(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】薬剤分配システム及び分配方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/03 20230101AFI20230327BHJP
A61J 7/02 20060101ALI20230327BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20230327BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20230327BHJP
B65D 75/36 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A61J1/03 370
A61J7/02
A61J3/00 310K
A61J3/06 T
B65D75/36
(21)【出願番号】P 2020500715
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2018068304
(87)【国際公開番号】W WO2019011787
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】フレドリク・ヨンソン
(72)【発明者】
【氏名】ルボミル・グラジナルスキー
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0132661(US,A1)
【文献】特開昭61-185267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0194961(US,A1)
【文献】特表平04-503344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0172851(US,A1)
【文献】国際公開第2012/111034(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/03
A61J 7/02
A61J 3/00
A61J 3/06
B65D 75/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリスターパックから単位用量形態を分配するための分配システムであって、
ブリスターパックを受け入れるためのハウジングであって、前記ブリスターパックは複数の空洞を有し、各前記空洞内に少なくとも1つの単位用量形態が封入されており、少なくとも1つのハウジング開口部を含む、ハウジングと、
センシング層であって、
半導電性材料又は非導電性材料を含み、加えられる圧力に応じて抵抗を変化するように構成された感圧層
であって、当該半導電性材料又は非導電性材料がその中に分散した導電性粒子を含む、感圧層と、
少なくとも1つの導電領域を含む導電層と、
前記感圧層及び前記導電層を通った複数のセンシング層開口部であって、各センシング層開口部は、ブリスターパックが前記ハウジング内に受け入れられたときに前記ブリスターパックの前記複数の空洞のうちの対応する1つ以上と位置合わせされるように構成されている、複数のセンシング層開口部と、
前記各センシング層開口部を包囲する複数のセンシング領域であって、前記各センシング層領域が前記感圧層と前記導電層の前記導電領域との一部を含む、前記複数のセンシング領域と、
を含む、センシング層と、
電子ユニットと、
前記センシング層に電圧を供給するための電源と、
を含み、
使用時、前記単位用量形態は、前記センシング層開口部と、前記センシング領域と、前記少なくとも1つのハウジング開口部とを通って前記ブリスターパックから分配され、
前記センシング層は、前記感圧層の抵抗の変化がある場合、前記ブリスターパックから分配される各単位用量形態を検知する、
分配システム。
【請求項2】
前記センシング層は、前記感圧層と前記導電層との間にスペーシング層を更に含み、前記スペーシング層は、前記感圧層と前記導電層とが電気接触しないように前記感圧層と前記導電層とを離し、前記スペーシング層は、前記感圧層と前記導電層の前記導電領域とを電気接触させることができるように圧縮可能である、請求項
1に記載の分配システム。
【請求項3】
前記スペーシング層は発泡体を含む、請求項
2に記載の分配システム。
【請求項4】
前記センシング層開口部は円形又は楕円形であり、前記スペーシング層の前記センシング層開口部は、前記開口部の近傍の前記感圧層と前記導電層との間に空気間隙が設けられるように、前記感圧層の前記センシング層開口部及び前記導電層の前記センシング層開口部よりも大きな直径を有する、請求項
2又は
3に記載の分配システム。
【請求項5】
前記センシング層は、前記感圧層と前記導電層の前記導電領域とが電気接触するまで前記圧縮可能スペーシング層の圧縮により前記空気間隙がなくなるように構成されている、請求項
4に記載の分配システム。
【請求項6】
前記電源は、前記導電層の前記導電領域に電圧を供給する、請求項
1~
5のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項7】
前記感圧層は、導電性粒子を含浸させたポリマーフィルム層を含む、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項8】
前記導電層はプリント回路基板(PCB)を含み、前記導電層の前記導電領域は前記導電層上に印刷されている、請求項
1~
7のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項9】
前記導電層の前記導電領域は環状であり、前記導電層の前記センシング層開口部を取り囲み、各導電領域は前記導電層の任意の他の導電領域から離れている、請求項
2~
8のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項10】
前記導電層の前記導電領域は前記導電層の全てを含む、請求項
2~
8のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項11】
前記センシング層は、抵抗の変化を測定し、前記センシング層に加えられた前記圧力のプロファイルを決定し、
単位用量形態が前記ブリスターパックから分配されたかどうか、又は
前記圧力が非分配圧力プロファイルを有するかどうか
を特定するように構成されている、請求項
1~
10のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項12】
前記ハウジングは複数のハウジング開口部を含み、前記ハウジング開口部は、ブリスターパックが前記ハウジング内に受け入れられたときに各ハウジング開口部が前記ブリスターパックの前記複数の空洞の少なくとも1つと位置合わせされるようにアレイに配置されている、請求項1~
11のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項13】
前記電子ユニットは、少なくとも、前記センシング層が、各単位用量形態が前記ブリスターパックから分配されたのを検知した時刻及び日付に対応するデータを記憶するためのメモリを含む、請求項1~
12のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項14】
前記電子ユニットは、データをリモートデバイスに送信するための送信機を含み、前記データは、少なくとも、各単位用量形態が前記ブリスターパックから分配されたのを前記センシング層が検知した時刻及び日付に対応する、及び/又は前記データは、単位用量形態が所定の日付及び時間に分配される予定であるというリマインダに対応する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項15】
前記データを表示するためのディスプレイを更に含む、請求項
13又は
14に記載の分配システム。
【請求項16】
前記ハウジングと前記センシング層とは分離可能な構成要素であり、異なる構成を有するセンシング層をそれぞれ前記ハウジング内に受け入れ可能であるように構成されている、請求項1~
15のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項17】
前記電子ユニットは、識別子を記憶した前記ブリスターパックのメモリからブリスターパックの前記識別子を検出すること、前記ハウジング内のブリスターパックの存在を検出すること、前記ハウジングからのブリスターパックの取り外しを検出すること、ブリスターパックの前記ハウジングへの挿入を検出すること、及び/又は前記ハウジング内の前記ブリスターパックの向きを検出すること、のいずれか1つ以上のために構成されている、請求項1~
16のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項18】
加速度計を更に含み、前記加速度計は、前記システムがユーザにより使用中であるかどうかを検出するために、前記システムの運動を特定するように構成されている、請求項1~
17のいずれか一項に記載の分配システム。
【請求項19】
ブリスターパックを受け入れた分配システムから単位用量形態を分配する方法であって、前記分配システムは、
ブリスターパックを受け入れるためのハウジングであって、前記ブリスターパックは複数の空洞を有し、各前記空洞内に少なくとも1つの単位用量形態が封入されており、少なくとも1つのハウジング開口部を含む、ハウジングと、
センシング層であって、
半導電性材料又は非導電性材料を含み、加えられる圧力に応じて抵抗を変化するように構成された感圧層
であって、当該半導電性材料又は非導電性材料がその中に分散した導電性粒子を含む、感圧層と、
少なくとも1つの導電領域を含む導電層と、
前記感圧層及び前記導電層を通った複数のセンシング層開口部であって、各センシング層開口部は、ブリスターパックが前記ハウジング内に受け入れられたときに前記ブリスターパックの前記複数の空洞のうちの対応する1つ以上と位置合わせされるように構成されている、複数のセンシング層開口部と、
前記各センシング層開口部を包囲する複数のセンシング領域であって、前記各センシング層領域が前記感圧層と前記導電層の前記導電領域との一部を含む、前記複数のセンシング領域と、
を含む、センシング層と、
電子ユニットと、
前記センシング層に電圧を供給するための電源と、
を含み、
前記方法は、
前記感圧層の抵抗の変化がある場合、各単位用量形態が前記センシング層開口部と、前記センシング領域と、前記少なくとも1つのハウジング開口部とを通って前記ブリスターパックから分配されたときに前記センシング層によって検知する工程を含む、方法。
【請求項20】
前記電源から前記導電層に電圧を供給する工程を更に含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも、各単位用量形態が前記ブリスターパックから分配されるときに各空洞の近傍における抵抗の変化を前記センシング層が検知した時刻及び日付に対応するデータを前記電子ユニットのメモリに記憶する工程を更に含む、請求項
19又は
20に記載の方法。
【請求項22】
リモートデバイスにデータを送信する工程を更に含み、前記データは、少なくとも、各単位用量形態が前記ブリスターパックから分配されるときに各空洞の近傍における抵抗の変化を前記センシング層が検知した時刻及び日付に対応する、及び/又は前記データは、単位用量形態が所定の日付及び時間に分配される予定であるというリマインダに対応する、請求項
19~
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
データを送信する工程は、無線でデータを送信する工程を含む、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
前記分配システムのディスプレイ上に前記データを表示する工程を更に含む、請求項
22又は
23に記載の方法。
【請求項25】
各空洞の近傍における抵抗の変化のプロファイルを検出し、
単位用量形態が前記ブリスターパックから分配されたかどうか、又は
前記抵抗の変化が非分配圧力プロファイルを有するかどうか
を特定する工程を更に含む、請求項
19~
24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分配デバイス、又は薬剤を分配するためのシステムに関し、特に、薬剤用量がいつ分配されたかを監視するための分配デバイス又はシステムに関する。本発明はまた、薬剤を分配する方法に関し、特に、薬剤用量がいつ分配されたかを監視する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、治療計画その他の一部として、特に、複数の薬剤用量を同時及び/又は連続的に提供することが望まれる場合に、患者又は他の意図される薬剤受取者に薬剤用量を提供するための多くの手法がある。普及しており且つ便利な薬剤形態は、受取者による経口消費用の錠剤、丸剤、カプセル等のような単位用量である。一般に、複数の単位用量が、1つ以上の単位用量を一度に分配するための便利な形態で、例えば、除去可能なクロージャを有する容器、又はブリスターパックと呼ばれることの多い、破壊可能な若しくは壊れやすいカバーをそれぞれ有する、用量を個別の隔室に封入したシートで受取者に提供される。
【0003】
そのようなデバイスによって、服用が必要であると受取者が判断したときに受取者が自身の薬剤に携帯可能且つ便利な手法でアクセスすることが可能になる。しかしながら、特に、薬剤を頻繁に、規則的又は不規則的な間隔で服用すべき場合、受取者は用量を服用すべき適切な時刻を覚えていない場合がある。受取者がデバイスから用量を取り出し、服用した場合でも(適切な時刻に又は服用することを後に思い出したときに)、受取者はその後特定用量を服用したことを忘れる場合があり、したがって、時期尚早に更なる用量を服用する場合がある。
【0004】
このような治療計画に対する非コンプライアンスの課題は、薬剤を過少投与又は過剰投与される可能性のある患者の効果的でない治療及び潜在的な合併症につながり、場合によっては患者の長期治療の有効性を制限する及び/又は増悪、副作用等に至る、医療における顕著な問題である。更に、服用し損なったことによる未使用の薬剤は適切に且つ現地の規制及び規則に従って廃棄されねばならず、実施に費用がかかり、且つ不便な場合がある。
【0005】
例えば、ブリスターパックの個々のブリスターに用量をいつ服用すべきかの表示をつけることによって、投与計画に対する非アドヒアランスの上記課題を克服する試みがなされてきた。しかしながら、これは、各ブリスターパックを受取者の特定のニーズ及び投与計画に合わせてカスタマイズすることが必要である。複数の単位用量を分配することができる隔室内の複数の単位用量と、単位用量が取り出され、患者によって服用された(ことが示唆される)かどうかを特定するための、隔室を監視する何らかの形態とを全般的に含むより最近のデバイス及びシステムが開発されている。しかしながら、適切なデバイス又はシステムを作製するいくつかの試みにもかかわらず、先行技術の解決策は一般に製造に非常に費用がかかり、いくつかの比較的複雑な構成要素からなり、そのうちの多くが1回(即ち、単位用量が全て取り出されるまでの1回の投与期間)だけ使用され、その後、廃棄されなければならない。典型的に当てはまるようにデバイスの構成要素が電子機器を含む場合、この場合も、そのような構成要素の廃棄のために遵守しなければならない現地の規制があり、且つそのようなデバイスのコストは法外に高い。
【0006】
したがって、患者又は意図される他の薬剤の受取者が薬剤を適切な時刻に確実に分配することを可能にし、且つ特定の用量を服用したかどうか及び何時に服用したかをイベント後に一度に精査することができる薬剤ディスペンサ、及び薬剤を分配する方法に対するニーズは依然としてある。更に、対応する許容可能な価格で提供することができるそのようなディスペンサ及び分配する方法に対するニーズは依然としてあり、コストの点で魅力的な、信頼性の高い、再利用可能な、患者及び製造に配慮したアドヒアランス監視解決策は、上述の患者のニーズの1つ以上に対処する可能性を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、先行技術の欠点の少なくとも1つ以上を克服する分配システム及び方法が提供される。第1の広範な態様から、ブリスターパックから単位用量形態を分配するための分配システムが提供され、分配システムは、ブリスターパックを受け入れるためのハウジングであって、ブリスターパックは複数の空洞を有し、各空洞内に少なくとも1つの単位用量形態が封入されており、少なくとも1つのハウジング開口部を含む、ハウジングと;複数の開口部であって、各センシング層開口部は、ブリスターパックがハウジング内に受け入れられたときにブリスターパックの複数の空洞のうちの対応する1つ以上と実質的に位置合わせされるように構成されている、複数の開口部と、複数の圧力センシング領域であって、少なくとも1つの圧力センシング領域は各センシング層開口部を少なくとも部分的に包囲する、複数の圧力センシング領域と、を含む、センシング層と;電子ユニットと;センシング層に電圧を供給するための電源と;を含み、使用時、単位用量形態は、各空洞に圧力を加えることによってセンシング層開口部と少なくとも1つのハウジング開口部とを通ってブリスターパックから分配され、センシング層は、各単位用量形態がブリスターパックから分配されるときに各空洞の近傍に加えられる圧力を検知する。
【0008】
分配システムは、薬剤用量等がその空洞内に密閉されたブリスターパックをシステムのハウジング内に受け入れることができ、患者又は他の薬剤用量の受取者(又は介護者等)が空洞を押してブリスターのシールを破壊し、通常の手法で用量を分配することができるため有利であり、分配システムは患者が空洞から用量を排出する圧力を検知し、用量が分配されたことを先行技術よりも確実且つより正確に特定することができる。更に、分配システムのモジュール式構成、即ち、ハウジングがブリスターパックを受け入れるように構成されていることにより、前のブリスターパックが空になるたびに補充される交換用ブリスターパックとともにシステムを何度も再利用することができる。したがって、例えば、電子ユニットは複数回使用することができ、単回又は短時間の使用後に電子機器を廃棄することに付随するコスト及び環境問題が回避される。同様に、センシング層は複数回再利用することができる。更に、センシング層は開口部を含むため、これによりブリスターパックをハウジング内のセンシング層の上に挿入することができることで、患者が自身のブリスターパックを組立済みシステム内に入れることが簡単且つ便利になる。
【0009】
このシステムは、多くの国で調剤されている薬剤の多くに当てはまるように、患者に標準的なブリスターパックで提供される単位用量形態(丸剤、錠剤、カプセル剤等)において特に有益である。標準的なブリスターパックは、典型的には、規則的な又は不規則的なアレイに間隔を開けて配置された複数の空洞を有し、圧力(例えば、患者の指又は親指による)によって空洞を潰し、用量を押して空洞上の破壊可能なシールを通過させることによりブリスターパックから放出され得る1回分の用量の薬剤を各空洞内に有する。用語「標準的な」とは、本明細書では、特定の薬剤に専用ではあり得るが、一般に各薬剤に対して同様の形態で大量生産される、様々なサイズ、形状、及び構成の先行技術のブリスターパックを示すものである。したがって、システムのユーザは標準的なブリスターパックをハウジングに単に挿入して用量を必要な時に分配することができ、システムは、更なる参照のために、投与計画に対するアドヒアランス又は非アドヒアランスが記録されるように、分配イベントを特定する。ブリスター内の全ての用量が分配されると、ユーザは空のブリスターパックをハウジングから単に取り出し、交換用の標準的なブリスターパックを挿入して、治療計画に対する自身のアドヒアランス又はその他の記録を継続する。有利には、システムは、空のブリスターパックの取り出し及び/又は交換用ブリスターパックの挿入を検知するための少なくとも1つのセンサを含んでもよく、センサの検知により、システムをこのイベントに応じて調整又は更新すること、例えば、任意のカウンタ、表示等をリセットすること、及び/又はそのような情報をユーザに表示すること等を可能にする。
【0010】
上述のように、分配システムは患者により加えられる圧力を使用して用量を排出し、薬剤用量が患者によっていつ服用されたかを特定する。これは、用量が分配される開口部と圧力センシング領域とを有するセンシング層を用いて実現される。センシング層は、圧力センシング領域を画定する感圧層と、導電層であって、センシング層の圧力センシング領域と実質的に位置合わせされた導電領域を含む導電層と、を含んでもよい。この構成は、導電層に電圧を加えることができ、層の導電領域が圧力センシング領域に接触すると圧力センシング領域内を電流が流れ、圧力センシングを発生させることができるため有利である。
【0011】
センシング層は、感圧層と導電層との間にスペーシング層を更に含んでもよく、スペーシング層は、感圧層と導電層とが電気接触しないように感圧層と導電層とを離し、スペーシング層は、感圧層と導電層とを電気接触させることができるように圧縮可能である。したがって、感圧層と導電層とが離れているとき、導電層に供給されるいかなる電圧も感圧層に供給されない。しかしながら、患者が用量を排出するためにブリスターパック空洞を押すと、スペーシング層は圧縮し、感圧層と導電層とは電気接触し、圧力センシング層に電圧が供給され、ブリスターに加えられた圧力が特定される。この開回路/スイッチ型構成は、回路/スイッチが、センシング層に圧力が加えられてスペーシング層が十分に圧縮されたときにのみ閉じるため、システムで小型電源を使用できるようにするため及びシステムの動作寿命を向上させるために特に有利である。スペーシング層は発泡体を含んでもよく、発泡体は、適切な量の圧力下で所望の圧縮率に容易に構成可能な材料である。
【0012】
システムの層は、上記機能を実現するために任意の適切な手法で構成されてもよい。例えば、センシング層開口部は実質的に円形又は楕円形であってもよく、スペーシング層のセンシング層開口部は、開口部の近傍の感圧層と導電層との間に空気間隙が設けられるように、感圧層のセンシング層開口部及び導電層のセンシング層開口部よりも大きな直径を有してもよい。即ち、スペーシング層が圧縮されたときに露出した部分が直接接触するように、スペーシング層に接触しているときでも露出している、感圧層及び導電層それぞれの開口部を包囲する部分がある。感圧層の開口部は導電層の開口部と実質的に同じ大きさであってもよい、又はこれら層の1つは、これら層のうちの別の層の直径よりも大きな直径を有する開口部を有してもよい。
【0013】
上述のように、使用中に層を電気接触させるために十分な圧力が加えられない限りは、電源により電圧が供給され得る導電層を感圧層から離すことが望ましい。したがって、センシング層は、感圧層と導電層とが電気接触するまで圧縮可能スペーシング層の圧縮により空気間隙がなくなるように構成されていてもよい。電源は、ボタン形電池又は他の小型バッテリーデバイスなどのバッテリーであってもよい、及び又は及び外部源(例えば、誘導結合によって)を介し得る充電式であってもよい、及び/又は太陽電池等であってもよい。
【0014】
感圧層は、感圧層に加えられる圧力が適切な形態で記録される及び/又は測定されるように任意の適切な手法で構成されてもよい。特定の構成では、感圧層は、分散させた導電性粒を含む非導電性材料を含んでもよい。このような材料は典型的な半導体であり、電流は材料を流れることはできるものの導電性材料と同程度ではなく、分散させた導電性粒子が互いにより接近して圧縮されるため材料に圧力が加えられると材料の抵抗が変化する(典型的には減少する)という点で感圧性である。したがって、材料の抵抗の変化を材料の1つ以上の異なる位置で測定し、材料のどこに、どれほどの圧力が加えられているかを特定することができる。感圧層に特に有用な材料は、導電性粒子、好ましくはカーボンブラック粒子を含浸させたポリマーフィルム層、好ましくはポリエチレンなどのポリオレフィン層を含む材料などの、可撓性であり且つ比較的低コストのものである。好適な材料の例としては、Velostat(登録商標)及びLinquist(登録商標)及びEeonyx(登録商標)が挙げられる。例えば、Velostat(登録商標)は、薄く、可撓性であり、且つ所望の層への製造が容易(型抜きし、開口部を開けることができる)なため特に有用である。しかしながら、適切な特性を有する任意の適切な材料を使用してもよい。
【0015】
導電層は、層に/から電圧を供給することができるように任意の適切な手法で構成されてもよい。特に、低コストの分配システムにおいては、導電層は製造が簡単且つ大量生産されることが望ましい。したがって、導電層はプリント回路基板(PCB)を含んでもよい。このような印刷された電子機器は、便利であり、構成が容易であり、低コストであり、本システムでの使用に非常に適した薄い及び/又は可撓性材料上に容易に印刷される。例えば、圧力が加えられた特定位置を特定することが望まれるある構成では、導電層の導電領域は実質的に環状であり、導電層の開口部を取り囲んでもよく、各導電領域は導電層の任意の他の導電領域から離れている。したがって、特定位置における材料の(例えば)抵抗変化として識別され得る特定のブリスターにおける又はその周囲の圧力を検知することができる。そのような導電領域は各開口部の周囲に印刷することができ、電子機器等を制御するために各開口部を接続するトレースを有する。或いは、製造を容易にするために、導電層の導電領域は、導電層の実質的に全てを含んでもよい。したがって、基板は、例えば、導電性材料のコーティングを全体に適用することができ(又は実際、層は導電性材料を実質的に含んでもよい)、適切な開口部を層から切り抜き、導電層を形成することができる。
【0016】
分配システムのハウジングは少なくとも1つのハウジング開口部を含む。これにより、丸剤等をブリスター空洞から押してハウジングの開口部を通過させることができる。ハウジング開口部は、例えば、ハウジングの基部の実質的に全体に広がってもよく、開口部の外側周囲のフレームのみがハウジング基部を画定する。ハウジング開口部は大きく、全てのブリスターと位置合わせされるため、これにより、異なる構成のブリスターパックをハウジングとともに使用することが可能になる。しかしながら、ハウジングにより高い構造的剛性を与えるために、ハウジングは複数のハウジング開口部を含む基部を含んでもよく、ハウジング開口部は、ブリスターパックがハウジング内に受け入れられたときに各ハウジング開口部がブリスターパックの複数の空洞のうちの少なくとも1つと実質的に位置合わせされるようにアレイに配置されており、ブリスターパックは標準的なブリスターパックである。ハウジング開口部は、各ブリスターのフットプリントと実質的に同じ大きさ(又はそれよりもわずかに大きい)になるように、且つ特定のブリスターパックに適合するように対応するパターンで構成されていてもよい。或いは、ハウジング開口部は、各ブリスターのフットプリントよりも実質的に大きくてもよく、ブリスターパックのいくつかのブリスターに適合するように構成されていてもよい。いくつかの構成では、ハウジングの基部部分は、取り外し可能で、異なる構成の開口部を有する基部部分と交換可能であってもよく、ハウジングを異なるブリスターパックに合わせてカスタマイズすることが可能になる。
【0017】
分配システムは電子ユニット及び電源を含む。電子ユニットは、センシング層に加えられた圧力等を示す、受信された信号を処理するためのプロセッサなどの構成要素を含んでもよい。したがって、分配システムの電気システムは、いくつかの先行技術の構成の受動システムに比べると能動システムである。電子ユニットは、少なくとも、各単位用量形態がブリスターパックから分配されるときに各空洞の近傍に加えられた圧力をセンシング層が検知した時刻及び日付に対応するデータを記憶するためのメモリを含んでもよい。電子ユニットは、データをリモートデバイスに送信するための、Bluetooth(登録商標) LE送信機であり得る無線送信機であり得る送信機を更に含んでもよく、データは、少なくとも、各単位用量形態がブリスターパックから分配されるときに各空洞の近傍に加えられた圧力をセンシング層が検知した時刻及び日付に対応する、及び/又はデータは、単位用量形態が所定の日付及び時間に分配される予定であるというリマインダに対応する。本発明の他の実施形態では、他の送信機、例えば、WiFi、3G、4G、5G等を含む他の無線プロトコルを介して通信するものも企図される。したがって、ブリスターが押され、それによって用量が分配された時に関する情報をコンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチ、プリンタ等のような外部デバイスに伝送することができ、患者又は介護者は、患者が自身の投与計画に従ったかどうか、及び患者が自身の投与計画に従わなかった特定時刻があるかどうか等に関するデータを見ることができる。
【0018】
分配システムは、例えば、電子ユニット内に、システムの効率的な動作を補助するための他の構成要素を含んでもよい。システムは加速度計を含んでもよく、したがって、システムは、例えば、ユーザが分配システムを扱っている時を特定することができる。加速度計は活動レベルが特定の閾値を超える時を検知し、したがって、ユーザが用量を分配しようとしているようであることを特定するように構成されていてもよい。システムはこの特定を使用して、用量の分配を検知するために及び/又は用量が分配されたかどうかを特定するため等の適切なアルゴリズムを選択するために、デバイスの必要な構成要素を起動してもよい。加速度計はまた、活動レベルが特定の閾値を下回る時を検知し、したがって、ユーザが分配システムを片付けたようであることを特定するように構成されていてもよい。システムはこの特定を使用し、用量の分配を検知するための動作などシステムの基礎的な動作に必要ない任意の構成要素を停止してもよい(即ち、システムは、電力の節約のためにスリープモードに切り替わってもよい)。
【0019】
上述のように、薬剤用量を服用する時刻に患者にリマインドし、患者が投与計画に従うことを補助するために、リマインダをリモートデバイスに、例えば、患者のスマートフォン又はスマートウォッチに送信してもよい。付加的に又は代替的に、リマインダは分配システムから提供される情報に基づきリモートデバイスにおいて生成してもよい。リマインダは、リモートデバイス上に表示されるメッセージ、アラーム、光の点滅などの視覚表示及び/又は振動通知の形態であり得る。付加的に又は代替的に、患者がリマインダを分配システム自体で受信することが有用な場合がある。したがって、分配システムは、リマインダ及び/若しくは他の有用な情報を表示するためのディスプレイを含んでもよい、並びに/又は投薬時刻を示すために照明される光、及び/若しくは振動通知及び/若しくは聴覚アラーム等のような、用量が分配される時を示すための他の手段を含んでもよい。付加的に又は代替的に、分配システムディスプレイは他の情報を表示してもよく、例えば、ディスプレイはいつ薬が服用されたか又は服用されなかったか等のような上記データを表示してもよい。
【0020】
分配システムのセンシング層は、分配システムに挿入されたブリスターパックから用量が分配されるときに加えられた圧力を検知する。分配システムは空洞の近傍の任意の圧力を分配圧力として特定するように構成されていてもよいが、圧力は薬剤用量を分配するために十分でない及び/又は圧力は用量を分配するために患者が圧力を故意に加えたことによるものではない可能性がある。例えば、患者が分配機構をポケット、財布、小銭入れ、バッグ等に入れて運ぶ場合、バッグ内の他の異論等との接触により、又は患者が動き回る際等に分配デバイスに故意でない圧力がかけられる場合がある。したがって、分配システムに加えられた圧力が用量を分配するためのものと思われるかどうか又は他の理由のためであるかどうかを特定することが望ましい。したがって、センシング層は、各空洞の近傍に加えられる圧力のプロファイルを検出し、単位用量形態がブリスターパックから分配されたかどうか、又は圧力が非分配圧力プロファイルを有するかどうかを特定してもよい。例えば、検知される圧力の閾値が特定されてもよく、この閾値を上回ると、用量が分配されたようであると特定される。感圧層が例えば半導電性材料を含む場合、特定の閾値を下回る抵抗の測定値は、用量を分配するための十分量の圧力を示し得る。付加的に又は代替的に、圧力の形状及び/又はその位置を使用して、用量が分配されたかどうかを特定してもよい。例えば、センシング層が複数の位置で(おそらくは各位置においてほぼ同じ規模の)圧力を検知した場合、システムは、これは分配システムがバッグ内の他の物品に対して押しつぶされたこと又はポケットの中にあること等によるものである可能性が高いと特定してもよい。圧力パターン、例えば、圧力の大きさ、圧力の分布(開口部の片側が他方の側よりも高い圧力を受けているかどうか)、圧力プロファイル(即ち、圧力がどれほど早く蓄積及び放出されるか)等を解析することにより、分配システムは薬が服用されたかどうかを特定することができる。アルゴリズムは、十分な圧力が加えられたかどうかの表示を与えるのみのために、電子ユニット内で、又は例えば、発泡体の厚さ及びセンサ構造の剛性を調整することによって機械的に実施することができる。
【0021】
上述のように、システムの構成要素の多くを複数の連続するブリスターパックにおいて再利用できるため、モジュール式分配システムは有利である。分配システムの構成要素のうち特定のものは他の構成要素よりも耐久性があってよい。例えば、ハウジングはプラスチックから形成されてもよく、交換を要することは非常にまれである。システムの他の構成要素は、例えば電源が切れた場合により頻繁な交換を必要とし得る。しかしながら、いくつかの構成では、交換可能及び/又は再充電可能電池が提供される。センシング層は比較的耐久性があってもよく、定期的な交換は必要ないが、任意の構成では、異なるブリスターパックに対して、それらが標準的なブリスターパックであっても、センシング層の構成をカスタマイズすることが望ましい場合がある。この理由は、これらは構成のバリエーションを有する場合があり、特定の薬剤等に応じて異なり得るからである。したがって、ハウジングとセンシング層は分離可能な構成要素であってもよく、異なる構成を有するセンシング層をそれぞれハウジング内に受け入れ可能であるように構成されている。患者は、その後、既存のセンシング層を取り出し、交換用センシング層を入れ、分配システムを所望のように変更することができる。電子ユニットは、ハウジング内に実質的に収容されていてもよく、ハウジングは、電子ユニットへの接続のためにセンシング層のコネクタを受け入れるための接続用開口を有する。これにより電子ユニットを破損及び塵等から保護し、電子ユニットの寿命を向上させる。しかしながら、ハウジングは、電源及び/又は電子ユニットの任意の構成要素及び/又は電子ユニット全体の交換のために、電子ユニット又はシステムの他の部品にアクセスするために筐体を開放できるように構成されてもよい。したがって、システムは、構成可能、更新可能及び/又はアップグレード可能であり、且つ先行技術の構成よりも柔軟であり、システム構成要素の不必要な廃棄を防止する。
【0022】
更に広範な態様から、ブリスターパックを受け入れた分配システムから単位用量形態を分配する方法であって、分配システムは、ブリスターパックを受け入れるためのハウジングであって、ブリスターパックは複数の空洞を有し、各空洞内に少なくとも1つの単位用量形態が封入されており、少なくとも1つのハウジング開口部を含む、ハウジングと;複数の開口部であって、各センシング層開口部は、ブリスターパックがハウジング内に受け入れられたときにブリスターパックの複数の空洞のうちの対応する1つ以上と実質的に位置合わせされるように構成されている、複数の開口部と、複数の圧力センシング領域であって、少なくとも1つの圧力センシング領域は各センシング層開口部を少なくとも部分的に包囲する、複数の圧力センシング領域と、を含む、センシング層と;電子ユニットと;センシング層に電圧を供給するための電源と;を含み、方法は、各単位用量形態がセンシング層開口部と少なくとも1つのハウジング開口部とを通ってブリスターパックから分配されたときに各空洞の近傍に加えられた圧力をセンシング層によって検知する工程を含む、方法が提供される。方法で使用される分配システムは、本発明の第1の広範な態様に従い上述した特徴のいずれか1つ以上を有してもよい。例えば、分配デバイスのセンシング層は、感圧層と導電層との間にスペーシング層を更に含んでもよく、スペーシング層は、感圧層と導電層とが電気接触しないように感圧層と導電層とを離し、方法は、スペーシング層を圧縮することによって感圧層と導電層とを電気接触させる工程を更に含む。
【0023】
センシング層開口部は実質的に円形又は楕円形であってもよく、開口部の近傍の感圧層と導電層との間に空気間隙が設けられるように、スペーシング層のセンシング層開口部は、感圧層のセンシング層開口部及び導電層のセンシング層開口部よりも大きな直径を有してもよい。方法は、感圧層と導電層とが電気接触するまで空気間隙がなくなるほど圧縮可能スペーシング層を圧縮する工程を更に含む。
【0024】
方法は、電源から導電層に電圧を供給する工程を更に含んでもよい。方法は、少なくとも、各単位用量形態がブリスターパックから分配されるときに各空洞の近傍に加えられた圧力をセンシング層が検知した時刻及び日付に対応するデータを電子ユニットのメモリに記憶する工程を更に含んでもよい。方法は、ハウジング内に挿入されたブリスターパックの識別子(ID)(IDは、例えば、記憶されたIDを有するブリスターパックのチップ又はタグから検出されてもよい)などの他の有用な情報及び/又は取り出された及び/若しくは挿入されたブリスターパックに関する情報及び/又はブリスターパックの向きに関する情報等を検出する及び/又は記憶する工程を更に含んでもよい。方法は、リモートデバイスにデータを送信する工程を更に含んでもよく、データは、少なくとも、各単位用量形態がブリスターパックから分配されるときに各空洞の近傍に加えられた圧力をセンシング層が検知した時刻及び日付に対応する及び/又はデータは、単位用量形態が所定の日付及び時間に分配される予定であるというリマインダに対応する。方法は、好ましくはBluetooth LE送信を含む無線でデータを送信する工程を更に含んでもよい。
【0025】
方法は、分配システムのディスプレイ上にデータを表示する工程を更に含んでもよい。方法は、各空洞の近傍に加えられた圧力のプロファイルを検出し、単位用量形態がブリスターパックから分配されたかどうか、又は圧力が非分配圧力プロファイルを有するかどうかを特定する工程を更に含んでもよい。
【0026】
ここで、本発明の好ましい態様及び実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態による、ブリスターパックを中に受け入れた分配システムの斜視図
【
図2】ブリスターパックのない
図1の分配システムの斜視図
【
図4】本発明の実施形態による分配システムのセンシング層の、層の一部分の概略図
【
図5A】
図4のセンシング層の、層の実施形態を示す概略上面図
【
図5B】
図4のセンシング層の、層の実施形態を示す概略上面図
【
図5C】
図4のセンシング層の、層の実施形態を示す概略上面図
【
図5D】
図4のセンシング層の、層の実施形態を示す概略上面図
【
図6】本発明の実施形態による分配システムの導電層の概略図
【
図7】本発明の実施形態による分配システムの通信ネットワークの概略図
【
図8A】本発明の実施形態による分配システムから伝送され、分配システムを使用する患者のデバイス上に表示される情報の例
【
図8B】本発明の実施形態による分配システムから伝送され、分配システムを使用する患者のデバイス上に表示される情報の例
【
図9A】本発明の別の実施形態による分配システムのセンシング層の、層の一部分の概略側面図
【
図9B】導電開口部を包囲する導電領域を有する
図9Aの導電層の一部分の概略上面図
【
図9C】用量が分配されるときの圧縮された状態の
図9Aの分配システム層の概略側面図
【
図10】本発明の別の実施形態による誘導性センシング層の概略上面図
【
図11A】それぞれ圧縮されていない状態及び圧縮された状態の本発明の別の実施形態による容量性センシング層の概略側面図
【
図11B】それぞれ圧縮されていない状態及び圧縮された状態の本発明の別の実施形態による容量性センシング層の概略側面図
【
図12A】本発明の別の実施形態による光学センシング層の概略側面図である。
【
図13A】本発明の別の実施形態による導電領域を有する導電層の概略上面図
【
図13B】本発明の別の実施形態による導電領域を有する導電層の概略上面図
【
図14A】本発明の別の簡略化した実施形態によるセンシング層の概略側面図
【
図14B】本発明の別の簡略化した実施形態によるセンシング層の概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態による分配システム(及び方法)は、ブリスターパック、典型的には標準的なブリスターパックから単位用量を分配するように構成されている。ブリスターパックは、例えば、典型的には長期にわたり同じ構成にとどまる、例えば大量生産されたブリスターパック内に特定の薬剤が分配される、及び/又は標準的な構成の複数の空洞を有する等である場合に標準的なブリスターパックであると考えられる。典型的な標準的ブリスターパックは、平坦な箔シート(互いを覆い、互いに取り付けられている)を含む。最も一般的には基部と呼ばれる1つの比較的剛性の箔は、それぞれ錠剤又はカプセルを収容するための空洞又は開放「ブリスター」を含み、他の箔は平坦で、最も一般的には蓋と呼ばれ、空洞又はブリスターの開口を封止する。最も一般的に使用されるシーリング法はヒートシールであり、箔の少なくとも1つは熱可塑性の特性を有し、現在、パックの製造は、箔のウェブを前記シーリングのために連続的に接合し、それらを前記パックに切断することによって最も合理的に実施されている。それにより、ブリスターを上部から押すことにより薬剤が蓋箔に穴を開け、薬剤がパックから解放され、患者によって服用される。
【0029】
図1を参照すると、本発明の実施形態による分配システム2が示され、分配システム2は、分配システム2のハウジング4内に受け入れられたブリスターパック30を有する。ブリスターパックはブリスター基部34を含み、ブリスター基部34は、ブリスター基部34に形成された複数の空洞32を有し、各空洞32は薬剤の単位用量38を含む。空洞32は壊れやすい層36(図示せず、
図3を参照)で密閉されている。ハウジング4は、ブリスターパック30をハウジング4の側縁部4a、4bと、一端にあるカバー6と、他端にある端縁部4cとの間にしっかりと受け入れるために適した大きさ及び形状のものである。患者がブリスターパック30を新たなブリスターパック30と交換することを望む場合にブリスターパック30を持ち上げて取り出すのを補助するために、端縁部4cに切込み部8が設けられている。
【0030】
ハウジング4のカバー6は電子ユニット10を収容する。図示される構成では、カバー6に開口が設けられ、この開口を通して、電子ユニット10のコネクタ12(図示せず、
図3を参照)への接続を行うことができる。しかしながら、他の構成では、電子ユニットとセンシング構成要素は同じプリント回路基板上に製造することができる。典型的には、ハウジングはプラスチック又は他の好適な材料から形成されている。
【0031】
ブリスターパック30を取り外したハウジング4を
図2に示す。ハウジング4は、
図2の実施形態では2x7つの開口部5の規則的なアレイに配置された複数の開口部5を含むが、当然、他の実施形態では他の構成も可能である。したがって、1つの開口部5が、
図1のブリスターパック30の各空洞又はブリスター32に対応する。したがって、用量38を各ブリスター32からハウジング4の開口部5を通して押し出し、患者に分配することができる。ハウジング4の基部7はハウジング4と一体形成されてもよい(例えば、ハウジング全体は単一構成要素として成形等されてもよい)、又は基部7はハウジング4の残部から取り外し可能であってもよく、例えば、基部7は、カバー6端部からスライドさせて取り外し可能であってもよく、又はハウジング4から持ち上げて取り外し可能であってもよい。これにより、別の基部7、例えば、異なる数及び/又は配置の開口部5を有する基部7をハウジング4の残部に挿入することが可能になることで、同じハウジング4で異なるタイプのブリスターパック30を使用することが可能になる。或いは、ハウジング4は単一の開口部5のみを含んでもよく、この開口部5は、基部7を実質的に画定するような大きさのものであるため、全用量38を各ブリスター32から単一の開口部5を通して分配することが可能になる。或いは、ハウジング4は、1つより多いブリスター32に対応するほどの十分な大きさの2つ以上の開口部5を含んでもよい。
【0032】
ここで
図3を参照すると、
図1に示されているような分配システム2の一部分が側断面図で示されている。4つのブリスター32、及びカバー6端部に最も近い用量38のみがハウジング4の対応する部分として示されている。ハウジング開口部5がブリスター32と位置合わせされており、ブリスター32内の用量38を開口部5を通して放出することができるのを見ることができる。用量38を分配するために、患者は、例えば、単にブリスター32を指又は親指で下方に押し(患者の指又は親指による圧力の一般的な方向を示す矢印Pによって示されるように)、更に、用量38を押してシール36と接触させる。シール36は壊れやすい又は破壊可能であるように構成されているため、用量による圧力によりシールが破裂し、用量38は、センシング層20の対応する開口部23、25、27(図示せず、
図4を参照)及びハウジング4の対応する開口部5を通って落ち出る。また、
図3に示されるように、電子ユニット10はハウジングカバー6内に収容されており、ハウジングカバー6は、センシング層をカバー6内に挿入し、電子ユニット10のコネクタ12と接続することを可能にする開口を有する。したがって、以下で更に記載するように、電源からの電圧をセンシング層20に、又はその少なくとも一部分若しくは層に供給することができる。
【0033】
図4は、ブリスターパック30の単一ブリスター32と位置合わせされる、センシング層20を含む分配システム2にブリスターパック30が挿入された状態で使用されているセンシング層20の一部分を示す。センシング層20は、感圧層22と、導電層24と、感圧層22を導電層24から分離する圧縮可能な発泡体層26とを含む複数の構成要素層を含む。感圧層22は
図5Aに示され、層22に圧力がかけられると変化する少なくとも1つの特性を有する材料から形成されている。例えば、層22は、圧力が加えられると抵抗を変化させる(典型的には、圧力が加えられると抵抗は減少する)、導電性粒子を分散させたポリマーを含む半導電層を含んでもよい。センシング層24に使用するのに好適な材料としては、Velostat(登録商標)等が挙げられる。
図10~
図12に示される他のセンシング方法を使用してもよく、例えば、容量性、誘導性、圧電性、及び光学センシングを含み、これらは以下で更に説明する。感圧層22は、用量38を通過させるための複数の開口部23を含む。開口部23はそれぞれ、ブリスターパック30内の用量38の最大寸法よりも大きな直径D
23を有する。感圧層22は、適切な長さL及び幅Wを有するハウジング4内に適合し、ハウジング4内に保持されるような寸法である。
【0034】
図5C及び
図5Dにそれぞれ、2つの異なる導電層24、24’を示す。他の構成も企図され、例えば、
図9A~
図9C及び
図13及び
図14に関して以下で説明する。
図5Cの第1の導電層24は、例えば、ガラス強化エポキシ積層体、ガラス繊維、又は他の適切な基板材料の基板29を含み、その上に導電領域25bが印刷されている又は別の手法で設けられている。導電領域25bは概して環状又は錠剤の形状(例えば、実質的に同じ形状且つ特定のブリスターパックの錠剤よりもわずかに大きくなるように適合される)であり、導電層24の開口部25を包囲している。導電領域25bは、例えば銅などの任意の適切な材料で形成されている。導電層24は、
図6に示すような、導電領域25bによって包囲された開口部25aと導電層を電子ユニット10等に接続するトレース11(全て基板29上に印刷されている又は導電領域及びトレースを露出させるためにエッチングされている)とを有するプリント回路基板(PCB)を含んでもよい。この構成は、センシング層開口部23、25、27の近傍の感圧層22に接触すると感圧層22に電圧を伝送することができる個別の導電領域25bを提供する。導電領域25bの直径D
25bは開口部25aの直径D
25aよりも大きい。
【0035】
図5Dの別の導電層24’は、導電性材料から、例えば、銅板又は他の好適な材料から形成される、又は導電性材料層が印刷された(図示せず)基板から形成されてもよい。開口部25の直径D
25は
図5Cの実施形態のものとほぼ同じである。
【0036】
スペーシング層26が感圧層22と導電層24、24’との間に設けられている。このスペーシング層26は圧縮可能で、例えば、圧縮可能な発泡体で作製されており、圧力が加えられていないときには感圧層22と導電層24、24’とは離れているが、スペーシング層26はユーザがブリスター32から用量38を分配する圧力によって圧縮され、感圧層22と導電層24、24’とを電気接触させる。スペーシング層26の開口部27は、感圧層22及び導電層24、24’の開口部23、25、25aの直径D
23、D
25、D
25aよりも大きな直径D
27を有するため、スペーシング層26の開口部27は、感圧層22と導電層24、24’とを接触させることができるように構成されている。即ち、開口部27を包囲するスペーシング層26の縁部に隣接する空気間隙21が形成され、感圧層22の表面の、その層の開口部23の領域を、導電層24、24’の表面の、導電層の開口部25の領域に対して露出させる(即ち、
図5Cの実施形態の導電領域25bを露出させる)。したがって、感圧層22と導電層24、24’とが互いに対して圧縮されると、露出された領域を直接電気接触させることができる。したがって、変形で互いに接触する層によって回路が閉じられると、導電層24、24’からの電流は感圧層22を通り、導電性コンタクト層16に流れ、感圧層22を再び通り、導電層22、24’に更に戻ることができる。これについては
図9に関連して以下で更に詳細に説明する。
【0037】
図4に示すように、この実施形態では、上記3つの層22、24、26の上に、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)で形成された保護プラスチック層14と、参照を容易にするために、以下コンタクト層16と呼ぶ更なる導電層16とを含む、更なる層が設けられている。コンタクト層16は感圧層22の上方に配置され、好ましくは可撓性であり且つ薄い炭素(例えば黒鉛)又はアルミニウム等のような導電性材料で形成されている。保護層14の破壊された部分17は、使用時、3つの主要センシング層20の層の開口部23、25、27内に延びてもよい、又は(
図9に示すように)保護層14は単に曲がり、破壊されず、システムに更なる保護を提供してもよい(保護層17が分配される用量の上方にある場合)。
図4の構成における保護層14の破壊された部分17はコンタクト層16を覆い、コンタクト層16と、感圧層22及び導電層24、24’の開口部23、25の縁部(したがって、空気間隙21)とを塵及び他の汚染物質から保護する。同様に、
図9A及び
図9Cの保護層14の破壊されていない部分はコンタクト層16等を保護する。
【0038】
図9A~
図9Cは、本発明の別の実施形態によるセンシング層の一部分を示す。この構成もまた導電層24を含み、層24は基板29上に配置されており、基板はガラス繊維を含む。標準的なPCB構成(
図9Bに示される)で既知のように、導電層24は基板29上に印刷されている。導電層24は少なくとも1つの開口部25aを含み、開口部の周囲には導電領域25bが配置されているが、この実施形態では、導電領域25bは互いに分離されており、繋がったリングを開口部25aの周囲に形成していないが、リング形状に概ね配置されている。基板29はまた適切な開口部(図示せず)を含む。
図9Aのセンシング層20は先の実施形態と同様に、発泡体層26と、Velostat又は他の好適な材料を含む感圧層22と、炭素等のコンタクト層16と、PET等の保護層14と、その他を含む、他の層を更に含む。
【0039】
図9Cに示されるように、錠剤などの単位用量を分配することを望むとき、ブリスター内の用量(図示せず)に下方の圧力Pが加えられ、この圧力Pがセンシング層20の層、特に発泡体層26を圧縮する。したがって、層は引き合わされ、導電層24は感圧層22に接触し、感圧層22は更にコンタクト層16に接触する。したがって、線a’-b’によって示されるように、導電層24に加えられる電圧は導電層24を通過して感圧層22及びコンタクト層16に達し、次いで、再び感圧層22を通って導電層24に達することができる。
図9Cを
図9Aと比較すると、
図9Cでは圧力Pにより回路が閉じられ、電圧が感圧層22を通過し、それにより、加えられた圧力及び圧力がどこに加えられたかの特定を可能にする(特に、
図9Bに示される分離された導電領域25bによる)、その一方で、
図9Aでは、いかなる圧力もなく、回路は開かれており、感圧層22に電圧は送られない。
【0040】
ここで
図7を参照すると、例示的なネットワーク40内で使用中の本発明の実施形態による分配システム2が示される。各分配システム2は、Bluetooth LE送信機などの送信機を電子ユニット10内に含む、又は送信機に別の手法で接続されている。電子ユニット10はまた、情報(挿入されたブリスターパック30から分配される各用量38に関連し、分配される際にセンシング層20によって特定される)が記憶されるメモリを含み、情報は、少なくとも、薬剤用量38が分配された時刻及び日付を含む。分配システム2の送信機は、連続的に、又は規則的若しくは不規則的な間隔で、又はスマートフォン42が分配デバイス2の範囲内にあると検知されたとき、又は電子ユニット10の送信機に電力が供給されたとき等のいずれかに、データを患者のスマートフォンデバイス42などのリモートデバイスに送信する。別の構成では、データは、付加的に又は代替的に、患者及び/又は患者の処置を担う介護者のコンピュータなどの他のリモートシステム等に送信されてもよい。
【0041】
スマートフォン42は、
図8Aに示すように、データに含まれる情報がスマートフォン42上に表示されるように、適切なアプリケーション50などの適切なソフトウェアを備える。したがって、患者(又は介護者又は他のデータの受取者)は、分配デバイス2を使用してブリスターパック30から分配された各用量38に関する履歴データを容易に見ることができる。例えば、
図8Aに示すような交通信号灯配置52により示されるように(ディスプレイデバイス上で色が使用される場合があるが、図示されない)、例えば、患者は、治療計画を遵守しているかどうかを見ることができる。「緑色」のインジケータ54は、用量38が適切な時刻に分配されたことを示し、「赤色」のインジケータ56は、用量38が分配されるべきときに分配されなかったことを示す。「白色」のインジケータ55は、未だ分配されておらず、未だ服用される予定ではない用量38を示す。ブリスターパック30内の用量38の位置は、例えば、ブリスターパック30と同じ番号及び配置のブリスター32を有するディスプレイ52によって示されてもよい。付加的に又は代替的に、アプリケーション50は、各用量38の分配の正確な時刻及び日付並びに治療計画のどの用量38が服用されたか(即ち、第1、第2、第3等の用量)など他の情報58を患者に示してもよく、ゼロ番目の用量59は、新たなブリスターパック30が分配デバイス2に挿入され、したがって、新たな治療計画が開始されるときを示す。
【0042】
付加的に又は代替的に、
図7に示すように、分配された用量38に関する情報は、分配システム2から直接的に又は間接的に(例えば、図に示されるようなスマートフォン42を介して)スマートウォッチ44などの患者の別のデバイスに送ることができる。例えば、用量38が分配されるとすぐに患者のスマートウォッチ44上にインジケータ45がトリガーされ、
図8Bに示すように、服用した用量38が無事に登録されたことを患者に知らせてもよい。スマートフォン42のアプリケーション50上に表示され得るものと同じ情報を含む他の情報もまた又は代替的に、スマートウォッチ44上に表示することができる。
【0043】
同じく
図7に示されるように、分配システム2からのデータは、付加的に又は代替的に、サーバ46などの別の遠隔位置等に伝送されてもよい。これにより、データの長期記憶を容易にし、例えば、データがインターネットを介してサーバ46から入手可能な場合に医師などの介護者がデータにアクセスすることを可能にし、患者が医師のオフィス等にいる必要はない。
【0044】
上記実施形態は圧力センシング構成を含むが、別のセンシング層を有する別の実施形態もまた、本発明の範囲内において企図される。例えば、
図10に示されるように、上記又は下記の任意の適切な実施形態で感圧層22の代わりに使用してもよい誘導感知層122(又は誘導層122)が開示される。誘導層122は、誘導コイル層126(又は起電力が誘起され得る任意の他の適切な手段)と、誘導コイル基板124とを含む。誘導コイル層126及び誘導コイル基板124が変形する(例えば、
図9A~
図9Cに示される実施形態に従い層に圧力Pが加えられることにより)と、インダクタの電気的特性の変化が検知され得る。したがって、用量が分配されたことを示す圧力が、層122の、用量が分配される開口部125を包囲するコイルの領域において特定される。或いは、誘導コイル層126はブリスターの誘導層(
図3の参照番号34)に結合し、この結合は、ブリスターの誘導層が錠剤の取り出しにより動く又は破壊されると変化する。この結合の変化は、その後、誘導コイル126によって検知される。
【0045】
図11A及び
図11Bは、静電容量感知層222(又は容量性層222)を含む本発明による別の代替的実施形態を示す。
図10に関連して記載した誘導層122の実施形態のように、この容量性層222は互いに接近させた層において同じ原理で動作し、したがって、この場合、層の静電容量が変化し、それにより、層を互いに接触させる際に層に加えられた圧力を示す。より詳細には、容量性層222は基板229を含み、基板229の上方に第1のコンデンサ層224を有する。発泡体層226が第1のコンデンサ層224と第2のコンデンサ層216との間に設けられ、これら2つのコンデンサ層224、216は静電容量C
uを有するコンデンサを形成する。他の実施形態と同様に保護層214などの他の適切な層も設けられる。容量性層222に圧力Pが加えられると(用量がブリスターから押し出されると(図示せず))、圧縮された状態においてコンデンサ層224、216は近接し、静電容量C
u(圧縮されていない状態の)は異なる静電容量C
cに変化する(例えば、静電容量は増加する)。したがって、静電容量の変化は、容量性層222と関連するブリスターパックから用量が分配されたことを示す。
【0046】
図12A及び
図12Bは、光学感知層322(又は光学層322)を含む本発明による別の代替的な実施形態を示す。図示される実施形態においては、光学層322の上方に、薬剤38の単位用量を収容するブリスター32を有するブリスターパック30が示されている。ブリスターパック30の下に、光学層322は、基板329の開口部329aにわたって少なくとも1つの光受信機306と位置合わせされた少なくとも1つの光学送信機304を有する基板329を含む。光学送信機304は光ビーム302を、対応する光受信機の方向に、対応する開口部329aを横切って、連続的又は断続的のいずれかで(例えば、給電されたときのみ及び/又は規則的な間隔で)放出するように構成されている。用量38がブリスターパック30から分配され、開口部329aを通過すると、光ビーム302は用量38の通過によって一時的に遮られるため、用量38の分配が検知される。
図12Bは、基板329の各開口部329aを通る分配を検知するために複数の対応する送信機304及び受信機304が使用され得ることを示す、光学層322の上面図を示す。当然、この層の他の構成も本発明の範囲内である。更に、この光学実施形態では、先の実施形態の他の層、例えば、保護層314も設けられてもよい。
【0047】
上記実施形態は、本発明による構成を説明するものであるが限定するものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義される。各上記例の他の構成も可能であることは理解されよう。例えば、他の抵抗性実施形態が
図13A~
図13B及び
図14A~
図14Bに示される。
図13A及び
図13Bは、導電層の導電領域の2つの代替的構成を示す。
図13Aにおいて、導電領域426は導電層424の各開口部425を包囲しておらず、その代わり、導電層424の隅部に位置している。この簡略構造はそれに関連付けられた感圧(又は他の)層(図示せず)に加えられた圧力をなお検知し、製造がより簡単である。ブリスターパックの複数の空洞から用量を分配することができる細長い開口部425’の周囲にアレイに配置された複数の導電領域426’を有する別の構成が
図13Bに示される。これにより、
図13Aの構成に比べて、用量がどこから分配されたかについてのより正確な特定が行われ、それと同時に、より広いブリスター空洞構成に適応することができるより一般的な構成が提供され、したがって、各特定の製品ブリスターに対して必要な改修の数が減少することにより製造コストを潜在的に削減することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、上記複数の層はセンシング層を形成する及び/又はセンシング層に関連付けられるが、全ての実施形態がこれら層の全てを必要とするわけではない及び/又は付加的な層が必要に応じて設けられてもよいことも理解されるであろう。
図14Aは、
図9Aのセンシング層20に類似し、保護層514と、発泡体層526と、導電層524と、基板529とを含むが、組み合わされた感圧及びコンタクト層522を含む簡略化されたセンシング層520を示す。
図14Bは、
図14Aのセンシング層20に類似し、保護層614及び基板629を含むが、組み合わされた感圧、発泡体、導電及びコンタクト層626を含む、更に簡略化されたセンシング層620を示す。したがって、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく本発明の実施形態に多くの修正を施すことができることは理解されよう。
【0049】
ここで、様々な実施形態のうちのいくつかの分配システム2を使用する方法を記載する。分配デバイス2は、満杯のブリスターパック30がハウジング4内に既に挿入された状態で、又はブリスターパック30(例えばブリスターパック30は薬局から別の取引で患者に調剤され得る)とは別々に、のいずれかで患者に提供される。この後者の場合においては、患者は、例えば、ブリスターパック30をハウジング4の縁部4a、4bとカバー6と反対端4cとによって画定される端部との間の適所に入れる又はスライドさせ、ブリスターパック30をハウジング4に単に挿入する。ブリスターパック30はハウジング4内にしっかりと嵌まり、ブリスター32の、センシング層20の開口部23、25、27との良好な位置合わせを確実とする。
【0050】
この静止構成において、電源からの電圧は導電層24に供給されるが、感圧層22は発泡体層26のより大きな開口部によって画定される空気間隙21によって導電層24から分離されている。したがって、分配システム2は低電力モードにあり、例えば、用量38を分配することが望まれるまでバッテリー電力を節約する。
【0051】
患者は、適切な時刻に患者に用量38の服用を促すためのリマインダを分配システム2から受信してもよい、又は別の手法で用量38を分配すべきと判断してもよい。これを行うために、
図3の矢印Pによって全般的に示されるように、患者は特定のブリスター32を単に下方に押す。患者の指又は親指等による空洞32への圧力は、用量38を押してブリスター基部34のシール36と接触させ、そのような圧力下で破壊するように構成されたシール36を通過させる。したがって、用量38は分配システム2からセンシング層20の穴23、25、27及びハウジング開口部5を通って落ち出て、患者は用量38を服用することができる。
【0052】
患者がブリスター32を下方に押すと、用量38が押されてシール36を通過し分配システム2から出るだけでなく、センシング層20の発泡体層26も圧縮される。これにより感圧層22と導電層24、24’とが互いに近接し、発泡体層26が十分に圧縮可能であるように構成されている場合には、感圧層22と導電層24、24’とは押され、発泡体層26のより大きな開口部27により互いに露出された各層22、24、24’の部分によって直接電気接触することができる。したがって、導電層24、24’とのこの直接の電気接触によって感圧層22に電圧が供給される。したがって、用量38の分配が必要なときにだけ電圧が感圧層22に適時に供給され、この層を使用して、例えば、感圧層22が圧縮されるときの感圧層22の抵抗の変化を測定することによって、ブリスター32に加えられた圧力を検知する。電子ユニット10は感圧層22の抵抗の変化に関するこの情報を記憶し、更なる処理のためにリモートデバイス42、44、46に情報を送信する、及び/又は情報を処理して、用量38が分配された時刻/日付を特定する、のいずれかである。他の図示実施形態では、センシング層は、用量が分配されたことを特定するために異なる状態の変化又は変動、例えば、静電容量の変化(
図11に示すような)、又は光ビームの遮断(
図12に示すような)、又は誘導電圧(
図10に示すような)等を検知する。
【0053】
いくつかの実施形態では、センシング層20は、ハウジング4から取り外し可能な構成要素である。異なるブリスターパック30が分配システム2とともに使用される場合、既存のセンシング層20の代わりに異なるブリスターパック30の構成に対応する構成を有する異なるセンシング層20をハウジング4に挿入することができる。ハウジング4が開口部5を、ブリスターパック30のブリスター32に概ね対応するアレイで含む場合、ハウジング4の基部7はハウジング4の残部から取り外し可能であるように構成されていてもよく、交換用基部7は、異なるブリスターパック30の構成に対応する構成を備えることができる。
【0054】
上記の様々な実施形態で開示したように、標準的なブリスターパック30が受け入れられ、用量38がブリスターパック30のブリスター32から分配された場合、このことは分配システム2によって検知され、用量38の分配は表示される又は将来の参照のために記録される、モジュール式分配システム2が提供される。したがって、コストの点で魅力的な、信頼性の高い、再利用可能な、患者及び製造に配慮した、且つ患者が投与計画を遵守するのを補助し、用量38が分配されたとき及び/又はいくつかの用量38が分配された後の適切な時刻に患者及び/又は介護者が確認する関連情報を提供する、改良された分配システム2が提供される。