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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】ディテント装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/38 20060101AFI20230328BHJP
   G05G 5/06 20060101ALI20230328BHJP
   B60K 20/02 20060101ALI20230328BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
F16H63/38
G05G5/06 F
B60K20/02 G
F16F1/12 L
F16F1/12 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019115650
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021001660
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】和田 明伸
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-275173(JP,A)
【文献】実開平6-14613(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/38
G05G 5/06
B60K 20/02
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、トーションバネと、前記ベース部材に対して揺動可能に支持されると共に、前記トーションバネを支持する揺動部材とを有しており、
前記ベース部材は、複数の突部、及び、複数の突部間に形成された複数の嵌合凹部を有する、ディテント部が設けられており、
前記トーションバネは、巻回部と、該巻回部の一端に設けられ、前記揺動部材又は前記ベース部材に当接する第1腕部と、前記巻回部の他端に設けられ、前記嵌合凹部内に入り込んで、該嵌合凹部を、その底部側に向けて付勢する第2腕部とを有しており、
前記第2腕部は、前記ディテント部の突部に弾接しながら、前記ベース部材に対する前記揺動部材の揺動に伴って、複数の嵌合凹部間を移動するように構成されていることを特徴とするディテント装置。
【請求項2】
前記ディテント装置は、前記第2腕部が挿通される挿通孔が形成された、ローラを有しており、
前記第2腕部は、前記ローラを介して、前記ディテント部の嵌合凹部を、その底部側に向けて付勢して、前記突部に弾接しながら複数の嵌合凹部間を移動する請求項1記載のディテント装置。
【請求項3】
前記ローラの挿通孔の内周は、同ローラの厚さ方向中心部から、厚さ方向両端に位置する両開口部に向けて広がるテーパ状をなしている請求項2記載のディテント装置。
【請求項4】
前記ローラの外周には、一対のフランジ部が設けられており、該一対のフランジ部の間に、前記ディテント部が配置されるようになっており、
前記一対のフランジ部の間隔は、前記ディテント部の厚さよりも広くなるように設けられている請求項2又は3記載のディテント装置。
【請求項5】
前記ベース部材に対する前記揺動部材の最大揺動時において、前記一対のフランジ部のうち、少なくとも一方が前記ディテント部に当接するように構成されている請求項4記載のディテント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の自動変速機に用いられる、ディテント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の自動変速機は、シフトレバーを操作して、P(駐車)や、R(後退)、D(ドライブ)等の作動モードを適宜切り替えている。このシフトレバーを、上記「P」や「R」等の作動モードに保持するための構造として、マニュアルプレートと、ディテントスプリングとが用いられている。マニュアルプレートには、「P」や「R」等に対応した、山谷形状をなした複数の山谷部が形成され、シフトレバーの操作に連動して回動する。また、ディテントスプリングは板状をなし、先端側に二股状をなしたローラ支持部が設けられ、これにローラが回動支持されており、マニュアルプレートの複数の山谷部に弾性的に嵌合する。そして、シフトレバーを所定荷重で操作して、マニュアルプレートを回動させることによって、所定の山谷部に嵌合したローラを、ディテントスプリングの先端側を撓ませつつ、他の山谷部に嵌合させることで、シフトレバーを所定の動作モードに切り替え可能となっている。
【0003】
上記構造を有するものとして、下記特許文献1には、外周に係止部を有するマニュアルプレートと、ばね部の端部に係止部との係合部を有して、シフトレバーの選択ポジションを保持する、弾性板材からなるディテントスプリングとを備えた、自動変速機のディテント機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-42831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等においては、ディテントスプリング先端のローラを、所定の山谷部から他の山谷部へと移動させるべく、マニュアルプレートを回動させる際の、シフトレバーの操作荷重を高めたい場合があった。
【0006】
上記特許文献1の自動変速機のディテント機構においては、ディテントスプリングが、弾性板材からなるため、上記操作荷重を高めようとした場合には、例えば、板厚等を厚くすることが考えられる。しかし、ディテントスプリングの設置スペースや、その他の要因により、ディテントスプリングの板厚等を、厚くしようとしても限界がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、揺動部材操作時における荷重を高めることができる、ディテント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ベース部材と、トーションバネと、前記ベース部材に対して揺動可能に支持されると共に、前記トーションバネを支持する揺動部材とを有しており、前記ベース部材は、複数の突部、及び、複数の突部間に形成された複数の嵌合凹部を有する、ディテント部が設けられており、前記トーションバネは、巻回部と、該巻回部の一端に設けられ、前記揺動部材又は前記ベース部材に当接する第1腕部と、前記巻回部の他端に設けられ、前記嵌合凹部内に入り込んで、該嵌合凹部を、その底部側に向けて付勢する第2腕部とを有しており、前記第2腕部は、前記ディテント部の突部に弾接しながら、前記ベース部材に対する前記揺動部材の揺動に伴って、複数の嵌合凹部間を移動するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の板バネからなるディテントスプリングに対して、弾性力付勢手段として、トーションバネを採用し、その第2腕部が、ディテント部の突部に弾接しながら、ベース部材に対する揺動部材の揺動に伴って、複数の嵌合凹部間を移動するように構成されているので、トーションバネの線径を太くしたり、巻回部の外径を大きくしたり、巻き数を増やしたり等の方法によって、第2腕部の弾性力を容易に高めることができ、高荷重化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るディテント装置の一実施形態を示す、分解斜視図である。
図2】同ディテント装置の斜視図である。
図3】同ディテント装置において、図2とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
図4】同ディテント装置の平面図である。
図5】同ディテント装置において、ローラを取外した状態での側面図である。
図6図4のA-A矢示線における断面図である。
図7】同ディテント装置において、ベース部材に対して揺動部材が、図4の矢印Y1方向に最大限揺動した状態の平面説明図である。
図8】同ディテント装置において、ベース部材に対して揺動部材が、図4の矢印Y2方向に最大限揺動した状態の平面説明図である。
図9図7の状態において、ローラの径方向中央において切断して平面方向から見た場合の、断面説明図である。
図10】同ディテント装置の、一使用例を示す斜視図である。
図11】本発明に係るディテント装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係るディテント装置の、一実施形態について説明する。
【0012】
図1~3に示すように、この実施形態におけるディテント装置10は、ディテント部25を有するベース部材20と、巻回部41、第1腕部44、及び第2腕部47を有するトーションバネ40と、ベース部材20に対して、揺動軸60を介して揺動可能に支持されると共に、トーションバネ40を支持する揺動部材50と、トーションバネ40をベース部材20に装着するバネ装着軸65と、バネ装着軸65を揺動部材50から抜け止め保持するEリング67と、トーションバネ40の第2腕部47に外装されるローラ70とから、主として構成されている。
【0013】
また、この実施形態におけるディテント装置10は、図10に示すような、自動車のオートマチックトランスミッション(以下、単に「AT」ともいう)のシフトレバー1に、操作ワイヤー3を介して回動するレバー5に、前記揺動部材50が連結されたものとなっている。そして、シフトレバー1を、「P」や、「R」、「N」、「D」等の各作動モードに移動させることで、操作ワイヤー3を介してレバー5が回動し、回動したレバー5に連動して、揺動部材50が揺動するようになっている。なお、このディテント装置は、自動車のAT以外の箇所に適用してもよく、適用箇所は特に限定されない。
【0014】
まず、ベース部材20について説明する。図1に示すように、この実施形態のベース部材20は、異形板状をなした基部21を有している。この基部21の所定箇所からは、所定高さで隆起した揺動部材支持部22が設けられており、揺動部材50を、基部21の表面(ベース部材20との対向面)全体に当接させずに部分的に浮き上がった状態で、揺動可能に支持する(図6参照)。また、揺動部材支持部22には、軸支持孔22aが形成されている。更に、基部21の斜めに対向する箇所には、一対の取付孔23,23が形成されており、図示しない被取付部材に、ネジやボルト等を介して、ベース部材20を取付け可能となっている。
【0015】
また、基部21の一側部の周縁からは、ディテント部25が立設されている。図2図3、及び図5に示すように、この実施形態のディテント部25は、基部21の一側部に沿って延びる略長板状の立壁部25aと、この立壁部25aの立設方向の上端部に、その長手方向に沿って形成された、複数の突部26,27,28,29,30とを有しており、更に隣接する突部間には、それぞれ嵌合凹部32が複数形成されており、突部26~30及び嵌合凹部32が立壁部25aの長手方向に交互に連続して設けられた構成となっている。なお、ディテント部25を構成する、立壁部25aと、複数の突部26~30とは、同一の厚さT(図6参照)で形成されている。
【0016】
また、突部27,28,29は、略山形状をなしている。一方、立壁部25aの長手方向両端に位置する突部26,30は、半割の略山形状をなしている。更に、離接する突部間に設けた各嵌合凹部32は、略山形状をなした突部に対応して、略三角溝状をなしており、その最も低い箇所に、谷状の底部32aが設けられている。
【0017】
そして、図4や、図7及び図8に示すように、上記の各嵌合凹部32内に、トーションバネ40の第2腕部47又は第2腕部47に外装されたローラ70が入り込んで、複数の突部26~30に弾接しながら、揺動部材50の揺動に伴って、隣接する嵌合凹部32間を移動するようになってる(これについては、後述のトーションバネ40の説明において詳述する)。
【0018】
また、図5に示すように、各嵌合凹部32の内面側(言い換えると、各突部の両側部)には、第2腕部47の移動をガイドするガイド面34が形成されている。すなわち、各嵌合凹部32の底部32aから、各突部26,27,28,29,30の、最も高く突出した頂部26a,27a,28a,29a,30aまでの間に、各突部26~28を次第に高く突出させるように傾斜したガイド面34がそれぞれ形成されている。そのため、所定の嵌合凹部32に入り込んだ第2腕部47やローラ70が、揺動部材50の揺動に伴って、隣接する他の嵌合凹部32へと移動する際に、底部32aから各突部26~30の頂部26a~30aへとガイドされて、第2腕部47やローラ70が移動しやすくなっている。
【0019】
更に図5に示すように、この実施形態においては、各突部26~30の頂部26a~30aのうち、突部27の頂部27aが、他の突部26,28~30の頂部26a,28a~30aよりも高く突出している。このような構成の場合、第2腕部47やローラ70が、突部26,27間の嵌合凹部32と、突部27,28間の嵌合凹部32との間を移動する際に、他の嵌合凹部32,32間への移動時と比べて、頂部27aを乗り越えにくくなり移動しづらくなるため、第2腕部47やローラ70を、突部26,27間の嵌合凹部32又は突部27,28間の嵌合凹部32に保持させやすくなる。
【0020】
なお、この実施形態では、突部を略山形状とし、嵌合凹部をそれに対応する略三角溝状としたが、例えば、突部間の嵌合凹部を、半円形状の溝部や、湾曲形状の溝部、略コ字状の溝部として、突部をそれらに対応した形状としてもよく、トーションバネの第2腕部やローラが、揺動部材の揺動に伴って、隣接する嵌合凹部間を一つずつ移動可能な形状であればよい。また、突部や、突部間の嵌合凹部の個数も、特に限定されない。更に、上述したベース部材の、ディテント部以外の構造や形状も、揺動部材を揺動支持可能であれば、特に限定されない。なお、ベース部材としては、金属材料や合成樹脂材料等から形成することができる。
【0021】
次に、揺動部材50について説明する。図1に示すように、この実施形態の揺動部材50は、軸挿通孔51aが形成された基部51を有している。そして、図6に示すように、この軸挿通孔51a及びベース部材20の軸支持孔22aに揺動軸60が挿通されることで、図4の矢印Y1,Y2に示す揺動方向に、ベース部材20に対して揺動部材50が揺動可能に支持されるようになっている。図7には、図4の状態から矢印Y1に示す揺動方向に、揺動部材50が最大限揺動した状態が示されており、図8には、図4の状態から矢印Y2に示す揺動方向に、揺動部材50が最大限揺動した状態が示されている。なお、揺動軸60の先端及び基端には、拡径したフランジ部61,62(図6参照)が設けられており、ベース部材20から揺動部材50の抜け止めされるようになっている。
【0022】
また、図1に示すように、基部51の両側部からは、対向配置された一対の側壁52,53が立設されており、各側壁52,53の立設方向上端部には、軸支持孔52a,53aがそれぞれ形成されている。そして、一対の側壁52,53間に、トーションバネ40の巻回部41を配置して、バネ装着軸65を、軸支持孔52a,53aにそれぞれ挿通し、バネ装着軸65の先端外周に設けたリング装着溝65aに、Eリング67を装着することで、揺動部材50にトーションバネ40の巻回部41が抜け止め状態で装着されるようになっている。
【0023】
更に図1に示すように、基部51の、一対の側壁52,53に直交する一側部からは、第1アーム部55が、一方の側壁52の外面から所定長さで突出するように延びている。この第1アーム部55の延出方向先端部には、拡径した連結部56が設けられており、該連結部56には、連結孔56aが形成されている。この実施形態では、図10に示すように、前記連結孔56aに、ATのシフトレバー1のレバー5が、ネジやボルト等を介して連結されるようになっている。また、図2に示すように、第1アーム部55の表面(ベース部材20との対向面とは反対面)側に、トーションバネ40の第1腕部44が当接して支持されるようになっている。
【0024】
更に図4に示すように、基部51の、一対の側壁52,53に直交する他側部からは、略三角板状(側壁53側に偏位した三角板状)をなした、第2アーム部57が延出している。この第2アーム部57の延出方向の先端部から、第2腕部保持部58が立設されている。この第2腕部保持部58は、その立設方向先端に、二股状をなした保持片58a,58aが設けられており、これらの保持片58a,58aの間に、トーションバネ40の第2腕部47が挿入されて、かつ、第2腕部保持部58の外面側から挿出されるようになっている。
【0025】
また、上述した揺動部材の構造や形状は、トーションバネを支持可能であれば、特に限定はされない。更に、揺動部材としては、金属材料や合成樹脂材料等から形成することができる。
【0026】
次に、トーションバネ40について説明する。図1に示すように、このトーションバネ40は、巻回部41と、この巻回部41の一端に設けられた第1腕部44と、巻回部41の他端に設けられた第2腕部47とを有している。この実施形態では、トーションバネ40の各部分(巻回部41、第1腕部44、第2腕部47)は、バネ鋼や、バネ用ステンレス鋼等の金属材料からなり、所定線径とされた一本の線材(ここでは断面円形状の線材)で一体形成されている。
【0027】
上記の巻回部41の一端からは、第1腕部44が、巻回部41の外径方向に向けて延びており、その延出方向の先端部44aが、巻回部41の軸方向他端側に向けて、略L字状をなすように屈曲している。図2図4に示すように、第1腕部44の屈曲した先端部44aが、揺動部材50の第1アーム部55に当接するようになっている。なお、トーションバネ40の第1腕部44は、ベース部材20に当接するようにしてもよい(これについては、後述する他の実施形態で説明する)。
【0028】
一方、巻回部41の他端からは、第2腕部47が、巻回部41の外径方向に向けて、直線状をなすように延びている。この実施形態では図4に示すように、巻回部41の他端から、巻回部41の軸方向一端側に向けて、クランク状に屈曲したクランク部47aを介して、巻回部41の軸心Cに対して直交するように、第2腕部47が直線状に延びている。この第2腕部47は、図6の矢印Fに示すように、ディテント部25の各嵌合凹部32内に入り込んで、該嵌合凹部32を、その底部32a側に向けて付勢するようになっている。この第2腕部47は、揺動部材50の、二股状をなした保持片58a,58a間に挿入配置されると共に、その外周にローラ70が配置されるようになっている(図6参照)。
【0029】
なお、上述したように、第2腕部47は、クランク部47aを介して巻回部41の他端から延びているので、第2腕部47を、巻回部41の他端側よりも軸方向一端側に向けて配置することができる。その結果、巻回部41の巻き数を増やしやすくなり、トーションバネ40の弾性力を高めやすい。また、第2腕部47の基端側に、クランク部47aを設けたことで、巻回部41の他端から第2腕部47が直接延びている場合に比べて、第2腕部47の剛性を高めることができる。
【0030】
なお、図5図6に示すように、第2腕部47は、揺動部材50に設けた一対の保持片58a,58aの間に挿入配置されるものの、保持片58a,58a間の底部58bには当接しないように構成されている。その結果、一対の保持片58a,58aによって、第2腕部47の、第2腕部保持部58の幅方向への移動を規制して、揺動部材40に揺動に連動して、第2腕部47をガタ付きなく確実に移動させることができる。一方、第2腕部47の、第2腕部保持部58の立設方向に沿った移動(昇降移動)は許容され、特に、第2腕部47の、揺動部材50に近接する方向への移動(下降移動)が許容されるので、第2腕部47による付勢力を、各嵌合凹部32の底部32aに向けて、或いは、ローラ70に対して確実に作用させることができる。
【0031】
上記のトーションバネ40に関連して、図1~4及び図6を参照してローラ70について説明すると、この実施形態のローラ70は、略円筒状をなしたローラ本体71と、該ローラ本体71の軸方向の両端外周から互いに平行に設けられた略円板状をなした第1フランジ部75,第2フランジ部77とを有している。また、ローラ本体71の中央には、第2腕部47が挿通されると共に、ローラ70を回転可能に支持する挿通孔73が設けられている。なお、図6に示すように、前記挿通孔73は、ローラ70の厚さ方向一端側(第1フランジ部75側)に開口部73aが位置し、厚さ方向他端側(第2フランジ部77側)に開口部73bが位置している。
【0032】
また、第1フランジ部75の外径は、第2フランジ部77の外径よりも、大きく形成されている。更に図6に示すように、一対のフランジ部75,77の間隔D(対向する内面どうしの間隔)は、ディテント部25の厚さTよりも広くなるように設けられている。その結果、図4図6に示すように、一対のフランジ部75,77の間に、ディテント部25が入り込んで配置されるようになっている。なお、第1フランジ部75が、ディテント部25の立壁部25aの外面側(トーションバネ40の巻回部41から離反する側)に配置され、第2フランジ部77が、ディテント部25の立壁部25aの内面側(トーションバネ40の巻回部41に近接する側)に配置される。
【0033】
また、図7図8に示すように、ベース部材20に対する揺動部材50の最大揺動時において、一対のフランジ部75,77のうち、少なくとも一方がディテント部25に当接するように構成されている。この実施形態では、図7に示すように、ベース部材20に対して揺動部材50が、図4の矢印Y1方向に向けて、突部26側に最大限揺動したときに、第2フランジ部77がディテント部25の立壁部25aの内面側に当接する。一方、図8に示すように、ベース部材20に対して揺動部材50が、図4の矢印Y2方向に向けて、突部30側に最大限揺動したときにも、第2フランジ部77がディテント部25の立壁部25aの内面側に当接するようになっている。
【0034】
更に図6に示すように、挿通孔73の内周には、その厚さ方向中央に、一定内径の孔状をなした中央孔部73cと、この中央孔部73cの一端から前記開口部73aに向けて次第に広がるテーパ状をなした第1テーパ面73dと、中央孔部73cの他端から前記開口部73bに向けて次第に広がるテーパ状をなした第2テーパ面73eとが形成されている。
【0035】
再び、トーションバネ40の説明に戻ると、この実施形態においては、巻回部41の他端から直線状に延びる第2腕部47の外周に、ローラ70が配置されている。そして、図2~4及び図6に示すように、このローラ70が、一対のフランジ部75,77で、略長板状をなしたディテント部25を挟んだ状態で、そのローラ本体71が、嵌合凹部32内に配置されるようになっている。
【0036】
このとき、第2腕部47は、上述したように、ローラ70の挿通孔73に挿通されると共に、ディテント部25の嵌合凹部32を、その底部32a側に向けて付勢する構成となっているので、図6に示すように、挿通孔73の中央孔部73cの内周が、第2腕部47によって嵌合凹部32の底部32a側に向けて押圧される。その結果、第2腕部47によって、ローラ本体71の外周が、図6の矢印Fに示すように、嵌合凹部32の底部32a側に向けて付勢されて、図5に示すように、底部32a両側のガイド面34,34に弾接(弾性的に当接)するようになっている。つまり、第2腕部47は、ローラ70を介して間接的に、嵌合凹部32を、その底部32a側に向けて付勢して、複数の突部26~30に弾接するようになっている。ただし、第2腕部47の外周にローラ70が配置されていない構造の場合、第2腕部47は、嵌合凹部32を、その底部32a側に向けて付勢して、複数の突部26~30に直接的に弾接するようになっている。
【0037】
そして、このディテント装置10においては、トーションバネ40の第2腕部47は、ディテント部25の複数の突部26~30に弾接しながら、ベース部材20に対する揺動部材50の揺動に伴って、複数の嵌合凹部32間を移動するように構成されている。この実施形態では、上述したように、第2腕部47の外周にローラ70が配置されているので、第2腕部47は、ローラ70を介して、嵌合凹部32を、その底部32a側に向けて付勢して、複数の突部26~30に弾接しながら、揺動部材50の揺動に伴って、複数の嵌合凹部32間を移動するようになっている。
【0038】
これについて、より具体的に説明すると、図5に示すように、第2腕部47によって嵌合凹部32の底部32a側に付勢されたローラ70は、そのローラ本体71が、突部27と突部28との間の嵌合凹部32内に配置されて、ガイド面34,34に弾接している。この状態で、図10に示されるシフトレバー1の操作によって、操作ワイヤー3を介して回動するレバー5により、揺動部材50が図4の矢印Y1方向に揺動すると、それに連動して、揺動部材50に装着されたトーションバネ40の第2腕部47が、隣接する突部26,27間の嵌合凹部32側へと移動しようとする。すると、ローラ70は、第2腕部47の付勢力に抗して、ガイド面34によってガイドされながら、嵌合凹部32の底部32aから次第に離反していき、突部27の頂部27aを乗り越えると、再び第2腕部47によって付勢されて、隣接する突部26,27間の嵌合凹部32内入り込んで保持される。この状態(揺動部材50の矢印Y1方向側への最大揺動状態)が、図7に示されている
【0039】
一方、図5の状態から、揺動部材50が図4の矢印Y2方向に揺動する場合も、上記と同様である。すなわち、揺動部材50が図4の矢印Y2方向に揺動すると、これに連動して、第2腕部47が隣接する突部28,29間の嵌合凹部32側へと移動しようとし、ローラ70が、第2腕部47の付勢力に抗して、ガイド面34によってガイドされながら、嵌合凹部32の底部32aから次第に離反して、突部28の頂部28aを乗り越えると、第2腕部47により付勢されて、隣接する突部28,29間の嵌合凹部32内に入り込んで保持される。この状態から更に、揺動部材50が図4の矢印Y2方向に揺動すると、上述したのと同様に、ローラ70が、第2腕部47の付勢力に抗して、ガイド面34によってガイドされながら、突部29の頂部29aを乗り越えて、隣接する突部29,30間の嵌合凹部32内に入り込んで保持される。この状態(揺動部材50の矢印Y2方向側への最大揺動状態)が、図8に示されている。
【0040】
なお、上述したトーションバネの構造や形状は、特に限定されない。また、この実施形態のトーションバネ40における巻回部41は、線材を密巻きして形成されているが、疎巻きで形成してもよい。更に、トーションバネを形成する線材は、その断面が、楕円形や、四角形等であってもよい。また、この実施形態のトーションバネ40は、一本の線材から形成されているが、複数本の線材から形成されていてもよい。更に、トーションバネの巻回部を、軸方向に2つ並べたダブルトーション構造等としてもよい。
【0041】
更に、上述したローラ構造や形状も、特に限定はされない。例えば、ローラ本体の軸方向一端のみに、フランジ部を設けたり、ローラ本体の外周中央に、ディテント部25が挿入可能な程度の溝幅で、環状溝を形成したりしてもよい。
【0042】
次に、上記構成からなるディテント装置10の作用効果について説明する。
【0043】
すなわち、このディテント装置10においては、特許文献1のような板バネからなるディテントスプリングに対して、弾性力付勢手段として、トーションバネ40を採用し、その第2腕部47が、上述したように、ディテント部25の複数の突部26~30に弾接しながら、ベース部材20に対する揺動部材50の揺動に伴って、複数の嵌合凹部32間を移動するように構成されている。この実施形態では、第2腕部47は、ローラ70を介して、複数の突部26~30に間接的に弾接しながら、揺動部材50の揺動に伴って、複数の嵌合凹部32間を移動する(図5~9参照)。そのため、トーションバネ40の線径を太くしたり、巻回部41の外径を大きくしたり、巻き数を増やしたり等の方法によって、第2腕部47の弾性力を容易に高めることができるので、高荷重化に対応することができる。
【0044】
なお、従来の板バネからなるディテントスプリング(特許文献1参照)において、弾性力を高めようとする場合には、板厚等を大きくすることが考えられるが、この場合には、設置スペースが大きくなるうえ、ディテントスプリング先端の二股部分でローラを支持する際に、二股部分を作成しにくくなるので、板厚を増大させることについては限界があり、高荷重化に対応しにくい。
【0045】
これに対して、このディテント装置10においては、弾性力付与手段として、板バネからなるディテントスプリングではなく、トーションバネ40を採用したことで、上述したような方法によって、第2腕部47の弾性力を容易に高めて高荷重化に対応でき、それによって、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に利用した場合に、シフトレバーの操作荷重を高めて、操作者が感じる節度感を高めることができる。
【0046】
また、このディテント装置10は、揺動部材50に揺動に伴って第2腕部47が、複数の突部26~30に弾接しながら、複数の嵌合凹部32間を移動することで、例えば、AT車のシフトレバーの操作位置を保持するための、ディテントスプリングの代替構造として用いることができる。
【0047】
更に、この実施形態においては、第2腕部47が挿通される挿通孔73が形成された、ローラ70を有しており、第2腕部47は、ローラ70を介して、ディテント部25の嵌合凹部32を、その底部32a側に向けて付勢して、複数の突部26~30に弾接しながら複数の嵌合凹部32間を移動するように構成されており、揺動部材50の揺動に伴って第2腕部47が揺動すると、ローラ70の挿通孔73の内周が押圧されて、ローラ70が複数の嵌合凹部32間を移動することとなる。この際、第2腕部47は、ローラ70をディテント部25の嵌合凹部32の底部32a側に向けて付勢して、ローラ70が複数の突部26~30に弾接するように構成されているので、揺動部材50の揺動時に、ローラ70を介して第2腕部47を、複数の嵌合凹部32間において、確実かつ滑らかに移動させることができる。
【0048】
また、この実施形態においては、図6に示すように、ローラ70の挿通孔73の内周は、ローラ70の厚さ方向中心部から、厚さ方向両端に位置する両開口部73a,73b向けて広がるテーパ状をなしている。すなわち、挿通孔73の内周には、開口部73aに向けて次第に広がる第1テーパ面73dと、開口部73bに向けて次第に広がるテーパ状をなした第2テーパ面73eとが形成されている。
【0049】
そのため、揺動部材50の揺動に伴って、第2腕部47と共にローラ70が、複数の嵌合凹部32間を移動する場合に、図9に示すように、第2腕部47が揺動により斜めになっても、ローラ70の挿通孔内周に干渉しにくくすることができ、それによりローラ70の移動が規制されることを抑制することができ、揺動部材50の揺動時に、ローラ70及び第2腕部47を、複数の嵌合凹部32間において、より確実に移動させることができる。
【0050】
更に、この実施形態においては、図6に示すように、ローラ70の外周には、一対のフランジ部75,77が設けられており、これらの一対のフランジ部75,77の間に、ディテント部25が配置されるようになっており、一対のフランジ部75,77の間隔Dは、ディテント部25の厚さTよりも広くなるように設けられている。そのため、一対のフランジ部75,77を利用して、ローラ70がディテント部25から脱落しないように保持することができると共に、揺動部材50の揺動時に、第2腕部47と共にローラ70が、複数の嵌合凹部32間を移動する際に、ローラ70をディテント部25に干渉しにくくすることができる。
【0051】
また、この実施形態においては、図7図8に示すように、ベース部材20に対する揺動部材50の最大揺動時において、一対のフランジ部75,77のうち、少なくとも一方がディテント部25に当接するように構成されている。ここでは、ベース部材20に対して揺動部材50が、図4の矢印Y1方向に向けて最大限揺動したとき、及び、図4の矢印Y2方向に向けて最大限揺動したときのいずれも、第2フランジ部77がディテント部25の内面側に当接する(図7及び図8参照)。そのため、ローラ70の、少なくとも一方のフランジ部を利用して、ベース部材20に対する揺動部材50の過度の揺動(オーバーストローク)を抑制することができる。
【0052】
図11には、本発明に係るディテント装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記各実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0053】
この実施形態におけるディテント装置10Aは、ベース部材20A及びトーションバネ40Aが異なっている。すなわち、ベース部材20Aを構成する基部21は、前記実施形態のベース部材20の基部21と比べて、長く延びた形状をなしている。また、トーションバネ40Aの第1腕部44が、前記実施形態のトーションバネ40の第1腕部44と比べて長く延びている。そして、図11に示すように、トーションバネ40Aの第1腕部44の屈曲した先端部44aが、ベース部材20Aの基部21に当接するようになっている。この実施形態においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10,10A ディテント装置
20,20A ベース部材
25 ディテント部
26,27,28,29,30 突部
32 嵌合凹部
32a 底部
40,40A トーションバネ
41 巻回部
44 第1腕部
47 第2腕部
50 揺動部材
60 揺動軸
65 バネ装着軸
67 Eリング
70 ローラ
73 挿通孔
75 第1フランジ部
77 第2フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11