヘリン
;.β.III-チューブリン;.アルファ.-平滑筋アクチン(アルファ.-SMA)
;線維芽細胞成長因子4(Fgf4)、クリプト(Cripto)、Dax1;ジンクフ
ィンガータンパク質296(Zfp296);N-アセチルトランスフェラーゼ-1(N
at1);(ES細胞関連転写物1(ECAT1);ESG1/DPPA5/ECAT2
;ECAT3;ECAT6;ECAT7;ECAT8;ECAT9;ECAT10;EC
AT15-1;ECAT15-2;Fthl17;Sall4;未分化胚細胞転写因子(
Utf1);Rex1;p53;G3PDH;TERTなどのテロメラーゼ;サイレント
X染色体遺伝子;Dnmt3a;Dnmt3b;TRIM28;F-ボックス含有タンパ
ク質15(Fbx15);Nanog/ECAT4;Oct3/4;Sox2;Klf4
;c-Myc;Esrrb;TDGF1;GABRB3;Zfp42、FoxD3;GD
F3;CYP25A1;発生多能性関連2(developmental plurip
otency-associated 2)(DPPA2);T細胞リンパ腫ブレイクポ
イント1(T-cell lymphoma breakpoint 1)(Tcl1)
;DPPA3/Stella;DPPA4などの任意の数の多能性細胞マーカーを発現し
得る。本発明は本明細書において列挙されているマーカーに限定されず、細胞表面マーカ
ー、抗原、ならびにEST、RNA(マイクロRNAおよびアンチセンスRNAを含む)
、DNA(遺伝子およびcDNAを含む)およびその一部を含めた他の遺伝子産物などの
マーカーを包含することが理解される。
【0082】
一実施形態では、本明細書で使用されるiPS細胞株は、以下の核リプログラミング因
子遺伝子を含有する:Octファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、およびSox
ファミリー遺伝子。ある1つのiPS細胞株では、以下の3種類の遺伝子:Oct3/4
、Klf4、およびSox2のそれぞれが提供される。以下の3種類の遺伝子:Octフ
ァミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、およびMycファミリー遺伝子、例えば、O
ct3/4、Klf4およびc-Mycのそれぞれの他のiPS細胞株遺伝子産物を使用
した。したがって、核リプログラミング因子はMycファミリー遺伝子を含んでもよく含
まなくてもよいことが理解される。
【0083】
本明細書に記載されており、当技術分野でも公知の核リプログラミング因子は、分化し
た成体の体細胞からiPS細胞を生じさせるために使用することができ、また、これはリ
プログラミングされる体細胞の型に限定されない、すなわち、任意の種類の体細胞をリプ
ログラミングまたは脱分化させることができる。体細胞のリプログラミングには卵および
/または胚が必要ないので、iPS細胞は哺乳動物細胞であってよく、したがって、患者
または疾患に特異的な多能性幹細胞を生じさせる機会がもたらされる。
【0084】
多能性幹細胞の凝集懸濁液
個々の細胞をポリマー足場、マトリックスおよび/またはゲルに播種することに基づく
、以前に公知の組織工学の方法とは対照的に、本明細書に記載の実施形態では、多能性幹
細胞から形成された細胞凝集懸濁液、単一細胞懸濁液またはそれから導出された分化した
単一細胞懸濁液を使用することができる。幹細胞凝集懸濁液の処理および/または製造な
らびにその細胞の分化の方法は、国際出願PCT/US2007/062,755および
PCT/US2008/082,356に記載され、それらは参照により完全に本明細書
に組み込まれる。
【0085】
一実施形態では、多能性幹細胞培養物、例えばhESまたはiPS細胞培養物の単細胞
懸濁液から、多能性幹細胞凝集懸濁液を生成する方法が提供される。多能性幹細胞は線維
芽細胞フィーダーで最初に培養することができるか、またはフィーダーフリーであっても
よい。hES細胞を単離し、それらをヒトフィーダー細胞の上で培養する方法は、米国特
許第7,432,104号に記載され、それは参照により完全に本明細書に組み込まれる
【0086】
本明細書で使用される場合、「単一細胞懸濁液」という用語またはその等価物は、多能
性、多分化能もしくは最終分化した単一細胞懸濁液、または多能性細胞もしくは多分化能
細胞から任意の機械的手段または化学的手段によって導出された単一細胞懸濁液を指す。
一次組織、付着した培養物中の細胞、および凝集体から細胞クラスターを解離させて単一
細胞懸濁液を形成するためのいくつかの方法、例えば、物理的な力(細胞スクレーパー、
口径が狭いピペットを通しての粉砕、細針穿刺吸引、ボルテックスによる脱凝集および細
かいナイロンメッシュまたはステンレス鋼メッシュを通した強制的な濾過などの機械的解
離)、酵素(例えばトリプシン、コラゲナーゼ、アキュターゼ(商標)などの酵素による
解離)、またはその両方の組合せが存在する。さらに、多能性細胞、多分化能細胞または
分化した細胞の単一細胞への解離を支持することができる方法および培養培地条件は、多
ウェルプレートアッセイのための増殖、細胞選別、および規定された播種のために有用で
あり、また、培養順およびクローン増殖の自動化を可能にする。
【0087】
他の実施形態は、分化培地、例えば作用物質、好ましくはTGFβファミリーの受容体
を活性化することが可能であるTGFβファミリーメンバー、例えばアクチビンA、アク
チビンB、GDF-8、GDF-11およびNodalを含有する分化培地に、多能性幹
細胞凝集懸濁液を直接に生成する方法を提供する。内胚葉の生成のための成長因子は、国
際出願番号PCT/US2008/065,686に記載され、それは参照により完全に
本明細書に組み込まれる。分化培地で細胞凝集懸濁液を生成する方法は、同様に本明細書
に記載される、多能性幹細胞培地、例えばPCT/US2007/062,755に記載
されるヘレグリンをベースとしたDC-HAIF培地に基づくStemPro(登録商標
)hES SFM(Invitrogen)で細胞凝集懸濁培養物の生成を提供する他の
方法から区別することができる。
【0088】
本明細書に記載の実施形態は、多能性接着培養物から、多能性細胞を、未分化の状態で
の増殖を可能にする接着性成長培養条件で培養し、接着性多能性細胞培養物を単一細胞懸
濁培養物に解離させ、単一細胞懸濁培養物を、単一細胞懸濁培養物を単一細胞懸濁培養物
から懸濁液中の多能性由来細胞凝集体が形成されるまでの期間にわたって撹拌することに
よって懸濁液中のhES由来細胞凝集体の形成を可能にする第1の分化培養条件と接触さ
せ、それにより、懸濁液中の多能性由来細胞凝集体を生じさせることによって懸濁液中の
多能性細胞凝集体を生じさせるための方法に関する。好ましい実施形態では、単一細胞懸
濁培養物の撹拌は、約80rpm~160rpmで回転させることによって実施する。本
明細書に記載のある特定の他の実施形態では、多能性幹細胞の凝集、成長、増殖、増大お
よび/または細胞塊を容易にするためにrhoキナーゼ阻害剤を使用する。
【0089】
本明細書に記載される実施形態は、未分化状態での増大を可能にする接着性成長培養条
件でhES細胞を培養し;未分化hES細胞をhES細胞の分化に適する第1の分化培養
条件と接触させて、接着性多能性由来細胞をもたらし;接着性のhES由来細胞を単一細
胞懸濁培養物に解離させ;単一細胞懸濁培養物が懸濁状の多能性由来細胞凝集体を形成す
るそのような時期まで単一細胞懸濁培養物を撹拌することによって、単一細胞懸濁培養物
を、懸濁状のhES由来細胞凝集体の形成を可能にする第2の分化培養条件と接触させ、
それにより懸濁状の多能性由来細胞凝集体を生成することによって、多能性由来単一細胞
懸濁液から懸濁状の多能性由来細胞凝集体を生成する方法にも関する。好ましい実施形態
では、単一細胞懸濁培養物の撹拌は、約80rpmから160rpmの回転によって実施
される。
【0090】
好ましい実施形態では、製造規模の懸濁培養は、細胞密度を最大にしながら細胞生存力
を維持する方法として、培地の連続潅流を利用する。この関係において、培地交換は、接
着細胞および懸濁凝集体に異なった影響を及ぼす流体剪断を培養物に寄与する。培地が細
胞表面を接線方向に越流するので、固定された接着細胞は流体剪断応力を受ける。対照的
に、凝集体は剪断力の負荷に応答して自由に転がるので、懸濁凝集体が受ける凝集体表面
を横切る剪断応力はかなりより弱い。長期間の剪断応力は接着性の多能性細胞に有害であ
り、最適な生存および機能のために懸濁凝集形式が好ましいと予想される。したがって、
多能性幹細胞および/または多能性幹細胞から導出された多分化能前駆細胞の生成のため
の効率的な製造プロセスの必要性、ならびに剪断速度および剪断応力に関する上記の観察
された機構に基づき、本明細書に記載される実施形態は、初めて、懸濁液形式、特に細胞
凝集懸濁液形式の、多能性幹細胞から導出された多能性幹細胞および/または多分化能前
駆細胞の生成のための製造方法を提供する。
【0091】
さらに別の実施形態では、hES細胞凝集懸濁液を、血清を実質的に含まない培地中、
さらに、外因的に添加された線維芽細胞成長因子(FGF)の不在下で培養した。これは
、血清を含まないが、FGFなどの外因的に添加された成長因子を含有する培地中でhE
S細胞を培養することが必要なThomson,J.に対する米国特許第7,005,2
52号とは区別される。一部の実施形態では、iPS細胞凝集懸濁液を、血清を実質的に
含まない培地中で、かつ/または、さらに、外因的に添加された線維芽細胞成長因子(F
GF)の不在下で培養する。
【0092】
サイズおよび形状の両方が異なるかもしれない既知の方法によって生成される細胞凝集
体と対照的に、本明細書に記載される細胞凝集体および方法はサイズおよび形状の狭い分
布を有し、すなわち、細胞凝集体はサイズおよび/または形状が実質的に均一である。細
胞凝集体のサイズ均一性は、分化性能および培養均一性のために重要である。基本的な物
質輸送分析を凝集体に適用すると、等しい透過性を仮定する限り、大きな凝集体の中央へ
の酸素および栄養素の拡散は、より小さい凝集体への拡散と比較して遅くなると予想され
る。膵臓系列細胞への凝集ES細胞またはiPS細胞の分化は特定の成長因子の一時的適
用に依存するので、異なる径の凝集体の混合物による培養物は、細胞凝集体の均一な(サ
イズおよび形状)培養物と比較して非同期化される可能性がある。細胞凝集体のこの混合
物は異質性をもたらし、結果として分化性能が劣り、最終的に製造、規模拡大および生産
に適合しない可能性がある。したがって、本明細書で使用される場合、語句「実質的に均
一」または「サイズおよび形状が実質的に均一」またはその同等物は、凝集体の均一性の
広がり程度を指し、約20%以下である。別の実施形態では、凝集体の均一性の広がり程
度は、約15%、10%または5%以下である。
【0093】
凝集体当たりの細胞の正確な数は重要ではないが、各凝集体のサイズ(したがって、凝
集体当たりの細胞の数)は酸素および栄養分が中心細胞に拡散する最大限度によって限定
されること、およびこの数は細胞型およびその細胞型の栄養素の要件に応じても変動し得
ることが当業者には理解されよう。細胞凝集体は、凝集体当たり最小数の細胞(例えば、
2つまたは3つの細胞)を含んでもよく、凝集体当たり何百ものまたは何千もの細胞を含
んでもよい。一般には、細胞凝集体は、凝集体当たり数百から数千の細胞を含む。本発明
の目的上、細胞凝集体は、一般には約50ミクロンから約600ミクロンまでのサイズで
あるが、細胞型に応じて、サイズはこの範囲を下回ることも上回ることもある。一実施形
態では、細胞凝集体は、約50ミクロンから約250ミクロンまでのサイズ、または約7
5~200ミクロンのサイズであり、約100~150ミクロンのサイズであることが好
ましい。
【0094】
さらに他の方法では胚様体(EB)の作製が記載されている。本明細書で使用される場
合、「胚様体」、「凝集体(aggregate body)」という用語またはその等
価物は、ES細胞が単層培養物中で過成長した際、または、未定義の培地中の懸濁培養物
中で維持された、または非定方向プロトコルによって多数の胚葉組織に分化した際に生じ
る分化した細胞および未分化の細胞の凝集体を指す。すなわち、EBは、本明細書に記載
の多能性幹細胞の単一細胞懸濁液から形成されることもなく、EBは、多能性由来多分化
能細胞の接着培養物から形成されることもない。これらの特徴単独により、本発明は胚葉
体から明白に区別される。
【0095】
分化した細胞と未分化の細胞の混合物であり、一般にはいくつかの胚葉由来の細胞から
なり、ランダムな分化をたどる胚様体とは対照的に、本明細書に記載の細胞凝集体は、基
本的にまたは実質的に均一な細胞であり、多能性、多分化能、二分化能、または単能性型
の細胞、例えば、胚細胞、胚体内胚葉、前腸内胚葉、PDX1陽性膵臓内胚葉、膵臓内分
泌細胞などの凝集体として存在する。
【0096】
本明細書に記載される実施形態は、大規模製造に容易に適用することができるプロセス
を使用して、サイズおよび形状が実質的に均一である細胞凝集体を繰り返し生成すること
が可能な費用効率の高い製造プロセスまたは方法を提供することによって、上記の問題に
対処する。特定の一実施形態では、分化可能な細胞は、本発明の細胞培地を用いて懸濁培
養で増殖させる。別の特定の実施形態では、分化可能な細胞は懸濁状態で維持および増殖
することができ、すなわち、それらは未分化のままであるか、さらに分化することを阻止
される。細胞培養との関連で「増殖させる」という用語は、当技術分野で使用されるよう
に使用され、細胞の増殖および細胞数の増加、好ましくは存続可能な細胞数の増加を指す
。具体的な実施形態では、約1日、すなわち約24時間を超えて培養することによって、
細胞を培養懸濁液で増殖させる。より具体的な実施形態では、少なくとも1、2、3、4
、5、6、7日、または少なくとも2、3、4、5、6、7、8週の間培養することによ
って、細胞を懸濁培養で増殖させる。
【0097】
本発明のさらに他の実施形態は、分化した多能性幹細胞培養物、例えば、上記d’Am
our2005および2006に記載されるステージ1、2、3、4および5からの細胞
を含む、本明細書に記載される多能性細胞から生成される細胞から形成される細胞凝集懸
濁液を生成する方法を提供する。したがって、本明細書に記載される細胞凝集体を作製す
る方法はいかなる1つの多能性または多分化能細胞または細胞ステージにも限定されず、
むしろ、使用方法および細胞型最適化の必要性によってどの方法が好ましいかが決定され
る。
【0098】
多能性細胞、例えばhESまたはiPS細胞、および他の多能性細胞源、例えば胚性生
殖または単為生殖生物細胞から導出された細胞の凝集懸濁培養物を生成するための本明細
書に記載の方法は、実質的に、2007年2月23日に出願された表題がComposi
tions and methods for culturing differen
tial cellsであるPCT/US2007/062,755、および2008年
10月20日に出願された表題がMethods and compositions
for feeder-free pluripotent stem cell me
dia containing human serumであるPCT/US2008/
080,516に記載されている通りであり、それらは参照により完全に本明細書に組み
込まれる。
【0099】
本明細書に記載の方法では、例えば、Bodnarらに対するものであり、Geron
Corporationに譲渡された米国特許第6,800,480号に記載の通り最
初に培養容器を細胞外マトリックスでコーティングする必要は全くない。本明細書に記載
の一部の実施形態では、iPS細胞は、他の多能性幹細胞、例えばhESおよびiPS細
胞が、実質的に、参照により本明細書に完全に組み込まれる2008年10月20日に出
願の、表題がMethods and compositions for feede
r-free pluripotent stem cell media conta
ining human serumである米国特許出願PCT/US2008/080
,516に記載されるように可溶性ヒト血清を使用して培養されるのと同じ方法で培養す
ることができる。
【0100】
本明細書に記載の方法では、Thomson,J.に対するものであり、Wiscon
sin Alumni Research Foundation(WARF)に譲渡さ
れた、参照により本明細書に完全に組み込まれる米国特許第7,005,252号に記載
の通り単に線維芽細胞フィーダー層以外の供給源から供給される外因的に添加された線維
芽細胞成長因子(FGF)は全く必要ない。
【0101】
多分化能および分化した細胞組成物
本明細書に記載の方法によって生成する細胞組成物は、多能性幹細胞、前原条、中内胚
葉、胚体内胚葉、前腸内胚葉、PDX1陽性前腸内胚葉、PDX1陽性膵臓内胚葉または
PDX1/NKX6.1共陽性膵臓内胚葉、内分泌先駆体またはNGN3/NKX2.2
共陽性内分泌先駆体、およびホルモン分泌内分泌細胞またはINS、GCG、GHRL、
SST、PP単独陽性内分泌細胞を含む細胞培養物を含み、培養物中の細胞の少なくとも
約5~90%が、生成された前原条、中内胚葉、胚体内胚葉、前腸内胚葉、PDX1陽性
前腸内胚葉、PDX1陽性膵臓内胚葉またはPDX1/NKX6.1共陽性膵臓内胚葉、
内分泌先駆体またはNGN3/NKX2.2共陽性内分泌先駆体、およびホルモン分泌内
分泌細胞またはINS、GCG、GHRL、SST、PP単独陽性内分泌細胞である。
【0102】
本明細書に記載の一部の実施形態は、幹細胞およびiPS細胞などの多能性細胞と、前
原条、中内胚葉または胚体内胚葉などの多分化能細胞の両方、ならびに、PDX1陽性前
腸内胚葉、PDX1陽性膵臓内胚葉またはPDX1/NKX6.1共陽性膵臓内胚葉、内
分泌先駆体またはNGN3/NKX2.2共陽性内分泌先駆体、およびホルモン分泌内分
泌細胞またはINS、GCG、GHRL、SST、PP単独陽性内分泌細胞などの、より
分化しているが、なお潜在的に多分化能である細胞を含む細胞集団および細胞培養物など
の組成物に関する。例えば、本明細書に記載の方法を使用して、多能性幹細胞および他の
多分化能細胞または分化した細胞の混合物を含む組成物を生成することができる。一部の
実施形態では、約95の多能性細胞ごとに少なくとも約5の多分化能細胞または分化した
細胞を含む組成物が生成する。他の実施形態では、約5の多能性細胞ごとに少なくとも約
95の多分化能細胞または分化した細胞を含む組成物が生成する。さらに、他の比の多分
化能細胞または分化した細胞と多能性細胞を含む組成物が考えられる。例えば、約1,0
00,000の多能性細胞ごとに少なくとも約1の多分化能細胞または分化した細胞を含
む組成物、約100,000の多能性細胞ごとに少なくとも約1の多分化能細胞または分
化した細胞を含む組成物、約10,000の多能性細胞ごとに少なくとも約1の多分化能
細胞または分化した細胞を含む組成物、約1000の多能性細胞ごとに少なくとも約1の
多分化能細胞または分化した細胞を含む組成物、約500の多能性細胞ごとに少なくとも
約1の多分化能細胞または分化した細胞を含む組成物、約100の多能性細胞ごとに少な
くとも約1の多分化能細胞または分化した細胞を含む組成物、約10の多能性細胞ごとに
少なくとも約1の多分化能細胞または分化した細胞を含む組成物、約5の多能性細胞ごと
、および約1までの多能性細胞ごとに少なくとも約1の多分化能細胞または分化した細胞
を含む組成物、および約1の多能性細胞ごとに少なくとも約1,000,000の多分化
能細胞または分化した細胞を含む組成物が考えられる。
【0103】
本明細書に記載の一部の実施形態は、少なくとも約5%の多分化能細胞または分化した
細胞から少なくとも約99%の多分化能細胞または分化した細胞までを含む細胞培養物ま
たは細胞集団に関する。一部の実施形態では、細胞培養物または細胞集団は哺乳動物細胞
を含む。好ましい実施形態では、細胞培養物または細胞集団はヒト細胞を含む。例えば、
ある特定の実施形態は、ヒト細胞を含む細胞培養物であって、ヒト細胞の少なくとも約5
%~少なくとも約99%が多分化能細胞または分化した細胞である細胞培養物に関する。
他の実施形態は、ヒト細胞を含む細胞培養物であって、ヒト細胞の少なくとも約5%、少
なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少
なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少
なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少
なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少
なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、ま
たは99%超が多分化能細胞または分化した細胞である細胞培養物に関する。細胞培養物
または細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む複数の実施形態では、細胞培養中のヒトフィ
ーダー細胞を考慮せずに上記の百分率を算出する。
【0104】
多能性、多分化能または分化細胞は、前原条、内胚葉系中胚葉、胚体内胚葉の細胞、な
らびにそれらから導出される細胞、組織および/または器官に分化すること、またはさら
に分化することが可能である。内胚葉系中胚葉細胞は、中胚葉細胞および/または胚体内
胚葉細胞、ならびにこれらの系列のいずれかから導出される細胞、組織および/または器
官に分化することが可能である。一部の実施形態では、前原条細胞は、内胚葉系中胚葉中
間体を通して、中胚葉または胚体内胚葉系列のいずれかの最終分化細胞に変換される。例
えば、そのようなプロセスは、ヒト内胚葉由来組織、例えば膵臓、肝臓、肺、胃、腸、甲
状腺、上皮小体、胸腺、咽頭、胆嚢および膀胱の効率的な生成のための基礎を提供するこ
とができる。重要なことに、前原条細胞および/または内胚葉系中胚葉細胞の生成は、機
能的インスリン生成β細胞への多能性幹細胞の分化での初期段階である。別の例として、
前原条細胞および/または内胚葉系中胚葉細胞の分化は、ヒト中胚葉由来組織、例えば血
球、心血管組織、骨格組織ならびに他の構造および結合組織の効率的な生成のための基礎
を提供することができる。
【0105】
本明細書に記載の組成物および方法には、いくつかの有用な特徴がある。例えば、多分
化能細胞、例えば、前原条細胞および/または中内胚葉細胞を含む細胞培養物および細胞
集団、ならびにそのような細胞培養物および細胞集団を生成するための方法は、ヒト発生
の初期をモデリングするために有用である。さらに、本明細書に記載の組成物および方法
は、真性糖尿病などの病態への治療介入としても機能し得る。例えば、前原条細胞および
/または中内胚葉細胞は限られた数の組織のみの供給源として機能するので、純粋な組織
または細胞の型の発生において使用することができる。前原条細胞を生成するためのいく
つかのプロセスでは、出発材料として使用される多能性細胞は、多能性幹細胞、例えばh
ES細胞、hEG細胞またはiPS細胞である。
【0106】
栄養外胚葉細胞
本明細書に記載の方法を使用して、他の細胞型を実質的に含まない、栄養外胚葉細胞を
含む組成物を生成することができる。本明細書に記載の一部の実施形態では、本明細書に
記載の方法によって生成する栄養外胚葉細胞集団または細胞培養物では、HAND1、E
omes、MASH2、ESXL1、HCG、KRT18、PSG3、SFXN5、DL
X3、PSX1、ETS2、およびERBB遺伝子からなる群から選択されるマーカーの
発現が、非栄養外胚葉細胞または細胞集団におけるHAND1、Eomes、MASH2
、ESXL1、HCG、KRT18、PSG3、SFXN5、DLX3、PSX1、ET
S2、およびERBBの発現レベルと比較して実質的に高い。
【0107】
前原条細胞
本明細書に記載の方法を使用して、他の細胞型を実質的に含まない、前原条細胞を含む
組成物を生成することができる。本明細書に記載の一部の実施形態では、本明細書に記載
の方法によって生成する前原条細胞集団または細胞培養物は、FGF8マーカー遺伝子お
よび/またはNODALマーカー遺伝子を、BRACHURY低、FGF4低、SNAI
1低、SOX17低、FOXA2低、SOX7低およびSOX1低と比較して実質的に発
現する。
【0108】
胚体外細胞
本明細書に記載の方法を使用して、他の細胞型を実質的に含まない、胚体外細胞を含む
組成物を生成することができる。原始内胚葉細胞、近位内胚葉細胞および遠位内胚葉細胞
は胚体外細胞である。原始内胚葉細胞は近位内胚葉細胞および遠位内胚葉細胞を生じる。
近位内胚葉細胞は、卵黄嚢の一部を形成する内胚葉細胞である。近位内胚葉細胞は、栄養
分の取り込みおよび輸送の両方において機能する。遠位内胚葉細胞は、ライヘルト膜とし
て公知の胚体外組織と近接している。遠位内胚葉細胞の役割のうちの1つは、基底膜の構
成成分の生成である。まとめると、近位内胚葉細胞および遠位内胚葉細胞は、多くの場合
、胚体外内胚葉と称されるものを形成する。名称に示されている通り、胚体外内胚葉細胞
は発生の間に形成される胚構造を生じない。対照的に、本明細書に記載の胚体内胚葉細胞
および他の内胚葉系列または膵臓の系列細胞は、胚性であるまたは胚細胞から導出された
ものであり、胚発生の間に形成される腸管から導出された組織を生じる。本明細書に記載
の一部の実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成する胚体外細胞集団または細
胞培養物では、SOX7遺伝子、SOX17遺伝子、THBD遺伝子、SPARC遺伝子
、DAB1遺伝子、FTNF4alpha遺伝子またはAFP遺伝子からなる群から選択
されるマーカーの発現が、少なくとも、他の細胞型または細胞集団、例えば胚体内胚葉で
は発現されないSOX7、SOX17、THBD、SPARC、DAB1、またはAFP
の発現レベルと比較して実質的に高い。
【0109】
中内胚葉(mensendoderm)細胞
本明細書に記載の方法を使用して、他の細胞型を実質的に含まない、中内胚葉細胞を含
む組成物を生成することができる。本明細書に記載の一部の実施形態では、本明細書に記
載の方法によって生成する中内胚葉細胞集団または細胞培養物は、FGF4、SNAI1
、MIXL1および/またはWNT3マーカー遺伝子からなる群から選択されるマーカー
の発現が、SOX17低、CXCR4低、FOXA2低、SOX7低およびSOX1低と
比較して実質的に高い。
【0110】
スクリーニング方法
一部の実施形態では、スクリーニング方法を使用して、ヒト多能性幹細胞、人工多能性
幹細胞、前原条細胞、中内胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、前腸内胚葉またはPDX1陰性前
腸内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉またはPDX1陽性膵臓内胚葉細胞または膵臓前
駆細胞、内分泌先駆細胞、および/または内分泌細胞などの多能性細胞、多分化能細胞お
よび/または分化した細胞などのある特定の細胞集団を得る。次いで、細胞集団に候補分
化因子をもたらす。候補分化因子をもたらす前またはそれとほぼ同時である第1の時点で
、マーカーの発現を決定する。あるいは、候補分化因子をもたらした後にマーカーの発現
を決定することができる。第1の時点の後であり、かつ候補分化因子を細胞集団にもたら
すステップの後である第2の時点で、同じマーカーの発現を再度決定する。候補分化因子
が膵臓先駆細胞の分化を促進することができるかどうかを、第1の時点におけるマーカー
の発現と第2の時点におけるマーカーの発現を比較することによって決定する。第2の時
点におけるマーカーの発現が第1の時点におけるマーカーの発現と比較して増加または減
少した場合、当該候補分化因子は膵臓前駆細胞の分化を促進することができることになる
【0111】
本明細書に記載のスクリーニング方法の一部の実施形態では、ヒト胚体内胚葉、PDX
-1陰性前腸内胚葉、PDX-1陽性前腸内胚葉、PDX-1陽性膵臓内胚葉、または膵
臓前駆体または内分泌先駆細胞を含む細胞集団または細胞培養物を利用する。例えば、細
胞集団は、PDX-1陽性膵臓内胚葉または膵臓前駆細胞の実質的に精製された集団であ
ってよい。例えば、細胞集団はヒト膵臓前駆細胞の濃縮された集団であってよく、細胞集
団内のヒト細胞の少なくとも約50%~97%がヒト膵臓前駆細胞であり、残りは、内分
泌先駆体または内分泌細胞および他の細胞型で構成される。
【0112】
本明細書に記載のスクリーニング方法の複数の実施形態では、細胞集団を候補(試験)
分化因子と接触させる、または他のやり方で候補(試験)分化因子をもたらす。候補分化
因子は、上記の細胞のいずれか、例えばヒト膵臓前駆細胞の分化を促進する潜在性を有し
得る任意の分子を含んでよい。本明細書に記載の一部の実施形態では、候補分化因子は、
細胞の1種または複数種の型に対する分化因子であることが分かっている分子を含む。代
替の実施形態では、候補分化因子は、細胞分化を促進することが分かっていない分子を含
む。好ましい実施形態では、候補分化因子は、ヒト膵臓前駆細胞の分化を促進することが
分かっていない分子を含む。
【0113】
本明細書に記載されるスクリーニング方法の一部の実施形態では、候補分化因子は小分
子を含む。好ましい実施形態では、小分子は約10,000amu以下の分子量を有する
分子である。
【0114】
本明細書に記載される他の実施形態では、候補分化因子は、大分子、例えばポリペプチ
ドを含む。ポリペプチドは、限定されずに、糖タンパク質、リポタンパク質、細胞外基質
タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモン、インターロイキンまたは成
長因子を含む、任意のポリペプチドであってもよい。好ましいポリペプチドには、成長因
子が含まれる。
【0115】
本明細書に記載されるスクリーニング方法の一部の実施形態では、候補分化因子は、ア
ンフィレグリン、Bリンパ球刺激物質、IL-16、サイモポイエチン、TRAIL/A
po-2、プレB細胞コロニー促進因子、内皮分化関連因子1(EDF1)、内皮単球活
性化ポリペプチドII、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、ナチュラルキラー細胞
促進因子(NKEFA)、骨形成タンパク質2、骨形成タンパク質8(骨形成タンパク質
2)、骨形成タンパク質6、骨形成タンパク質7、結合組織成長因子(CTGF)、CG
I-149タンパク質(神経内分泌分化因子)、サイトカインA3(マクロファージ炎症
タンパク1-アルファ)、グリア芽細胞腫細胞分化関連タンパク質(GBDR1)、肝癌
由来成長因子、ニューロメディンU-25先駆体、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、
血管内皮細胞成長因子B(VEGF-B)、T細胞特異的RANTES先駆体、胸腺樹状
細胞由来因子1、トランスフェリン、インターロイキン-1(IL1)、インターロイキ
ン-2(IL2)、インターロイキン-3(IL3)、インターロイキン-4(IL4)
、インターロイキン-5(IL5)、インターロイキン-6(IL6)、インターロイキ
ン-7(IL7)、インターロイキン-8(IL8)、インターロイキン-9(IL9)
、インターロイキン-10(IL10)、インターロイキン-11(IL11)、インタ
ーロイキン-12(IL12)、インターロイキン-13(IL13)、顆粒球コロニー
刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マ
クロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、
ビタミンD3、上皮成長因子(EGF)、脳由来神経栄養因子、白血病抑制因子、甲状腺
ホルモン、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、aFGF、FGF-4、FGF-6
、FGF-7/ケラチノサイト成長因子(KGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、
血小板由来成長因子-BB、β神経成長因子、アクチビンA、トランスフォーミング成長
因子β1(TGFβ1)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェ
ロン-γ、腫瘍壊死-α、腫瘍壊死因子-β、バースト促進活性(BPA)、赤血球促進
活性(EPA)、PGE2、インスリン成長因子-1(IGF-1)、IGF-II、ニ
ューロトロフィン(Neutrophin)成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-
3、ニューロトロフィン4/5、線毛神経栄養因子、神経膠由来のネキシン、デキサメタ
ゾン、β-メルカプトエタノール、レチノイン酸、ブチルヒドロキシアニソール、5-ア
ザシチジン、アンホテリシンB、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、イソブチルキサン
チン、インドメタシン、β-グリセロールホスフェート、ニコチンアミド、DMSO、チ
アゾリジンジオン、TWS119、オキシトシン、バソプレシン、メラニン細胞刺激ホル
モン、副腎皮質刺激ホルモン、リポトロピン、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、プロ
ラクチン、黄体形成ホルモン、ヒト絨毛ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、副腎皮質刺
激ホルモン放出因子、ゴナドトロピン放出因子、プロラクチン放出因子、プロラクチン抑
制因子、成長ホルモン放出因子、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン放出因子、カルシ
トニン遺伝子関連ペプチド、副甲状腺ホルモン、グルカゴン様ペプチド1、グルコース依
存性インスリン分泌性ポリペプチド、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、モチ
リン、血管作用性小腸ペプチド、サブスタンスP、膵臓ポリペプチド、ペプチドチロシン
、神経ペプチドチロシン、インスリン、グルカゴン、胎盤性ラクトゲン、リラキシン、ア
ンジオテンシンII、カルシトリオール(calctriol)、心房性ナトリウム利尿
ペプチドおよびメラトニン、チロキシン、トリヨードサイロニン、カルシトニン、エスト
ラジオール、エストロン、プロゲステロン、テストステロン、コルチゾル、コルチコステ
ロン、アルドステロン、エピネフリン、ノルエピネフリン、アンドロスチエン(andr
ostiene)、カルシトリオール、コラーゲン、デキサメタゾン、β-メルカプトエ
タノール、レチノイン酸、ブチルヒドロキシアニソール、5-アザシチジン、アンホテリ
シンB、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、イソブチルキサンチン、インドメタシン、
β-グリセロールホスフェート、ニコチンアミド、DMSO、チアゾリジンジオンおよび
TWS119からなる群から選択される1つまたは複数の成長因子を含む。
【0116】
本明細書に記載されるスクリーニング方法の一部の実施形態では、候補分化因子は、1
つまたは複数の濃度で細胞集団に提供される。一部の実施形態では、候補分化因子は、細
胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度が約0.1ng/mlから10mg/mlであるよ
うに、細胞集団に提供される。一部の実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の
濃度は、約1ng/mlから約1mg/mlである。他の実施形態では、細胞周囲の培地
中の候補分化因子の濃度は、約10ng/mlから約100μg/mlである。さらに他
の実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約100ng/mlから約
10μg/mlである。好ましい実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度
は、約5ng/mlから約1000μg/mlである。
【0117】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるスクリーニング方法のステップは、第1の
時点および第2の時点で少なくとも1つのマーカーの発現を判定することを含む。これら
の実施形態のいくつかでは、第1の時点は候補分化因子を細胞集団に提供する前かほぼ同
じ時期であってもよい。あるいは、一部の実施形態では、第1の時点は、候補分化因子を
細胞集団に提供する後である。一部の実施形態では、第1の時点で複数のマーカーの発現
が判定される。
【0118】
少なくとも1種のマーカーの発現を第1の時点で決定することに加えて、本明細書に記
載のスクリーニング方法の一部の実施形態では、少なくとも1種のマーカーの発現を、第
1の時点の後であり、かつ細胞集団に候補分化因子をもたらした後である第2の時点で決
定することが意図されている。そのような実施形態では、第1の時点と第2の時点の両方
で同じマーカーの発現を決定する。一部の実施形態では、第1の時点と第2の時点の両方
で複数種のマーカーの発現を決定する。そのような実施形態では、第1の時点と第2の時
点の両方で同じ複数種のマーカーの発現を決定する。一部の実施形態では、それぞれが第
1の時点の後であり、かつそれぞれが細胞集団に候補分化因子をもたらした後である複数
の時点でマーカーの発現を決定する。ある特定の実施形態では、Q-PCRによってマー
カーの発現を決定する。他の実施形態では、免疫細胞化学によってマーカーの発現を決定
する。
【0119】
本明細書に記載のスクリーニング方法のある特定の実施形態では、第1の時点および第
2の時点において発現が決定されるマーカーは、膵臓前駆細胞から膵島組織を構成する最
終分化した細胞の先駆体である細胞への分化に関連するマーカーである。そのような細胞
としては、未成熟膵島ホルモン発現細胞を挙げることができる。
【0120】
本明細書に記載のスクリーニング方法の一部の実施形態では、細胞集団に候補分化因子
をもたらすステップと第2の時点におけるマーカーの発現を決定するステップの間に十分
な時間を経過させることができる。細胞集団に候補分化因子をもたらすステップと第2の
時点におけるマーカーの発現を決定するステップの間の十分な時間は、約1時間の短さか
ら約10日間の長さまでであってよい。一部の実施形態では、少なくとも1種のマーカー
の発現を、細胞集団に候補分化因子をもたらした後に多数回決定する。一部の実施形態で
は、十分な時間は、少なくとも約1時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、
少なくとも約16時間、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間
、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間
、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11
日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくと
も約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくと
も約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、または少なくとも約8週間であ
る。
【0121】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、第2の時点におけるマーカーの発現が第
1の時点におけるこのマーカーの発現と比較して増加または減少したかどうかをさらに決
定する。少なくとも1種のマーカーの発現の増加または減少により、候補分化因子が内分
泌先駆細胞の分化を促進することができることが示される。同様に、複数種のマーカーの
発現を決定する場合、第2の時点における複数種のマーカーの発現が第1の時点における
この複数種のマーカーの発現と比較して増加または減少したかどうかをさらに決定する。
マーカーの発現の増加または減少は、第1の時点および第2の時点での細胞集団における
マーカーの量、レベルまたは活性を測定することまたは他のやり方で評価することによっ
て決定することができる。そのような決定は、他のマーカー、例えばハウスキーピング遺
伝子発現との比較的なものであってもよく、絶対的なものであってもよい。第2の時点に
おけるマーカーの発現が第1の時点と比較して増加するある特定の実施形態では、増加の
量は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍
、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍
、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100
倍または少なくとも約100倍超である。一部の実施形態では、増加の量は、2倍未満で
ある。第2の時点におけるマーカーの発現が第1の時点と比較して減少する実施形態では
、減少の量は、少なくとも約2分の1、少なくとも約5分の1、少なくとも約10分の1
、少なくとも約20分の1、少なくとも約30分の1、少なくとも約40分の1、少なく
とも約50分の1、少なくとも約60分の1、少なくとも約70分の1、少なくとも約8
0分の1、少なくとも約90分の1、少なくとも約100分の1または少なくとも約10
0分の1未満である。一部の実施形態では、減少の量は2分の1を下回らない。
【0122】
多分化能細胞または分化した細胞の生成のモニタリング
多能性細胞から多分化能細胞、多分化能細胞から膵臓前駆体またはホルモン内分泌細胞
などのさらに多分化能の細胞または分化した細胞への進行は、内分泌細胞における島ホル
モンの発現およびプロインスリンからインスリンおよびCペプチドへのプロセシングなど
の、遺伝子マーカーおよび表現型マーカーを含めた特定の細胞に特有のマーカーの発現を
決定することによってモニタリングすることができる。いくつかのプロセスでは、ある特
定のマーカーの発現を、マーカーが存在するかしないかを検出することによって決定する
。あるいは、ある特定のマーカーの発現は、細胞培養物または細胞集団の細胞中でマーカ
ーが存在するレベルを測定することによって決定することができる。例えば、ある特定の
プロセスでは、未成熟膵島ホルモン発現細胞に特有のマーカーの発現、ならびに多能性細
胞、胚体内胚葉、前腸内胚葉、PDX1陽性前腸内胚葉、内分泌先駆体、胚体外内胚葉、
中胚葉、外胚葉、成熟膵島ホルモン発現細胞および/または他の細胞型に特有のマーカー
の有意な発現の欠如を決定する。
【0123】
他の胚体内胚葉系列の分化の程度がより低い細胞型の生成のモニタリングに関連して記
載されている通り、ブロット転写法および免疫細胞化学などの定性的技法または半定量的
技法を使用して、マーカーの発現を測定することができる。あるいは、マーカーの発現は
、Q-PCRなどの技法を使用することによって正確に定量化することができる。さらに
、ポリペプチドレベルでは、膵島ホルモン発現細胞のマーカーの多くは分泌タンパク質で
あることが理解されよう。このように、ELISAなどの細胞外マーカー含有量を測定す
るための技法を利用することができる。
【0124】
例えば、一実施形態では、PDX1はPDX1陽性前腸内胚葉と関連したマーカー遺伝
子である。このように、本発明の一部の実施形態では、PDX1の発現が判定される。他
の実施形態では、限定されずにSOX17、HNF6、SOX9およびPROX1などの
、PDX1陽性前腸内胚葉で発現される他のマーカーの発現も判定される。PDX1は特
定の他の細胞型(すなわち、内臓内胚葉および特定の神経外胚葉)が発現することもでき
るので、本発明の一部の実施形態は、内臓内胚葉および/または神経外胚葉と関連したマ
ーカー遺伝子発現の不在または実質的な不在を実証することに関する。例えば、一部の実
施形態では、限定されずにSOX7、AFP、SOX1、ZIC1および/またはNFM
を含む、内臓内胚葉および/または神経細胞で発現されるマーカーの発現が判定される。
【0125】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるPDX1陽性前腸
内胚葉細胞培養物は、SOX7、AFP、SOX1、ZIC1またはNFMマーカー遺伝
子を発現する細胞を実質的に含まない。特定の実施形態では、本明細書に記載されるプロ
セスによって生成されるPDX1陽性前腸内胚葉細胞培養物は、近位内胚葉、遠位内胚葉
および/または神経細胞を実質的に含まない。
【0126】
本明細書に記載される多能性細胞(例えば、上記D’Amourら2006に記載され
るステージまたはステップ1~5の結果として生成される細胞)の発達の進行は、発達経
路に沿う各hES由来またはiPS由来の細胞型の特徴であるマーカーの発現を判定する
ことによって監視することができる。一部のプロセスでは、hES由来またはiPS由来
の細胞型の同定および特徴づけは、特定のマーカーの発現または複数のマーカーの異なる
発現レベルおよびパターンによる。すなわち、1つまたは複数のマーカーの存在または不
在、高発現または低発現は細胞型の特徴を表し、それを特定する。さらに、特定のマーカ
ーは一過性の発現を有することができ、それによりそのマーカーは発達の1つのステージ
の間に高度に発現され、発達の別のステージでは弱く発現される。特定のマーカーの発現
は、標準化または規格化された対照マーカーと比較して細胞培養物または細胞集団の細胞
にそのマーカーが存在するレベルを測定することによって判定することができる。そのよ
うなプロセスでは、マーカー発現の測定は、定性的であっても定量的であってもよい。マ
ーカー遺伝子によって生成されるマーカーの発現を定量化する1つの方法は、定量的PC
R(Q-PCR)の使用による。Q-PCRの実施方法は、当技術分野で周知である。
【0127】
本発明の一部の実施形態では、マーカーの存在、不在および/または発現レベルは、定
量的PCR(Q-PCR)によって判定される。例えば、特定の遺伝子マーカー、例えば
SOX17、CXCR4、OCT4、AFP、TM、SPARC、SOX7、CDX2、
MIXL1、GATA4、HNF3β、HNF4アルファ、GSC、FGF17、VWF
、CALCR、FOXQ1、CMKOR1、CRIP1および本明細書に記載される他の
マーカーによって生成される転写産物の量は、定量的Q-PCRによって判定される。
【0128】
他の実施形態では、免疫組織化学的検査を使用して、上記の遺伝子によって発現される
タンパク質を検出する。さらに他の実施形態では、Q-PCRを免疫組織化学的な技法ま
たはフローサイトメトリー技法と併せて使用して、細胞型を有効かつ正確に特徴付け、同
定し、目的の細胞型におけるそのようなマーカーの量および相対的割合の両方を決定する
ことができる。一実施形態では、Q-PCRにより、細胞が混在する集団を含有する細胞
培養物におけるRNA発現のレベルを数量化することができる。しかし、Q-PCRでは
、目的のマーカーまたはタンパク質が同じ細胞で共発現されるかどうかをもたらすまたは
認定することはできない。別の実施形態では、Q-PCRをフローサイトメトリー法と併
せて使用して細胞型を特徴付け、同定する。したがって、本明細書に記載の方法と、例え
ば上記のものなどを組み合わせて使用することによって、内胚葉系列型細胞を含めた種々
の細胞型の完全な特徴付けおよび同定を実現および実証することができる。
【0129】
例えば、好ましい一実施形態では、膵臓前駆体または膵臓内胚葉またはPDX-1陽性
膵臓内胚葉は、Q-PCRおよび/またはICCによって実証される通り少なくともPD
X1、Nkx6.1、PTF1A、CPAおよび/またはcMYCを発現するが、そのよ
うな細胞は、PDX1陽性発現細胞と同定されるためには、ICCによって実証される通
り少なくともPDX1およびNkx6.1を共発現し、SOX17、CXCR4、または
CERを含めた他のマーカーを発現しない。同様に、in vitroまたはin vi
voで成熟ホルモン分泌膵臓細胞を適切に同定するために、例えばインスリン分泌細胞に
おいて、C-ペプチド(成熟かつ機能性のβ細胞におけるプロインスリンの適切なプロセ
シングの産物)およびインスリンが共発現されることがICCによって実証される。
【0130】
さらに、当技術分野で公知の他の方法も、マーカー遺伝子発現を定量化するために使用
することができる。例えば、マーカー遺伝子産物の発現は、目的のマーカー遺伝子産物に
特異的な抗体を使用することによって検出することができる(例えば、ウエスタンブロッ
ト、フローサイトメトリー分析など)。ある特定のプロセスでは、hES由来細胞に特有
のマーカー遺伝子の発現ならびにhES由来細胞に特有のマーカー遺伝子の有意な発現の
欠如。hES由来細胞型を特徴付け、同定するためのさらに別の方法は、上に示されてい
る関連出願に記載され、それらは参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0131】
増幅アッセイで使用するのに適する増幅プローブ/プライマー組合せは、以下の通りで
ある:インスリン(INS)(GenBank NM_000207):プライマーAA
GAGGCCATCAAGCAGATCA(配列番号1);CAGGAGGCGCATC
CACA(配列番号2);Nkx6.1(NM_006168):プライマーCTGGC
CTGTACCCCTCATCA(配列番号3);CTTCCCGTCTTTGTCCA
ACAA(配列番号4);Pdx1(NM_000209):プライマーAAGTCTA
CCAAAGCTCACGCG(配列番号5);GTAGGCGCCGCCTGC(配列
番号6);Ngn3(NM_020999):プライマーGCTCATCGCTCTCT
ATTCTTTTGC(配列番号7);GGTTGAGGCGTCATCCTTTCT(
配列番号8);FOXA2(HNF3B)(NM_021784):プライマーGGGA
GCGGTGAAGATGGA(配列番号9);TCATGTTGCTCACGGAGG
AGTA(配列番号10);グルカゴン(GCG)(NM_002054):プライマー
AAGCATTTACTTTGTGGCTGGATT(配列番号11);TGATCTG
GATTTCTCCTCTGTGTCT(配列番号12);HNF6(NM_03071
2):プライマーCGCTCCGCTTAGCAGCAT(配列番号13);GTGTT
GCCTCTATCCTTCCCAT(配列番号14);HNF4アルファ(NM_00
0457):プライマーGAAGAAGGAAGCCGTCCAGA(配列番号15);
GACCTTCGAGTGCTGATCCG(配列番号16);Sox17(NM_02
2454):プライマーGGCGCAGCAGAATCCAGA(配列番号17);NN
NNNNNNNNNNNNN NNNNN(配列番号18);HLxB9(NM_005
515):プライマーCACCGCGGGCATGATC(配列番号19);ACTTC
CCCAGGAGGTTCGA(配列番号20);Nkx2.2(NM_002509)
:プライマーGGCCTTCAGTACTCCCTGCA(配列番号21);GGGAC
TTGGAGCTTGAGTCCT(配列番号22);PTF1a(NM_178161
):プライマーGAAGGTCATCATCTGCCATCG(配列番号23);GGC
CATAATCAGGGTCGCT(配列番号24);SST(NM_001048):
プライマーCCCCAGACTCCGTCAGTTTC(配列番号25);TCCGTC
TGGTTGGGTTCAG(配列番号26);PAX6(NM_000280):プラ
イマーCCAGAAAGGATGCCTCATAAAGG(配列番号27);TCTGC
GCGCCCCTAGTTA(配列番号28);Oct4プライマー:TGGGCTCG
AGAAGGATGTG(配列番号29);GCATAGTCGCTGCTTGATCG
(配列番号30);MIXL1プライマーCCGAGTCCAGGATCCAGGTA(
配列番号31)CTCTGACGCCGAGACTTGG(配列番号32);GATA4
プライマーCCTCTTGCAATGCGGAAAG(配列番号33)CGGGAGGA
AGGCTCTCACT(配列番号34);GSCプライマーGAGGAGAAAGTG
GAGGTCTGGTT(配列番号35)CTCTGATGAGGACCGCTTCTG
(配列番号36);CERプライマーACAGTGCCCTTCAGCCAGACT(配
列番号37)ACAACTACTTTTTCACAGCCTTCGT(配列番号38);
AFPプライマーGAGAAACCCACTGGAGATGAACA(配列番号39)C
TCATGGCAAAGTTCTTCCAGAA(配列番号40);SOX1プライマー
ATGCACCGCTACGACATGG(配列番号41)CTCATGTAGCCCT
GCGAGTTG(配列番号42);ZIC1プライマーCTGGCTGTGGCAAG
GTCTTC(配列番号43)CAGCCCTCAAACTCGCACTT(配列番号4
4);NFMプライマーATCGAGGAGCGCCACAAC(配列番号45)TGC
TGGATGGTGTCCTGGT(配列番号46)。他のプライマーは、FGF17(
Hs00182599_m1)、VWF(Hs00169795_m1)、CMKOR1
(Hs00604567_m1)、CRIP1(Hs00832816_g1)、FOX
Q1(Hs00536425_s1)、CALCR(Hs00156229_m1)およ
びCHGA(Hs00154441_m1)を含め、ABI Taqmanを通して入手
できる。
【0132】
In vivoにおけるPDX1陽性膵臓内胚葉(ステージ1~4)の生成およびイン
スリン生成の要約
特定の内胚葉系列および膵臓内胚葉系列細胞の生成のための方法が本明細書で提供され
、関連出願、例えば2007年7月5日に出願の米国特許出願第11/773,944号
、表題METHODS OF PRODUCING PANCREATIC HORMO
NESの別の箇所で述べられ、それは2007年3月2日に出願の米国特許出願第11/
681,687号、表題ENDOCRINE PRECURSOR CELLS,PAN
CREATIC HORMONE-EXPRESSING CELLS AND MET
HODS OF PRODUCTIONの一部継続出願であり、それらは参照により本明
細書に完全に組み込まれる。
【0133】
簡単に述べると、多能性幹細胞、例えばhES細胞およびiPS細胞に関する本発明の
定方向分化法は、少なくとも4つまたは5つのステージで説明することができる。ステー
ジ1は、多能性幹細胞からの胚体内胚葉の生成であり、約2~5日、好ましくは2日また
は3日かかる。多能性幹細胞は、RPMI、TGFスーパーファミリーメンバー成長因子
、例えばアクチビンA、アクチビンB、GDF-8またはGDF-11(100ng/m
l)、WntファミリーメンバーまたはWnt経路アクチベータ、例えばWnt3a(2
5ng/ml)、あるいはrhoキナーゼまたはROCK阻害剤、例えばY-27632
(10μΜ)を含む培地に懸濁させ、成長、生存および増殖を増強するだけでなく細胞間
接着を促進する。約24時間後に、培地を、血清、例えば0.2%FBSなど、およびT
GFβスーパーファミリーメンバー成長因子、例えばアクチビンA、アクチビンB、GD
F-8またはGDF-11など(100ng/mL)、あるいはrhoキナーゼまたはR
OCK阻害剤を含有するRPMIを含む培地と交換し、さらに24時間(1日目)~48
時間(2日目)置く。あるいは、アクチビン/Wnt3aを含む培地中に約24時間置い
た後、その後の24時間、アクチビンを単独で含む培地(すなわち、培地はWnt3aを
含まない)で細胞を培養する。重要なことに、胚体内胚葉の生成には、低血清含有量、お
よびそれにより、低インスリンまたはインスリン様成長因子含有量の細胞培養条件が必要
である。本明細書に完全に組み込まれるMcLeanら(2007)Stem Cell
s 25:29-38を参照されたい。McLeanらにより、ステージ1においてhE
S細胞をわずか0.2μg/mLの濃度のインスリンと接触させることは、胚体内胚葉の
生成にとって有害であり得ることも示された。また別の当業者により、多能性細胞から胚
体内胚葉へのステージ1分化が実質的に本明細書およびD’Amourら(2005)に
記載の通り改変された。例えば、少なくとも、Agarwalら、Efficient
Differentiation of Functional Hepatocyte
s from Human Embryonic Stem Cells、Stem C
ells(2008)26:1117-1127;Borowiakら、Small M
olecules Efficiently Direct Endodermal D
ifferentiation of MouseおよびHuman Embryoni
c Stem Cells、(2009)Cell Stem Cell 4:348-
358;およびBrunnerら、Distinct DNA methylation
patterns characterize differentiated hu
man embryonic stem cells and developing
human fetal liver、(2009)Genome Res. 19:1
044-1056。他の内胚葉系列細胞を導出するためには胚体内胚葉の適切な分化、特
定化、特徴付けおよび同定が必要である。このステージにおける胚体内胚葉細胞は、SO
X17およびHNF3β(FOXA2)を共発現し、少なくともHNF4アルファ、HN
F6、PDX1、SOX6、PROX1、PTF1A、CPA、cMYC、NKX6.1
、NGN3、PAX3、ARX、NKX2.2、INS、GSC、GHRL、SST、ま
たはPPは評価できるほどには発現しない。
【0134】
ステージ2はステージ1から胚体内胚葉細胞培養物をとり、懸濁培養物をITSの1:
1000希釈液中の0.2%FBSなどの低い血清レベル、25ngのKGF(またはF
GF7)、あるいはROCK阻害剤を有するRPMIと24時間(2日目から3日目)イ
ンキュベートして、成長、生存、増殖を増強し、細胞間接着を促進することによって、前
腸内胚葉またはPDX1陰性前腸内胚葉を生成する。24時間後に(3日目~4日目)、
培地を、TGFβ阻害剤を含まないが、その代わりに、細胞の成長、生存および増殖を増
強するためにROCK阻害剤をなお含む同じ培地と交換し、さらに24時間(4日目~5
日目)~48時間(6日目)置く。前腸内胚葉を適切に特定化するための重要なステップ
はTGFβファミリー成長因子の除去である。したがって、2.5μMのTGFβ阻害剤
番号4またはTGFβI型受容体であるアクチビン受容体様キナーゼ(ALK)の特異的
な阻害剤である5μMのSB431542などのTGFβ阻害剤をステージ2細胞培養物
に添加することができる。ステージ2で生成した前腸内胚葉またはPDX1-陰性前腸内
胚葉細胞は、SOX17、HNF1βおよびHNF4アルファを共発現し、胚体内胚葉、
PDX1陽性膵臓内胚葉または膵臓前駆細胞または内分泌先駆体ならびに単一または複数
ホルモン型細胞の特質である、少なくともSOX17およびHNF3β(FOXA2)も
、HNF6、PDX1、SOX6、PROX1、PTF1A、CPA、cMYC、NKX
6.1、NGN3、PAX3、ARX、NKX2.2、INS、GSC、GHRL、SS
T、またはPPも評価できるほどには共発現しない。
【0135】
ステージ3(5~8日目)では、ステージ2から前腸内胚葉細胞培養物を取得し、1%
B27、0.25μMのKAADシクロパミン、0.2μMのレチノイン酸(RA)など
のレチノイドまたは3nMのTTNPBなどのレチノイン酸類似体、および50ng/m
Lのノギン中、DMEMまたはRPMIにより、約24時間(7日目)~48時間(8日
目)にわたってPDX1陽性前腸内胚葉細胞を生成する。具体的には、出願人らは、およ
そ2003年からDMEM-高グルコースを使用しており、その時点の全ての特許および
非特許開示物では、「DMEM-高グルコース」などの言及がなくてもDMEM-高グル
コースが使用されている。これは、一部において、Gibcoなどの製造者が、例えばD
MEM(Cat番号11960)およびKnockout DMEM(Cat番号108
29)などのように、DMEMをそのように名付けていなかったことが理由である。本出
願の出願日時点で、GibcoはさらなるDMEM製品を提供しているが、従来通り、例
えばKnockout DMEM(Cat番号10829-018)など、それらの高グ
ルコースを含有するある特定のDMEM産物に「高グルコース」と付けていないことに注
目すべきである。したがって、DMEMが記載されているそれぞれの場合に、高グルコー
スを含有するDMEMを意味すると推定することができ、これは、この分野における研究
開発を行っている他者には明らかなことであった。さらに、ROCK阻害剤またはrho
キナーゼ阻害剤、例えばY-27632などを使用して、成長、生存、増殖を増強するこ
とおよび細胞間接着を促進することができる。ステージ3で生成したPDX1陽性前腸細
胞は、PDX1およびHNF6、ならびにSOX9およびPROXを共発現し、上のステ
ージ1およびステージ2に記載されている胚体内胚葉細胞もしくは前腸内胚葉(PDX1
陰性前腸内胚葉)細胞またはPDX1陽性前腸内胚葉細胞を示すマーカーは評価できるほ
どには共発現しない。
【0136】
ステージ4(8~14日目)では、ステージ3から培地を取得し、それを、1%vol
/volのB27サプリメント、それに加えて50ng/mLのKGFおよび50ng/
mLのEGF、および時にはさらに50ng/mLのノギン中、DMEMを含有する培地
と交換する。再び、成長、生存、増殖を増強し、細胞間接着を促進するために、Y-27
632などのROCK阻害剤を使用することができる。ステージ4から生成されるPDX
1陽性膵臓内胚葉細胞は、少なくともPDX1およびNkx6.1、ならびにPTF1A
を共発現し、上においてステージ1、2および3で記載される胚体内胚葉または前腸内胚
葉(PDX1陰性前腸内胚葉)細胞の指標となるマーカーをあまり発現しない。
【0137】
あるいは、ステージ4からの細胞は、約1~6日間(15日目から20日目)の1体積
/体積%のB27サプリメント中のDMEM含有培地で、ステージ5でさらに分化させて
、内分泌先駆体もしくは前駆体型の細胞および/または単一および複数ホルモン性の膵臓
内分泌型の細胞をステージ4細胞から生成することができる。ステージ5から生成される
内分泌先駆細胞は、少なくともNGN3およびPAX4ならびにNkx2.2を共発現し
、上においてステージ1、2、3および4で記載される、胚体内胚葉または前腸内胚葉(
PDX1陰性前腸内胚葉)またはPDX1陽性膵臓内胚葉もしくは前駆細胞の指標となる
マーカーを感知し得るほどには発現しない。
【0138】
ステージ4で生成したPDX1陽性膵臓内胚葉をマクロ封入デバイスにローディングし
、完全に含有させ、患者に移植し、PDX1陽性膵臓内胚葉細胞をin vivoで膵臓
ホルモン分泌細胞、例えばインスリン分泌性細胞に成熟させる。PDX1陽性膵臓内胚葉
細胞の封入およびin vivoにおけるインスリンの生成は、米国特許出願第12/6
18,659号(‘659出願”)、表題「ENCAPSULATION OF PAN
CREATIC LINEAGE CELLS DERIVED FROM HUMAN
PLURIPOTENT STEM CELLS」、2009年11月13日出願に詳
細に記載されている。‘659出願は、仮特許出願第61/114,857号、表題「E
NCAPSULATION OF PANCREATIC PROGENITORS D
ERIVED FROM HES CELLS」、2008年11月14日出願;および
米国特許仮出願第61/121,084号、表題「ENCAPSULATION OF
PANCREATIC ENDODERM CELLS」、2008年12月9日出願の
優先権を主張するものである。これらの出願の各々の開示は、参照により本明細書に完全
に組み込まれる。
【0139】
本明細書に記載の方法、組成物およびデバイスは、現在、好ましい実施形態を表し、例
示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。その変化および他の使用は本
発明の主旨の範囲内に包含され、本開示の範囲によって定義されることが当業者には想起
されよう。したがって、本明細書に開示されている発明に対して、本発明の範囲および主
旨から逸脱することなく様々な置換および改変を行うことができることが当業者には明ら
かになろう。
【0140】
例えば、多能性細胞、例えばhES細胞およびiPS細胞から胚体内胚葉を生成するた
めに、成長因子またはシグナル伝達タンパク質のTGFβスーパーファミリーのメンバー
であるアクチビンAが使用されるが、参照により本明細書に完全に組み込まれる国際特許
出願第PCT/US2008/065686号、表題「GROWTH FACTORS
FOR PRODUCTION OF DEFINITIVE ENDODERM」、2
008年6月3日出願に記載されているものなど他のTGFβスーパーファミリーメンバ
ー、例えばGDF-8およびGDF-11を、胚体内胚葉を生成するために使用すること
ができる。
【0141】
ステージ2のPDX1陰性前腸内胚葉細胞をステージ3のPDX1陽性前腸細胞に分化
させるためにレチノイン酸(RA)を使用する。しかし、4-[(E)-2-(5、6、
7、8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-プロ
ペニル]安息香酸(またはTTNPB)などの他のレチノイドまたはレチノイン酸類似体
および同様の類似体(例えば、4-HBTTNPB)を使用することができる。
【0142】
ノギンは、例えば、骨形成タンパク質-4(BMP4)などのTGFβスーパーファミ
リーシグナル伝達タンパク質のメンバーを不活化するタンパク質である。しかし、コーデ
ィンおよびねじれ原腸形成(Twisted Gastrulation)(Tsg)な
どの他のBMP4阻害剤または抗BMP中和抗体によっても、BMPとその細胞表面受容
体の結合を妨げ、それにより、BMPシグナル伝達を有効に阻害することができる。ある
いは、ヒトノギンの遺伝子はクローニングされ、配列決定されている。参照により本明細
書に組み込まれる米国特許第6,075,007号を参照されたい。ノギン配列の解析に
より、Kunitz型プロテアーゼ阻害剤との相同性を有するカルボキシ末端領域が示さ
れ、これにより、潜在的に他のKunitz型プロテアーゼ阻害剤がBMPの阻害に関し
て同様の効果を有し得ることが示されている。
【0143】
最後に、本明細書および米国出願第12/618,659号に記載され、参照により本
明細書に完全に組み込まれているマクロ封入デバイスは、再度、単に例示的なものであり
、本発明の範囲を限定するものではない。特に、デバイスのサイズ、デバイス内のチャン
バーまたは亜区画が複数であること、またはポートが複数であること、さらにはデバイス
のローディングおよび抽出の機構などのデバイス設計の変化は全て本発明の主旨の範囲内
に包含される。したがって、本明細書に記載の分化方法への種々の置換および改変だけで
なく、封入デバイスへの種々の置換および改変も同様に、本明細書に開示されている発明
に対して、本発明の範囲および主旨から逸脱することなく行うことができることが当業者
には明らかになろう。
【0144】
胚体内胚葉の生成および組成物(ステージ1)
一部のプロセスでは、胚体内胚葉への分化は、胚体内胚葉への分化を促進するのに十分
な量でTGFβスーパーファミリーの成長因子を多能性細胞培養物に供給することによっ
て達成される。胚体内胚葉の生成のために有益であるTGFβスーパーファミリーの成長
因子は、Nodal/アクチビン、GDF-8、-9、-10、-11等またはBMPサ
ブグループから選択される。一部の好ましい分化プロセスでは、成長因子は、Nodal
、アクチビンA、アクチビンB、GDF-8、GDF-11およびBMP4からなる群か
ら選択される。さらに、成長因子Wnt3a、他のWntファミリーメンバー、およびW
nt経路アクチベータが胚体内胚葉細胞の生成のために有益である。ある特定の分化プロ
セスでは、前述の成長因子のいずれかの組合せを使用することができる。この方法および
他の方法は米国特許第7,510.876号に詳細に記載され、それは参照により完全に
本明細書に組み込まれる。
【0145】
多能性細胞を胚体内胚葉細胞に分化させるためのプロセスの一部に関して、上記の成長
因子は、成長因子が培養物中に、多能性細胞の少なくとも一部分から胚体内胚葉細胞への
分化を促進するために十分な濃度で存在するように細胞に供給される。いくつかのプロセ
スでは、上記の成長因子は、細胞培養物中に少なくとも約5ng/mL、少なくとも約1
0ng/mL、少なくとも約25ng/mL、少なくとも約50ng/mL、少なくとも
約75ng/mL、少なくとも約100ng/mL、少なくとも約200ng/mL、少
なくとも約300ng/mL、少なくとも約400ng/mL、少なくとも約500ng
/mL、少なくとも約1000ng/mL、少なくとも約2000ng/mL、少なくと
も約3000ng/mL、少なくとも約4000ng/mL、少なくとも約5000ng
/mLまたは約5000ng/mL超の濃度で存在する。
【0146】
胚体内胚葉細胞への多能性細胞の分化のためのある特定のプロセスでは、前述の成長因
子はそれらが添加された後に細胞培養物から除去される。例えば、成長因子を添加してか
ら約1日以内、約2日以内、約3日以内、約4日以内、約5日以内、約6日以内、約7日
以内、約8日以内、約9日以内または約10日以内にそれらを除去することができる。好
ましいプロセスでは、成長因子を添加した約4日後にそれらを除去する。
【0147】
本明細書に記載されるプロセスの一部の実施形態では、胚体内胚葉細胞はさらなる分化
の前に濃縮、単離および/または精製される。そのような実施形態では、胚体内胚葉細胞
は、任意の公知の方法を使用して濃縮、単離および/または精製することができる。好ま
しい実施形態では、胚体内胚葉細胞は、2004年12月23日に出願の米国特許出願第
11/021,618号、表題DEFINITIVE ENDODERM、および200
5年11月14日に出願の米国特許仮出願第60/736,598号、表題MARKER
S OF DEFINITIVE ENDODERMに記載される方法の1つまたは複数
を使用して濃縮、単離および/または精製され、その開示は、参照により完全に本明細書
に組み込まれる。
【0148】
好ましい実施形態では、ハウスキーピング遺伝子などの対照遺伝子のレベルに標準化さ
れ、比較されるとき、本明細書で生成され、記載される胚体内胚葉細胞は、比較的高いレ
ベルのCER、GSC、CXCR4、SOX17およびFOXA2遺伝子発現を有する。
【0149】
PDX1陰性前腸内胚葉の生成および組成物(ステージ2)
胚体内胚葉細胞は、PDX1陰性前腸内胚葉細胞を生成するこれらの細胞のさらなる分
化によって、膵臓分化の方向に特定化することができる。本明細書に記載される分化プロ
セスの一部では、胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物ならびに濃縮または精製された細胞集
団は、PDX1陰性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物および/または濃縮された細胞集団
へのさらなる分化のために使用することができる。
【0150】
一般的に、SOX17陽性胚体内胚葉細胞の細胞培養物または細胞集団でTGFβスー
パーファミリー成長因子シグナル伝達を低減、除去(eliminating)または取
り除く(removing)ことによって、胚体内胚葉細胞はPDX1陰性前腸内胚葉細
胞に分化する。一部の実施形態では、TGFβスーパーファミリー成長因子シグナル伝達
を低減または除去することは、外部から加えられるTGFβスーパーファミリー成長因子
、例えばアクチビンAを希釈するか、胚体内胚葉の細胞培養物または細胞集団から除去す
ることによって媒介される。他の実施形態では、TGFβスーパーファミリー成長因子シ
グナル伝達は、TGFβスーパーファミリー成長因子シグナル伝達をブロックする化合物
、例えばフォリスタチンおよび/またはノギンを胚体内胚葉細胞に供給することによって
低減または除去される。一部の実施形態では、TGFβスーパーファミリー成長因子シグ
ナル伝達は、胚体内胚葉細胞へのヒト多能性細胞の分化の後の約1日、約2日、約3日、
約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日または約10日を超える間
、低減または除去することができる。
【0151】
一部の実施形態では、FGFファミリー成長因子および/またはヘッジホッグ経路阻害
剤を胚体内胚葉細胞培養物または細胞集団に供給することによって、前腸内胚葉細胞への
胚体内胚葉細胞の分化が増強される。そのような実施形態では、FGFファミリー成長因
子および/またはヘッジホッグ経路阻害剤は、胚体内胚葉細胞培養物でのTGFβスーパ
ーファミリー成長因子シグナル伝達の低減または除去から約1日、約2日、約3日、約4
日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日の後、または約10日を超える
日数の後に供給される。好ましい実施形態では、FGFファミリー成長因子および/また
はヘッジホッグ経路阻害剤は、胚体内胚葉細胞培養物でのTGFβスーパーファミリー成
長因子シグナル伝達の低減または除去とほぼ同じ時期に供給される。
【0152】
好ましい実施形態では、胚体内胚葉細胞培養物または細胞集団に供給されるFGFファ
ミリー成長因子は、FGF10および/またはFGF7である。しかし、他のFGFファ
ミリー成長因子またはFGFファミリー成長因子類似体もしくは模倣体をFGF10およ
び/またはFGF7の代わりに、またはそれに加えて供給することができることが理解さ
れる。例えば、FGF1、FGF2、FGF3、およびFGF23までのそれらからなる
群から選択されるFGFファミリー成長因子を供給することができる。そのような実施形
態では、FGFファミリー成長因子および/またはFGFファミリー成長因子類似体もし
くは模倣体は、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも
約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少な
くとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/
ml、少なくとも約500ng/mlまたは少なくとも約1000ng/mlの濃度で存
在するように細胞培養物の細胞に供給される。
【0153】
他の好ましい実施形態では、ヘッジホッグ阻害剤は、KAAD-シクロパミンである。
しかし、他のヘッジホッグ阻害剤を使用することができることが理解される。そのような
阻害剤には、KAAD-シクロパミン類似体、ジェルビン、ジェルビン類似体、ヘッジホ
ッグ経路遮断抗体、および当業者に公知であるヘッジホッグ経路機能の任意の他の阻害剤
が含まれるが、これらに限定されない。単独で、またはFGFファミリー成長因子と併用
されるとき、ヘッジホッグ阻害剤は少なくとも約0.01μΜから50μΜの濃度で供給
することができる。
【0154】
胚体内胚葉細胞からのPDX1陰性前腸内胚葉細胞の集団の生成のための好ましいプロ
セスでは、TGFβスーパーファミリー成長因子シグナル伝達は、胚体内胚葉へのヒト多
能性細胞の実質部分の分化から約2日の間低減または除去される(例えば、下の実施例に
記載される3日、4または5日分化プロトコルの後)。同じ頃に、胚体内胚葉細胞の細胞
培養物または細胞集団に、ノギンおよびKAAD-シクロパミン、例えば、2mMのRA
または3nMのTTNPBの存在下のDMEM培地中に50ng/mlのノギンおよび0
.25μMのKAAD-シクロパミンを供給する。
【0155】
一部の実施形態では、PDX1陰性前腸内胚葉細胞は、レチノイン酸(RA)などのレ
チノイドを含有する培地と細胞を接触させるか、さもなければそれを細胞に供給すること
によって、PDX1陽性前腸内胚葉細胞にさらに分化させることができる。一部の実施形
態では、少なくとも約1nMから50μMの濃度で存在するように、レチノイドを細胞培
養物の細胞に供給する。そのような実施形態では、レチノイドは、胚体内胚葉細胞培養物
でのTGFβスーパーファミリー成長因子シグナル伝達の低減または除去から約1日、約
2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日の後、また
は約10日を超える日数の後に細胞に供給される。好ましい実施形態では、TGFβスー
パーファミリー成長因子シグナル伝達の低減または除去から約2~3日後に、約0.05
μΜのRAから約2μΜのRAがPDX1陰性前腸内胚葉細胞培養物に供給される。
【0156】
本明細書に記載される分化プロセスの一部では、前述の分化因子は添加された後に細胞
培養物から除去される。例えば、前述の分化因子は、添加してから約1日、約2日、約3
日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日または約10日以内に除去するこ
とができる。
【0157】
好ましい実施形態では、ハウスキーピング遺伝子などの対照遺伝子のレベルに標準化さ
れるとき、本明細書で生成され、記載されるPDX1陰性前腸内胚葉細胞は、比較的高い
レベルのSOX17、FOXA1、HNF1BおよびHNF4A遺伝子発現を有する。特
に、HNF4A遺伝子発現レベルは、例えば胚体内胚葉培養物からのTGFβスーパーフ
ァミリー成長因子シグナル伝達(例えば、アクチビン)の除去まで実質的に増加しない。
【0158】
PDX1陽性前腸内胚葉の生成および組成物(ステージ3)
PDX1陰性前腸内胚葉細胞は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞またはPDX1陽性膵臓
内胚葉またはそれらの等価物を生成するこれらの細胞のさらなる分化によって、膵臓分化
の方向にさらに特定化することができる。本明細書に記載される分化プロセスの一部では
、胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物ならびに濃縮または精製された細胞集団は、PDX1
陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物および/または濃縮された細胞集団へのさらなる分
化のために使用することができる。
【0159】
一般的に、レチノイン酸(RA)などのレチノイドをSOX17陽性前腸内胚葉細胞を
含む細胞培養物に供給することによって、PDX1陰性前腸内胚葉細胞をPDX1陽性前
腸内胚葉細胞に分化させる。分化プロセスの一部では、培養物中のPDX1陰性前腸内胚
葉細胞には、RAの添加の前かそれとほぼ同じ時期に線維芽細胞成長因子ファミリーのメ
ンバーも供給される。好ましい線維芽細胞成長因子は、FGF-7である。別の好ましい
プロセスでは、線維芽細胞成長因子は、任意の線維芽細胞成長因子、または線維芽細胞成
長因子2受容体IIIb(FGFR2(IIIb))を刺激するかさもなければそれと相
互作用するリガンドを含む。さらに好ましいプロセスでは、FGFファミリー成長因子は
、ヘッジホッグ経路阻害剤と併用される。好ましいヘッジホッグ経路阻害剤は、KAAD
-シクロパミンである。特に好ましい分化プロセスでは、RA存在下でのPDX1陰性胚
体内胚葉細胞を含む細胞培養物に、FGF-10および/またはKAAD-シクロパミン
が供給される。ある特定のプロセスでは、RA存在下でBMP4がFGF10および/ま
たはKAAD-シクロパミンとともに含まれてもよい。一部のプロセスでは、レチノイド
は、ΤGFβスーパーファミリー成長因子のメンバーおよび/またはConnaught
Medical Research Labs培地(CRML培地)(Invitro
gen、Carlsbad、CA)と併用される。
【0160】
本明細書に記載される分化プロセスの実施形態の一部に関して、レチノイドおよび/ま
たは前述の分化因子の組合せは、これらの因子がPDX1陽性前腸内胚葉細胞へのPDX
1陰性前腸内胚葉細胞培養物または細胞集団の少なくとも一部の分化を促進するのに十分
な濃度で細胞培養物または細胞集団に存在するように細胞に供給される。
【0161】
他のプロセスでは、FGF-10は、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約2ng
/ml、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25n
g/ml、および50μΜまでの濃度で存在するように、細胞培養物の細胞に供給される
。本発明の一部の実施形態では、線維芽細胞成長因子または線維芽細胞成長因子2受容体
IIIb(FGFR2(IIIb))を刺激するかさもなければそれと相互作用するリガ
ンドが、単独で、またはヘッジホッグ経路阻害剤と組み合わせて供給される。
【0162】
PDX1陰性前腸内胚葉細胞からのPDX1陽性前腸内胚葉細胞の集団の生成のための
好ましいプロセスでは、PDX1陰性前腸内胚葉細胞の細胞培養物または濃縮された細胞
集団に、FGF-7、KAAD-シクロパミンおよびレチノイン酸(RA)、例えば2μ
ΜのRA存在下のCMRL培地中の25ng/mlのFGF-7および0.2μΜのKA
AD-シクロパミンが供給される。
【0163】
本明細書に記載される一部のプロセスでは、TGFβシグナル伝達因子、例えばアクチ
ビンAおよび/またはアクチビンB、GDF-8、GDF-11等は、レチノイドおよび
/または線維芽細胞成長因子およびヘッジホッグ阻害剤と一緒に細胞培養物に供給される
。例えばそのようなプロセスでは、アクチビンAおよび/またはアクチビンBおよび/ま
たはGDF-8および/またはGDF-11は、少なくとも約5ng/ml、少なくとも
約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なく
とも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml
、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500
ng/mlまたは少なくとも約1000ng/mlの濃度で細胞培養物に供給される。
【0164】
一部のプロセスでは、分化因子および/またはCRML培地は、多能性細胞からの分化
の開始から約1日、2日、3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約
10日後、または約10日を超える日数の後に、PDX1陰性前腸内胚葉細胞に供給され
る。好ましいプロセスでは、分化因子および/またはCRML培地は、多能性幹細胞から
の分化の開始から約3日、または4日、または5日後にPDX1陰性前腸内胚葉細胞に供
給される。
【0165】
本明細書に記載されるある特定のプロセスでは、前述の分化因子は添加された後に細胞
培養物から除去される。例えば、前述の分化因子は、添加してから約1日、約2日、約3
日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日または約10日以内に除去するこ
とができる。
【0166】
これらおよび他の方法は、2005年10月27日に出願の米国特許仮出願第60/7
30,917号、表題PDX1-EXPRESSING DORSAL AND VEN
TRAL FOREGUT ENDODERMに詳細に記載され、PDX1陽性前腸内胚
葉細胞は、2005年4月26日に出願の米国特許出願第11/115,868号、表題
PDX1 EXPRESSING ENDODERMに見出すことができ、その開示は参
照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0167】
好ましい実施形態では、ハウスキーピング遺伝子などの対照遺伝子のレベルに標準化さ
れ、比較されるとき、本明細書で生成され、記載されるPDX1陽性前腸内胚葉細胞は、
比較的高いレベルのPDX1、NKX6.1、PTF1A、CPAおよびcMYC遺伝子
発現を有する。
【0168】
PDX1陽性膵臓内胚葉の生成および組成物(ステージ4)
PDX1陽性膵臓内胚葉または「膵臓上皮」またはより一般に膵臓前駆体の生成および
組成物は、2008年7月2日に出願の米国特許出願第12/167,227号、表題M
ETHODS OF PRODUCING PANCREATIC HORMONESに
詳細に記載され、それは米国特許第7,534,608号として2009年5月19日に
公布された。第12/167,227号出願は、2007年7月5日に出願の米国特許出
願第11/773,944号、表題METHODS OF PRODUCING PAN
CREATIC HORMONESの継続出願であり、それは2007年3月2日に出願
の米国特許出願第11/681,687号、表題ENDOCRINE PRECURSO
R CELLS,PANCREATIC HORMONE-EXPRESSING CE
LLS AND METHODS OF PRODUCTIONの一部継続出願である。
これらの出願の各々の開示は、参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0169】
第12/167,227号出願の実施例22は、本明細書ステージ1~4に記載される
細胞培養条件の様々な改変を詳細に記載する。一般に、ステージ3のPDX1陽性前腸内
胚葉型の細胞は、1体積/体積%のB27サプリメント中のDMEMに加えてノギン、ま
たは別のBMP4特異的阻害剤を含有する培地で、約1~3日、または約1~4日、また
は1~5日、または約1~6日の間培養される。ステージ4の終わりに、PDX1陽性膵
臓内胚葉が生成され、その細胞はPDX1およびNkx6.1ならびにPTF1Aを少な
くとも共発現する。細胞培養物は、ステージ5の単一もしくは複数ホルモン性内分泌細胞
、またはステージ1の胚体内胚葉細胞、またはステージ2のPDX1陰性前腸内胚葉細胞
、またはステージ3のPDX1陽性前腸内胚葉細胞の指標となる細胞を認め得る程には発
現しない。
【0170】
内分泌先駆細胞の生成および組成物(ステージ5)
本明細書に記載される一部の実施形態は、多能性細胞から開始して内分泌先駆細胞を生
成する方法に関する。上記の通り、内分泌先駆細胞は、最初に多能性細胞を分化させて胚
体内胚葉細胞を生成し、次に胚体内胚葉細胞をさらに分化させてPDX1陽性前腸内胚葉
細胞を生成することによって生成することができる。そのような実施形態では、PDX1
陽性前腸内胚葉細胞は、多分化能内分泌先駆細胞にさらに分化し、それはヒト膵島ホルモ
ン発現細胞に分化することが可能である。
【0171】
一実施形態では、PDX1陽性前腸内胚葉細胞は、内分泌先駆細胞の生成に十分な時間
、レチノイン酸などのレチノイドの存在下でPDX1陽性前腸内胚葉細胞のインキュベー
ションを続けることによって内分泌先駆細胞に分化する。一部の実施形態では、内分泌先
駆細胞の生成に十分な時間は、細胞培養物中の細胞の一部でのPDX1マーカーの発現の
後の約1時間から約10日間である。一部の実施形態では、レチノイドは細胞培養物中に
、細胞培養物中の細胞の一部でのPDX1マーカーの発現の後の約1時間、約2時間、約
4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約16時間、約1日、約2日、
約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、または約10日
を超える日数維持される。
【0172】
本明細書に記載される一部のプロセスでは、内分泌先駆細胞に細胞培養物または細胞集
団中のPDX1陽性前腸内胚葉細胞を分化させるために使用されるレチノイドの濃度は、
約1nMから約100μΜである。
【0173】
一部の好ましい実施形態では、ヒトPDX1陽性前腸内胚葉細胞を含む細胞培養物また
は細胞集団へのガンマセクレターゼ阻害剤の供給によって、PDX1陽性前腸内胚葉細胞
から膵臓内分泌先駆細胞への分化が媒介される。好ましい一実施形態では、ガンマセクレ
ターゼ阻害剤は、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル-L-アラニル)]-S
-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)である。
【0174】
他の実施形態では、ガンマセクレターゼ阻害剤は、分化プロセスの開始時に、例えば多
能性ステージに供給され、膵島ホルモン発現細胞への分化の間ずっと細胞培養物中に残存
する。さらに他の実施形態では、ガンマセクレターゼ阻害剤は、分化の開始の後に、しか
しPDX1陽性前腸内胚葉ステージへの分化の前に加えられる。好ましい実施形態では、
ガンマセクレターゼ阻害剤は、PDX1陽性内胚葉への胚体内胚葉の変換を促進する分化
因子の供給と同じ頃に、細胞培養物または細胞集団に供給される。他の好ましい実施形態
では、細胞培養物または細胞集団中の細胞の実質的な部分がPDX1陽性前腸内胚葉細胞
に分化した後に、ガンマセクレターゼ阻害剤は細胞培養物または細胞集団に供給される。
【0175】
内分泌先駆細胞へのPDX1陽性前腸内胚葉細胞の分化に関する一部の実施形態に関し
て、ガンマセクレターゼ阻害剤は、内分泌先駆細胞へのPDX1陽性細胞の少なくとも一
部の分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物または細胞集団に存在するように細胞に
供給される。一部の実施形態では、ガンマセクレターゼ阻害剤は、約0.01μΜから約
1000μΜの濃度で細胞培養物または細胞集団に存在する。好ましい実施形態では、ガ
ンマセクレターゼ阻害剤は、約0.1μΜから約100μΜの濃度で細胞培養物または細
胞集団に存在する。
【0176】
本明細書に記載される内分泌先駆細胞を生成するプロセスのある特定の実施形態では、
ガンマセクレターゼ阻害剤は、前に供給された1つまたは複数の分化因子が細胞培養物か
ら除去された後に供給される。例えば、前に供給される1つまたは複数の分化因子は、ガ
ンマセクレターゼ阻害剤の添加より約1日から10日前、または約10日以上前に除去す
ることができる。他の実施形態では、ガンマセクレターゼ阻害剤は、前に供給されたか、
ガンマセクレターゼ阻害剤と同じ頃に供給された1つまたは複数の分化因子を含む細胞培
養物または細胞集団に供給される。好ましい実施形態では、前に供給されたかガンマセク
レターゼ阻害剤と同じ頃に供給された分化因子としては、FGF-10、KAAD-シク
ロパミン、アクチビンA、アクチビンB、GDF-8、GDF-11、BMP4および/
またはRAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
本明細書に記載の本発明の一部の実施形態では、分化する細胞培養物または細胞集団に
、ガンマセレクターゼ阻害剤とほぼ同じ時間にエキセンディン4をもたらす。ある特定の
実施形態では、エキセンディン4を、細胞培養物または細胞集団中に少なくとも約0.1
ng/mLから、1000ng/mLまでの濃度で存在するようにもたらす。
【0178】
PDX1陽性前腸内胚葉細胞からの内分泌先駆細胞の生成のための好ましいプロセスで
は、PDX1陽性前腸内胚葉細胞の細胞培養物または細胞集団は、3μΜのDAPTおよ
び40ng/mlのエキセンディン4が供給される。特に好ましい実施形態では、細胞は
CMRLで分化する。別の特に好ましいプロセスでは、PDX1陽性前腸内胚葉細胞から
の内分泌先駆細胞の生成のために、PDX1陽性前腸内胚葉細胞の細胞培養物または細胞
集団には、2μΜのRAの存在下で3μΜのDAPTおよび40ng/mlのエキセンデ
ィン4が供給される。
【0179】
NGN3、NKX2.2および/またはPAX4マーカーの発現は、内分泌先駆細胞に
おいて分化の状態に応じて様々な異なるレベルにわたって誘導されることが理解されよう
。そのように、本明細書に記載の一部の実施形態では、内分泌先駆細胞または細胞集団に
おけるNGN3、NKX2.2および/またはPAX4マーカーの発現は、非内分泌先駆
細胞または細胞集団、例えば、多能性幹細胞、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉
細胞、未成熟膵島ホルモン発現細胞、成熟膵島ホルモン発現細胞、胚体外内胚葉細胞、中
胚葉細胞および/または外胚葉細胞におけるNGN3、NKX2.2および/またはPA
X4マーカーの発現の少なくとも約2倍~少なくとも約10,000倍である。他の実施
形態では、内分泌先駆細胞または細胞集団におけるNGN3、NKX2.2および/また
はPAX4マーカーの発現は、非内分泌先駆細胞または細胞集団、例えば、多能性幹細胞
、胚体内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、未成熟膵島ホルモン発現細胞、成熟膵
島ホルモン発現細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞および/または外胚葉細胞における
NGN3、NKX2.2および/またはPAX4マーカーの発現の少なくとも約4倍、少
なくとも約6倍~10,000倍である。一部の実施形態では、内分泌先駆細胞または細
胞集団におけるNGN3、NKX2.2および/またはPAX4マーカーの発現は、非内
分泌先駆細胞または細胞集団、例えば、多能性細胞様iPS細胞およびhES細胞、胚体
内胚葉細胞、PDX1陽性前腸内胚葉細胞、未成熟膵島ホルモン発現細胞、成熟膵島ホル
モン発現細胞、胚体外内胚葉細胞、中胚葉細胞および/または外胚葉細胞におけるNGN
3、NKX2.2および/またはPAX4マーカーの発現よりもはるかに高い。
【0180】
本発明の別の実施形態は、ヒト内分泌先駆細胞などのヒト細胞を含む細胞培養物または
細胞集団などの組成物であって、ヒト細胞の少なくとも約2%においてNGN3マーカー
の発現がAFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA
、INS、GCG、SST、GHRL、および/またはPAX6マーカーの発現よりも大
きい組成物に関する。他の実施形態では、ヒト細胞の少なくとも約5%~98%において
NGN3マーカーの発現がAFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、
SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL、および/またはPAX6マーカ
ーの発現よりも大きい。一部の実施形態では、細胞培養物または細胞集団中の、NGN3
の発現がAFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA
、INS、GCG、SST、GHRL、および/またはPAX6マーカーの発現よりも大
きいヒト細胞の百分率は、フィーダー細胞を考慮せずに算出する。
【0181】
本発明の一部の実施形態は、ヒト内分泌先駆細胞を含む細胞培養物または細胞集団など
の組成物であって、ヒト細胞の少なくとも約2%から少なくとも約98%超までにおいて
NKX2.2および/またはPAX4の発現がAFP、SOX7、SOX1、ZIC1、
NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL、および/ま
たはPAX6マーカーの発現よりも大きい組成物に関することが理解されよう。一部の実
施形態では、ヒト細胞の少なくとも約5%~ヒト細胞の98%においてNKX2.2およ
び/またはPAX4の発現がAFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA
、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL、および/またはPAX6マー
カーの発現よりも大きい。一部の実施形態では、細胞培養物または細胞集団中の、NKX
2.2および/またはPAX4の発現がAFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM
、MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRL、および/またはP
AX6マーカーの発現よりも大きいヒト細胞の百分率は、フィーダー細胞を考慮せずに算
出する。
【0182】
本発明の追加の実施形態は、in vitroで胚体内胚葉から分化した哺乳動物細胞
、例えばin vitroで胚体内胚葉から分化したヒト細胞を含む組成物、例えば細胞
培養物または細胞集団に関し、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なく
とも約2%では、NGN3、NKX2.2および/またはPAX4マーカーの発現は、A
FP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、CHGA、INS、
GCG、SST、GHRLおよび/またはPAX6マーカーの発現より大きい。他の実施
形態では、in vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の少なくとも約5%からin
vitroで胚体内胚葉から分化した細胞の98%で、NGN3、NKX2.2および
/またはPAX4マーカーの発現は、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、
MAFA、SYP、CHGA、INS、GCG、SST、GHRLおよび/またはPAX
6マーカーの発現より大きい。
【0183】
本明細書に記載のプロセスを使用して、他の細胞型を実質的に含まない、内分泌先駆細
胞を含む組成物を生成することができる。本発明の一部の実施形態では、本明細書に記載
の方法によって生成する内分泌先駆細胞集団または細胞培養物は、AFP、SOX7、S
OX1、ZIC1および/またはNFMマーカーを有意に発現する細胞を実質的に含まな
い。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成する細胞培養物の内分泌先
駆細胞集団は、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1、NFM、MAFA、SYP、C
HGA、INS、GCG、SST、GHRL、および/またはPAX6マーカーを有意に
発現する細胞を実質的に含まない。
【0184】
本発明の一実施形態では、マーカーの発現に基づく内分泌先駆細胞の記述は、高NGN
3、高NKX2.2、高PAX4、低AFP、低SOX7、低SOX1、低ZIC1、低
NFM、低MAFA;低SYP;低CHGA;低INS、低GCG、低SST、低GHR
Lおよび/または低PAX6である。
【0185】
未熟な膵島ホルモン発現細胞の生成
本明細書に記載される実施形態は、多能性細胞から開始して未熟な膵島ホルモン発現細
胞を生成する方法に関する。上記の通り、未熟な膵島ホルモン発現細胞は、最初に多能性
細胞を分化させて胚体内胚葉細胞を生成し、胚体内胚葉細胞を分化させて前腸内胚葉細胞
を生成し、前腸内胚葉を分化させてPDX1陽性前腸内胚葉細胞を生成し、次にPDX1
陽性前腸内胚葉細胞をさらに分化させて内分泌先駆細胞を生成することによって生成する
ことができる。一部の実施形態では、内分泌先駆細胞を未熟な膵島ホルモン発現細胞にさ
らに分化させることによって、そのプロセスを継続する。
【0186】
本発明の一部の実施形態では、細胞がNGN3を実質的に発現することを停止し、PA
X6の発現を開始するのに十分な時間、および細胞が少なくとも1つの膵島細胞ホルモン
を発現する能力を有するように、ガンマセクレターゼ阻害剤との内分泌先駆細胞の培養物
のインキュベーションを続けることによって、内分泌先駆細胞から未熟な膵島ホルモン発
現細胞への分化が進行する。一部の実施形態では、ガンマセクレターゼ阻害剤は、内分泌
先駆細胞の誘導の約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、
約9日、約10日後、または約10日以上後に除去される。好ましい一実施形態では、ガ
ンマセクレターゼ阻害剤は、N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル-L-アラニ
ル)]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル(DAPT)である。
【0187】
本明細書に開示される未熟な膵島ホルモン発現細胞の生成のためのある特定のプロセス
は、ヒト内分泌先駆細胞を含む細胞培養物または細胞集団への、ニコチンアミド、エキセ
ンディン4、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子1(IGF1)からなる
群から選択される1つまたは複数の因子の供給によって媒介される。一部の実施形態では
、上記の因子の全4つは、一緒に供給される。一部の実施形態では、上記の因子の1つま
たは複数は、内分泌先駆細胞の分化の前に細胞培養物に供給され、内分泌先駆細胞への細
胞培養物中の細胞の少なくとも一部の分化の間、細胞培養物に残存する。他の実施形態で
は、上記の因子の1つまたは複数は内分泌先駆細胞への細胞の実質的な部分の分化時かそ
の頃に細胞培養物に供給され、細胞の少なくとも実質的な部分が未熟な膵島ホルモン発現
細胞に分化するまで細胞培養物に残存する。本発明の一部の実施形態では、上記の因子の
1つまたは複数は、分化プロセスの開始時に、例えば多能性細胞ステージに供給され、未
熟な膵島ホルモン発現細胞への分化の間ずっと細胞培養物中に残存する。
【0188】
本明細書に開示される未熟な膵島ホルモン発現細胞の生成のための一部のプロセスでは
、ニコチンアミド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)またはニコチン酸
が、未熟な膵島ホルモン発現細胞への内分泌先駆細胞の少なくとも一部の分化を促進する
のに十分な濃度で細胞培養物または細胞集団に存在するように細胞に供給される。一部の
実施形態では、ニコチンアミドは、少なくとも約0.1mM、少なくとも約0.5mMか
ら1000mMの濃度で、細胞培養物または細胞集団に存在する。
【0189】
本明細書に開示される未熟な膵島ホルモン発現細胞の生成のための他のプロセスでは、
エキセンディン4が未熟な膵島ホルモン発現細胞への内分泌先駆細胞の少なくとも一部の
分化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物または細胞集団に存在するように細胞に供給
される。一部の実施形態では、エキセンディン4は、少なくとも約1ng/ml、少なく
とも約5ng/mlから1000ng/mlの濃度で、細胞培養物または細胞集団に存在
する。
【0190】
本明細書に開示される未熟な膵島ホルモン発現細胞の生成のためのさらに他のプロセス
では、HGFが未熟な膵島ホルモン発現細胞への内分泌先駆細胞の少なくとも一部の分化
を促進するのに十分な濃度で細胞培養物または細胞集団に存在するように細胞に供給され
る。一部の実施形態では、HGFは、少なくとも約1ng/ml、少なくとも約5ng/
mlから1000ng/mlの濃度で、細胞培養物または細胞集団に存在する。
【0191】
本明細書に開示される未熟な膵島ホルモン発現細胞の生成のためのさらに他のプロセス
では、IGF1が未熟な膵島ホルモン発現細胞への内分泌先駆細胞の少なくとも一部の分
化を促進するのに十分な濃度で細胞培養物または細胞集団に存在するように細胞に供給さ
れる。一部の実施形態では、IGF1は、少なくとも約1ng/mlから1000ng/
mlの濃度で、細胞培養物または細胞集団に存在する。
【0192】
本明細書に記載の未成熟膵島ホルモン発現細胞を生成するためのプロセスのある特定の
実施形態では、ニコチンアミド、エキセンディン4、HGFおよびIGF1のうちの1種
または複数種を、前に供給された1種または複数種の分化因子を細胞培養物から除去した
後に供給する。他の実施形態では、ニコチンアミド、エキセンディン4、HGFおよびI
GF1のうちの1種または複数種を、ニコチンアミド、エキセンディン4、HGFおよび
IGF1のうちの1種または複数種よりも前に供給された、またはほぼ同時に供給された
1種または複数種の分化因子を含む細胞培養物または細胞集団に供給する。好ましい実施
形態では、ニコチンアミド、エキセンディン4、HGFおよびIGF1のうちの1種また
は複数種よりも前に供給される、またはほぼ同時に供給される分化因子としては、これだ
けに限定されないが、DAPT、FGF-10、KAAD-シクロパミン、アクチビンA
、アクチビンB、BMP4および/またはRAが挙げられる。
【0193】
本発明の別の実施形態は、ヒト未成熟膵島ホルモン発現細胞などのヒト細胞を含む細胞
培養物または細胞集団などの組成物であって、ヒト細胞の少なくとも約2%においてMA
FB、SYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX6、NEUROD、PDX1
、HB9、GHRL、IAPP、INS、GCG、SST、PP、および/またはC-ペ
プチドマーカーの発現がNGN3、MAFA、MOX1、CER、POU5F1、AFP
、SOX7、SOX1、ZIC1および/またはNFMマーカーの発現よりも大きい組成
物に関する。他の実施形態では、ヒト細胞の少なくとも約5%において、ヒト細胞の少な
くとも約10%~ヒト細胞の95%においてまたはヒト細胞の少なくとも約98%におい
てMAFB、SYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX6、NEUROD、P
DX1、HB9、GHRL、IAPP、INS、GCG、SST、PP、および/または
C-ペプチドマーカーの発現がNGN3、MAFA、MOX1、CER、POU5F1、
AFP、SOX7、SOX1、ZIC1および/またはNFMマーカーの発現よりも大き
い。
【0194】
一部の実施形態では、MAFB、SYP、CHGA、NKX2.2、ISL1、PAX
6、NEUROD、PDX1、HB9、GHRL、IAPP、INS GCG、SST、
PPおよび/またはCペプチドの発現がNGN3、MAFA、MOX1、CER、POU
5F1、AFP、SOX7、SOX1、ZIC1および/またはNFMマーカーの発現よ
り大きい場合、細胞培養物または集団中のヒト細胞の百分率は、フィーダー細胞に関係な
く計算される。
【0195】
本発明のある特定の実施形態では、未成熟膵島ホルモン発現細胞を含む細胞培養物およ
び/または細胞集団は、グレリン、インスリン、ソマトスタチンおよび/またはグルカゴ
ンから選択される、1種または複数種の分泌されたホルモンを含む培地も含む。他の実施
形態では、培地は、C-ペプチドを含む。好ましい実施形態では、培地中の1種または複
数種の分泌されたホルモンまたはC-ペプチドの濃度は、細胞内DNA1μg当たり少な
くとも約1pmolのグレリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴンまたはC-ペ
プチドから、細胞内DNA1μg当たり少なくとも約1000ピコモル(pmol)のグ
レリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴンまたはC-ペプチドまでの範囲である
【0196】
インスリンをin vivoで生成させる方法
一部の実施形態では、上記のin vitroで導出された膵臓前駆細胞またはPDX
-1陽性膵臓内胚葉型細胞またはその等価物を哺乳動物対象に移植する。これらの方法は
、国際出願第PCT/US2007/015536号、表題「METHODS OF P
RODUCING PANCREATIC HORMONES」に詳しく記載され、それ
は参照により本明細書に完全に組み込まれる。好ましい実施形態では、哺乳動物対象はヒ
ト対象である。特に好ましい対象は、生理的に高い血中グルコース濃度に応答して十分な
レベルのインスリンを生成する対象の能力が限定される状態を有すると同定された対象で
ある。任意の特定の哺乳動物種についての生理的に高い血中グルコースレベルを構成する
血中グルコースレベルの範囲は、当業者には容易に決定することができる。認識される疾
患または状態をもたらすいかなる持続的な血中グルコースレベルも、生理的に高い血中グ
ルコースレベルとみなされる。
【0197】
本発明のさらなる実施形態は、in vitro多能性幹細胞またはその後代、例えば
、PDX-1陽性前腸内胚葉細胞、PDX-1陽性膵臓内胚葉もしくは膵臓前駆細胞、N
GN3陽性内分泌先駆体などの内分泌先駆体などの多分化能細胞、またはインスリン分泌
細胞、グルカゴン分泌細胞、ソマトスタチン(somatistatin)分泌細胞、グ
レリン分泌細胞、もしくは膵臓ポリペプチド分泌細胞などの機能的な分化したホルモン分
泌細胞から導出されるin vivoインスリン分泌細胞に関する。上記の最終分化した
細胞または多分化能細胞のいずれも、宿主、または哺乳動物に移植し、宿主血中グルコー
スレベルに応答してインスリンを分泌する細胞などの生理的に機能的なホルモン分泌細胞
に成熟させることができる。好ましい実施形態では、細胞はin vivoで奇形腫を形
成せず、そのように形成された場合には、移植の領域に局在したままであり、容易に切除
または除去することができる。特に好ましい実施形態では、細胞は、in vitroに
おける分化プロセスの間、または哺乳動物にin vivoで移植された際、またはin
vivoで機能的な島に成熟および発達する際に、いかなる核型異常も含有しない。
【0198】
さらに、本明細書に記載の実施形態は、工学的に操作されたまたは遺伝子組換えされた
、多能性細胞、ヒトiPS細胞などの多能性細胞から本明細書において提供される説明に
基づいて導出された多分化能細胞または分化した細胞に関するが、iPS細胞では、hE
S細胞およびhES由来細胞と同様の生理機能および遺伝子マーカーの発現プロファイル
が実証されるので、iPS細胞はin vivoにおける同様の生理的特性を有すること
が予測される。
【0199】
膵臓前駆体を封入する方法
一部の実施形態では、本明細書に記載の多能性細胞、多分化能細胞および分化した細胞
組成物を生物学的および/または非生物学的機械デバイスに封入することができ、封入さ
れたデバイスにより、細胞組成物が宿主から分離および/または隔離される。
【0200】
封入の方法は、2008年11月14日に出願の米国特許出願第61/114,857
号、表題ENCAPSULATION OF PANCREATIC PROGENIT
ORS DERIVED FROM HES CELLS、および2008年12月12
日に出願の米国特許出願第61/121,086号、表題ENCAPSULATION
OF PANCREATIC ENDODERM CELLSに詳細に記載され、それら
は参照により完全に本明細書に組み込まれ、半透膜、例えばTheracyte(商標)
またはGoreデバイスを使用する膵臓内胚葉細胞の封入を記載する。
【0201】
一実施形態では、hES由来の細胞は、生体適合性のポリエチレングリコール(PEG
)を使用して封入される。PEGをベースとした封入は、米国特許第7,427,415
号、表題IMPLANTATION OF ENCAPSULATED BIOLOGI
CAL MATERIALS FOR TREATING DISEASES;米国特許
第6,911,227号、表題GELS FOR ENCAPSULATION OF
BIOLOGICAL MATERIALS;および米国特許第6,911,227号、
第5,529,914号、第5,801,033号、第6,258,870号、表題GE
LS FOR ENCAPSULATION OF BIOLOGICAL MATER
IALSでさらに詳細に記載され、それらは参照により完全に本明細書に組み込まれ、ポ
リエチレングリコールを使用する細胞凝集体のコンフォーマルコーティングを記載する。
【0202】
一実施形態では、封入デバイスは、多能性由来細胞、例えば、PDX-1陽性前腸内胚
葉細胞、PDX-1陽性膵臓内胚葉もしくは前駆細胞、NGN3陽性内分泌先駆体などの
内分泌先駆体、または、インスリン分泌細胞、グルカゴン分泌細胞、ソマトスタチン分泌
細胞、グレリン分泌細胞、もしくは膵臓ポリペプチド分泌細胞などの機能的な分化したホ
ルモン分泌細胞を、移植された細胞集団が通過するのを防ぎ、それらをデバイス内に保持
すると同時に、ある特定の分泌されたポリペプチド、例えばインスリン、グルカゴン、ソ
マトスタチン、グレリン、膵臓ポリペプチドなどの通過を可能にする半透膜の中に含有す
る。あるいは、デバイスは血管化膜などの複数の膜を有する。
【0203】
ヒト多能性幹細胞、例えばhES細胞およびiPS細胞の成長、生存、増殖および細胞
間接着を増強および促進するための作用物質の使用
膜を介した細胞外シグナルの伝達により細胞調節に影響を及ぼし、今度はそれにより、
細胞内の生化学的な経路をモジュレートすることができる。タンパク質のリン酸化は、細
胞内シグナルが分子から分子へ伝搬され、最終的に細胞の応答がもたらされる1つの経過
を表すものである。これらのシグナルトランスダクションカスケードは、高度に調節され
ており、多くの場合、多くのプロテインキナーゼおよびホスファターゼが存在することに
よって証明されるように、重複している。ヒトにおいて、タンパク質チロシンキナーゼは
、糖尿病、がんを含めた多くの病態の進行において重要な役割を有することが分かってい
ることが報告されており、また、多種多様な先天性の症候群に関連付けられている。セリ
ントレオニンキナーゼ、例えばRhoキナーゼは、阻害された場合に、糖尿病、がん、お
よび種々の炎症性心血管障害およびAIDSを含めたヒト疾患の治療と関連し得る酵素の
クラスである。現在までに同定されている大多数の阻害剤は、ATP結合部位で作用する
。そのようなATP競合阻害剤は、ATP結合部位のあまり保存されていない領域を標的
とするそれらの能力による選択性が実証されている。
【0204】
低分子GTP結合性タンパク質のRhoキナーゼファミリーは、RhoA~EおよびR
hoG、Rac1およびRac2、Cdc42、およびTC10を含む少なくとも10種
のメンバーを含む。阻害剤は、多くの場合、ROK阻害剤もしくはROCK阻害剤または
Rhoキナーゼ阻害剤と称され、これらは、本明細書では互換的に使用される。RhoA
、RhoB、およびRhoCのエフェクタードメインは同じアミノ酸配列を有し、同様の
細胞内標的を有すると思われる。RhoキナーゼはRhoの最初の下流メディエーターと
して作動し、2つのアイソフォーム:α(ROCK2)およびβ(ROCK1)として存
在する。Rhoキナーゼファミリータンパク質は、それらのN末端ドメイン内に触媒(キ
ナーゼ)ドメインを有し、その中央部分にコイルドコイルドメインを有し、それらのC末
端領域内に推定プレクストリン相同性(PH)ドメインを有する。ROCKのRho結合
性ドメインはコイルドコイルドメインのC末端部分に局在し、GTPと結合した形態のR
hoとの結合により、キナーゼ活性の増強がもたらされる。Rho/Rhoキナーゼ媒介
性経路は、アンジオテンシンII、セロトニン、トロンビン、エンドセリン-1、ノルエ
ピネフリン、血小板由来成長因子、ATP/ADPおよび細胞外ヌクレオチド、およびウ
ロテンシンIIなどの多くのアゴニストによって開始されるシグナルトランスダクション
において重要な役割を果たす。Rhoキナーゼは、その標的エフェクター/基質のモジュ
レーションを通じて、平滑筋収縮、アクチン細胞骨格組織化、細胞の接着および運動性な
らびに遺伝子発現などの種々の細胞機能において重要な役割を果たす。動脈硬化症の発病
と関連すると認知されているいくつもの細胞機能の媒介においてRhoキナーゼタンパク
質が果たす役割により、これらのキナーゼの阻害剤も種々の動脈硬化性心血管疾患を治療
または予防するために有用であり得、また、内皮収縮に関与する。
【0205】
一部の実施形態では、これだけに限定されないが、Rhoキナーゼ阻害剤Y-2763
2、ファスジル(HA1077とも称される)、H-1152PおよびITS(インスリ
ン/トランスフェリン/セレン;Gibco)、Wf-536、Y-30141(米国特
許第5,478,838号に記載され、それは参照により本明細書に完全に組み込まれる
)およびそれらの誘導体、ならびにROCKに対するアンチセンス核酸、RNA干渉誘導
性核酸(例えば、siRNA)、競合的ペプチド、アンタゴニストペプチド、阻害性抗体
、抗体-scFV断片、ドミナントネガティブバリアントおよびその発現ベクターなどの
、細胞の成長、生存、増殖および細胞間接着を促進し、かつ/または支持する作用物質を
種々の細胞培養培地条件に添加する。さらに、ROCK阻害剤として他の低分子化合物が
公知であるので、そのような化合物またはその誘導体も本発明において使用することがで
きる(例えば、参照により本明細書に完全に組み込まれる米国特許出願第2005020
9261号、同第20050192304号、同第20040014755号、同第20
040002508号、同第20040002507号、同第20030125344号
および同第20030087919、ならびに国際特許公開第2003/062227号
、同第2003/059913号、同第2003/062225号、同第2002/07
6976号および同第2004/039796号を参照されたい)。
【0206】
本発明では、1種または2種またはそれ以上のROCK阻害剤の組合せも使用すること
ができる。これらの作用物質は、一部において、解離したhES細胞、iPSまたは分化
した細胞培養物、例えば、胚体内胚葉、前腸内胚葉、膵臓内胚葉、膵臓上皮、膵臓前駆体
集団、内分泌前駆体および集団などの再会合を促進することによって機能する。同様に、
作用物質は、細胞解離が行われない場合にも機能し得る。ヒト多能性幹細胞の成長、生存
、増殖および細胞間接着の増大は、細胞が懸濁液中の細胞凝集体から生成したものである
か、または接着プレート培養物(細胞外マトリックスの構成成分を含みまたは含まずに、
血清を含みまたは含まずに、線維芽細胞フィーダーを含みまたは含まずに、FGFを含み
または含まずに、アクチビンを含みまたは含まずに)から生成したものであるかとは独立
して実現された。これらの細胞集団の生存率の増加により、セルソーターを使用する精製
系が容易になり、改善され、したがって、細胞の回収の改善が可能になる。Y27632
などのRhoキナーゼ阻害剤の使用により、解離した単一細胞の段階的な継代の間、また
は低温保存からのそれらの生存が促進されることにより、分化した細胞型の増幅も可能に
なり得る。Y27632などのRhoキナーゼ阻害剤はヒト多能性幹細胞(例えばhES
細胞およびiPS細胞)およびそれが分化した細胞に対して試験されてきたが、Rhoキ
ナーゼ阻害剤は、他の細胞型、例えば、一般に、これだけに限定されないが、腸、肺、胸
腺、腎臓ならびに網膜色素上皮と同様の神経系細胞型を含めた上皮細胞に適用することが
できる。
【0207】
細胞培養培地中のROCK阻害剤の濃度は、その濃度により所望の効果が実現される、
例えば、細胞の成長、生存、増殖および細胞間接着の増強、増加、および/または促進が
実現される限りは、下記の実施例に記載されているものに限定されない。種々のROCK
阻害剤を種々の条件下で最適化することが必要な場合があることが当業者には理解されよ
う。例えば、Y-27632を使用する場合、好ましい濃度は、約0.01~約1000
μM、より好ましくは約0.1~約100μM、なおより好ましくは約1.0~約50μ
M、最も好ましくは約5~20μMの範囲であり得る。ファスジル/HA1077を使用
する場合、上述のY-27632濃度の約2倍または3倍で使用することができる。H-
1152を使用する場合、上述のY-27632濃度の量のおよその分数、例えば、約1
/10、1/20、1/30、1/40、1/50または1/60で使用することができ
る。使用するROCK阻害剤の濃度は、一部において、阻害剤の生物活性および効力なら
びにそれが使用される条件に左右される。
【0208】
ROCK阻害剤を用いて処理する時間および期間は、成長、生存、増殖(細胞集団)お
よび細胞間接着の増強、増加、および/または促進などの所望の効果に応じて限定される
場合もされない場合もある。しかし、ROCK阻害剤の添加は、実施例7によりよく記載
されている通り、驚くべき様式で分化にも影響を及ぼし得る。下記の実施例には、約12
時間、24時間、48時間、またはそれ以上にわたって処理されたヒト多能性幹細胞培養
物および/または分化した細胞培養物が記載されている。
【0209】
ROCK阻害剤を用いて処理されるヒト多能性幹細胞培養物の密度も同様に、それが、
細胞の成長、生存、増殖および細胞間接着の増強、増加、および/または促進などの所望
の効果が実現される密度である限りは限定されない。播種される細胞の細胞密度は、これ
だけに限定されないが、接着培養物または懸濁培養物の使用、使用する細胞培養培地の特
定のレシピ、成長条件および培養細胞の意図された使用を含めた種々の因子に応じて調整
することができる。細胞培養物の密度の例としては、これだけに限定されないが、1ml
当たり細胞0.01×10個、1ml当たり細胞0.05×10個、1ml当たり細
胞0.1×10個、1ml当たり細胞0.5×10個、1ml当たり細胞1.0×1
個、1ml当たり細胞1.2×10個、1ml当たり細胞1.4×10個、1m
l当たり細胞1.6×10個、1ml当たり細胞1.8×10個、1ml当たり細胞
2.0×10、1ml当たり細胞3.0×10個、1ml当たり細胞4.0×10
個、1ml当たり細胞5.0×10個、1ml当たり細胞6.0×10個、1ml当
たり細胞7.0×10個、1ml当たり細胞8.0×10個、1ml当たり細胞9.
0×10個、または1ml当たり細胞10.0×10個、またはそれ以上、例えば、
1mL細胞5×10個まで、またはそれ以上、または間の任意の値が挙げられ、良好な
細胞の成長、生存、増殖および細胞間接着を伴って培養された。
【0210】
TGFβ受容体ファミリーメンバーを活性化する作用物質の使用
さらに別の実施形態では、TGFβ受容体ファミリーメンバーを活性化する作用物質は
、成長因子のTGFβスーパーファミリーのメンバーを含み、本明細書に記載されている
。本明細書で使用される場合、「TGFβスーパーファミリーメンバー」またはその等価
物とは、TGFβ1、TGFβ2、TF-β3、GDF-15、GDF-9、BMP-1
5、BMP-16、BMP-3、GDF-10、BMP-9、BMP-10、GDF-6
、GDF-5、GDF-7、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP
-2、BMP-4、GDF-3、GDF-1、GDF11、GDF8、アクチビンβC、
βΕ、βΑおよびβΒ、BMP-14、GDF-14、MIS、インヒビンアルファ、L
efty1、Lefty2、GDNF、ニュールツリン(Neurteurin)、パー
セフィンおよびアルテミンなどのサブファミリーを含めた30種を超える構造的に関連す
るタンパク質を指す。Changら(2002)Endocrine Rev.23(6
):787-823を参照されたい。
【0211】
TGFβファミリーメンバーは、TGFβファミリーメンバーに応答して細胞の性質の
変化を伝達する、または他のやり方で引き起こすことに関与するポリペプチドまたは相互
作用の1種または複数種を刺激する化合物であるTGFβシグナル伝達経路活性化因子に
よって置き換えること、またはそれと併せて使用することができる。TGFβシグナル伝
達経路はTGFβファミリーメンバー自体を含む。TGFβスーパーファミリーメンバー
は、II型およびI型セリン-トレオニンキナーゼ受容体およびSmadとして公知の細
胞内エフェクターを通じたシグナル伝達によってシグナルを核に伝達する。これらの受容
体は、協同的に作用してリガンドに結合し、シグナルを伝達するI型受容体およびII型
受容体として公知の2つのサブファミリーに入る(Attisanoら、Mol Cel
l Biol 16(3)、1066-1073(1996))。リガンドはI型受容体
およびII受容体の細胞表面に結合し、リン酸化によるI型受容体の活性化を促進する。
この活性化された複合体が今度は細胞内Smadを活性化し、それが転写を調節する多サ
ブユニット複合体に集合する。TGFベータスーパーファミリーのメンバーは、2つのシ
グナル伝達サブグループ:TGFβ/アクチビンと機能的に関連するもの、およびBMP
/GDFサブファミリーと関連するものに分けられる。大部分のTGFβリガンドは、最
初にII型受容体に結合し、次いで、このリガンド/II型受容体複合体がI型受容体を
動員またはリン酸化すると考えられている(Mathews,L S、Endocr R
ev 15:310-325(1994);Massague、Nature Rev:
Mol Cell Biol.1、169-178(2000))。II型受容体キナー
ゼは、I型受容体キナーゼをリン酸化および活性化することにより、次いで、Smadタ
ンパク質をリン酸化および活性化する。TGFβ/アクチビンリガンドはTGFβおよび
アクチビンII型受容体に結合し、このアクチビン型経路を通じてSmad-2、Sma
d-3、NodalおよびLeftyシグナルを活性化することができる。BMP/GD
FリガンドはBMP II型受容体に結合し、Smad1、Smad5、およびSmad
8を活性化することができる。Derynck,Rら、Cell 95、737-740
(1998)を参照されたい。リガンド刺激の際、Smadは核内に移動し、転写複合体
の構成成分として機能する。
【0212】
TGFβシグナル伝達は、種々の機構を通じて正におよび負に調節される。陽性調節で
は、シグナルが生物学的活性のために十分なレベルまで増幅される。TGFβスーパーフ
ァミリーリガンドがII型受容体に結合し、これによりI型受容体が動員およびリン酸化
される。次いで、I型受容体により、受容体により調節されるSMAD(R-SMAD、
例えばSMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、およびSMAD8)がリン酸
化され、そこで共通のメディエーターSmadまたはco-SMADに結合することがで
きる。R-SMAD/coSMAD複合体は核内に蓄積され、そこで転写因子としての機
能を果たし、標的遺伝子発現の調節に関与する。例えば、成長分化因子としては1、2、
3、5、6、7、8、9、10、11、および15が挙げられる。また、好ましい一実施
形態では、GDF8およびGDF11はTGFβファミリーメンバーであり、同様にTG
Fβシグナル伝達経路活性化因子(陽性調節)でもあり、ActRII受容体の細胞外リ
ガンド結合性ドメイン部分に結合し、次いでActRIと複合体を形成し、それによりS
mad7負の制御因子の阻害およびSmad2/Smad3複合体のリン酸化を導くこと
によって作用する。Smad2/Smad3複合体はSmad4と会合して特定の遺伝子
の発現を調節する。
【0213】
TGFβシグナル伝達の負の調節は、細胞外、膜、細胞質および核レベルで起こる。T
GFβによって開始されるシグナル伝達を抑圧するために、シグナル伝達を妨害すること
ができる。これは、TGFβ受容体およびSMADタンパク質相互作用をブロックするか
それと競合するタンパク質などの、TGFβ受容体(複数可)とSMADタンパク質の間
の相互作用と拮抗またはそれを阻止する、当技術分野で公知である任意の手段によって達
成することができる。あるいは、シグナル伝達経路に沿うシグナル伝達を阻止するために
、当技術分野で公知である任意の手段によって、TGFβ受容体またはSMADタンパク
質の転写または翻訳を変化させることができる。様々なTGFβメンバータンパク質の正
および負の調節は、下の因子のいくつかのより詳細な記載によってさらに例示される。
【0214】
任意の作用物質の使用と同様に、細胞培養培地中の任意のTGFβスーパーファミリー
メンバーの濃度は、その濃度により、例えばTGFβ受容体ファミリーメンバーが活性化
されることなどの所望の効果を実現することができる限りは、下記の実施例に記載されて
いるものに限定されない。例えば、アクチビン、例えば、アクチビンAおよび/またはア
クチビンB、またはGDF8およびGDF-11を使用する場合、好ましい濃度は、約1
0~約300nM、より好ましくは約50~約200nM、なおより好ましくは約75~
約150nM、最も好ましくは約100~125nMの範囲であり得る。当業者は、任意
の濃度を容易に試験することができ、当技術分野における標準の技法を使用して、そのよ
うな濃度の有効性を決定すること、例えば、任意の細胞型について遺伝子マーカー(ge
ne maker)パネルの発現および非発現を決定することによって分化を評価するこ
とができる。
【0215】
ヒト多能性幹細胞を分化させるために使用されるこれらおよび他の成長因子は、200
8年6月3日に出願の米国特許出願第12/132,437号、表題GROWTH FA
CTORS FOR PRODUCTION OF DEFINITIVE ENDOD
ERMでさらに詳細に記載され、それは参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0216】
本発明を一般に記載したが、本明細書において提供される、単に例示するためのもので
あり、限定するものではないある特定の実施例を参照することにより、さらなる理解を得
ることができる。
【実施例
【0217】
上述のものが本発明の好ましい実施形態に関連すること、および本発明の範囲を逸脱し
ないでそこに多数の変更を加えることができることも理解するべきである。本発明は以下
の実施例でさらに例示されるが、それらはその範囲に制限を加えるものと決して解釈され
てはならない。逆に、様々な他の実施形態、改変形およびその同等物を用いることができ
ることを明らかに理解するべきであり、それらは、本明細書の説明を読んだ後ならば、本
発明の精神および/または添付の特許請求の範囲を逸脱しないで、当業者が思いつくこと
ができる。
【0218】
(実施例1)
胚体内胚葉および内胚葉中間体を経た膵臓の前駆体および内分泌細胞へのヒトiPS細
胞の分化
膵臓前駆体、内分泌前駆体およびホルモン発現内分泌細胞などの膵臓細胞型の集団を生
成するために、約2週(または14日)にわたる四(4)ステージ手順を使用して、懸濁
凝集体でヒト人工多能性幹(iPS)細胞を分化させた。本明細書で用いたヒトiPS細
胞系は、S.Yamanaka、京都大学、日本およびCellular Dynami
cs International,Inc.(CDI)によって提供された。
【0219】
本明細書に記載されるiPS細胞は、Shinya Yamanakaによって最初に
、その後CDIによって提供された。未分化iPS細胞は、20%ノックアウト血清代替
物を含有するDMEM/F12において、有糸分裂不活性化マウス胚線維芽細胞上で、ま
たは好ましくはフィーダーフリー(線維芽細胞フィーダー細胞層なし)で増殖させた。ア
キュターゼを使用して未分化iPS細胞を単細胞に解離させることによって分化を開始し
、RNAの単離と分析のために細胞試料をとった。細胞は、1:5000希釈のインスリ
ン-トランスフェリン-セレン(ITS)、アクチビンA(100ng/mL)、wnt
3a(50ng/mL)およびrhoキナーゼまたはROCK阻害剤、Y-27632を
10μΜで含有するRPMI+0.2体積/体積%FBSに、1ミリリットルにつき細胞
数1,000,000~2,000,000で再懸濁させ、回転プラットホームの上に置
いた超低付着6ウェルプレートに入れ、約100rpmで回転させた。培養物は、分化プ
ロセスの残りの間、培地を毎日交換し、100rpmで回転させた。iPSCの成長、継
代および増殖は、実質的に米国特許第7,961,402号および第8,211、699
号に記載されている通りであり、その開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0220】
多能性細胞、例えばhESまたはiPS細胞、および多能性細胞から導出された細胞の
凝集懸濁培養物を生成するための本明細書に記載の方法は、実質的に、2007年2月2
3日に出願された表題がCompositions and methods for
culturing differential cellsであるPCT/US200
7/062755、および2008年10月20日に出願された表題がMethods
and compositions for feeder-free pluripo
tent stem cell media containing human se
rumであるPCT/US2008/080516に記載されている通りであり、それら
は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0221】
本明細書に記載される方法は、例えば、Geron Corporationに帰属す
る、Bodnarらへの米国特許第6,800,480号に記載のように、培養容器を細
胞外マトリクスで先ずコーティングすることによって促進することができる。他の多能性
幹細胞、例えばhESおよびiPS細胞を培養するための他の方法と同様に、この方法は
、実質的に2008年10月20日に出願された表題がMethods and com
positions for feeder-free pluripotent st
em cell media containing human serumである、
参照により本明細書に完全に組み込まれる米国特許出願PCT/US2008/0805
16に記載されるように、可溶性ヒト血清を使用して培養することができる。
【0222】
本明細書に記載される方法は、Wisconsin Alumni Research
Foundation(WARF)に帰属する、参照により本明細書に完全に組み込ま
れるThomson,J.への米国特許第7,005,252号に記載されるように、線
維芽細胞フィーダー層だけ以外の供給源から供給される、外部から加えられた線維芽細胞
成長因子(FGF)によって促進することができる。
【0223】
回転の最初の約24時間の間に、互いに付着した単細胞は細胞凝集体を形成し、RNA
の単離と分析のために十分な細胞試料をとった。細胞凝集体は、直径が約60ミクロンか
ら120ミクロンであった。iPS細胞試料を回転プラットホームに置いてから約1日(
または24時間)後に、培養に、1:5000希釈のITS、アクチビンA(100~2
00ng/mL)、およびWnt3a(50~100ng/mL)を含有するRPMI+
0.2体積/体積%FBSを約1日間(0日目から1日目まで)、およびさらに1日間、
またはWnt3aのないこと以外は同じ培地を(1日目から2日目)与えた。RNAの単
離および分析のために毎日の細胞試料をとった。2日間の分化の後、培養物に、1:10
00希釈のITS、KGF(またはFGF7、25ng/mL)およびTGFβ阻害剤n
o.4(2.5μM)を含有するRPMI+0.2体積/体積%FBSを1日間(または
24時間、2日目から3日目まで)与えた。次の2日間(3日目から5日目)、TGFβ
阻害剤を培地から除いたこと以外は同じ成長因子カクテル培地をiPS細胞凝集懸濁液に
与えた。再び、このステージ(ステージ2または5日目)の終わりに、RNA単離のため
に細胞試料をとった。ステージ3(5日目から8日目)については、TTNPB[4-[
E-2-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタ
レニル)-1-プロペニル]安息香酸](3nM)、KAAD-シクロパミン(0.25
μΜ)およびノギン(50ng/mL)を含有するDMEM+1体積/体積%B27サプ
リメントに細胞培養培地を代えた。再び、このステージ(ステージ3または8日目)の終
わりに、RNAの単離と分析のために細胞試料をとった。ステージ4(8日目から14日
目)については、ノギン(50ng/mL)、KGF(50ng/mL)およびEGF(
50ng/mL)を含有するDMEM+1体積/体積%B27サプリメントに培地を代え
た。再び、ステージ4(または14日目)の終わりに、RNAの単離と分析のために細胞
試料をとった。
【0224】
分化中の様々なマーカー遺伝子の遺伝子発現を測定するために、リアルタイムPCRを
実施した。特異的マーカーまたは遺伝子の遺伝子発現は、ハウスキーピング遺伝子、サイ
クロフィリンGおよびTATA結合タンパク質(TBP)発現の平均発現レベルに先ず標
準化した。次に標準化した相対的な遺伝子発現は、未分化iPS細胞での発現レベルに対
して棒グラフに表示され、したがって様々な分化マーカーの上方制御倍率を表す。OCT
4については、遺伝子発現は、データセットの最低の試料(14日目)を設定するために
標準化され、したがって分化中の下方制御倍率を表す。
【0225】
図2A~Lは、未分化iPS細胞中の同じ遺伝子の発現レベルと比較した、同定された
遺伝子(例えば、Oct4、Brachyury、Cer1、GSC、FOXA2、FO
XA1、HNF6、PDX1、PTF1A、NKX6.1、NGN3およびINS)の相
対的な遺伝子発現を示す棒グラフである。遺伝子の発現レベルをハウスキーピング遺伝子
(対照)のセットに標準化し、2つの異なる時点での遺伝子発現レベルを比較することに
より、その遺伝子または発現マーカーに上方制御か下方制御があることが示された。OC
T4(図2A)については、遺伝子発現を標準化し、最低レベルの発現の試料を1に設定
した(14日目)。したがって、図2Aによって示されるように、OCT4の相対的な発
現レベルは、分化中(X軸、ステージ0から4、または0日目から14日目)の下方制御
倍率(y軸)を表す。
【0226】
図2Aに示すように、OCT4(POU5F1)は未分化iPS細胞において高レベル
で発現され、その後分化中(0日目から14日目)は下方制御を示す。14日目までには
、OCT4発現レベルは未分化細胞で観察される発現レベルから3000倍を超えて減少
した。対照的に、最初の2日間(1日目および2日目)中にbrachyury遺伝子(
BRACHYURY、図2B)発現の一過性の上方制御があった。brachyuryの
一過性の上方制御は、アクチビンAおよびwnt3aの適用による多能性/iPS細胞の
内胚葉系中胚葉へ誘導された分化の結果であった。3日目のステージ1の終わりまでのC
ER1、GSCおよびFOXA2の上方制御によって示されるように(図2C~E)、内
胚葉系中胚葉はアクチビンAへの連続曝露によって2日目および3日目の間に胚体内胚葉
にさらに分化した。分化の6日目までのFOXA1の上方制御、FOXA2発現の維持な
らびにCER1およびGSCの下方制御によって示されるように(図2C~F)、ステー
ジ2の間に、胚体内胚葉は腸管内胚葉に分化するようにさらに誘導された。8日目までの
HNF6およびPDX1の上方制御によって示されるように(図2G~H)、ステージ3
の間、レチノイド、シクロパミンおよびノギンへの曝露の結果、腸管内胚葉は後部前腸/
PDX1発現内胚葉に分化するようにさらに誘導された。14日目までのPTF1A、N
KX6-1、NGN3およびINSの上方制御によって示されるように(図2I~L)、
ステージ4の間、KGFおよびEGFへの曝露の結果、後部前腸/PDX1発現内胚葉は
、膵臓前駆体、内分泌前駆体およびホルモン発現内分泌細胞に分化するようにさらに誘導
された。
【0227】
(実施例2)
Rhoキナーゼ阻害剤は、iPS細胞の成長、生存、増殖および細胞間接着を促進する
様々なhESおよびiPS細胞系を分化させる方法は、実質的にここで、および実施例
1に記載される通りである。分化の間の成長、生存、増殖および細胞間接着を増強および
促進するために、ステージ1、2、3、4および5について記載される培養条件に加えて
、アポトーシス阻害剤および/またはRhoキナーゼもしくはROCK阻害剤を培地に加
えた。一般的に約10μΜのRhoキナーゼ阻害剤、例えばY-27632を、各ステー
ジで細胞培養に加えた。あるいは、少なくともステージ1および2、ならびにステージ4
および5、またはその任意の組合せでRhoキナーゼ阻害剤を加えた。分化したiPS懸
濁液(凝集体)細胞培養の形態および遺伝子マーカー発現プロファイルは、hES細胞か
ら導出された懸濁細胞培養のそれに実質的に類似する。
【0228】
図3および4は、それぞれステージ4と5からのiPS細胞培養の免疫細胞化学(IC
C)を示す。図3は、PDX1/NKX6.1共陽性細胞など、PDX1陽性膵臓内胚葉
(膵臓上皮または膵臓前駆体とも呼ばれる)の特徴を示す典型的な遺伝子マーカーを発現
する、ステージ4からの細胞凝集体を示す。図3に示されていないが、ステージ4細胞は
、インスリン(INS)、グルカゴン(GCG)、ソマトスタチン(SST)および膵臓
ポリペプチド(PP)などのステージ5細胞の特色をより示すホルモン分泌タンパク質ま
たは遺伝子マーカーを発現しない。図4は、ステージ5からのホルモン発現細胞の細胞凝
集体を示す。これらのICC結果は、QPCRを使用してさらに確認された。しかし、Q
PCRは試料または細胞培養で発現されるRNAの全レベルの全集団研究であるので、そ
れは任意の1つの細胞が複数のマーカーを発現することを確定的に示すことができない。
【0229】
(実施例3)
iPS導出膵臓前駆体の封入
現在まで、iPS細胞の生成方法およびiPS細胞の生成のための供給源が報告されて
いる。しかし、特定の疾患、例えば糖尿病を治療するための細胞療法での潜在的使用のた
めの、任意の機能性分化細胞への任意のiPS細胞の分化に関する十分な記載はない。
【0230】
ヒトiPS細胞から導出されたステージ4のPDX1陽性の膵臓内胚葉または膵臓前駆
細胞培養が、グルコース感受性インスリン分泌細胞にin vivoで発達および成熟す
ることが完全に可能かどうか判定するために、実質的に実施例1および2に記載のような
膵臓前駆体集団を、参照により本明細書に完全に組み込まれる2009年11月13日に
出願された米国特許出願12/618,659、表題ENCAPSULATION OF
PANCREATIC LINEAGE CELLS DERIVED FROM H
UMAN PLURIPOTENT STEM CELLS;ならびに米国特許第7,5
34,608号および第7,695,965号、表題METHODS OF PRODU
CING PANCREATIC HORMONESに記載のものに実質的に類似のマク
ロ封入デバイスに加えた。簡潔には、実質的に約3×10細胞数を有する、5-10-
20μLの重力沈降細胞懸濁凝集体を各デバイスに加えた。
【0231】
次に、哺乳動物、例えば免疫不全SCID/Bgマウスへの移植のためにデバイス内の
封入細胞を調製したが、ラット、ブタ、サルまたはヒト患者などのより大きな動物に移植
することができる。封入細胞を移植する方法およびデバイスは、実質的に、GELFOA
Mマトリックスに移植されて精巣上体の脂肪パッド(EFP)の下に移植される膵臓前駆
細胞等、米国特許出願第12/618,659号、米国特許第7,534,608号およ
び第7,695,965号に記載される通りである。
【0232】
これらの研究で免疫抑制は必要でなかったが、デバイス内の前駆体が完全に成熟してグ
ルコース応答性になるまで、最初の中間期間の間特定の哺乳動物のために免疫抑制が必要
とされることがある。一部の哺乳動物では、免疫抑制レジメンは約1、2、3、4、5、
6週間以上であってもよく、哺乳動物次第である。
【0233】
移植された細胞は、in vivoで分化させ、さらに成熟させた。移植された細胞が
例えば天然に存在するベータ細胞のように正常な生理機能を有するかどうか判定するため
に、ヒトCペプチドのレベルの検査によってヒトインスリンのレベルを判定する。ヒトC
ペプチドはヒトプロインスリンから切断または処理され、したがって、内因性マウスCペ
プチドでなくヒトCペプチドの特異的検出は、インスリン分泌が移植された(外因性)細
胞から導出されたことを示す。移植片を有する動物は、それらへのアルギニンまたはグル
コース、好ましくはグルコースのボーラス注射によって、2、3または4週ごとにヒトC
ペプチドのレベルを検査する。その後成熟したベータ細胞(分化した多能性iPS細胞か
ら導出された)は、天然に存在するか内因性のベータ細胞と同様に生理的に機能的で、グ
ルコース応答性であるはずである。一般的に、50pMまたは平均基礎(閾値)レベルを
上回るヒトCペプチドの量が、移植された前駆体からの今ではベータ細胞の機能の指標で
ある。
【0234】
参照により本明細書に完全に組み込まれるKroonら(2008)、前掲、米国特許
出願12/618,659、米国特許第7,534,608号;第7,695,965号
および第7,993,920号に記載のものと同様に、hIPS細胞から導出された封入
膵臓前駆体は、天然に存在する島のそれと同様の内分泌、腺房および管細胞を有する、機
能性の膵島クラスターに成熟することが期待される。また、移植前のhIPS細胞から導
出された精製または濃縮された膵臓前駆体も、機能性の膵島に成熟および発達し、in
vivoでインスリンを生成することが予想される。様々な分化した細胞集団を精製、濃
縮するための特定の実施形態は、2008年4月8日に出願された米国特許出願12/1
07,020、表題METHODS FOR PURIFYING ENDODERM
AND PANCREATIC ENDODERM CELLS DERIVED FR
OM HES CELLS、現在の米国特許第8,338,170号にさらに詳細に記載
され、その開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。凍結保存されたhIPS細
胞から導出された膵臓前駆体は、移植の前に解凍し、培養に適合させることができ、その
結果、in vivoで成熟してインスリンを生成することができることがさらに予想さ
れる。hIPS細胞から導出された移植された膵臓前駆体を有する糖尿病誘導動物では、
低血糖を改善することができる。
【0235】
要約すると、マクロ封入デバイス中のhIPS細胞から導出された完全封入膵臓前駆細
胞は、生理的に機能的な膵島に成熟し、in vivoでグルコースに応答してインスリ
ンを生成することが予想される。
【0236】
(実施例4)
膵臓前駆体およびホルモン分泌細胞組成物
それぞれ表5a、5bおよび6に示すように、フローサイトメトリーを用いて、分化し
たhIPS細胞集団を、PDX1陽性の膵臓内胚葉または膵臓前駆細胞(ステージ4);
および内分泌または内分泌先駆細胞(ステージ5)の含有量について分析した。表5bは
表5aのそれと同じデータセットであるが、比較のために表9のそれと同様に提示する。
全体のPDX1+およびNKX6.1+数はNKX6.1+/PDX1+/CHGA-細
胞集団(表5aの第5列)のそれと重複するので、表5a集団は互いと重複する、例えば
全細胞数は100%を超える。表5bはPDX1+だけおよび三重陰性(残留)データを
含み、それは表5aでは示されない。in vivo機能を判定するために、これらのi
PEC移植片の特定のもの、ならびに実質的に類似の処方を使用する他のものを動物に移
植したが、ヒト血清Cペプチドのレベルはどの潜在的治療目的のためにも十分に安定的で
なかった(データは示さず)。示す値は、所与の集団に属する全細胞の百分率である。懸
濁細胞凝集体中にある膵臓前駆体(NKX6.1(+)/PDX1(+)/クロモグラニ
ンA(-))の数およびNKX6.1+/PDX1-/CHGA-の非常に小さい集団は
、hES細胞から導出された膵臓前駆細胞懸濁凝集体で観察されたものと一致し、200
8年11月4日に出願された米国特許出願12/264,760、表題STEM CEL
L AGGREGATE SUSPENSION COMPOSITIONS AND
METHODS OF DIFFERENTIATION THEREOFに記載され、
参照により本明細書に完全に組み込まれる通り、ESCステージで凝集した。内分泌物お
よび/または内分泌先駆細胞のレベルも、参照により本明細書に完全に組み込まれる20
08年4月8日に出願された米国特許出願12/107,020、表題METHODS
FOR PURIFYING ENDODERM AND PANCREATIC EN
DODERM CELLS DERIVED FROM HES CELLS中のhES
由来の細胞培養物で得られたものと実質的に一致していた。hES由来の細胞の懸濁凝集
体と同様に、分化の特定のステージ(例えば、ステージ4)で培地中の異なる成長因子の
濃度を変化させることは、膵臓内胚葉、内分泌、PDX1陽性の内胚葉または非膵臓細胞
型の特定の集団を増加および/または減少させるはずである。
【表5】
【表6】
【0237】
(実施例5)
PEC受容体チロシンキナーゼ
上記の方法は、上記のSchulzら(2012)をもとにした下の表7に記載される
ものと実質的に同じである。本明細書に記載されるこれらおよび他の方法は、それらの開
示は参照により本明細書に完全に組み込まれる米国特許第7,964,402号;第8,
211,699号;第8,334,138号;第8,008,07号;および第8,15
3,429号等の、出願人の多くの特許および非特許公開文書に見出すことができる。
【表7】
【0238】
動物に移植されたiPS細胞および膵臓前駆体に上の方法を適用したとき、同じ方法を
hESCおよびhES導出膵臓前駆体に適用したときと比較して、出願人は同じく安定し
た(robust)in vivo機能を一貫して得たとは限らない。iPS細胞がhE
SCの形態および遺伝子発現パターンを有し、in vitroで胚様体およびin v
ivoでテラトーマを形成することができるヒト多能性幹細胞であり、それらが3つの胚
葉全てからの細胞を形成することができることを示していることを考慮すると、これは意
外であった。少なくとも、例えば上記の、Yuら(2007);米国特許出願公開第20
09/0047263号、国際特許出願公開WO2005/80598;米国特許出願公
開第2008/0233610号;および国際特許出願公開WO2008/11882、
を参照。これらの参考文献は、iPS細胞がESCの定義基準を満たすことを記載する。
したがって、完全に機能性のグルコース応答性細胞にin vivoでさらに成熟および
発達する、hESから導出された膵臓前駆細胞を与えるin vitro分化プロトコル
において、iPS細胞がESCの代用となることができることが予想される。しかし、上
の方法を使用する一貫しないin vivo機能データを考慮し、出願人は、膵臓前駆体
および/または膵臓内胚葉細胞(PEC)、すなわち、hESCから導出されたPECで
一貫して観察されているin vivo機能の実質的に類似の安定したレベルを提供する
ことが可能であるhiPSC(または「iPEC」)からのステージ4由来の細胞に特異
的である分化培地の処方を探索しようと努めた。
【0239】
出願人は、PECに存在する内分泌(CHGA+細胞)細胞が複数ホルモン性内分泌細
胞であり、in vivoでグルコース応答性インスリン分泌細胞を有する島を生成する
PEC中の細胞の亜集団でないことを前に報告した。上記Kellyら(2011)を参
照されたい。むしろ、それは、非内分泌細胞集団(CHGA-細胞)、特に、in vi
voで機能性の島を実際に生成するPECであると考えられている、NKX6.1および
PDX-1を共発現するものである。したがって、出願人は、内分泌および非内分泌亜集
団の相対比をモジュレートするか、変化させるか、シフトすることが、後のin viv
o機能に影響を及ぼすかどうかを探索した。
【0240】
hESCで受容体-リガンドシグナル伝達を解読する以前の努力は、自己複製を促進す
る成長因子の同定に成功を収め、規定の培地培養条件の開発を可能にした。上記Wang
ら(2007)を参照されたい。Wangらは、ERBB3に結合してERBB2との二
量体化を誘導し、その場面でhESCの自己複製に影響を及ぼすリガンドとしてヘレグリ
ン-1βを同定した。ERBBは受容体チロシンキナーゼ(RTK)であり、RTKは、
成長因子および他の細胞外シグナル伝達分子の受容体として作用する、広く発現される膜
貫通タンパク質である。リガンド結合の結果、それらは細胞質テール中の特定の残基でチ
ロシンリン酸化を受け、RTK媒介シグナル伝達に関与する他のタンパク質基質の結合の
ためのシグナル伝達カスケードを始動する。細胞の生存、増殖および運動性の調節を含む
いくつかの発達過程におけるRTK機能、およびがん形成でのそれらの役割は文書で十分
に立証されている。ERBBチロシンキナーゼ受容体は、発達中の胎児のヒト膵臓全体で
発現されることも知られていたが、特定のERBB受容体およびそれらのリガンドの特異
的役割は知られていない。Mari-Anne Huotariら(2002)ERRB
Signaling Regulates Lineage Determinati
on of Developing Pancreatic Islet Cells
in Embryonic Organ Culture、Endocrinology
143(11):4437~4446頁を参照されたい。
【0241】
上記Wangら(2007)によって実証される胎児のヒト膵臓での多能性幹細胞の自
己複製およびそれらの発現、ならびにヒト胎児膵臓でのERBB RTK発現でのERB
B RTKシグナル伝達の役割のために、次に出願人は、分化の間のPEC特定化、また
は自己複製の促進による増殖、または生理的に機能する島ホルモン分泌細胞へのin v
ivo成熟を促進するいくつかの他の未知の機構を向上させる可能性がある受容体および
リガンドを同定する努力の中で、hESCから導出されたin vitroの膵臓内胚葉
細胞(PEC)でRTKの潜在的な活性化の調査に取りかかった。以下の変更を除いて実
質的に表8に記載のように、分化凝集体の懸濁液でPECを生成した。
【0242】
RTKブロット分析のために、4つのPEC試料を生成した。db-N50 K50
E50でのPEC凝集体の「定常状態」試料を、ステージ4の終わり(またはd13)に
収集した。「絶食させた」試料は、db(DMEM高グルコースまたは0.5×B-27
サプリメント(Life Technologies)を追加したDMEM高グルコース
)培地だけ(成長因子なし)を与え、d13に収集した、d12PEC凝集体を表した。
2つの「パルス投与」試料は、d12にdb培地を与えてそこで培養し、次にd13に、
収集する前に15分間、db-K50 E50培地または2%FBS含有db培地のいず
れかを与えた。そのような条件は、ステージ4条件で活性であったRTKの検出、ならび
にKGF、EGFおよびインスリン(B27サプリメントに存在する)または血清のパル
ス投与でどのような応答を導き出すことができるか検出することを意図した。血清パルス
投与は、PECに存在し、本ステージ4条件で活性化することができるが刺激されないR
TKを潜在的に同定する、広域な成長因子刺激を意図した。
【0243】
RTK分析は、事実上前掲のWangら(2007)で前に記載される通りに実施した
。簡潔には、Proteome Profiler(商標)ヒトホスホRTK抗体アレイ
(R&D Sysytems)を、製造業者の指示通りに使用した。1%NP-40、2
0mMトリス-HCl(pH8.0)、137mM NaCl、10%グリセロール、2
.0mM EDTA、1.0mMオルトバナジウム酸ナトリウム、10μg/mLアプロ
チニン、および10μg/mLロイペプチンでタンパク質溶解物を調製した。500μg
の新鮮なタンパク質溶解物を、42個の抗RTK抗体および5つの陰性対照抗体のための
重複(duplicate)スポット、ならびに8つの抗ホスホチロシン陽性対照スポッ
トの点在するニトロセルロース膜と一晩インキュベートした(図5A)。配列された抗体
はリン酸化および非リン酸化RTKの細胞外ドメインを捕捉し、結合したホスホRTKは
、化学発光を使用して西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされた汎
抗ホスホチロシン抗体で検出される。RTKアレイレイアウトについては図5を、ならび
にアレイ中のRTKの一覧については下の表8を参照されたい。
【表8】
【0244】
RTKブロットの分析(図6A)は、hESCで以前に観察されたものと同様に、イン
スリン受容体およびIGF1受容体(それぞれIR、IGF1R)が全ての条件でリン酸
化され、活性化されたことを示した。上記Wangら(2007)を参照されたい。EG
F受容体(EGFR、ERBB1としても知られる)は定常状態条件でリン酸化されたが
、それはステージ4培地中のEGFの存在を考慮すると予想されていたことである。実際
、ERBB2の低レベルのリン酸化が、定常状態および絶食条件の両方で検出された。E
GFRおよびERBB2の両方のリン酸化は各パルス投与条件で上昇し、リガンドのパル
ス投与に応答する活性化を検出するアッセイの能力を確認した。リン酸化されたVEGF
R3も全ての条件で検出され、パルス投与試料で上昇した。このことは、PECが内因性
VEGFR3リガンドを生成することを示唆し、可能性のある候補はVEGF-Cおよび
Dであった。血清パルス投与は、低レベルのERBB3リン酸化を含め、さらなる受容体
を活性化するようであった。リン酸化ERBB2/3の検出は、ヘレグリン様EGFファ
ミリーメンバーがPECでシグナル伝達を活性化することができることを示唆する。TI
E-2は2つのアンギオポエチン受容体の1つであり、血清に応答して低いレベルでリン
酸化されるようであった。アンギオポエチン1およびアンギオポエチン4はTie-2の
リガンドを活性化することが公知であるが、アンギオポエチン2およびアンギオポエチン
3は、場面依存性競合的アンタゴニストとして機能する。HGF受容体(HGFR)も血
清パルス投与に応答してリン酸化され、肝細胞成長因子もPECでシグナル伝達を導き出
すことができることを示唆した。最後に、エフリンB2 RTK(EPHB2)の低レベ
ルのリン酸化が検出されたが、エフリン/Ephシグナル伝達は膜結合細胞間シグナル伝
達系であり、PEC分化で容易に活用されるようではない。興味深いことに、ERBB4
はリン酸化されなかった。したがって、RTK分析は、PECでリン酸化されるか、また
は異なる条件、例えば血清に応答してリン酸化することができるいくつかの受容体を鮮明
にした。これらの結果は、いくつかの可溶性リガンドがPECでRTKシグナル伝達を導
き出すことができ、細胞の増殖、分化および/または特定化に潜在的に影響を与え、した
がって、機能性の膵島への後のin vivo成熟に潜在的に影響を及ぼすことができる
ことを示唆する。
【0245】
(実施例6)
ヘレグリンおよびFGF2成長因子は、hESC組成物から導出されたPECに影響を
及ぼす
上の実施例5に記載のように特定の条件下で特定のRTKが活性化(またはリン酸化)
されることを実証したRTK分析を考慮し、また、少なくともERBB2およびERBB
3がPECで活性化される(ステージ1~4から13日間の分化後に)ようであったので
、出願人はステージ3および4の細胞に適用したときのヘレグリンの影響を判定しようと
努めた。
【0246】
ヘレグリンおよびFGFを使用して予備研究を実施した。これらの研究の特定のものに
、Rhoキナーゼ阻害剤、Y-27632が含まれた。これらの予備研究は、10ng/
mLヘレグリン-1β(Wangら(2007)に開示されるのと同じ濃度およびヘレグ
リン異性体)によるステージ1での1日間の多能性幹細胞の処置は、ヘレグリン-1β(
Hrg1β)のない懸濁培養でのhES導出細胞凝集体の凝集体サイズと比較して、懸濁
培養でhES導出細胞凝集体の細胞凝集体サイズを増加させた。細胞凝集体サイズの増加
は、動物での後の移植および機能検査のためにより大きな細胞量をもたらす点で有利であ
る。さらに、Hrg1βがステージ3で10ng/mLから50ng/mLに増加したと
き、凝集体ディスクサイズが増加した。この結果は、FGF2の不在下での培養と比較し
て50ng/mLの別の成長因子、FGF2がステージ3で使用されたときも観察された
。細胞凝集体サイズの増加は、ステージ3培養をFGF2曝露にさらなる日数、例えば2
日間と比較して3日間の50ng/mLのFGF2に曝露させたときも観察された。
【0247】
表9は、ステージ3および/またはステージ4にHrg1βおよびFGF2で処置した
PEC細胞のフローサイトメトリー分析の要約を提供する。内分泌細胞はCHGA陽性(
またはCHGA+)細胞と表し、非内分泌細胞はCHGA陰性(またはCHGA-)細胞
と表す。内分泌物(CHGA+)および非内分泌細胞(CHGA-)は、他のマーカーで
陽性に染色することができ、例えばPDX1および/またはNKX6.1に陽性に染色さ
れる。試験したマーカーのいずれにも染色しない細胞は、三重陰性細胞または残留細胞(
CHGA-/NKX6.1-/PDX1)と表す。
【表9】
【0248】
細胞凝集体サイズの増加がPEC亜集団に影響を及ぼすかどうか判定するために、PE
C集団の組成物をフローサイトメトリーによって分析した。細胞を分化するためにHrg
1βおよびFGF2が使用されなかった対照培養と比較して、PEC非内分泌亜集団(C
HGA-)は、ステージ3で10ng/mLのHrg1βの添加により54.01%から
61.2%に増加し、ステージ3で50ng/mLのHrg1βの添加により54.01
%から64.2%に増加した。内分泌亜集団(CHGA+)は、10ng/mLのHrg
1βの処置であまり影響を受けなかったが、50ng/mLでよりそうであった。一方、
残留細胞の相対レベルは減少し、50ng/mLのHrg1βでより減少した。したがっ
て、Hrg1β処置による細胞凝集体サイズの増加は、内分泌および残留亜集団と比較し
て非内分泌亜集団の増加に大部分帰された。
【0249】
ステージ3培養でのFGF2の影響も同様であったが、Hrg1βのそれよりさらに顕
著であった。例えば、PEC非内分泌亜集団(CHGA-)は、Hrg1βでそうであっ
たように増加した。これらの培養でのFGF2の主要な影響は、内分泌亜集団の実質的な
減少であった。ある場合には、これらの細胞は、3日間の処置でほとんど検出不能であっ
た(32.9%から0.33%)。したがって、FGF2で処置した培養の細胞凝集体サ
イズの増加は、非内分泌、一部の場合には残留細胞亜集団の増加(ステージ3の3日間で
13.1%から22.7%)に大部分帰された。
【0250】
したがって、ヘレグリンおよび/またはFGF2は、PEC集団での細胞の特定化にお
いて役割を果たすようである。多能性幹細胞との関連で使用されるとき、ヘレグリン単独
で細胞再生において役割を果たすと上記のWangら(2007)が報告したことを考慮
すると、これは意外である。
【0251】
(実施例7)
ヘレグリンによるiPS由来の細胞培養物の処置によってPECのin vivo移植
片機能を向上させる方法
iPECを生成するためにiPSCに適用したときの表7による方法は、動物で安定し
たin vivo機能を提供しなかったので、出願人はiPEC生成のための他の方法を
探索した。表7に示す標準方法の変更としては、限定されずに以下のものが挙げられる:
任意のiPSCの継代回数の最適化;BMPシグナル伝達のレベルをモジュレートするこ
と;増大および分化の間のiPSC懸濁凝集パラメータをモジュレートすること(例えば
せん断力、回転速度等);成長因子、例えばWnt、アクチビンおよびrhoキナーゼ阻
害剤の濃度、使用時期および使用期間の最適化;ならびに、分化プロトコルの1から4の
様々なステージでの、細胞の量、増殖、分化、生存等を向上させるための候補としての他
の成長因子による処置(例えばERBBリガンド)。ステージ1~4の間のiPSCの分
化方法をどのように最適化することができるか判断するために、これらの多くの反復実験
を単独で、または組合せで検証した。そのような最適化された分化方法は、移植したとき
に、hESCについて観察および報告されたものに類似した安定したグルコース応答性イ
ンスリン分泌細胞をin vivoでもたらしたiPEC集団を生成する。下の表10は
、後にin vivoでグルコース応答性島細胞に成熟するiPECにiPSCを分化さ
せることが実証された、ヘレグリンの有る無しのベースライン条件を記載する。ベースラ
イン条件は、ヘレグリンがステージ3および4で加えられたこと以外、本明細書の実施例
1、2および5ならびに表7に記載されるものに類似していた。30ng/mLのΗrg
1βを使用したが、10ng/mLから50ng/mLの濃度、または50ng/mLを
超える濃度でさえも適する。さらに、実施例2に記載の通り、Rhoキナーゼ阻害剤、Y
ー27632の添加が分化培養で維持された。
【表10】
【0252】
ステージ3および4の細胞亜集団に及ぼすヘレグリンまたはヘレグリンおよびrhoキ
ナーゼ阻害剤の添加の影響を判定するために、iPEC集団をフローサイトメトリーによ
って分析した。表11は、表10に示す配合、ならびにアクチビン濃度を200ng/m
Lに増加させることによって改変した配合を使用した、様々なiPEC集団のフローサイ
トメトリー分析の要約を提供する。さらに、表11は、各セットの実験(ヘレグリンの有
る無しのベースライン)で用いた一般的な条件、およびiPEC集団中の細胞型(内分泌
、非内分泌、PDX1だけおよび三重陰性または残留細胞亜集団)の相対的百分率を示す
。表11は、各実験で生成された細胞のin vivo機能に関するデータも開示する。
【表11】
【0253】
特定の条件において、PEC(hESC、E2354)およびiPEC(E2314、
E2344、E2347)集団中の細胞亜集団の比は変化した。例えば、時には、ベース
ライン(ヘレグリンなし)条件と比較して、内分泌(CHGA+)細胞の百分率は減少し
、非内分泌細胞(CHGA-/NKX6.1+/PDX1+)の百分率は増加した。ヘレ
グリンがこれらのPECおよびiPEC集団中の非内分泌細胞と比較した内分泌細胞の割
合の変化の原因となるようであったが、実験#2380(E2380)では、ヘレグリン
の添加によって内分泌(CHGA+)細胞のレベルは減少せずに増加した。
【0254】
PECおよびiPEC集団の構成の変化がin vivo機能に影響を及ぼしたかどう
かを判定するために、表11に記載される大部分の実験からのPECおよびiPEC移植
片を、実質的に本明細書ならびに上記のSchulzら(2012)およびKroonら
(2008)、および上記の米国特許第7,534,608号;第7,695,965号
;第7,993,920号および第8,278,106号を含む出願人の他の特許および
非特許出版物に前述の通り、マウスに移植した。簡潔には、PECおよびiPEC集団を
生分解性の半透過性細胞封入デバイスに全て封入し、そのいくつかは微穿孔を含んでいた
。デバイスは出願人によって製造され、2009年11月13日に出願された米国特許第
8,278,106号、表題ENCAPSULATION OF PANCREATIC
CELLS FROM HUMAN PLURIPOTENT STEM CELLS
で詳細に記載され、その開示は参照により本明細書に完全に組み込まれる。グルコース刺
激インスリン分泌(GSIS)アッセイを、移植の約56日後から実施した。グルコース
投与の前(空腹時)、およびグルコース投与の30分後および/または60分後の組合せ
で血液を収集した。グルコース投与に応答した血清中のヒトCペプチド濃度を測定するこ
とによって、移植片機能を評価した。
【0255】
血清に放出されるヒトCペプチドの量は、放出されるインスリンの量の指標となる。C
ペプチドはプロインスリンおよびプレプロインスリンのAおよびB鎖を接続または連結す
る短い31アミノ酸ペプチドであり、機能性ベータまたはインスリン分泌細胞によって分
泌される。上記Kroonら(2008)および他によって前述される通り、ヒトCペプ
チドの測定は、移植細胞による新規生成インスリンの放出の評価に適当である。したがっ
て、これらの動物の血清中のヒトCペプチドのレベルは、成熟したPECおよびiPEC
移植片のin vivo機能の尺度である。ヒトCペプチドは、移植後少なくとも8週ま
でに血清で検出された。追加の数週の移植および絶食により、グルコース刺激Cペプチド
レベルは増加し、Cペプチドのピークレベルはグルコース投与の60分後から30分後に
シフトし、それは、インスリン細胞の成熟に従う、グルコース投与へのより速い応答の指
標となる。機能を示すことができなかったか、不良な健康状態のために屠殺された少数の
マウスがいた。しかし、これらのマウスはさもなければ高機能を示した動物のコホート中
にあり、したがって、移植細胞が分化して機能する能力がないということよりも移植の失
敗を示唆した。
【0256】
図7A~Cは、E2344以外の表11に示す実験の全てについての、グルコース投与
後の血清中のヒトCペプチドレベルを示す。図7A~Cは、ベースライン対照と比較して
、ヘレグリン処置からもたらされた移植片が血清中ヒトCペプチドのより高いレベルを一
般に有したことを示す。例えば、図7Aでは実験2380において、ヘレグリンなしで調
製したもの(ベースライン)と比較して、ヘレグリン処置からもたらされた移植片の約5
倍の増加(グルコース投与の60分後に933pM:200pM)がある。実験2354
図7C)はベースライン対照と比較してヘレグリン処置からもたらされた移植片で血清
Cペプチドのより高いレベルを示さないので、ヘレグリンは、hESCから生成されるP
ECにより少ない影響を及ぼすようである。さらに、hESCから導出されたPEC(C
yT203)とiPSCから導出されたiPECを比較すると、iPEC移植片は、PE
C移植片と同等の機能をin vivoで有する(例えば、図7Aおよび図7B(iPS
C移植片)を図7C(CyT203 hESC)と比較する)。このように、iPEC移
植片は、PEC移植片と同じくらい頑強である。さらに、内分泌および非内分泌亜集団で
同じシフトを有しなかったE2380からのiPECも優れた機能を示したので、iPE
C集団のいくつか(例えばE2314、E2347およびE2354)に影響を及ぼすよ
うに見えた、内分泌細胞対非内分泌細胞の相対比は、in vivo機能に影響を及ぼさ
ないようであった(図7A~Cを参照)。
【0257】
グルコース刺激インスリン分泌を試験することに加えて、宿主動物のベータ細胞を破壊
した場合に、hESCから導出されたPECによって維持される正常血糖と同様の正常血
糖をそれらが単独で維持することができるかどうか判定するために、成熟したiPEC移
植片を試験した。これは、ヒトベータ細胞と比較してマウスベータ細胞に対してより強い
細胞毒性を示すベータ細胞毒素、ストレプトゾトシン(STZ)を使用して、移植された
マウスのベータ細胞を破壊することを必要とした。STZ処置の前後に各マウスについて
、ランダムな非絶食血中グルコースを測定した。STZ処置から13日目のiPEC移植
片の外植の結果、高血糖が再開した(血中グルコースの急騰を記す)が、それは内因性マ
ウス膵臓ではなくiPEC移植片による血糖症の制御を実証する(図8Aおよび図8B
参照する)。
【0258】
さらに、分化のステージ1~4の間にヘレグリンおよびrhoキナーゼ阻害剤が与えら
れたときに、相乗効果があるようであった(表10を参照する)。例えば、rhoキナー
ゼ阻害剤なしでステージ3および4でヘレグリンによって処置したiPSCは、目にみえ
て劣る細胞量をもたらし、移植を不可能にした。ヘレグリンおよびrhoキナーゼ阻害剤
の相乗効果のさらなる傍証が、実験のいくつか、例えばE2356、E2380で明白で
あったが、そこではrhoキナーゼ阻害剤単独によるベースライン条件は、rhoキナー
ゼ阻害剤とヘレグリンによる移植片と同じくらい安定的には機能しなかった(図7Aおよ
びBを参照)。ヘレグリン単独の添加が提供した細胞量は移植に不十分であり、rhoキ
ナーゼ阻害剤単独の添加(ベースライン条件)は不良なin vivo機能を有したので
、ヘレグリンおよびrhoキナーゼ阻害剤による処置は相加的でなかったようである。こ
のように、ヘレグリンだけまたはrhoキナーゼ阻害剤だけの提供は、2つを組み合わせ
た合計の影響に実質的に同等でない。すなわち、単独ではいずれもin vivoで安定
したグルコース応答性をもたらさないが、組み合わせるとそれらはhES由来の細胞のそ
れと同等のグルコース応答性をもたらす。したがって、ヘレグリンおよびrhoキナーゼ
阻害剤の両方の提供は、それらの組み合わせた影響が各々別々の影響の合計より大きいの
で相乗的であるようであった。すなわち、rhoキナーゼ阻害剤およびヘレグリンで処置
したiPECはin vivoで成熟してグルコース刺激インスリン分泌を示し、糖尿病
マウスモデルで正常血糖を維持することができた(図7A~Bおよび図8A~Bを参照さ
れたい)。
【0259】
ERBB機能性は、リガンド結合、受容体二量体化および受容体輸送を必要とする。各
過程での変動は、受容体およびそれらが制御する下流シグナルの差次的調節をもたらす場
合がある。例えば、異なるERBBリガンドはERBB受容体に異なる親和性で結合し、
それによってERBB二量体構成体のパターンおよび動態力学を変化させる。表12は、
リガンドおよび受容体結合複合体の多くの可能な異なる組合せを示す。この系の複雑性に
関するレビューは、Odaら(2005)A comprehensive pathw
ay map of epidermal growth factor recept
or signaling、Mol.Syst.Biol.、1(2005)およびLa
zzaraら(2009)Quantitative modeling perspe
ctives on the ERBB system of cell regula
tory processes、Experimental Cell Researc
h 315(4):717~725頁によって提供され、その開示は参照により本明細書
に完全に組み込まれる。
【表12】
【0260】
Huotariらは、ニューレグリン-4がグルカゴン(アルファ)細胞を代償にして
ソマトスタチン(デルタ)細胞の数を増加させることによって内分泌細胞亜集団の相対レ
ベルをモジュレートすることができること、およびニューレグリン-4は、内分泌(例え
ば、β-インスリン、α-グルカゴン、δ-ソマトスタチン、PP-膵臓ポリペプチド)
細胞に対する外分泌(例えば、アミラーゼ)細胞の比に影響を及ぼさないことを示唆した
。しかし、これらの研究は、E12.5日目のマウスから得られたホールマウント器官組
織培養の上でニューレグリン-4をインキュベートすることによって実施された。これら
のマウス外植細胞集団は、本明細書に記載されるステージ3(例えばPDX1陰性前腸内
胚葉)および/またはステージ4(PDX1陽性前腸内胚葉)細胞集団よりさらに分化し
ていた。ニューレグリン-4はERBB4 RTKだけに結合するので、ホールマウント
マウス培養物の内分泌亜集団だけをこの関係においてニューレグリン-4によってモジュ
レートすることができる。したがって、Hrg1はERBB3に結合してERBB2/3
の二量体化を誘導することが既に示されているので、本明細書に記載されるように、異な
るERBBリガンド、例えばHrg1によるステージ3(PDX1陰性前腸内胚葉)およ
び/またはステージ4(PDX1陽性前腸内胚葉)細胞の処置が、Huotariにおけ
るように相対的な内分泌亜集団をモジュレートするとは予想され得ない。しかし、図6
示すようにPECでのERBB2および3の低レベルの発現のために、ステージ3および
4型の細胞が低いレベルか高いレベルのERBB2および3を発現してHrg1に結合す
るかどうかは不明であった。
【0261】
さらに、異なる場面で、出願人はHrg1がERRB2/3に結合して、多能性幹細胞
の自己複製を促進したことを記載していた(Wangら(2007)を参照する)。Hr
g1がステージ3および4の場面で同じ能力で作用することができる可能性があるが、出
願人はPECの生成のための大部分の細胞増大が多能性幹細胞ステージ(ステージ0)で
起こることを以前に記載した。ステージ0の間、hESCは約二(2)週の間成長、継代
および増殖させられる。したがって、細胞増殖または細胞増殖をもたらす自己複製のほと
んどは、ステージ1~4の間には起こらない。上記Schulzら(2012)を参照さ
れたい。さらに、ERRB2/3がステージ3および4の間に存在すると仮定すると、誘
導される分化に影響を与えるのと反対に多能性幹細胞と同様の効果(自己複製)をヘレグ
リンが有すると予想し得る。そうすると、機能の差は、場面に、すなわち多能性幹細胞か
、内胚葉または膵臓系列の細胞型かに依存するようである。
【0262】
要約すると、前腸内胚葉(ステージ3)およびPDX1発現膵臓内胚葉細胞(ステージ
3の終わりおよびステージ4)へのヘレグリンまたはヘレグリンおよびrhoキナーゼ阻
害剤のin vitroでの提供は、移植されたときにin vivoで成熟してグルコ
ース応答性インスリン分泌細胞に発達するPECおよびiPEC集団を生成した(図7
よび8を参照する)。ヘレグリンまたはヘレグリンおよびrhoキナーゼ阻害剤のそのよ
うな使用は、ここで初めて報告された。そのような使用および影響は、特許または非特許
文献で前に記載されたものからは認識できない。
【0263】
本明細書に記載されるQ-PCR結果は免疫細胞化学(ICC)によってさらに確認す
ることができ、当業者が容易に実施することができることが理解される。
【0264】
本明細書に記載される方法、組成物およびデバイスは、現在好ましい実施形態の代表で
あり、例示的であり、本発明の範囲を限定することを意図していない。当業者は、本発明
の精神に包含され、開示の範囲によって規定される、それへの変更および他の使用を思い
つくであろう。したがって、本発明の範囲および精神を逸脱しない範囲で、様々な置換お
よび改変を本明細書に開示される本発明に加えることができることは、当業者には明らか
であろう。
【0265】
下の請求項およびこの開示全体において、語句「から事実上なる」は、語句の後に掲載
される任意の要素を含むことを意味し、掲載される要素について開示で特定される活性ま
たは作用に干渉しないか寄与しない他の要素に限定される。したがって、語句「から事実
上なる」は、掲載される要素は必要とされるか必須であるが、他の要素は任意選択であり
、掲載される要素の活性か作用にそれらが影響を及ぼすかどうかによって存在しても存在
しなくてもよいことを示す。さらに、数値、例えば量、濃度、百分率、割合または範囲が
列挙される実施形態では、言及される値は、「少なくとも約」その数値、「約」その数値
、または「少なくとも」その数値であってもよいことが理解される。
【0266】
実施形態
実施形態1.in vitroヒト膵臓内胚葉細胞培養物。
実施形態2.膵臓内胚葉細胞が多能性細胞から導出される、実施形態1に記載の細胞培
養物。
実施形態3.細胞培養物がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質と接触して
いる、実施形態1または2に記載の細胞培養物。
実施形態4.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質が、EGF(上皮成長因
子)、AREG(アンフィレグリン)、TGF-アルファ(トランスフォーミング成長因
子-アルファ)、Btc(ベータセルリン)、HBEGF(ヘパリン結合EGF)、Er
eg(エピレグリン)、ニューレグリンまたはヘレグリンである、実施形態3に記載の細
胞培養物。
実施形態5.膵臓内胚葉細胞が膵臓前駆細胞および複数ホルモン性内分泌細胞を含む、
実施形態1~4のいずれか1つに記載の細胞培養物。
実施形態6.膵臓前駆細胞がNKX6.1を発現するがCHGAを発現しない、実施形
態5に記載の細胞培養物。
実施形態7.複数ホルモン性内分泌細胞がCHGAを発現する、実施形態5に記載の細
胞培養物。
実施形態8.膵臓内胚葉細胞がCHGA陽性およびCHGA陰性細胞を含む、実施形態
1~4のいずれか1つに記載の細胞培養物。
実施形態9.膵臓内胚葉細胞の少なくとも30%はCHGA陰性細胞である、実施形態
1~8のいずれか1つに記載の細胞培養物。
実施形態10.膵臓内胚葉細胞の少なくとも50%はPDX1陽性細胞である、実施形
態1~9のいずれか1つに記載の細胞培養物。
実施形態11.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質がヘレグリン-4であ
る、実施形態3に記載の細胞培養物。
実施形態12.線維芽細胞成長因子(FGF)と接触している、実施形態1~11のい
ずれか1つに記載の細胞培養物。
実施形態13.FGFがFGF-7である、実施形態12に記載の細胞培養物。
実施形態14.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質およびFGFと接触し
ている、実施形態1~13のいずれか1つに記載の細胞培養物。
実施形態15.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質およびrhoキナーゼ
阻害剤と接触している、実施形態1~15のいずれか1つに記載の細胞培養物。
実施形態16.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質、FGFおよびrho
キナーゼ阻害剤と接触している、実施形態1~16のいずれか1つに記載の細胞培養物。
実施形態17.in vitroヒト膵臓内胚葉集団。
実施形態18.膵臓内胚葉細胞が多能性細胞から導出される、実施形態17に記載の細
胞集団。
実施形態19.多能性細胞がヒト胚性幹細胞または脱分化した遺伝的にリプログラミン
グされた細胞である、実施形態18に記載の細胞集団。
実施形態20.細胞培養物がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質と接触し
ている、実施形態17~19のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態21.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質が、EGF(上皮成長
因子)、AREG(アンフィレグリン)、TGF-アルファ(トランスフォーミング成長
因子-アルファ)、Btc(ベータセルリン)、HBEGF(ヘパリン結合EGF)、E
reg(エピレグリン)、ニューレグリンまたはヘレグリンである、実施形態20に記載
の細胞集団。
実施形態22.膵臓内胚葉細胞が膵臓前駆細胞および複数ホルモン性内分泌細胞を含む
、実施形態17~21のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態23.膵臓前駆細胞がNKX6.1を発現するがCHGAを発現しない、実施
形態22に記載の細胞集団。
実施形態24.複数ホルモン性内分泌細胞がCHGAを発現する、実施形態22に記載
の細胞集団。
実施形態25.膵臓内胚葉細胞がCHGA陽性およびCHGA陰性細胞を含む、実施形
態17~24のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態26.膵臓内胚葉細胞の少なくとも30%はCHGA陰性細胞である、実施形
態17~25のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態27.膵臓内胚葉細胞の少なくとも50%はPDX1陽性である、実施形態1
7~26のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態28.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質がヘレグリン-4であ
る、実施形態20に記載の細胞集団。
実施形態29.細胞培養物が線維芽細胞成長因子(FGF)と接触している、実施形態
17~28のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態30.FGFがFGF-7である、実施形態29に記載の細胞集団。
実施形態31.細胞培養物がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質およびF
GFと接触している、実施形態17~30のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態32.細胞培養物がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質およびr
hoキナーゼ阻害剤と接触している、実施形態17~30のいずれか1つに記載の細胞集
団。
実施形態33.細胞培養物がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質、FGF
およびrhoキナーゼ阻害剤と接触している、実施形態17~20のいずれか1つに記載
の細胞集団。
実施形態34.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質と接触しているヒト膵
臓内胚葉細胞を含むin vitro細胞集団。
実施形態35.膵臓内胚葉細胞が多能性細胞から導出される、実施形態34に記載の細
胞集団。
実施形態36.多能性細胞がヒト胚性幹細胞または脱分化した遺伝的にリプログラミン
グされた細胞である、実施形態35に記載の細胞集団。
実施形態37.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質が、EGF(上皮成長
因子)、AREG(アンフィレグリン)、TGF-アルファ(トランスフォーミング成長
因子-アルファ)、Btc(ベータセルリン)、HBEGF(ヘパリン結合EGF)、E
reg(エピレグリン)、ニューレグリンまたはヘレグリンである、実施形態34~36
のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態38.膵臓内胚葉細胞が膵臓前駆細胞および複数ホルモン性内分泌細胞を含む
、実施形態34~37のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態39.膵臓前駆細胞がNKX6.1を発現するがCHGAを発現しない、実施
形態38に記載の細胞集団。
実施形態40.複数ホルモン性内分泌細胞がCHGAを発現する、実施形態38に記載
の細胞集団。
実施形態41.膵臓内胚葉細胞がCHGA陽性およびCHGA陰性細胞を含む、実施形
態34~40のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態42.膵臓内胚葉細胞の少なくとも30%はCHGA陰性細胞である、実施形
態34~41のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態43.膵臓内胚葉細胞の少なくとも50%はPDX1陽性である、実施形態3
4~42のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態44.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質がヘレグリン-4であ
る、実施形態34~36のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態45.ヒト膵臓内胚葉細胞が線維芽細胞成長因子(FGF)と接触している、
実施形態34~44のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態46.FGFがFGF-7である、実施形態45に記載の細胞集団。
実施形態47.ヒト膵臓内胚葉細胞がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質
およびFGFと接触している、実施形態34~46のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態48.ヒト膵臓内胚葉細胞がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質
およびrhoキナーゼ阻害剤と接触している、実施形態34~47のいずれか1つに記載
の細胞集団。
実施形態49.ヒト膵臓内胚葉細胞がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質
、FGFおよびrhoキナーゼ阻害剤と接触している、実施形態34~48のいずれか1
つに記載の細胞集団。
実施形態50.インスリンを生成する方法であって、
a.前腸内胚葉細胞をERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質と接触させ、そ
れにより膵臓内胚葉を含む細胞集団を生成するステップと、
b.ステップ(a)の膵臓内胚葉をin vivoで移植し、成熟させ、それによりイ
ンスリン分泌細胞を得るステップであって、インスリン分泌細胞がグルコース刺激に応答
してインスリンを分泌するステップと
を含む方法。
実施形態51.インスリンを生成する方法であって、
a.脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞から導出された前腸内胚葉細胞を
ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質とin vitroで接触させ、それに
より、内分泌および非内分泌亜集団を含む細胞集団を生成するステップと、
b.ステップ(a)の亜集団をin vivoで移植し、成熟させ、それによりインス
リン分泌細胞を得るステップであって、インスリン分泌細胞がグルコース刺激に応答して
インスリンを分泌するステップと
を含む方法。
実施形態52.インスリンを生成する方法であって、
a.膵臓内胚葉細胞をin vivoで移植し、成熟させ、それによりインスリン分泌
細胞を得るステップであって、インスリン分泌細胞がグルコース刺激に応答してインスリ
ンを分泌するステップ
を含む方法。
実施形態53.膵臓内胚葉細胞が前腸内胚葉細胞をERBBチロシンキナーゼ受容体活
性化作用物質と接触させることによって作製される、実施形態52に記載の方法。
実施形態54.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質が、EGF(上皮成長
因子)、AREG(アンフィレグリン)、TGF-アルファ(トランスフォーミング成長
因子-アルファ)、Btc(ベータセルリン)、HBEGF(ヘパリン結合EGF)、E
reg(エピレグリン)、ニューレグリンまたはヘレグリンである、実施形態50~52
および53のいずれか1つに記載の方法。
実施形態55.前腸内胚葉細胞が線維芽細胞成長因子(FGF)とさらに接触している
、実施形態50~52および53~54のいずれか1つに記載の方法。
実施形態56.FGFがFGF-7である、実施形態55に記載の方法。
実施形態57.前腸内胚葉細胞がrhoキナーゼ阻害剤とさらに接触している、実施形
態50~52および53~56のいずれか1つに記載の方法。
実施形態58.前腸内胚葉細胞がrhoキナーゼ阻害剤およびFGFとさらに接触して
いる、実施形態50~52および53~57のいずれか1つに記載の方法。
実施形態59.rhoキナーゼ阻害剤が、Y-27632、ファスジル、H-1152
P、Wf-536、Y-30141、ROCKのアンチセンス核酸、RNA干渉誘導核酸
、競合的ペプチド、アンタゴニストペプチド、阻害性抗体、抗体-ScFV断片、そのド
ミナントネガティブバリアント、誘導体および発現ベクターからなる群から選択される、
実施形態57~58のいずれか1つに記載の方法。
実施形態60.rhoキナーゼ阻害剤が、Y-27632、ファスジル、H-1152
P、Wf-536およびY-30141およびそれらの誘導体からなる群から選択される
、実施形態57~59のいずれか1つに記載の方法。
実施形態61.Rhoキナーゼ阻害剤が、Y-27632、ファスジルおよびH-11
52P、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、実施形態57~60のいずれ
か1つに記載の方法。
実施形態62.膵臓内胚葉が内分泌および非内分泌細胞亜集団を含む、実施形態50に
記載の方法。
実施形態63.内分泌細胞亜集団がCHGA陽性(CHGA+)細胞である、実施形態
62に記載の方法。
実施形態64.非内分泌細胞亜集団がCHGA陰性(CHGA-)である、実施形態6
2に記載の方法。
実施形態65.非内分泌細胞亜集団がNKX6.1を発現する、実施形態62に記載の
方法。
実施形態66.膵臓内胚葉の少なくとも30%はCHGA陰性である、実施形態50に
記載の方法。
実施形態67.膵臓内胚葉の少なくとも50%はPDX1陽性である、実施形態50に
記載の方法。
実施形態68.インスリンを生成する方法であって、
a.脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞を、TGFβ受容体ファミリーメ
ンバーを活性化する作用物質を含む第1の培地とin vitroで接触させるステップ
と、
b.TGFβ受容体ファミリーメンバーを活性化する作用物質を欠く第2の培地でステ
ップ(a)の細胞をin vitroで培養し、それにより前腸内胚葉細胞を生成するス
テップと、
c.(b)の前腸内胚葉細胞をERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質と接触
させ、それにより、内分泌および非内分泌細胞亜集団を含む細胞集団を生成するステップ
と、
d.(c)の細胞集団をin vivoで移植し、成熟させ、それによりインスリン分
泌細胞を得るステップであって、インスリン分泌細胞がグルコース刺激に応答してインス
リンを分泌するステップと
を含む方法。
実施形態69.非内分泌細胞がCHGA陰性(CHGA-)細胞である、実施形態68
に記載の方法。
実施形態70.内分泌細胞がCHGA陽性(CHGA+)細胞である、実施形態68~
69のいずれか1つに記載の方法。
実施形態71.CHGA陰性(CHGA-)細胞がNKX6.1を発現する、実施形態
69に記載の方法。
実施形態72.(b)の前腸内胚葉細胞をrhoキナーゼ阻害剤と接触させる、実施形
態69に記載の方法。
実施形態73.(b)の前腸内胚葉細胞をFGFと接触させる、実施形態69に記載の
方法。
実施形態74.(b)の前腸内胚葉細胞をrhoキナーゼ阻害剤およびFGFと接触さ
せる、実施形態69に記載の方法。
実施形態75.rhoキナーゼ阻害剤が、Y-27632、ファスジル、H-1152
P、Wf-536、Y-30141、ROCKのアンチセンス核酸、RNA干渉誘導核酸
、競合的ペプチド、アンタゴニストペプチド、阻害性抗体、抗体-ScFV断片、そのド
ミナントネガティブバリアント、誘導体および発現ベクターからなる群から選択される、
実施形態72~74のいずれか1つに記載の方法。
実施形態76.内分泌細胞と比較して膵臓内胚葉細胞集団中の非内分泌細胞の比率を増
加させる方法であって、
前腸内胚葉細胞をERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質と接触させ、それに
より膵臓内胚葉細胞集団中の非内分泌細胞の比率を増加させるステップを含む方法。
実施形態77.前腸内胚葉細胞をFGFと接触させる、実施形態76に記載の方法。
実施形態78.前腸内胚葉細胞をrhoキナーゼ阻害剤と接触させる、実施形態76に
記載の方法。
実施形態79.前腸内胚葉細胞をFGFおよびrhoキナーゼ阻害剤とさらに接触させ
る、実施形態76に記載の方法。
実施形態80.移植された膵臓内胚葉のグルコース応答性を向上させる方法であって、
前腸内胚葉細胞をERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質と接触させ、それに
より膵臓内胚葉を含む細胞集団を生成するステップと、
膵臓内胚葉をin vivoで移植し、成熟させ、それによりインスリン分泌細胞を得
るステップであって、インスリン分泌細胞が、前腸内胚葉細胞をERBBチロシンキナー
ゼ受容体活性化作用物質と接触させることなく作製した膵臓内胚葉から導出されたインス
リン分泌細胞よりもよくインスリンを分泌するステップと
を含む方法。
実施形態81.膵臓内胚葉細胞が脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞から
導出される、実施形態80に記載の方法。
実施形態82.インスリンを生成する方法であって、(a)生細胞をERBBチロシン
キナーゼ受容体活性化作用物質と接触させるステップと、(b)ステップaの最後に細胞
を移植し、成熟させ、それによりインスリン分泌細胞を得るステップであって、インスリ
ン分泌細胞がグルコース刺激に応答してインスリンを分泌するステップとを含む方法。
実施形態83.生細胞が前腸内胚葉またはPDX1陰性前腸内胚葉である、実施形態8
2に記載の方法。
実施形態84.生細胞が脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞から導出され
る、実施形態82~83のいずれか1つに記載の方法。
実施形態85.内分泌および非内分泌細胞亜集団を含む細胞集団。
実施形態86.内分泌および非内分泌細胞亜集団が多能性細胞から導出される、実施形
態85に記載の細胞集団。
実施形態87.多能性細胞がヒト胚性幹細胞または脱分化した遺伝的にリプログラミン
グされた細胞である、実施形態86に記載の細胞集団。
実施形態88.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質が、EGF(上皮成長
因子)、AREG(アンフィレグリン)、TGF-アルファ(トランスフォーミング成長
因子-アルファ)、Btc(ベータセルリン)、HBEGF(ヘパリン結合EGF)、E
reg(エピレグリン)、ニューレグリンまたはヘレグリンである、実施形態85~87
のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態89.非内分泌細胞はNKX6.1を発現するがCHGAを発現しない、実施
形態85~88のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態90.内分泌細胞がCHGAを発現する、実施形態85~89のいずれか1つ
に記載の細胞集団。
実施形態91.細胞の少なくとも30%はCHGA陰性細胞である、実施形態85~9
0のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態92.細胞の少なくとも50%はPDX1陽性である、実施形態85~91の
いずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態93.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質がヘレグリン-4であ
る、実施形態85~92のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態94.細胞培養物が線維芽細胞成長因子(FGF)と接触している、実施形態
85~93のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態95.FGFがFGF-7である、実施形態94に記載の細胞集団。
実施形態96.細胞培養物がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質およびF
GFと接触している、実施形態85~95のいずれか1つに記載の細胞集団。
実施形態97.細胞培養物がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質およびr
hoキナーゼ阻害剤と接触している、実施形態85~96のいずれか1つに記載の細胞集
団。
実施形態98.細胞培養物がERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質、FGF
およびrhoキナーゼ阻害剤と接触している、実施形態85~97のいずれか1つに記載
の細胞集団。
実施形態99.インスリンを生成する方法であって、(a)脱分化した遺伝的にリプロ
グラミングされた細胞を、TGFβ受容体ファミリーメンバーを活性化する作用物質を含
む第1の培地とin vitroで接触させるステップと、(b)TGFβ受容体ファミ
リーメンバーを活性化する作用物質を欠く第2の培地でステップ(a)の細胞をin v
itroで培養し、それにより、少なくとも前腸内胚葉または少なくともPDX1陰性前
腸内胚葉細胞を生成するステップと、(c)(b)の細胞をERBBチロシンキナーゼ受
容体活性化作用物質と接触させ、それにより、内分泌および非内分泌細胞亜集団を含む細
胞集団を生成するステップと、(d)(c)の細胞集団をin vivoで移植し、成熟
させ、それによりインスリン分泌細胞を得るステップであって、インスリン分泌細胞がグ
ルコース刺激に応答してインスリンを分泌するステップとを含む方法。
実施形態100.インスリンを生成する方法であって、(a)PDX1陽性細胞をER
BBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質と接触させるステップと、(b)(a)の細
胞集団をin vivoで移植し、成熟させ、それによりインスリン分泌細胞を得るステ
ップであって、インスリン分泌細胞がグルコース刺激に応答してインスリンを分泌するス
テップとを含む方法。
実施形態101.rhoキナーゼ阻害剤がステップa、bまたはcで加えられる、実施
形態68または99に記載の方法。
実施形態102.rhoキナーゼ阻害剤がステップa、bおよびcで加えられる、実施
形態68または99に記載の方法。
実施形態103.rhoキナーゼ阻害剤がステップaおよびbで加えられる、実施形態
68または99~100のいずれか1つに記載の方法。
実施形態104.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質がステップaまたは
cで加えられる、実施形態68または99に記載の方法。
実施形態105.ERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質がステップaおよび
cで加えられる、実施形態68または99に記載の方法。
実施形態106.in vivoでグルコース応答性インスリン分泌細胞に成熟するこ
とが可能な細胞集団を生成する方法であって、少なくとも前腸内胚葉、少なくともPDX
1陰性前腸内胚葉の集団、または少なくともPDX1陽性膵臓内胚葉細胞の集団を、ER
BB受容体チロシンキナーゼ活性化作用物質と接触させ、それにより、in vivoで
グルコース応答性インスリン分泌細胞に成熟することが可能な細胞集団を生成するステッ
プを含む方法。
実施形態107.膵臓内胚葉を生成する方法であって、
a.前腸内胚葉細胞をERBBチロシンキナーゼ受容体活性化作用物質と接触させ、そ
れにより膵臓内胚葉を含む細胞集団を生成するステップ
を含む方法。
実施形態108.前腸内胚葉細胞を線維芽細胞成長因子(FGF)と接触させることを
さらに含む、実施形態107に記載の方法。
実施形態109.FGFがFGF-7である、実施形態108に記載の方法。
実施形態110.前腸内胚葉細胞をrhoキナーゼ阻害剤と接触させることをさらに含
む、実施形態107~109のいずれか1つに記載の方法。
実施形態111.前腸内胚葉細胞をrhoキナーゼ阻害剤およびFGFと接触させるこ
とをさらに含む、実施形態107~109のいずれか1つに記載の方法。
実施形態112.膵臓内胚葉の少なくとも30%はCHGA陰性である、実施形態10
7~111のいずれか1つに記載の方法。
実施形態113.膵臓内胚葉の少なくとも50%はPDX1陽性である、実施形態10
7~112のいずれか1つに記載の方法。
実施形態114.前腸内胚葉細胞が多能性細胞から導出される、実施形態50、76、
107~113のいずれか1つに記載の方法。
実施形態115.多能性細胞がヒト胚性幹細胞または脱分化した遺伝的にリプログラミ
ングされた細胞である、実施形態50、76、107~114のいずれか1つに記載の方
法。
実施形態116.多能性細胞がヒト胚性幹細胞または脱分化した遺伝的にリプログラミ
ングされた細胞である、実施形態1に記載の細胞培養物。
実施形態117.脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞から導出された分化
した細胞およびERBB受容体チロシンキナーゼ活性化作用物質を含む、in vitr
oヒト膵臓内胚葉細胞集団。
実施形態118.ERRB受容体チロシンキナーゼ活性化作用物質がEGF成長因子ま
たはリガンドを含む、実施形態117に記載の膵臓内胚葉細胞集団。
実施形態119.EGF成長因子またはリガンドが、ヘレグリン-1、ヘレグリン-2
およびヘレグリン-3およびヘレグリン-4からなる群から選択されるヘレグリンアイソ
フォームを含む、実施形態118に記載の膵臓内胚葉細胞集団。
実施形態120.ヘレグリンアイソフォームがヘレグリン-1およびヘレグリン-4を
含む、実施形態119に記載の膵臓内胚葉細胞集団。
実施形態121.リガンドヘレグリンアイソフォームがヘレグリン-4を含む、実施形
態119に記載の膵臓内胚葉細胞集団。
実施形態122.インスリンを生成する方法であって、
a.脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞から導出された前腸内胚葉細胞培
養物をERBB受容体チロシンキナーゼ活性化作用物質とin vitroで接触させ、
それにより、内分泌細胞および非内分泌細胞亜集団を含む細胞集団を生成するステップと

b.ステップ(a)の亜集団をin vivoで成熟させ、それによりインスリン分泌
細胞を得るステップであって、インスリン分泌細胞がグルコース刺激に応答してインスリ
ンを分泌する、ステップと
を含む方法。
実施形態123.前腸内胚葉細胞培養物をrhoキナーゼ阻害剤と接触させることをさ
らに含む、実施形態122に記載の方法。
実施形態124.rhoキナーゼ阻害剤が、Y-27632、ファスジル、H-115
2P、Wf-536、Y-30141、ROCKのアンチセンス核酸、RNA干渉誘導核
酸、競合的ペプチド、アンタゴニストペプチド、阻害性抗体、抗体-ScFV断片、ドミ
ナントネガティブバリアント、それらの誘導体およびそれらの発現ベクターからなる群か
ら選択される、実施形態123に記載の方法。
実施形態125.rhoキナーゼ阻害剤が、Y-27632、ファスジル、H-115
2P、Wf-536、Y-30141およびそれらの誘導体からなる群から選択される、
実施形態123に記載の方法。
実施形態126.Rhoキナーゼ阻害剤が、Y-27632、ファスジル、H-115
2Pおよびそれらの誘導体からなる群から選択される、実施形態125に記載の方法。
実施形態127.インスリンを生成する方法であって、
a.脱分化した遺伝的にリプログラミングされた細胞を、TGFβ受容体ファミリーメ
ンバーを活性化する作用物質を含む第1の培地とin vitroで接触させるステップ
と、
b.TGFβ受容体ファミリーメンバーを活性化する作用物質を欠く第2の培地でステ
ップ(a)の細胞をin vitroで培養し、それにより前腸内胚葉細胞を生成するス
テップと、
c.ステップ(b)の前腸内胚葉細胞をERBB受容体チロシンキナーゼ活性化作用物
質と接触させ、それにより、内分泌細胞および非内分泌細胞亜集団を含む細胞集団を生成
するステップと、
d.ステップ(c)の細胞亜集団をin vivoで成熟させ、それによりインスリン
分泌細胞を得るステップであって、インスリン分泌細胞がグルコース刺激に応答してイン
スリンを分泌するステップと
を含む方法。
実施形態128.非内分泌細胞がCHGA陰性(CHGA-)細胞である、実施形態1
27に記載の方法。
実施形態129.内分泌細胞がCHGA陽性(CHGA+)細胞である、実施形態12
7に記載の方法。
実施形態130.CHGA陰性(CHGA-)細胞がNKX6.1をさらに発現する、
実施形態127に記載の方法。
実施形態131.前腸内胚葉細胞をrhoキナーゼ阻害剤と接触させることをさらに含
む、実施形態127に記載の方法。
実施形態132.rhoキナーゼ阻害剤が、Y-27632、ファスジル、H-115
2P、Wf-536、Y-30141、ROCKのアンチセンス核酸、RNA干渉誘導核
酸、競合的ペプチド、アンタゴニストペプチド、阻害性抗体、抗体-ScFV断片、ドミ
ナントネガティブバリアント、それらの誘導体およびそれらの発現ベクターからなる群か
ら選択される、実施形態131に記載の方法。
図1
図2A-B】
図2C-D】
図2E-F】
図2G-H】
図2I-J】
図2K-L】
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
【配列表】
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