(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】電極水の回収方法、及び超純水、もしくは製薬用水製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/20 20230101AFI20230327BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20230327BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20230327BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230327BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20230327BHJP
【FI】
C02F1/20 Z
B01D19/00 A
B01D19/00 F
B01D19/00 G
B01D61/44 520
C02F1/44 J
C02F1/469
(21)【出願番号】P 2021171016
(22)【出願日】2021-10-19
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 俊和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 規彦
(72)【発明者】
【氏名】鳥村 修平
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 貴次
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124672(JP,A)
【文献】特開2000-042530(JP,A)
【文献】特開2021-102200(JP,A)
【文献】特開2003-170169(JP,A)
【文献】特開平09-299710(JP,A)
【文献】特開2000-079315(JP,A)
【文献】特開2014-167248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20-1/26,1/30-1/38
B01D 19/00-19/04
C02F 1/46-1/48
C02F 1/44
B01D 53/22,61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水製造工程において、被処理水が電気脱イオン処理における陰極室を通ることで生成される電極水から水素ガスを除去して回収する電極水の回収方法であって、
前記電極水を、スクラバに充填された充填物の上に散布すると共に、前記充填物の下から不活性ガスを供給して前記電極水中の前記水素ガスと反応させ、当該反応により生成される処理ガスを前記充填物の上方の排気口から排気し、前記水素ガスが除去された処理水を
前記充填物の下方の排水部から重力で排水して回収することを特徴とする電極水の回収方法。
【請求項2】
前記スクラバにおける前記充填物の下方に設けられた液槽に前記処理水を貯留し、前記液槽の水位を水位センサで検知し、前記水位が所定の水位を保つように、前記液槽の排水部に設けられたバルブを開閉する、請求項1に記載の電極水の回収方法。
【請求項3】
前記スクラバにおける前記充填物の下方に設けられた液槽に前記処理水を貯留し、
前記液槽の排水部は、前記液槽に開口する排水口から上方に向かう上行管と、前記上行管の上端から折り返して下方に向かう下行管を有し、
前記上行管の中に封水を形成し、前記液槽の水位が前記上行管の上端を超えたときに前記処理水が越流して前記下行管へ流れるようにする、請求項1に記載の電極水の回収方法。
【請求項4】
請求項1~請求項
3の何れか1項に記載の電極水の回収方法により回収された処理水を超純水の製造のために再利用する、超純水、もしくは製薬用水製造方法。
【請求項5】
前記回収した処理水を、原水を貯留するピットもしくは、前処理水を貯留するピットに還流する、請求項
4に記載の超純水、もしくは製薬用水製造方法。
【請求項6】
前記スクラバに供給するガスの少なくとも一部に、前記ピットをシールする不活性ガスの排気を用いる、請求項5に記載の超純水、もしくは製薬用水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極水の回収方法、及び超純水、もしくは製薬用水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水、超純水、精製水や注射用水などの製薬用水製造において、電気脱イオン装置は広く使われている。この装置では、被処理水中に外部から印加した電場により、水中のイオン成分を脱塩し、処理水を得るとともに、除去されたイオンが濃縮された濃縮水と、電場を印加する電極と接した被処理水が排出されて生じる電極水が生じる。装置によっては濃縮水と電極水は混合物として排出される場合がある。
濃縮水には高濃度のイオンが含まれており、また、電極水には、電場を印加する際に生じる水素や酸素が含まれている場合がある。しかし、これらの排出水を回収して再利用することにより、水の使用率を高めることが試みられている。
【0003】
たとえば、電気脱イオン装置から排出され水素ガスを含む電極水の処理方法として、触媒を充填したカラムに電極水を上昇流で通水し、水素ガスと酸素ガスを、貴金属触媒を用いて反応させて水を生成し、水素ガスを除去する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素ガスを含む電極水から水素ガスを除去して回収することで、水を安全に再利用することができる。また、電極水を回収することで、効率よく、純水、超純水、製薬用水を製造することができる。
【0006】
しかしながら、上記した従来例のように、水素ガス除去のために触媒を用いると高コストとなる。また、被処理水を触媒に通すには、加圧のためのポンプが必要となり、更に高コストとなる。一般的に、電極水は被処理水のうち、例えば5~10%程度なので、回収することによる水回収率の向上は、5~10%程度しか見込まれないので、このコストアップは大きな問題である。
【0007】
一般的に、純水は、ピットに貯留した原水を凝集沈殿、活性炭処理、重力濾過等で前処理した前処理水を前処理水として前処理ピットに貯留し、これを2床3塔装置、逆浸透装置、電気脱イオン装置、混床式イオン交換装置、紫外線処理装置、脱気装置等で処理して製造される。超純水は、純水(1次処理水)を純水タンクに貯留し、さらに、紫外線処理装置、脱気装置、混床式イオン交換装置、UFろ過装置等で処理して製造される。純水や超純水の場合、製造する規模が特に大きいため、わずかな割合の水の回収であっても、水量としては大きくなるので、水回収向上が大きな課題となる場合が多い。
【0008】
また、精製水は、逆浸透装置、電気脱イオン装置、混床式イオン交換装置等で処理して製造される。注射用水は、精製水を蒸留もしくはUFろ過装置で処理し、80℃に加熱した状態で製造される。製薬用水の製造規模は、それほど大きくはないが、それでも水回収率の向上は課題となる。
【0009】
本開示は、コストの上昇を抑制しつつ、電極水の回収率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様に係る電極水の回収方法は、超純水製造工程において、被処理水が電気脱イオン処理における陰極室を通ることで生成される電極水から水素ガスを除去して回収する電極水の回収方法であって、前記電極水を、スクラバに充填された充填物の上に散布すると共に、前記充填物の下から不活性ガスを供給して前記電極水中の前記水素ガスと反応させ、当該反応により生成される処理ガスを前記充填物の上方の排気口から排気し、前記水素ガスが除去された処理水を回収する。
【0011】
この電極水の回収方法では、水素ガスを含む電極水を、スクラバにおいて水素ガスを除去し、水素ガスが除去された処理水を回収する。また、スクラバの充填物の上に散布された電極水は、充填物を伝いつつ重力で下方へ移動する。その間に電極水に含まれる水素ガスが不活性ガスと反応して除去される。したがって、電極水を触媒に通す場合と比較して、水素ガスが除去された電極水(処理水)を効率的に回収することができる。
【0012】
第2の態様に係る電極水の回収方法は、第1の態様に係る電極水の回収方法において、前記水素ガスが除去された処理水を前記充填物の下方の排水部から重力で排水して回収する。
【0013】
この電極水の回収方法では、水素ガスが除去された処理水を重力で排水して回収するので、送液のためのポンプが不要である。
【0014】
第3の態様は、第1の態様に係る電極水の回収方法において、前記スクラバにおける前記充填物の下方に設けられた液槽に前記処理水を貯留し、前記液槽の水位を水位センサで検知し、前記水位が所定の水位を保つように、前記液槽の排水部に設けられたバルブを開閉する。
【0015】
この電極水の回収方法では、液槽の水位が、所定の水位を保つように排水部のバルブを開閉する。これにより、充填物の下に供給された不活性ガスが排水部から流出することが防止されるので、不活性ガスが上方の充填物に向かい、水素ガスと反応する。このため、水素ガスの除去を効率的に行うことができる。
【0016】
第4の態様は、第1の態様に係る電極水の回収方法において、前記スクラバにおける前記充填物の下方に設けられた液槽に前記処理水を貯留し、前記液槽の排水部は、前記液槽に開口する排水口から上方に向かう上行管と、前記上行管の上端から折り返して下方に向かう下行管を有し、前記上行管の中に封水を形成し、前記液槽の水位が前記上行管の上端を超えたときに前記処理水が越流して前記下行管へ流れるようにする。
【0017】
この電極水の回収方法では、排水部が上行管と下行管を有しており、液槽の水位が上行管の上端を超えたときに処理水が越流して下行管へ流れる。液槽の水位が上行管の上端に至らないときには、処理水が排水されない。液槽の水位が、液槽に開口する上行管の排水口より上になるまで一旦処理水を貯留しておけば、上行管の中に封水が形成される。これにより、充填物の下に供給された不活性ガスが排水部から流出することが防止されるので、不活性ガスが上方の充填物に向かい、水素ガスと反応する。このため、水素ガスの除去を効率的に行うことができる。
【0018】
第5の態様に係る超純水、もしくは製薬用水製造方法は、第1~第4の態様の何れか1態様に係る電極水の回収方法により回収された処理水を超純水の製造のために再利用する。
【0019】
この超純水、もしくは製薬用水製造方法では、電極水から水素ガスを除去した処理水を回収し、この処理水を超純水の製造のために再利用するので、水資源を有効に活用することができる。
【0020】
第6の態様に係る超純水、もしくは製薬用水製造方法は、第5の態様に係る超純水、もしくは製薬用水製造方法において、前記回収した処理水を、原水を貯留するピットもしくは、前処理水を貯留するピットに還流する。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、コストの上昇を抑制しつつ、電極水の回収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】超純水製造システムを示した概略構成図である。
【
図2】電気脱イオン処理装置の構成と作用を示す概略構成図である。
【
図3】スクラバと排水部の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】スクラバと排水部の他の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0024】
図1から
図4において、本実施形態に係る電極水の回収方法、及び超純水製造方法について説明する。これらの方法が用いられる超純水製造システム10は、一次純水装置12と二次純水装置112とを備えている。なお、この超純水製造システム10の構成は一例であり、本実施形態に係る電極水の回収方法に関係しない部位については、適宜変更可能である。
【0025】
(一次純水装置12)
一次純水装置12は、
図1に示されるように、被処理水が貯留される被処理水ピット14、第一ポンプ18、流量計(FIQ)20、熱交換器(HEX)22、活性炭装置(AC)24、及び紫外線酸化装置(UV)26を備えている。さらに、一次純水装置12は、第二ポンプ34、第一逆浸透膜装置(RO)38、脱イオン水ピット40、電気式脱イオン装置(EDI)42、イオン交換樹脂装置44、スクラバ200、及び純水タンク46を備えている。
【0026】
そして、被処理水が流れる流れ方向の上流側から順に、被処理水が流れる主流路100に沿って被処理水ピット14、第一ポンプ18、流量計20、熱交換器22、活性炭装置24、紫外線酸化装置26、第二ポンプ34、第一逆浸透膜装置38、脱イオン水ピット40、電気式脱イオン装置42、イオン交換樹脂装置44、及び純水タンク46が並んでいる。
【0027】
以下各装置について説明する。
被処理水ピット14は、被処理水を貯留する。被処理水は、原水であって、被処理水としては、工業用水、水道水、地下水、河川水、井水などが挙げられる。第一ポンプ18は、被処理水ピット14に貯留された被処理水を、主流路100に沿って、被処理水の流れ方向(以下「水流れ方向」という場合がある)の下流側へ流す。
【0028】
流量計20は、主流路100を流れる被処理水の流量を計測する。熱交換器22は、被処理水の温度を熱交換によって調整する。活性炭装置24は、吸着処理によって、被処理水から、天然有機物、残留塩素、及びトリハロメタン等を除去する。紫外線酸化装置26は、紫外線照射により、被処理水に含まれる生菌、バクテリアなどを分解して殺菌処理する。
【0029】
第二ポンプ34は、高圧ポンプであって、ろ過装置30によって不純物が除去された被処理水を、第一逆浸透膜装置38へ流す。
【0030】
第一逆浸透膜装置38には、被処理水が透過する逆浸透膜が設けられ、第一逆浸透膜装置38は、逆浸透膜処理によって、イオン、塩類を除去した透過水と、濃縮水とに被処理水を分離する。
【0031】
脱イオン水ピット40は、第一逆浸透膜装置38の逆浸透膜を透過した透過水を一時的に貯留する。電気式脱イオン装置42は、被処理水(脱イオン水ピット40の貯留水)を電気的に再生しながら、脱イオン処理を行い、濃縮水が混合された電極水(電極水と記載)と処理水を排出する。スクラバ200は、電気式脱イオン装置42から排出された電極水から水素ガスを除去する。イオン交換樹脂装置44は、電気式脱イオン装置42から流出した被処理水に微量残留する無機イオンを除去する。純水タンク46は、一次純水装置12によって製造された一次純水を貯留する。
【0032】
〔電気式脱イオン装置42〕
図2において、電気式脱イオン装置42は、対向して配置された陰極室42aと陽極室42bを有し、その間にイオン交換膜で区画された濃縮室42cと脱塩室42dが交互に配置されている。陰極室42aと陽極室42bは、それぞれ濃縮室42cが隣接している。図示の例では、イオン交換膜として、カチオン交換膜42eとアニオン交換膜42fが、陰極室42a側から陽極室42b側に向かって交互に配置されている。脱塩室42dには、イオン交換樹脂(図示せず)が満たされている。
【0033】
脱塩室42dには被処理水が通され、濃縮室42c、陰極室42a及び陽極室42bには被処理水と濃縮水の混合水が通される。被処理水中のイオンは、脱塩室42dにおいてイオン交換樹脂で吸着され、印加された直流電位の力で脱塩室42dから濃縮室42cに向けてイオン交換膜を通って移動する。そして、被処理水が脱塩室42d内を移動するにしたがって、イオンが取り除かれて行く。取り除かれたイオンは、濃縮水、陽極水、及び陰極水に移動する。濃縮室42cより排出される濃縮水は、一部電極水と混合して排出され、残りは濃縮室42cに循環される。陰極室42aと陽極室41bを通った電極水は、電極水として排出される。水素ガスを比較的多く含む電極水はスクラバ200に送られる。なお、電気式脱イオン装置42から排出された濃縮水を被処理水ピット14に戻さず、電極水と混合してスクラバ200に送ってもよい。つまり、スクラバ200に供給される液体は電極水に限定されず、電極水と濃縮水が混合された水であってもよい。
【0034】
電気脱イオン装置の構成としては、本構成に限定されない。
濃縮水の循環は行われなくても良い。また、濃縮室42c、陽極室42b、陰極室42aにイオン交換樹脂、イオン交換繊維等の導電性物質が充填されていても良い。
脱塩室42dに充填するイオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を混合したものを用いることが好ましいが、この組み合わせに限定されない。また、他のイオン交換樹脂やイオン交換繊維等の導電性物質を単独で、もしくは上記に混合して充填しても良い。
【0035】
電気脱イオン装置としては、市販の電気脱イオン装置が特に限定なく使用できる。例えば、MKシリーズ(E-Cell社製)、VNXシリーズ(IONPURE社製)等が例示される。
【0036】
〔スクラバ200〕
図3には、スクラバ200の一例が示されている。スクラバ200は、脱気装置の一例であり、例えば円筒形の脱気塔202とその下部に配設した液槽203からなる。脱気塔202の上部にはスプレー部204が設けられている。スプレー部204には、脱気塔202内に電極水を導入するための給水配管206が接続されている。電極水は、電気式脱イオン装置42の排出圧力によりスクラバ200に流入するようになっている。脱気塔202の下部には、目皿205が設けられている。目皿205は、気体、液体を流通する通気孔を有すると共に、脱気塔202と液槽203を区画している。目皿205の上には、所定量の充填物208が配置されている。脱気塔202における充填物208の上方、例えば天井部には、排気口212が設けられている。充填物208としては、例えば、テラレット(登録商標)を用いることが可能である。
【0037】
スプレー部204は、スプレーノズル210を有している。スプレーノズル210は、脱気塔202の中心部における充填物208の真上に配置されている。このスプレーノズル210は、電極水を広角に霧状(微粒子状)に噴射して、充填物208の表面全体に供給できるようになっている。
【0038】
液槽203の上部には、ガス分散器214が設けられている。ガス分散器214には、不活性ガスの一例としての窒素ガスが供給される。窒素ガスは、脱気塔202内を上方から下方に流れる電極水に向かって、充填物208で形成される空隙部を通って上方に流れる。電極水中の水素ガスの除去は、充填物208の表面を流下する液と、充填物208の空隙部を上昇する窒素ガスの気液間接触により、それぞれの流体中のガス分圧差を推進力として行われる。電極水は、充填物208で水素ガスが除去されたあと、液槽203内に流下し、排水部216から重力で排水して、例えば被処理水ピット14(
図1)に戻され回収される。なお、重力で排水可能であれば、地下タンク等(図示せず)に回収して再利用してもよい。また、脱気塔202の上部に達した窒素ガス及び電極水から除去された水素ガスからなる処理ガスは、排気口212から排出される。回収された処理水228は、超純水の製造のために再利用することができる。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ネオン等が使用可能である。爆発を避けられる条件で運転できる場合には、空気で代用することも可能である。また、回収された処理水228の回収先のピット、もしくは、純水製造プロセスのピットもしくはタンクの上部に不活性ガスを充てんしてシールしている場合、その不活性ガスの排気を利用することも可能である。例えば、
図1におけるタンク46の上部が窒素ガスでシールされている場合、タンク46の排気が使用可能である。
【0039】
排水部216は、例えばL字形に形成された排水管218と、排水管218に設けられたバルブ220とを有している。排水部216の排水口222は、例えば液槽203の側部に開口している。一方、液槽203の側部には、液槽203に貯留された処理水228の水位を検知するための水位センサ224が設けられている。水位センサ224の信号は、制御部226に送られる。制御部226は、水位が所定の水位を保つように、バルブ220を開閉する。例えば、制御部226は、処理水228の水位が排水部216の排水口222より高いときにバルブ220を開放し、そうでないときにバルブ220を閉じるようになっている。また、液槽203の水位に、上限設定値と下限設定値を設け、処理水228の水位が下限設定値のときにバルブ220を閉じ、処理水228の水位が上限設定値を超えたときにバルブ220を開放するようにして、処理水228の水位が上限設定値と下限設定値の間を保つようにしても良い。水位センサとしては、例えば、圧力センサ、静電容量センサ、差圧式センサ、フロート式センサ等が使用可能である。
【0040】
図4には、スクラバ200の他の例が示されている。このスクラバ200では、排水部216が、液槽203に開口する排水口222から上方に向かう上行管230と、上行管230の上端から折り返して下方に向かう下行管234を有している。上行管230の中には封水が形成され、液槽203の水位が水位232を超えたときに処理水228が越流して下行管234へ流れるようになっている。液槽203内の不活性ガスの圧力により、上行管230内の水位は液槽203内の水位よりも少し高くなるため、水位が上限水位232まで上昇すると、上行管230から下行管234への越流が生じる。他の構成は、
図3のスクラバ200と同様である。
図4の装置では、必要に応じ、
図3と同様のバルブや水位センサを設置して制御することも可能である。
【0041】
〔第二逆浸透膜装置48〕
第二逆浸透膜装置48は、
図1に示されるように、第一逆浸透膜装置38から分岐する分岐流路102の途中に配置されている。分岐流路102は、第一逆浸透膜装置38によって分離した濃縮水が流れる流路であって、一端が第一逆浸透膜装置38に接続され、他端が被処理水ピット14に接続されている。
【0042】
第二逆浸透膜装置48には、濃縮水が透過する逆浸透膜が設けられ、第二逆浸透膜装置48は、逆浸透膜処理によって、第一逆浸透膜装置38によって分離した濃縮水からイオン、塩類を除去した処理水と、排水とに分離する。排水は、排水ピット52に貯留され、処理水は、被処理水ピット14に戻される。
【0043】
第一逆浸透膜装置38、及び、もしくは、第二逆浸透膜装置48において、スケールの生成はバイオファウリングの発生の懸念がある場合には、第一逆浸透膜装置38の前段において、スケール防止剤、スライムコントロール剤、pH調整剤等を添加することも可能である。スケール防止剤、スライムコントロール剤、pH調整剤としては、市販のものを特に限定なく使用可能である。添加方法としては、例えば、第二ポンプ34の前段にエゼクターを設置して注入することが可能である。
【0044】
〔イオン交換樹脂装置44〕
イオン交換樹脂装置44は、前段の電気式脱イオン装置42の処理水に残留したイオン成分をさらに除去する。たとえば、非再生式の混床式のイオン交換樹脂塔が例示される。イオン交換樹脂装置44には、例えば、強酸性イオン交換樹脂及び強塩基性イオン交換樹脂の混合物が充填されるが、ホウ素選択性イオン交換樹脂等の他のイオン交換樹脂を混合させることも可能である。混床式ではなく、複層床式とすることも可能である。単床式の2塔以上の多塔式のイオン交換装置を用いることも可能である。また、ここで例示したイオン交換樹脂を単床として用いることも可能である。イオン交換樹脂装置44の構成は、電気式脱イオン装置42の処理水の水質、最終的に得られる超純水の水質を考慮して、任意に選択可能である。
【0045】
(二次純水装置112)
二次純水装置112は、
図1に示されるように、水流れ方向において、純水タンク46の下流側に配置されている。
【0046】
この構成において、二次純水装置112は、一次純水からさらに不純物を取り除く。そして、二次純水装置112によって得られた超純水は、使用場所であるユースポイント120へ送られる。ユースポイント120へ送られた超純水のうち、使用されなかった超純水はそのまま純水タンク46へ戻され、一次純水と一緒に純水タンク46に貯留される。
【0047】
(電極水の回収方法)
電極水の回収方法は、超純水製造工程において、被処理水が電気脱イオン処理における陰極室42aを通ることで生成される電極水から水素ガスを除去して回収する電極水の回収方法であって、電極水を、スクラバ200に充填された充填物208の上に散布すると共に、充填物208の下から不活性ガスを供給して電極水中の水素ガスと反応させ、当該反応により生成される処理ガスを充填物208の上方の排気口212から排気し、水素ガスが除去された処理水228を充填物208の下方の排水部216から重力で排水して回収する。
【0048】
この電極水の回収方法では、水素ガスを含む電極水を電気式脱イオン装置42からの電極水の排出圧力によりスクラバ200に通し、スクラバ200において水素ガスを除去し、水素ガスが除去された処理水228を重力で排水して回収するので、送液のためのポンプが不要である。また、スクラバ200の充填物208の上に散布された電極水は、充填物208を伝いつつ重力で下方へ移動する。その間に電極水に含まれる水素ガスが不活性ガスと反応して除去される。したがって、電極水を触媒に通す場合と比較して、水素ガスが除去された電極水(処理水228)を効率的に回収することができる。
【0049】
スクラバ200における充填物208の下方に設けられた液槽203に処理水228を貯留し、液槽203の水位を水位センサ224で検知し、水位が液槽203に開口する排水部216の排水口222より高いときに、排水部216に設けられたバルブを220開放してもよい。
【0050】
この場合、液槽203の水位が、該液槽203に開口する排水部216の排水口222より高いときに、排水部216のバルブ220を開放する。液槽203の水位が排水口222以下のときには、バルブ220を閉じる。これにより、充填物208の下に供給された不活性ガスが排水部216から流出することが防止されるので、不活性ガスが上方の充填物208に向かい、水素ガスと反応する。このため、水素ガスの除去を効率的に行うことができる。
【0051】
また、スクラバ200における充填物208の下方に設けられた液槽203に処理水228を貯留し、排水部216が、液槽203に開口する排水口222から上方に向かう上行管230と、上行管230の上端232から折り返して下方に向かう下行管234を有し、上行管230の中に封水を形成し、液槽203の水位が上行管230の上端232を超えたときに処理水228が下行管234へ流れるようにしてもよい。
【0052】
この場合、排水部216が上行管230と下行管234を有しており、液槽203の水位が上行管230の上端232を超えたときに処理水228が下行管234へ流れる。液槽203の水位が上行管230の上端232に至らないときには、処理水228が排水されない。液槽203の水位が、液槽203に開口する上行管230の排水口222より上になるまで一旦処理水228を貯留しておけば、上行管230の中に封水が形成される。これにより、充填物208の下に供給された不活性ガスが排水部216から流出することが防止されるので、不活性ガスが上方の充填物208に向かい、水素ガスと反応する。このため、水素ガスの除去を効率的に行うことができる。また、水位センサ224や制御部226(
図3)が必要ないので、コストの増加を抑制できる。
【0053】
このように、本実施形態に係る電極水の回収方法によれば、コストの上昇を抑制しつつ、電極水の回収率を高めることができる。
また、電極水をそのまま回収して、純水・超純水、製薬用水製造に再利用する場合、水素によって、OHラジカル等が消費されるため、これらの製造装置に組み込まれている紫外線装置(紫外線酸化装置および紫外線殺菌装置)の性能が低下する。この影響も回避して、効率よく純水・超純水、製薬用水製造をすることが可能である。
【0054】
(超純水製造方法)
超純水製造方法は、上記超純水製造システム10を用いた超純水製造工程において、上記電極水の回収方法により回収された処理水228を超純水の製造のために再利用する。
【0055】
この超純水製造方法では、電極水から水素ガスを除去した処理水228を回収し、この処理水228を超純水の製造のために再利用するので、水資源を有効に活用することができる。また、本実施形態を用いる場合、新たに必要となる機器としては、スクラバ200と若干のバルブと配管のみであり、コストを著しく抑制した上で、水回収率を向上可能である。
【0056】
本実施形態に係る電極水回収方法は、半導体、液晶等の製造用の純水、超純水製造や、精製水、注射用水等の製薬・医薬用水の製造に用いる電気脱イオン装置に用いることが可能である。
【0057】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
200 スクラバ
203 液槽
208 充填物
212 排気口
216 排水部
220 バルブ
222 排水口
224 水位センサ
228 処理水
230 上行管
232 上端
234 下行管
【要約】
【課題】コストの上昇を抑制しつつ、電極水の回収率を高める。
【解決手段】電極水の回収方法は、超純水製造工程において、被処理水が電気脱イオン処理における陰極室を通ることで生成される電極水から水素ガスを除去して回収する電極水の回収方法であって、電極水を、スクラバ200に充填された充填物208の上に散布すると共に、充填物208の下から不活性ガスを供給して電極水中の水素ガスと反応させ、当該反応により生成される処理ガスを充填物208の上方の排気口212から排気し、水素ガスが除去された処理水228を回収する。
【選択図】
図3