(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】トランスファー装置及びタイヤ成型装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/26 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
B29D30/26
(21)【出願番号】P 2019130567
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 勝治
(72)【発明者】
【氏名】野津 浩行
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-236392(JP,A)
【文献】特開2011-140162(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ成型装置においてタイヤ構成部材を成型するための第1ドラムから前記タイヤ構成部材を用いた後工程の成型を行うための第2ドラムに前記タイヤ構成部材を受け渡すためのトランスファー装置であって、
外周面にタイヤ構成部材が成型された前記第1ドラムと同一軸線上に配置された状態で軸方向一方側から前記第1ドラムを受け入れる空間を持つ本体部と、
前記空間に前記第1ドラムが配された状態で前記タイヤ構成部材を外周側から保持可能に設けられた保持装置と、
前記本体部の前記軸方向一方側の端面に取り付けられ、前記空間への前記第1ドラムの受け入れ動作中に前記第1ドラム上に成型された前記タイヤ構成部材を検出する検出装置と、
を備えるトランスファー装置。
【請求項2】
前記検出装置は、前記タイヤ構成部材の前記第1ドラム上での位置と前記タイヤ構成部材の軸方向寸法との少なくとも一方を検出する、請求項1に記載のトランスファー装置。
【請求項3】
前記検出装置は、前記本体部の前記軸方向一方側の端面に軸方向に延在する架台を介して取り付けられた、請求項1又は2に記載のトランスファー装置。
【請求項4】
前記検出装置は、前記第1ドラムの軸方向において、少なくとも前記第1ドラムの一端から他端までの範囲で計測を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載のトランスファー装置。
【請求項5】
前記検出装置が複数設けられ、前記複数の検出装置は、前記本体部の前記空間に通ずる開口部において前記本体部の軸線を挟んで対向するように一対又は複数対設けられた、請求項1~4のいずれか1項に記載のトランスファー装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のトランスファー装置と、タイヤ構成部材を成型するための第1ドラムと、前記トランスファー装置により受け渡された前記タイヤ構成部材を用いて後工程の成型を行うための第2ドラムと、を備えるタイヤ成型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、グリーンタイヤを成型するためのタイヤ成型装置、及び、タイヤ成型装置においてタイヤ構成部材の受け渡しを行うトランスファー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば乗用車用ラジアルタイヤの製造に用いられるタイヤ成型装置において、複数のドラムとトランスファー装置を用いてタイヤ構成部材を分業で並行して準備する方法が知られている。
【0003】
具体的には、カーカスを含む筒状のバンド部材をバンドドラム上で成型する工程と、ベルトを含む筒状のベルト部材をベルトドラム上で成型する工程と、これらを一体化してタイヤ状に成型(シェーピング)する工程を、それぞれ別のステージで行い、工程間での部材の受け渡し(即ち、移送)にトランスファー装置を用いて行う方法がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、バンドドラムとベルトドラムとシェーピングドラムを備えたタイヤ成型装置において、ベルトドラムとして2つのドラムを用いることが記載されている。また、特許文献2には、バンドドラムとシェーピングドラムとしてそれぞれ2つのドラムを用いることが記載されている。このように設備の待ち時間を短縮し、生産効率を上げるために多様なレイアウトが提案されている。
【0005】
この種のタイヤ成型装置では、要するに工程毎に専用ドラムに分けて並行してタイヤ構成部材を成型し、トランスファー装置を介して各タイヤ構成部材を専用ドラムからシェーピングドラムに受け渡して一体化する。このため、各装置間の位置精度が直接完成タイヤのユニフォミティに影響する。すなわち、ドラム上に成型されたタイヤ構成部材の寸法やドラム上での位置精度が重要となる。
【0006】
特許文献3には、タイヤ構成部材の貼り付け装置の待ち時間等を利用して、タイヤ構成部材の寸法等を計測する検査方法が提案されている。具体的には成型ドラムにタイヤ構成部材を貼り付けた後、機械の待ち時間に、レーザ変位計によりタイヤ構成部材の表面までの距離を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-116817号公報
【文献】特開2013-220636号公報
【文献】特開2010-101721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、現在のタイヤ成型装置は作業効率が改善され、待ち時間があまりない。また装置全体が複雑化し大型化しているため、面積生産性の観点からタイヤ構成部材を検査するためだけの専用作業ステーションは設けたくない。そのため、生産効率を害することなく、コンパクトな構成でタイヤ構成部材の検査を行うことが望まれる。
【0009】
本発明の実施形態は、このような問題に鑑みてなされたものであり、生産効率を害することなく、コンパクトな構成でタイヤ構成部材の検査を行うことができるトランスファー装置、及びそれを含むタイヤ成型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係るトランスファー装置は、タイヤ成型装置においてタイヤ構成部材を成型するための第1ドラムから前記タイヤ構成部材を用いた後工程の成型を行うための第2ドラムに前記タイヤ構成部材を受け渡すためのトランスファー装置であって、外周面にタイヤ構成部材が成型された前記第1ドラムと同一軸線上に配置された状態で軸方向一方側から前記第1ドラムを受け入れる空間を持つ本体部と、前記空間に前記第1ドラムが配された状態で前記タイヤ構成部材を外周側から保持可能に設けられた保持装置と、前記本体部の前記軸方向一方側の端面に取り付けられ、前記空間への前記第1ドラムの受け入れ動作中に前記第1ドラム上に成型された前記タイヤ構成部材を検出する検出装置と、を備えるものである。
【0011】
本発明の実施形態に係るタイヤ成型装置は、上記トランスファー装置と、タイヤ構成部材を成型するための第1ドラムと、前記トランスファー装置により受け渡された前記タイヤ構成部材を用いて後工程の成型を行うための第2ドラムと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、第1ドラムから第2ドラムへのタイヤ構成部材の受け渡し時において、トランスファー装置による第1ドラムの受け入れ動作中に検出装置により第1ドラム上のタイヤ構成部材を検出することができる。そのため、生産効率を害することなく、コンパクトな構成でタイヤ構成部材の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】同実施形態に係るトランスファー装置の断面(
図3におけるII-II線断面)をベルトドラムとともに示す側面図
【
図3】同トランスファー装置の正面図(
図2の矢印IIIから見た図)
【
図4】同トランスファー装置がベルトドラムを受け入れる直前の状態(検出装置による計測開始時)を示す側面図
【
図5】同トランスファー装置がベルドラムを受け入れている途中の段階(検出装置による計測終了時点)を示す側面図
【
図6】同トランスファー装置によるベルトドラムの受け入れが完了した状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示す一実施形態に係るタイヤ成型装置10は、未加硫のグリーンタイヤを成型するための装置である。タイヤ成型装置10は、バンドドラム12と、ベルトドラム14と、シェーピングドラム16と、バンドトランスファー18と、ベルトトランスファー20と、を備えている。
【0016】
バンドドラム12は、タイヤの内周面側に配置される筒状のバンド部材T1を成型するためのドラムであり、公知の構成を採用することができる。
【0017】
バンド部材T1は、例としてインナーライナーとその外周に積層されたカーカスプライを含む円筒状のタイヤ構成部材であり、更にサイドウォールゴムや補強部材などの他の部材が含まれてもよい。また、
図1に示すようにビード部材T3が装着されてもよい。カーカスプライは一層でも複数層でもよい。
【0018】
バンドドラム12にバンド部材T1を成型するための成型機の構成としては公知の構成を採用することができ、特に限定されない。例えば、バンドドラム12は、水平な回転軸13に支持されて、不図示のモータによって回転するように構成されている。
【0019】
バンドドラム12の外周面には、不図示の部材供給装置によって供給されるシート状のインナーライナーやカーカスプライ等の部材が巻き付けられてバンド部材T1が成型される。詳細には、まずインナーライナーが巻き付けられ、その外周にカーカスプライが巻き付けられてバンド部材T1が成型されてもよい。
【0020】
ベルトドラム14は、タイヤの外周面側に配置される筒状のベルト部材T2を成型するためのドラムであり、公知の構成を採用することができる。
【0021】
ベルト部材T2は、例としてベルトとその外周に積層されたトレッドゴムを含む円筒状のタイヤ構成部材であり、更にベルト補強層などの他の部材が含まれてもよい。ベルトは通常複数のベルトプライからなり、タイヤ幅方向において幅が最大の最大幅ベルトプライと、最も外周側に配置される最外ベルトプライを含んでもよい。
【0022】
ベルトドラム14にベルト部材T2を成型するための成型機の構成としては公知の構成を採用することができ、特に限定されない。例えば、ベルトドラム14は、水平な回転軸15に支持されて、不図示のモータによって回転するように構成されている。
【0023】
ベルトドラム14の外周面には、不図示の部材供給装置によって供給されるシート状のベルトやトレッドゴム等の部材が巻き付けられてベルト部材T2が成型される。詳細には、まずベルトが巻き付けられ、その外周にトレッドゴムが巻き付けられてベルト部材T2が成型されてもよい。
【0024】
シェーピングドラム16は、バンド部材T1とベルト部材T2を用いてこれらをタイヤ状に成型するためのドラムであり、公知の構成を採用することができる。詳細には、シェーピングドラム16は、その外周面にバンド部材T1を配置させ、かつ、その径方向外方を取り囲むようにベルト部材T2を配置させた状態で、バンド部材T1を径方向外方にトロイド状に変形させてベルト部材T2の内周面に組付けることによりグリーンタイヤを成型する。
【0025】
シェーピングドラム16においてタイヤ状に成型するための成型機の構成としては公知の構成を採用することができ、特に限定されない。例えば、バンド部材T1の内部に圧縮ガスを充填することにより内圧を付与して、あるいは機械的な拡張装置に用いてバンド部材T1の中央部を膨張させてトロイド状に変形させてもよい。シェーピングドラム16は、外周面に配置されたバンド部材T1において、その軸方向両端部に位置するカーカスプライの両端部を、ビード部材T3を包み込むように折り返すターンアップ機構を備えてもよい。また、バンド部材T1を径方向に膨張させてベルト部材T2と一体化させた後、タイヤ状に形状を整えるためのステッチャーを備えてもよい。
【0026】
この例では、
図1に示すように、2つのシェーピングドラム16A,16Bが設けられている。2つのシェーピングドラム16A,16Bは、鉛直な軸Y1を中心に回転可能なターンステージ21上において、それぞれの軸線X1,X2を互いに平行にして設けられている。2つのシェーピングドラム16A,16Bは、それぞれ水平な回転軸22A,22Bを介してヘッドストック23A,23Bの軸方向一端部に回転可能に連結支持されており、ターンステージ21から互いに逆向きに突出している。ヘッドストック23A,23Bは、それぞれターンステージ21上に設けられたガイドレール24を走行可能に設けられ、これによりシェーピングドラム16A,16Bは軸線X1,X2に沿って部材受渡位置まで進退可能に構成されている。
【0027】
2つのシェーピングドラム16A,16Bは、バンドドラム12とベルトドラム14との間に配されている。そして、
図1に示す状態において、一方のシェーピングドラム16Aがバンドドラム12と同一軸線X1上に配置され(即ち、両者の軸線が同一直線X1上にある)、他方のシェーピングドラム16Bがベルトドラム14と同一軸線X2上に配置されている(即ち、両者の軸線が同一直線X2上にある)。また、ターンステージ21が180度回転することにより、上記他方のシェーピングドラム16Bがバンドドラム12と同一軸線X1上に配置され、上記一方のシェーピングドラム16Aがベルトドラム14と同一軸線X2上に配置される。
【0028】
バンドトランスファー18は、バンド部材T1をバンドドラム12からシェーピングドラム16に受け渡す(即ち、移送する)トランスファー装置であり、公知の構成を採用することができる。
【0029】
バンドトランスファー18は、バンドドラム12とシェーピングドラム16との間に配されている。この例では、バンドトランスファー18は、外周面にバンド部材T1が成型されたバンドドラム12と同一の軸線X1上に配置されており、軸方向一方側からバンドドラム12を受け入れる空間26を持つ。そして、該空間26にバンドドラム12が配された状態でバンド部材T1を外周側から保持可能に構成されている。ここで、バンドトランスファー18の軸方向とは、軸線X1に平行な方向である。
【0030】
バンドトランスファー18は、この例では、不図示の移動機構によって軸線X1上を往復移動可能に設けられており、矢印A1で示すように、左側のバンドドラム12の外周を取り囲む位置(バンド受取位置)まで移動することで、空間26にバンドドラム12を受け入れて、バンドドラム12が挿通された状態となる。この状態で、不図示の保持装置がバンド部材T1の外周面を径方向に保持する。
【0031】
なお、バンドトランスファー18に一対のビード部材T3を装着しておき、空間26へのバンドドラム12の受け入れに伴ってバンド部材T1の外周面における軸方向の両端部に一対のビード部材T3が装着されるようにしてもよい。
【0032】
バンドトランスファー18は、また、矢印A2で示すように、バンド部材T1を保持した状態で右側のバンド受渡位置まで移動可能に構成されている。バンド受渡位置には、矢印A5で示すように、シェーピングドラム16が移動する。そのため、バンドトランスファー18は、シェーピングドラム16の外周を取り囲む位置まで移動可能であり、これによりシェーピングドラム16の外周面を取り囲むようにバンド部材T1が配置される。この状態でシェーピングドラム16を拡径させるとともに、バンドトランスファー18の保持装置による保持を解除することにより、バンド部材T1はシェーピングドラム16の外周面に引き渡されるようになっている。
【0033】
ベルトトランスファー20は、ベルト部材T2をベルトドラム14からシェーピングドラム16に受け渡す(即ち、移送する)トランスファー装置である。
【0034】
この例では、ベルトトランスファー20は、ベルトドラム14とシェーピングドラム16との間に配されており、軸線X2に沿って往復移動可能に設けられ、矢印A3で示すように、右側のベルトドラム14の外周を取り囲む位置(ベルト受取位置)まで移動するように構成されている。ベルトトランスファー20は、また、矢印A4で示すように、ベルト部材T2を保持した状態で左側のベルト受渡位置まで移動可能に構成されている。ベルト受渡位置には、矢印A6で示すように、シェーピングドラム16が移動してくる。そのため、ベルトトランスファー20は、シェーピングドラム16の外周を取り囲む位置まで移動可能である。
【0035】
図2及び
図3に示すように、ベルトトランスファー20は、ベルトドラム14と同一軸線X2上に配置されており、即ち、両者20,14の軸線が同一直線X2上にある。ベルトトランスファー20は、この状態で軸方向一方側からベルトドラム14を受け入れる空間28を持つ本体部30と、空間28にベルトドラム14が配された状態でベルト部材T2を外周側から保持可能に設けられた保持装置32とを備えている。ここで、ベルトトランスファー20の軸線とは、筒状をなすベルト部材T2の外周面を保持する筒状の保持装置32の軸線である。また、ベルトトランスファー20ないし本体部30の軸方向は、軸線X2に平行な方向である。
【0036】
ベルトトランスファー20の本体部30は、上記空間28を中空部とする筒状(詳細には、短円筒状)をなすフレームであり、その軸方向一方側からベルトドラム14を受け入れて、空間28にベルトドラム14が配された状態となる。この例では、空間28は円柱状の空洞部であり、本体部30の軸方向の両端面30A,30Bには空間28に通ずる円形の開口部28A,28Bが設けられている(即ち、開口部28A,28Bは空間28の両端をなす)。
【0037】
ベルトトランスファー20は、この例では、移動機構によって軸線X2上を移動可能に設けられている。詳細には、本体部30が、上方に位置する水平な走行レール34に対して走行可能に吊り下げられており、モータ36によって走行レール34に沿って移動する。これにより、本体部30は、ベルトドラム14及びシェーピングドラム16と同一軸線X2上を移動、即ち本体部30の軸線とベルトドラム14及びシェーピングドラム16の軸線を直線X2にて一致させた状態で水平に移動するように構成されている。
【0038】
保持装置32は、複数の保持部材32Aによってベルト部材T2の外周面を保持するものである。各保持部材32Aは、ベルト部材T2の外周面に当接する断面円弧状の保持片部32A1を有し、複数(ここでは6個)の保持部材32Aの保持片部32A1が全体として円筒状をなしている。そのため、保持装置32は、周方向に複数に分割された円筒状部によりベルト部材T2の外周面を保持するように構成されている。
【0039】
保持装置32は、モータなどの不図示の駆動手段により、各保持部材32Aが縮径方向(半径方向内側)に移動することでベルト部材T2の外周面を保持し、逆に各保持部材32Aが拡径方向(半径方向外側)に移動することでベルト部材T2の保持を解除するように構成されている。
【0040】
ベルトトランスファー20は、ベルトドラム14の外周を取り囲む位置まで移動することで、
図6に示すように、空間28にベルトドラム14を受け入れて、ベルトドラム14が挿通された状態となる。この状態で、保持装置32の各保持部材32Aが縮径方向に移動することでベルト部材T2の外周面を径方向に保持する。
【0041】
ベルトトランスファー20は、また、ベルト部材T2を保持した状態でシェーピングドラム16の外周を取り囲む位置(ベルト受渡位置)まで移動可能に構成されており(
図1参照)、これによりシェーピングドラム16の外周を取り囲むようにベルト部材T2が配置される。この状態でバンド部材T1を径方向外方に膨張させてベルト部材T2の内周面に組付けた後、保持装置32の各保持部材32Aを拡径方向に移動させることでベルト部材T2の保持が解除され、シェーピングドラム16にベルト部材T2が引き渡されるようになっている。
【0042】
図2に示すように、ベルトトランスファー20には、ベルト部材T2を検出するための検出装置38が設けられている。検出装置38は、本体部30の軸方向一方側の端面30Aに取り付けられており、空間28へのベルトドラム14の受け入れ動作中にベルトドラム14上に成型されたベルト部材T2を検出する。
【0043】
検出装置38は、例として、ベルト部材T2のベルトドラム14上での位置とベルト部材T2の軸方向寸法との少なくとも一方を検出するものであり、好ましくは両者を検出することである。詳細には、ベルト部材T2のベルトドラム14上での位置として、ベルト部材T2の少なくとも一端のベルトドラム14上での位置を検出してもよく、ベルト部材T2の両端のベルトドラム14上での位置を検出してもよく、また、該両端を検出することによりベルト部材T2の軸方向中心のベルトドラム14上での位置を検出してもよい。また、ベルト部材T2の軸方向寸法を検出する場合、ベルト部材T2の両端を検出し、該両端の間の距離から軸方向寸法を検出してもよい。
【0044】
検出装置38としては、レーザ変位計などの光学センサを用いることができる。但し、これに限定されするものではなく、例えばラインセンサカメラなどを用いてもよい。
【0045】
検出装置38は、この例では、本体部30の軸方向一方側の端面30Aに、軸方向に延在する架台40を介して取り付けられている。すなわち、ベルトドラム14を受け入れる側の端面30Aにおいて、その開口部28Aの周縁部には、架台40が設けられている。
【0046】
架台40は、検出装置38を上記端面30Aから軸方向に離間した位置に配するための部材であり、端面30から軸方向に延びる柱状部40Aと、該柱状部40Aの先端に設けられた平板状の設置面部40Bとを備える。そして、架台40の設置面部40Bに検出装置38が取り付けられている。
【0047】
このように架台40を介して検出装置38を取り付けたことにより、
図4及び
図5に示すように、検出装置38は、空間28へのベルトドラム14の受け入れ動作中に、ベルトドラム14の軸方向において、少なくともベルトドラム14の一端(前端)14Aから他端(後端)14Bまでの範囲で計測を行うことができるように構成されている。すなわち、本体部30の空間28へのベルトドラム14の受け入れが完了する前にベルトドラム14の後端14Bまで計測されるように架台40の柱状部40Aの長さが設定されている。詳細には、検出装置38は、ベルトドラム14の軸方向一端14Aより手前の位置で計測を開始し、軸方向他端14Bまで計測することにより、ベルトドラム14の全長を含む範囲で計測が行われる。
【0048】
この例では、検出装置38は複数設けられている。複数の検出装置38は、本体部30の空間28に通ずる開口部28Aにおいて当該本体部30の軸線X2を挟んで対向するように一対又は複数対設けられている。
図3に示す例では、二対の検出装置38の各対向方向が互いに直交するように配置され、従って、検出装置38は開口部28Aの周上4箇所に等間隔で配置されている。
【0049】
以上よりなるタイヤ成型装置10を用いてグリーンタイヤを成型する方法としては、
(1)バンドドラム12上にバンド部材T1を成型する工程、
(2)ベルトドラム14上にベルト部材T2を成型する工程、
(3)バンドドラム12上に成型されたバンド部材T1をバンドトランスファー18によりシェーピングドラム16に移送する工程、
(4)ベルトドラム14上に成型されたベルト部材T2をベルトトランスファー20によりシェーピングドラム16に移送する工程、及び、
(5)シェーピングドラム16においてバンド部材T1を径方向に膨張させてベルト部材T2の内周面に組付けることによりグリーンタイヤを成型(シェーピング)する工程、
を含む方法が挙げられる。このようにして成型されたグリーンタイヤは、常法に従い、タイヤモールドを用いて加硫成型されることで空気入りタイヤを製造することができる。これらの各工程は基本的に公知の方法を用いて行うことができる。
【0050】
本実施形態では、ベルトトランスファー20によりベルト部材T2をベルトドラム14からシェーピングドラム16に受け渡す工程においてベルトドラム14上のベルト部材T2を検査する点に特徴があり、以下のこの点について詳述する。
【0051】
図2に示すように、外周面にベルト部材T2が成型されたベルトドラム14は、ベルトトランスファー20と同一軸線X2上にあり、ベルトトランスファー20の検出装置38が設けられた上記端面30Aと対向する側において、所定距離だけ離れた位置にベルトドラム14が配置されている。この状態からベルトトランスファー20を、矢印A3で示すように、ベルトドラム14に向かって、上記同一軸線X2上の位置関係のまま移動させる。
【0052】
そして、
図4に示すように、ベルトトランスファー20がその空間28にベルトドラム14を受け入れるよりも前の時点で検出装置38による計測を開始する。詳細には、ベルトトランスファー20が移動してその検出装置38がベルトドラム14の前端14Aの位置に達するその手前の時点で、検出装置38から例えばレーザ光Lを照射して計測を開始する。
【0053】
ベルトトランスファー20は、検出装置38による計測開始後もそのまま軸線X2に沿って移動し、
図5に示すように、検出装置38によりベルトドラム14の後端14Bまで計測する。すなわち、検出装置38がベルトドラム14の後端14Bの位置に達するまで、例えばレーザ光Lを照射して検出装置38による計測を行い、ベルトドラム14の後端14Bを検出した時点で計測を終了する。
【0054】
ベルトトランスファー20は、計測終了後もそのまま軸線X2に沿って移動する。そして、
図6に示すように、空間28にベルトドラム14を受け入れてその軸方向中心がベルトトランスファー20の保持装置32の軸方向中心位置に到達した時点でベルトトランスファー20を停止させる。
【0055】
その後、保持装置32を動作させて各保持部材32Aが縮径方向(半径方向内側)に移動することでベルト部材T2の外周面を保持するとともに、ベルトドラム14が縮径することで、ベルトトランスファー20がベルト部材T2をベルトドラム14から受け取る。
【0056】
ベルト部材T2を受け取った後、ベルトトランスファー20は、ベルト部材T2を保持した状態で、来た道を引き返すことにより、ベルトトランスファー20とベルトドラム14は相互に離反する。
【0057】
このようにして、ベルトトランスファー20は、シェーピングドラム16に向かってシェーピングドラム16との同一軸線X2上の位置関係を維持したまま移動し、ベルト受渡位置まで移動して停止する(
図1参照)。また、シェーピングドラム16が、矢印A6で示すようにベルト受渡位置まで移動する。このときシェーピングドラム16は既にバンド部材T1を外周に保持した状態になっている。そのため、ベルトトランスファー20がシェーピングドラム16の外周を取り囲むことで、バンド部材T1の外周にベルト部材T2を配置させた状態となるので、その状態でバンド部材T1を径方向外方に膨張させてベルト部材T2の内周面に組付ける。その後、保持装置32の各保持部材32Aを拡径方向に移動させることでベルト部材T2の保持が解除され、シェーピングドラム16にベルト部材T2が引き渡され、グリーンタイヤが得られる。
【0058】
本実施形態によれば、上記のようにベルトトランスファー20における本体部30の軸方向一方側に検出装置38を設けたことにより、ベルトトランスファー20によるベルトドラム14からシェーピングドラム16へのベルト部材T2の受け渡し時、詳細には、ベルト部材T2を持つベルトドラム14をベルトトランスファー20に受け入れる動作中に、検出装置38によってベルトドラム14上のベルト部材T2を検出することができる。
【0059】
このように、受け入れ動作中にベルト部材T2を検出してベルト部材T2の軸方向寸法やベルトドラム14上での位置を検出することができるので、生産効率を害することがない。また、突発的な設備の破損などに起因する位置ずれを早期に検出できる。また、ベルトトランスファー20の本体部30に検出装置38を設ければよいので、コンパクトな構成でベルト部材T2の検査を行うことができ、既設のトランスファー装置にも追設でき、安価な改造が可能である。
【0060】
また、架台40を介して検出装置38を取り付けることにより、ベルトドラム14の大きさ(軸方向における寸法)に合わせた架台40の交換が可能となる。すなわち、ベルトドラム14の受け入れ動作中にベルトドラム14の前端14Aから後端14Bまでの全体にわたって計測するためには、ベルトドラム14の軸方向寸法に応じて検出装置38の軸方向における位置を設定する必要がある。この実施形態によれば、架台40を交換してその柱状部40Aの長さを変えることにより、様々なサイズのベルトドラム14に対応することが可能となる。
【0061】
また、検出装置38を本体部30における空間28の開口部28Aにおいて、軸線X2を挟んで対向するように設けたので、筒状をなすベルト部材T2の周方向における検査を、検出装置38の数を抑えながら精度よく実施することができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、ベルトトランスファー20を例に挙げて説明したが、バンドトランスファー18において同様の構成を採用してバンド部材T1の検査を行うようにしてもよい。また、トランスファー装置としては、ベルトトランスファーやバンドトランスファーに限定されるものではない。
【0063】
すなわち、本実施形態では、タイヤ成型装置において、あるタイヤ構成部材を成型する第1ドラムから当該タイヤ構成部材を用いた後工程の成型を行う第2ドラムにタイヤ構成部材を受け渡すためのトランスファー装置(即ち、第1ドラムからタイヤ構成部材を受け取り、それを第2ドラムに引き渡すトランスファー装置)であれば、この受け取る工程を利用して種々のトランスファー装置に適用することができる。ここで、後工程の成型とは、第1ドラムでの成型工程よりも後の工程であれば、直後の工程でなくてもよい。また、
図1~6に示す上記実施形態では、ベルトドラム14を第1ドラムとし、シェーピングドラム16を第2ドラムとして、これらドラム間でタイヤ構成部材の受け渡しを行うベルトトランスファー20に上記検査構成を組み込んでいる。
【0064】
検査対象とするタイヤ構成部材としては、上記のようにベルト部材でもよく、バンド部材でもよい。ベルト部材については、ベルトドラム上に成型されたベルト部材全体でもよいが、当該ベルト部材を構成する複数のタイヤ構成部材のうちの少なくとも一つを検査対象としてもよい。例えば、検査対象は、最大幅ベルトプライでもよく、最外ベルトプライでもよく、これらを含む複数枚のベルトプライでもよく、トレッドゴムでもよい。
【0065】
バンド部材についても、バンドドラム上に成型されたバンド部材全体でもよいが、当該バンド部材を構成する複数のタイヤ構成部材のうちの少なくとも一つを検査対象としてもよく、例えば、インナーライナー上に巻き付けられたカーカスプライを検査対象としてもよい。
【0066】
検出装置による検出項目としては、第1ドラムからタイヤ構成部材を受け取る工程を利用して検出する場合、タイヤ構成部材の第1ドラム上での位置でもよく、タイヤ構成部材の軸方向寸法でもよく、タイヤ構成部材の第1ドラム上での位置とタイヤ構成部材の軸方向寸法の双方としてもよい。タイヤ構成部材の第1ドラム上での位置を検出する場合、タイヤ構成部材の少なくとも一端の第1ドラム上での位置を検出してもよく、タイヤ構成部材の両端の第1ドラム上での位置を検出してもよく、また、両端を検出することによりタイヤ構成部材の軸方向中心の第1ドラム上での位置を検出してもよい。タイヤ構成部材の軸方向寸法を検出する場合、タイヤ構成部材の両端を検出し、これら両端の間の距離を算出することでタイヤ構成部材の軸方向寸法を検出してもよい。
【0067】
上記実施形態では、バンドトランスファー18及びベルトトランスファー20が軸線X1,X2に沿って移動して、それぞれバンドドラム12とシェーピングドラム16との間、及びベルトドラム14とシェーピングドラム16との間を移動するように構成した。しかし、このようにドラムを固定し、トランスファー装置を移動させるものには限定されない。これに代えて、トランスファー装置を固定し、ドラムを軸線に沿って移動させてもよい。本実施形態において、トランスファー装置の本体部の空間に対して軸方向一方側から第1ドラムを受け入れる場合、トランスファー装置と第1ドラムの少なくとも一方が軸線に沿って移動すればよく、即ち、第1ドラムを固定してトランスファー装置を移動させてもよく、トランスファー装置を固定して第1ドラムを移動させてもよく、両者を互いに近づく方向に移動させてもよい。
【0068】
上記実施形態では、バンドドラム12とバンドトランスファー18と一方のシェーピングドラム16Aとを同一軸線X1上に配し、ベルトドラム14とベルトトランスファー20と他方のシェーピングドラム16Bとを同一軸線X2上に配していたが、これに限定されるものではない。バンドドラムとベルトドラムとシェーピングドラムとバンドトランスファーとベルトトランスファーの全てを同一軸線上に配してもよい。
【0069】
本実施形態において、第1ドラムと第2ドラムとトランスファー装置は、その全てが同一軸線上になくてもよく、第1ドラムからタイヤ構成部材を受け取るときに第1ドラムとトランスファー装置とが同一軸線上にあればよく、トランスファー装置から第2ドラムにタイヤ構成部材を引き渡すときにトランスファー装置と第2ドラムが同一軸線上にあればよい。例えば、第1ドラムと第2ドラムを互いの軸線が平行になるように配置し、トランスファー装置を第1ドラムと同一軸線上にある状態と第2ドラムと同一軸線上にある状態とで切り替え可能になるように移動できる構成としてもよい。
【0070】
このように第1ドラムとトランスファー装置は常に同一軸線上に配置されていなくてもよく、トランスファー装置が第1ドラムを受け入れるときにトランスファー装置が第1ドラムと同一軸線上に配置されていればよい。その他、タイヤ成型装置の全体レイアウトは
図1に示すものには限定されず、本実施形態は種々のレイアウトに適用することができる。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
10…タイヤ成型装置、12…バンドドラム、14…ベルトドラム、16…シェーピングドラム、18…バンドトランスファー、20…ベルトトランスファー、28…空間、28A…空間の開口部、30…本体部、30A…軸方向一方側の端面、32…保持装置、38…検出装置、40…架台、T1…バンド部材、T2…ベルト部材、X1,X2…軸線