(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】コーティングされた外科用縫合針
(51)【国際特許分類】
A61B 17/06 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
A61B17/06 510
(21)【出願番号】P 2020515202
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 IB2018056938
(87)【国際公開番号】W WO2019053593
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-18
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517076008
【氏名又は名称】エシコン エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Ethicon LLC
【住所又は居所原語表記】#475 Street C, Suite 401, Los Frailes Industrial Park, Guaynabo, Puerto Rico 00969, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】オウ・デュアン・リ
(72)【発明者】
【氏名】チチョッキ・ジュニア・フランク・リチャード
(72)【発明者】
【氏名】グエン・ティエン
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-509951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0367039(US,A1)
【文献】特開平11-192228(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029689(WO,A1)
【文献】特開平04-266749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用縫合針をコーティングするためのシステムであって、
プライマーコート及びベースコートのうちの少なくとも一方を外科用縫合針ブランクの第1の部分に塗布するように構成されている第1のコーティングシステムと、
前記プライマーコート及び前記ベースコートが塗布されていない前記外科用縫合針ブランクの第2の部分内に縫合糸取り付け端部を形成し、それによって
外科用縫合針を形成するように構成されているレーザ穿孔システムと、
トップコートを
前記第1及び第2の部分に対応する前記外科用縫合針
の部分に塗布するように構成されている第2のコーティングシステムであって、前記トップコートの塗布中に前記外科用縫合針を収容するように構成されたバスケットを含み、前記バスケットは、基部と、頂部と、前記基部から前記頂部までそれぞれ延在する第1及び第2の対の対向側壁と、を有し、それによって前記バスケットの全表面積を画定し、前記バスケットは、前記全表面積の50%~約95%である排液領域を有する、第2のコーティングシステムと、を備える、システム。
【請求項2】
真空乾燥チャンバを含む
第1の乾燥システムを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記トップコートから溶媒の少なくとも一部分を除去するように構成されている第2の乾燥システムを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プライマーコート及び前記ベースコートのうちの少なくとも一方を少なくとも部分的に硬化するように構成されている硬化システムを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のコーティングシステムはスプレーコーティングシステムである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記基部は、前記外科用縫合針を前記バスケット内に保持し、かつ
トップコート
溶液の少なくとも一部分が中を通過することを可能にするように構成されている多孔質基材を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記頂部は、空気が中を通過することを可能にするように構成されている多孔質基材を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
各側壁が、内面及び外面を有し、前記内面と前記外面との間に1つ以上の排液穴が延在しており、前記1つ以上の排液穴は、
トップコート
溶液の少なくとも一部分が中を通過することを可能にするように構成され、前記1つ以上の排液穴は、前記頂部が前記内面と接触しているときに開いたままである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2のコーティングシステムは、浸漬コーティングプロセスによって前記トップコートを塗布するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記頂部は、空気が中を通過することを可能にするように構成されている多孔質基材を含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年9月15日に出願された米国特許仮出願第62/559,267号(表題「Surgical Coated Needles,」)の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
外科用縫合針など、身体組織と繰り返し接触する医療用装置は、潤滑性であるが、組織との多数の接触に耐えるのに十分な耐久性を有することが要求される。好適な潤滑性は、多くの場合、1つ以上のコーティング組成物を医療用装置に塗布することによって、医療用装置に付与される。例えば、シリコーン系組成物である。
【0003】
典型的には、外科用縫合針は、遠位穿刺点(組織貫通先端部)及び近位縫合糸取り付け部(縫合糸取り付け端部)を有する。近位縫合糸取り付け部は、典型的には、近位端に形成されたチャネル、又は近位端にレーザ穿孔されたボアホールである。潤滑性コーティングは、レーザ穿孔される前に外科用縫合針に塗布される。しかしながら、レーザ穿孔に必要なエネルギーにより、レーザ穿孔中にコーティングが焦げる場合がある。焦げは、カットオフダイのゴム状化/汚染をもたらし得る。加えて、この焦げは、外科用縫合針の視覚的欠陥及び/又は潤滑性の低減ももたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、レーザ穿孔外科用縫合針による現在の問題に対処する改善された外科用縫合針、システム、及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
外科用縫合針をコーティングするためのシステム及び方法が本明細書に提供される。
【0006】
一実施形態では、システムは、第1のコーティングシステムと、レーザ穿孔システムと、第2のコーティングシステムとを含むことができる。第1のコーティングシステムは、プライマーコート及びベースコートのうちの少なくとも一方を外科用縫合針ブランクの第1の部分に塗布するように構成され得る。レーザ穿孔システムは、外科用縫合針ブランクの第2の部分内に縫合糸取り付け端部を形成し、それによって外科用縫合針を形成するように構成され得る。第2のコーティングシステムは、トップコートを外科用縫合針に塗布するように構成され得る。第2のコーティングシステムは、トップコートの塗布中に外科用縫合針を収容するように構成され得るバスケットを含み得る。バスケットは、基部と、頂部と、基部から頂部までそれぞれ延在する第1及び第2の対の対向側壁とを有し得、それによってバスケットの全表面積を画定する。バスケットは、全表面積の約50%~95%である排液領域を有し得る。一態様では、第1のコーティングシステムは、スプレーコーティングシステムであり得る。
【0007】
一部の態様では、システムは、外科用縫合針から余剰なトップコートの少なくとも一部分を除去するように構成され得る第1の乾燥システムを含み得る。一態様では、乾燥システムは、真空乾燥チャンバを含み得る。他の態様では、システムは、トップコートから溶媒の少なくとも一部分を除去するように構成され得る第2の乾燥システムを含み得る。
【0008】
一部の態様では、システムは、プライマーコート及びベースコートのうちの少なくとも一方を少なくとも部分的に硬化するように構成され得る硬化システムを含み得る。
【0009】
バスケットは、様々な構成を有することができる。例えば、一部の態様では、基部は、外科用縫合針をバスケット内に保持し、かつ余剰なトップコートの少なくとも一部分が中を通過することを可能にするように構成され得る多孔質基材を含み得る。このような態様では、頂部は、空気が中を通過することを可能にするように構成されている多孔質基材を含むことができる。このような態様では、各側壁は、内面及び外面を有し得、内面と外面との間に1つ以上の排液穴が延在しており、1つ以上の排液穴は、余剰なトップコートの少なくとも一部分が中を貫通することを可能にするように構成され得、1つ以上の排液穴は、頂部が内面と接触しているときに開いたままであり得る。
【0010】
外科用縫合針をコーティングするための方法も提供する。1つの例示的な実施形態では、方法は、プライマーコートをタングステン-レニウム合金から形成された外科用縫合針ブランクの表面の一部分上にスプレーコーティングすることであって、外科用縫合針ブランクの一部分が組織貫通端部を有する、スプレーコーティングすることと、プライマーコートとは異なるベースコートを外科用縫合針ブランクのプライマーコートされた表面上にスプレーコーティングすることと、外科用縫合針ブランクをレーザ穿孔し、組織貫通端部の反対側に縫合糸取り付け端部を形成し、それによって外科用縫合針を形成することと、ベースコートとは異なるトップコートを、ベースコート上及び縫合糸取り付け端部上に浸漬コーティングすることと、を含み得る。一態様では、トップコートは組成物から形成され、当該組成物は、当該組成物の約1重量%~3重量%の濃度のシリコーンを含み得る。
【0011】
一部の態様では、方法は、トップコートを真空乾燥させることを含み得る。一態様では、本方法は、真空乾燥後、約90℃~130℃の温度でトップコートから溶媒の少なくとも一部分を除去することを含み得る。
【0012】
他の態様では、トップコートを浸漬コーティングすることは、外科用縫合針をバスケット内に配置することと、バスケットを上塗り溶液中に配置することと、を含み得、バスケットは、当該バスケットの全表面積の50%~約95%である排液領域を有する。このような態様では、バスケットは、基部と、頂部と、基部から頂部までそれぞれ延在する第1及び第2の対の対向側壁とを有することができ、基部及び頂部はそれぞれ、多孔質基材を含むことができ、側壁はそれぞれ、1つ以上の排液穴を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本特許又は出願書類には、カラーで現像された少なくとも1枚の図面が含まれる。カラー図面を備える、本特許又は特許出願公開の複製は、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、特許庁によって提供されるであろう。
本発明は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて読むことで、より完全に理解されるであろう。
【
図1】外科用縫合針の1つの例示的な実施形態の側面図である。
【
図2】外科用縫合針をコーティングするための1つの例示的な方法のフローチャートである。
【
図3A】は、浸漬コーティングプロセスで使用される1つの例示的なバスケットの上面斜視図である。
【
図3C】頂部が取り除かれた、
図3Aに示されるバスケットの上面斜視図である。
【
図4A】外科用縫合針が内部に配置され、頂部が取り除かれた、
図3Aに示されるバスケットの上面斜視図である。
【
図4B】は、閉鎖構成にある(つまり、頂部が側壁の内面と接触している状態)
図4Aに示されるバスケットの上面斜視図である。
【
図5】外科用縫合針をコーティングするための別の例示的な方法のフローチャートである。
【
図6】外科用縫合針をコーティングするための別の例示的な方法のフローチャートである
【
図8】外科用縫合針をコーティングするための例示的なシステムのプロセス図である。
【
図9】バレルコーティングタングステン-レニウム針の組織貫通力を実施例1Aの非バレルコーティングタングステン-レニウム針と比較するグラフ表示である。
【
図10】比較例1Aのバレルコーティングタングステン-レニウム針の一部分の画像である。
【
図11】バレルコーティングタングステン-レニウム針の組織貫通力を実施例1Bの非バレルコーティングタングステン-レニウム針と比較するグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で開示する外科用縫合針などの装置、システム、及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の総括的な理解が得られるように、特定の例示的実施形態について、これから説明する。これらの実施形態のうちの1つ以上の実施例が、添付の図面に例示されている。当業者であれば、本明細書で詳細に説明し、添付の図面に示される装置、システム、及び方法は、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義されることが理解されるであろう。1つの例示的な実施形態に関連して図示又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0015】
外科用縫合針、並びにそれをコーティングするためのシステム及び方法が提供される。一般に、外科用縫合針は、組織を貫通するために遠位端に組織貫通先端部を有する細長い本体を有するものとして提供される。組織貫通先端部は、尖っている場合があり、特定の外科手術における要求に応じて鋭いか、又は鈍いことがある。外科用縫合針はまた、縫合糸を受容及び保持するために、細長い本体の近位端上に配置される縫合糸取り付け端部を含み得る。外科用縫合針は、直線、テーパポイント、テーパカット、切断縁部、バイオネット形状、湾曲、円形などを含む、当該技術分野において既知の任意の形状を有し得る。加えて、外科用縫合針は、丸い本体、矩形本体、正方形本体、卵型本体、及びアイビームが挙げられるがこれらに限定されない、任意の断面を有し得る。当業者は、所定の縫合針のために可能な形状及び断面の様々な組み合わせを理解するであろう。更に、本明細書に述べられる外科用縫合針は、特定の例示的な実施形態を表すことを意図したものに過ぎない。
【0016】
図1は、外科用縫合針100の一実施形態を示す。示されるように、外科用縫合針100は、第1及び第2の部分104、106を有する細長い本体102を有する。第1の部分104は、細長い本体102の遠位端102dに尖った先端として示される組織貫通端部108を有する。第2の部分106は、細長い本体102の近位端102pに縫合糸取り付け端部(バレル)110を有する。示されるように、縫合糸取り付け端部110は、穿孔されたボアホール112を含む。以下により詳細に記載されるように、外科用縫合針100の第1の部分104は、プライマーコート、ベースコート、及びトップコートでコーティングされ、外科用縫合針100の第2の部分106はトップコートでコーティングされる。
【0017】
代表的な外科用縫合針は、当該技術分野において既知の、任意の好適な生体適合性の材料から形成され得る。一部の実施形態において、外科用針は、チタン、ステンレス鋼、例えば、420ステンレス鋼、455ステンレス鋼、ETHALLOY(登録商標)縫合針合金、及び302ステンレス鋼、耐熱合金、ニチノール、タンタル、並びに当該技術分野において既知の様々な他の材料及び合金が挙げられるが、これらに限定されない金属合金から作製され得る。他の実施形態において、外科用縫合針は、タングステン-レニウム合金から作製され得る。外科用縫合針の作製におけるタングステン-レニウム合金の使用は、縫合針に、他の何らかの材料の使用よりも、大きな剛性、強度及び延性を提供し得る。より高い剛性及び強度特性は、縫合針が弾性変形に抵抗し、したがって、例えば、石灰化組織などの高靭性の組織を通じて押し込まれるとき、屈曲及びバネ運動に抵抗することを可能にする。より高い延性は、縫合針が外科医によって屈曲又は湾曲させられたときに破断することを防ぐ。縫合針合金組成物のいずれかが、ニッケル、コバルト、クロミウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ニオビウムなどのいずれか1つ以上を数パーセント含むことができる。
【0018】
本明細書に記載される外科用縫合針は長さが変化し得るが、一部の実施形態では、外科用縫合針は、約3mm~110mmの長さを有することができる。他の実施形態では、外科用縫合針は、約5mm~10mm、又は約50mm~90mmの長さを有し得る。
【0019】
一部の実施形態では、外科用縫合針は、比較外科用縫合針の比較抵抗力よりも小さい抵抗力を有する。本明細書で使用されるとき、「比較抵抗力」は、(コーティングされた)外科用縫合針の抵抗力と同じ条件下で決定される、比較外科用縫合針の抵抗力である。更に、本明細書で使用されるとき、「比較外科用縫合針」は、縫合糸取り付け端部上にコーティングを有しない、タングステン-レニウム合金外科用縫合針である(バレルコーティングされていない外科用縫合針)。特定の実施形態では、外科用縫合針は、約15g~100g、約60g~100g、又は約20グラム~40gの抵抗力を有し得る。
【0020】
他の実施形態では、外科用縫合針は、比較外科用縫合針の比較組織貫通力よりも小さい組織貫通力を有する。本明細書で使用されるとき、「比較組織貫通力」は、(コーティングされた)外科用縫合針の組織貫通力と同じ条件下で決定される、比較外科用縫合針の組織貫通力である。特定の実施形態では、外科用縫合針は、外科用縫合針の細長い本体の組織貫通端部が組織を通して少なくとも30回通過した後、実質的に一定の組織貫通力を有するように構成され得る。本明細書で使用されるとき、組織貫通力を説明するために使用されるときの「実質的に一定」は、例えば、特定の組織貫通力値の10%以内、その力値の5%以内、又はその力値の2%以内を意味するように使用され得る。
【0021】
製造のためのシステム及び方法
典型的には、外科用縫合針の従来の製造プロセスでは、所望の材料から作製されたワイヤは、ワイヤミル内で所望の直径まで引き出される。次いで、ワイヤを従来のワイヤ切断装置で切断して、所望の長さを有する針ブランクを製造する。「針ブランク」は、縫合糸取り付け端部(バレル)を有しない針であることが理解されるが、本開示の目的において、針ブランクの第1及び第2の部分は、得られる外科用縫合針の同じ第1及び第2の部分であると理解される。次いで、針ブランクは、例えば、成形、研削、研磨、洗浄、及び穿孔を含む一連の製造プロセス工程を経て、外科用縫合針を製造することができる。
【0022】
外科用縫合針の潤滑性を高めるために、外科用縫合針は、製造プロセス中に1つ以上のコーティングで部分的又は完全にコーティングされ得る。従来の外科用縫合針とは異なり、本明細書に記載される外科用縫合針の縫合糸取り付け端部は、最終的なトップコートで針の外面をコーティングする前に作製される。つまり、外科用縫合針の第1の部分は、プライマー及びベースコートなどの1つ以上のコーティングを有することができるが、外科用縫合針の第2の部分は、縫合糸取り付け端部が形成されるまでコーティングされないままであり、形成された後で、外科用縫合針の第1及び第2の部分が、最終的なトップコートでコーティングされる。これにより、従来の外科用縫合針において縫合糸取り付け端部を作製するときに生じるはずのコーティングの炭化を回避すると考えられる。結果として、外科用縫合針の潤滑性及び審美的外観を維持することができる。
【0023】
一般に、上述のように、本明細書に記載される外科用縫合針は、少なくともプライマーコート、ベースコート、及びトップコートでコーティングされた第1の部分と、少なくともトップコートでコーティングされた第2の部分とを有する。プライマーコートは、外科用縫合針と共有結合して、他のコーティングをその上に塗布するための基材を提供することができる。ベースコートは、プライマーコートの上に塗布され得る。トップコートがベースコートの上に塗布されると、ベースコートがトップコートと結合してトップコートに耐久性を提供することができる。本質的に、プライマーコートと外科用縫合針との間の結合は、他の2つのコートを縫合針表面に固定する。プライマーコート及びトップコート両方へのベースコートの結合は、トップコートをプライマーコートに、したがって外科用縫合針表面に固定し、トップコートに増加した耐久性を付与する。
【0024】
コーティングは、一般に、必要に応じて任意の厚さで塗布され得る。単独のコーティング、及び組み合わせたコーティングの厚さは、所望の特性を効果的に提供するために十分であるべきである。例えば、プライマーコートは、約0.01μm~約1μmの範囲の厚さを有するように塗布され得る。ベースコート及びトップコートは、約1μm~約10μmの範囲の厚さで塗布され得る。例示的な実施形態において、トップコートは、ベースコートの厚さより少なくとも約50%薄い厚さを有し得る。コーティングの厚さは特定の用途に従って変化し得ることを、当業者は理解するであろう。
【0025】
外科用縫合針をコーティングするための多くの方法が想到されるが、1つの方法の例示的な実施形態のフローチャートが
図200に示されている。示されるように、方法は、一般に、プライマーコートを、例えば外科用縫合針ブランクの一部分が組織貫通端部を有する外科用縫合針ブランクの表面の一部分上に塗布すること(210)と、ベースコートを、例えば外科用縫合針ブランクのプライマーコートされた表面上に塗布すること(220)と、例えば、外科用縫合針ブランクをレーザ穿孔し、組織貫通端部の反対側に縫合糸取り付け端部を形成し、それによって外科用縫合針を形成すること(230)と、トップコートを、例えばベースコート上及び外科用縫合針の縫合糸取り付け端部上に塗布すること(240)と、を含み得る。したがって、製造中、外科用縫合針の縫合糸取り付け端部は、針のコーティングされていない部分に形成され、その後、最終的なトップコートでコーティングされ得る。
【0026】
プライマーコート
プライマーコートの塗布は任意であるが、一部の実施形態では、プライマーコートの使用が有利であり得るため望ましい。例えば、プライマーコートは、縫合針表面に化学的に結合することが可能であり得、潤滑性シリコーンコーティングが接着する結合基材を提供し、下塗り及び上塗りの耐久性の増加を生じさせる。例えば、一実施形態では、ベースコートを塗布する前に、
図1に示される外科用縫合針100の第1の部分104にプライマーコートを塗布することができる。プライマーコートは、プライマーコートの単一層、又は同じ若しくは異なるプライマーコートの多層を含み得ることも想到される。
【0027】
プライマーコートは、外科用縫合針ブランクに結合することができ、ベースコートを塗布するための適切な基材を提供することができる、任意の配合を有し得る。一実施形態において、プライマーコーティングは、例えば、ポリアルキルシロキサン及びテトラエチルシリケートから形成され得る。ポリアルキルシロキサン及びテトラエチルシリケートプライマーコートは、例えば、タングステン-レニウム合金などの、結合が難しい基材のコーティングのために、配合され得る。他の実施形態において、プライマーコートは、ビニルトリエトキシシラン又は(3-グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシランから形成され得る。
【0028】
ベースコート
上述したように、ベースコートは、外科用縫合針の縫合糸取り付け端部をレーザ穿孔することにより形成する前に、
図1に示される外科用縫合針100のプライマーコートされた第1の部分104など、外科用縫合針のプライマーコートされた表面に塗布され得る。また、ベースコートは、ベースコートの単一層、又は同じ若しくは異なるベースコートの多層を含み得ることも想到される。
【0029】
ベースコートは、例えば、ビニル官能化オルガノポリシロキサンとして特徴付けられるシリコーン系組成物を含み得る。下塗り溶液は、ビニル官能化オルガノポリシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン流体架橋剤、及び任意によりプラチナ又はスズなどの従来の金属触媒などの触媒を含む。オルガノポリシロキサン系ポリマーは、例えば、Waterford,NYのMomentive(登録商標)Performance Materialsにより製造される、Momentive(登録商標)製品コード番号MSC2631シリコーンであり得る。MSC2631組成物の更なる情報は、製造者のMSDSから入手可能である。
【0030】
ベースコートは、当該技術分野において任意の高蒸気圧低沸点溶媒を使用して調製され得る。一部の実施形態において、溶媒は、ハイドロフルオロエーテル(「HFE」)(例えば、3M(登録商標)(St.Paul,Minn.)により製造されるHFE72-DE溶媒)であってもよい。HFE溶媒は、シリコーン組成物のための担体として機能する。これは、周囲条件下において組成物から迅速に蒸発し、組成物中の他の物質の移動を制限し、したがって組成物の硬化時間を大幅に低減する。加えて、HFE溶媒は蒸発後に残留物を残さない。これは健康及び安全性の規制を順守し、環境に対しても優しい。当業者によって理解されるように、HFE、キシレン、ヘプタン、Isopar K(Exxon Mobil)、ナフタレン、トルエン、及びヒドロフルオロカルボンが挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な溶媒が使用され得る。
【0031】
加えて、触媒及び架橋剤が、ベースコートに追加され得る。例えば、共にWaterford,NYのMomentive(登録商標)Performance Materialsによって製造される、Momentive(登録商標)製品コード番号SS8010プラチナ触媒(「触媒」)及びMomentive(登録商標)製品コード番号SS4300架橋剤(「架橋剤」)が、ベースコートの調製中に追加され、架橋剤及び触媒として機能し得る。当業者によって理解されるように、シリコン-水素部分を含む他の架橋剤が挙げられるがこれらに限定されない、任意の好適な触媒及び架橋剤が使用され得る。他の触媒は、スズなどの従来の金属触媒を含み得る。
【0032】
トップコート
上述したように、トップコートは、
図1に示される外科用縫合針100の縫合糸取り付け端部110のように、縫合糸取り付け端部が外科用縫合針に形成された後に塗布され得る。つまり、レーザ穿孔の後、トップコートをベースコートに、また外科用縫合針の縫合糸取り付け端部上に塗布することができる。トップコートは、トップコートの単一層、又は同じ若しくは異なるトップコートの多層を含み得ることも想到される。
【0033】
トップコートは、例えば、シリコーン系組成物を含むことができる。一実施形態において、トップコートは組成物から形成され、当該組成物は、当該組成物の約1重量%~3重量%の濃度のシリコーンを有し得る。別の実施形態において、トップコートは組成物から形成され、当該組成物は、当該組成物の約3重量%未満の濃度でシリコーンを有し得る。他の実施形態において、トップコートは組成物から形成され、当該組成物は、当該組成物の約2重量%~2.75重量%又は約2.25重量%~2.5重量%の濃度のシリコーンを有し得る。
【0034】
一部の実施形態において、組成物は、25℃の温度で測定される約1cPs~5cPsの粘度を有し得る。一実施形態において、組成物は、25℃の温度で測定される約2cPs~5cPsの粘度を有し得る。別の実施形態において、組成物は、25℃の温度で測定される約2cPs~3cPs、又は約3cPs~4cPsの粘度を有し得る。
【0035】
一部の実施形態において、トップコートは、ヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサンとして特徴付けられる、シリコーン系組成物を含み得る。ヒドロキシル基末端ポリジメチルシロキサンは一般的に、ジメチルシロキサン-ヒドロキシ末端基、メチルハイドロジェンシロキサン、及び少量のいくつかの他のシロキサンを含む。ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンは、例えば、NuSil(登録商標)Technologies(Carpentaria,CA)製のNuSil(登録商標)Technologies Silicone製品No.MED4162、又はDow Corning Corporation(Midland,MI)製のDow Corning製品No.Syl-Off(登録商標)23であり得、それぞれが、70%のキシレン溶媒担体中に30%の固体シリコーンを含む分散液である。
【0036】
トップコートは、溶媒、例えばヘプタン溶媒又は他の任意の相溶性のある揮発性溶媒を使用して調製され得る。代表的なトップコートの調製において、2.5重量%のトップコートシリコーンポリマーが、91.7重量%のヘプタン溶媒と混合され得る。例えば、100gのトップコート試料には、8.3gのNusil(登録商標)MED4162としてのトップシリコーンポリマー2.5gを、91.7gのヘプタン溶媒と組み合わせることができる。
【0037】
トップコートは厚さが変化し得るが、一部の実施形態では、トップコートは、約0.1マイクロメートル~10マイクロメートルの厚さであり得る。他の実施形態では、トップコートは、約0.1マイクロメートル~3マイクロメートル、約0.7マイクロメートル~2マイクロメートル、又は0.2マイクロメートル~0.6マイクロメートルの厚さを有することができる。
【0038】
コーティングプロセス
浸漬、スプレー、拭き取り、刷毛塗り、完全浸漬、重力送りなどが挙げられるが、これらに限定されない当該技術分野において既知の任意のプロセスを使用して、様々な外科用縫合針をプライマーコート、ベースコート、及びトップコートのうちの1つ以上でコーティングすることができる。例えば、一実施形態では、本明細書に記載の外科用縫合針は、プライマー及びベースコートでスプレーコーティングされ、次いでトップコートで浸漬コーティングされ得る。
【0039】
一部の実施形態では、プライマー及び/又はベースコートは、例えば、超音波及び/又はガスコンフォーマルコーティングスプレーノズルシステム及び/又はスワールコーティングシステムを用いてスプレーすることにより、外科用縫合針に塗布され得る。超音波及びガススプレーノズルは、液体を噴霧し、液滴のスプレーを形成するために十分な量で、液体にエネルギーを伝達する。液滴のスプレーは、スワールプロセスを使用して医療用装置に適用され、このプロセスにおいて、基材をコーティングするために、液滴が医療用装置の周囲を旋回する。スワールプロセスを使用したコーティングの適用は、外科用装置へのコーティングのより均一な分布を確実にし、一方で、したたり、望ましくないプーリング、液滴及び/又は不均一性を生じ得るコーティングの余剰な堆積を防ぎ得る。スプレーはまた、コーティング厚さの正確な制御及び調節を可能にする。特定のコーティングは、表面上に薄い膜のみを残すように塗布され得るか、又は異なる厚さを提供するために塗布され得る。
【0040】
異なる種類及び大きさのスプレーノズルが、特定のコーティング組成物、及び生成されるスプレー流れの所望の属性によって使用されてもよい。スプレーノズルは、必要に応じた特定の頻度及び/又は空気圧で動作するように設計されることができ、ノズルを操作するための所望の電力レベルは、ノズルの大きさ及び設計、使用される組成物の粘度、使用される組成物中の成分の揮発性などを含む、様々な要因に依存し得る。超音波及び流体スプレーノズルはいずれも、市販されている。
【0041】
スプレーコーティングに関する更なる詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Surgical Needle Coatings and Methods,」と題された米国特許出願第9,259,219号に開示されている。
【0042】
一部の実施形態では、ボアホールが針ブランクに穿孔され、それによって外科用縫合針を形成すると、トップコートは浸漬コーティングによって外科用縫合針に塗布され得る。例えば、外科用縫合針をバスケット内に配置することができ、次いでバスケットをトップコート溶液中に浸漬することができる。浸漬コーティング手順は外科用縫合針を参照して説明されているが、当業者であれば、例えば、
図4A~4Bに示されるように、多くの外科用縫合針がバスケット内に配置され得、バッチ浸漬コーティングプロセスが、例えば、以下の実施例に記載されるように実施され得ることを理解するであろう。
【0043】
バスケット300の例示的な実施形態を
図3A~
図4Bに示す。図示のように、バスケット300は、基部302と、頂部304と、基部302から頂部304まで各側壁306a、306b、308a、308bが延在する第1及び第2の対の対向側壁とを有する。簡略化のために、
図3A及び
図3Bにおいて、バスケット300は閉鎖されておらず(つまり、頂部304は側壁306a、306b、308a、308bと接触していない)、
図3C及び
図4Aにおいて、頂部304は図示されていない。
【0044】
一実施形態では、バスケット300は、バスケット300の全表面の約50%~95%である排液領域を有することができる。本明細書で使用されるとき、バスケットの「全表面積」は、バスケットの基部、頂部、及び側壁の表面積の総和として定義される。本明細書で使用されるとき、バスケットの「排液領域」は、液体が通過することができるバスケットの総面積として定義される。別の実施形態では、バスケット300は、バスケット300の全表面積の少なくとも約65%の排液領域を有し得る。他の実施形態では、バスケット300は、バスケット300の全表面の約50%~75、約55%~60%、又は約60%~75%である排液領域を有し得る。
【0045】
図3A~
図4Aに示されるように、各側壁306a、306b、308a、308bは、内面310と、外面312と、それらの間に延在する1つ以上の排液穴314を含み得る。1つ以上の排液穴314は、浸漬コーティングプロセス中に、トップコーティング組成物などの液体がバスケット300を通過し、バスケット300から出ることを可能にし得る。更に、
図4Bに示されるように、バスケット300を閉鎖するように頂部304が側壁306a、306b、308a、308bの内面310と接触して配置されると、1つ以上の排液穴314は開いたままであり、したがって、バスケット300が閉鎖されたときに損なわれない。一実施形態では、
図3C~
図4Bに示すように、基部302及び頂部304はそれぞれ、多孔質基材316、318を含む。基部302の多孔質基材318は、
図4A~
図4Bに湾曲した針として示される外科用縫合針を、
図4A~
図4Bに示されたように、バスケット300内に保持するように構成され得る一方で、余剰な上塗りの少なくとも一部分が中を通過することを可能にする。頂部304の多孔質基材318は、例えば、以下により詳細に記載されるような真空乾燥プロセス中に、空気が中を通過することを可能にするように構成され得る。加えて、頂部304の多孔質基材318はまた、外科用縫合がバスケット300内で浮遊することを防止することができ、それにより、トップコートが外科用縫合針上に不完全にコーティングされることを防止することができる。多孔質基材316、318の設計は、バスケットのサイズ及び外科用縫合針のサイズに少なくとも部分的に基づく。例えば、一実施形態では、基部302の多孔質基材316は、9.25”×11.5”のメッシュ基材とすることができ、頂部304の多孔質基材318は、7”×9”のメッシュ基材とすることができ、それぞれが105μmのメッシュ開口部(例えば、SEFAR PROPYLTEX(登録商標)05-105/25)を有する。
【0046】
レーザ穿孔
針ブランクをいくつかの方法で穿孔することができるが、レーザ穿孔が好ましい。この工程の間、縫合糸取り付け端部は、針ブランクのコーティングされていない近位端にボアホールを穿孔し、それによって外科用縫合針を形成することによって形成される。レーザシステムは、典型的にはNd:YAGレーザを使用するが、必要な電力密度を提供することができ、かつ必要なスポットサイズに焦点を合わせることができる任意のレーザの種類が想到される。特定のサイクルを利用して、ビームパワー、エネルギー密度、エネルギー密度分布、パルス形状、パルス持続時間、及びパルス数を含むがこれらに限定されないレーザビームパラメータを制御することによって、所望のボアホールの直径及び深さを得る。例示的なレーザ穿孔加工及びそのようなプロセスに関する更なる詳細は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Method of forming blind holes in surgical needles using a diode pumped Nd-YAG laser,」と題された米国特許出願公開第6,252,195号に記載されている。
【0047】
一部の実施形態において、
図5に示されるように、方法500は、一般に、プライマーコートを、例えば外科用縫合針ブランクの一部分が組織貫通端部を有する外科用縫合針ブランクの表面の一部分上に塗布すること(510)と、ベースコートを、例えば外科用縫合針ブランクのプライマーコートされた表面上に塗布すること(520)と、プライマー及びベースコートを硬化すること(530)と、例えば、外科用縫合針ブランクをレーザ穿孔し、組織貫通端部の反対側に縫合糸取り付け端部を形成し、それによって外科用縫合針を形成すること(540)と、トップコート(560)を、例えば、ベースコート及び外科用縫合針の縫合糸取り付け端部上に塗布すること(550)と、トップコートを乾燥させること(560)と、を含み得る。一部の実施形態では、同じ硬化システムを使用してプライマー及びベースコートを硬化させることができるが、他の実施形態では、1つの硬化システムを使用してプライマーコートを硬化させ、別の硬化システムを使用してベースコートを硬化させることができる。外科用縫合針に塗布されるコーティングのいずれかは、部分的に又は完全に硬化されるか、又は部分的に又は完全に乾燥されてもよいことが想到される。一実施形態では、トップコートは部分的に乾燥され(すなわち、溶媒の一部がトップコートから除去される)、したがって部分的に架橋される。
【0048】
一部の実施形態において、
図6に示されるように、方法600は、一般に、プライマーコートを、例えば外科用縫合針ブランクの一部分が組織貫通端部を有する外科用縫合針ブランクの表面の一部分上に塗布すること(610)と、ベースコートを、例えば、外科用縫合針ブランクのプライマーコートされた表面上に塗布すること(620)と、プライマー及びベースコートを瞬間硬化すること(630)と、プライマー及びベースコートをオーブン硬化すること(640)、例えば、外科用縫合針ブランクをレーザ穿孔し、組織貫通端部の反対側に縫合糸取り付け端部を形成し、それによって外科用縫合針を形成すること(650)と、トップコートを、例えば、ベースコート及び外科用縫合針の縫合糸取り付け端部に塗布すること(660)と、トップコートを真空乾燥させること(670)と、トップコートをオーブン乾燥させること(680)と、を含み得る。
【0049】
硬化プロセス
外科用縫合針などの外科用装置上のコーティングを硬化するための、当該技術分野において既知の多くのメカニズムが存在する。硬化はまた、コーティングを作製するために使用される任意の溶媒の蒸発を生じ得る。硬化は一般的に、何らかの種類の化学反応を生じ、コーティングされた外科用縫合針を、所定の期間、何らかの形の温度の上昇及び/又は湿度変化に暴露することによって達成され得る。例えば、コーティングされた縫合針は、当該技術分野の他の形態の、中でもとりわけ加熱炉若しくは炉、ホットボックス、加湿チャンバ、及び/又は赤外線チャンバ内に配置することができる。硬化時間は、数秒間のみの「瞬間(flash)」硬化から、24時間超の時間まで及び得る。一実施形態では、
図6に示すように、プライマー及びベースコートは、最初に瞬間硬化され、続いてオーブン硬化され得る。
【0050】
このようなプロセスに関する例示的な硬化プロセス及び更なる詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Surgical Needle Coatings and Methods,」と題された米国特許出願第9,259,219号に開示されている。
【0051】
乾燥プロセス
任意の好適な乾燥プロセスを使用して余剰なトップコートを除去することができるが、真空乾燥が好ましい。一実施形態では、例えば、外科用縫合針が、
図3A~
図4Bのバスケット300などのバスケットを使用してトップコートで浸漬コーティングされると、バスケットを、
図7に示す真空乾燥チャンバ700などの真空乾燥チャンバ内に配置することができる。例示的な真空乾燥プロセスは、内部に配置された外科用縫合針を有するバスケット300を、真空乾燥チャンバ内に配置することと、バスケット300を約1,400フィート/分で少なくとも15分間空気流(下降気流)にさらすことと、を含み得る。
【0052】
更に、外科用縫合針などの外科用装置上の溶媒を除去し、したがってコーティングを固着させるために使用できる、多くのメカニズムが存在する。コーティングの固着は、硬化とは異なり、一般に、化学反応を生じさせない。むしろ、コーティングの固着は、このようなコーティングの硬化温度よりも低い温度でコーティングから溶媒を抽出する好適な乾燥プロセスを含むことができる。例えば、一部の実施形態では、トップコートは、オーブンを使用して約90℃~130℃の温度で乾燥させることができる。他の実施形態では、トップコートは、約90℃~110℃又は約110℃~120℃の温度でオーブン乾燥され得る。一実施形態では、
図6に示すように、余剰なトップコートを外科用縫合針から除去するために真空乾燥プロセスを使用し得、トップコートからの溶媒抽出のためにオーブン乾燥プロセスを使用し得る。
【0053】
システム
本明細書に記載されるコーティングプロセスを実行するために、様々なシステムを使用することができる。一般に、システムは、1つ以上のコーティングシステム及びレーザ穿孔システムを含むことができ、このシステムでは、コーティングシステム(複数可)は、プライマーコート、ベースコート、及びトップコートのうちの少なくとも1つを塗布するように構成され得、レーザ穿孔システムは、外科用縫合針ブランク内に縫合糸取り付け端部を形成し、それによって外科用縫合針を形成するように構成され得る。また、システムは、コーティングプロセスを実行するための追加のシステム又はユニットを含み得ることも想到される。
【0054】
図8は、
図1の外科用縫合針100のような外科用縫合針をコーティングするためのシステム800の1つの例示的な実施形態を示す。図示のように、システム800は、第1のコーティングシステム810、硬化システム820、レーザ穿孔システム830、第2のコーティングシステム840、並びに第1及び第2の乾燥システム850、860を含む。第1のコーティングシステム810は、プライマーコート及びベースコートのうちの少なくとも一方を外科用縫合針ブランクの第1の部分に塗布するように構成され得る。一実施形態では、第1のコーティングシステム810は、スプレーコーティングシステムであり得る。硬化システム820は、プライマー及びベースコートを少なくとも部分的に硬化するように構成され得る。レーザ穿孔システム830は、外科用縫合針ブランクの第2の部分内に縫合糸取り付け端部を形成し、それによって外科用縫合針を形成するように構成され得る。第2のコーティングシステム840は、トップコートを外科用縫合針に塗布するように構成され得る。一実施形態では、第2のコーティングシステム840は、
図3A~
図4Bのバスケット300などのバスケットを使用する浸漬コーティングプロセスであり得る。
図8に更に示すように、システム800は、外科用縫合針から余剰なトップコートの少なくとも一部分を除去するように構成され得る第1の乾燥システム850を含むことができる。一実施形態では、乾燥システムは、
図7の真空乾燥チャンバ700のような真空乾燥チャンバを含み得る。更に、システム800は、トップコートから溶媒を少なくとも除去し、それによってトップコートを固着し、最終コーティングされた外科用縫合針を製造するように構成され得る第2の乾燥システム860を含むことができる。
【0055】
本明細書に開示する外科用縫合針は、1回の使用の後に廃棄されるように設計することができ、又はこれらは複数回使用されるように設計することができる。しかしながら、いずれの場合も、外科用縫合針は、少なくとも1回の使用後に再使用のために再調整され得る。再調整は、縫合糸材料からの外科用縫合針の切断工程と、それに続く洗浄工程、及びその後の、同じ又は異なる縫合糸材料への再接続工程の、任意の組み合わせを含み得る。当業者であれば、装置の再調整が、切断、洗浄、及び再接続の様々な技術を利用できることを理解するであろう。そのような技術の使用と、それにより調整された外科用縫合針は全て本出願の範囲内にある。
【0056】
本教示は、以下の非限定的な実施例を参照することにより更に理解することができる。
【実施例】
【0057】
レーザ穿孔プロセス後に外科用縫合針のバレルをコーティングする効果を調べるために、以下の実験を実施した。具体的には、得られるコーティングされた外科用縫合針の潤滑性に対する効果を調べた。加えて、以下の実験を実施して、得られた外科用縫合針の審美性及び抵抗力に対して有し得る、シリコーン濃度及び上塗りの硬化温度の効果を調べた。
【0058】
組織貫通力を決定するためのプロトコル(B-ECNT試験;ASTM番号F3014-4)
各試験のサンプルについて、30本の縫合針は、Monmouth Duraflex MR40 NBRゴム膜(「Monmouthゴム」)に通され、これは肉又はヒトの死体の組織をシミュレーションするように機能する。縫合針をそれぞれ30回貫通膜に個別に通過させた。各通過における最大力がグラム単位で記録され、コーティング性能の指標として使用された。
【0059】
外科用縫合針は、縫合針を貫通膜表面と垂直の位置に固定するようにして回転台に取り付けられて、回転軸が、貫通膜の平面と同じ平面上にある、その放射状プロファイル上に向けられる。ロードセルの上に取り付けられた貫通部材内へと縫合針が回転された。縫合針が貫通部材を通じて押される際の、垂直力の最大量が記録された。
【0060】
抵抗力の決定のためのプロトコル
各試験サンプルについて、30本の縫合針をそれぞれ試験媒体(ゴム-Cal製の1/16天然ガムゴムシート)に通した。Chatillonゲージを各縫合針先端に固定し、各縫合針バレルを10インチ/分の速度で試験媒体を通して引っ張った。各縫合針の最大抵抗力をChatillonゲージによって記録し、平均を縫合針のバレルと試験媒体との間の最大摩擦の尺度として使用した。
【0061】
実施例1A
バレルコーティングタングステン-レニウム針:6,000ロット、10ミルのBV-1タングステン-レニウムBV-1針を以下のように調製した。
プライマーコートの塗布:プライマーコーティング組成物を、HFEとMomentive SS 4044Pプライマーとの1:1(重量比)混合物から調製した。針の一部分は、以下のパラメーター:2PSI流体圧、50PSI空気アシスト、及び10インチ/秒ライン速度、を有するAsymtek(登録商標)(Carlsbad,CA)から入手可能なSC-300Swirl Coat(商標)Applicator及びCentury(登録商標)C-341 Conformal Coating Systemを使用し、単回通過スプレーを使用して下塗り組成物でスワールコーティングされた。
【0062】
第1のベースコートの塗布:第1の下塗り組成物を、Momentive Performance Material社により製造されたMomentive MSC2631 27.6重量%、Momentive SS4300C 0.14%及びMomentive SS8010 0.025%を、72.2重量%のHFE-72DE溶媒と混合した混合物から調製した。針のコーティングされた部分は、以下のパラメーター:2PSI流体圧、50PSI空気アシスト、及び10インチ/秒ライン速度、を有するAsymtek(登録商標)(Carlsbad,CA)から入手可能なSC-300Swirl Coat(商標)Applicator及びCentury(登録商標)C-341 Conformal Coating Systemを使用し、単回通過スプレーを使用して第1の下塗り組成物でスワールコーティングされた。
【0063】
第2のベースコートの塗布:第2の下塗り組成物を、74重量%のHFE-72DE溶媒と共に26重量%のNuSil(登録商標)MED4162を使用して調製した。針のコーティングされた部分は、以下のパラメーター:10PSI流体圧、50PSI空気アシスト、及び5インチ/秒ライン速度、を有する単回通過スプレーを使用して第2の下塗り組成物でスワールコーティングされた。
【0064】
硬化:コーティングされた針を200℃にて30秒間熱トンネル内で瞬間硬化させた後、190℃にて10時間オーブン硬化させた。次いで、針をオーブンの外で周辺温度にて冷却させた。
【0065】
レーザ穿孔:冷却された針のコーティングされていない部分(つまり、近位端)をそれぞれ穿孔して、従来の針穿孔Nd:Yagレーザを使用してボアホールを形成し、それによって針の縫合糸取り付け端部(バレル)を形成する。次いで、トップコートを塗布する準備において、縫合糸取り付け端部の水を塞いだ(water plugged)。
【0066】
トップコートの塗布:次に、
図4A~
図4Bに示すように、レーザ穿孔された縫合針を浸漬バスケット内に配置した。バスケットは、各側壁に排液穴を有するアルミニウムフレームから形成され、バスケットの基部及び頂部はそれぞれ、ポリプロピレンメッシュ(SEFAR社製PROPYLTEX(登録商標)ポリプロピレン、仕様:05-105/25)を含む。次いで、浸漬バスケットを、5,000mLの2.5%Nusil(登録商標)MED 4162ヘプタン溶液を有する鋼製容器に浸漬した。
【0067】
乾燥:次に、浸漬バスケットを、
図7に示されるチャンバ700などの真空乾燥チャンバ内に15分間配置した。次いで、縫合針をオーブンに移し、100℃の温度で2時間乾燥させた。次いで、縫合針をオーブンの外で周辺温度にて冷却させた。
【0068】
非バレルコーティングタングステン-レニウム針(対照):8,000ロット、10ミルのタングステン-レニウムBV-1針を、針の縫合糸取り付け端部(バレル)がコーティングされていないことを除いて、上記のバレルコーティング針と同様に調製された。
【0069】
バレルコーティング鋼針:14,000ロット、10ミルの鋼BV-1針を以下のように調製した。
ベースコートの塗布:針の全ロットを鋼ストリップ上に固定し、20%Nusil(登録商標)MED4162及び80%(Exxon Mobil Isopar(商標)K)からなる溶液に浸漬した。次いで、針を190℃で45秒間瞬間硬化させた。
【0070】
トップコートの塗布:次に、瞬間硬化針を鋼ストリップ上に固定し、20%Nusil(登録商標)MED4162及び80%(Exxon Mobil Isopar(登録)K)からなる溶液に浸漬した。次いで、針を190℃で45秒間瞬間硬化させた。
【0071】
レーザ穿孔:次に、コーティングされた針の近位端をそれぞれ穿孔して、従来の針穿孔Nd:Yagレーザを使用してボアホールを形成し、それによって針の縫合糸取り付け端部(バレル)を形成し、その結果、バレルコーティング鋼針を形成する。
【0072】
(試験)
試験A:バレルコーティングタングステン-レニウム針について目視試験を行った。1,000本の針に対して、人間の目でシリコーン関連の欠陥について目視走査した。シリコーン関連欠陥は特定されなかった。
【0073】
試験B:バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験B1)及び非バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験B2)でECNT試験を行った。各バッチからの30本の針を、それぞれ30回、培地に個別に通過させた。各通過における最大力を記録し、コーティング性能の指標として使用した。結果を
図9に示す。
【0074】
図9は、直接比較における試験B1及び試験B2の平均結果のグラフ表示である。y軸は、貫通膜に針を通過させるために必要な平均貫通力を各通過においてグラム単位で示したものである。x軸は、通過回数を示す。菱形は、バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験B1)を表し、正方形は、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験B2)を表す。見て分かるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針は、約21グラムの第1の通過貫通性能を有していた。対照的に、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針は、約26グラムの第1の通過貫通性能を有していた。したがって、バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針は、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針と比較して、より望ましい第1の通過貫通性能を有した。
【0075】
試験C:バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験C1)、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験C2)、及びバレルコーティング鋼BV-1針(試験C3)で、バレル抵抗力試験を実施した。各試験では、30本の針のバレルを、培地に個別に通過させる。最大力は、Chatillonゲージを使用して通過中に記録され、バレル抵抗性能の尺度として使用される。結果を以下の表1に示す。
【0076】
【0077】
表1に見られるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験C1)の最大バレル抵抗力は、対照の非バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験C2)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。更に、バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験C1)の最大バレル抵抗性能は、バレルコーティング鋼BV-1針(試験C3)の最大バレル抵抗力と同等であることが判明した。
【0078】
比較例1A
バレルコーティングタングステン-レニウム針:2,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティングタングステン-レニウム針と同様に調製した。ただし、上塗り組成物は3%Nusil(登録商標)MED 4162ヘプタン溶液であり、完全にコーティングされた針は、190℃で8時間硬化された。
【0079】
非バレルコーティングタングステン-レニウム針(対照):8,000ロット、8ミルのBV175-8タングステン-レニウム針を、実施例1Aの非バレルコーティング針と同じ方法で調製した。
【0080】
バレルコーティング鋼針:8,000ロット、8ミルの鋼BV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティング鋼針と同じ方法で調製した。
【0081】
(試験)
試験A:バレルコーティングタングステン-レニウム針について目視試験を行った。300本の針に対して、人間の目でシリコーン関連の欠陥について目視走査した。シリコーン関連欠陥を有する38本の針が特定された。例えば、
図10は、シリコーン関連欠陥を有する38本の針の一部分の画像である。
【0082】
試験C:バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)、及びバレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)で、バレル抵抗力試験を実施した。各試験では、30本の針のバレルを、培地に個別に通過させる。最大力は、Chatillonゲージを使用して通過中に記録され、バレル抵抗性能の尺度として使用される。結果を以下の表2に示す。
【0083】
【0084】
表2に見られるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗力は、対照の非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。更に、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗性能は、バレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。
【0085】
実施例1B
バレルコーティングタングステン-レニウム針(レーザ穿孔後):6,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティングタングステン-レニウム針と同じ方法で調製した。
【0086】
非バレルコーティングタングステン-レニウム針(対照):8,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aの非バレルコーティング針と同じ方法で調製した。
【0087】
バレルコーティング鋼針:8,000ロット、8ミルの鋼BV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティング鋼針と同じ方法で調製した。
【0088】
(試験)
試験A:バレルコーティングタングステン-レニウム針で、2回の目視試験を実施した。1回目において、1,000本の針に対して、人間の目でシリコーン関連欠陥について目視走査した。4本の針が、シリコーン関連欠陥を有すると判定された。2回目において、300本の針に対して、人間の目でシリコーン関連欠陥について目視走査した。シリコーン関連欠陥は確認されなかった。
【0089】
試験B:バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験B1)及び非バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針(試験B2)でECNT試験を実施した。各バッチからの30本の針を、それぞれ30回、培地に個別に通過させた。各通過における最大力を記録し、コーティング性能の指標として使用した。結果を
図9に示す。
【0090】
図11は、直接比較における試験B1及び試験B2の平均結果のグラフ表示である。y軸は、貫通膜に針を通過させるために必要な平均貫通力をグラムで示したものである。各通過に対して、x軸は、通過回数を示す。見て分かるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針は、約16グラムの第1の通過貫通性能を有していた。対照的に、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針は、約20グラムの第1の通過貫通性能を有していた。バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針の貫通力は30回の通過にわたって着実に増加したが、各通過においてバレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針の平均貫通力は、望ましくは、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針の平均貫通力よりも小さかった。最終的には、バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針は、30回の通過後、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV-1針よりも約4グラム少ない最大力を必要とした。
【0091】
試験C:バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)、及びバレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)で、バレル抵抗力試験を実施した。各試験では、30本の針のバレルを、培地に個別に通過させる。最大力は、Chatillonゲージを使用して通過中に記録され、バレル抵抗性能の尺度として使用される。結果を以下の表3に示す。
【0092】
【0093】
表3に見られるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗力は、対照の非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。更に、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗性能は、バレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)の最大バレル抵抗力と同等であることが判明した。
【0094】
比較例1B
バレルコーティングタングステン-レニウム針:2,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティングタングステン-レニウム針と同様に調製した。ただし、上塗り組成物は3%Nusil(登録商標)MED 4162ヘプタン溶液であり、完全にコーティングされた針は、100℃で2時間硬化された。
【0095】
非バレルコーティングタングステン-レニウム針(対照):8,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aの非バレルコーティング針と同じ方法で調製した。
【0096】
バレルコーティング鋼針:8,000ロット、8ミルのBV175-8鋼針を、実施例1Aのバレルコーティング鋼針と同じ方法で調製した。
【0097】
(試験)
試験A:バレルコーティングタングステン-レニウム針について目視試験を実施した。300本の針に対して、人間の目でシリコーン関連欠陥について目視走査した。8本の針が、シリコーン関連欠陥を有すると判定された。
【0098】
試験C:バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)、及びバレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)で、バレル抵抗力試験を実施した。各試験では、30本の針のバレルを、培地に個別に通過させる。最大力は、Chatillonゲージを使用して通過中に記録され、バレル抵抗性能の尺度として使用される。結果を以下の表4に示す。
【0099】
【0100】
表4から分かるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗力は、対照の非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。更に、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗性能は、バレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)の最大バレル抵抗力と同等であることが判明した。
【0101】
実施例2
バレルコーティングタングステン-レニウム針:2,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティングタングステン-レニウム針と同様に調製した。ただし、上塗り組成物は2.25%Nusil(登録商標)MED 4162ヘプタン溶液であり、完全にコーティングされた針は、90℃で75分間硬化された。
【0102】
非バレルコーティングタングステン-レニウム針(対照):8,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aの非バレルコーティング針と同じ方法で調製した。
【0103】
バレルコーティング鋼針:8,000ロット、8ミルの鋼BV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティング鋼針と同じ方法で調製した。
【0104】
(試験)
試験A:バレルコーティングタングステン-レニウム針について目視試験を実施した。300本の針に対して、人間の目でシリコーン関連欠陥について目視走査した。目視試験の結果、シリコーン関連欠陥は確認されなかった。
【0105】
試験C:バレルコーティングされたタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)、及びバレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)で、バレル抵抗力試験を実施した。各試験では、30本の針のバレルを、培地に個別に通過させる。最大力は、Chatillonゲージを使用して通過中に記録され、バレル抵抗性能の尺度として使用される。結果を以下の表5に示す。
【0106】
【0107】
表5に見られるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗力は、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。更に、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗性能は、バレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)の最大バレル抵抗力と同等であることが判明した。
【0108】
比較例2A
バレルコーティングタングステン-レニウム針:2,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティングタングステン-レニウム針と同様に調製した。ただし、上塗り組成物は1.5%Nusil(登録商標)MED 4162ヘプタン溶液であり、完全にコーティングされた針は、100℃で2時間硬化された。
【0109】
非バレルコーティングタングステン-レニウム針(対照):8,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aの非バレルコーティング針と同じ方法で調製した。
【0110】
バレルコーティング鋼針:8,000ロット、8ミルの鋼BV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティング鋼針と同じ方法で調製した。
【0111】
(試験)
試験A:バレルコーティングタングステン-レニウム針について目視試験を実施した。300本の針に対して、人間の目でシリコーン関連欠陥について目視走査した。2本の針が、シリコーン関連欠陥を有すると判定された。
【0112】
試験C:バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)、及びバレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)で、バレル抵抗力試験を実施した。各試験では、30本の針のバレルを、培地に個別に通過させる。最大力は、Chatillonゲージを使用して通過中に記録され、バレル抵抗性能の尺度として使用される。結果を下記表6に示す。
【0113】
【0114】
表6に見られるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗力は、対照の非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。更に、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗性能は、バレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)の最大バレル抵抗力よりも高いことが判明した。
【0115】
実施例3
バレルコーティングタングステン-レニウム針:3,100ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティングタングステン-レニウム針と同様に調製した。ただし、上塗り組成物は2.75%Nusil(登録商標)MED 4162ヘプタン溶液であり、完全にコーティングされた針は、110℃で3時間硬化された。
【0116】
非バレルコーティングタングステン-レニウム針(対照):8,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aの非バレルコーティング針と同じ方法で調製した。
【0117】
バレルコーティング鋼針:8,000ロット、8ミルの鋼BV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティング鋼針と同じ方法で調製した。
【0118】
(試験)
試験A:バレルコーティングタングステン-レニウム針について目視試験を実施した。300本の針に対して、人間の目でシリコーン関連欠陥について目視走査した。目視試験の結果、シリコーン関連欠陥は判定されなかった。
【0119】
試験C:バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)、及びバレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)で、バレル抵抗力試験を実施した。各試験では、30本の針のバレルを、培地に個別に通過させる。最大力は、Chatillonゲージを使用して通過中に記録され、バレル抵抗性能の尺度として使用される。結果を以下の表7に示す。
【0120】
【0121】
表7に見られるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗力は、対照の非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。更に、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗性能は、バレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)の最大バレル抵抗力と同等であることが判明した。
【0122】
比較例3A
バレルコーティングタングステン-レニウム針:2,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティングタングステン-レニウム針と同様に調製した。ただし、上塗り組成物は2.75%Nusil(登録商標)MED 4162ヘプタン溶液であり、完全にコーティングされた針は、110℃で3時間硬化された。
【0123】
非バレルコーティングタングステン-レニウム針(対照):8,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aの非バレルコーティング針と同じ方法で調製した。
【0124】
バレルコーティング鋼針:8,000ロット、8ミルの鋼BV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティング鋼針と同じ方法で調製した。
【0125】
(試験)
試験A:バレルコーティングタングステン-レニウム針について目視試験を実施した。300本の針に対して、人間の目でシリコーン関連欠陥について目視走査した。22本の針が、シリコーン関連欠陥を有すると判定された。
【0126】
試験C:バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)、及びバレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)で、バレル抵抗力試験を実施した。各試験では、30本の針のバレルを、培地に個別に通過させる。最大力は、Chatillonゲージを使用して通過中に記録され、バレル抵抗性能の尺度として使用される。結果を以下の表8に示す。
【0127】
【0128】
表8に見られるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗力は、対照の非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。更に、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗性能は、バレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)の最大バレル抵抗力と同じであることが判明した。
【0129】
比較例3B
バレルコーティングタングステン-レニウム針:2,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティングタングステン-レニウム針と同様に調製した。ただし、上塗り組成物は2.5%Nusil(登録商標)MED 4162ヘプタン溶液であり、完全にコーティングされた針は、190℃で2時間硬化された。
【0130】
非バレルコーティングタングステン-レニウム針(対照):8,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aの非バレルコーティング針と同じ方法で調製した。
【0131】
バレルコーティング鋼針:8,000ロット、8ミルの鋼BV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティング鋼針と同じ方法で調製した。
【0132】
(試験)
試験A:バレルコーティングタングステン-レニウム針について目視試験を実施した。300本の針に対して、人間の目でシリコーン関連欠陥について目視走査した。34本の針が、シリコーン関連欠陥を有すると判定された。
【0133】
試験C:バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)、及びバレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)で、バレル抵抗力試験を実施した。各試験では、30本の針のバレルを、培地に個別に通過させる。最大力は、Chatillonゲージを使用して通過中に記録され、バレル抵抗性能の尺度として使用される。結果を以下の表9に示す。
【0134】
【0135】
表9に見られるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗力は、対照の非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。更に、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗性能は、バレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。
【0136】
比較例3C
バレルコーティングタングステン-レニウム針:2,000ロット、8ミルのタングステン-レニウムBV175-8針を、実施例1Aのバレルコーティングタングステン-レニウム針と同様に調製した。ただし、上塗り組成物は2.5%Nusil(登録商標)MED 4162ヘプタン溶液であり、完全にコーティングされた針は、130℃で2時間硬化された。
【0137】
非バレルコーティングタングステン-レニウム針(対照):8,000ロット、8ミルのBV175-8タングステン-レニウム針を、実施例1Aの非バレルコーティング針と同じ方法で調製した。
【0138】
バレルコーティング鋼針:8,000ロット、8ミルのBV175-8鋼針を、実施例1Aのバレルコーティング鋼針と同じ方法で調製した。
【0139】
(試験)
試験A:バレルコーティングタングステン-レニウム針について目視試験を実施した。300本の針に対して、人間の目でシリコーン関連欠陥について目視走査した。16本の針が、シリコーン関連欠陥を有すると判定された。
【0140】
試験C:バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)、非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)、及びバレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)で、バレル抵抗力試験を実施した。各試験では、30本の針のバレルを、培地に個別に通過させる。最大力は、Chatillonゲージを使用して通過中に記録され、バレル抵抗性能の尺度として使用される。結果を以下の表10に示す。
【0141】
【0142】
表10に見られるように、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗力は、対照の非バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C2)の最大バレル抵抗力よりも低いことが判明した。更に、バレルコーティングタングステン-レニウムBV175-8針(試験C1)の最大バレル抵抗性能は、バレルコーティング鋼BV175-8針(試験C3)の最大バレル抵抗力と同等であることが判明した。
【0143】
当業者には、上述の実施形態に基づいて本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明される内容により限定されるものではない。本明細書において引用されている全ての刊行物及び参照文献は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれている。参照によって全体又は一部が本明細書に組み込まれるとされる任意の特許、公開又は情報は、組み込まれる資料は、この文書に記載されている既存の定義、記述、又は他の開示資料と矛盾しない程度にのみ、本明細書に組み込まれる。したがって、本明細書に明確に示した開示内容は、本明細書に援用されるいかなる矛盾する文献にも優先するものとする。
【0144】
〔実施の態様〕
(1) 外科用縫合針をコーティングするためのシステムであって、
プライマーコート及びベースコートのうちの少なくとも一方を外科用縫合針ブランクの第1の部分に塗布するように構成されている第1のコーティングシステムと、
前記外科用縫合針ブランクの第2の部分内に縫合糸取り付け端部を形成し、それによって前記外科用縫合針を形成するように構成されているレーザ穿孔システムと、
トップコートを前記外科用縫合針に塗布するように構成されている第2のコーティングシステムであって、前記トップコートの塗布中に前記外科用縫合針を収容するように構成されたバスケットを含み、前記バスケットは、基部と、頂部と、前記基部から前記頂部までそれぞれ延在する第1及び第2の対の対向側壁と、を有し、それによって前記バスケットの全表面積を画定し、前記バスケットは、前記全表面積の50%~約95%である排液領域を有する、第2のコーティングシステムと、を備える、システム。
(2) 前記外科用縫合針から余剰なトップコートの少なくとも一部分を除去するように構成されている第1の乾燥システムを更に備え、前記乾燥システムは真空乾燥チャンバを含む、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記トップコートから溶媒の少なくとも一部分を除去するように構成されている第2の乾燥システムを更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記プライマーコート及び前記ベースコートのうちの少なくとも一方を少なくとも部分的に硬化するように構成されている硬化システムを更に備える、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記第1のコーティングシステムはスプレーコーティングシステムである、実施態様1に記載のシステム。
【0145】
(6) 前記基部は、前記外科用縫合針を前記バスケット内に保持し、かつ余剰なトップコートの少なくとも一部分が中を通過することを可能にするように構成されている多孔質基材を含む、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記頂部は、空気が中を通過することを可能にするように構成されている多孔質基材を含む、実施態様6に記載のシステム。
(8) 各側壁が、内面及び外面を有し、前記内面と前記外面との間に1つ以上の排液穴が延在しており、前記1つ以上の排液穴は、余剰なトップコートの少なくとも一部分が中を通過することを可能にするように構成され、前記1つ以上の排液穴は、前記頂部が前記内面と接触しているときに開いたままである、実施態様7に記載のシステム。
(9) 外科用縫合針をコーティングするための方法であって、
プライマーコートをタングステン-レニウム合金から形成された外科用縫合針ブランクの表面の一部分上にスプレーコーティングすることであって、前記外科用縫合針ブランクの前記一部分は組織貫通端部を有する、スプレーコーティングすることと、
前記プライマーコートとは異なるベースコートを前記外科用縫合針ブランクのプライマーコートされた前記表面上にスプレーコーティングすることと、
前記外科用縫合針ブランクをレーザ穿孔し、前記組織貫通端部の反対側に縫合糸取り付け端部を形成し、それによって前記外科用縫合針を形成することと、
前記ベースコートとは異なるトップコートを、前記ベースコート上及び前記縫合糸取り付け端部上に浸漬コーティングすることと、を含む、方法。
(10) 前記トップコートは組成物から形成され、前記組成物は、前記組成物の約1重量%~3重量%の濃度でシリコーンを含む、実施態様9に記載の方法。
【0146】
(11) 前記トップコートを真空乾燥させることを更に含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 真空乾燥後、約90℃~130℃の温度で前記トップコートから溶媒の少なくとも一部分を除去することを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記トップコートを浸漬コーティングすることが、前記外科用縫合針をバスケット内に配置することと、前記バスケットを上塗り溶液中に配置することと、を含み、前記バスケットは、前記バスケットの全表面積の50%~約95%である排液領域を有する、実施態様9に記載の方法。
(14) 前記バスケットが、基部と、頂部と、前記基部から前記頂部までそれぞれ延在する第1及び第2の対の対向側壁とを有し、前記基部及び前記頂部がそれぞれ、多孔質基材を含み、前記側壁がそれぞれ、1つ以上の排液穴を含む、実施態様13に記載の方法。