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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-24
(45)【発行日】2023-04-03
(54)【発明の名称】流体濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3577 20140101AFI20230327BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20230327BHJP
【FI】
G01N21/3577
G01N21/359
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022068999
(22)【出願日】2022-04-19
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592059448
【氏名又は名称】原田電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 証英
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521477(JP,A)
【文献】特開2007-322685(JP,A)
【文献】特開2006-234663(JP,A)
【文献】特開2001-21479(JP,A)
【文献】特開平9-54036(JP,A)
【文献】特開昭51-45591(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2182432(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 33/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由状態で長手方向に一様な壁厚および外径を有する、直径方向に弾性的に圧縮変形可能な光透過性の管路の内部を流れる流体の濃度を測定する装置であって、
所定方向に延在して前記管路をその内部に通路を残しながら直径方向への圧縮変形状態で収容する一定溝幅の部分を長手方向の少なくとも一部に持つ溝を有するケースと、
前記一定溝幅の部分にて前記溝の両側壁に直交する一本の軸線上で前記両側壁の一方と同一平面上に位置する投光面を有する投光用光拡散ブロックと、
前記軸線上で前記両側壁の他方と同一平面上に位置して前記溝幅と等しい所定距離を置いて前記投光面と対向する受光面を有する受光用光拡散ブロックと、
前記投光用光拡散ブロックの前記投光面の、前記軸線を中心とした所定領域に、水への吸光度は殆どもしくは全くゼロであるが前記流体への吸光度は高い第1の波長と、水への吸光度が高い第2の波長との2種類の波長の透過光を供給する発光素子と、
前記受光用光拡散ブロックの前記受光面の、前記軸線を中心とした所定領域から前記2種類の波長の透過光を供給される受光素子と、
前記発光素子から供給されて前記投光面から投光され、前記受光面から受光されて前記受光素子に供給される前記2種類の波長の透過光の強度を前記受光素子からの信号によって計測する透過光強度計測手段と、
前記投光面と前記受光面との間で前記管路を透過した前記2種類の波長の透過光の強度と、前記管路への前記2種類の波長の透過光の別途に得た入力強度とから前記流体の濃度を求めて出力する流体濃度出力手段と、
を備えることを特徴とする流体濃度測定装置。
【請求項2】
前記流体は前記管路の内部を流れる血液である、請求項1記載の流体濃度測定装置。
【請求項3】
前記2種類の波長は、水に殆どもしくは全く吸収されず血液へは酸化ヘモグロビンにも脱酸化ヘモグロビンにも同程度吸収される波長である805nm付近と、水への吸光度が高い波長である1450nm付近とに設定する、請求項2記載の流体濃度測定装置。
【請求項4】
前記発光素子および前記受光素子の少なくとも一方は、前記一本の軸線上に並んで位置して前記2種類の波長の光をその軸線上で発光または受光する2つの素子を持つものである、請求項1から3までの何れか1項記載の流体濃度測定装置。
【請求項5】
前記発光素子および前記受光素子の少なくとも一方は、前記一本の軸線上に位置して前記2種類の波長の一方の光をその軸線上で発光または受光する1つの素子と、前記2種類の波長の他方の光を前記一本の軸線上に位置するダイクロイックミラーで反射させて発光または受光する1つの素子とを持つものである、請求項1から3までの何れか1項記載の流体濃度測定装置。
【請求項6】
前記投光面と前記受光面との間に挿脱可能に配置されて前記投光面および前記受光面に密接する光透過性の基準ブロックを備えている、請求項1から3までの何れか1項記載の流体濃度測定装置。
【請求項7】
前記基準ブロックは前記溝内で前記軸線を横切る使用位置と前記溝内から外れた待機位置との間で移動可能に前記ケースに収容されている、請求項6記載の流体濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光透過性でかつ変形可能な管路の内部の流体の濃度を測定する流体濃度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体濃度測定装置としては、例えば特許文献1記載のものが知られており、ここにおける測定装置は、半導体ウエハを洗浄処理する流体としての処理液の濃度を測定するもので、処理液供給配管の途中に測定体を複数設け、各測定体内に、処理液中を通過する光の光路長さを異ならせた光透過部を設け、処理液の性質に応じた光路長さの光透過部に光源からの光を供給し、その光透過部において処理液中を透過した光を光検出器で受光してその光の強度を調べ、その光の強度からランベルト-ベールの法則に基づいて処理液の濃度を求めている。
【0003】
しかしながら上記従来の装置を、樹脂チューブ等の光透過性の管路の内部の血液や薬液等の流体の濃度測定に適用しようとすると、光透過性の管路を横切る光路に光を通過させる必要があるが、光路長さとなる管路の内径も管路の壁厚さも実測が困難であり、特に管路が変形可能な樹脂チューブの場合はその変形によって内径が変化する可能性があり、それゆえこのような場合の血液や薬液等の濃度の測定は極めて困難で、従来は実質上その測定ができなかった。
【0004】
このため本願発明者は、特許文献2に示されるように、ケースの上面に沿って所定方向に延在する溝を備えるとともに、樹脂チューブを間に挟んで直径方向に圧縮変形させるようにその溝の側壁部に向かい合わせに固定された発光ユニットと受光ユニットとの対を相互に光路距離が異なるよう二対備え、それぞれの光路距離について発光ユニットで発光して受光ユニットで受光した光の強度からランベルト-ベールの法則に基づき、樹脂チューブの内部の流体の濃度を求める流体濃度測定装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-325797号公報
【文献】国際公開第2014/170985号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来の流体濃度測定装置では、正確な濃度測定のために発光ユニットおよび受光ユニットに対して樹脂チューブを確実に密着させることが肝要であり、そのために発光ユニットおよび受光ユニットで狭窄部を形成してその狭窄部で樹脂チューブを圧縮変形させるようにしているが、樹脂チューブを適切に圧縮変形させて溝の狭窄部に装着するのが難しく、また光透過領域が狭いことから、樹脂チューブの表面に傷があってその傷の位置が変わったりすると測定誤差が生じ、未だ改良の余地があることが判明した。そして測定を終えて樹脂チューブを装置から取り外す際も、樹脂チューブが溝の狭窄部に引っかかり、無理に引っ張れば樹脂チューブや溝周辺に不具合を生じさせる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明の流体濃度測定装置は、
自由状態で長手方向に一様な壁厚および外径を有する、直径方向に弾性的に圧縮変形可能な光透過性の管路の内部を流れる流体の濃度を測定する装置であって、
所定方向に延在して前記管路をその内部に通路を残しながら直径方向への圧縮変形状態で収容する一定溝幅の部分を長手方向の少なくとも一部に持つ溝を有するケースと、
前記一定溝幅の部分にて前記溝の両側壁に直交する一本の軸線上で前記両側壁の一方と同一平面上に位置する投光面を有する投光用光拡散ブロックと、
前記軸線上で前記両側壁の他方と同一平面上に位置して前記溝幅と等しい所定距離を置いて前記投光面と対向する受光面を有する受光用光拡散ブロックと、
前記投光用光拡散ブロックの前記投光面の、前記軸線を中心とした所定領域に、水への吸光度は殆どもしくは全くゼロであるが前記流体への吸光度は高い第1の波長と、水への吸光度が高い第2の波長との2種類の波長の透過光を供給する発光素子と、
前記受光用光拡散ブロックの前記受光面の、前記軸線を中心とした所定領域から前記2種類の波長の透過光を供給される受光素子と、
前記発光素子から供給されて前記投光面から投光され、前記受光面から受光されて前記受光素子に供給される前記2種類の波長の透過光の強度を前記受光素子からの信号によって計測する透過光強度計測手段と、
前記投光面と前記受光面との間で前記管路を透過した前記2種類の波長の透過光の強度と、前記管路への前記2種類の波長の透過光の別途に得た入力強度とから前記流体の濃度を求めて出力する流体濃度出力手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
かかるこの発明の流体濃度測定装置にあっては、自由状態で長手方向に一様な壁厚および外径を有する、直径方向に弾性的に圧縮変形可能な光透過性の管路の内部を流れる流体の濃度を測定するに際し、その管路をケースの、一定溝幅の部分を長手方向の少なくとも一部に持つ溝内に、直径方向への圧縮変形状態で収容して、前記一定溝幅の部分にて前記溝の両側壁に直交する一本の軸線上でその両側壁の一方と同一平面上に位置する投光面を有する投光用光拡散ブロックと、前記軸線上でその両側壁の他方と同一平面上に位置して前記溝幅と等しい所定距離を置いて前記投光面と対向する受光面を有する受光用光拡散ブロックとの間に配置し、次いで発光素子から投光用光拡散ブロックの前記投光面の、前記軸線を中心とした所定領域に供給された、水への吸光度は殆どもしくは全くゼロであるが前記流体への吸光度は高い第1の波長と、水への吸光度は高いが前記流体への吸光度は極めて低い第2の波長との2種類の波長の透過光が、前記軸線上で投光面から管路に投光されて、その管路の管壁および内部を通る水または前記流体を透過し、前記軸線上で投光面に所定距離を置いて対向する受光用光拡散ブロックの受光面の、前記軸線を中心とした所定領域から受光されて受光素子に供給される。
【0009】
また上記工程に次いでもしくは上記工程に先立って、管路の代わりにキャリブレーション用の基準ブロックが、前記軸線上で投光用光拡散ブロックの投光面と受投光用光拡散ブロックの受光面との間に配置され、次いで管路の場合と同様に発光素子から投光用光拡散ブロックの、前記軸線を中心とした所定領域に供給された前記2種類の波長の透過光が、前記軸線上で投光面からその基準ブロックに投光されてその基準ブロックを透過し、受光用光拡散ブロックの受光面の、前記軸線を中心とした所定領域から受光されて受光素子に供給される。
【0010】
そして透過光強度計測手段が、発光素子から供給されて投光面から軸線上で投光され、その軸線上で受光面から受光されて受光素子に供給された前記2種類の波長の透過光の強度を受光素子からの信号によって計測し、次いで流体濃度出力手段が、投光面と受光面との間で前記管路を透過した前記2種類の波長の透過光の強度と、投光面と受光面との間で前記規準ブロックを透過した前記2種類の波長の透過光の強度から別途に得られた前記管路への前記2種類の波長の透過光の入力強度とから、例えばランベルト・ベールの法則に基づいて、管路の内部を流れる前記流体の濃度を求めて出力する。
【0011】
従って、この発明の流体濃度測定装置によれば、例えば塩化ビニール製の樹脂チューブ等の、自由状態で長手方向に一様な壁厚および外径を有する直径方向に変形可能な光透過性の管路を、その内部に通路を残しながらケースの溝内に直径方向の圧縮変形状態で収容して、一本の軸線上で投光用光拡散ブロックの投光面とそれに所定距離を置いて対向する受投光用光拡散ブロックの受光面との間に基準ブロックと交代で配置するとともに、吸光度が互いに大きく異なる2種類の波長の透過光をその管路の内部を流れる水と流体とに用いることで、管路の表面に傷があったりしても管路の内部の流体の濃度を簡易にかつ高精度に測定することができ、溝内からの管路の取り外しも容易に行うことができる。
【0012】
なお、この発明の流体濃度測定装置においては、前記流体は前記管路の内部を流れる血液であってもよく、このようにすれば、例えば人工透析等のために検査対象者の血管から採血針で採取されて管路を流れる血液の濃度を簡易にかつ連続的に測定することができるので好ましい。
【0013】
その場合に、この発明の液体濃度測定装置においては、前記2種類の波長は、水に殆どもしくは全く吸収されず血液へは酸化ヘモグロビンにも脱酸化(還元)ヘモグロビンにも同程度吸収される波長である805nm付近と、水への吸光度が高い波長である1450nm付近とに設定してもよく、このようにすれば、管路の内部を流れる血液の濃度を、他の波長で設定した場合と比較してヘモグロビンの酸化・脱酸化により変化せずに、簡易にかつ高精度に測定することができるので好ましい。
【0014】
また、この発明の液体濃度測定装置においては、前記発光素子および前記受光素子の少なくとも一方は、前記一本の軸線上に並んで位置して前記2種類の波長の光をその軸線上で発光または受光する2つの素子を持つものでもよく、このようにすれば2種類の波長の光の光軸を正確に一致させることができるので好ましい。
【0015】
さらに、この発明の液体濃度測定装置においては、前記発光素子および前記受光素子の少なくとも一方は、前記一本の軸線上に位置して前記2種類の波長の一方の光をその軸線上で発光または受光する1つの素子と、前記2種類の波長の他方の光を前記一本の軸線上に位置するダイクロイックミラーで反射させて発光または受光する1つの素子とを持つものでもよく、このようにしても2種類の波長の光の軸線を正確に一致させることができるので好ましい。
【0016】
そして、この発明の液体濃度測定装置においては、前記投光面と前記受光面との間に挿脱可能に配置されて前記投光面および前記受光面に密接する光透過性の基準ブロックを備えていてもよく、このようにすれば前記投光面から投光される前記2種類の波長の透過光の強度を求めることができる。
【0017】
その場合に、前記基準ブロックは、前記溝内で前記軸線を横切る使用位置と前記溝内から外れた待機位置との間で移動可能に前記ケースに収容されていてもよく、このようにすれば液体濃度測定装置の取り扱いを容易にするとともに基準ブロックの不使用時の紛失を防止することができるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)および(b)は、この発明の流体濃度測定装置の一実施形態としての血液濃度測定装置の構成を、管路としての樹脂チューブをケースの溝内に配置するとともに基準ブロックをケース内の待機位置に後退させた状態で示す外観斜視図および一部切り欠き斜視図である。
図2】(a)および(b)は、上記実施形態の血液濃度定装置の構成を、基準ブロックをケースの溝内の使用位置に前進させた状態で示す外観斜視図および一部切り欠き斜視図である。
図3】(a),(b)および(c)は、上記実施形態の血液濃度定装置の、発光素子として発光ダイオードを用いた3種類の構成を模式的にそれぞれ示す断面図である。
図4】(a)および(b)は、上記実施形態の血液濃度定装置の、発光素子としてレーザーダイオードを用いた2種類の構成を模式的にそれぞれ示す断面図である。
図5】(a)は、図3(b)に示す構成の、バンドパスフィルタを用いた一変形例を模式的に示す断面図、(b)は、そのバンドパスフィルタの透過光の波長と強度の関係を示す説明図である。
図6】(a)および(b)は、上記実施形態の血液濃度定装置の、受光素子として光センサを用いた2種類の構成を模式的にそれぞれ示す断面図である。
図7】(a)および(b)は、上記実施形態の血液濃度定装置の、受光素子として光センサを用いたさらに2種類の構成を模式的にそれぞれ示す断面図である。
図8】(a)~(e)は、上記実施形態の血液濃度測定装置における血液濃度の測定手順を示す説明図である。
図9】血液と水とにおける透過光の波長と吸光度の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。図1(a)および図1(b)は、この発明の流体濃度測定装置の一実施形態としての血液濃度測定装置の構成を、管路としての樹脂チューブをケースの溝内に配置するとともに基準ブロックをケース内の待機位置に後退させた状態で示す外観斜視図および一部切り欠き斜視図である。また、図2(a)および図2(b)は、上記実施形態の血液濃度定装置の構成を、基準ブロックをケースの溝内の使用位置に前進させた状態で示す外観斜視図および一部切り欠き斜視図である。
【0020】
これらの図に示すようにこの実施形態の血液濃度測定装置は、自由状態で長手方向に一様な壁厚および外径を有する、直径方向に弾性的に圧縮変形可能な光透過性の管路としての、例えば塩化ビニール製の樹脂チューブTの内部を流れる血液Bの濃度を測定する装置であって、所定方向に延在して樹脂チューブTをその内部に通路を残しながら直径方向への圧縮変形状態で収容する、少なくとも長手方向の一部、ここでは実質的に全体が一定幅Lの、例えば断面コ字状の溝1aを有するケース1と、その溝1aの長手方向中央部でその溝1aの両側壁に直交する一本の軸線X上でその両側壁の一方と同一平面上に位置する投光面2aを有する例えば矩形の厚板状の投光用光拡散ブロック2と、その軸線X上で前記両側壁の他方と同一平面上に位置して溝幅Lと等しい所定距離を置いて投光面2aと対向する受光面3aを有する例えば投光用光拡散ブロック2と同一の形状および寸法の受光用光拡散ブロック3とを備えている。
【0021】
なお、投光用光拡散ブロック2および受光用光拡散ブロック3には、後述する透過光がレーザーダイオードからの光の場合はガラスや石英製のマイクロレンズアレイ使用無機拡散板が適しており、透過光が発光ダイオードからの光の場合はアクリルやポリウレタン製のマイクロレンズアレイ使用有機拡散板が適している。
【0022】
また、この実施形態の血液濃度測定装置は、投光用光拡散ブロック2の投光面2aと受光用光拡散ブロック3の受光面3aとの間に挿脱可能なようにケース1内に昇降可能に配置されて、溝1aの両側壁間に上昇した使用位置でそれら投光面2aおよび受光面3aに密接するとともに、使用位置から下降した待機位置で溝1aの両側壁間から外れて位置する光透過性、例えば塩化ビニール製の基準ブロック4と、その基準ブロック4を使用位置へ向けて常時軽く付勢するとともに溝1a内への樹脂チューブTの圧縮配置時には基準ブロック4の裾広がりの下部に形成された凹部内に圧縮収容されるコイルバネ等の弾性部材5とを備えている。なお、基準ブロック4を変形容易な材料で形成すれば、さほど高精度の寸法にしなくても、使用位置で高さ方向または長手方向に圧縮して厚さ方向に膨張させることで、投光面2aおよび受光面3aに容易に密接させることができる。
【0023】
さらにこの実施形態の血液濃度測定装置は、投光用光拡散ブロック2の投光面2aの、軸線Xを中心とした所定領域に、水Wへの吸光度は殆どもしくは全くゼロであるが血液Bへの吸光度は高い第1の波長λ1と、水Wへの吸光度は高いが血液Bへの吸光度は極めて低い第2の波長λ2との2種類の波長の透過光を供給する発光素子6と、受光用光拡散ブロック3の受光面3aの、軸線Xを中心とした所定領域から上記2種類の波長λ1.λ2の透過光Pを供給される受光素子7とをケース1内に備えている。なお、投光面2aと受光面3aとの所定領域は、それらの間に樹脂チューブTの圧縮変形部分を挟んで軸線X方向に整列していれば大きさは問わず、樹脂チューブTの圧縮変形部分より小さくてもよいが、樹脂チューブTの圧縮変形部分の幅に近い大きさであれば、圧縮変形部分の表面に傷があってもその傷の透過光強度への影響をより良く緩和することができる。
【0024】
そしてこの実施形態の血液濃度測定装置は、発光素子6から供給されて投光用光拡散ブロック2の投光面2aから投光され、受光用光拡散ブロック3の受光面3aから受光されて受光素子7に供給される2種類の波長λ1.λ2の透過光の強度Pを受光素子7からの電気信号によって計測する、透過光強度計測手段としての透過光強度計測部8と、投光面2aと受光面3aとの間で基準ブロック4または、樹脂チューブTのチューブ壁およびその内部の血液Bを透過した上記2種類の波長の透過光の強度Pから樹脂チューブTの内部の血液Bの濃度を求めて出力する通常のマイクロコンピュータを有する、流体濃度出力手段としての血液濃度出力部9とを備えている。
【0025】
図3(a),図3(b)および図3(c)は、上記実施形態の血液濃度定装置における発光素子として発光ダイオードを用いた3種類の投光部の構成を模式的にそれぞれ示す断面図であり、図4(a)および図4(b)は、上記実施形態の血液濃度定装置における発光素子としてレーザーダイオードを用いた2種類の投光部の構成を模式的にそれぞれ示す断面図である。
【0026】
図3(a)に示す例では、投光用光拡散ブロック2の、樹脂チューブTに当接する投光面2aの軸線Xを中心とした所定領域に、軸線Xに対して傾斜した向きに波長λ1の光を発光するLED(発光ダイオード)6aと、軸線Xを挟んでLED6aと対称に位置して波長λ2の光を発光するLED(発光ダイオード)6bとから透過光を、その投光用光拡散ブロック2を通して均一に拡散させて供給する。
【0027】
図3(b)に示す例では、投光用光拡散ブロック2の、樹脂チューブTに当接する投光面2aの軸線Xを中心とした所定領域に、軸線X上で波長λ1の光を発光するLED(発光ダイオード)6aと、軸線Xから逸れた位置で発光した波長λ2の光の向きをダイクロイックミラー6cで軸線Xに一致する向きに変えるLED(発光ダイオード)6bとから透過光を、その投光用光拡散ブロック2を通して均一に拡散させて供給する。
【0028】
そして図3(c)に示す例では、投光用光拡散ブロック2の、樹脂チューブTに当接する投光面2aと反対向きの面上に交互に多数並んだ波長λ1の光を発光するLED(発光ダイオード)6aと波長λ2の光を発光するLED(発光ダイオード)6bとから投光面2aの軸線Xを中心とした所定領域に透過光を、その投光用光拡散ブロック2を通して均一に拡散させて供給する。
【0029】
図4(a)に示す例では、図3(a)に示す例におけるLED6a、6bに換えて波長λ1のレーザー光を発光するLD(レーザーダイオード)6dと波長λ2のレーザー光を発光するLD(レーザーダイオード)6eを、LED6a、6bと同様に配置し、それらからレーザー光の透過光を、その投光用光拡散ブロック2を通して均一に拡散させて、投光面2aの軸線Xを中心とした所定領域に供給する。
【0030】
また、図4(b)に示す例では、図3(b)に示す例におけるLED6a、6bに換えて波長λ1のレーザー光を発光するLD(レーザーダイオード)6dと波長λ2のレーザー光を発光するLD(レーザーダイオード)6eを、LED6a、6bと同様に配置し、軸線X上で波長λ1のレーザー光を発光するLD6dと、軸線Xから逸れた位置で発光した波長λ2のレーザー光の向きをダイクロイックミラー6cで軸線Xに一致する向きに変えるLD6eとから透過光を、その投光用光拡散ブロック2を通して均一に拡散させて、投光面2aの軸線Xを中心とした所定領域に供給する。
【0031】
図5(a)は、図3(b)に示す構成の、バンドパスフィルタを用いた一変形例を模式的に示す断面図、図5(b)は、そのバンドパスフィルタの透過光の波長と強度の関係を示す説明図である。この変形例では、図5(b)に示す1450nmを中心波長λcとした所定透過領域を持つバンドパスフィルタ6fを、投光部6の、図3(b)に示すLED(発光ダイオード)6aとダイクロイックミラー6cとの間に配置して、LED6aからの不要な波長の光を除去している。
【0032】
図6(a)および図6(b)は、上記実施形態の血液濃度定装置における受光素子として光センサを用いた2種類の受光部の構成を模式的にそれぞれ示す断面図であり、また図7(a)および図7(b)は、上記実施形態の血液濃度定装置における受光素子として光センサを用いたさらに2種類の受光部の構成を模式的にそれぞれ示す断面図である。
【0033】
図6(a)に示す例では、受光用光拡散ブロック3の、樹脂チューブTに当接する受光面3aの軸線Xを中心とした所定領域で受光してその受光用光拡散ブロック3を通して均一に拡散させた波長λ1の光と波長λ2の光を、同一パッケージ内でその軸線X上に波長λ1の光を受光する受光素子と波長λ2の光を受光する受光素子とを並べて持つ光センサ7によって受光して、それら波長λ1の光と波長λ2の光とを光センサ7で電気信号に変換して出力する。なお、光センサ7は、波長λ1の光と波長λ2の光の両方に対して感度がある受光素子をパッケージ内に持つものでもよい。
【0034】
また、図6(b)に示す例では、受光用光拡散ブロック3の、樹脂チューブTに当接する受光面3aの軸線Xを中心とした所定領域で受光してその受光用光拡散ブロック3を通して均一に拡散させた波長λ1の光と波長λ2の光を、軸線Xに対して傾斜した向きで波長λ1の光を受光する光センサ7aと、軸線Xを挟んで光センサ7aと対称に位置して波長λ2の光を発光する光センサ7bとで、それぞれ電気信号に変換して出力する。
【0035】
図7(a)に示す例では、受光用光拡散ブロック3の、樹脂チューブTに当接する受光面3aの軸線Xを中心とした所定領域で受光してその受光用光拡散ブロック3を通して均一に拡散させた波長λ1の光と波長λ2の光を、軸線Xに対して傾斜した向きで波長λ1の光を受光する光センサ7aと、軸線Xを挟んで光センサ7aと対称に位置して波長λ2の光を発光する光センサ7bとでそれぞれコンデンサレンズ7cを介して強めて受光し、電気信号に変換して出力する。
【0036】
また、図7(b)に示す例では、図5(a)に示す構成における、波長λ1の光を発光するLED6aと波長λ2の光を発光するLED6bとに換えて、波長λ1の光を受光する光センサ7aと波長λ2の光を受光する光センサ7bとを配置するとともに、バンドパスフィルタ6fを除き、受光用光拡散ブロック3の、樹脂チューブTに当接する受光面3aの軸線Xを中心とした所定領域で受光してその受光用光拡散ブロック3を通して均一に拡散させた波長λ1の光と波長λ2の光を、ダイクロイックミラー7dで方向を変えて光センサ7aで受光するとともに、ダイクロイックミラー7dを透過させて光センサ7bで受光し、それら光センサ7aと光センサ7bとでそれぞれ電気信号に変換して出力する。
【0037】
図1(b)および図2(b)に示す血液濃度出力部9は、投光面2aと受光面3aとの間で基準ブロック4または、樹脂チューブTのチューブ壁およびその内部の血液Bを透過した上記2種類の波長の透過光の強度Pから、通常のマイクロコンピュータを用いて、樹脂チューブTの内部の血液Bの濃度を求めて出力する。
【0038】
図8(a)~図8(e)は、上記実施形態の血液濃度測定装置における血液濃度の測定手順を示す説明図である。ここではまず、図8(a)に示すように、基準ブロック4をケース1の溝1a内の使用位置に配置して、波長λ1の光を発光素子6から供給して投光用光拡散ブロック2の投光面2aから基準ブロック4に投光し、基準ブロック4を透過して受光用光拡散ブロック3の受光面3aから受光され、受光素子7に供給された波長λ1の透過光の強度Pcλ1を受光素子7からの電気信号によって計測する。
【0039】
次いで、図8(b)に示すように、基準ブロック4をケース1の溝1a内の使用位置に配置したままで、波長λ2の光を発光素子6から供給して投光用光拡散ブロック2の投光面2aから基準ブロック4に投光し、基準ブロック4を透過して受光用光拡散ブロック3の受光面3aから受光され、受光素子7に供給された波長λ2の透過光の強度Pcλ2を受光素子7からの電気信号によって計測する。
【0040】
次いで、図8(c)に示すように、基準ブロック4を例えば溝1aの下方の待機位置に弾性部材5の弾性力に抗して押し込むことで溝1a外に位置させ、代わりに樹脂チューブTをケース1の溝1a内に押し込んでその溝1aの両側壁とそれらと同一平面上に位置する投光用光拡散ブロック2の投光面2aおよび受光用光拡散ブロック3の受光面3aとで挟むことで、樹脂チューブTを内部に通路を残しながら直径方向に圧縮変形させ、その状態で樹脂チューブTの内部に水Wを通して、波長λ1の光を発光素子6から供給して投光用光拡散ブロック2の投光面2aから樹脂チューブTに投光し、樹脂チューブTのチューブ壁および内部の水Wを透過して受光用光拡散ブロック3の受光面3aから受光され、受光素子7に供給された波長λ1の透過光の強度PTWλ1を受光素子7からの電気信号によって計測する。
【0041】
次いで、図8(d)に示すように、樹脂チューブTをケース1の溝1a内に配置して直径方向に圧縮変形させた状態でその内部の通路に水Wを通したままで、波長λ2の光を発光素子6から供給して投光用光拡散ブロック2の投光面2aから樹脂チューブTに投光し、樹脂チューブTのチューブ壁および内部の水Wを透過して受光用光拡散ブロック3の受光面3aから受光され、受光素子7に供給された波長λ2の透過光の強度PTWλ2を受光素子7からの電気信号によって計測する。
【0042】
さらに、図8(e)に示すように、樹脂チューブTをケース1の溝1a内に配置して直径方向に圧縮変形させた状態でその内部の通路に水Wに変えて濃度測定対象の流体としての血液Bを通し、波長λ2の光を発光素子6から供給して投光用光拡散ブロック2の投光面2aから樹脂チューブTに投光し、樹脂チューブTのチューブ壁および内部の血液Bを透過して受光用光拡散ブロック3の受光面3aから受光され、受光素子7に供給された波長λ2の透過光の強度PTBλ2を受光素子7からの電気信号によって計測する。なお、これらの透過光強度の計測時の各波長の発光強度は変更しないものとする。
【0043】
図9は、血液B中の酸化ヘモグロビンHbOおよび脱酸化ヘモグロビンDHbと水Wとにおける透過光の波長と吸光係数の関係を示す特性図であり、この図から明らかなように波長λ1の光は、水Wへも血液Bへも吸収される中心波長1450nmのものであり、波長λ2の光は、水Wに殆どもしくは全く吸収されず血液Bへは酸化ヘモグロビンHbOにも脱酸化(還元)ヘモグロビンDHbにも同程度吸収される中心波長805nmのものである。なお、水Wは図示のような透過光の波長と吸光係数の関係を持つ実質的に透明のものであればその成分は特に限定されず、例えば生理食塩水であってもよい。
【0044】
それゆえ、これらの透過光強度のデータから血液濃度出力部9は、以下の手順で血液Bの濃度を求めることができる。
(1)波長λ1,λ2に対する基準ブロック4の吸光率(吸光係数)および反射損失は固定値であるから、投光面2aから基準ブロック4への波長λ1,λ2の入力強度Iλ1,Iλ2が求められる。
【0045】
(2)波長λ1に対する水Wが通った樹脂チューブTの透過光強度PTWλ1には、チューブ壁および内部の水Wによる減衰と反射損失が含まれているが、波長λ2に対する水Wが通った樹脂チューブTの透過光強度PTWλ2には、実質的にチューブ壁による減衰と反射損失のみが含まれているので、波長λ1と波長λ2との減衰比を考慮することで、樹脂チューブTの内部の水Wによる減衰量のみが求められ、水Wの吸光率(吸光係数)から、樹脂チューブTの内部の流体即ち血液Bの光路長が求められる。
【0046】
(3)受光素子7に供給された波長λ2の透過光の強度PTBλ2では、樹脂チューブTのチューブ壁による減衰とその内部の血液Bによる減衰とが含まれているが、上記の(2)において実質的にチューブ壁のみによる減衰量が求められているので、波長λ2の透過光の強度PTBλ2からそのチューブ壁のみによる減衰量を引くことで、樹脂チューブTの内部の血液Bのみの減衰量が求められ、上記の(2)において樹脂チューブTの内部の血液Bの光路長も求められているので、それらからランベルト・ベールの法則に基づく演算(例えば本願出願人が先に開示した特許第6246793号公報参照)により、樹脂チューブTの内部の血液Bの濃度が求められる。
【0047】
以上、図示の実施形態に基づいて説明したが、この発明の流体濃度測定装置は上述の実施形態に限定されるものでなく特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができ、例えば、溝1aの断面形状はコ字状でなくU字状等でもよい。また、基準ブロック4は、ケース1内で使用位置と待機位置との間を移動させるのでなく、使用時に溝1a内の使用位置に配置し、不使用時はケース1から外しておくようにしてもよい。
【0048】
さらに、血液濃度出力部9は、あらかじめランベルト・ベールの法則に基づく演算により作成した対応表を用いて、透過光強度のデータから血液Bの濃度を求めるようにしてもよい。そして、この発明の流体濃度測定装置の濃度測定対象の流体は、血液Bでなく薬液等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
かくしてこの発明の流体濃度測定装置によれば、例えば塩化ビニール製の樹脂チューブ等の、自由状態で長手方向に一様な壁厚および外径を有する直径方向に変形可能な光透過性の管路を、その内部に通路を残しながらケースの溝内に直径方向の圧縮変形状態で収容して、一本の軸線上で投光用光拡散ブロックの投光面とそれに所定距離を置いて対向する受投光用光拡散ブロックの受光面との間に基準ブロックと交代で配置するとともに、吸光度が互いに大きく異なる2種類の波長の透過光をその管路の内部を流れる水と流体とに用いることで、管路の表面に傷があったりしても管路の内部の流体の濃度を簡易にかつ高精度に測定することができ、溝内からの管路の取り外しも容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ケース
1a 溝
2 投光用光拡散ブロック
2a 投光面
3 受光用光拡散ブロック
3a 受光面
4 基準ブロック
5 弾性部材
6 発光素子
6a、6b LED
6c ダイクロイックミラー
6d,6e LD
6f バンドパスフィルタ
7 受光素子
7a、7b 光センサ
7c コンデンサレンズ
7d ダイクロイックミラー
8 透過光強度計測部
9 血液濃度出力部
B 血液
T 樹脂チューブ
W 水
X 軸線
【要約】
【課題】管路の内部の流体の濃度を簡易かつ高精度に測定できるようにすることにある。
【解決手段】流体濃度測定装置が、管路をその内部に通路を残しながら直径方向への圧縮変形状態で収容する一定幅の溝を有するケースと、前記溝の両側壁に直交する一本の軸線上で両側壁の一方と同一平面上に位置する投光面を有する投光用光拡散ブロックと、前記軸線上で両側壁の他方と同一平面上に位置して前記投光面と対向する受光面を有する受光用光拡散ブロックと、前記投光用光拡散ブロックの投光面の所定領域に2種類の波長の透過光を供給する発光素子と、前記受光用光拡散ブロックの受光面の所定領域から前記2種類の波長の透過光を供給される受光素子と、前記2種類の波長の透過光強度を受光素子からの信号によって計測する透過光強度計測手段と、前記2種類の波長の透過光強度と別途に得た入力強度とから前記流体の濃度を求めて出力する流体濃度出力手段とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9