(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】固体電極及びセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/333 20060101AFI20230327BHJP
G01N 27/403 20060101ALI20230327BHJP
G01N 27/48 20060101ALI20230327BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
G01N27/333 331A
G01N27/333 331C
G01N27/333 331M
G01N27/403 371H
G01N27/48 Z
G01N27/416 353F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021019085
(22)【出願日】2021-02-09
(62)【分割の表示】P 2019143950の分割
【原出願日】2015-06-11
【審査請求日】2021-02-10
(32)【優先日】2014-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513307933
【氏名又は名称】パーカー-ハネフィン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PARKER-HANNIFIN CORPORATION
【住所又は居所原語表記】6035 Parkland Blvd. Cleveland, OH 44124 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック ケー.リー
(72)【発明者】
【氏名】ボアズ ビロズニー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ アンドリュー
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537627(JP,A)
【文献】国際公開第2013/112767(WO,A1)
【文献】特表2012-522223(JP,A)
【文献】国際公開第2010/111531(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0132544(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/30
G01N 27/333
G01N 27/403
G01N 27/416
G01N 27/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示電極(IE)の基材の表面上に固定化された親水性の架橋されたゲルの形成における使用に好適な重合性モノマーを含む、分析物非感受性材料(AIM)であって、前記AIMの前記重合性モノマーが、フェロセン含有モノマーと、i)トリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート及びii)N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群から選択される、2つの炭素骨格単位からなる少なくとも1つの追加のモノマーと、を含む、分析物非感受性材料(AIM)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの追加のモノマー:フェロセン含有モノマーの化学量論比が、100:1~1000:1である、請求項1に記載のAIM。
【請求項3】
前記トリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート:フェロセン含有モノマー:N,N-ジメチルアクリルアミドの化学量論比が、
10:1:
90、
15:1:
85、
20:1:
80、
100:1:
900、
200:1:
800、及び
100:1:
0からなる群から選択される、請求項1に記載のAIM。
【請求項4】
指示電極(IE)と、
酸化還元活性分析物感受性材料(ASM
)を含む作用電極(WE)と、
参照電極(RE
)とを備える、分析物検知デバイスであって、
前記指示電極が、請求項1~3のいずれか1項に記載のAIMを含む親水性の架橋されたゲルで構成され、
該ゲルが、多孔質基材に非共有結合する、分析物検知デバイス。
【請求項5】
前記REが固体
の疑似参照電極(PRE
)である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記PREが、銀及び塩化銀の固形混合物(Ag/AgCl)又は塩化物化したAg表面である、請求
項5に記載のデバイス。
【請求項7】
請求項4、5又は6に記載のデバイスを使用して、電極電位を測定する方法であって、分析物濃度又はレベルと
、WE電位及びIE電位の間の差異と、の間の相関関係を確立する工程を含む、方法。
【請求項8】
前記相関関係を使用して、試料のpHを導出する、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化還元活性分析物非感受性材料(「AIM」)を利用する「指示電極」(「IE」)、及び酸化還元活性分析物感受性材料(「ASM」)を利用する作用電極(「WE」)を含む、pH測定を含む電気化学分析における使用のための固体電極、そして本発明の材料を作製及び使用するための方法、並びに電極、センサ、及びそれらを備えるデバイスを提供する。一実施形態では、AIMは、疑似参照電極(「PRE」)、及びWEとして機能するASMと併用されるIEに組み込まれる。IEは、PRE電位の変化によって起きるpH読み取り値(又は他の分析物測定)のドリフトを補正し、それにより、測定値の精度を改善し、他の種類の分析物センサに必要とされる較正プロセスの必要性を排除する。したがって、本発明は、特に化学及び電気化学の分野、並びに分析物測定、特にpH測定の分野、並びにかかる測定が行われる様々な分野の全てに関する。
【背景技術】
【0002】
AIM及び/又はASM電気化学に基づく電極及び分析物検知デバイスは、これまでに説明されている。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,857,167号、同第5,223,117号、同第7,901,555号、同第8,177,958号、同第8,197,650号、同第8,506,779号、同第8,562,797号、同第8,877,037号、同第8,956,519号、同第8,961,754号(特許文献1~10)を参照されたい。それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開第2010/026842号、同第2010/028726号、同第2011/045385号、同第2013/112767号、及び同第2013/134582、及び同第2014/106066号(特許文献11~16)も参照されたい。AIMフェロセンを利用する電極は、Lafitte et al.(2008),Electrochemistry Communications,10(12),1831~1834、Hickman et al.(1991),Science,252(5006),688~691、Robinson and Lawrence(2006),Electroanalysis,18(2006)677~683、及びRobinson and Lawrence(2008),Analytical Sciences 24.339~343(非特許文献1~3)に記載されている。フェロセンヒドロゲルは当該技術分野で既に説明されているが、これらの技法及び材料は、別個の検知要素からの信号を変換する目的での酸化還元メディエータとしての使用に限定されている。更に、これらの参照文献は、本明細書で考察するフェロセンヒドロゲルの物理的特性を教示又は企図していない。更に、本発明は、参照酸化還元信号を検出し報告するフェロセンヒドロゲルpH検知要素を提供する。
【0003】
「ボルタンメトリックセンサ」と呼ばれることがある、ASM/AIM及び方形波ボルタンメトリー(SWV)を利用する電気化学センサは、特にpH測定に対して「較正不要」検知(センサがエンドユーザによる較正を必要としないという意味)の機会を提供するとして歓迎されてきた。これらのセンサにおいては、WEによって生成されるpH感受性信号、及びIEによって生成されるpH非感受性信号が、SWV法を使用して所与の分析物によって同時に生成される。分析物がヒドロニウムイオンである場合(pH測定のため)、ASM WEは、ヒドロニウムイオン濃度の変化に応答して電位を変化させるが、pHメータにおけるIEのための理想のAIMは、pHの変化に関わらず一定の電位を生成する。これらの電位の両方が、
図1に示すように、参照電極(RE)電位に対して測定される。このように、ASM信号とAIM信号との間の差異をpH又は他の分析物と相関させることができ、この差異は、従来の参照電極(「CRE」)又はPREのいずれかであり得るREの絶対電位とは無関係であることが理想である。故に、ボルタンメトリックセンサについては、完全にREの安定性及び精度に依存する従来の電位差pHセンサよりも、REの変化が結果に与える影響は、はるかに少ない。実際に、ボルタンメトリックセンサには、より単純なPRE(例えば、固形Ag/AgCl組成物)を、CRE(参照溶液中に閉じ込められるAg/AgCl又は塩化第一水銀CREなど)の代わりに使用してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第4,857,167号
【文献】米国特許第5,223,117号
【文献】米国特許第7,901,555号
【文献】米国特許第8,177,958号
【文献】米国特許第8,197,650号
【文献】米国特許第8,506,779号
【文献】米国特許第8,562,797号
【文献】米国特許第8,877,037号
【文献】米国特許第8,956,519号
【文献】米国特許第8,961,754号
【文献】国際公開第2010/026842号
【文献】国際公開第2010/028726号
【文献】国際公開第2011/045385号
【文献】国際公開第2013/112767号
【文献】国際公開第2013/134582号
【文献】国際公開第2014/106066号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Lafitte et al.(2008),Electrochemistry Communications,10(12),1831~1834
【文献】Hickman et al.(1991),Science,252(5006),688~691、Robinson and Lawrence(2006),Electroanalysis,18(2006)677~683
【文献】Robinson and Lawrence(2008),Analytical Sciences 24.339~343
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、「較正不要」と称されるセンサのいずれも、実際にそうであることは証明されておらず、かつ/又は精度、信号強度、及び/若しくは耐久性における欠陥を呈するため、較正不要のセンサ技術は依然として必要とされている。例えば、フェロセン(Fc)を内部参照電極として使用するこれまでの自己較正センサは、経時的な安定性に乏しく、Fcは、限定されたpH範囲にかけてのみ十分にpH非感受性であった。何らかのpH感受性が、いずれの必要とされる較正の正確性をも減少させ、試験結果の信頼性を制限する。
【0007】
感受性の観点では、Fcに基づく先行技術におけるAIM電極(IE)は、典型的には、より弱く比較的ノイズの多いシグナルを呈する。加えて、先行技術のIE及びWEは、特に厳密な試験条件下では、比較的弱く、かつ/又は不安定な信号を生成する。故に、ASM系WE及びAIM系IEを使用して分析物を検知するための改善した材料及び方法が、依然として必要とされている。本発明はこの必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
WE及びIEを含むpHメータの新しく有用な構成要素、並びにこれまで先行技術の技術及びデバイスでは可能ではなかった多種多様な条件下でpHを測定するために使用し得る完全なセンサを提供することが、本発明の第1の目的である。好ましい実施形態では、本発明のpHセンサは、湿乾反転性であり、AIM系IEを備える、小さくてコンパクトな固体のセンサであり、ここでは、WEのASM及びIEのAIMが、炭素、ドープシリコン、修飾シリコン、若しくは導電性シリコン誘導体、又は導電性ポリマー材料などの導電基材に非共有結合した架橋されたヒドロゲルマトリックス中に組み込まれる。
【0009】
第1の態様では、本発明は、AIMとしての使用に好適な材料を提供する。一実施形態では、材料は、AIMを含む親水性の架橋されたゲルの形成における使用に好適な重合性モノマーの調製物である。別の実施形態では、材料は、AIMを含む親水性の架橋されたゲルである。別の実施形態では、材料は、AIMとして作用するASM上にコーティングされる固形緩衝剤を形成する重合性モノマーの調製物である。
【0010】
第2の態様では、本発明は、AIM又はASMを含む親水性の架橋されたヒドロゲルが非共有結合する多孔質の導電基材を備える電極を提供する。一実施形態では、電極は指示電極(IE)である。別の実施形態では、電極はWEである。別の実施形態では、電極は、pHメータの伝統的なガラスプローブに対する固体の代替物である。
【0011】
第3の態様では、本発明は、AIMを含む親水性の架橋されたヒドロゲルで構成されるIEと、ASMを含む作用電極(WE)と、REとを備え、前記ゲルが多孔質の導電基材に非共有結合する、分析物検知デバイスを提供する。一実施形態では、REは、銀及び塩化銀の固形混合物(Ag/AgCl)又は塩化物化した銀表面などの固体PREである。本デバイスの一実施形態では、WEのASMは、同様にヒドロゲルに共有結合するか、又はヒドロゲル内に安定して封入され、これが今度は導電基材に非共有結合して、WEを形成する。導電基材は、多孔質であってもよく、あるいはヒドロゲルマトリックスの結合を促進するように成形又は処理されてもよい。
【0012】
第4の態様では、本発明は、固体PREなどのREに対してASM含有WE及びAIM含有IEから電極電位を測定し、分析物濃度又はレベルと、WE電位及びIE電位の間の差異と、の間の相関関係を確立する方法を提供する。一実施形態では、相関関係を使用して、分析物試料のpHを導出する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、分析物センサを使用して分析物を測定するためのプロセスにおける改善に関し、この分析物センサは、第1のWEと、IEと、対電極(「CE」)と、CRE又はPREであってもよいREと、電極の第1の対と第2の対との間に方形波電位掃引を適用するための手段と、方形波ボルタモグラムにおける第1のピークと第2のピークとの間の相対的シフトを検出するための手段と、を含み、前記第1のWEが、酸化還元種の第1のセット(ASM)を含み、該酸化還元種の第1のセットが、該分析物に対して感受性である1つ以上の酸化還元種を含み;前記IEが、酸化還元種(AIM)の第2のセットを含み、該酸化還元種の第2のセットが、該分析物に非感受性である1つ以上の酸化還元種を含み;前記電極の第1の対が、第1のWE及びREを備え、前記電極の第2の対が、IE及びREを備え;前記第1のピークが、酸化還元種の第1のセットの酸化及び還元のうちの1つによって発生し、前記第2のピークが、酸化還元種の第2のセットの酸化及び還元のうちの1つによって発生し;
前記酸化還元活性種の第2のセットが、IEの表面に共有結合しない代わりに、共有的に、非共有的に、又はその両方で、IE表面に結合したポリマー材料中に封入される、IEの使用を含む改善がなされる。別の実施形態では、酸化還元活性種の第1のセットが、WEの表面に共有結合しない代わりに、共有的に、非共有的に、又はその両方で、WE表面に結合したポリマー材料中に封入される、WEの使用を含む改善がなされる。別の実施形態では、本発明は、改善したIEと改善したWEとの両方を備えるデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】未補正のボルタンメトリックセンサにおいて、任意のRE電位のドリフトが、どのように分析物感受性材料(ASM)を含む、さもなければ安定したWEの測定誤差をもたらすのかを概略的に示す(本図のAにおいて例解する)。この測定誤差を分析物濃度の変化と区別することはできない。分析物非感受性材料(AIM)が追加のIEとして使用される場合(本図のBにおいて例解する)、いずれの見掛けのドリフトもREに起因する必要がある。このため、IE電位のドリフトを使用して、作用電極における観察されたドリフト誤差を相殺することができる(本図のCにおいて例解する)。このように、WE電位とIE電位との差異はREの特性又は固有性の変化から効果的に切り離され、センサが分析物のより正確な測定を提供する。
【
図2】フェロセンメタノール(Fc-MeOH)が、pH1~pH10の緩衝溶液中で事実上同じ方形波ピーク電位を呈することを明示しているデータを示す。このデータを生成するために、1mMのFc-MeOHを含有する緩衝溶液及び100mMの塩化ナトリウムを含有する緩衝溶液を、それぞれ5回スキャンした。エラーバーは標準偏差を反映する。IEにおける使用のためのフェロセンヒドロゲルを提供することが本発明の目的である。
【
図3】本発明の校正不要な固体pHセンサのための構成要素を示し、これは実施例1でより具体的に説明する。ASMはWEに位置し、一方でAIMはIEに位置する。カーボンファイバー複合材料を両電極に対して基材として使用する。この実施形態における対電極(CE)は、WEを囲繞する金属(例えば、ステンレス鋼)リングである。全てのボルタンメトリック測定は、この実施例では疑似参照電極(PRE)に対して行う。
【
図4】実施例1に記載のように、本発明のAIMヒドロゲルを含むpHセンサに対するWE(即ち、ASM)のpHピーク対IE(AIM、例えばFc)のピークに与えるpH変化の影響を示す。
【
図5】実施例1に記載のように、本発明のWE-IE対に与えるREの変化の影響を示す。結果は、WE-IEの関係がCREとは無関係であることを明示する。
【
図6】実施例2に記載のように、全固体センサシステムにおけるWE-IE対の較正を示す。
【
図7】実施例3に記載のように、WE-IE対と従来のガラスpH電極とを比較した結果を示す。
【
図8】本発明のセンサ(デバイス)の様々な電極構成を示す。
【
図9】本発明のpHセンサを組み込む多層プレートを示す。
【
図10】本発明の代表的な実施形態に従うマイクロリットル試料を測定するために設計されたpHセンサの詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先行技術におけるAIM系指示電極及びASM系作用電極は、概して、限定された精度、不良な安定性、並びにAIM IEについては狭いpH非感受性範囲、及びASM WEについては狭いpH感受性を呈する。これらの先行技術の電極におけるAIM部分(例えば、フェロセン)は、典型的には共有結合によって、基材表面に直接結合する。AIM又はASMが基材表面に共有結合する電極については、達成可能なAIM又はASMの有効濃度は、反応/結合のためにアクセス可能な基材の2次元の表面積によって制限される。到達可能な官能基密度は、更に、通常は反応部位の密度を下回り、これは、低い信号レベル及び結果としての電極電位測定における不確実性をもたらす。
【0016】
更に、完全固体の湿乾反転性pHセンサを提供しようとするこれまでの試みは商業的製品には繋がらず、本発明に先立って、AIM/ASM固体技術に基づく固体pHメータは市販されていない。これまでの試みの失敗は、WEにて十分な信号強度を生成できないこと、使用又は保管中の急速すぎる信号劣化、十分に広範なpH範囲にかけての不十分な感受性、分析物試料又は他の使用条件に対する不十分な堅牢性に起因し得る。本発明は、ASM又はAIMが「ヒドロゲルポリマーマトリックス」又は「ヒドロゲル」と称される架橋された親水性のポリマーマトリックスに共有結合するか又はその中に安定して封入されるヒドロゲル材料をまず提供することによってこれらの制限を克服する、様々な材料、方法、電極、センサ、及びデバイスを提供する。
【0017】
ヒドロゲルポリマーマトリックス
本発明のIE及びWEでは、フェロセン誘導体であり得るか又はそれを含み得るAIM、及びアントラキノン誘導体であり得るか又はそれを含むASMは、導電基材に共有連結しないが、非共有結合によってそれに付着する、高度に膨潤した架橋された親水性ポリマーマトリックス(「ヒドロゲル」)に共有連結するか又はその中に物理的に封入される。3次元ヒドロゲル構造は、先行技術において達成されたものよりもはるかに高い濃度のAIM(又はASM)に対応する。ヒドロゲルの高い透水性は、試料の変化への迅速な応答を促進する、AIM(又はASM)と分析物濃度について試験される試料との間の急速な相互作用を確実にする。本発明のAIMヒドロゲル及びASMヒドロゲルはまた、良好な湿乾反転性を呈し、乾燥時に物理的一体性を保持し、再湿潤時に酸化還元活性を急速に復元する。本発明のpHセンサのpH非感受性の範囲は、典型的には、少なくともpH2~pH10を包含する。
【0018】
フェロセン(Fc)は、IEにおける使用に好適なAIMとして説明されてきたが、高濃度のフェロセンの固定化は、狭いpH範囲を出る小さいが顕著なpH感受性に繋がることが多い。結果として、AIMの分析物依存性特性は、部分的にしか実現しない。例えば、ポリビニルフェロセン(本質的に高い官能基密度を持つAIM)を基材上に物理的に固定化することは、低分解能の信号を発生させる。
【0019】
本発明は、ある特定のフェロセン誘導体のpH非感受性範囲が、固体よりも溶液において相当に広範であるという発見に一部起因した。例えば、フェロセンメタノール(Fc-MeOH、MW=216)は、
図2に示すように、pH1~10の緩衝溶液中で事実上同じ方形波ピーク電位を呈する。このように、本発明の1つの目的は、固体電極及びセンサの実施形態においてAIMの生来のpH非感受性、及びASMの生来のpH感受性を保存することである。
【0020】
本発明が提供する材料は、自由溶液中のAIMの環境を模倣する、分子レベルでのAIM動作環境を提供する。本発明の一般手法は、Fc誘導体を水和ポリマーマトリックス中に組み込むことである。結果として得られるポリマーが今度は導電基材上に配設されて、電極を形成する。好ましくは、Fc誘導体は、水によって高度に膨潤するが水溶性ではない架橋ポリマーマトリックスとして定義されるヒドロゲルに共有結合する。Fc及びFc誘導体を用いた本発明に従う使用のための典型的なヒドロゲルは、ポリマーの質量関数よりもかなり高い平衡含水率曲線を有する。これに対して、熱架橋又は化学的架橋によって不溶性となったポリビニルアルコール(本発明のWEの形成における使用に好適)などのポリマーは、ポリマーの質量関数に相当するか又はそれよりもかなり少ない水の質量関数を有する。これらは、より低いpH非感受性範囲が許容される場合を除いて、Fcのためのホストポリマーとしてはあまり好適でない。
【0021】
本発明については、好適なヒドロゲルは、多成分システムとして配合され、このシステムは、鎖間の空間に水を保持することができるポリマー鎖の3次元ネットワークを形成する1つ以上のコモノマーを含む。本発明のAIMを形成するために、一実施形態では、コモノマーのうちの少なくとも1つがビニルフェロセンなどの反応性Fc誘導体である。ビニルフェロセン(MW=212)は、Fc-MeOHの反応性類似体であるが、水に不溶性である。しかしながら、これを他の親水性ビニルコモノマー及び架橋剤と共に本発明に従って使用して、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、それらのポリエーテル誘導体、及び当該技術分野で周知の多数の他の物に基づいて、ヒドロゲルを形成することができる。ビニルフェロセンを少数成分として、他の親水性コモノマーを多数成分として配合することは、ビニルフェロセンを溶媒和し、ビニルフェロセンにそのpH非感受性を保存するのに好ましい水和環境を提供する役割を果たす。好ましい実施形態では、AIMヒドロゲルは、膨潤したゲル質量の80%が水であるように配合する。一部の実施形態では、AIMヒドロゲルは、膨潤したゲル質量の85~95%が水であるように配合する。
【0022】
AIM含有ヒドロゲルの組成物は、それが乾燥性であるか水和性であるかに関わらず、ポリマーマトリックスの観点から説明し得る。本発明は、AIM性能に影響するマトリックスの2つの特性を統合し、これらは、全ポリマー単位のパーセンテージとしてのAIM単位のモルパーセント(又はモル%)、及び全ポリマー単位のパーセンテージとしての架橋剤のモル%である。本発明については、モノマーは、ペンダント重合性基を持つ分子と見なされる。架橋剤は、2つの重合性基を有する分子である。AIMモル%と架橋剤モル%との両方は、重合反応が最後まで進み、全てのモノマーがポリマー鎖に組み込まれると仮定して、使用するモノマーの化学量論量によって決定する。
【0023】
本発明の一実施形態では、ポリマーマトリックス中のAIMのモル%は0.1~1に保たれる。架橋の程度は、全コモノマーを基準として、1~2モル%の架橋剤である。これらの可変の両方が電気化学性能に影響する。ヒドロゲル中のFc単位が十分に水和されていない場合、酸化還元特性は不溶性フェロセン材料のものにより類似する。これは、フェロセン含有量がマトリックスの0.5~1モル%超である場合、又は架橋密度が1.5~2モル%超である場合に生じ得る。フェロセン含有量が0.1~0.2モル%未満である場合、フェロセン密度は、強力な酸化還元信号を与えるのに十分ではないことになる。架橋密度が0.8~1モル%未満である場合、ヒドロゲルは、物理的一体性を欠き、基材から分離するか、又は徐々に解体することになる。
【0024】
一部の例では、ポリマーマトリックス中のAIMのモル%は0.1~1.5に保たれる。架橋の程度は、全コモノマーを基準として、1~2モル%の架橋剤である。結果として得られるヒドロゲルは、良好な構造的一体性、及び非共有結合を介した電極の表面との結合強度を呈する。一部の例では、この種の実施形態は、生化学、医薬品、及び食品処理業界における使用のためにセンサを滅菌することが求められ得るため、ガンマ線照射処理に耐える。
【0025】
他の実施形態では、フェロセンモノマーの親水性誘導体を使用することで、ポリマー鎖中1モル%超のフェロセンでの溶媒和が良好あるようにしてもよい。同様に、嵩高なFcモノマーを使用して、凝集を防止し、溶媒和を支援し得る。
【0026】
このため、一部の実施形態では、本発明が提供するIEを作製するための材料は、親水性ポリマーマトリックスに(又はかかるマトリックスの形成に使用され得るモノマーに)共有連結するAIMを含む。マトリックスが本明細書に記載のように架橋されると、これは「ヒドロゲル」と称される。このため、本明細書が提供する材料としては、「AIMポリマー」、「AIMヒドロゲル」、「AIMモノマー」、及びそれらを調製するための様々な他のモノマーが挙げられる。一実施形態では、本発明のAIMヒドロゲルは、架橋された親水性ポリマー中のフェロセンを含む。一実施形態では、AIMヒドロゲルは、ビニルフェロセンを1つ以上の親水性コモノマーと共重合することによって形成され、これらのコモノマーのうちの少なくとも1つは、二官能性又は多官能性である。二官能性又は多官能性コモノマーは、重合の際に架橋を形成することができ、本明細書では架橋剤と称される。これらの構成要素の共重合は、SWV動作条件下でpH非感受性信号を呈するIEを提供するヒドロゲルをもたらす。その後、この信号を、上記のようにASM WEからのpH依存性信号と共に使用して、本明細書に記載の方法に従って、分析物濃度、一実施形態ではpHに対応する信号を生成する。
【0027】
好ましい実施形態では、AIMヒドロゲルは、N,N-ジメチルアクリルアミド(97~99モル%)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(1~2モル%)、及びビニルフェロセン(0.1~1.5モル%)のラジカル重合から形成されるポリマーを含む。
【0028】
別の実施形態では、Fcモノマーを架橋剤なしで線状ホモポリマーとして使用することができる。上述のように、ビニルフェロセンは、好ましい実施形態とするには親水性が足りない。しかしながら、以下の表1の構造Fc-IIに例解するものなどのFc誘導体は、全体的な親水性を増大させるためにFcと重合性基との間に適切な親水性リンカーを用いて、本発明に従って調製することができる。
【0029】
別の実施形態では、以下の表1の構造Fc-IIIに例解するものなどの、2つ以上の重合性基を含有する多官能性Fcモノマーを単独で使用して、架橋ホモポリマーを提供し得る。この場合、ポリマーのそれぞれの繰り返し単位はFc群を含有し、これが、並外れて高いFc官能性をもたらすが、一部の用途に対しては増大したpH感受性を提供し得る。本発明の一部の実施形態のように親水性コモノマーをリンカーとして導入することによって、Fc官能性が「希釈」され、結果として得られるコポリマーは、強化された親水性を呈する。
【0030】
別の実施形態では、AIMヒドロゲルは、AIMモノマー及び1つ以上の単官能性コモノマーを含有する線状コポリマーである。これを、以下の表3の構造、線状ポリマー1及び2に例解する。コモノマーは、線状ポリマー2に例解するように、AIMの溶媒和を支援するペンダント基によって親水性であり得る。線状ポリマーは、AIMヒドロゲルが配設される電極基材からの浸出を防止するために十分に大きい(1鎖あたり50~100モノマー単位超)必要がある。
【0031】
別の実施形態では、AIMヒドロゲルは、架橋ポリマーマトリックス中に物理的に封入されたAIM分子を含む。好適なAIM分子は、線状ポリマー1の構造に例解するものなどの、長さ50~10,000単位の線状ポリマーであってもよく、あるいは以下の表4に示す構造において例解するように、オリゴマー又はデンドリマーであってもよい。相互侵入網目構造(IPN)と呼ばれるかかる構造により、任意AIM分子が、AIM上の重合性基を必要とすることなく架橋ポリマー中に封入されるようになる。IPNの構成要素は、概して、互いに共有結合しない。
【0032】
本実施形態に対しては、好ましい重合性基は、ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリレート、及びメタクリレート基を含む、ラジカル重合を受けるものである。これらは、化学的に堅牢であり、加水分解に対して安定であるアルキルポリマー鎖をもたらすという利点を有する。分子自体は、アルコール若しくはチレングリコール基などの親水性基、又はフェロセンを含むAIM部分を含み得る。
【0033】
別の実施形態では、重合性基は、アミド又はエステル結合形成によって反応するものを含み、これらとしては、反応性カルボニル(酸塩化物など)と求核試薬(アルコール又はアミン基など)との両方を含有するモノマーが挙げられる。これらは、ポリエステル又はポリアミドポリマー鎖をもたらす。
【0034】
別の実施形態では、ヒドロゲルは、通常は両親媒性コロイド構成要素からなる、超分子ヒドロゲルとしても知られる非共有的に架橋されたヒドロゲルを含む。この実施形態は、超分子ヒドロゲルが概して熱及び溶媒による溶解に対してそれほど堅牢ではないため、あまり好ましくないと考えられている。
【0035】
【0036】
典型的なフェロセン含有モノマーを表1に示す。好ましい実施形態において使用される1つの例は、重合性基がフェロセン芳香環に直接連結するビニルフェロセン(Fc-I)である。構造Fc-IIに例解する別の例は、メチレンリンカーによって接続したアクリレート(X=酸素)又はアクリルアミド(X=窒素)重合性基を特徴とする。リンカーはCnH2nであり得、式中、nは1~6であり得る。リンカーはまた、エチレングリコール単位などの親水性基を含み得る。重合性基のアルケン部分は、アクリル(図示)又はメタクリルのいずれかであり得、ここでは、メチル基が、カルボニル基に対してアルファ位で炭素に結合する。これらの異なる誘導体は、重合速度及び加水分解に対する抵抗性により望ましくあり得る。ポリマー鎖上のペンダントAIM部分の加水分解は、信号減衰に寄与する。別の種類のAIMモノマーは、上の構造Fc-IIIで例解する、2つ以上の重合性基を含有するものである。かかる構造は、ポリマーにおいて架橋を提供し、単独で、又は他のモノマーと共にコポリマーとして使用することができる。AIMポリマー及びAIMヒドロゲルは、任意の親水性ポリマーマトリックスに基づき得る。ビニルポリマーが特に好適であり、これは、モノマー、コモノマー、及び架橋剤の固有性及び配合を制御することによって多種多様な特性が獲得可能であるためである。架橋は、ポリマーをそのままで(in-situ)重合でき、それにより基材に物理的に結合する堅牢なネットワークを形成し、任意選択で、ある程度の多孔率で基材を貫通するという点において利点を提供する。様々なレベルのアニオン、カチオン、又は双性イオン性質を、これらの属性を持つモノマーを組み込むことによって、ヒドロゲル中に導入することができる。好適なモノマーとしては、表2及び表3で以下に列挙するものが挙げられる。以下ではフェロセンヒドロゲルに言及するが、有機金属性、イオン性塩、及び酸化還元活性有機種などの他のAIMも、これらのモノマーを使用してヒドロゲル中に形成することができる。
【0037】
例えば、ビオロゲンポリマーが、2つの反転性酸化還元ピークを持つ堅牢な親水性高分子電解質構造として周知である(Naoki et al.「Polyviologen Hydrogel with High-Rate Capability for Anodes toward an Aqueous Electrolyte-Type and Organic-Based Rechargeable Device.」ACS Applied Materials & Interfaces 5.4(2013):1355~1361)。ヘキサシアノ鉄酸塩などの、酸化還元マーカーとして伝統的に使用されている金属塩も、リガンドのうちの1つを重合性基で代置することによって、本発明に従ってポリマー中に組み込み得る。
【0038】
【0039】
典型的なラジカル開始モノマーを表2に示す。構造I及びIIは、疎水性分子を溶媒和することができ、またヒドロゲルの親水性を授けることもできる、両親媒性であることが知られているモノマーである。これらの構造は、ラジカル鎖重合に関与し、示されたペンダント基を持つアルキルポリマー鎖をもたらすアルケン基を含有する。ペンダント基は、親水性をポリマーに付与するように選択され得る。
【0040】
構造III及びIVは、ヒドロゲル中の架橋に使用される二官能性モノマーである。構造IVでは、スペーサー基は、好ましい実施形態においては1~10個のエチレングリコール単位、又は他の実施形態においては20~1000個のエチレングリコール単位を含有し得る。より長いスペーサーは、使用するポリ(エチレングリコール)鎖のバルク特性によっては、架橋ヒドロゲルの膨潤に影響し得る。
【0041】
【0042】
2つの例示的なイオン性モノマーを表3に示す。これらのモノマーは、非イオン性モノマーによって達成可能なものよりも、AIMポリマーの親水性を増大させ得る。
【0043】
幅広いポリマー/ヒドロゲル特性が、コモノマー及び/又は架橋剤の選択、これらの構成要素の比、並びにヒドロゲルの全固形分を変化させることによって獲得可能である。固形分は、水と比較した場合のポリマーマトリックスによって吸収されるゲルの割合を指す。典型的なヒドロゲルは、1~10%の固体を含有し、これは、材料が水を吸収し膨潤する能力に大きく依存し得る。この膨潤自体は、架橋の程度に高度に依存する。本発明の一部の実施形態では、AIMポリマー又はAIMヒドロゲルは、3次元ポリマー構造全体にビニルフェロセン(又は他の好適なフェロセン誘導体又は他のAIM連結モノマー若しくはポリマー、又はAIM及びモノマー(複数可)の混合調製物)を組み込むことで、所望の範囲より狭いpH非感受性範囲をもたらす、フェロセン(又は他のAIM)基の閾値密度を超過せずにこれまで達成可能であったものよりも、はるかに大きいAIMの有効集団を可能する。
【0044】
本発明の方法を使用して調製した代表的なポリマーを表4及び表5に示す。これらのポリマーとしては、ビニルフェロセン及びコモノマーN,N-ジメチルアクリルアミド(II)又はより親水性のトリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(I)若しくはジエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(n=2であることを除いてIと類似)を含有する線状ポリマー、並びにポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(IV)又はメチレン(ビス)アクリルアミド(III)で架橋したフェロセン含有ヒドロゲルが挙げられる。表4及び表5では、x、y、及びzは、それぞれのモノマーの化学量論比を指す。例えば、x:yの比は、ホストポリマーのフェロセン(又は他のAIM)置換度に対応する(例えば、上で考察した1モル%のフェロセンに対して0.1)。
【0045】
【0046】
表4は、FcをAIMとして組み込む線状ポリマーの例を示す。値x、y、及びzは、ポリマー全体にランダムに分布するモノマー単位の化学量論比を示す。線状ポリマー1を用いて例解する好ましい実施形態では、x及びyの比は100:1~1000:1であり得る。線状ポリマー2を用いて例解する好ましい実施形態では、x、y、及びzの比は、90:1:10、85:1:15、80:1:20、900:1:100、800:1:200、及び0:1:100であり得る。他の実施形態では、ブロックコポリマーを使用することで、モノマー鎖の群の正確な配置及び分布を知ることができる。
【0047】
線状ポリマー1及び2は、Fc(例解目的のみ;任意のAIMを使用することができる)官能性の親水性ポリマーへの組み込みに関する方法及び材料を例解する。線状ポリマー2における3つのコモノマーの使用は、親水性及び他の物理的特性の制御を提供する。しかしながら、両方の線状ポリマーは、時間と共に水に溶解する。よって、溶解を遅延させるか又は排除するために、本発明に従って架橋を使用し得る。
【0048】
架橋ポリマー1及び2は、表5に示すように、それぞれ架橋剤III及びIVを組み込み、表5中、架橋剤は太字で強調されている。
【0049】
【0050】
表5は、FcをAIMとして組み込む架橋ポリマーの例を示す。値x、y、及びzは、ポリマー全体にランダムに分布するモノマー単位の化学量論比を示す。架橋ポリマー2については、二官能性架橋剤を修飾して、エステル連結ではなく、加水分解に対してより頑強であるアミド連結を含有させることが好ましい場合がある。好ましい実施形態では、示すものなどの架橋ポリマーについては、x、y、及びzの比は、1000:1:5~1000:1:20、1000:10:5~1000:10:20であってもよい。他の実施形態では、ポリマーは、0:1:1000~0:20:1000の比で、AIMモノマー及び架橋剤モノマーのみで構成される。
【0051】
一部の実施形態では、ポリビニルアルコールは、フェロセン、及び熱的、化学的、又は放射線のいずれかによって架橋される、本発明の線状ポリマー(例えば、アセチル基、フェロセン、及びヒドロキシル基を含む線状ポリマー)によって官能化される。例えば、一例では、架橋剤は、無水マレイン酸、マレイン酸、グルタルアルデヒド、ジイソシアネート、ジビニルエーテル、過ヨウ素酸塩、又は任意の一般的ジアルデヒドからなる群から選択され、これは、http://ntrs.nasa.gov/archive/ nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19790012957.pdfに開示されている通りであり、この開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。一部の例では、PVAは、長い側鎖若しくはより短い側鎖のいずれかを有するフェロセン誘導体、及び/又はピーク電位を用途に応じて正に寄った電位若しくは負に寄った電位に調整することにおいて好ましい電子求引基若しくは電子供与基によって官能化される。一部の実施形態では、ある特定のフェロセン誘導体が、スキャン依存性の減衰に対してより堅牢かつ抵抗性であるために選択され、これは、全体が本明細書に組み込まれる、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2975373/table/T1/に開示されている通りである。
【0052】
当業者であれば、本発明が、WEの作製に有用なモノマー、ポリマー、及びヒドロゲル、並びにそれを使用して形成される、AIMがASMによって代置されることのみが上記のAIM材料とは異なるWEを提供することを理解することになる。このため、本発明のヒドロゲルの電気化学的に活性な構成要素は、分析物非感受性材料、分析物感受性材料、又はこれらの両方のいずれかを含み得る。例えば、ビニルアントラセン又は2-アクリルアミド-アントラキノン(表6で以下に示す)を上記のヒドロゲルマトリックス中に組み込んで、本発明のASMヒドロゲルを形成し得る。あるいは、ASMビニルモノマーとAIMビニルモノマーとの両方を、分析物感受性応答と分析物非感受性応答との両方を呈する同じヒドロゲル中でコモノマーとして使用してもよい。
【0053】
【0054】
本発明の電極、センサ、及びデバイスの様々な実施形態では、ポリアクリルアミドフェロセン複合体及びポリアクリルアミドアントラキノン複合体を、それぞれAIM及びASMとして使用する。かかる実施形態は、2つの線状ポリマー又はコポリマーを含み、ASMとAIMとの両方がコモノマーとしてポリマーマトリックス中に組み込まれて、所望の組成のランダムコポリマーをもたらす。かかる実施形態はまた、WE及びIEが別々の基材上にあるものを含む。
【0055】
一部の実施形態では、既にオリゴマー、ポリマー、又はデンドリマーの形態にあるフェロセン誘導体などのAIMを使用して、AIMがヒドロゲルに共有結合はしないが物理的封入によってその中に保持される、AIMヒドロゲルを調製する。有効な物理的封入は、ヒドロゲルの有効なネットワーク密度が、フェロセン誘導体(又は他のAIM)構成要素の拡散損失を最低限に抑えるために十分に高いことが求められる。モノマーAIMは物理的封入には概して好適ではなく、これは、それらを有効に保持するために必要な高いネットワーク密度が、高度に膨潤したヒドロゲルの要件に反するためである。表7に示す例示的フェロセン材料は、かかる固定化に好適である。ゾル-ゲル化学に基づくもの(参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第2012/018632号を参照)を含む代替的な親水性骨格を使用して、IPNを形成し、十分な固定化を提供するために骨格の有効な孔径と比較して十分に高い平均分子量を持つ、AIMポリマー又はAIMヒドロゲル(又は本発明のWEの調製のためのASMを持つ対応する材料)を固定化し得る。
【0056】
【0057】
フェロセン(又は他のAIM)ポリマーを他のポリマーマトリックス中にブレンドして、本発明のAIMポリマー及びAIMヒドロゲルを得ることもできる。かかるマトリックスは、ヒドロゲルのパフォーマンスエンベロープ(performance envelop)を超過する、ある特定の属性、例えば、耐熱性又は耐化学性を付与するように選択する。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エポキシ、電解重合したポリピロール、及び様々な導電性インク配合物が、この目的に使用し得る例示的な材料である。これら及び他のポリマーは、用途特化型センサの機械的、誘電的、又は生化学的要件を満たすために用いられる場合がある。
【0058】
電極設計
本発明は、AIMが基材に共有結合しないか、又はASMが、同じであっても異なっていてもよいその基材に共有結合しない、堅牢な電極を提供する。本発明の一部の電極においては、AIMヒドロゲルは、非共有結合手段によって基材表面に固定される。本発明は、かかる結合を強化する基材を提供し、この基材は、確固な固定化を確実にするために、適切なレベルの表面テクスチャ、多孔性、及び/又は3次元的ねじれを有する。これらの特徴は、一部には膨潤したヒドロゲルの高度に透過性の性質のおかげで、AIMの分析物との相互作用に影響することなく、AIMヒドロゲル(又はASMヒドロゲル)の結合及び/又は収容を改善することができる。これらはまた、ガラス状炭素などの平滑面又は他の金属及び非金属面上に配設された同じ材料と比較して、さもなければAIMヒドロゲルの度重なる膨潤及び収縮から生じ得る、接触、摩耗、又は脱離と関連する物理的損傷に対する保護を提供する。実際に、テクスチャ化基材又は多孔質基材の機械的特性は、AIMヒドロゲルの固有の脆弱性を克服して、高い構造的一体性をもたらす。
【0059】
任意の導電基材を、本発明のAIMポリマー及びAIMヒドロゲル(並びにASMポリマー及びASMヒドロゲル)の支持、固定化、及び保護のために、電極として使用することができる。これらとしては、カーボンファイバーなどの炭素同素体、多孔質黒鉛、マクロ多孔質炭素、メソ多孔質、ミクロ多孔質炭素、ナノ多孔質炭素、炭素ナノ繊維(ナノ多孔質アルミナなどの材料を炭素コーティングすることによって作製される)、及びこれらの複合材、並びにナノチューブ及びこれらの複合材を挙げることができる。金属としては、ナノ多孔質金、白金、及び銀を挙げることができる。スクリーンプリントした電極は、所望の粗度を持つ様々な表面コーティングを有し得、これらのコーティングとしては、メソ多孔質炭素、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、グラフェン、又はチャネル若しくは細孔などのミクロ若しくはナノスケール機構によって刷り込むカーボンインクが挙げられる。多孔質導電基材は、更に、非常に短い信号経路の恩恵を受け、それにより信号捕捉効率が増大する。
【0060】
ある特定の導電性ポリマーは、電極基材として使用することができ、AIMヒドロゲルでコーティングされる。エンジニアリングポリマー複合材をAIMヒドロゲルのための支持として使用することができ、該複合材は、該複合材を導電性にするのに十分な量の炭素同素体又は金属粒子を含有する。かかる複合材に好適なポリマーとしては、エポキシ、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリピロール、ポリビニリデンフルオリド、他のフルオロポリマー又はコポリマー、並びにPVC、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、及びこれらの誘導体及びコポリマーなどの、様々なビニルポリマー、セルロース系ポリマー、並びにシリコーンポリマーが挙げられる。
【0061】
本発明の電極は、様々な炭素複合材などの剛性基材、又は可撓性導電基材(例えば、炭素織布又は不織布)、又は導電性コーティング(例えば、カーボンインク、酸化インジウム錫、銀など)によって導電性にした、非導電性支持フィルム、例えば、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィンなどを使用して作製し得る。本発明の材料は、ごく接近したCE及びPREによって補完される、様々な幾何形状パターンで形成してもよい。例えば、本電極は、
図8に示すように、同心円状の輪、セグメント、及びアレイとして配列させてもよい。導電性コーティング及びそれから派生する電極により、センサを幅広い形状因子及び寸法で築くことができるようになる。
【0062】
引き続き
図8を参照して、一部の実施形態では、固体センサの電極構成要素1、3、及び4は、中央電極2を囲繞している単一の同心円状の輪におけるセクションとして配列される。例えば、一実施形態では、固体センサの検知面は、複数の電極セグメント、即ち、ASM含有WE1、疑似参照電極3、及び対電極4を有する単一の同心円状の輪を含み、個々の電極セグメントは、中央に位置するAIM含有IE2の周囲に放射状に配列される。検知面は、複数の電極の間に間置される非導電材料5を更に含む。一部の例では、様々な電極セグメントの露出した表面積は、1つ以上の他の電極セグメントに対して所望の信号を発生させるように選択される。
【0063】
一部の例では、センサ材料又は複合材は、およそ25マイクロメートル以下の特徴的半径を持つマイクロ半球に形成される。これらの寸法のセンサは非常に低い信号を生成するが、これらの減少した二重層容量は応答時間を短縮もする。(J.Wang,Analytical Chemistry,3rd ed.,2006,John Wileyを参照されたい)。センサアレイは、実用のための可変の信号レベルを用いた小型又はマイクロ電極における使用に対して構築し得る。
【0064】
一部の例では、電極構成要素1、2、及び3は、中央に位置する電極構成要素4を囲繞している個々の同心円状の輪として提供される。非導電材料5を、電極1、2、3、及び4のそれぞれの間に間置することで、それぞれの電極構成要素の各自の信号を隔離する。一部の例では、センサ構成要素の位置は、1つ以上の他の電極輪に対するセンサ構成要素の所望の露出した表面積に基づいて選択される。一部の例では、それぞれの同心円状の電極輪は、等しい幅を備える。一部の例では、1つ以上の同心円状の電極輪は、1つ以上の他の電極輪に対して独自の幅を備える。
【0065】
導電基材は、プリント回路基板に一般に使用される、セラミック、ガラス、又はガラス繊維で強化した複合材などの堅牢な支持材料を使用して更に支持され得る。これらの材料は、信号を検知要素から電気回路に移送するための十分に確立された接続性という選択肢を提供する。様々な実装選択肢(例えば、多層プリント回路基板、プレート貫通接触など)が、センサ及びデバイスの増大した実装密度、信頼性、及び機能性をもたらす。
【0066】
AIMヒドロゲル及びASMヒドロゲルをコーティングとして基材に適用してもよい。しかしながら、様々な実施形態では、AIMヒドロゲル又はASMヒドロゲルは、架橋構造を得るためにインサイツで形成される。コーティングとして適用されるとき、AIMポリマー(又はASMポリマー)は、コーティング溶液を調製するために溶媒又は溶媒混合物中で十分に可溶性であるが、意図する分析物(通常は水)中では、それがセンサの寿命にわたって電極表面上に留まるように十分に不溶性である必要がある。このことは、多くの場合、候補の線状AIM(又はASM)ポリマーの親水性を制限する。AIM(又はASM)ポリマーの架橋は、低度の架橋であっても高度な親水性ポリマーさえ不溶性にするため、このトレードオフを未然に防ぐ。
【0067】
しかしながら、この不溶性が原因で、架橋ポリマーを溶液として適用することができず、インサイツで調製する必要がある。これは、モノマー及び開始剤の溶液を基材に適用した後で、重合プロセスを開始することを伴う。こうすることで、モノマーは、重合及び架橋の前に、基材の細孔へと浸透し得る。これは、表面への共有連結がなかったとしても、ポリマーが基材に優れて付着し、いずれの表面機構及び内部構造にも順応することを確実にする。架橋は、寸法安定性の付与、及びAIMセンサ(IE)又はASMセンサ(WE)の機能寿命の延長に寄与するAIM(又はASM)ヒドロゲルのより低い分子量分率の保持に特に有益である。以下の実施例1は、基材が炭素基材である電極表面上で架橋ヒドロゲルを生成することによって本発明のフェロセン含有電極(IE)を作製する方法を示すことで、本発明のこの態様を例解する。
【0068】
本発明のAIM及びASMヒドロゲルは、良好な湿乾反転性を呈し、乾燥時にそれらの物理的一体性を保持し、再湿潤時にそれらの酸化還元活性及び電極電位を急速に復元する。
【0069】
方形波ボルタンメトリー(SWV)法を使用して、本発明のセンサ構成要素からの信号を生成する。WE及びIEによって生成された信号は、同時に又は異なる間隔で監視し得る。現在の文脈では、「掃引」及び「スキャン」という用語は、置き換え可能に使用される。ASMとAIMとの両方が同じ基材上に位置する実施形態では、方形波電位掃引を適用して、ASM及びAIMから別々であるが同時に起こる応答を引き出す。同じスキャンパラメータ(電圧掃引の範囲、台座高、及び滞留時間とも称されるスキャンの間隔など)を両方の電極で適用する。
【0070】
ASMとAIMとが別個の電気的に独立した電極上に別々に位置し、本発明が提供する重要な新たな方法に従う他の実施形態では、異なるスキャンパラメータを用いた2つの別々の方形波電位掃引を電極に適用し得る。WEとIEとを別々にサンプリングすることは、いくつかの利益をもたらす。第1に、信号品質を、ASM及びAIMについて個々に最適化することができる。第2に、IEをWEよりも頻繁を低くしてサンプリングすることができ、一部のAIMは異なる分析物中で変化しないままであるように設計される。このため、IEは、分析物において変化が起きるか又はそれが予期されるときに静止状態を再確認するためにサンプリングする必要があるだけである。IEのサンプリングに費やされない時間を、WEの監視を再開するために使用することで、実際にWE滞留時間を短縮し、より応答性のpH測定システムをもたらし得る。第3に、より頻度の低いIEのサンプリングにより、良好な精度及び広範なpH非感受性範囲を呈するが、度重なる電気化学的励起の結果として信号喪失の影響を受けやすい、ある特定のAIM材料を用いることが可能となる。
【0071】
一実施形態では、本発明のセンサのSWV電子機器は、WE及びIEからの入力の間で多重化するように構成される。WE入力とIE入力とは、電気的に等価であり、参照電極/疑似参照電極(RE/PRE)及びCE回路と共通している。このシステムの動作を表8に例解する。
【0072】
ポテンショスタット回路の識別機構(ブロック1~9)は、マルチプレクサー(3)であり、ASM電極又はAIM電極のいずれかを選択するために使用される。インピーダンス変換増幅器(4)、アナログ-デジタル変換(ADC)(5)、参照電極(6)、方形波励起を生成するためのデジタル-アナログ変換(DAC)(7)、及び対電極(9)を駆動する差動増幅器(8)が、WEとIEとの両方に共通する。
【0073】
【0074】
電圧スキャン(又は掃引)範囲、台座高、平衡化時間、及び滞留時間(即ち、連続電圧スキャン間の静止時間)を含むSWV動作パラメータは、WE及びIEに対して独立して調整可能である。一実施形態では、同じSWV回路を使用して、WE及びIEを連続的に監視する。
【0075】
WE及びIEスキャンの全時系列を表9に示す。矢印は、独立した滞留時間で設定した規則的な間隔にて発生する、スキャンのグループ又は反復を表す。
【0076】
【0077】
スキャンパラメータは、それぞれの電極について最適化される。統計、即ち、一連のスキャンの反復のピーク電位平均及び標準偏差を、WE及びIEについて別々に保つことで、これらの電極からの結果を独立して分析できるようにする。
【0078】
典型的な範囲及び好ましい値を含む、本発明のWE及びIEについてのSWVのための動作パラメータを表10に示す。
【0079】
【0080】
本発明のSWV技法の特別な特徴は、2つの動作モードの実装である。第1に、「探索」モードは、それぞれの電圧スキャンの開始時に使用され、これは、分析物中のASM又はAIMのピーク電位の位置を決定するために、比較的広範な電位範囲を網羅する。第2、「追跡」モードは、より高い分解能で電極からのピーク電位の位置を決定するために、より小さい電圧増分で使用される。追跡モードでは、例えば、2mVのステップ高は0.03pH単位のpH分解能に対応する。これは、大部分のpH分析用途に十分である。ステップ高を更に1mV(0.015pH単位の分解能のため)に減少させることが可能だが、そうすることで、±200mVの範囲にわたるのに必要な時間も増大する。より狭いスキャン幅は、AIMピーク電位のほとんどが不変であるのに十分である。
【0081】
以下の手順は、どのようにWE及びIEからの信号を使用して、目的の分析物の濃度、この場合、pHで表すヒドロニウムイオン濃度を導出するのかを説明する。
【0082】
表11~13に示すように、スキャン(1)の開始は、低分解能でのWEの幅広いSWV掃引(2a)から始まって、後続のWE追跡スキャン(2b)を探索する。掃引速度は、電圧範囲の限界間のそれぞれの電圧増分のステップ高(SH)によって設定される。ピークを見出すためのSWV出力の処理をステップ3~6に要約する。WE探索スキャン(2a)の直後、WE追跡スキャン(2b)の開始前に、IEの幅広いSWV掃引(8a)は、後続のIE追跡スキャンの中心を探索する。IE追跡スキャンの最初のグループを平均して、AIM基線を決定し(9)、不揮発性メモリ(10)に保存する。AIM基線からの後続のAIM追跡スキャン(8b)のピークの差異(ステップ3~6)は、ΔAIM(11)と等しい。AIMピークは不変であるため、ΔAIMはRE又はPREのドリフトを反映する。ASMピークは、ΔAIM(7)によって補正され、RE又はPREのドリフトと同等である補正係数として適用される。較正表は、いくつかの温度(例えば、5℃~50℃)での、あるpH範囲(例えば、pH2~pH12)にわたる標準緩衝液に対する平均ASM応答を特性化する。較正表への入力は、Ag/AgCl又は塩化第一水銀などの安定したREを使用して、制御された条件下で行う。較正表から、補正したASM(7)と等しいセンサ温度及び電圧で、試料の対応するpHを決定する(12)。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
本発明のWE-IE対によるpH(又は他の分析物濃度)の決定は、以下のように行うことができる。標準のAg/AgCl又は塩化第一水銀参照電極を参照した温度範囲にわたるASMのpH緩衝液に対する応答の較正表を使用し得ることで、ASMピークをAIMのドリフトに応答して補正することが可能となる。別の方法は、較正表を、所与の温度範囲にわたるpH緩衝液に対するASMピーク電位とAIMピーク電位との間の差異から直接準備することである。これらの動作は、本発明の分析物検知デバイスのファームウェアに組み込むことができる。
【0087】
本発明の分析物検知デバイスは、WE、IE、RE(CRE又はPREであるが、典型的にはPRE)、及びCEをそれぞれ少なくとも1つ備える、センサ組立体を備える。これらのセンサ構成要素は、様々な空間的配置、表面積比、平面若しくは3次元設計、同軸若しくは非同軸幾何形状、又はこれらのなんらかの組み合わせで構成され得る。
【0088】
本発明が提供する1つの望ましい構成は、直径12mmのセンサ組立体である。この幾何形状は従来のガラス電極と同様であるため、計器及び設備と互換性がある。本発明の検知要素は、直径12mmのプローブの末端平面にて同一の場所に位置し得るか、又は保護のために好適に埋め込まれ得るか、又は分析物にアクセス可能な3次元空間に構造化され得る。対電極は、
図8に示すように、末端表面上で同一の場所に位置する構成要素のうちの1つであり得るか、又は他の検知要素を囲繞する輪若しくは円形線の形態であり得る。
【0089】
本発明が提供する別の実施形態は、
図9に示すように、あらゆるウェルの底部及び/又は内壁にアドレス可能なセンサが存在するマルチウェル又はマイクロウェルプレートである。電極の構成は、一部の実施形態では、上記の12mmのプローブ設計と同様である。主な差異は、電極表面のサイズ及び電子機器インターフェースである。マルチウェルプレートの場合、それぞれの電極への電気接続は、プレートの背面への孔を通して、又は導電線によって達成され得る。これらの接続は、導電性を監視するためのマルチウェルプレートセンサにおいて一般的である。典型的な構成では、96ウェルプレートは、ウェルあたり50~200マイクロリットルの溶液を含むことになる。それぞれのウェルの底部の電極表面は、およそ1~2平方ミリメートルとなり、ウェルの直径は約1cmである。センサ設計の様々な例示的実施形態を
図8に示す。代替的実施形態では、測定を可能にするために分析物が全ての検知要素に接触するように、電極をマルチウェルプレートに組み込んでもよい。ある特定の実施形態では、1つ以上の電極が試料空洞の壁に位置することで、光学分析のために底部の全てではないにせよ少なくとも一部を透明にする。あるいは、可撓性フィルム上に位置する印刷電極が、可撓性容器における構成要素、チューブ一式、及びバイオプロセスのための他の構成要素(単回使用又は使い捨ての構成要素を含む)として特に好適である。
【0090】
ここで
図10を参照すると、本発明は、特に参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第2014/106066号(特許文献16)に従って、非常に小さい分析物試料体積におけるpH測定にも適用可能である。この実施形態は、マイクロリットル又はサブマイクロリットル程度の液体の液滴を測定するためのセンサ組立体及びそれから派生する計器を含む。この実施形態では、WE、IE、及びPREは全て、およそ数平方ミリメートルの面積に位置する。一実施形態では、これはWE/IEモジュールである。近接性は、WE/IEモジュールとREとが同時に試料と接触することを確実にする。回路は、同様の寸法のCEを備えるCEモジュールがWE構成要素にごく接近した状態になるときに完成する。これらのセンサ構成要素の間に形成された間隙を使用して、分析物液滴を毛細管現象によって保持し、電極表面を橋絡及び湿潤し、電気化学回路を完成させる。電流は、試料液滴が検知用組立体の2つの部分を橋絡するときにのみ流れる。
【0091】
本発明の様々な態様も以下の実施例で例解する。
【実施例】
【0092】
実施例1:電極表面に架橋ヒドロゲルを形成することによって生成されるフェロセン含有電極。
この実施例では、本発明のAIMヒドロゲルは、ヒドロゲルを形成するために使用する重合プロセスの間、電極表面に固定化される(共有結合はしない)。重合後、電極を水又は水-溶媒混合物中で洗浄して、汚染物質、未反応モノマー、及び反応副生成物を除去する。過剰なヒドロゲルを電極表面から除去する。その後、電極をハウジングに設置し、ここでヒドロゲル含有表面が分析物溶液に露出する。基材の導電性背面をポテンショスタットに接続する。掃引方形波電位を参照又は疑似参照電極に対して適用して、電流ピークを付与することによって、AIM信号を取得する。その後、AIMからの電流ピーク電位を、参照電極のドリフトを補正するために、又は別の作用電極(ASM)のための参照として使用する。
【0093】
この例では、AIMの化学構造は、本発明の親水性の架橋ポリマーマトリックスに共有結合したフェロセンを含む。電極を、導電基材の存在下でモノマー混合物を重合することによって生成する。5重量%のポリエチレングリコール(PEG)ジアクリレート及び1重量%のビニルフェロセンを有するN,N-ジメチルアクリルアミド(DMMA)を含むモノマー溶液を、nーブタノール中で希釈して、25%溶液を得た。熱活性化開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、AIBN)を0.5w/v%の濃度まで添加した。カーボンファイバーの電極ディスクを混合物中に浸漬した後、これを超音波処理し、アルゴンを散布して酸素を除去した。混合物に蓋をし、24時間60℃で加熱して、本発明のヒドロゲルを生成した。電極をゲルから切り取り、新鮮な水の中で2日間洗浄した。その後、過剰なヒドロゲルを電極表面から除去した。電極を使用まで水中で保管した。
【0094】
あるいは、電極は、導電基材の存在下でモノマー混合物を重合することによって生成する。この場合、3重量%のN,N’-メチレンビスアクリルアミド及び3重量%のビニルフェロセンを有するN,N-ジメチルアクリルアミド(DMMA)を含むモノマー溶液をn-ブタノール中で希釈して溶液を得た。熱活性化開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、AIBN)を0.5w/v%の濃度まで添加した。カーボンファイバーの電極ディスクを混合物中に浸漬した後、これを超音波処理し、アルゴンを散布して酸素を除去した。混合物に蓋をして、75℃で加熱した。20~60分でゲル化が起こり、本発明のヒドロゲルを生成した。90分後、電極をゲルから切り取り、アルコール中で12~18時間膨潤させた後、電極を、1:1のアルコール:水中で2時間、続いてDI水中で2時間洗浄した。次に、過剰なヒドロゲルを電極表面から除去した。その後、電極を使用まで水中で保管した。
【0095】
ここで
図3を参照して、4つの固体センサ構成要素を、所与の分析物溶液中での同時浸漬によって配備した。IEを、フェロセン-ヒドロゲルのカーボンファイバー基材へのその場(in-situ)重合によって調製した。WEは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20130168609号に記載されている通りに調製したポリビニルアルコールアントラキノン(PVA-AQ)を利用した。本発明に従うPVA-AQのための代替的な化学構造は、以下で実施例4に提供する。対電極CEは、WEを囲繞するステンレス鋼リングであった。全てのボルタンメトリック測定は、疑似参照電極(PRE)に対して行い、この電極は、この場合、可撓性ポリエステル基材上にスクリーンプリントした銀/塩化銀フィルムであった。
図3に示すWEは、n-ブチルリチウム、水素化ナトリウム、又はカリウムtert-ブトキシドなどの塩基を使用した即席の方法を使用して構築した。
【0096】
AIMヒドロゲルのpH非感受性範囲を確認するために、3つのIEを調製し、それぞれ100mMの添加塩化ナトリウムを含有する一連の緩衝溶液中で標準カロメル電極(SCE)に対して試験した。方形波ボルタンメトリーピーク値を5つの測定から取得した。理想的なAIMは、pHに関わらずピーク電位の偏差を示さない。以下の表14に示すように、試験したIE(EL1、EL2、EL3)は、異なる感受性のpHスケールにわたって安定性を示す。pH7.5~6の生体関連範囲においては、最大2mVの偏差が存在した。より広範な範囲にかけて偏差はより大きく、電極は、pH2~pH10の範囲に対して2又は3mVの標準偏差を示す。この誤差は、ASMについての58mV/pH単位の勾配を考慮すると、所与のpH範囲についてAIMを使用して達成可能な分解能を決定することになる。例えば、6mVの誤差は、0.1単位のpH測定誤差を意味する。
【0097】
【0098】
表1中の結果を生成するために使用したAIMヒドロゲルは、5%のPEG-ジアクリレートで架橋し、1重量%のビニルフェロセンを含有するDMAAのマトリックスであった。EL1及びEL2をゲル中20重量%の固形物として重合し、EL3をゲル中25%の固形物として重合した。電極をそれぞれの緩衝液中で5回SWVスキャンし、スキャンの間には90秒の遅延があった。表1に報告する値は、5回のスキャンシリーズの最後の測定値である。表1中のpH7の緩衝液についての値は、pH偏位の最初及び最後に取った測定値の平均である。
【0099】
WE及びIEのpH変化に対する特徴的な応答を
図4に示す。実験誤差の範囲内で、pH6、7、及び8の緩衝液中で測定したAIMピークは重なり合ったが、ASMピークは、pHの関数として予期した変化を示した。
【0100】
参照電極の変化がWE-IE対に与える影響を
図5に示す。この場合、pH6の緩衝液を使用した。PRE表示のデータ(実線)については、
図3に示す固体Ag/AgCl PREを使用した。ASMピーク(左)及びAIMピーク(右)は、675mV離れた。液界RE表示のデータ(破線)については、市販のAg/AgCl参照電極を代わりに使用した。ASM及びAIMピークは、671mV離れた。参照電位のほぼ100mVのシフトにも関わらず、AIMピークとASMピークとの間の差異はほぼ同一であった。つまり、これらの結果は、本発明のこのWE-IE対について、AIM-ASMの関係がREとは無関係であることを示す。
【0101】
実施例2:全固体pHセンサシステムの内在性pH応答
従来のSWVにおいて、pHは、単一のWEの特徴的電位と直接的に相関する。WE-IE対については、これら2つの電極の電位の差異はpHと相関する。この実施例では、2つのWE-IE対を、薄いステンレス鋼ロッドで作製された対電極、及びPREとして機能するスクリーンプリントした銀/塩化銀電極を用いて配備した。全てのセンサ構成要素は固体であった。上記のように、参照電極の性質は多少可撓性であり、pH較正曲線は、AIMピーク位置とASMピーク位置との間の差異のみを考慮に入れている。この場合、較正は、周囲温度(22~24℃)の20mMの緩衝液及び100mMの塩化ナトリウムを使用して、重複するWE-IE対について生成した。結果を
図6に示す。
【0102】
図6は、電位と、2つの別々のWE-IE対についてのpHとの直線関係を示す。この場合の電位は、PREに対して測定したAIMピークとASMピークとの間の差異である。これは較正曲線と見なすことができ、勾配及び切片を使用して、未知のpHを決定し得る。ASM-AIMの電位差は、PREの絶対電位ではなくpHのみに依存することが理想である。
【0103】
実施例3:分析物摂動、例えば、イオン強度に対するWE-IE対の応答
参照電極電位が分析物イオン強度の変化に影響され得ることは、概して認識されている。これらの変化は、従来の電位差pH測定においては予期されるイオン強度での較正によって、補償され得る。本発明のWE-IE電極対では、RE(典型的にはPRE)電位の変化は、ASM及びAIMに同様に影響する。このため、誤差は自動的に相殺される。この影響を
図7に示し、ここでは、ASM-AIM対を従来のガラスpH電極(Thermo Orion)と比較する。WE-IE対を、まず、100mMの添加塩(塩化ナトリウム)を含有するBDH参照標準緩衝液(VWR International)中で較正した。その後、10mMの塩化ナトリウム溶液中で測定を行うと、PRE電位が30mVシフトした。較正したガラスpHプローブで測定したpHは、白丸を使用して示す。Ag/AgCl PREに対してWEを使用し、いずれの較正もせずに測定したpHは、Xで記す。誤差はPREのシフトに起因する。AIM較正pHは黒丸で示す。較正したpH値の精度は、PREと比較して、AIMがイオン強度に対する感受性がはるかに低いことを示す。要約すると、これらの結果は、本発明のWE-IE対が、CRE又はPREに対するイオン強度の影響を補償することを示す。
【0104】
実施例4:PVA-AQ(ASM)化学
本発明のpHメータにおける使用に好適な電極は、アントラキノン誘導体に共有結合したポリビニルアルコール(PVA-AQ)からなるヒドロゲルから調製することができる。PVA-AQは、ジエチルアミノメチルポリスチレン:有機合成反応において一般に使用されるポリマー用塩基を使用して合成した。この反応は、概して、完了までに約48時間を必要とする。反応時間を短縮するために、本発明は、n-ブチルリチウム、水素化ナトリウム、及びカリウムtert-ブトキシドを反応させる方法を提供するが、有機合成反応において一般に使用されるある数の塩基のうちのいずれで置換してもよく、反応条件を、所望の本発明のPVA-AQを作製するのに必要なように改変してもよく、これは、反応時間及び/又はAQ官能化の密度を変化させるための任意の置換を含む。したがって、本発明の方法及びPVA-AQ化学は、特定の用途に望ましいPVAの官能化を達成するために、いくつかの異なる塩基を使用することによって調整し得る。n-ブチルリチウムを塩基として使用するPVA-AQの例示的な合成を表15に示す。
【0105】
【0106】
n-ブチルリチウムを塩基として使用するPVA-AQの合成
表14のPVA-AQ ASMを調製するための手順は以下の通りである。撹拌棒付きのオーブン乾燥した500mlのフラスコに30分間アルゴンでパージした。1.77g(0.042モル)のPVAをフラスコに添加し、併せて300mLの乾燥DMSOもカニューレ移入によって添加した。本システムをアルゴン陽圧下で維持し、PVAを溶解させるために磁気撹拌棒で撹拌しながら油浴中で50℃に加熱した。2時間後、フラスコを室温に冷却し、10.4mL(0.0166モル)のn-ブチルリチウムを添加した。15分後、5gの2-ブロモメチルアントラキノンを添加した。これを、周囲温度のアルゴン下で20時間撹拌させた。翌日、濁った茶色の粗反応混合物を、1,4-ジオキサンの10倍体積の撹拌物中に滴下した。結果として得られた溶液は、淡黄色固体を持つキャラメルブラウンである。この溶液を2時間撹拌させた後、フリットガラスブフナー漏斗上で真空濾過した。あるいは、上記の混合物を沈殿させてもよく、デカンテーションによって溶媒混合物を除去した後で淡黄色固体を分離させ得る。固体をアセトンで洗浄した。固体を再度DMSO中に溶解させ、1,4-ジオキサン及びアセトンで沈殿させて、いずれの未反応ブロモメチルアントラキノンも除去した。不純物の除去を助けるためにヘキサン洗浄も使用した。
【0107】
B.水素化ナトリウムを塩基として使用するPVA-AQの合成
撹拌棒付きのオーブン乾燥した丸底フラスコ(フラスコ1)を30分間アルゴン下に放置した。924mg(21ミリモル)のPVAをフラスコに添加し、併せて50mlの乾燥DMFもカニューレ移入によって添加した。油浴を120℃に加熱し、フラスコを油浴中に配置してPVAを溶解させた。PVAが溶解したら、フラスコを油浴から除去し、室温に冷却させた。20mlの乾燥DMFを、カニューレ移入によって第2のオーブン乾燥したフラスコ(フラスコ2)に添加した。水素化ナトリウム(400mg、10ミリモル)をフラスコ2に添加し、撹拌した。フラスコ2の内容物をカニューレ移入によってフラスコ1に添加した。フラスコ1の水素化ナトリウム/PVA混合物は、淡黄色の懸濁液に見えた。20分間撹拌した後、ブロモメチルアントラキノン(300mg、1ミリモル)を反応物に添加した。5分後、混合物は深い黄褐色となり、溶解していない固体は非常に僅かであった。この混合物を90分間撹拌した。0.5mlの水を添加して反応を停止した後、更に30分間撹拌した。その後、10.5mL(10.5ミリモル)の1M塩酸をフラスコ1に添加することで、脱プロトン化PVAを中和して混合物を可溶化するのを支援し、その結果、混合物は淡黄色となった。フラスコ1の内容物を1.5Lのアセトンを含む新たなフラスコ(フラスコ3)中に滴下し、15分間撹拌する間に、淡黄色の沈殿物が形成された。沈殿物を10分間沈殿させた後、沈殿物の体積を減少させるためにデカントした。次に、デカントした沈殿物を氷浴上で真空濾過した。その後、固体をアセトンで洗浄し、真空乾燥した。
【0108】
実施例5:カーボンファイバーディスクの調製
カーボンファイバー/ポリビニルエステルディスク(直径8.5mm)の対象とする検知面を220グリットの紙やすりで擦った。その後、擦ったディスクを100mlのビーカー中に配置し、次にそこに、1分間の超音波処理と共に50mlのヘキサン(VWR)を添加した。過剰なヘキサンをビーカーから除去した。50mlのエタノール(VWR)をビーカーに添加し、超音波処理を1分間継続した後、過剰なエタノールを除去した。再度50mlのエタノールをビーカーに添加し、ディスクを1分間超音波処理した後、過剰なエタノールを除去することによって、第3の洗浄ステップを完了した。その後、洗浄したディスクを使用まで乾燥した状態で保管した。
【0109】
実施例6:プレゲル混合物I
0.06gのビニルフェロセン、0.06gのビスアクリルアミド、及び1.88gのDMAAを清潔なバイアルに添加することで、2gのヒドロゲルモノマー溶液を得た。バイアルの内容物を混合して、ビニルフェロセンを溶解させた。保管の前に、バイアルのヘッドスペースに、10秒間アルゴン流をバイアル中に穏やかに流し込むことによって乾燥アルゴンガスでパージした。その後、バイアルの上にキャップを配置し、バイアルを冷凍庫(-18~-22℃)の中で最大1週間保管した。
【0110】
実施例7:プレゲル混合物II
0.10gのビニルフェロセン、1.0gのポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、及び8.9gのDMAAを清潔なバイアルに添加することで、10gのヒドロゲルモノマー溶液を得た。バイアルの内容物を混合して、ビニルフェロセンを溶解させた。保管の前に、バイアルのヘッドスペースに、10秒間アルゴン流をバイアル中に穏やかに流し込むことによって乾燥アルゴンガスでパージした。その後、バイアルの上にキャップを配置し、バイアルを冷凍庫(-18~-22℃)の中で最大1週間保管した。
【0111】
実施例8:カーボンファイバー電極を持つヒドロゲルのその場(in-situ)形成
油浴を予熱して、幅広の撹拌棒を用いて50~100rpmの速度で撹拌しながら、75℃(+/-2℃)にて平衡化した。20mgのAIBN、0.75mlのモノマー溶液、及び3.0mlのn-ブタノールを20mlのバイアルに添加し、混合してAIBNを溶解させた。擦って洗浄したカーボンファイバーディスクを積み重ね、擦った面を上にしてバイアルの底に加えた。マイクロ撹拌棒をバイアルのディスクの上に加えた。次に、バイアルを10秒間超音波処理した。その後、ステンレス鋼の中空針を使用して、バイアル中の溶液に1分間アルゴンを散布し、20秒間隔で穏やかに回して混合した。その後、バイアルにしっかりと蓋をし、バイアルの液体内容物が油位から1cm下に位置するように油浴中に浸漬した。油浴中にある間、バイアルの液体内容物を、マイクロ撹拌棒によって約50~100rpmの速度で混合して、カーボンファイバーディスクが外れないように溶液を穏やかにかき混ぜた。ゲル化は、油浴中に約20分及び60分間置いた後に生じ、マイクロ撹拌棒の不動化によって可視化する。合計90分油浴中に置いた後、バイアルを除去し、周囲温度に冷却させた。
【0112】
実施例9:ヒドロゲル電極の洗浄及び保管
金属製のスパチュラを使用して、カーボンファイバーディスクが外れるようにヒドロゲル溶液を壊す。15mlのエタノール(95%)を、カーボンファイバーディスクを含むバイアルに加えた後、バイアルを12~18時間撹拌及び混合して、ヒドロゲル溶液を膨潤させる。次に、過剰なエタノール及び膨潤したヒドロゲルをバイアルから除去する。15mlのエタノール/水の溶液(1:1)をバイアル内のディスクに添加し、2時間撹拌した後、過剰な溶液をバイアルから除去する。次に、15mlの水をバイアル内のディスクに添加し、更に2時間撹拌する。
【0113】
かみそり刃を使用して、表面と縁部との両方にわたってやさしく擦ることによって、過剰なヒドロゲルをそれぞれの電極の表面から除去する。次に、電極を10分間紙(Kimwipe)の上で乾燥する。その後、電極を、ラベルを付けた清潔なねじ式キャップ付きバイアルに移す。
【0114】
実施例10:フェロセンカルボキシアルデヒドを使用するフェロセン/PVAアセタールの調製
表16を参照して、ポリビニルアルコール(2.0gm、4.55×10-2当量)を、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP、50mL)中で、一晩室温で撹拌して溶解させた。次に、フェロセンカルボキシアルデヒド(500mg、2.34×10-3モル)を、この撹拌した溶液に添加した。その後、濃塩酸(1.0mL)を添加し、結果として得られた溶液を48時間室温で撹拌した。NMP溶液を勢いよく撹拌した酢酸エチル(250mL)にゆっくりと添加することで、ポリマーを沈殿させた。添加が完了した後、酢酸エチルをポリマーからデカントし、続いてそれを2回酢酸エチル(それぞれ250mL)中で撹拌して、残留しているNMP及び未結合のフェロセンカルボキシアルデヒドを除去した。ポリマーを濾過によって単離し、酢酸エチルで洗浄した後、真空乾燥した。
【0115】
【0116】
実施例11:カーボンファイバー材料上のフェロセン/PVAアセタールヒドロゲル形成
SEN-01-46bを調製したカーボンファイバーディスクに溶液として適用し、続いて乾燥し硬化させて不溶性にする。
【0117】
あるいは、SEN-01-46b溶液をまず純粋PVA溶液と混合して、フェロセンのモル%濃度を調整する。次に、調整したSEN-01-46b溶液を調製したカーボンファイバーディスクに適用する。その後、無水マレイン酸、マレイン酸、グルタルアルデヒド、ジイソシアネート、ジビニルエーテル、過ヨウ素酸塩、又は任意の一般的ジアルデヒドからなる群から選択される架橋剤を溶液に添加して、調製した炭素材料上のヒドロゲルの形成を促進する。