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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】脱硝部の閉塞防止装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20230327BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/10 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020162598
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055160
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】服部 望
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-41528(JP,A)
【文献】特開2020-37902(JP,A)
【文献】特開2007-303334(JP,A)
【文献】特開2006-167576(JP,A)
【文献】特開2014-234815(JP,A)
【文献】特開2007-32472(JP,A)
【文献】特開平10-30431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸カルシウムを含有するパーティクルを含む排ガスが流れる排ガス管と、
該排ガス管内に挿通してなる、尿素水を噴霧可能な尿素水供給管と、
排ガスの進行方向で、該尿素水供給管から尿素水を噴霧する部位の下流側に配置され、表面と裏面の何れか一方の面又は両方の面に加水分解触媒が付与された反射板と、
前記排ガス管の前記反射板を設けた部位の下流側に、ハニカム状のSCR触媒を備えた脱硝部とを備え、
前記反射板に付与された前記加水分解触媒の作用により、尿素を加水分解してアンモニア(NH)を生成すると共に、前記反射板に前記パーティクルの少なくとも一部を衝突させ落下させて前記脱硝部に移動させない構造を有し、
前記反射板は、断面ハの字状に拡開する板状体によって構成され、該板状体は、金属シートによって円錐台状に形成され、
該反射板は、排ガスの進行方向に少なくとも1個配置され、拡開する部位を脱硝部に向けて配置され、
該反射板と、前記尿素水供給管から尿素水を噴霧する部位との間に、円盤を配置してなり、
該円盤は、前記反射板の貫通孔を通る排ガスの流路を遮蔽する位置に配置してなることを特徴とする脱硝部の閉塞防止装置。
【請求項2】
前記反射板に前記パーティクルの少なくとも一部を衝突させ落下させて前記脱硝部に移動させない構造は、前記反射板に前記パーティクルが衝突した際に、該パーティクルの運動エネルギーを減少することにより重力方向に落下する構造であることを特徴とする請求項1記載の脱硝部の閉塞防止装置。
【請求項3】
前記反射板の一面又は全面に、前記加水分解触媒が塗布されていることを特徴とする請求項1または2記載の脱硝部の閉塞防止装置。
【請求項4】
前記加水分解触媒は、金属酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項3記載の脱硝部の閉塞防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硝部の閉塞防止装置に関し、詳しくは、カルシウム塩由来のパーティクルと尿素由来の固形物を低減してハニカム形状を有するSCR触媒の閉塞を防止し、脱硝効率を低下せない脱硝部の閉塞防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば船舶用ディーゼルエンジンの排ガス浄化触媒としては、NOxを浄化することができる有望な触媒として選択還元型脱硝触媒(以下、SCR触媒という)が知られている。
【0003】
また船舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスに還元剤を添加したガスが、脱硝触媒上を通過する際に、接触還元して無害な窒素と水に変換する方法は、尿素SCR法として知られており、かかる尿素SCR法は、尿素を脱硝触媒前流に吹込み、下記還元反応を行わせて、NOxを無害化する方法である(特許文献1)。
(還元反応)
4NO+4NH+O→4N+6H
6NO+8NH→7N+12H
【0004】
大型のSCR触媒を用いた排ガス浄化装置(SCR装置ともいう)の中でも、特に船舶用のSCR装置の場合には、船舶内もしくは船舶外への配置を容易にするため、小型化のニーズがあり、加水分解(気化)装置についても、コンパクトにする要請がある。
【0005】
小型の加水分解(気化)装置は、船舶用ディーゼルエンジンの排ガスを移送する排ガス配管に設けられ、以下の加水分解反応によって、アンモニアを生成する。
(加水分解反応)
(NHCO+HO →2NH+CO
【0006】
尿素SCRでは、脱硝部の前段において、加水分解触媒の存在下で、尿素を供給して、上記の加水分解反応を生起するが、気化装置の構成部品や排ガス配管内壁などに尿素由来物質が付着してしまい、加水分解の効率が下がって、アンモニアの供給が想定より少なくなり、脱硝率が低下することがあった。
【0007】
一方、硫黄を含んだ重油などを燃料とするディーゼルエンジンでは、潤滑油に中和剤として炭酸カルシウムなどのカルシウム塩が含まれる。カルシウム塩は硫黄と反応して硫酸カルシウムを生成し、比較的粒径の大きなパーティクルとなり、排ガスに混入する。
【0008】
このパーティクルはハニカム形状を持つSCR触媒を閉塞させる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-328734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の課題は、カルシウム塩由来のパーティクルと尿素由来の固形物を低減してハニカム形状を有するSCR触媒の閉塞を防止し、脱硝効率を低下せない脱硝部の閉塞防止装置を提供することにある。
【0011】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0013】
(請求項1)
硫酸カルシウムを含有するパーティクルを含む排ガスが流れる排ガス管と、
該排ガス管内に挿通してなる、尿素水を噴霧可能な尿素水供給管と、
排ガスの進行方向で、該尿素水供給管から尿素水を噴霧する部位の下流側に配置され、表面と裏面の何れか一方の面又は両方の面に加水分解触媒が付与された反射板と、
前記排ガス管の前記反射板を設けた部位の下流側に、ハニカム状のSCR触媒を備えた脱硝部とを備え、
前記反射板に付与された前記加水分解触媒の作用により、尿素を加水分解してアンモニア(NH)を生成すると共に、前記反射板に前記パーティクルの少なくとも一部を衝突させ落下させて前記脱硝部に移動させない構造を有し、
前記反射板は、断面ハの字状に拡開する板状体によって構成され、該板状体は、金属シートによって円錐台状に形成され、
該反射板は、排ガスの進行方向に少なくとも1個配置され、拡開する部位を脱硝部に向けて配置され、
該反射板と、前記尿素水供給管から尿素水を噴霧する部位との間に、円盤を配置してなり、
該円盤は、前記反射板の貫通孔を通る排ガスの流路を遮蔽する位置に配置してなることを特徴とする脱硝部の閉塞防止装置。
(請求項2)
前記反射板に前記パーティクルの少なくとも一部を衝突させ落下させて前記脱硝部に移動させない構造は、前記反射板に前記パーティクルが衝突した際に、該パーティクルの運動エネルギーを減少することにより重力方向に落下する構造であることを特徴とする請求項1記載の脱硝部の閉塞防止装置。
(請求項3)
前記反射板の一面又は全面に、前記加水分解触媒が塗布されていることを特徴とする請求項1または2記載の脱硝部の閉塞防止装置。
(請求項4)
前記加水分解触媒は、金属酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項3記載の脱硝部の閉塞防止装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カルシウム塩由来のパーティクルと尿素由来の固形物を低減してハニカム形状を有するSCR触媒の閉塞を防止し、脱硝効率を低下せない脱硝部の閉塞防止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る脱硝部の閉塞防止装置の一例を示す概略フロー図
図2】パーティクル反射板の一例を示す概略断面図
図3】パーティクル反射板の他の例を示す概略断面図
図4】パーティクル反射板の他の例を示す概略断面図
図5】パーティクル反射板の他の例を示す概略断面図
図6】本発明に係る脱硝部の閉塞防止装置の他の例を示す概略フロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る脱硝部の閉塞防止装置の一例を示す概略フロー図である。
【0018】
図1において、1はディーゼルエンジンであり、例えば船舶用のディーゼルエンジンである。2は、ディーゼルエンジン1から送られる排ガスを受け入れて貯留するレシーバタンクであり、例えばディーゼルエンジン1から送られる排ガス量が変動した場合に、その変動を吸収するバッファタンクの役割などを果たす。
【0019】
レシーバタンク2内の排ガスは、排ガス管3に送られる。排ガス管3には、加圧空気(圧縮空気)と尿素水を供給する尿素水供給管4が挿通され、尿素水供給管4の先端近傍に尿素水噴霧ノズル5が設けられている。尿素水噴霧ノズル5は、尿素水噴霧を排ガス管3内に供給可能に構成されている。
【0020】
排ガス管3内で、尿素水噴霧ノズル5の前方には、尿素水の加水分解部6が設けられる。
【0021】
加水分解部6には、反射板7が設けられている。
【0022】
反射板7には、加水分解触媒が付与されている。加水分解触媒により、尿素の加水分解を促進し、尿素由来の固形物を低減する。このため反射板7は、尿素由来の固形物によるハニカム形状を有するSCR触媒の閉塞を防止する機能に寄与する。
【0023】
また、反射板7は、パーティクル除去機能を果たす。加水分解部6の後段には、ハニカム状のSCR触媒9を備えた脱硝部8が設けられているが、反射板7により、排ガス中のパーティクルを叩き落して、そのパーティクルが脱硝部8に進むのを阻止する機能を果たす。その結果、パーティクルによるハニカム形状を有するSCR触媒の閉塞を防止できる。
【0024】
脱硝部8では、尿素の加水分解により生成されたアンモニアとNOxを含む排ガスを導入して、SCR触媒9の作用により、NOxが還元されて窒素ガスを生成して脱硝する処理を行う。
【0025】
脱硝された処理済ガスは、処理済配管10を介してターボチャージャ11に戻され再利用される。
【0026】
上述のように、カルシウム塩由来のパーティクルと尿素由来の固形物を低減できるので、ハニカム形状を有するSCR触媒の閉塞を防止し、脱硝効率を低下させない。
【0027】
本発明において、カルシウム塩由来のパーティクルは、エンジンの燃焼時に生成され、大きな粒径に成長し、排ガスに混じって排出される。そして、排ガスの配管流路に流れながら、徐々に粒径が小さくなっていく。したがって、エンジンの燃焼部から脱硝部までの流路が非常に長ければ、パーティクルの粒径が小さくなっていくため、少量のパーティクルを除去することで、脱硝効率を低下させないで済む。
【0028】
しかしながら、脱硝装置や脱硝装置が一体化されたエンジンの小型化をするために、排ガスの配管流路を短くする必要があり、配管流路を短くすると、パーティクルの粒径が小さくならずに、粒径の大きいパーティクルの多くが脱硝部に到達し、SCR触媒のハニカムが閉塞するという問題が生じた。
【0029】
そこで、本発明は、パーティクルを、以下に示す実施形態により除去することで、SCR触媒の閉塞という問題点を解決することができると共に、配管流路を短くすることができる。そして、本発明は、配管流路を短くできることによって、脱硝装置や、脱硝装置が一体化されたエンジンの小型化に寄与できるという非常に優れた効果を奏する発明である。
【0030】
更に、本発明においては、脱硝装置や、脱硝装置が一体化されたエンジンのコンパクト化のため、配管流路を短くすると、尿素が加水分解触媒において、加水分解できずに、SCR触媒に到達する量が増えてしまう。そして、SCR触媒は、加水分解触媒としても作用することから、尿素由来の固形物が生成され、ハニカムが閉塞するリスクが高まってしまう。
したがって、本発明では、反射板を設けることによって、パーティクルを除去することができると共に、該反射板に加水分解触媒を付与し、加水分解機能をもたせることによって、尿素の加水分解作用を促進させ、SCR触媒に進む尿素の量を減らすことができる。この結果、ハニカムの閉塞リスクを低減させることができるのである。
以下、実施形態の一例を説明する。
【0031】
(実施形態1)
次に、本発明における反射板7の形態の一例を図2に基づいて説明する。
図2に示す態様は、反射板70と71を2枚組み合わせた例である。
この態様において、反射板70と71は、断面ハの字状に拡開する板材体によって構成される。
【0032】
板状体は、0.3mm~3mmの範囲の金属シートによって形成されることが好ましい。例えば、金属シートを扇状の形状に切り取り、それを円錐台状に折り曲げ、端部分を例えば溶着することにより形成できる。
【0033】
反射板が円錐台状に形成されることにより、結果として、大径部位と、小径部位が形成される。反射板の大径部位は脱硝部8側に向けて、小径部位は尿素水噴霧ノズル5側に向けて配置されることが好ましい。触媒との接触効率の向上やパーティクル脱落除去効果の向上を可能にするからである。
【0034】
本態様において、反射板70と反射板71の大径部位の径は、両方とも排ガス管3の内径と近似していることが好ましい。反射板70と反射板71の外周側を排ガスのショートパスするのを防止可能であるからである。
【0035】
小径部位は、反射板70の小径と、反射板71の小径とは、同等の径でもよいが、反射板70の小径が、反射板71の小径よりも径が大きいことが好ましい。パーティクルが反射板70を通過しやすくして、通過したパーティクルを再度反射板71で衝突させて除去できるからである。
【0036】
図示の例では、反射板71の小径部位の貫通孔74の口径は、反射板70小径部位の貫通孔73の口径より小さい例を示している。このようにすることにより、パーティクル72の全体は、反射板70や71との衝突により、反射板71の貫通孔74を通過する個数が少なくなるので好ましい。
【0037】
反射板70の表面にパーティクル72が衝突した際に、その衝突箇所において、パーティクル72の運動エネルギーが減少する。瞬間的には運動エネルギーはゼロになる。このことによりパーティクル72は自重で重力方向に落下する。
【0038】
反射板70の貫通孔73を通過したパーティクル72の少なくとも一部は、反射板71の表面にパーティクル72が衝突することにより、パーティクル72は重力方向に落下する。
パーティクル72の少なくとも一部が衝突して落下することにより、その場から、脱硝部8の方に進むことはない。
【0039】
本明細書において、「パーティクルの少なくとも一部が衝突して落下する」という態様には、排ガスに含まれ、触媒ハニカムを閉塞させるおそれのあるパーティクルのうち、60%以上が反射板に衝突して落下する態様を含む。排ガスに含まれる全部のパーティクルのうち、残り40%未満が脱硝部8に到達し、ハニカム状のSCR触媒の触媒機能を阻害したとしても、パーティクルを除かない場合に比べて、交換寿命を延ばすことができる。本実施形態においては、排ガスに含まれる全部のパーティクルのうち、70%以上、80%以上が反射板に衝突して落下する態様が好ましい。これにより、SCR触媒の交換寿命をより延ばすことができる。
【0040】
更に、本実施形態においては、排ガスに含まれる触媒ハニカムを閉塞させるおそれのあるパーティクルのうち、90%以上が反射板に衝突して落下することがより好ましい。排ガスに含まれる全部のパーティクルのうち、残り10%未満が脱硝部8に到達し、ハニカム状のSCR触媒の一部が閉塞しても触媒機能の性能を十分果たすことができる。つまり、少なくとも90%以上除去できることにより、触媒の交換頻度が増えることはなく、交換寿命を更に延ばすことができる。
【0041】
排ガスに含まれる触媒ハニカムを閉塞させるおそれのあるパーティクルとしては、触媒ハニカムの孔の形状とサイズにもよるが、触媒ハニカムの孔形状が、矩形状で、短辺の長さが0.6mmの場合には、概ね0.5mm以上のパーティクルである。
【0042】
上記の通り、「パーティクルの少なくとも一部」という場合には、排ガスに含まれ、触媒ハニカムを閉塞させるおそれのあるパーティクルのうち、60%以上が反射板に衝突して落下する態様を含むことから、本明細書においては、パーティクルの大部分が反射板に衝突して落下するという表現をすることがある。
【0043】
上記のように本発明において、反射板70、71にパーティクル72の少なくとも一部(大部分)を衝突させて落下させる。落下したパーティクル72は、排ガス管3の内壁に貯まる。所定量貯まったら、図示しない排出部から外部に取り除くことが好ましい。
【0044】
本態様におけるパーティクル72は、硫酸カルシウムの粒子であり、エンジンのピストン内での燃焼により生じる。そして、硫酸カルシウムの粒径は、約2μm~2cmと広範に形成されるおそれがある。したがって、反射板に衝突させて落下除去する上では、多孔質体のハニカム状の触媒の孔を閉塞させるおそれのある径のパーティクルが除去できればよい。ハニカム状の触媒の孔を通過する細かなパーティクルは、閉塞のおそれがないためである。
【0045】
本発明において、反射板の枚数は、図示の2枚に限定されず、3枚でも4枚以上でもよいが、排ガスに対する圧力損失を上昇させることなく、脱硝部8へのパーティクル72の到達個数を減少させる上では、2~3枚が好ましい。
【0046】
反射板70、71は、排ガス管3内において着脱可能に固定されていることが好ましい。長年使用して尿素由来の化合物が付着してしまっても容易に着脱・交換可能な構造であるからである。
【0047】
着脱可能な構造は格別限定されず、反射板の形状に合わせた嵌合部材(図示せず)を排ガス管3の内壁に固定しておいて、その嵌合部材に反射板を嵌合させて着脱可能な構造にすることができる。
【0048】
図2に示す反射板の形態は、排ガス管3内を流れる排ガスの流れに対して圧力損失を生じさせない形状であるので好ましい。
【0049】
反射板70、71に付与された触媒材料は、尿素の加水分解触媒であればよいが、具体的には、尿素の加水分解を促進する触媒として機能する金属酸化物を主成分とすることが好ましい。
【0050】
金属酸化物としては、Al、Si、Zr又はTiなどの酸化物(Al、SiO、ZrO、TiO等)が挙げられる。中でも、入手性と安全性と触媒性能のバランスが良いという観点から、TiOが好ましい。更に、金属酸化物としては、後述するSCR触媒を採用することもできる。
【0051】
本実施の形態では、排ガス管3内で、排ガス管3内を流れる排ガスと、尿素水噴霧ノズル5から噴霧された噴霧尿素水とを混合する。排ガスと噴霧尿素水が混合されると、加水分解反応が生じ、加水分解が促進され、尿素が無駄なく使用できる。加水分解の促進により、尿素由来の固形物(シアヌル酸など)生成による触媒の閉塞、煙道への堆積も防ぐことができる。
【0052】
また反射板の存在により、噴霧尿素水が排ガスと混合することにより、噴霧尿素水が排ガス管壁面に直接進まなくなるために、尿素由来の排ガス管壁面への付着物が少なくなり、排ガス管の閉塞リスクを減少させることができる。
更に、加水分解触媒が付与された反射板を用いているので、加水分解触部を別途設ける必要がなく、装置全体のコンパクト化を可能にする。
【0053】
反射板に加水分解触媒を付与する手法は格別限定されない。例えば、分散液に触媒となる酸化チタンを混合して加水分解触媒塗布液を作成し、その塗布液を反射板の表面、裏面又は表面及び裏面に塗布することにより、加水分解触媒を付与することができる。加水分解触媒を付与する方法としては、刷毛塗り、浸漬塗布、スプレー、溶射、CVDなど種々の方法で付与することができる。
【0054】
図2に示すように、加水分解触媒と噴霧尿素が混合され、加水分解されると、上記の加水分解反応によりNHが生成し、脱硝部8において、SCR触媒により、NOxとNHを含む排ガスは、還元反応により、Nに還元されて浄化される。
【0055】
本発明に用いるSCR触媒としては、TiOあるいはSiO-TiO、WO-TiO、SiO-TiO、V-TiOなどの二元系複合酸化物、あるいは、WO-SiO-TiO、MoO-SiO-TiOなどの三元系複合酸化物などの担体に、V、TiO、WO、MoO、Ag、Au、Ptなどの活性成分を担持してなるハニカム構造を有する。
【0056】
ハニカム構造を有するSCR触媒を用いると、NH(還元剤)の存在下で、NOxを還元して窒素(N)ガスに変換して排ガスを浄化する。
【0057】
また、担体にはゼオライトなどのアルミノシリケートを用いることもでき、ステンレスメタルハニカムを用いることもできる。
【0058】
このように本実施形態によれば、パーティクル72の大部分が反射板との衝突によって叩き落され、脱硝部8の方に進むことがないために、ハニカムを目詰まりさせることがない。このため目の細かいハニカム構造を採用できるため、脱硝効率が向上し、触媒量を減らすことができる。
【0059】
もし、パーティクル72の大部分が、脱硝部8の方に進み、SCR触媒表面に付着したとすれば、そのSCR触媒機能を阻害し、脱硝効率が低下する問題がある。しかし、本実施の形態のように、パーティクル72の大部分が、脱硝部8の方に進むことがないために、SCR触媒表面に付着して、そのSCR触媒機能を阻害したりすることもない。その結果、脱硝効率が低下することもない。
【0060】
本実施の形態において、排ガスは、排ガス管3を通って、加水分解部6から脱硝部8に至る。
加水分解部6で、下記加水分解反応によって、アンモニアが生成する。
(加水分解反応)
(NHCO+HO → 2NH+CO
【0061】
脱硝部8では、下記の還元反応により、還元剤であるNHの存在下で、NOxがNに還元される。
(還元反応)
4NO+4NH+O→4N+6H
6NO+8NH→7N+12H
上記の反応におけるNHは、加水分解部6から送られてきた化合物であり、加水分解部6で加水分解されずに送られてきた尿素が、脱硝部8のSCR触媒において、加水分解されて生成された化合物である。
【0062】
脱硝部8のSCR触媒のハニカムにパーティクルが目詰まりしたら、SCR触媒の触媒活性が、パーティクルによって阻害される。
SCR触媒の触媒活性が阻害されると、パーティクルによりSCR触媒が目詰まりし、圧損が上昇し、エンジン性能を低下させるおそれがあり、最悪の場合、エンジンが停止するおそれがある。更に、目詰まりした部分は、脱硝に寄与しなくなるため、触媒作用を果たせなくなる。これにより、NOxの排出規制の規制値をクリアできなくなり、SCR触媒を交換しなければならなくなる。この結果、交換頻度が高くなってしまう。
また、パーティクルによる目詰まりによって、脱硝に寄与しない部分が増えてしまう結果、還元反応に用いられるNHの消費が促進されなくなるため、NHの生成する加水分解反応が進まなくなる。すなわちパーティクルは、脱硝効率阻害物質であると同時に、加水分解効率の阻害物質となる。
【0063】
パーティクルを除去して、脱硝部8に進ませないようにすることで、脱硝部8にあるSCR触媒の目詰まりが抑制されるため、エンジン性能の低下、エンジンが停止するといった事態を防ぐことができ、脱硝に寄与する部分を減らさないようにできるため、交換頻度が高くなるといった事態を防止することができる。
また、パーティクルは、脱硝効率阻害物質であると同時に、加水分解効率の阻害物質であるため、このパーティクルを脱硝部8に進ませないようにすることで、脱硝効率を向上させ、その結果、加水分解効率も向上させることができる。
【0064】
(実施形態2)
次に、図3に基づいて、本発明の他の実施の形態を説明する。
図3に示す態様は、図2で用いた反射板と、円盤の組み合わせである。
【0065】
図2で用いた反射板71と、尿素水噴霧ノズル5との間に、円盤75を図示のように配置する。具体的には、排ガスの進行方向に対して直行する方向に配置する。
【0066】
円盤の材質は、格別限定されないが、例えば、ステンレスなどの金属板を用いることができる。円盤の形状は、反射板71の貫通孔74が円形であるので、貫通孔74の径より大きい径の円形であることが好ましい。
【0067】
本態様において、円盤75の枚数は、図示のように1枚でもよいが、2以上の枚数でもよい。あまり枚数が多くなると圧力損失が大きくなるので、1~3枚が良い。
【0068】
円盤75が貫通孔74の径より大きい径の円形であると、円盤75によって、貫通孔74を閉鎖して、直進排ガスの進行を阻止できる。また貫通孔74を通って排ガス中のパーティクル72がスルーパスするのを防止できる。
排ガス中のパーティクル72の一部は、円盤75に衝突し、叩き落される。その結果、その叩き落されたパーティクルは脱硝部8に進むことはできない。
【0069】
また排ガスは、円盤75を通過できないので、円盤75の両端を回って、反射板70に向かって進む。円盤75の両端を回って進んだ排ガスは、反射板70に向かって進む。その結果、反射板70の表面に、パーティクル72の大部分が衝突して落下する。
【0070】
すなわち、排ガス中のパーティクル72は、円盤75によって衝突落下により除去され、また反射板71の表面においても、パーティクル72の大部分が衝突して落下させて除去される。反射板71の表面や、円盤75の表面に、パーティクル72が衝突した際に、その衝突箇所において、パーティクル72の運動エネルギーが減少する。瞬間的には運動エネルギーはゼロになり、パーティクル72は重力方向に落下する。
このため脱硝部8へのパーティクル72の到達個数が大幅に減少し、ハニカム触媒を目詰まりさせることもない。
【0071】
円盤75と反射板70には、図2の態様と同様に、加水分解触媒が付与されているので、本実施の形態においても、図3に示すように、排ガスが進行方法に進み、反射板70の位置に到達すると、排ガスは、図2と同様に、加水分解触媒により、加水分解反応が促進され、アンモニアを生成する。
【0072】
カルシウム塩由来のパーティクルが脱硝部8へ到達する前に、反射板に衝突して落下すると、ハニカム形状を有するSCR触媒に到達できないので、ハニカム形状を有するSCR触媒の目詰まりを防止できる。すなわち、カルシウム塩由来のパーティクルによるハニカムの閉塞を防止し、脱硝効率を低下させない効果を発揮する。
加水分解の構成及び機能、作用に関しては、図2の態様と同じであるので、それらを援用する。
【0073】
本実施形態では、円盤を例示して説明したが、円盤の形状に限定されず、パーティクルを衝突させ落下させることができる形状であればよい。例えば、球状であってもよい。
【0074】
(実施形態3)
次に、図4に基づいて、本発明の他の実施の態様について説明する。
図4に示す態様は、反射板を傾斜板4枚により構成している。
【0075】
各傾斜板76A、76B、76C、76Dは、平板状でもよいし、半円形樋状でもよい。
【0076】
傾斜方向は、上部2枚の傾斜板76A、76Bは、上方に向かって傾斜しており、下部2枚の傾斜板76C、76Dは、下方に向かって傾斜している。
傾斜板の厚みは、格別限定されないが、3mm~30mm程度でよく、変形が生じない程度の厚みを有していればよい。
【0077】
傾斜板(反射板)の枚数は、複数枚であることが好ましく、図示の4枚でもよいし、5枚以上でもよいが、排ガスに対する圧力損失を上昇させることなく、脱硝部8へのパーティクル72の到達個数を減少させる上では、4~6枚が好ましい。
【0078】
また、複数の傾斜板(反射板)は、排ガス管3の下流に進むに従い、排ガス管3の内壁に近づくように傾斜していることが好ましい。
【0079】
傾斜板(反射板)の角度としては、最外周側の2枚の傾斜板76A、76Dは、水平軸に対して+30°~45°の範囲が好ましく、内側の2枚の傾斜板76B、76Cは、水平軸に対して、-10°~20°の範囲が好ましい。
【0080】
傾斜板76C、76Dの各々に、パーティクル72が衝突した例を説明すると、傾斜板76C、76Dの表面にパーティクル72が衝突した際に、その衝突箇所において、パーティクル72の運動エネルギーが減少する。瞬間的には運動エネルギーはゼロになる。このことによりパーティクル72は重力方向に落下する。
【0081】
カルシウム塩由来のパーティクルが脱硝部8へ到達する前に、反射板に衝突して落下すると、ハニカム形状を有するSCR触媒に到達できないので、ハニカム形状を有するSCR触媒の目詰まりを防止できる。すなわち、カルシウム塩由来のパーティクルによるハニカムの閉塞を防止し、脱硝効率を低下させない効果を発揮する。
【0082】
加水分解の構成及び機能、作用に関しては、図2の態様と同じであるので、それらを援用する。
【0083】
(実施形態4)
次に、図5に基づいて、本発明の他の実施の態様について説明する。
図5に示す態様は、パーティクル反射板をメッシュ板77により構成している。
【0084】
メッシュ板77は多孔体であり、パンチングメタルや細孔が形成された板材などを用いることができる。
メッシュ板77の孔径は、SCR触媒のハニカムの目開きより細かい(小さい)ものが好ましい。ハニカムの目詰まりを発生させないためである。
【0085】
メッシュ板77に、パーティクル72が衝突した例を説明すると、メッシュ板77の表面にパーティクル72が衝突した際に、その衝突箇所において、パーティクル72の運動エネルギーが減少する。瞬間的には運動エネルギーはゼロになる。このことによりパーティクル72は重力方向に落下する。
【0086】
カルシウム塩由来のパーティクルが脱硝部8へ到達する前に、反射板に衝突して落下すると、ハニカム形状を有するSCR触媒に到達できないので、ハニカム形状を有するSCR触媒の目詰まりを防止できる。すなわち、カルシウム塩由来のパーティクルによるハニカムの閉塞を防止し、脱硝効率を低下させない効果を発揮する。
【0087】
加水分解の構成及び機能、作用に関しては、図2の態様と同じであるので、それらを援用する。
【0088】
(その他の実施形態)
以上、反射板の設置位置について、図1に基づいて説明したが、反射板の設置位置は、レシーバ一体型の排ガス脱硝装置の場合には、図6に示す位置でもよい。
【0089】
図6において、排ガス管3には、レシーバタンク2が含まれる。図示の例において、ディーゼルエンジン1から排出された排ガスは、排ガス管3を介して、尿素水供給管4、尿素水噴霧ノズル5の位置に送られる。排ガスと尿素水噴霧が混合された混合ガスは、反射板7に向かって送られ、パーティクル72が、反射板7に衝突すると、運動エネルギーを失って重力方向に落下し、パーティクル72の一部または全部は、脱硝部のSCR触媒9に送られないので、ハニカムを詰まらせることはない。SCR触媒9でアンモニア(還元剤)により、NOxがNに還元され、処理される。処理済排ガスは、処理済配管10を介してターボチャージャ11に戻され再利用される。
【符号の説明】
【0090】
1 ディーゼルエンジン
2 レシーバタンク
3 排ガス管
4 尿素水供給管
5 尿素水噴霧ノズル
6 加水分解部
7、70、71 反射板
72 パーティクル
73、74 貫通孔
75 円盤
76A、76B、76C、76D 傾斜板
77 メッシュ板
8 脱硝部
9 ハニカム状のSCR触媒
10 処理済配管
11 ターボチャージャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6