(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】プラスチック材料粉末からの積層造形によって得られる部品を後処理する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/379 20170101AFI20230327BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20230327BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20230327BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20230327BHJP
B29C 64/357 20170101ALI20230327BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20230327BHJP
B29C 71/04 20060101ALI20230327BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230327BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20230327BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230327BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230327BHJP
【FI】
B29C64/379
B29C64/153
B29C64/314
B29C64/35
B29C64/357
B29C64/393
B29C71/04
B33Y10/00
B33Y40/20
B33Y50/02
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2020538953
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 FR2019050037
(87)【国際公開番号】W WO2019138183
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-10-20
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506273087
【氏名又は名称】シャネル パルファン ボーテ
【氏名又は名称原語表記】CHANEL PARFUMS BEAUTE
【住所又は居所原語表記】135,avenue Charles de Gaulle,F-92200 Neuilly sur Seine,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サルシアリニ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトゥッキ,カンタン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-285202(JP,A)
【文献】国際公開第2011/145960(WO,A1)
【文献】特表2006-517856(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0182510(US,A1)
【文献】特開2017-101656(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105728723(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0211029(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
71/00-71/04
B33Y 10/00-99/00
B22F 1/00-12/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品から分離された粒子、又は部分的に焼結された粒子を除去するための、プラスチック材料の粉末の焼結による積層造形によって得られた前記部品の後処理方法であって、前記方法が、
- ストリッピング(S1)、及び
- イオン化ブロー(S2)、
の連続ステップを含む方法。
【請求項2】
前記ストリッピングステップが、前記部品をサンドブラストするステップ(S1’)を含む、請求項1に記載の後処理方法。
【請求項3】
前記サンドブラストが、45~90ミクロンの間の直径のガラス微小球を利用する、請求項2に記載の後処理方法。
【請求項4】
前記ストリッピングステップ(S1)の前にプリブローステップを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の後処理方法。
【請求項5】
洗浄の最終ステップ(S3)をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の後処理方法。
【請求項6】
前記洗浄ステップ(S3)が、非水性溶媒中での前記部品の洗浄を含む、請求項5に記載の後処理方法。
【請求項7】
前記ストリッピング(S1)及びイオン化ブロー(S2)のステップが、300個~10000個の部品のバッチで実行される、請求項1~6のいずれか一項に記載の後処理方法。
【請求項8】
プラスチック材料の粉末を焼結することによる積層造形のステップ(E1)と、これに続く粉末除去のステップ(E2)及び請求項1~7のいずれか一項に記載の後処理方法(E3)とを含む、前記プラスチック材料から部品を製造する方法。
【請求項9】
前記プラスチック材料がポリアミ
ドである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記プラスチック材料がポリアミド11である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記積層造形ステップ(E1)の前に、前記
プラスチック材料の粉末を処理するステップ(E0)を含み、前記処理ステップが、
- 最大寸法が150ミクロン以下の粒状物のみを有する新しい粉末を提供するステップと、
- 前記積層造形ステップに既に供しているいわゆる使用済み粉末を提供し、前記最大寸法が150ミクロン以下の粒状物のみを有するようにするために、前記使用済み粉末を較正する、ステップと、
- 70/30~50/50の
間の新しい粉末/使用済み粉末比で、前記新しい粉末と前記較正した使用済み粉末とを混合するステップと、
を含む、請求項8
~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項8~10のいずれか一項に記載の製造方法を含む、部品を生産する方法であって、所定の数の部品のバッチで、所定の寸法よりも大きい最大寸法の分離された又は部分的に焼結された残留粒子の数を判断することと、前記粒子の数がゼロではない場合に、後処理ステップの少なくとも1つのパラメータを修正することとを含む認定ステップ(S4)、次いで所定の寸法よりも大きい最大寸法の粒子の前記数がゼロになるまでこのような製造方法及び認定ステップの連続をさらに含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形によって化粧品アプリケータなどのプラスチック材料の小さいサイズの部品を得るための、工業的方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
液体、流体、又は粉末形態にある化粧品の塗布は、一般に、絵筆の毛のように化粧品を保持することを可能にする毛又は歯を含むアプリケータを使用して、実行される。本文書では、化粧品は、具体的にはたとえば皮膚、唇、又は表面付属器のためのすべてのメークアップ製品を包含する。化粧品はまた、皮膚、唇、及び表面付属器への塗布のために提供されるケア製品、具体的には液体ケア剤も包含する。
【0003】
本発明は潜在的に、積層造形によって得られるあらゆるプラスチック部品に関し、さらに積層造形される分離粒子、又は部品の使用時に分離しやすい分離粒子が存在しないことを保証するのに有利であるが、本発明は、目の付近、具体的にはまつ毛又はまぶたに塗布するために提供される化粧品のアプリケータの面を、特に対象とする。たとえば、化粧品は、マスカラ、アイシャドウ、又は一般に「アイライナー」と呼ばれる目の輪郭のメークアップであり得る。
【0004】
マスカラのアイテム、又は「マスカラ」は従来、ケース、マスカラリザーバ及びアプリケータを含む。「ボトルブラシ」タイプのもの、射出成形されたもの及び積層造形(additive manufacturing、「additive manufacture」と呼ばれることもある)によって生産されるものなど、いくつかのタイプのアプリケータが存在する。積層造形は、通常「三次元印刷」又は「3D印刷」の表現でも呼ばれる、物質の付加又は凝集による製造方法を指す。
【0005】
ボトルブラシタイプのアプリケータは、アプリケータのコアを形成する撚られた金属線に固定された繊維によって形成された毛を有するブラシを含む。
【0006】
射出成形されたアプリケータは、一般に、一体に形成され、たとえばプラスチック材料の毛又は歯を含む。
【0007】
積層造形によって製造されたアプリケータもまた一般的に一体であり、たとえば熱可塑性ポリマーの粉末から形成され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
積層造形によって部品を得る従来の方法は、非常に正確な寸法特徴を有する部品を得ることを可能にする。それにもかかわらず、これらのアプリケータは、塗布が実行されるときに分離する又は分離しやすい粒子を有する可能性がある。これは、塗布の質を変え、特に目の付近、たとえばまぶたへの化粧品の塗布において問題があると判明する可能性がある。具体的には、特定のサイズを有する粒子が角膜を刺激する可能性がある。
【0009】
化粧品の分野に加えて、プラスチック材料の部品の積層造形による生産は、多くの技術分野、具体的には医療分野又は精密機械の分野で開発されており、そこでは、積層造形によって得られた部品に残留し又はそこから分離しやすい粒子が存在しないことを保証することが有利又は重要となっている。
【0010】
本発明は、前述の問題のうちの少なくとも1つを解決する、積層造形によって得られるプラスチック部品の後処理方法を提供することを目的とする。本発明による後処理は、やはり本発明が関連する積層造形による製造方法の文脈内にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、前記部品から分離する、又は部分的に焼結した粒子を除去するための、プラスチック材料の粉末の焼結による積層造形によって得られた前記部品の後処理方法に関し、方法は、
- ストリッピング、及び
- イオン化ブロー、
の連続ステップを含む。
【0012】
本発明の方法で実施される一連のステップは、積層造形によって得られる製品内の粒子の除去を可能にする。具体的には、ストリッピング、つまり生産された部品からの残留物、汚れ及び望ましくない物質の剥離又は除去、これに続くイオン化ブローにより、部品の使用時に分離する、又は分離しやすい粒子が存在しないことを保証することができる。
【0013】
粒子は、具体的には、
- 部品の隙間又はこれに含まれる毛(たとえば積層造形によって得られたブラシの場合)に詰まったままの、製造に利用される物質の粉末の粒状物と、
- 積層造形中に不完全に焼結された粉末の粒状物と、
- 方法がサンドブラストステップを含むとき、サンドブラストからの残留物、
を含み得る。
【0014】
粒子の除去は、多くの技術分野、特に医療、食品、又は化粧品の分野で、重要な問題である。特に、本出願人は、化粧品の分野において、目の付近で使用されるアプリケータ(たとえばマスカラブラシ)に粒子がないこと、特に角膜を刺激するような、500ミクロンを超える大きいサイズの粒子が完全に存在しないことが重要であることに気づいた。
【0015】
方法は、各ステップで利用されるパラメータにしたがって、最終製品から望ましくないサイズの粒子を除去できるようにする。
【0016】
ストリッピングステップは、前記部品をサンドブラストするステップを含み得る(又はこれにより構成され得る)。サンドブラストは、たとえば、45~90ミクロンの間に含まれる直径のガラス微小球を利用し得る。
【0017】
後処理方法は、サンドブラストステップの前にプリブローのステップを含み得る。
【0018】
後処理方法は、洗浄の最終ステップをさらに含み得る。洗浄ステップ(S3)は、非水性溶媒中での部品の洗浄を含み得る。
【0019】
たとえば、サンドブラスト及びイオン化ブローのステップは、300個~10000個の部品のバッチで実行され得る。
【0020】
本発明はまた、プラスチック材料の粉末を焼結することによる積層造形のステップと、これに続く粉末除去のステップ及び先に定義された後処理方法とを含む、プラスチック材料の部品を製造する方法にも関する。
【0021】
利用されるプラスチック材料は、ポリアミド、好ましくは脂肪族ポリアミド、たとえばポリアミド11であってもよい。
【0022】
製造方法は、ポリアミド粉末を処理するステップであって、
- 最大寸法が150ミクロン以下の粒状物のみを有する新しい粉末を提供するステップと、
- 積層造形ステップに既に供している、いわゆる使用済み粉末を提供し、最大寸法が150ミクロン以下の粒状物のみを有するようにするために、前記使用済み粉末を較正するステップと、
- 70/30~50/50の間、好ましくは60/40程度の新しい粉末/使用済み粉末比で新しい粉末と較正した使用済み粉末とを混合するステップと、
を含むステップを、積層造形ステップの前に備えてもよい。
【0023】
最後に、本発明は、先に定義された製造方法を含み、所定の数の部品のバッチで、所定の寸法よりも大きい最大寸法を有する、分離又は部分的に焼結された残留粒子の数を判断することと、前記粒子の数がゼロではない場合に、後処理ステップの少なくとも1つのパラメータを修正することとを含む認定ステップ、次いで所定の寸法よりも大きい最大寸法の粒子の前記数がゼロになるまでこのような製造方法及び認定ステップの連続をさらに含む、部品を生産する方法に関する。
【0024】
本発明のさらに別の特徴及び利点は、以下の説明で明らかになるだろう。
【0025】
添付図面において、非限定例として与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の態様による積層造形によって得られた部品の後処理方法を表すブロック図である。
【
図2】
図1の方法の第1の変形例を表すブロック図である。
【
図3】
図1の方法のステップ及び任意選択的なステップを含む、本発明の一実施形態による後処理方法を表すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の態様による後処理方法を含む、本発明の第2の態様による部品を製造する方法を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示される方法は、一実施形態によれば、積層造形によって、すなわちプラスチック材料を焼結することによって得られた部品を後処理する方法のステップを有する。
【0028】
方法は、ストリッピングステップ(S1)、及びイオン化ブローステップ(S2)を含む。方法は、部品、又は部品のセット(バッチ)に適用可能である。産業の文脈で特に有利なように、いくつかの部品の処理について以下に説明する。
【0029】
ストリッピング(S1)
積層造形によって得られた部品を後処理する方法は、ストリッピングステップS1で始まる。
図4を参照して詳述されるように、部品はプラスチック材料、たとえばPA11タイプのポリアミドの粉末を焼結することによる積層造形で得られる。製造後、部品は粉末から取り出され、やはり
図4を参照して詳述される粉末除去作業に供したとしてもよいが、これらは使用時に分離する、又は分離しやすい粒子を有していたとしてもよい。方法は、最終製品、つまり最終部品において、特定の範囲内の寸法の粒子が存在しないことを保証することを目的とする。
【0030】
ストリッピングは、分離又は部分的に焼結した粉末又は何らかの不純物の粒状物など、そこにある望ましくない物質を除去するように、部品の表面に機械的作用を適用することからなる。
【0031】
ストリッピングは、部品の表面に流体又は粒子状物質を噴射することによって実現され得る。この噴射は、回転バレル又はドラム内で実行され得る。たとえば、ストリッピングステップは、(
図2の方法のような)サンドブラストに対応し得る。
【0032】
マスカラアプリケータなど、小さいサイズの部品のストリッピングの場合、ストリッピングステップは、たとえば300個~10000個の部品、特に3000個~4000個の部品のバッチで実行され得る。
【0033】
イオン化ブロー(S2)
方法は、ストリッピングステップS1の後に、イオン化ブローステップS2を含む。実際のところ、ストリッピングは、積層造形によって得られた部品の隙間又は毛に粒子を滞留させることがある。粒子は、主に前記部品を構成する材料の粒子、たとえばPA11の粒状物であるが、場合により(通常はストリッピングがサンドブラストを含む場合)、ストリッピングステップS1で利用する研磨剤の粒子でもあり得る。
【0034】
一般的な用語でのイオン化は、原子又は分子に電荷を除去又は追加することからなる。したがって、一般にイオナイザーと呼ばれるイオン化システムは、荷電原子であるイオンを生成する。イオナイザーは、様々な形態を取る。最もよくある形態は、バーの形態である。イオン化バーは、イオン化される媒体の近く、通常50mm未満に配置されなければならない。本出願人は、イオン化ブローステップの実施が積層造形によって得られた部品の後処理方法、特に化粧品アプリケータの後処理において特に重要であることを確認した。実際のところ、イオン化ブローによる清浄において、イオン化は、部品が担持する静電気の効果を排除することができる。ブローからの空気流は残留粒子を部品から分離させることができ、その表面で、粒子は静電気によってもはや保持されなくなる。こうして部品から分離した粒子は、イオン化ブローチャンバから吸い出される。
【0035】
イオン化ブローは、ストリッピングステップS1で使用されたのと同一のバレル又はドラム内で、又は場合によりストリッピングステップS1で使用されたのと同じドラム内で実行されてもよい。
【0036】
イオン化ブローステップS2では、装置は有利に2つのイオン化システム、たとえば2つのイオン化バーを含む。1つのバーはバレル(又は別のチャンバ)の内部に配置され、1つのバーは外部に設けられる。
【0037】
ブロー用の以下のパラメータは、特にマスカラブラシタイプの化粧品アプリケータの、又は同様の寸法の部品の後処理で、成功裏に利用され得る。イオン化ブローは、4バールの圧力下で実行されてもよい。イオン化ブローステップS5は、30~40分続いてもよい。
【0038】
イオン化ブローステップS5は、たとえば300個~10000個、特に3000個~4000個の化粧品アプリケータなどの部品のバッチで実行されてもよい。
【0039】
当然ながら、近いパラメータも成功裏に利用され得る。たとえば、非限定的に、ブロー圧力は3~5バールであってもよく、ブロー持続時間は著しく減少してもよく、たとえば15分程度又はそれ以下であってもよい。
【0040】
たとえば化粧品アプリケータといった部品に対する、ストリッピング及びイオン化ブローの一連のステップに加えて、望ましくない寸法の粒子が部品から取り除かれることは確実である。パラメータは特に、化粧品アプリケータ上の150ミクロンを超える実質的にすべての粒子の除去、及び500ミクロンを超える粒子全体の除去を、可能にする。
【0041】
図2は、
図1の方法と同一の方法を表しており、ストリッピングステップS1はサンドブラストステップS1’である。
【0042】
サンドブラスト(S1’)
サンドブラストは、表面を清浄するための既知の技術であり、表面を清浄するために、圧縮ガス(通常は空気)を使用して、清浄すべき表面上にノズルによって高速で噴射される研磨剤を使用する。
【0043】
それにもかかわらず、プラスチック材料の粉末を焼結することによる積層造形を使用して作られた部品のサンドブラストは、最適化されたパラメータの実装を必要とする。たとえば、化粧品アプリケータでは、パラメータは、アプリケータのサイズが小さく、非常に細かい部材(すなわちアプリケータの毛)を破壊せずにサンドブラストする必要があり、大量の部品(たとえば300個~10000個の部品)を同時にサンドブラストする利点があり、及びアプリケータの使用時に分離しやすいすべての粒子をサンドブラストすることによって部品から分離する重要性があることにより、パラメータが設定される。
【0044】
サンドブラストステップS1’は、特に粉末の部分的に焼結された粒状物を除去できるようにする。サンドブラストは、45~90ミクロンの直径を有するガラス球を噴射する、少なくとも1つのノズルを含むサンドブラスターで実行される。サンドブラストはまた、部品上で所望の表面状態を得ることも可能にする。たとえばバイカーボネート、又は圧縮された果実の種など、他の研磨媒体も想定され得る。
【0045】
研磨剤粒子の性質及びサイズに加えて、サンドブラスト機のタイプ、射出圧力、バレルの表面に対するノズルの距離は、所望の結果を得るために重要なパラメータである。
【0046】
大量バッチの部品(たとえば3000個~4000個程度の部品)の処理では、以下のパラメータが成功裏に決定された。サンドブラストは、回転バレルを有するサンドブラスターで実行される。選択されたバレルは500mmの直径を有する。バレルは、部品の攪拌を保証するために、毎分3回転で回転する。サンドブラストは、35~45分、たとえば40分続いてもよい。球体は、2.5バールの空気圧で射出される。
【0047】
当業者は当然ながら、本発明が、例示として与えられたこれら前述のパラメータに限定されないことを理解するだろう。
【0048】
攪拌は、バレル内に横方向に吹き込む、及び/又はバレルの表面に対して部品を持ち上げる、第2のノズルの使用によって改善され得る。
【0049】
図3は、本発明の一実施形態による、任意選択的なステップを含む後処理方法を表す。具体的には、方法は、ストリッピングステップの前にプリブローステップ(S0)を含む。方法は、イオン化ブローのステップ(S2)に続く洗浄/清浄のステップ(S3)を含む。
【0050】
さらに、
図3の方法は、後処理方法の他に、認定の最終ステップ(S4)を有する。
【0051】
プリブロー(S0)
プリブローのステップS0は、部品のストリッピングの前に部品上で実行される。このステップは、部品のストリッピングに取り組む前に、部品から容易に分離可能な粒子が除去されることを保証できるようにする。したがって、プリブローのステップは、積層造形によって得られた部品を圧力下で空気流に曝すことによって、粒子を最大限除去することを目的とする。
【0052】
プリブローステップは、ストリッピングステップS1で使用される機械のバレル内で有利に実行され得る。プリブローは、2.5バールで空気を吹き出す2つのノズルを用いて、5~10分間、たとえば7分間実行され得る。
【0053】
洗浄/清浄(S3)
補足的な清浄は、洗浄/清浄と呼ばれるステップS3で実行され得る。
【0054】
清浄とは、積層造形によって得られた部品の表面から、又はこれらの部品の毛又は隙間からの粒状物、粒子、又はその他の残留物質を除去することを可能にするあらゆるタイプの作業を意味する。洗浄は、水性であるか否かにかかわらず、洗浄製品を実施するタイプの清浄に対応する。
【0055】
適切な溶液中での洗浄が実行される。洗浄は、還流による洗浄の原理に基づいて実行され得る。
【0056】
利用される洗浄装置はいくつかのセクション、たとえば
・ボイラーと呼ばれる洗浄タンク、
・すすぎタンク、
・蒸発ゾーン、
・乾燥ゾーン、及び
・4℃で洗浄製品を収集及びリサイクルできるようにする凝縮コイル
を含み得る。
【0057】
洗浄タンクは、メッシュを含む回転バスケット、及び/又は浸漬ジェットを含み得る。
【0058】
洗浄及び/又はすすぎタンク内で、部品は超音波に曝されてもよい。使用される超音波は、25kHz~45kHzの間の周波数を有し得る。
【0059】
洗浄は特に、イソプロピルアルコールの50%溶液中で、又は好ましくはフルオロケトン溶液中で実行され得る。
【0060】
この化学溶液は、部品、特に化粧品アプリケータの機械的特性を変化させずに、残留サンドブラスト球の除去、及びより一般的には80ミクロン未満の寸法の粒子の除去において優れたレベルの効果を有する。
【0061】
付加的又は代替的に、微振動及び/又はブローの下で部品を選別するための、部品の選別が想定され得る。これはまた乾燥した環境で実行されるという利点も有する。
【0062】
認定(S4)
認定ステップS4は、後処理手順の最後に得られた最終部品が特定の認定基準を満たすことを保証できるようにし得る。
【0063】
具体的には、認定ステップは、完成品における潜在的に刺激性の粒子が存在しないことを保証することを可能にできる。
【0064】
認定ステップは、生産中に定期的に、規則的又は不規則な間隔で、又はより好ましくは各バッチにおける特定の数の部品をランダムサンプリングすることによって、実行され得る。バッチはたとえば10000個~100000個の部品のグループで構成されてもよく、又は8個~100個の部品が各バッチからサンプリングされてもよい。
【0065】
認定ステップでは、サンプリングされた部品のいずれも、最大寸法が500ミクロンより大きい、使用時に分離する、又は分離しやすい粒子を含まないことが確認できる。
【0066】
より小さい寸法の、使用時に分離する、又は分離しやすい粒子の数もまた確認され得る。たとえば、最大寸法が150ミクロン~500ミクロンの間の粒子の数を確認することができる。たとえば、認定ステップにより、所与の数量のアプリケータに対して所定の最大数のこのような粒子(消費者にとって重要ではない)を存在させることができるだろう(たとえば、10000個~100000個の部品のバッチにおける32個のアプリケータのサンプルで7粒子、又は500000個を越える部品のグループにおける50個の部品のサンプルで10粒子)。認定ステップで準拠しないことが検出された場合、関連するバッチは拒絶又は破棄され得る。方法を確認する措置、及び/又は製造パラメータを補正する措置が取られてもよい。
【0067】
図3に示される方法では、ストリッピングステップS1は特に、サンドブラストステップS1’を含み得る。
【0068】
上記のプリブローS0及び洗浄/清浄S3の任意選択的なステップは、別のステップを実行するための最適なパラメータを変化させ得るが、これらは
図1又は
図2による方法のうちの1つに互いに独立して組み込まれてもよい。認定ステップS4は、
図1、
図2、又は
図3による方法のうちのいずれか1つに組み込まれてもよく、若しくは特定の部品を取得するモード又は部品が受ける後処理に関係なく、特定の部品を認定するために行われてもよい。
【0069】
図4は、本発明の第2の態様による部品を製造する方法を表す。この方法は、積層造形ステップE1と、これに続いて部品を粉末除去するステップE2と、これに続いてたとえば
図1から
図4のうちの1つを参照して説明されたような、本発明による後処理に対応する後処理方法E3とを含む。粉末を処理する先行ステップE0は、任意選択的に提供されてもよい。
【0070】
積層造形(E1)
積層造形ステップS1は、粉末、特にプラスチック材料の粉末を焼結することによって実行される。利用される積層造形法は、有利には、「選択的レーザー焼結」とも呼ばれる粉末床溶融結合、粉末結合の方法である。
【0071】
粉末床溶融結合法は、閉鎖チャンバ内において、粉末床の表面で1層ずつ粉末の粒子を選択的に溶融するために、1種以上のレーザーを使用して粉末形態の物質から物体を生産することからなる。使用される粉末のタイプは、このような方法で使用できるいずれのタイプの粉末であってもよい。
【0072】
利用される粉末は、具体的には熱可塑性ポリマーの粉末、又はポリアミドの、好ましくは脂肪族ポリアミド、たとえばPA11とも呼ばれるポリアミド11、又はポリアクリルアミドの粉末であってもよい。
【0073】
ポリアミド12又はPA12もまた成功裏に利用され得るが、PA11の方が順応性があるため、特定の用途、特に化粧品アプリケータの製造にはPA11が好ましい。特に適切なPA11粉末の例は、EOS Materials社によって「PA1101」の問い合わせ番号で商品化された粉末である。
【0074】
好ましくは、特に化粧品アプリケータの製造では、粉末は、最大寸法が150ミクロン以下の粒状物を有する。好ましくは、最大寸法は80ミクロン以下、又はさらに好ましくは60ミクロン以下である。
【0075】
積層造形ステップに利用される機械は、EOS Materials社によってFORMIGA P110の名称で商品化された機械、又はいずれかの同等の機械であり得る。
【0076】
製造ステップにおいて、最初に積層造形機に粉末が投入される。
【0077】
たとえば、製造は、約10kgの粉末(通常はPA11の場合)を含むタンク内で実行され得る。製造は、いくつかのレベル、たとえば2~10の間のレベル、特に10を超えるレベルにわたって実行されてもよい。
【0078】
次に、レーザー焼結による未処理部品の形成が始まる。例として与えられる一実施形態によれば、タンク内の粉末は、およそ150℃に維持される。1種又は複数種のレーザーは次に、粉末の局所的な溶融に必要な追加エネルギーを与える。たとえば、25Wのレーザーが成功裏に利用され得る。
【0079】
レーザーの数回の通過が必要となり得る。
【0080】
3千個~4千個の(マスカラブラシのサイズの)部品のバッチの積層造形による形成は、これらの条件下でおよそ15時間かかり得る。未処理部品を形成するこのフェーズの最後に、グループを冷却しなければならない。上で挙げられた例では、冷却は、15時間程度続いてもよい。したがって、積層造形ステップの合計時間は、30時間程度であり得る。
【0081】
酸化を回避するために、冷却は、中性ガス下、たとえばアルゴン下で有利に実行される。
【0082】
サイクルタイム、より簡単には未処理部品の形成のための積層造形機の使用時間を最適化するために、冷却は、タンクの中身の中性ガス下に(具体的にはアルゴン下に)配置して、機械の外部で実行してもよい。
【0083】
積層造形のステップE1は、生産する部品を幾何学的に表すデジタルファイルを使用する機械で実行される。ファイルは、生産する部品をコンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアアプリケーション上で設計した後に取得される。このファイルは、STL形式、又は粉末床溶融結合による積層造形に使用され得るその他いずれかの標準ファイル形式であり得る。次にファイルは、積層造形に使用される機械の製造元によって供給されたソフトウェアアプリケーションによって処理される。このソフトウェアは、たとえばSU又はBFF形式のデジタル画像(たとえば100の画像)の形態のセクションにファイルを切断し、その各々が印刷するモデルの層、つまり所与の軸に対して垂直な平面で取られた生産する部品の断面に対応する。次に、これらのデータは、部品を生産するために積層造形機に送信される。
【0084】
したがって、積層造形のステップは、粉末中に埋め込まれ、粉末が詰まった未処理部品を形成することになる。
【0085】
粉末除去(E2)
積層造形のステップE1の後に、粉末除去のステップE2が続く。このステップは、粉末から未処理部品を分離できるようにする。
【0086】
回収された粉末は、粉末を処理するステップE0において下記で説明されるように、再利用されてもよい。このために、回収された粉末は、最大寸法が所与のサイズ(たとえば150ミクロン、80ミクロン、又は60ミクロン)以下である粒状物のみを保持するための分類方法を受けてもよい。
【0087】
粉末除去ステップは、未処理部品が埋め込まれた粉末から未処理部品を分離すること、及び未処理部品が(たとえば未処理部品の隅、化粧品アプリケータなどの未処理部品の毛に)担持する粉末を最大限除去することからなる。このステップは、手動で実行され得る。手動とは、オペレータが個別に又はグループごとに未処理部品を把持し、攪拌、ブロー及び/又はブラッシングによってそこから粉末を除去しなければならないことを意味する。
【0088】
粉末除去ステップは自動的に実行されてもよく、これは、部品の生産、特に化粧品アプリケータなどの複雑な形状の小さい部品を、工業的規模で製造するのに有利である。
【0089】
好ましくは、この作業は、工業的規模、たとえば毎週200000個を超える部品の生産を保証するために、粉末除去キャビン内で実行される。
【0090】
それでもなお、手動粉末除去、及び自動粉末除去はなおのこと、部品上に残留粉末を残す可能性がある。
【0091】
しかしながら、様々な技術分野の多くの用途では、残留粉末が存在しないことが必須である。たとえば、特に目の付近への化粧品の塗布のための、化粧品のアプリケータの生産に関して、本出願人は、こうして粉末から得られた未処理の化粧品用の未処理アプリケータを分離する必要があるだけでなく、(たとえばその毛に保持された)アプリケータから分離した、又は使用時に分離しやすい、並びに最大寸法が所与のサイズを超える、眼の刺激を生じやすい粒状物が完全に存在しないことを保証することが重要であることも、見いだした。
図1から
図4を参照して説明された後処理は、これらの粒状物を完全に除去することを目的とする。通常、後処理は、500ミクロンより大きいすべての粒子を除去することを目的とする。実際のところ、粉末の初期粒状物の寸法より大きい寸法の粒子は、たとえば特定の粒状物の不完全な焼結の場合、積層造形のときに生成される可能性がある。
【0092】
後処理(E3)
製造方法のこの段階で、本発明による後処理方法E3、たとえば
図1から
図4のうちの1つを参照して説明されたような方法が適用される。後処理に加えて、得られた最終製品は、分離する又は分離しやすい残留粒子がないか、又はほとんどない。
【0093】
粉末の処理(E0)
所望の最終表面状態を得るために、たとえばPA11又はPA12といった、積層造形ステップE1で利用される粉末が、最初に適切な特性を有することが重要である。これは、積層造形のステップE1の前に、粉末を処理するステップE0の目的である。
【0094】
最も重要であると考えられる特性は、利用する粉末の粒径である。
【0095】
典型的には、本出願人は、最終部品の欠陥を回避するために、微細で均質な粉末を利用することの重要性を見いだした。
【0096】
小さい部品、特に毛を含む部品、たとえば化粧品アプリケータの生産では、利用する粉末は、最大寸法が150ミクロン未満の粒状物のみを有利に有する必要がある。有利には、粒状物の最大寸法が80ミクロン又は60ミクロン未満の、さらに細かい粉末が利用されてもよい。
【0097】
所望の特性、特に粒径は、これらの特性を有する市販の粉末を選択することによって保証され得る。それにもかかわらず、コストという明らかな理由のため、使用済みと呼ばれる粉末、つまり積層造形のステップE1で既に利用された粉末を再利用できることは有利である。具体的には、粉末除去ステップE2で回収された粉末の特定の一部が、次のサイクル(又はバッチ)で再利用され得る。
【0098】
使用済み粉末は、製造された未処理部品と連接していなくても、新しい粉末と比較して、積層造形のときに変化している可能性がある。粉末の粒状物は、熱によって変形したり、結合したり、又は部分的に焼結している可能性がある。
【0099】
最終製品の特性を損なわずに使用済み粉末を再利用するために、回収された使用済み粉末は、適切な分類又は較正方法によって較正される。具体的には、使用済み粉末の選別を実行し得る。回収された粉末から、所望の最大寸法より大きい寸法を有する粒状物を分離するために、いくつかのタイプの選別を想定し得る。超音波による、微振動による、及び/又はブローによる選別を使用することが、特に可能である。
【0100】
粒状物の最大寸法の望ましい最大寸法は、たとえば150ミクロン、又は80ミクロン、又は60ミクロンであってもよい。
【0101】
分類又は選別は、較正された使用済み粉末の回収を可能にし、これは先行するサイクルで生産されたものと類似の部品の積層造形に再利用するのに適している。
【0102】
したがって、粉末を処理するステップS0で、新しい粉末と較正された使用済み粉末との混合が実行される。使用済み粉末を最大限に再利用することが求められる。PA11を用いて、100/0~50/50の間、特に70/30~50/50の間、たとえば60/40程度の新しい粉末/使用済み粉末比で、満足な結果が得られた。
【0103】
したがって、本発明は、プラスチック材料の粉末を焼結することによる積層造形によって得られる1つ以上の部品の後処理の方法を提供する。部品のストリッピング及びイオン化ブローの作業を連続させるこの後処理は、これらのステップの各々における適切なパラメータの選択により、たとえこれらの粒子が隙間又は部品が含む毛に滞留していても、使用時に分離する、又は分離しやすい粒子を除去できるようにする。
【0104】
本発明は、部品上に粒子が存在しないことが重要な様々な技術分野において、多くのタイプのプラスチック部品に適用することができる。本発明の好適な用途の1つは、化粧品アプリケータ、特にマスカラブラシなど、目の付近への化粧品の塗布のために構成されたアプリケータの、後処理である。
【0105】
方法は、所与の寸法(たとえば500ミクロン)より大きい寸法の粒子が存在しないことを保証する。
【0106】
方法はまた、特定の範囲内の寸法(たとえば、150ミクロン~500ミクロンの間)の最大数の粒子を保証することも可能にする。
【0107】
本発明はまた、積層造形を通じて、少なくとも望ましくない粒子の寸法の範囲の粒子がないか、又は実質的にない部品を得るために、このような後処理方法を実施する製造方法にも関する。