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特許7250756車両のホイールハブ用のホイールハブトランスミッションユニット、ホイールハブ、および補助駆動される車両
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  • 特許-車両のホイールハブ用のホイールハブトランスミッションユニット、ホイールハブ、および補助駆動される車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】車両のホイールハブ用のホイールハブトランスミッションユニット、ホイールハブ、および補助駆動される車両
(51)【国際特許分類】
   B60B 27/00 20060101AFI20230327BHJP
   B62M 6/50 20100101ALI20230327BHJP
   B60B 27/02 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B60B27/00 D
B62M6/50
B60B27/02 A
B60B27/02 R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020502305
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018066773
(87)【国際公開番号】W WO2019042619
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】17188394.5
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521557506
【氏名又は名称】ファツア ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】FAZUA GmbH
【住所又は居所原語表記】Marie-Curie-Strasse 6, 85521 Ottobrunn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】テオドア ピーレ
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0275561(US,A1)
【文献】特開2013-064721(JP,A)
【文献】特開2013-047078(JP,A)
【文献】特表2002-527278(JP,A)
【文献】特開2017-138309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 27/00
B62M 6/50
B60B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のホイールハブ(1)用のホイールハブトランスミッションユニット(6)であって、該ホイールハブトランスミッションユニット(6)は、
回転軸線(2)と、
前記回転軸線(2)に対して同心状に配置されており、前記ホイールハブ(1)を駆動するために少なくとも1つのピニオンをねじれ剛性的に取り付けることができるピニオンハブキャリア(7)と、
軸方向において前記ピニオンハブキャリア(7)の隣に配置されており、前記回転軸線(2)に対して同心状に配置された内部空間(31)を有するハブ本体(3)と、
前記内部空間(31)内で前記回転軸線(2)に対して同心状に配置されたトランスミッションスリーブ(13)であって、該トランスミッションスリーブ(13)の測定部(30)を形成する磁気的にコード化された材料を有するトランスミッションスリーブ(13)と、
前記ハブ本体(3)に面した側の長手方向端部を有する前記ピニオンハブキャリア(7)と、前記ピニオンハブキャリア(7)に面した側の長手方向端部を有する前記トランスミッションスリーブ(13)とを結合する駆動側カップリング(26)と、
他方の長手方向端部を有する前記トランスミッションスリーブ(13)を前記ハブ本体(3)に結合する出力側カップリング(14)と、
を備えており、これにより、前記ピニオンハブキャリア(7)から、前記駆動側カップリング(26)と、前記出力側カップリング(14)と、前記トランスミッションスリーブ(13)とを介して前記ハブ本体(3)にトルクを伝達することができ、前記内部空間(31)内に、前記トランスミッションスリーブ(13)の測定部(30)において測定信号を検出するように構成された測定ユニット(15)が配置されており、前記トルクは、前記トランスミッションスリーブ(13)の前記測定部(30)によって、前記磁気的にコード化された材料の磁気特性を用いて、前記内部空間(31)内で検出することができ、前記磁気特性は、前記トルクの影響を受けて変化し、この際、前記測定信号を用いて、前記トランスミッションスリーブ(13)に加えられた前記トルクが導出され
前記駆動側カップリング(26)はフリーホイールであり、
前記駆動側カップリング(26)は、前記ピニオンハブキャリア(7)にねじれ剛性的に結合された第1のフリーホイール部分(10)と、前記トランスミッションスリーブ(13)にねじれ剛性的に結合された第2のフリーホイール部分(11)とを有しており、前記第1のフリーホイール部分(10)は、軸方向において前記第2のフリーホイール部分(11)の隣に配置されていることを特徴とする、
ホイールハブトランスミッションユニット(6)。
【請求項2】
前記ハブ本体(3)と前記トランスミッションスリーブ(13)とを結合するために、前記出力側カップリング(14)は、前記ハブ本体(3)の、前記ピニオンハブキャリア(7)とは反対の側に面した長手方向端部の一部に設けられており、前記ハブ本体(3)の前記長手方向端部の一部は、前記ピニオンハブキャリア(7)に向かう軸方向において、前記測定部(30)に対して垂直に位置しかつ該測定部(30)の、前記ピニオンハブキャリア(7)とは反対の側に面した長手方向端部に接する仮想平面(32)により画定されている、請求項1記載のホイールハブトランスミッションユニット(6)。
【請求項3】
前記ハブ本体(3)と前記トランスミッションスリーブ(13)とを結合するために、前記出力側カップリング(14)は、前記トランスミッションスリーブ(13)の、前記ピニオンハブキャリア(7)とは反対の側に面した長手方向端部の部分に設けられており、前記トランスミッションスリーブ(13)の前記長手方向端部の部分は、前記ピニオンハブキャリア(7)に向かう軸方向において、前記測定部(30)まで延在している、請求項1または2記載のホイールハブトランスミッションユニット(6)。
【請求項4】
前記トランスミッションスリーブ(13)は少なくとも、スポーク用の第1の結合平面(33)からスポーク用の第2の結合平面(34)まで延びる間隔を架橋しており、前記第1の結合平面(33)は、前記ハブ本体(3)の一方の長手方向端部に配置されており、前記第2の結合平面(34)は、前記ハブ本体(3)の他方の長手方向端部に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のホイールハブトランスミッションユニット(6)。
【請求項5】
前記トランスミッションスリーブ(13)は、力の流れの軸方向成分が前記トランスミッションスリーブ(13)全体に沿って同じ方向になるように適合されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のホイールハブトランスミッションユニット(6)。
【請求項6】
前記測定部(30)は、前記内部空間(31)の一部に配置されており、該内部空間(31)のこの部分は、軸方向において2つの仮想結合平面(33,34)により画定されており、これらの結合平面(33,34)のうち第1の結合平面(33)は、前記ハブ本体(3)の一方の長手方向端部においてスポーク用の結合位置と交差しており、前記結合平面(33,34)のうち第2の結合平面(34)は、前記ハブ本体(3)の他方の長手方向端部においてスポーク用の結合位置と交差している、請求項1から5までのいずれか1項記載のホイールハブトランスミッションユニット(6)。
【請求項7】
前記ピニオンハブキャリア(7)と前記トランスミッションスリーブ(13)とは、互いに間隔をあけて配置されており、該間隔を、前記駆動側カップリング(26)が架橋している、請求項1から6までのいずれか1項記載のホイールハブトランスミッションユニット(6)。
【請求項8】
当該ホイールハブトランスミッションユニット(6)の前記第1のフリーホイール部分(10)および前記第2のフリーホイール部分(11)は、軸方向に変位することができる、請求項1から7までのいずれか1項記載のホイールハブトランスミッションユニット(6)。
【請求項9】
前記第1のフリーホイール部分(10)と前記第2のフリーホイール部分(11)とは相互作用するように適合されており、これにより、前記ピニオンハブキャリア(7)から前記トランスミッションスリーブ(13)へ、前記ピニオンハブキャリア(7)の一方の回転方向においてのみ、実質的に全てのトルクを伝達することができる、請求項からまでのいずれか1項記載のホイールハブトランスミッションユニット(6)。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項記載のホイールハブトランスミッションユニット(6)と、前記ピニオンハブキャリア(7)にねじれ剛性的に取り付けられた少なくとも1つのピニオンとを有するホイールハブ(1)であって、前記ピニオンから前記ハブ本体(3)へ一方の回転方向においてのみトルクを伝達するために、前記ハブ本体(3)は、前記駆動側カップリング(26)を介して前記ピニオンにねじれ剛性的に結合されている、ホイールハブ(1)。
【請求項11】
請求項10記載のホイールハブ(1)と、測定した量で前記ホイールハブ(1)を駆動するための制御装置を備えた駆動アセンブリと、前記トランスミッションスリーブ(13)の前記測定部(30)を検出するための測定ユニット(15)とを有する、補助駆動される車両であって、前記測定ユニット(15)は、前記内部空間(31)内に収容されており、前記制御装置は、前記駆動アセンブリの駆動トルクが前記ホイールハブトランスミッションユニット(6)により伝達されるトルクに適合されるように、前記測定ユニット(15)により制御可能である、補助駆動される車両。
【請求項12】
前記補助駆動される車両は電動自転車である、請求項11記載の補助駆動される車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールハブ用のホイールハブトランスミッションユニット、ホイールハブトランスミッションユニットを備えたホイールハブ、およびホイールハブを備えた補助駆動される車両に関する。
【背景技術】
【0002】
都市および地方エリアにおいてますます改良される自転車運転者用インフラストラクチャー、環境意識の高まりおよび/または健康意識の高まりに基づき、自転車運転者数は継続して増えている。特に電気補助機関を備えた自転車、すなわち電動自転車は、所望の時間の利点を実現するためまたは運動目的を達成するために興味深い。電動自転車では、電気機関が、筋力によって発生されるトルクに加えて自転車を動かすか、またはそれだけで自転車を動かすトルクを発生させる。電動自転車は、ペダルクランク、ペダルクランクに取り付けられたチェーンリング、後輪に駆動方向においてねじれ剛性的に(torsionally rigid)取り付けられたピニオン、およびチェーンリングからピニオンにトルクを伝達するチェーン等の従来の駆動部品の他に、さらに電気機関と、電気機関にエネルギを供給する蓄電池と、電気機関により供給される所要トルクを確定するためのセンサシステムとを有している。
【0003】
所要の追加トルクを決定するために、後輪にトルク測定装置を設けることが知られている。トルク測定装置は測定スリーブを有しており、測定スリーブは、非磁性材料から成り、かつ測定スリーブにおけるトルクの影響を受けて変化する対応磁化パターンが設けられている。この変化は、電気的に作動されるコイル対によって検出することができ、これにより、所要トルクについて結論を下すことができる。正確な測定のために、コイル対は測定スリーブのすぐ隣に配置されるべきであり、これにより、ハブの他の部分、例えばピニオン用のキャリア、すなわちピニオンハブキャリアとの位置的な衝突が引き起こされる。さらに、トルクを十分に正確に測定するために、可能な限り長い測定区間が設けられる。これは大抵、部品を半径方向および/または軸方向において支持するために必要とされるベアリングのために、制約無しには不可能である。さらに、測定区間は、長期にわたる高度な検出精度のために、不純物から保護されるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、車両のホイールハブ用のホイールハブトランスミッションユニット、ホイールハブトランスミッションユニットを備えたホイールハブ、およびホイールハブを備えた補助駆動される車両を提供することにあり、ホイールハブトランスミッションユニットは、単純、コンパクトかつ頑丈な構造であると共に、トルクを正確に検出可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、特許請求項1、13および14に記載の特徴により達成される。これらに関する好適な実施形態は、別の特許請求項に記載されている。
【0006】
本発明によるホイールハブトランスミッションユニットは、車両のホイールハブ用であり、回転軸線と、回転軸線に対して同心状に配置されており、ホイールハブを駆動するために少なくとも1つのピニオンをねじれ剛性的に取り付けることができるピニオンハブキャリアと、軸方向においてピニオンハブキャリアの隣に配置されており、回転軸線に対して同心状に配置された内部空間を有するハブ本体と、内部空間内で回転軸線に対して同心状に配置されており、トランスミッションスリーブの測定部を形成する磁気的にコード化された材料を有するトランスミッションスリーブと、ハブ本体に面した側の長手方向端部を有するピニオンハブキャリアと、ピニオンハブキャリアに面した側の長手方向端部を有するトランスミッションスリーブとを結合する駆動側カップリングと、他方の長手方向端部を有するトランスミッションスリーブをハブ本体に結合する出力側カップリングと、を備えており、これにより、ピニオンハブキャリアから、駆動側カップリングと、出力側カップリングと、トランスミッションスリーブとを介してハブ本体にトルクを伝達することができ、トルクは、トランスミッションスリーブの測定部によって、磁気的にコード化された材料の磁気特性を用いて、内部空間内で検出することができ、磁気特性は、トルクの影響を受けて変化する。
【0007】
内部空間は、ピニオンハブキャリアに比べ、より長い軸方向延在長さを有している。トランスミッションスリーブが内部空間内に配置されていると、例えばトランスミッションスリーブがピニオンハブキャリア内に配置されている従来のホイールハブトランスミッションユニットに比べて、トランスミッションスリーブは、より長い軸方向延在長さを有することが可能である。本発明による、長い軸方向延在長さを有するトランスミッションスリーブを用いて、トルクを有利には正確に検出することができる。
【0008】
さらに、トランスミッションスリーブが内部空間内に配置された結果、ハブ本体は、トランスミッションスリーブ用のハウジングを形成することになる。したがって、トランスミッションスリーブを、有利には汚れ粒子等の外部の影響から保護することができる。ハウジングは、半径方向外側で、汚れ粒子に対する克服不能のバリアを形成する。さらに、軸方向に侵入する汚れ粒子からトランスミッションスリーブを保護するために、ハブ本体の各長手方向端部に、極単純なシール部材が配置されてよい。例えばピニオンハブキャリアを交換する場合には、トランスミッションスリーブが配置された内部空間も、交換中に外部の影響から保護される。ピニオンハブキャリアの半径方向内側に配置された従来のトランスミッションスリーブでは、例えば交換中に外部の影響からトランスミッションスリーブが保護されることはほぼない。ホイールハブトランスミッションユニットの全作動段階においてトランスミッションスリーブが有利には外部の影響から保護されている結果として、トランスミッションスリーブは丈夫でありかつさらに長寿命を有することになる。
【0009】
トランスミッションスリーブはハブ本体にねじれ剛性的に結合されているため、ホイールハブが作動すると、トランスミッションスリーブはハブ本体と同じ回転速度で回転する。回転速度を知ることは、例えば速度等の作動状態を捕捉するために必要不可欠である。例えばトランスミッションスリーブがフリーホイールを介してハブ本体にねじれ剛性的には結合されていない結果として、回転速度は従来、トルクとは異なる位置において検出される。本発明による構成により、トランスミッションスリーブはハブ本体にねじれ剛性的に結合されているため、測定ユニットは、トルクと回転速度の両方を検出し、これらを任意には唯一の伝送線路を介して出力することができる。よって、より少数かつ/またはより短い線路が必要とされ、さらに回転速度測定部も外部の影響から保護される。なぜならば、回転速度測定部も内部空間内に配置することができるからである。このため、ホイールハブトランスミッションユニットはコンパクトであると共に、単純な構造である。
【0010】
トランスミッションスリーブが軸方向においてピニオンハブキャリアに隣接して配置された結果として、ピニオンハブキャリアの半径方向内側の取付け空間から、トランスミッションスリーブと測定ユニットとが除去される。例えばより小さな直径を有するピニオンハブキャリアが取り付けられる場合、これは、比較的小さな構造変更でもって実現することができる。トランスミッションスリーブと測定ユニットとは、構造変更によってほとんど影響を受けない。トランスミッションスリーブと測定ユニットとが従来のように、例えばピニオンハブキャリア内に配置される場合、ホイールハブトランスミッションユニット全体を再構築しなければならなくなる。これは、ホイールハブトランスミッションユニットをさらに有利には単純な構造にしている。
【0011】
好適には、ハブ本体とトランスミッションスリーブとを結合するために、出力側カップリングは、ハブ本体の、ピニオンハブキャリアとは反対の側に面した長手方向端部の一部に設けられており、ハブ本体の長手方向端部の一部は、ピニオンハブキャリアに向かう軸方向において、測定部に対して垂直に位置しかつ測定部の、ピニオンハブキャリアとは反対の側に面した長手方向端部に接する仮想平面により画定されている。
【0012】
測定部は、磁気的にコード化された材料により形成されており、回転軸線に対して同心状にかつ円筒状に延在している。出力側カップリングは、ピニオンハブキャリアから軸方向に測定部よりも離れたハブ本体の部分に配置されている。これにより駆動側カップリングは、有利にはピニオンハブキャリアから軸方向に測定部よりも離れたハブ本体の部分に設けられることになり、このためホイールハブトランスミッションユニットは、丈夫で単純な構造である。
【0013】
例えば、取付け可能な出力側カップリングは、比較的長い軸方向延在長さを有しており、出力側カップリングの一方の長手方向端部は、ハブ本体の長手方向端部の部分に配置されており、かつ出力側カップリングの他方の長手方向端部は、トランスミッションスリーブに配置されている。よって、異なる軸方向延在長さを有する複数の異なる出力側カップリングを取り付けることが可能である。
【0014】
好適には、ハブ本体とトランスミッションスリーブとを結合するために、出力側カップリングは、トランスミッションスリーブの、ピニオンハブキャリアとは反対の側に面した長手方向端部の部分に設けられており、トランスミッションスリーブのこの長手方向端部の部分は、ピニオンハブキャリアに向かう軸方向において、測定部まで延在している。
【0015】
トランスミッションスリーブの長手方向端部の部分が、ピニオンハブキャリアに向かう軸方向において測定部により画定されている結果として、出力側カップリングは、トランスミッションスリーブの、ピニオンハブキャリアから軸方向に測定部全体よりも離れた部分にのみ配置することができる。したがって、ホイールハブトランスミッションユニットは、特に単純な軸方向構造を有している。
【0016】
好適には、トランスミッションスリーブは少なくとも、スポーク用の第1の結合平面からスポーク用の第2の結合平面まで延びる間隔を架橋しており、第1の結合平面は、ハブ本体の一方の長手方向端部に配置されており、第2の結合平面は、ハブ本体の他方の長手方向端部に配置されている。
【0017】
スポーク用の結合平面は、ハブ本体の軸方向延在部に対して垂直に配置された平面であり、この平面は、ハブ本体の周方向において、スポーク用のいくつかの結合位置と交差する。ハブ本体は通常、これら2つの平面を、それぞれ一方の長手方向端部に有している。ただし、ハブ本体がいくつかのこのような平面を、長手方向端部の少なくとも一方に有していることも考えられる。これは特に、スポークが、ハブ本体の長手方向端部の一方に、少なくとも部分的に並んで取り付けられている場合に生じる。スポーク用の結合位置は、例えばスポークをハブ本体に取付け可能な開口または穴である。
【0018】
ハブ本体の長手方向端部の一方が、いくつかの結合平面を有している場合、トランスミッションスリーブは、好適にはハブ本体の一方の長手方向端部における複数の結合平面の中央に配置された結合平面から、ハブ本体の他方の長手方向端部における複数の結合平面の中央に配置された第2の結合平面までの間隔を架橋する。他の間隔、例えば最も外側のまたは最も内側の2つの平面の間の間隔も架橋することができる。
【0019】
トランスミッションスリーブが前記間隔を架橋した結果として、トランスミッションスリーブは、特に長い軸方向延在長さを有することになり、これにより測定部の軸方向延在部も、有利には長く形成される。測定部の軸方向延在部も有利には長く形成された結果として、ホイールハブトランスミッションユニットの検出精度を改良することが可能である。
【0020】
好適には、トランスミッションスリーブは、力の流れの軸方向成分がトランスミッションスリーブ全体に沿って同じ方向になるように適合されている。力の流れは、作用点、導入点から、力および/またはトルクが反力および/または反動トルクにより吸収される点までの部分における、力および/またはトルクの経路を表す。力の流れの軸方向成分は、回転軸線の方向に作用する成分を表す。例えば、力の流れの軸方向成分の符号は、トランスミッションスリーブ全体に沿ってプラスである。軸方向成分が、いくつかの部分においてゼロの場合には、符号の変化に相当しない。
【0021】
力の流れの軸方向成分がトランスミッションスリーブ全体に沿って不変に保たれる結果として、トランスミッションスリーブ全体に沿った力の流れの軸方向の向きは変化しない。ただし、例えば、力の流れの半径方向の向きは、トランスミッションスリーブに沿って変化することが可能である。そのため、トランスミッションスリーブは、一方向にのみ延長された形状を有している。これは例えば、円筒形、円錐形またはカンチレバー形であり得るが、蛇行形状等は除外される。力の流れの軸方向が不変の結果として、トルク検出が方向変化により影響を及ぼされることはなく、トルクを特に有利に検出することができる。さらに、トランスミッションスリーブは単純な形状である。
【0022】
好適には、測定部は内部空間の一部に配置されており、内部空間のこの部分は、軸方向において2つの仮想結合平面により画定されており、これらの結合平面のうち第1の結合平面は、ハブ本体の一方の長手方向端部においてスポーク用の結合位置と交差しており、前記結合平面のうち第2の結合平面は、ハブ本体の他方の長手方向端部においてスポーク用の結合位置と交差している。測定部が、2つの仮想結合平面の内側に配置されている結果として、測定部は、特に長い軸方向延在部を有することになり、これにより、トルクを特に正確に検出することができる。さらに、測定部は内部空間内で軸方向において比較的中央に配置されているため、外部の影響、例えば汚れ粒子から容易に保護される。
【0023】
好適には、ピニオンハブキャリアとトランスミッションスリーブとは、互いに間隔をあけて配置されており、この間隔を駆動側カップリングが架橋している。ピニオンハブキャリアとトランスミッションスリーブとの間の間隔は、軸方向間隔であってもよいし、軸方向間隔および半径方向間隔であってもよく、これにより駆動側カップリングは、半径方向間隔および/または軸方向間隔を架橋することになる。
【0024】
好適には、駆動側カップリングはフリーホイールである。フリーホイールは、ロック形式で、回転可能な各方向の一方にのみ作用するクラッチである。トランスミッションスリーブの回転速度がピニオンハブキャリアの回転速度を上回ると、この2つの部分の間の結合が自動的に解除され、これにより、ピニオンハブキャリアがより低速で回転するか、または全く回転せずとも、トランスミッションスリーブは自由に回転し続ける。
【0025】
好適には、駆動側カップリングは、ピニオンハブキャリアにねじれ剛性的に結合された第1のフリーホイール部分と、トランスミッションスリーブにねじれ剛性的に結合された第2のフリーホイール部分とを有しており、第1のフリーホイール部分は、軸方向において第2のフリーホイール部分の隣に配置されている。第1のフリーホイール部分がピニオンハブキャリアにねじれ剛性的に結合されておりかつ第2のフリーホイール部分がトランスミッションスリーブにねじれ剛性的に結合されている結果として、各フリーホイール部分により、自動的に解除される結合が比較的容易に実現可能である。
【0026】
特に好適には、ホイールハブトランスミッションユニットの第1のフリーホイール部分および第2のフリーホイール部分は、軸方向に変位することができる。第1のフリーホイール部分が特にピニオンハブキャリアに対して軸方向に変位可能であり、かつ第2のフリーホイール部分が特にトランスミッションスリーブに対して軸方向に変位可能である結果として、各フリーホイール部分の、互いに対する軸方向の相対変位により、自動的に解除される結合を作ることができる。
【0027】
好適には、第1のフリーホイール部分と第2のフリーホイール部分とは相互作用するように適合されており、これにより、ピニオンハブキャリアからトランスミッションスリーブへ、ピニオンハブキャリアの一方の回転方向においてのみ、実質的に全てのトルクを伝達することができる。フリーホイール部分には、例えば少なくとも1つの歯が設けられており、歯は、1つの極めて急峻な側面と、1つの極めてなだらかな側面とを有している。第1のフリーホイール部分が一方の回転方向に回転すると、噛み合う歯によって2つの部分の間にセルフロッキング形状嵌合部が形成され、これによりトルクを伝達することができる。第1のフリーホイール部分が他方の回転方向に回転すると、歯は互いにすり抜ける(slide past)ので、2つの部分の間にセルフロッキング形状嵌合部は形成されず、これにより、トルクを伝達することはできなくなる。よって、ばねが、例えばフリーホイール部分同士を互いに繰り返し押し付けてよい。例えばいくつかの歯、球またはその他の楔形要素を用いるような別の実施形態も考えられる。
【0028】
好適には、トランスミッションスリーブは、カンチレバー式に取り付けられている。トランスミッションスリーブがカンチレバー式に取り付けられた結果として、測定ユニットを比較的自由に位置決めすることができ、測定ユニットのケーブル配線が単純化される。
【0029】
本発明によると、ホイールハブは、ホイールハブトランスミッションユニットと、ピニオンハブキャリアにねじれ剛性的に取り付けられた少なくとも1つのピニオンとを有しており、ピニオンからハブ本体へ一方の回転方向においてのみトルクを伝達するために、ハブ本体は、駆動側カップリングを介してピニオンにねじれ剛性的に結合されている。ピニオンは、例えばスプライン軸結合によってピニオンハブキャリアに形状嵌合式に結合されることができる。例えば、いくつかのピニオンがピニオンハブキャリアに配置されてもよい。
【0030】
本発明によると、補助駆動される車両は、ホイールハブと、測定した量でホイールハブを駆動するための制御装置を備えた駆動アセンブリと、トランスミッションスリーブの測定部を検出するための測定ユニットとを有しており、測定ユニットは、内部空間内に収容されており、制御装置は、駆動アセンブリの駆動トルクがホイールハブトランスミッションユニットにより伝達されるトルクに適合されるように、測定ユニットにより制御可能である。制御装置は、検出されたトルクおよび/または検出されたトルク回転速度に基づき、駆動アセンブリの駆動トルクを制御する。駆動アセンブリは、例えば車両の後輪のハブ、前輪のハブまたはペダルクランクに配置することができる。
【0031】
好適には、補助駆動される車両は電動自転車である。電動自転車は、例えばペデレックであってもよい。ペデレックは、電動自転車の一実施形態であり、運転者がペダルを押すと同時に、電気機関がトルクを供給する。
【0032】
例えば、ピニオンハブキャリアはアルミニウム合金から製造されており、トランスミッションスリーブは高強度非磁性鋼から製造されている。
【0033】
以下では、添付の図面を用いて本発明の好適な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ホイールハブの、本発明の好適な実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示した実施形態の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面から看取されるように、ホイールハブ1には、回転軸線2、ホイールハブトランスミッションユニット6、輪軸36およびハブ本体3が含まれる。ハブ本体3および輪軸36は、回転軸線2に対して同心状に配置されている。第1のホイールハブベアリング4およびトランスミッションスリーブベアリング12は輪軸36に配置されており、第1のホイールハブベアリング4とトランスミッションスリーブベアリング12とは、第2のホイールハブベアリング5と共に、ハブ本体3を支持している。
【0036】
ホイールハブトランスミッションユニット6には、ピニオンハブキャリア7、駆動側カップリング26、出力側カップリング14およびハブ本体3により形成された内部空間31内に配置されたトランスミッションスリーブ13が含まれる。トランスミッションスリーブ13は、トランスミッションスリーブベアリング12と第2のホイールハブベアリング5とにより、カンチレバー形式で支持されている。トランスミッションスリーブ13は、出力側カップリング14を介してハブ本体3に、ねじれ剛性的に結合されている。この連結は、例えば形状嵌合結合部29により行われてよい。トランスミッションスリーブ13は、加えて、駆動側カップリング26により、少なくとも一方の回転方向においてねじれ剛性的に、ピニオンハブキャリア7に結合されている。このために駆動側カップリング26は、第1のフリーホイール部分10と第2のフリーホイール部分11とを有している。第1のフリーホイール部分10は、第1の形状嵌合結合部27を介してピニオンハブキャリア7に、ねじれ剛性的にかつ軸方向に変位可能に結合されており、第2のフリーホイール部分11は、第2の形状嵌合結合部28を介してトランスミッションスリーブ13に、ねじれ剛性的にかつ軸方向に変位可能に結合されている。加えて、駆動側カップリング26は、第1のばね部分24と第2のばね部分25とを有している。これら2つのばね部分24,25は、第1のフリーホイール部分10と第2のフリーホイール部分11とを互いに押し離すように、駆動側カップリング26に配置されている。本実施形態では、フリーホイール部分10,11は、1つの極めて急峻な側面と1つの極めてなだらかな側面とを有する、いくつかの歯を有している。側面の配列に基づき、歯は一方の回転方向においてのみ噛み合い、他方の回転方向では互いにすり抜ける。フリーホイール部分10,11は、例えばリングとして形成されており、一方の長手方向端部に鋸歯断面を有している。
【0037】
第1のピニオンキャリアベアリング8と、第2のピニオンキャリアベアリング9とが、輪軸36にさらに配置されている。これらのベアリング8,9により、ピニオンハブキャリア7は軸方向および半径方向において支持されている。第1のピニオンキャリアベアリング8と第2のピニオンキャリアベアリング9との間の必要な間隔は、第1の間隔スリーブ16により保たれてよい。さらに、ベアリング8,9の軸方向位置は、第1の軸部分17を介して調整することができる。第2のピニオンキャリアベアリング9とトランスミッションスリーブベアリング12との間の必要な間隔は、第2の間隔スリーブ22でもって調整することができる。輪軸36は、その反対側の端部に、追加的な軸部分20を有しており、第1のホイールハブベアリングの軸方向位置は、軸部分20によって調整することができ、加えて軸部分20は、貫通開口23を有している。軸部分20を輪軸36と共にセンタリングするために、センタリングピン21が設けられている。例えば、貫通開口23を通して内部空間31内へケーブルが送られてよい。ケーブル配線は、本実施形態では図示されていない。さらに、測定ユニット15が、内部空間31内でトランスミッションスリーブ13のすぐ近くに配置されている。測定ユニット15は、トランスミッションスリーブ13の測定部30において測定信号を検出する。この測定信号を用いて、トランスミッションスリーブ13に加えられたトルクおよび/または主回転速度を導出することができる。
【0038】
平面32が、測定部30の一方の長手方向端部を画定しており、この長手方向端部は、ピニオンハブキャリア7とは反対の側に面している。平面32は、さらに回転軸線2に対して垂直に配置されている。図面には、2つのさらなる平面、すなわち第1の結合平面33と第2の結合平面34とが示されている。第1の結合平面33は、ハブ本体3の、ピニオンハブキャリア7に面した長手方向端部に配置されており、第2の結合平面34は、ハブ本体3の、ピニオンハブキャリア7とは反対の側に面した長手方向端部に配置されている。加えて、結合平面33,34は、回転軸線2に対して垂直にかつスポーク用の各結合位置35間の中央で、ハブ本体3の長手方向端部のうちの一方に配置されている。
【0039】
例えば汚れ粒子等の外部の影響に対して内部空間31をシールするために、本実施形態では第1のシール部材18と第2のシール部材19とが設けられている。第1のシール部材18は、ハブ本体3とトランスミッションスリーブ13との間をシールし、第2のシール部材19は、トランスミッションスリーブ13とピニオンハブキャリア7との間をシールする。
【0040】
ハブ本体3を駆動するために、回転駆動方向にしたがった向きのトルクが、ピニオンハブキャリア7にねじれ剛性的に取り付けられたピニオン(図示せず)に作用する。駆動側カップリング26の第1のフリーホイール部分10と、第2のフリーホイール部分11とが形状嵌合結合部を形成し、トルクはピニオンからピニオンハブキャリア7および駆動側カップリング26を介して、トランスミッションスリーブ13に伝達される。トランスミッションスリーブ13は、出力側カップリング14を介してハブ本体3とねじれ剛性的に結合されていることにより、トランスミッションスリーブ13の測定部30がねじられる。測定部30に配置された磁化パターンが、ねじれの強度に応じて変化する。この変化は測定ユニット15により検出され、ケーブル配線により、貫通開口23を通して外部へ案内される。検出される信号の伝達は、例えば無線であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ホイールハブ
2 回転軸線
3 ハブ本体
4 第1のホイールハブベアリング
5 第2のホイールハブベアリング
6 ホイールハブトランスミッションユニット
7 ピニオンハブキャリア
8 第1のピニオンキャリアベアリング
9 第2のピニオンキャリアベアリング
10 第1のフリーホイール部分
11 第2のフリーホイール部分
12 トランスミッションスリーブベアリング
13 トランスミッションスリーブ
14 出力側カップリング
15 測定ユニット
16 第1の間隔スリーブ
17 第1の軸部分
18 第1のシール部材
19 第2のシール部材
20 第2の軸部分
21 センタリングピン
22 第2の間隔スリーブ
23 貫通開口
24 第1のばね部分
25 第2のばね部分
26 駆動側カップリング
27 第1の形状嵌合結合部
28 第2の形状嵌合結合部
29 第3の形状嵌合結合部
30 測定部
31 内部空間
32 平面
33 第1の結合平面
34 第2の結合平面
35 結合位置
36 輪軸
図1
図2