(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】チャットサーバおよびクライアント制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/015 20230101AFI20230327BHJP
【FI】
G06Q30/015
(21)【出願番号】P 2021510631
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014142
(87)【国際公開番号】W WO2020202299
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】521349347
【氏名又は名称】クラウドサーカス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】笠間 涼
(72)【発明者】
【氏名】田宮 幸子
(72)【発明者】
【氏名】曽根 弘介
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-079574(JP,A)
【文献】特開2019-049900(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが操作するクライアントにネットワーク接続されたチャットサーバにおいて、
1以上の質問事項から構成され、質問の内容、当該質問の提示順序、及び当該質問に対してユーザが回答を入力するためのユーザインターフェースの種別の変更から構成される質問事項を1以上含む質問仕様を保持する質問格納部と、
前記質問格納部に保持された質問仕様に応じて質問データを生成し、当該質問データをクライアントに送信すると共に、当該質問データに基づきチャット形式で逐次的にユーザに
前記質問事項毎に提示した質問に対して、ユーザが入力した回答の内容と、ユーザが回答に要した時間を特定可能な回答時間情報とをクライアントから受信するチャット処理部と、
ユーザに
前記質問事項毎に提示した質問のそれぞれに関して、前記クライアントから受信した回答の内容および回答時間情報を保持する回答格納部と、
前記回答格納部に保持された
複数の前記ユーザのそれぞれについての質問毎の回答時間情報を統計的に分析し、分析結果を管理権限者に提示する回答分析部と、
前記分析結果が提示された前記管理権限者の編集に応じて、
前記質問格納部に保持された質問仕様において、1以上の新たな質問事項の追加、前記1以上の質問事項のうち1以上の削除、並びに、所定の前記質問事項についての、前記質問の内容の変更、前記質問の提示順序の変更、および、前記質問に対してユーザが回答を入力するためのユーザインターフェースの種別の変更のうちの少なくとも一つを許容することで、当該質問仕様を更新して、次回以降に質問を提供するために新たに登録する質問編集部と、
を有することを特徴とするチャットサーバ。
【請求項2】
前記質問データは、前記クライアント側で実行されるコンピュータプログラムにデータとして取り込まれ、これによって、前記クライアント側において、ユーザへの質問の提示が行われることを特徴とする請求項1に記載されたチャットサーバ。
【請求項3】
前記質問データは、前記質問仕様によって規定された前記
1以上の質問事項毎の前記質問の内容のすべてを含み、
前記チャット処理部は、ユーザへの質問の提示に先立つタイミングで、前記質問データを前記クライアントに一括で送信することを特徴とする請求項2に記載されたチャットサーバ。
【請求項4】
前記質問データは、前記質問仕様によって規定された前記
1以上の質問事項毎の前記質問の内容の一部を含み、
前記チャット処理部は、ユーザへの質問の提示に先立つタイミング、および、チャット形式によるユーザとのやり取りの途中で、前記質問データを前記クライアントに繰り返し送信することを特徴とする請求項2に記載されたチャットサーバ。
【請求項5】
前記質問データは、それぞれの質問に関する前記ユーザインターフェースの種別の指定を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載されたチャットサーバ。
【請求項6】
前記回答分析部は、前記分析結果として、ユーザの離脱率を質問毎に提示することを特徴とする請求項1に記載されたチャットサーバ。
【請求項7】
前記回答分析部は、前記質問仕様の変更の前後における前記分析結果を対比可能な形態で提示することを特徴とする請求項1に記載されたチャットサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャットサーバおよびクライアント制御プログラムに係り、特に、予め定められた一連の質問に対するユーザの回答をチャット形式で逐次的に収集する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク上におけるリアルタイムコミュニケーションであるチャット(chat)と呼ばれる手法が知られている。例えば、特許文献1には、ユーザ登録に際して、オペレータとユーザとの間のコミュニケーションを支援するシステムが開示されている。具体的には、
図13に示すように、携帯端末の表示部には、登録サービスを提供するオペレータ装置を相手とするチャット画面128を表示される。この表示部は、オペレータ・メッセージ132およびユーザ・メッセージ136をチャット画面128に時系列にて配列表示させる。オペレータ・メッセージ132のうち登録項目に対する質問をするためのメッセージは、質問に対する回答をユーザが選択可能な選択型インタフェースを含む。登録項目に関わるメッセージには、更に、再入力インタフェース134が付属している。再入力インタフェース134が選択されたときには、登録項目に関わるオペレータ・メッセージ132の再送信をオペレータ装置に要求する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アンケート、転職、電子商取引(EC)、アフィリエイトといった各種のサイトでは、所定の手続を行う上で必要なユーザ情報をユーザ端末から取得することが多い。そのための手法の一つして、複数の入力事項が記述された所定のフォームをユーザ端末に送信し、ユーザによって記入されたフォームを受信する手法が知られている。しかしながら、ユーザから記入済のフォームが返信されないケースも多く、コンバージョン率(すなわち、サイトの目標に達した数を目標に達する最初の段階に入った数で割った割合)が必ずしも良好ではないといった問題がある。また、サイト側が把握できるのは、フォームの返信がなかったという事実にとどまり、どの質問でユーザが回答に窮して離脱したのかといった個別的な傾向を把握することは困難である。それゆえに、コンバージョン率を高めるために質問の内容や順序などを見直そうにも、そのための有用な情報が存在しないというのが実情である。一方、フォームの送受信ではなく、質問毎に質問画面を切り替えながら、それぞれの質問画面においてユーザによる回答の入力を促す手法も知られている。この手法では、質問画面の遷移によって、ユーザの回答状況を質問毎に把握することが可能な反面、ある質問画面上において、従前の質問に対する回答の内容を確認することができないため、ユーザにとっての利便性などに難がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、質問毎のユーザの回答の傾向を分析して、コンバージョン率の向上に寄与することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、ユーザが操作するクライアントにネットワーク接続されており、質問格納部と、チャット処理部と、回答格納部と、回答分析部と、質問編集部とを有するチャットサーバを提供する。質問格納部は、質問仕様を保持する。この質問仕様は、少なくとも、ユーザに提示する一連の質問の内容、および、一連の質問の提示順序を含む。チャット処理部は、質問格納部に保持された質問仕様に応じて質問データを生成し、この質問データをクライアントに送信する。それとともに、チャット処理部は、質問データに基づきチャット形式で逐次的にユーザに提示した質問に対して、ユーザが入力した回答の内容と、ユーザが回答に要した時間を特定可能な回答時間情報とをクライアントから受信する。回答格納部は、ユーザに提示した質問のそれぞれに関して、クライアントから受信した回答の内容および回答時間情報を保持する。回答分析部は、回答格納部に保持された質問毎の回答時間情報を統計的に分析し、分析結果を管理権限者に提示する。質問編集部は、管理権限者の編集に応じて、質問格納部に保持された質問仕様を変更する。
【0007】
ここで、第1の発明において、上記質問データは、クライアント側で実行されるコンピュータプログラムにデータとして取り込まれ、これによって、クライアント側において、ユーザへの質問の提示が行われる。また、上記質問データは、質問仕様によって規定された一連の質問の内容のすべてを含んでいてもよい。この場合、上記チャット処理部は、ユーザへの質問の提示に先立つタイミングで、質問データをクライアントに一括で送信することが好ましい。また、これに代えて、上記質問データは、質問仕様によって規定された一連の質問の内容の一部を含んでいてもよい。この場合、上記チャット処理部は、ユーザへの質問の提示に先立つタイミング、および、チャット形式によるユーザとのやり取りの途中で、質問データをクライアントに繰り返し送信することが好ましい。
【0008】
第1の発明において、上記質問仕様は、クライアント側においてユーザが回答を入力するためのユーザインターフェースの種別を質問毎に規定しており、上記質問データは、それぞれの質問に関するユーザインターフェースの種別の指定を含むことが好ましい。また、上記質問編集部は、新たな質問の追加、質問内容の変更、質問の削除、一連の質問の提示順序の変更、および、質問に対してユーザが回答を入力するためのユーザインターフェースの種別の変更のうちの少なくとも一つを許容することが好ましい。また、上記回答分析部は、分析結果として、ユーザの離脱率を質問毎に提示してもよい。さらに、上記回答分析部は、質問仕様の変更の前後における分析結果を対比可能な形態で提示してもよい。
【0009】
第2の発明は、以下のステップを有する処理を、チャットサーバにネットワーク接続されたクライアント側のコンピュータに実行させるクライアント制御プログラムを提供する。第1のステップでは、ユーザに提示する一連の質問の内容、および、一連の質問の提示順序を少なくとも含む質問仕様に応じて生成された質問データを、外部システムから受信して、クライアント制御プログラムのデータとして取り込む。第2のステップでは、質問データに基づいて、ユーザに対して、チャット形式で逐次的に質問を提示する。第3のステップでは、提示した質問のそれぞれに対して、ユーザが入力した回答の内容と、ユーザが回答に要した時間を特定可能な回答時間情報とを、チャットサーバに送信する。
【0010】
ここで、第2の発明において、上記クライアント制御プログラムは、クライアントが備えるブラウザにて処理可能な言語で記述されており、このブラウザ上で動作することが好ましい。
【0011】
第2の発明において、上記質問データは、質問仕様によって規定された一連の質問の内容のすべてを含んでいてもよい。この場合、上記第1のステップは、ユーザへの質問の提示に先立つタイミングで、質問データをチャットサーバから一括で受信することが好ましい。また、これに代えて、上記質問データは、質問仕様によって規定された一連の質問の内容の一部を含んでいてもよい。この場合、上記第1のステップは、ユーザへの質問の提示に先立つタイミング、および、チャット形式によるユーザとのやり取りの途中で、質問データをチャットサーバから繰り返し受信することが好ましい。
【0012】
第2の発明において、上記質問データは、それぞれの質問に関して、クライアント側においてユーザが回答を入力するためのユーザインターフェースの種別の指定を含んでいてもよい。この場合、上記第2のステップは、ユーザに対する質問の提示に際して、質問データによって指定された種別のユーザインターフェースを表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、チャット形式でユーザに提示した個々の質問に関する回答時間情報を統計的に分析して、その分析結果を管理権限者に提示する。管理権限者は、分析結果を参考にして、質問の追加、変更、削除、提示順序の変更といった如く、質問仕様を編集する。これにより、質問仕様をユーザがより回答し易いものに見直すことができるので、コンバージョン率の向上に寄与することができる。
【0014】
第2の発明によれば、チャットサーバより提供された質問データをクライアント制御プログラムに取り込んだ上で、クライアント側においてクライアント制御プログラムを実行することによって、チャットサーバが統計的な分析を行う上で必要な回答時間情報をユーザ毎および質問毎に適切にクライアントから取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】クライアント制御プログラムのフローチャート
【
図6】テキスト入力によるチャット画面の一部の表示例を示す図
【
図7】ボタン選択によるチャット画面の部分的な表示例を示す図
【
図8】ファイルアップロードによるチャット画面の部分的な表示例を示す図
【
図9】カード選択によるチャット画面の部分的な表示例を示す図
【
図12】変形例に係るクライアント制御プログラムのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施形態に係るチャットサービスのネットワーク構成図である。本チャットサービスは、例えば、アンケートの回答、転職サイトを含む各種サイトの登録、電子商取引(EC)の商品購入、アフィリエイトの登録などに際して、ユーザ自身が設定する必要情報(以下、「ユーザ情報」という。)をチャット形式で収集するものであり、インターネットに代表されるネットワークに接続されたチャットサーバ1と、管理権限者が操作する管理権限者クライアント2と、ユーザ(回答者)が操作するクライアント、すなわち、ユーザ端末3とによって構成されている。本実施形態の特徴として、以下の点が挙げられる。第1に、チャットサーバ1およびユーザ端末3が連携することによって、ユーザに対して、時系列的な一連の質問をチャット形式で逐次的に提示することである。第2に、チャットサーバ1は、それぞれの質問について、ユーザの回答内容や回答に要した時間などを収集・分析し、その分析結果を管理権限者に提示することである。そして、第3に、管理権限者は、分析結果を参照して、質問の内容や提示順序などを見直して編集できることである。
【0017】
チャットサーバ1は、質問データを生成し、この質問データをユーザ端末3に送信する。ユーザに提示すべき質問は、後述する質問仕様として予め設定されている。また、質問の提示は、ユーザ端末3上で実行されるコンピュータプログラム(後述するクライアント制御プログラム)が質問データを取り込んだ上で、ユーザ端末3が制御することによって行われる。これにより、ユーザ端末3の表示画面上において、一連の質問の提示がチャット形式で逐次的かつ時系列的に行われる。この質問データには、ユーザからの回答により質問を出し分けするものも含まれる。ユーザインターフェースとしてチャットを用いる利点としては、それ以前におけるやり取りが表示画面上で確認できるため、質問毎に画面を切り替える表示形態と比較して、ユーザにとって従前の回答との整合性を図り易いことが挙げられる。
【0018】
また、チャットサーバ1は、ユーザによって入力された個々の質問に対する回答および回答時間に関する情報をユーザ端末3より受信して、これらを保持する。さらに、チャットサーバ1は、管理権限者クライアント2からの要求に応じて、ユーザの回答の傾向を分析し、その分析結果を管理権限者クライアント2に送信する。
【0019】
図2は、チャットサーバ1のブロック図である。このチャットサーバ1は、チャット処理部1aと、質問編集部1bと、回答分析部1cと、質問格納部1dと、回答格納部1eと、プログラム提供部1fとを主体に構成されている。チャット処理部1aは、質問格納部1dに保持された質問仕様に応じて質問データを生成し、この質問データをユーザ端末3に送信する。ユーザに提示する一連の質問は、管理権限者によって作成される質問仕様として予め定義されており、質問格納部1dに格納・保持されている。また、チャット処理部3は、それぞれの質問について、ユーザによって入力された回答の内容と、ユーザが回答に要した時間を特定可能な回答時間情報とをユーザ端末3から受信する。ユーザ毎および質問毎に収集された回答の内容および回答時間情報は、回答格納部1eに回答データとして保持される。
【0020】
質問編集部1bは、管理権限者の指示に応じて、質問仕様を新規に登録すると共に、質問格納部1dに保持された質問仕様の事後的な編集を許容する。事後的な編集としては、新たな質問の追加、質問内容の変更、質問の削除、一連の質問の提示順序の変更、質問に対してユーザが回答を入力するためのユーザインターフェースの種別の変更が挙げられ、システムの仕様として、これらの内の少なくとも一つが許容される。
【0021】
ここで、管理権限者によって設定される質問仕様には、少なくとも、ユーザに提示する複数の質問の内容と、これらの質問の提示順序とが含まれている。
図3は、管理権限者が操作する管理権限者クライアント2上における質問仕様の設定画面の表示例であり、一例として、転職に関するユーザ情報の収集について示している。同図の設定画面上において、管理権限者は、例えば、ユーザの名前を入力すべき旨の質問を対話調のテキスト文として入力すると共に、ユーザの回答に対するリアクション(オプション)として、対話調のテキスト文を追加入力する。また、特定のユーザAにはユーザA向けの、これとは別のユーザBにはユーザB向けのリアクションといった如く、ユーザの回答に対し個別のリアクションを設定することも可能である。さらに、質問仕様において、質問の内容およびその提示順序の他に、ユーザが回答を入力するためのユーザインターフェースの種別(UI種別)も規定することができる。UI種別としては、テキスト入力、ボタン選択、ファイルアップロード、カード選択、カレンダー選択(日付選択)などが存在する。管理権限者によって設定された質問仕様は、チャットサーバ1にアップロードされ、質問編集部1bを介して質問格納部1dに格納される。
【0022】
質問データは、質問格納部1dから読み出された質問仕様に応じて生成される。
図4は、質問データの記述例を示している。この質問データは、例えば、軽量のデータ交換フォーマットであるJSON((JavaScript Object Notation)によって記述され、データとして構造化されている。同図は、「id」=「00001」の質問事項を示しており、「message」には質問の内容、「label」には回答テキストの選択肢、「type」にはUI種別が記述されている。UI種別の指定は、「type」によって行われ、例えば、ボタンの単一選択の場合は「radio」、複数選択の場合は「checkbox」、テキスト入力の場合は「text」、ファイルアップロードの場合には「file」などと記述される。また、下から2行目以降は、conditional-00001の"無料相談に申し込みたい"が表示条件を規定しており、この表示条件を満たす場合に、"ありがとうございます!ご相談に際していくつかの質問にお答えいただけますでしょうか?"というメッセージがリアクションとして表示されることを示す。なお、質問データとしては、複数の質問事項(一連の質問事項の全てを含む。)をまとめて記述することもでき、その場合には、同図の記述例に続いて「id」=「00002」以降の質問事項が記述されることになる。
【0023】
回答分析部1cは、管理権限者の指示に応じて、回答格納部1eに保持された回答データを様々な角度から分析して、分析結果を管理権限者に提示する。回答分析部1cが提供する分析ツールとしては様々なものが用意されており、特徴的なものとして、質問毎の回答時間情報(多数のユーザに関するもの)に関する統計的な分析(例えば、回答時間の平均、分布、分散など)がある。その他にも、質問の選択肢(回答候補)の選択比率のような回答内容に関する統計的な分析や、後述する質問毎のユーザの離脱率なども存在する。回答分析部1cが提示する分析結果により、例えば、それぞれの質問について、ユーザが回答に要した時間の傾向を把握することができるので、管理権限者にとって質問仕様を見直す上での有用な情報となる。
【0024】
プログラム提供部1fは、ユーザ端末3からのダウンロード要求に応じて、チャットサーバ1とのやり取りにおいて必要なコンピュータプログラム(クライアント制御プログラム)を提供する。ユーザ端末3は、初回読み込み時において、本ブログラムをその都度ダウンロードするが、自己にキャッシュされている場合、ダウンロードすることなく、キャッシュされているものを再利用してもよい。チャットサーバ1より受信した質問データは、本プログラムにデータとして取り込まれ、これによって、ユーザ端末3側において、ユーザへの質問の提示を含めた必要な制御が行われる。なお、プログラム提供部1fは、ユーザ端末3にとっての外部システムであるチャットサーバ1自体が備えている必要性は必ずしもなく、チャットサーバ1とは別の外部システム(ダウンロードサーバなど)からダウンロードするようにしてもよい。
【0025】
図5は、クライアント制御プログラムのフローチャートである。このクライアント制御プログラムは、典型的には、クライアントであるユーザ端末3が備えるブラウザにて処理可能な言語(例えばJavaScript(登録商標))で記述されており、このブラウザ上で動作する。
【0026】
まず、ステップ1において、チャットサーバ1より受信した質問データが本プログラムに取り込まれる。すなわち、チャットサーバ1が備えるチャット処理部1aは、ユーザへの質問の提示に先立つタイミングで、すべての質問をまとめた単一の質問データをユーザ端末3に一括で送信する。
【0027】
ステップ2において、ユーザ端末3の表示画面を介して、最初の質問がユーザに提示される。質問の提示順序は、質問データに記述された"order"順(昇順)で決定される。質問の提示に際して、質問データによって指定された種別のユーザインターフェースが用いられ、これが表示される。
【0028】
ステップ3において、最初の質問に関する回答時間情報(質問時刻)として、ユーザに質問を提示した時刻を示す提示時刻tsがユーザ端末3からチャットサーバ1に送信される。
【0029】
ステップ4において、最初の質問に対する回答がユーザによって入力されると、これが受け付けられる。
【0030】
ステップ5において、この回答がユーザ端末3からチャットサーバ1に送信される。その際、最初の質問に関する回答時間情報として、ユーザが回答した時刻を示す回答時刻trも併せてチャットサーバ1に送信される。チャットサーバ1は、ユーザ端末3から受信した回答時間情報ts,trの差を算出することで、最初の質問に関する「ユーザが回答に要した時間T」を特定することができる。なお、「ユーザが回答に要した時間」は、ユーザ端末3側において算出し、チャットサーバ1側に送信するようにしてもよい。
【0031】
ステップ6において、今回の質問が最後であるか否かが判断される。最初の質問であった場合には、2番目の質問に移行して(ステップ7)、2番目の質問に関する処理が繰り返される(ステップ2~5)。以後、同様の処理が質問毎に繰り返され、最後の質問の処理が終了したことを以て、一連の処理が終了する。
【0032】
図6は、ユーザ端末3におけるテキスト入力によるチャット画面の部分的な表示例を示す図である。チャットサーバ1とユーザとの間の対話は時系列的に行われ、質問Q1に対するユーザの回答A1、質問Q2に対するユーザの回答A2およびリアクションR2、質問Q3の提示といった順序で進行する。そして、ある質問Q3に対する回答のUI種別としてテキスト入力が指定されている場合、ユーザは、表示されたテキストボックスに回答をテキストで入力した上で、送信ボタンをクリックする。このようなやり取りによって、表示画面上において、質問および回答が順次追加されていく。ユーザは、表示画面をスクロールすることによって、従前のやり取りを適宜確認することができる。
【0033】
図7は、ボタン選択によるチャット画面の部分的な表示例を示す図である。ある質問に対する回答のUI種別としてボタン選択が指定されている場合、ユーザは、回答の候補として表示された複数のボタンの中から適切なものをクリックする。これにより、クリックされたものが回答として受け付けられる。
【0034】
図8は、ファイルアップロードによるチャット画面の部分的な表示例を示す図である。ある質問に対する回答のUI種別としてファイルアップロードが指定されている場合、ユーザは、表示されたアイコンをクリックした上で、送信すべきファイルを選択する。これにより、選択されたファイルが回答として受け付けられる。
【0035】
図9は、カード選択によるチャット画面の一部の表示例を示す図である。ある質問に対する回答のUI種別としてカード選択が指定されている場合、ユーザは、カードを横にスライドさせて所望の日付を選択した上で、所望の時間に対応するボタンにチェックを入れる。これにより、クリックされたものが回答として受け付けられる。なお、カード選択は、日付選択以外に、都道府県などの内容設定の際に用いることもできる。
【0036】
ユーザ端末3より受信した回答は、ユーザ毎の回答データとして回答格納部1eに格納・保持される。
図10は、あるユーザに関する回答データの概念図である。回答データは、一連の質問(Q1,Q2,Q3,・・・)のそれぞれに関して、回答の内容(A1,A2,A3,・・・)と、質問時刻(ts1,ts2,ts3,・・・)と、回答時刻(tr1,tr2,tr3,・・・)と、回答時間(T1,T2,T3,・・・)とを含む。ここで、回答時間は、ユーザが回答に要した時間であり、例えば、質問Q1に関する回答時間T1は、質問時刻tr1(回答のログの保存時刻)と回答時間ts1(質問時のログの保存時刻)との差分として算出される。なお、同図の例では、回答の内容と、ユーザが回答に要した時間を特定可能な回答時間情報とを一体で管理しているが、両者は別々に管理してもよい。また、回答時間情報としては、送受信時刻および回答時間の双方を保持する必要は必ずしもなく、どちらか一方のみを保持してもよい。
【0037】
図11は、回答分析部1cにおけるユーザ回答の分析結果の一例を示す図である。分析結果としては、例えば、一連の質問(Q1,Q2,Q3,・・・)のそれぞれに関する平均回答時間(Ta1,Ta2,Ta3,・・・)や、ユーザの離脱率(R1,R2,R3,・・・)を算出することができる。これにより、管理権限者は、一連の質問において、回答に時間を要する質問や離脱率の高い質問を把握することが可能になる。また、顧客情報と離脱ポイントの相関、顧客の属性と割合、情報収集における最適な質問の順番、あるいは、質問の並び毎の回答率の相関などを把握することも可能になる。実際、メールアドレスを質問した後に電話番号を質問する場合と、これらの質問順序を逆にした場合とでは、前者の方が後者よりも数倍回答率が高いため、分析結果の有用性は極めて高い。また、回答分析部1cは、質問仕様の変更の前後における分析結果(例えば、CV率の差異)を対比可能な形態で管理権限者に提示することが好ましい。
【0038】
なお、ユーザが回答途中で離脱した場合、チャットサーバ1側では、「離脱ユーザ」としてデータを保持しておき、このユーザが再訪した際は、データを再利用してもよい。
「離脱ユーザ」は、チャットページを1回以上開き、かつ、コンバージョンに当たる質問に回答していないユーザとして定義される。その計測方法としては、まず、ユーザごとに訪問回数/コンバージョンの有無を記録する。つぎに、集計時に、以下の[離脱ユーザ数]および「ユーザ数」を抽出した上で、[離脱率]が算出され、質問毎のユーザの離脱率が分析結果として提示される。
【0039】
[離脱ユーザ数]:「訪問回数1回以上」かつ「コンバージョン無」のユーザ
[ユーザ数]: 「訪問回数1回以上」のユーザ
[離脱率(%)]=[離脱ユーザ数] ÷ [ユーザ数] ×100
【0040】
また、チャットサーバ1側において、ユーザの行動情報(サイト訪問回数/PV数(PV:ページビュー)、チャット訪問回数/PV数)や、ユーザ・エージェントからの情報(端末/ブラウザ情報等)を取得して、それらも顧客情報として扱ってもよい。
【0041】
このように、本実施形態によれば、チャット形式でユーザに提示した個々の質問に関する回答時間情報を統計的に分析して、その分析結果を管理権限者に提示する。管理権限者は、この分析結果を参考にして、質問仕様をユーザがより回答し易いものに見直す。例えば、平均回答時間が長い質問や離脱率の高い質問については、複数の質問へ分割したり、選択型のUI種別へ変更したりするといった対策を講じる。また、そのような質問が初期段階で発生している場合、提示順序を後にするといった対策を講じる。このような対策を講じることで、コンバージョン率を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、質問および回答のやり取りを行うユーザインターフェースとして、ユーザにとって分かり易いチャット形式を用いることで、会話のような自然な流れでユーザ情報の入力が可能になる。また、ユーザ端末3の表示画面上において、従前の質問に対する入力内容を容易に確認できるので、質問毎に質問画面を切り替える表示形態と比較して、従前の回答内容との整合性の向上、および、ユーザにとっての利便性の向上を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、ユーザ端末3において、質問画面の切り替えが生じることなく、一つの画面上において質問および回答が動的に追記されていくため、一連のやり取りをシームレスかつ高速に行うことができる。特に、ユーザに提示すべき一連の質問を単一の質問データにまとめて一括で送信する場合には、通信状況に起因した処理の遅延を有効に抑制できる。
【0044】
さらに、本実施形態によれば、質問データを取り込んだクライアント制御プログラムをユーザ端末3(クライアント)側で実行することによって、チャットサーバ1が統計的な分析を行う上で必要な回答時間情報をユーザ毎および質問毎に適切にユーザ端末3から取得することができる。
【0045】
なお、上述した実施形態では、ユーザに提示すべき一連の質問を単一の質問データにまとめて一括で送信する例について説明したが、1つの質問に対して1つの質問データを生成するといったように、一連の質問の内容の一部を含む質問データを繰り返し送信するようにしてもよい。この場合、チャットサーバ1が備えるチャット処理部1aは、ユーザへの質問の提示に先立つタイミングで最初の質問に関する質問データをユーザ端末3に送信すると共に、チャット形式によるユーザとのやり取りの途中で、それ以降の各質問に関する質問データの送信を繰り返す。また、この変形例では、一連の質問の提示順序の決定や条件を伴う分岐処理などは、チャットサーバ1側において行われる。
図12は、本変形例に係るクライアント制御プログラムのフローチャートである。
【0046】
まず、ステップ11において、チャットサーバ1より受信した質問データが本プログラムのデータとして取り込まれる。つぎに、ステップ12において、ユーザ端末3の表示画面を介して、質問データに応じた特定の質問がユーザに提示される。つぎに、ステップ13において、特定の質問に関する回答時間情報(質問時刻)として、ユーザに質問を提示した時刻を示す提示時刻tsがユーザ端末3からチャットサーバ1に送信される。つぎに、ステップ14において、特定の質問に対する回答がユーザによって入力されると、これが受け付けられる。そして、ステップ15において、この回答がユーザ端末3からチャットサーバ1に送信される。これによって、特定の質問に関する一連の処理が終了し、チャットサーバ1からの次の質問データの受信を待つ。
【0047】
このように、本変形例によれば、チャットサーバ1からユーザ端末3への質問データの送信が複数回に亘る点を除けば、上述した実施形態と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0048】
1 チャットサーバ
1a チャット処理部
1b 質問編集部
1c 回答分析部
1d 質問格納部
1e 回答格納部
1f プログラム提供部
2 管理権限者クライアント
3 ユーザ端末(クライアント)