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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】運行管理装置及び運行管理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20230327BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20230327BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64F1/36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022043401
(22)【出願日】2022-03-18
【審査請求日】2022-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】川名 弘志
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-096579(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/098017(JP,A1)
【文献】特開2021-103108(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112419789(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0278409(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0372617(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0293898(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の位置に関連付けて、前記複数の位置それぞれにおいて移動する移動体に要求される性能条件を記憶する条件記憶部と、
申請移動体の移動の許可を要求するための申請データと、前記申請移動体を移動させたいエリアを示す移動範囲データと、を受け付ける申請受付部と、
前記申請データに含まれている前記申請移動体の性能、又は前記申請データに含まれている前記申請移動体を識別するための移動体識別情報に関連付けて移動体情報記憶部に記憶された前記申請移動体の性能が、前記移動範囲データが示す希望移動エリアに含まれる一以上の位置に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行する移動許可部と、
を有し、
前記移動許可部は、前記申請データに含まれている前記申請移動体の性能、又は前記申請データに含まれている前記申請移動体を識別するための移動体識別情報に関連付けて移動体情報記憶部に記憶された前記申請移動体の性能が、前記移動範囲データが示す希望移動エリアに含まれる一以上の位置に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記性能条件を満たしておらず、前記申請移動体の移動を許可できないと判定した場合、前記移動範囲データが示す複数の位置のうち一部の位置を変更することにより飛行を許可できるときに、前記申請データを送信した端末に、前記移動範囲データが示す複数の位置のうちの一部の位置を変更することにより飛行が許可される位置として推奨される位置である推奨位置を通知する、
運行管理装置。
【請求項2】
前記移動許可部は、前記申請移動体の性能により要求される前記性能条件が満たされる位置のうち前記移動範囲データが示す複数の位置のうちの一部の位置に最も近い位置を特定し、前記一部の位置と特定した位置との距離が閾値以内である場合に、特定した位置を前記推奨位置として通知する、
請求項1に記載の運行管理装置。
【請求項3】
前記条件記憶部は、前記複数の位置それぞれにおいて移動体が移動することが許可される気象条件を示す要求気象条件をさらに記憶し、
前記移動許可部は、前記申請データに含まれる前記希望移動エリアに含まれる一以上の位置における気象状況が、当該一以上の位置に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記要求気象条件をさらに満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行する、
請求項1又は2に記載の運行管理装置。
【請求項4】
前記条件記憶部は、気象状況にさらに関連付けて前記性能条件を記憶し、
前記移動許可部は、前記申請データに含まれる前記希望移動エリアに含まれる一以上の位置における気象状況に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の運行管理装置。
【請求項5】
前記条件記憶部は、日又は時間帯にさらに関連付けて前記性能条件を記憶し、
前記移動許可部は、前記申請データに含まれる希望移動日時に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の運行管理装置。
【請求項6】
前記条件記憶部は、前記移動体の用途又は動作種別にさらに関連付けて前記性能条件を記憶し、
前記移動許可部は、前記申請データに含まれる用途又は動作種別に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の運行管理装置。
【請求項7】
前記複数の位置から所定の距離内の位置を移動している移動体の数を示すデータを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した前記データが示す移動体の数に基づいて、前記複数の位置に関連付けられた前記性能条件を決定する条件決定部と、
をさらに有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の運行管理装置。
【請求項8】
前記申請受付部は、前記申請データを受け付ける前に、前記複数の位置の少なくとも一部の位置に関連付けて、前記申請データを送信する情報端末に前記性能条件を送信する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の運行管理装置。
【請求項9】
前記申請受付部は、前記申請データを受け付ける前に、前記情報端末から前記移動範囲データを受け付け、当該移動範囲データに含まれる一以上の位置に関連付けて、前記情報端末に前記性能条件を送信する、
請求項8に記載の運行管理装置。
【請求項10】
コンピュータが実行する、
申請移動体の移動の許可を要求するための申請データと、前記申請移動体を移動させたいエリアを示す移動範囲データと、を受け付けるステップと、
前記申請データに含まれている前記申請移動体の性能、又は前記申請データに含まれている前記申請移動体を識別するための移動体識別情報に関連付けて移動体情報記憶部に記憶された前記申請移動体の性能が、前記移動範囲データが示す希望移動エリアに含まれる一以上の位置に関連付けて、前記一以上の位置を移動する移動体に要求される性能条件として条件記憶部に記憶された性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行するステップと、
前記申請データに含まれている前記申請移動体の性能、又は前記申請データに含まれている前記申請移動体を識別するための移動体識別情報に関連付けて移動体情報記憶部に記憶された前記申請移動体の性能が、前記移動範囲データが示す希望移動エリアに含まれる一以上の位置に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記性能条件を満たしておらず、前記申請移動体の移動を許可できないと判定した場合、前記移動範囲データが示す複数の位置のうち一部の位置を変更することにより飛行を許可できるときに、前記申請データを送信した端末に、前記移動範囲データが示す複数の位置のうちの一部の位置を変更することにより飛行が許可される位置として推奨される位置である推奨位置を通知するステップと、
を有する運行管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の運行を管理する運行管理装置及び運行管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体が飛行している位置が飛行制限エリアであるか否かによって、移動体の移動を許可するか否かを決定するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2017/013858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特定の移動体が移動できないエリアであっても、他の移動体であれば当該エリアを移動できるという場合がある。しかしながら、従来のシステムにおいては、移動が許可されていないエリアにおいては一律に移動体の移動が禁止されてしまうため、当該エリアを移動体が移動することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、エリアに適した移動体がエリア内を移動できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の運行管理装置は、複数の位置に関連付けて、前記複数の位置それぞれにおいて移動する移動体に要求される性能条件を記憶する条件記憶部と、申請移動体の移動の許可を要求するための申請データと、前記申請移動体を移動させたいエリアを示す移動範囲データと、を受け付ける申請受付部と、前記申請データに含まれている前記申請移動体の性能、又は前記申請データに含まれている前記申請移動体を識別するための移動体識別情報に関連付けて移動体情報記憶部に記憶された前記申請移動体の性能が、前記移動範囲データが示す希望移動エリアに含まれる一以上の位置に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行する移動許可部と、を有する。
【0007】
前記移動許可部は、前記申請移動体の性能が、前記希望移動エリアに含まれる複数の位置に関連付けて前記条件記憶部に記憶された複数の前記性能条件のうち、最も厳しい性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行してもよい。
【0008】
前記条件記憶部は、前記複数の位置それぞれにおいて移動体が移動することが許可される気象条件を示す要求気象条件をさらに記憶し、前記移動許可部は、前記申請データに含まれる前記希望移動エリアに含まれる一以上の位置における気象状況が、当該一以上の位置に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記要求気象条件をさらに満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行してもよい。
【0009】
前記条件記憶部は、気象状況にさらに関連付けて前記性能条件を記憶し、前記移動許可部は、前記申請データに含まれる前記希望移動エリアに含まれる一以上の位置における気象状況に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行してもよい。
【0010】
前記条件記憶部は、日又は時間帯にさらに関連付けて前記性能条件を記憶し、前記移動許可部は、前記申請データに含まれる希望移動日時に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行してもよい。
【0011】
前記条件記憶部は、前記移動体の用途又は動作種別にさらに関連付けて前記性能条件を記憶し、前記移動許可部は、前記申請データに含まれる用途又は動作種別に関連付けて前記条件記憶部に記憶された前記性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行してもよい。
【0012】
前記複数の位置から所定の距離内の位置を移動している移動体の数を示すデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部が取得した前記データが示す移動体の数に基づいて、前記複数の位置に関連付けられた前記性能条件を決定する条件決定部と、をさらに有してもよい。
【0013】
前記申請受付部は、前記申請データを受け付ける前に、前記複数の位置の少なくとも一部の位置に関連付けて、前記申請データを送信する情報端末に前記性能条件を送信してもよい。
【0014】
前記申請受付部は、前記申請データを受け付ける前に、前記情報端末から前記移動範囲データを受け付け、当該移動範囲データに含まれる一以上の位置に関連付けて、前記情報端末に前記性能条件を送信してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様の運行管理方法は、コンピュータが実行する、申請移動体の移動の許可を要求するための申請データと、前記申請移動体を移動させたいエリアを示す移動範囲データと、を受け付けるステップと、前記申請データに含まれている前記申請移動体の性能、又は前記申請データに含まれている前記申請移動体を識別するための移動体識別情報に関連付けて移動体情報記憶部に記憶された前記申請移動体の性能が、前記移動範囲データが示す希望移動エリアに含まれる一以上の位置に関連付けて、前記一以上の位置を移動する移動体に要求される性能条件として条件記憶部に記憶された性能条件を満たしている場合に、前記申請データに対応する移動を許可する処理を実行するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エリアに適した移動体がエリア内を移動できるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態の運行管理システムSの構成を示す図である。
図2】運行管理装置1の構成を示す図である。
図3】性能条件データの一例を示す図である。
図4】飛行体データの一例を示す図である。
図5】移動範囲データに対応する経路の一例を示す図である。
図6】推奨位置を示す画像の一例を示す図である。
図7】運行管理装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る運行管理装置1aの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
[運行管理システムSの概要]
図1は、第1の実施形態の運行管理システムSの構成を示す図である。運行管理システムSは、移動体の性能が、移動を予定するエリアにおいて要求される性能条件を満たす場合に移動体の移動を許可するシステムである。
【0019】
移動体は、ドローンのような無人飛行体、自動車又は船舶等のように、位置を移動可能な装置である。本明細書においては、移動体が飛行体(例えばドローン)であり、飛行体が飛行により移動する場合を例示するが、移動体は飛行体以外であってもよい。以下の説明においては、ユーザが飛行体を飛行させる場合を例示するが、飛行体以外の移動体をユーザが移動させる場合にも本発明は適用可能である。
【0020】
運行管理システムSは、運行管理装置1と、ユーザ端末2と、を備える。運行管理装置1は、申請移動体である申請飛行体Dのユーザが使用するユーザ端末2から、申請飛行体Dの飛行の許可を要求するための申請データを受け付ける。申請データには、申請飛行体Dの性能を示すデータ、又は申請飛行体Dを識別するための移動体識別情報である飛行体IDの少なくともいずれかが含まれている。ユーザ端末2は、ユーザがデータを送受信できる情報端末であり、例えばコンピュータ又はスマートフォンである。運行管理装置1及びユーザ端末2は、ネットワークN(例えばインターネット)を介してデータを送受信する。
【0021】
運行管理装置1は、申請飛行体Dのユーザから、申請飛行体Dを飛行させたいエリアを示す移動範囲データを受ける。運行管理装置1は、申請データと同時に移動範囲データを受けてもよく、申請データの前又は後に移動範囲データを受けてもよい。
【0022】
申請飛行体Dを飛行させたいエリアとは、申請飛行体Dが飛行を開始してから飛行を終了するまでの間に通過する予定の複数の位置を含む経路、又は当該複数の位置を含む二次元領域若しくは三次元領域である。移動範囲データは、例えば、申請飛行体Dが飛行を開始してから飛行を終了するまでの間に通過する予定の複数の位置の緯度・経度を示すデータ、又は二次元領域の外周上の複数の位置の緯度・経度を示すデータである。
【0023】
移動範囲データは、緯度・経度に加えて高度を含んでもよい。また、申請飛行体Dが直線状に飛行することが予め定められている場合、移動範囲データは、申請飛行体Dが飛行を開始する位置の緯度・経度と、申請飛行体Dが飛行を終了する位置の緯度・経度のみを含んでいてもよい。また、運行管理装置1が、エリアを識別するための情報であるエリアIDと、エリアの位置を示す情報とを関連付けて記憶している場合、エリアIDが移動範囲データとして使用されてもよい。なお、移動範囲データには、複数の位置に関連付けて、それぞれの位置を通過する予定の日時を示す移動日時データが含まれていてもよい。
【0024】
運行管理装置1は、申請データを受け取ると、申請飛行体Dの性能が、移動範囲データが示す位置を飛行体が飛行するために要求される性能条件を満たしているか否かを判定する。詳細については後述するが、運行管理装置1は、複数の位置に関連付けて、それぞれの位置を飛行体が飛行するために飛行体に要求される耐風性能、耐温度性能、耐水性能等の性能条件を記憶している。
【0025】
運行管理装置1は、申請飛行体Dの性能と要求される性能条件とを比較し、申請飛行体Dの性能が要求される性能条件を満たしているか否かを判定する。運行管理装置1は、申請飛行体Dの性能が要求される性能条件を満たしている場合に、申請飛行体Dの飛行を許可する処理を実行する。運行管理装置1は、例えばユーザ端末2に移動許可通知データを送信したり、管轄エリアを飛行する飛行体の管理者に、飛行を許可した飛行体に関する情報を提供したりする。
以下、運行管理装置1の構成及び動作を詳細に説明する。
【0026】
[運行管理装置1の構成]
図2は、運行管理装置1の構成を示す図である。運行管理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。
【0027】
通信部11は、ネットワークNを介してユーザ端末2から各種のデータを受信したり、ユーザ端末2に対して各種のデータを送信したりする。通信部11は、例えばユーザ端末2から申請データ及び移動範囲データを受信し、ユーザ端末2に対して移動許可通知データを送信する。
【0028】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を含む。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が申請飛行体Dの飛行を許可するか否かを判定するために必要な各種のデータを記憶する。
【0029】
記憶部12は、条件記憶部121と、移動体情報記憶部122と、を有する。条件記憶部121は、複数の位置に関連付けて、複数の位置それぞれにおいて飛行する飛行体に要求される性能条件を示す性能条件データを記憶する。
【0030】
図3は、性能条件データの一例を示す図である。図3に示す性能条件データにおいては、緯度、経度、高度(m)により表される位置と、複数の性能条件とが関連付けられている。図3に示す例における複数の性能条件の種別は、耐風性能、耐温度性能、耐水性能、撮影性能、防爆性能及び飛行体の重量であるが、性能条件はこれらに限らない。図3における記号A、B、Cは、要求される性能のレベルを示している。記憶部12は、性能条件の種別ごとに、それぞれの性能のレベルの具体的な内容を記憶している。
【0031】
耐風性能は、飛行体が安定して飛行できる最大風速により表される。例えばレベルAは、飛行可能な最大風速が風速10m/h以上の性能であり、レベルBは、飛行可能な最大風速が風速5~10m/hの性能であり、レベルCは風速5m/h以内の性能であることを意味する。風が強いエリアを飛行体が飛行する場合や、周囲に多くの建物や鉄道の架線等があるエリアを飛行体が飛行する場合には、高い耐風性能が求められる。
【0032】
耐温度性能は、飛行体が安定して飛行できる温度範囲により表される。例えばレベルAは-20℃~100℃に相当し、レベルBは-10℃~60℃に相当し、レベルCは0℃~40℃に相当する。高温の施設(例えば火災が発生している施設)の近くを飛行体が飛行する場合、又は気温が非常に高いエリアや気温が非常に低いエリアを飛行体が飛行する場合には、高いレベルの耐温度性能が求められる。
【0033】
耐水性能は、飛行体が単位時間に浴びることが許容される最大の水量により表される。耐水性能は、例えばJISにより定められた保護等級に対応している。一例として、レベルAは、継続的に水没しても内部に浸水しないレベルであり、レベルBは、任意の方向からの噴流水による有害な影響が生じないレベルであり、レベルCは、鉛直から落ちてくる水滴による有害な影響が生じないレベルである。飛行体が海や川の上空を飛行する場合や雨天時に飛行をする場合には、レベルAの耐水性能が求められる。
【0034】
撮影性能は、例えばズーム倍率により表される。例えばレベルAはズーム倍率30倍以上、レベルBはズーム倍率10倍以上、レベルCはズーム倍率10倍未満に相当する。ズーム倍率が大きいほど遠距離から撮影できるので、近くを飛行することができない建物や鉄道の架線等があるエリアを飛行体が飛行する場合には、レベルAの撮影性能が求められる。なお、撮影性能は、カメラの数、又はカメラが設けられている位置により表されてもよい。
【0035】
防爆性能は、可燃性ガスが存在する場合に飛行体が受ける影響のレベルにより表される。レベルAは、爆発性のガス又は蒸気が存在する場所で飛行できるレベル、レベルBは、爆発性の粉塵が存在する場所で飛行できるレベル、レベルCは、防爆構造を有していないレベルである。化学コンビナートや火災現場の上空を飛行体が飛行する場合には、高いレベルの防爆性能が求められる。
【0036】
重量は、飛行体本体の重量と飛行体が搬送する物の重量の合計重量である。例えばレベルAは1kg未満、レベルBは1kg以上20kg未満、レベルCは20kg以上である。飛行体が墜落した場合に大きな人的被害が発生し得るエリアや重要施設の上空を飛行体が飛行する場合には重量が小さいことが求められる。
【0037】
条件記憶部121は、複数の位置それぞれにおいて飛行体が飛行することが許可される気象条件を示す要求気象条件をさらに記憶してもよい。一例として、近くに建物があるエリアにおいては、雨天時、濃霧時又は強風時に飛行体が建物に接触してしまうリスクが高まるので、建物の近くのエリアにおいては、雨天時、濃霧時又は強風時のような悪天候ではないことを要求気象条件としてもよい。
【0038】
移動体情報記憶部122は、予め登録された飛行体に関する情報を含む飛行体データを記憶する。図4は、飛行体データの一例を示す図である。図4に示す飛行体データは、飛行体IDに、耐風性能、耐温度性能、耐水性能、撮影性能、防爆性能及び重量が関連付けられている。
【0039】
続いて、制御部13の詳細を説明する。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、申請受付部131及び移動許可部132として機能する。
【0040】
申請受付部131は、通信部11を介して、申請飛行体Dの飛行の許可を要求するための申請データと、申請飛行体Dを飛行させたいエリアを示す移動範囲データと、を受け付ける。申請受付部131は、申請データと移動範囲データを同時に受け付けてもよく、これらを別々に受け付けてもよい。申請受付部131は、申請データ及び移動範囲データを移動許可部132に通知する。
【0041】
移動許可部132は、申請データに含まれている申請飛行体Dの性能が、移動範囲データが示す希望移動エリアに含まれる一以上の位置に関連付けて条件記憶部121に記憶された性能条件を満たしているか否かを判定する。希望移動エリアは、申請飛行体Dのユーザが申請飛行体Dを飛行させたい経路又は領域である。
【0042】
移動許可部132は、申請飛行体Dの性能が、要求される性能条件を満たしている場合に、申請データに対応する飛行を許可する処理を実行し、要求される性能条件を満たしていない場合に、申請データに対応する飛行を許可しない処理を実行する。移動許可部132は、申請データに含まれている申請飛行体Dの性能に代えて、申請データに含まれている飛行体IDに関連付けて移動体情報記憶部122に記憶された性能を申請飛行体Dの性能としてもよい。
【0043】
図5は、移動範囲データに対応する経路の一例を示す図である。図5においては、地点aから地点hまでを飛行する経路が示されている。移動許可部132は、飛行を許可するか否かを判定するために、まず、移動範囲データに含まれている複数の位置を特定し、複数の位置それぞれに関連付けて条件記憶部121に記憶された性能条件を特定する。
【0044】
移動許可部132は、例えば、申請飛行体Dの性能が、希望移動エリアに含まれる複数の位置に関連付けて条件記憶部121に記憶された複数の性能条件のうち、最も厳しい性能条件を満たしている場合に、申請データに対応する飛行を許可する処理を実行する。そのために、移動許可部132は、性能条件の種別ごとに、希望移動エリアに含まれている複数の位置のうち、要求されているレベルが最も高い位置を特定し、特定した位置において要求される性能条件を申請飛行体Dの性能が満たしているかどうかを判定する。
【0045】
一例として、図5に示す経路上の複数の地点のうち、高い建物が多い繁華街Xの上空である地点bには、他の地点よりも耐風性能、撮影性能、重量において高い性能レベルが要求される。地点bは、例えば図3における緯度35.600、経度139.700、高度50mに対応する位置である。当該位置においては、耐風性能、撮影性能、重量にAレベルが必要とされている。
【0046】
移動許可部132は、申請飛行体Dが、図4に示す飛行体IDがM001の飛行体である場合には、地点bで要求される全ての性能条件を満たすと判定する。申請飛行体Dが、図4に示す飛行体IDがM002の飛行体である場合には、耐風性能及び撮影性能が、地点bで要求される性能条件を満たしていないと判定する。
【0047】
地点e、fは海上であり、耐水性能において高い性能レベルが要求される。地点eは、例えば図3における緯度35.100、経度140.100、高度150mに対応する位置である。当該位置においては、耐水性能にBレベルが必要とされている。移動許可部132は、申請飛行体Dが、図4に示す飛行体IDがM001の飛行体である場合には、地点eで要求される性能条件を満たすと判定する。
【0048】
地点gの近辺には、化学コンビナートYがあり、防爆性能において高い性能レベルが要求される。地点gは、例えば図3における緯度35.400、経度140.300、高度100mに対応する位置である。当該位置においては、防爆性能にAレベルが必要とされている。移動許可部132は、申請飛行体Dが、図4に示す飛行体IDがM001の飛行体である場合には、地点gで要求される性能条件を満たすと判定する。
【0049】
移動許可部132は、性能条件に含まれる全ての種別において、移動範囲データが示す複数の位置の性能条件で最も厳しいレベルを申請飛行体Dの性能が満たしている場合に、申請飛行体Dの飛行を許可する。すなわち、移動許可部132は、移動範囲データが示す複数の位置の全ての位置で要求される性能条件を申請飛行体Dの性能が満たしている場合に、申請飛行体Dの飛行を許可する。移動許可部132は、申請飛行体Dの飛行を許可すると判定した場合、申請飛行体Dの飛行のための申請データを送信したユーザ端末2に対して移動許可通知データを送信する。
【0050】
移動許可部132は、申請飛行体Dの飛行を許可できないと判定した場合、申請飛行体Dの飛行のための申請データを送信したユーザ端末2に対して移動不許可通知データを送信する。移動許可部132は、移動不許可通知データを送信するとともに、要求される性能条件を満たしていない性能の種別を通知したり、性能条件を満たしていない位置を通知したりしてもよい。
【0051】
さらに、移動許可部132は、移動範囲データが示す複数の位置のうち、一部の位置を変更することにより飛行を許可できる場合には、推奨位置をユーザ端末2に通知してもよい。移動許可部132は、例えば、地図に重ねて、移動範囲データに対応する複数の位置と、推奨位置とを示す画像データをユーザ端末2に送信する。
【0052】
図6は、推奨位置を示す画像の一例を示す図である。移動許可部132は、このような推奨位置を特定するために、要求される性能条件を申請飛行体Dの性能が満たさないと判定した位置から所定の距離内において、要求される性能条件を申請飛行体Dの性能が満たす位置を特定する。所定の距離は、例えば、移動範囲データが示す総飛行距離に所定の率(例えば10%)を乗じた距離である。図6においては、地点bの代わりの推奨位置b’と地点gの代わりの位置g’とが示されている。
【0053】
移動許可部132は、申請飛行体Dの性能により要求される性能条件が満たされる位置のうち最も近い位置を特定し、移動範囲データが示す位置と特定した位置との距離が閾値以内である場合に、特定した位置を推奨位置として通知してもよい。移動許可部132がこのように動作することで、申請飛行体Dのユーザが、経路を変更すべきかどうかを判断しやすくなる。
【0054】
条件記憶部121が、位置に関連付けて要求気象条件を記憶している場合、移動許可部132は、申請データに含まれる希望移動エリアに含まれる一以上の位置における気象状況が、当該一以上の位置に関連付けて条件記憶部121に記憶された要求気象条件をさらに満たしている場合に、申請データに対応する飛行を許可する処理を実行してもよい。移動許可部132がこのように動作することで、悪天候において飛行体が建物に衝突してしまうというリスクを低減することができる。
【0055】
以上の説明においては、移動許可部132が、図3に示したように、位置ごとに要求される性能条件が異なる性能条件データを参照することにより、申請飛行体Dの飛行を許可するか否かを判定する場合を例示したが、性能条件は、位置以外の要素によって異なっていてもよい。以下、位置以外の要素によって性能条件が異なる場合の動作について説明する。
【0056】
(気象状況)
飛行体の飛行の安定性及び安全性には、飛行するエリアの天候が影響する。そこで、条件記憶部121は、複数の気象状況それぞれにさらに関連付けて性能条件を記憶してもよい。複数の気象状況は、例えば、風速、風向、雨量、雪量、気温等である。具体的には、条件記憶部121は、図3に示した性能条件データに含まれている位置ごとに、複数の気象状況それぞれに関連付けて、性能条件の各項目に対して要求されるレベルを記憶してもよい。
【0057】
この場合、移動許可部132は、申請データに含まれる希望移動エリアに含まれる一以上の位置における気象状況に関連付けて条件記憶部121に記憶された性能条件を満たしている場合に、申請データに対応する飛行を許可する処理を実行する。移動許可部132は、まず、外部のサーバから、申請飛行体Dが飛行する予定の位置を通過する時刻におけるそれぞれの位置の気象状況データ(例えば天気予報データ)を取得し、取得した気象状況データに基づいて、それぞれの位置における気象状況を特定する。
【0058】
続いて、移動許可部132は、希望移動エリアに含まれる位置ごとに、性能条件データにおいて、特定した気象状況に関連付けられた性能条件を特定する。移動許可部132は、それぞれの位置に対応する性能条件を申請飛行体Dの性能が満たす場合に、申請飛行体Dの飛行を許可する。移動許可部132が、このように気象状況によって異なる性能条件を使用することで、最も悪い気象状況を想定した1つの性能条件に基づいて飛行を許可するか否かを判定する場合に比べて、申請飛行体Dの飛行を許可する確率を高めることができる。
【0059】
移動許可部132は、申請飛行体Dの飛行を許可できないと判定した場合に、気象状況が改善する時刻に飛行時刻を変更することにより申請飛行体Dが飛行できるか否かを判定した結果をユーザ端末2に通知してもよい。移動許可部132は、このようにするために、まず、申請飛行体Dが飛行する予定の時刻よりも前又は後の時刻に対応する気象状況データに基づいて、気象状況が改善する時刻と改善後の気象状況を特定する。移動許可部132は、特定した気象状況において要求される性能条件を参照することにより、申請飛行体Dの飛行を許可できるか否かを判定する。
【0060】
移動許可部132は、飛行時刻を変更することにより申請飛行体Dの飛行を許可できると判定した場合、変更後の時刻とともに、当該時刻に飛行をすれば飛行の許可が可能であることをユーザ端末2に通知する。移動許可部132は、その後、飛行時刻を変更した申請データを申請受付部131が取得した場合に、申請飛行体Dの飛行を許可できるか否かを再度判定し、申請飛行体Dの飛行を許可できる場合に移動許可通知データをユーザ端末2に送信する。移動許可部132がこのように動作することで、ユーザが飛行時刻を変更することにより申請飛行体Dを飛行させることが可能になる。
【0061】
(日時)
飛行体が飛行する日や時間帯によって、飛行体が飛行するエリアの人の数、又は飛行体が飛行するエリアに存在する施設の稼働状況が異なる場合がある。そこで、条件記憶部121は、日又は時間帯にさらに関連付けて性能条件を記憶してもよい。具体的には、条件記憶部121は、図3に示した性能条件データに含まれている位置ごとに、複数の年月日、曜日、時間帯又はこれらの組み合わせに関連付けて、性能条件の各項目に対して要求されるレベルを記憶してもよい。
【0062】
この場合、移動許可部132は、申請データに含まれる希望移動日時に関連付けて条件記憶部121に記憶された性能条件を満たしている場合に、申請データに対応する飛行を許可する処理を実行する。移動許可部132は、希望移動日時には申請飛行体Dの飛行を許可できないと判定した場合に、希望移動日時の前又は後の他の日時のうち、申請飛行体Dの飛行を許可できる日時をユーザ端末2に通知してもよい。
【0063】
移動許可部132は、例えば希望移動日時において申請飛行体Dの飛行を許可できないと判定する要因になった性能条件のレベルが、移動希望日時に対応するレベルよりも低い日時を特定する。移動許可部132は、特定した日時において、申請飛行体Dの性能が、要求される性能条件を満たしていると判定した場合に、特定した日時とともに、当該日時に飛行をする場合には飛行の許可が可能であることをユーザ端末2に通知する。
【0064】
(飛行体の用途又は動作種別)
飛行体の用途又は動作の種別によって、飛行体に求められる性能条件が異なる場合がある。飛行体の用途又は動作の種別は、例えば物流(荷物の搬送)、撮影、測量、監視、農薬等の散布である。飛行体が荷物を搬送する場合、荷物を落下させることがないように、荷物を搬送しない場合よりも厳しい性能条件が求められることが想定される。また、飛行体が飛行する方向と異なる方向を撮影する動作を行う場合、他の飛行体との衝突を回避する機能を有していないと危険である。
【0065】
そこで、条件記憶部121は、飛行体の用途又は動作種別にさらに関連付けて性能条件を記憶してもよい。この場合、移動許可部132は、申請データに含まれる用途又は動作種別に関連付けて条件記憶部121に記憶された性能条件を満たしている場合に、申請データに対応する飛行を許可する処理を実行する。
【0066】
[運行管理装置1の処理の流れ]
図7は、運行管理装置1の処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、申請受付部131が申請データ及び移動範囲データを受け付けた時点(S1)から開始している。
【0067】
移動許可部132は、申請データに含まれている申請飛行体Dの性能を示す情報、又は申請飛行体Dの飛行体IDに関連付けて移動体情報記憶部122に記憶されている性能を示す情報に基づいて、申請飛行体Dの性能を特定する(S2)。また、移動許可部132は、移動範囲データに含まれている複数の通過地点のうち一つの通過地点を選択する(S3)。
【0068】
続いて、移動許可部132は、条件記憶部121を参照することにより、選択した通過地点に対応する性能条件を特定する(S4)。移動許可部132は、特定した性能条件を申請飛行体Dの性能が満たすか否かを判定する(S5)。移動許可部132は、特定した性能条件を申請飛行体Dの性能が満たさないと判定した場合(S5においてNO)、移動不許可通知データをユーザ端末2に送信する(S6)。
【0069】
一方、移動許可部132は、特定した性能条件を申請飛行体Dの性能が満たすと判定した場合(S5においてYES)、他の通過地点があるか否かを確認し(S7)、他の通過地点がある場合(S7においてYES)、S3に戻って次の通過地点を選択する(S3)。移動許可部132は、移動範囲データに含まれている全ての通過地点についてS5の判定を行った場合(S7においてNO)、全ての通過地点において要求される性能条件を申請飛行体Dの性能が満たしていると判定して移動許可通知データをユーザ端末2に送信する(S8)。
【0070】
[変形例]
以上の説明においては、申請飛行体Dの飛行を申請する時点で、申請飛行体Dのユーザがそれぞれの位置において要求される性能条件を把握していないことが想定されていたが、申請飛行体Dのユーザが、それぞれの位置において要求される性能条件を把握していれば、許可されない申請をしてしまう確率を減らすことができる。そこで、申請受付部131は、申請データを受け付ける前に、複数の位置の少なくとも一部の位置に関連付けて、ユーザ端末2に性能条件を送信してもよい。
【0071】
申請受付部131は、例えば、ユーザが申請飛行体Dを飛行させたいエリアを示す情報をユーザ端末2から取得すると、当該エリアに含まれる複数の位置のうち相対的に高い性能条件が要求される位置に関連付けて、要求される性能条件をユーザ端末2に通知する。申請受付部131は、申請データを受け付ける前に、ユーザ端末2から移動範囲データを受け付け、当該移動範囲データに含まれる一以上の位置に関連付けて、ユーザ端末2に性能条件を送信してもよい。申請受付部131は、気象状況、日時、用途又は動作種別に関連付けて、要求される性能条件をユーザ端末2に送信してもよい。
【0072】
このように、ユーザが申請飛行体Dの飛行を申請する前に、申請受付部131が要求される性能条件をユーザに提供することで、ユーザは、自身の申請飛行体Dの性能を満たす経路を選択してから申請飛行体Dの飛行を申請したり、適切な申請飛行体Dによる飛行を申請したりすることが可能になるので、無駄な申請が行われることを抑制できる。
【0073】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、要求される性能条件が予め定められている場合を例示したが、第2実施形態においては、状況によって性能条件が変更されるという点で第1の実施形態と異なる。図8は、第2実施形態に係る運行管理装置1aの構成を示す図である。図8に示す運行管理装置1aは、データ取得部133及び条件決定部134をさらに有するという点で図2に示した運行管理装置1と異なり、他の点で同じである。
【0074】
データ取得部133は、移動範囲データに含まれている複数の位置から所定の距離内の位置を飛行している飛行体の数を示すデータを取得する。所定の距離は、申請飛行体Dが複数の位置のいずれかの位置を飛行している間に衝突する可能性がある位置であり、申請飛行体Dの飛行速度に基づいて定められている。所定の距離は、例えば100mである。
【0075】
条件決定部134は、データ取得部133が取得したデータが示す飛行体の数に基づいて、複数の位置に関連付けられた性能条件を決定する。条件決定部134は、ある位置から所定の距離内の飛行体の数が多ければ多いほど、当該位置において要求される性能条件を厳しくする。条件決定部134は、例えば、ある位置から所定の距離内の飛行体の数が閾値以上である場合に、飛行体の数が閾値未満である場合に比べて、飛行の安定性に影響する耐風性能の要求レベルを1段階厳しくする。条件決定部134がこのように性能条件を決定することで、移動許可部132が、申請飛行体Dが飛行する位置の周辺の状況に適した申請飛行体Dにのみ飛行を許可させられるので、安全性が向上する。
【0076】
なお、条件決定部134は、飛行体の数によらず他の情報に基づいて性能条件を変更してもよい。一例として、条件決定部134は、移動体の運行を管理する機関から送られてきた指示又は天気予報データに基づいて、特定の日の性能条件を一時的に変更してもよい。このように要求される性能条件が変更された場合、移動許可部132は、移動を許可済の申請飛行体Dの性能が変更後の性能条件を満たすか否かを判定し、性能条件を満たさないと判定した場合に、飛行許可を取り消す通知をユーザ端末2に送信してもよい。運行管理装置1がこのように動作することで、急に状況が変化した場合にも安全性を確保することができる。
【0077】
[運行管理装置1による効果]
以上説明したように、運行管理装置1は、飛行(すなわち移動)の申請が行われた申請飛行体Dの性能が、申請飛行体Dのユーザが申請飛行体Dを飛行させたい経路に含まれている位置で要求される性能条件を満たしている場合に、申請飛行体Dに飛行を許可する。運行管理装置1がこのように構成されていることで、エリアによって飛行体の飛行に与える影響が異なる場合であっても、エリアに適した飛行体がエリア内を飛行できるようになるので、安全性が向上する。
【0078】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0080】
1 運行管理装置
2 ユーザ端末
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
121 条件記憶部
122 移動体情報記憶部
131 申請受付部
132 移動許可部
133 データ取得部
134 条件決定部
【要約】
【課題】エリアに適した移動体がエリア内を移動できるようにする。
【解決手段】運行管理装置1は、複数の位置に関連付けて、複数の位置それぞれにおいて移動する移動体に要求される性能条件を記憶する条件記憶部121と、申請移動体の移動の許可を要求するための申請データと、申請移動体を移動させたいエリアを示す移動範囲データと、を受け付ける申請受付部131と、申請データに含まれている申請移動体の性能、又は申請データに含まれている申請移動体を識別するための飛行体IDに関連付けて移動体情報記憶部122に記憶された申請移動体の性能が、移動範囲データが示す希望移動エリアに含まれる一以上の位置に関連付けて条件記憶部に記憶された性能条件を満たしている場合に、申請データに対応する移動を許可する処理を実行する移動許可部132と、を有する。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8