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特許7251073粘着シート、剥離シート付き粘着シート、積層体及び積層体の製造方法
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  • 特許-粘着シート、剥離シート付き粘着シート、積層体及び積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】粘着シート、剥離シート付き粘着シート、積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230328BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20230328BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20230328BHJP
   C09J 4/06 20060101ALI20230328BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230328BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20230328BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230328BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/40
C09J7/10
C09J4/06
C09J11/06
C09J133/14
B32B27/00 M
B32B27/30 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018159517
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020033417
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴迪
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-241215(JP,A)
【文献】特開2017-194572(JP,A)
【文献】特開2014-091775(JP,A)
【文献】特開2017-014305(JP,A)
【文献】国際公開第2014/081003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル共重合体、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する多官能単量体、分子内に反応性二重結合を1つ有する単官能単量体及び水素引抜型光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートであって、
前記アクリル共重合体は、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、及びメチル(メタ)アクリレートに由来する単位を含有し、
前記アクリル共重合体の全質量に対して、前記アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が50~90質量%であり、前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5~35質量%であり、前記メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5~15質量%であり、
前記多官能単量体をホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)が65℃以上200℃未満である粘着シート。
【請求項2】
前記粘着シートの全質量に対して、熱硬化型架橋剤の含有量が0.1質量%以下である請求項に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着シートは後硬化性を有する粘着シートであって、後硬化前のゲル分率が20質量%以下である請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記単官能単量体が、アルキル(メタ)アクリレートである請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記多官能単量体の含有量は、前記アクリル共重合体100質量部に対して、5~40質量部である請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記単官能単量体の含有量は、前記アクリル共重合体100質量部に対して、1~20質量部である請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを備える剥離シート付き粘着シート。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シートに活性エネルギー線を照射することで硬化させた粘着シートと、硬化後の粘着シートの少なくとも一方の面側に被着体と、を備える積層体。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シートを被着体に貼合した後、活性エネルギー線を照射して前記粘着シートを硬化させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、剥離シート付き粘着シート、積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられている。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合せる用途に透明な粘着シートが使用されており、表示装置と入力装置との貼合にも透明な粘着シートが使用されている。
【0003】
光学部材用の粘着シートとしては、粘着剤層に溶剤型粘着剤を用いた粘着シートが広く使用されている。溶剤型粘着剤は、一般的にアクリル樹脂を主成分とする。このようなアクリル樹脂は、溶液重合と呼ばれる手法で、アクリルモノマーを溶剤に溶解させた溶剤中で重合反応を行うことによって得られる。溶液重合では重合が進行するにつれてポリマーの分子量が上昇し反応溶液の粘度が上昇することから、粘着剤として必要な凝集力を得るために必要な分子量を有するポリマーの合成には技術的な制限がある。そこで、粘着剤に必要な凝集力を確保するため、粘着剤組成物にイソシアネート系化合物やエポキシド系化合物などのアクリル樹脂と反応し得る架橋剤を配合することが行われている。このような架橋剤は経時でアクリル樹脂と反応することで架橋ネットワークを構築し、粘着剤層の凝集力を高める。
【0004】
また、光学部材用の粘着シートを形成する方法としては、熱(又は活性エネルギー線)による重合をした後に、活性エネルギー線(又は熱)による重合を行う2段重合により硬化する方法が用いられる場合がある。このような粘着シートは、例えば、熱硬化性および活性エネルギー線硬化性の両方を備える粘着剤組成物(以下、「デュアル硬化型粘着剤組成物」ということがある。)から形成されるため、熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性を有している。このため、被着体との貼合前に、例えば熱硬化のみを行うことで仮接着させることができ、その後、さらに活性エネルギー線により硬化させる(後硬化またはアフターキュアと言われる)ことで被着体に強固に接着できる。
【0005】
例えば、特許文献1には、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)及び架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含むベースポリマー(A)と、ラウリルアクリレート(b1)を含む単量体(B)と、熱によりベースポリマー(A)と反応する架橋剤(C)と、活性エネルギー線の照射により単量体(B)の重合反応を開始させる重合開始剤(D)と、溶剤(E)と、を含有する粘着剤組成物を加熱により半硬化させてなる粘着剤層を含む粘着シートが記載されている。また、特許文献2には、紫外線硬化可能な粘着剤層を少なくとも1層以上有する粘着シートが開示されている。ここでは、粘着剤層の紫外線硬化後の測定温度20℃、周波数1Hzでの貯蔵弾性率G’(1Hz)が1×104~1×106Paである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-084391号公報
【文献】特開2012-31059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが特許文献1及び2に記載の粘着シートの特性を検討したところ、基材密着性が不十分な場合があり、特に高温高湿条件下においては、基材密着性や耐久性が十分に得られない場合があることを見出した。また、硬化後の加工性も不十分な場合があり、改善の余地があった。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、高温高湿条件下においても優れた基材密着性と耐久性を発揮し得る粘着シートであって、加工性に優れた粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アクリル共重合体、分子内に反応性二重結合を2つ以上有し、ホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)が所定範囲内の多官能単量体、分子内に反応性二重結合を1つ有する単官能単量体及び水素引抜型光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から粘着シートを形成することにより、高温高湿条件下においても優れた基材密着性と耐久性を発揮し得る粘着シートであって、加工性に優れた粘着シートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] アクリル共重合体、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する多官能単量体、分子内に反応性二重結合を1つ有する単官能単量体及び水素引抜型光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートであって、
多官能単量体をホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)が65℃以上200℃未満である粘着シート。
[2] アクリル共重合体は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基及びイソシアネート基から選択される少なくとも1種の基を含有する(メタ)アクリレートに由来する単位を含む[1]に記載の粘着シート。
[3] アクリル共重合体は、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、及びメチル(メタ)アクリレートに由来する単位を含有し、
アクリル共重合体の全質量に対して、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が50~90質量%であり、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5~35質量%であり、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5~15質量%である[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4] 粘着シートの全質量に対して、熱硬化型架橋剤の含有量が0.1質量%以下である[1]~[3]のいずれかに記載の粘着シート。
[5] 粘着シートは後硬化性を有する粘着シートであって、後硬化前のゲル分率が20質量%以下である[1]~[4]のいずれかに記載の粘着シート。
[6] 単官能単量体が、アルキル(メタ)アクリレートである[1]~[5]のいずれかに記載の粘着シート。
[7] 多官能単量体の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、5~40質量部である[1]~[6]のいずれかに記載の粘着シート。
[8] 単官能単量体の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、1~20質量部である[1]~[7]のいずれかに記載の粘着シート。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを備える剥離シート付き粘着シート。
[10] [1]~[8]のいずれかに記載の粘着シートに活性エネルギー線を照射することで硬化させた粘着シートと、硬化後の粘着シートの少なくとも一方の面側に被着体と、を備える積層体。
[11] [1]~[8]のいずれかに記載の粘着シートを被着体に貼合した後、活性エネルギー線を照射して粘着シートを硬化させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高温高湿条件下においても優れた基材密着性と耐久性を発揮し得る粘着シートであって、加工性に優れた粘着シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、剥離シートもしくは基材を有する粘着シートの断面を表す概略図である。
図2図2は、本発明の積層体の一例の断面を表す概略図である。
図3図3は、本発明の積層体の他の一例の断面を表す概略図である。
図4図4は、定荷重剥離距離の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
なお、本明細書において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表す。
また、本明細書において、“単量体”と“モノマー”は同義であり、“重合体”と“ポリマー”は同義である。
【0014】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、アクリル共重合体、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する多官能単量体、分子内に反応性二重結合を1つ有する単官能単量体及び水素引抜型光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から形成されるものである。ここで、多官能単量体をホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)は、65℃以上200℃未満である。
【0015】
本発明の粘着シートは上記構成を有するため、優れた基材密着性を発揮することができる。例えば、85℃、相対湿度85%といった高温高湿条件下においても優れた基材密着性を発揮することができる。また、本発明の粘着シートは、高温高湿条件下に長時間おいた場合であっても優れた耐久性を発揮する。本明細書において、基材密着性は、例えば、実施例に記載した方法で定荷重剥離距離を測定することで評価することができる。定荷重剥離距離が25mmより小さい場合に、基材密着性が良好であると判定できる。なお、定荷重剥離距離は5mmより小さいことが特に好ましい。
【0016】
さらに、本発明の粘着シートは上記構成を有するため、加工性にも優れている。具体的には、本発明の粘着シートにおいては、後硬化後の端面ベタツキが抑えられており、例えば、打抜き加工時の打抜き刃への粘着剤の付着やそれに伴う粘着シートの変形などを防ぐことができる。また、本発明の粘着シートにおいては、後硬化後に所望の大きさに打抜き加工をした後に端面を整える目的で切削加工する場合に粘着剤層の変形やはみ出し、剥がれなどが生じにくい。
【0017】
本発明の粘着シートは後硬化性(活性エネルギー線硬化能)を有していることが好ましく、活性エネルギー線を照射をする前(後硬化前)の粘着シートのゲル分率は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。なお、粘着シートのゲル分率は0質量%であってもよい。
【0018】
本明細書においては、粘着シートに以下の条件で活性エネルギー線を照射することにより、粘着シートのゲル分率が10質量%以上高まったことをもって、粘着シートは後硬化性を有していると言える。粘着シートが活性エネルギー線を照射することで後硬化する場合、粘着シートの両表面に光学用透明PETセパレーターを貼合し、光学用透明PETセパレーター側から活性エネルギー線(高圧水銀灯又はメタルハライドランプ)を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射する。
【0019】
後硬化後の粘着シートのゲル分率は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。
【0020】
粘着シートのゲル分率は、以下の方法で測定した値である。まず、粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうする。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥質量(g)を測定する。得られた乾燥質量から下記式1によりゲル分率を求める。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着シートの採取質量)×100・・・式1
【0021】
後硬化前の粘着シートの23℃、周波数1Hzでの剪断貯蔵弾性率は、1.0×104Pa以上であることが好ましく、5.0×104Pa以上であることがより好ましい。また、粘着シートの23℃、周波数1Hzでの剪断貯蔵弾性率は、1.0×106Pa以下であることが好ましく、5.0×105Pa以下であることがより好ましい。なお、上記の剪断貯蔵弾性率は、未硬化状態の粘着シートの剪断貯蔵弾性率である。
【0022】
また、粘着シートに積算光量が3000mJ/cm2となるように活性エネルギー線を照射することで後硬化した粘着シートの23℃、周波数1Hzでの剪断貯蔵弾性率は、1.0×106Paより大きいことが好ましく、2.0×106Pa以上であることがより好ましく、3.0×106Pa以上であることがさらに好ましく、5.0×106Pa以上であることが特に好ましい。また、後硬化した粘着シートの23℃、周波数1Hzでの剪断貯蔵弾性率5.0×108Pa以下であることが好ましい。
【0023】
粘着シートの剪断貯蔵弾性率は、動的粘弾性装置を用いて測定することができる。動的粘弾性装置としては、例えば、Rheogel―E4000(株式会社ユービーエム製)を挙げることができる。測定の際には、個体剪断モード、周波数1Hz、歪み0.1%の条件で、0℃~150℃までの温度領域における粘着剤層の剪断貯蔵弾性率G’を測定する。
【0024】
粘着シートに活性エネルギー線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射して後硬化した場合、後硬化後の粘着シートのヤング率は、2.5N/mm2以上であることが好ましく、3.0N/mm2以上であることがより好ましく、3.5N/mm2以上であることがさらに好ましい。また、後硬化後の粘着シートのヤング率は、特に限定されるものではないが、30N/mm2以下であることが好ましい。ヤング率を上記範囲とすることで、粘着シートの加工性が良好となる。
【0025】
粘着シートのヤング率は、JIS K 7161-1に準拠して測定した値である。その際、引張速度は10mm/minとし、23℃、相対湿度50%の環境下で測定する。また、測定サンプルとしては、厚さ25μm、幅60mm、長さ200mmの粘着シートを長さ方向に丸め、断面積5mm2、高さ60mmの円柱形状に加工したものを用いる。チャック間距離が30mmとなるようサンプルをセットして引っ張り、サンプルの破断伸度が0~3%での破断応力と破断伸度との比をヤング率とする。測定機器としては、例えば、島津製作所製のオートグラフAGS-Xを用いることができる。
【0026】
粘着シートに活性エネルギー線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射して後硬化した場合、後硬化後の粘着シートの引張速度10mm/minの引張試験測定における破断伸度は、700%以下であることが好ましく、600%以下であることがより好ましく、500%以下であることがさらに好ましい。ここで、破断伸度は、JIS K 7161-1に準拠して測定する。その際、引張速度は10mm/minとし、23℃、相対湿度50%で測定する。また、測定サンプルとしては、厚さ25μm、幅60mm、長さ200mmの粘着シート(粘着剤層)を長さ方向に丸め、断面積5mm2、高さ60mmの円柱形状に加工したものを用いる。これをチャック間距離が30mmとなるように引っ張り、サンプルが破断した時の伸度を破断伸度とする。なお、測定機器としては、例えば、島津製作所製のオートグラフAGS-Xを用いることができる。
【0027】
23℃かつ下記測定条件で測定される粘着シートのプローブタック値は、1.0N/5mmφ以上であることが好ましく、1.5N/5mmφ以上であることがより好ましく、20N/5mmφ以上であることがさらに好ましい。また、23℃かつ下記測定条件で測定される粘着シートのプローブタック値は、15N/5mmφ以下であることが好ましい。なお、上記のプローブタック値は、未硬化状態の粘着シートのプローブタック値である。
(プローブタック値の測定条件)
測定機器:NSプローブタックテスター(ニチバン株式会社製)
プローブ直径:5mmφ
プローブ基材:ステンレススチール表面仕上げAA#400研磨による鏡面
ウェイト:19.6±0.2g(真鍮製)
プローブ移動速度:1.0cm/秒
デュエルタイム:1秒間
【0028】
また、粘着シートに積算光量が3000mJ/cm2となるように活性エネルギー線を照射することで後硬化した粘着シートのプローブタック値は、1.0N/5mmφ以下であることが好ましく、0.5N/5mmφ以下であることがより好ましく、0.1N/5mmφ以下であることがさらに好ましい。なお、で後硬化した粘着シートのプローブタック値は0N/5mmφであってもよい。
【0029】
粘着シートの厚みは、用途に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、5~500μmであることが好ましく、10~300μmであることがより好ましく、12~100μmであることが特に好ましい。粘着シートの厚みを上記範囲内とすることにより、高温高湿条件下における基材密着性と耐久性をより効果的に高めることができる。また、粘着剤のはみ出しやべたつきを抑制することができるため加工性を高めることができる。さらに、粘着シートの厚さを上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの製造が容易となる。
【0030】
本発明の粘着シートは、粘着剤層のみから構成される単層の粘着シートであってもよい。また、粘着シートは、片面に基材(好ましくは透明基材)を備えた片面粘着シートでも、両面粘着シートでもよい。両面粘着シートとしては、粘着剤層からなる単層の粘着シート、粘着剤層を複数積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に他の粘着剤層を積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に支持体を積層した多層の粘着シート、支持体の片面に粘着剤層が積層し、他方の面に他の粘着剤層が積層した多層の粘着シートが挙げられる。両面粘着シートが支持体を有する場合、支持体として透明な支持体を用いたものが好ましい。支持体としては、透明基材と同様に光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることができる。このような両面粘着シートは、粘着シート全体としての透明性にも優れることから、光学部材同士の接着に好適に用いることができる。
【0031】
本発明の粘着シートが片面粘着シートである場合、図1に示されるように、粘着シート11の片面に透明基材12aを備えた構成であってもよい。この場合、粘着シート11のもう一方の面は剥離シート12bによって覆われていることが好ましい。粘着シートを使用する場合はこの剥離シート12bを剥がして所望の被着体に粘着シート11が密着するように貼合し、その後、活性エネルギー線を照射するなどして硬化(後硬化)をすることが好ましい。透明基材としてはポリエチレンテレフタレートフィルムやアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることができる。また、これらの透明基材の粘着シート側には易接着層を設けていてもよい。さらに、透明基材の粘着シートとは逆面にはハードコート層や反射防止層、防汚層、紫外線吸収層などの機能層が備えられていてもよい。
【0032】
本発明は、粘着シートの両表面に剥離シートを備える剥離シート付き粘着シートに関するものであってもよい。本発明の粘着シートの両表面に剥離シートが備えられている場合、図1に示されるように粘着シート11の両表面に剥離シート12a及び12bを有することが好ましい。
【0033】
剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO2単位と(CH33SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
剥離性積層シートとして、市販品を用いてもよい。例えば、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムや、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムを挙げることができる。
【0034】
本発明の粘着シートが両面粘着シートの場合は、剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを有することが好ましい。すなわち、剥離シートは、剥離しやすくするために、剥離シート12aと剥離シート12bとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて剥離シート12aと剥離シート12bの剥離性を調整すればよい。
【0035】
また、本発明は、粘着シートの少なくとも一方の面に透明フィルムを備える透明フィルム付き粘着シートに関するものであってもよい。この場合、透明フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム及びシクロオレフィンポリマーフィルムから選択される少なくとも1種であることが好ましい。透明フィルム付き粘着シートは、透明フィルム/粘着シート/剥離シートがこの順で積層されたシートであってもよい。
【0036】
<アクリル共重合体>
粘着シートを形成する粘着剤組成物は、アクリル共重合体を含む。アクリル共重合体は、アクリル単量体単位を有するものであれば特に制限はないが、表示装置の視認性を低下させない程度の透明性を有するものが好ましい。例えば、アクリル共重合体は、架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートに由来する単位を含むものであることが好ましい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。
【0037】
架橋性官能基は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基及びイソシアネート基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
カルボキシ基含有単量体単位としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
ヒドロキシ基含有単量体単位は、ヒドロキシ基含有単量体に由来する繰り返し単位である。ヒドロキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基含有単量体単位としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミン等のアミノ基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
エポキシ基含有単量体単位としては、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0038】
アクリル共重合体は、さらに、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位を含むものであることが好ましい。非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位であることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
中でも、アクリル共重合体は、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、及びメチル(メタ)アクリレートに由来する単位を含有することが好ましい。
【0040】
<アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレート>
アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートである。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルコキシ基の炭素数が1~12であり、アルコキシ基に結合するアルキレン基の炭素数が1~18であるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルコキシ基の炭素数は1~8であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1もしくは2であることが特に好ましい。また、アルコキシ基に結合するアルキレン基の炭素数は1~12であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~4であることが一層好ましく、1~3であることが特に好ましい。
【0041】
このようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、2-メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシメチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、2-メトキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとして、2-メトキシエチル(メタ)アクリレートを用いることにより、粘着シートは、ベタツキを抑えつつ基材に対する濡れ性を上げることができる。
【0042】
アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。また、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、90質量%以下であることが好ましい。アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートは、基材に対して密着しやすくなる一方で、後硬化後の粘着シートは高硬度となり、高温耐久性や加工性をより高めることができる。
【0043】
<ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート>
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及び8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種は好ましく用いられる。
【0044】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。また、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量を上記範囲内とすることにより、被着体への密着性をより高めることができる。
【0045】
<アルキル(メタ)アクリレート>
アクリル共重合体は、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位を含有する。メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。また、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
アクリル共重合体は、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の他にアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位を含有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの例としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。メチル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、メチル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましい。メチル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量を上記範囲内とすることにより、ベタツキ(タック性)を低く抑えつつ基材に対する密着性を高めることができる。
【0047】
<他の単量体>
アクリル共重合体は、窒素含有単量体に由来する単位をさらに含んでいることが好ましい。なお、窒素含有単量体に由来する単位は、上述した架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートに由来する単位であってもよい。
【0048】
窒素含有単量体は、1分子内に窒素元素を含有する単量体である。窒素含有単量体としては、例えば、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等を挙げることができる。中でも、窒素含有単量体は、アクリルアミド誘導体、アミノ基含有モノマー及び含窒素複素環含有モノマーから選択される少なくとも1種であることが好ましく、アクリルアミド誘導体であることがより好ましい。アクリルアミド誘導体は、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド及びアクリロイルモルホリンから選択される少なくとも1種であることがさらに好ましく、ジメチルアクリルアミドであることが特に好ましい。アクリル共重合体が、上述したような窒素含有単量体に由来する単位を含むことにより、粘着シートは、基材に対して密着しやすくなる一方で、後硬化後の粘着シートは高硬度となり、高温耐久性や加工性をより高めることができる。
【0049】
窒素含有単量体に由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、窒素含有単量体に由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましい。
【0050】
アクリル共重合体は、必要に応じて、上述した単量体単位以外に、他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、上述したアクリル単量体と共重合可能なものであればよく、例えば、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル等が挙げられる。アクリル共重合体における他の単量体単位の含有量は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
<アクリル共重合体の重量平均分子量>
アクリル共重合体の重量平均分子量は、10万~200万が好ましく、20万~150万がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、粘着シートが後硬化した際に高硬度となりやすく、加工性に優れる。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。アクリル共重合体としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0052】
<多官能単量体>
粘着剤組成物は、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する多官能単量体であって、ホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)が65℃以上200℃未満の多官能単量体を含有する。多官能単量体は反応性二重結合を2つ以上有するものであり、中でも、多官能単量体は反応性二重結合を2つ以上5つ未満有するものであることが好ましく、2つ以上4つ未満有するものであることがより好ましい。
【0053】
多官能単量体としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸PO変性トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸EO変性トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,9-ノナンジオール、ジアクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、メタクリル酸ビニル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAのジアクリレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテルのジアクリレート等が挙げられる。多官能単量体に市販品の例としては、例えば、東亞合成社製のM203(Tg=75℃):ビスフェノールF EO変性ジアクリレート(EO繰り返し単位n≒2)、M211B(Tg=75℃):ビスフェノールA EO変性ジアクリレート(EO繰り返し単位n≒2)、M215(Tg=166℃):イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート (EO繰り返し単位n=1)、M?220(Tg=90℃):ポリプロピレングリコールジアクリレート(PC繰り返し単位n≒3)、M?310(Tg=120℃):トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート(PO繰り返し単位n≒1)等が挙げられる。
【0054】
多官能単量体をホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)は、65℃以上であればよく、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましい。また、多官能単量体をホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)は、200℃未満であればよく、190℃未満であることが好ましく、150℃未満であることがより好ましい。多官能単量体をホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)を上記範囲とすることにより、粘着シートを後硬化した際の加工性を高めることができる。
【0055】
多官能単量体の含有量はアクリル共重合体100質量部に対して、5~40質量部であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。上記多官能単量体は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。多官能単量体の含有量を上記範囲内とすることにより、後硬化後の粘着シートの硬度をより効果的に高めることができ、粘着シートの加工性を高めることができる。
【0056】
<単官能単量体>
粘着剤組成物は、分子内に反応性二重結合を1つ有する単官能単量体を含有する。
【0057】
単官能単量体としては、例えば、イソボルニルアクリレート、イソステアリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドンなどを挙げることができる。中でも、単官能単量体は、アルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、イソボルニルアクリレート及びイソステアリルアクリレートから選択される少なくとも1種であることが好ましく、イソボルニルアクリレートであることがより好ましい。単官能単量体の市販品の例としては、大阪有機化学工業社製のIBXA、大阪有機化学工業社製のISTA等が挙げられる。
【0058】
単官能単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は-20℃以上であることが好ましく、0℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、55℃以上であることが一層好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。また、単官能単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
【0059】
単官能単量体の含有量はアクリル共重合体100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましい。上記単官能単量体は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0060】
また、単官能単量体と多官能単量体の合計含有量はアクリル共重合体100質量部に対して6~50質量部であることが好ましく、10~45質量部であることがより好ましく、15~40質量部であることがさらに好ましい。単官能単量体と多官能単量体の合計含有量を上記範囲内とすることにより、後硬化後に端面ベタツキが抑制され加工性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0061】
<水素引抜型光重合開始剤>
粘着剤組成物は、水素引抜型光重合開始剤を含む。水素引抜型光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により上述したアクリル共重合体やアクリル単量体の重合反応を開始させるものである。水素引抜型光重合開始剤は、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることにより重合を促進する光重合開始剤である。
【0062】
水素引抜型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2-エチルアンスラキノン、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン等を挙げることができる。中でも、水素引抜型光重合開始剤は、ベンゾフェノン系の光重合開始剤であることが好ましく、ベンゾフェノン系の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0063】
粘着剤組成物中の水素引抜型光重合開始剤の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましい。また、水素引抜型光重合開始剤の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して5.0質量部以下であることが好ましい。水素引抜型光重合開始剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートが後硬化した際の硬度を十分に高めつつ、粘着シートの黄変等を抑制することができる。
【0064】
水素引抜型光重合開始剤は、市販品を使用できる。市販品の例としては、Lambson社製のSpeedCure 4MBPやSpeedCure TZT等を挙げることができる。
【0065】
<自己開裂型光重合開始剤>
粘着剤組成物は、自己開裂型光重合開始剤を含んでもよい。自己開裂型光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により上述したアクリル共重合体やアクリル単量体の重合反応を開始させるものである。粘着剤組成物が自己開裂型光重合開始剤を含む場合、粘着シートが後硬化した際により高硬度を発揮することができ、基材密着性と耐久性を高めることができる。また、粘着剤組成物が自己開裂型光重合開始剤を含む場合、粘着シートは、より優れた加工性を発揮することができる。
【0066】
自己開裂型光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤、アシルフォスフィンオキシド系開始剤等が挙げられる。
アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系開始剤として具体的には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤として具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASFジャパン(株)製、IRGACURE184として市販)等が挙げられる。
チオキサントン系開始剤として具体的には、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
アミン系開始剤として具体的には、トリエタノールアミン、4-ジメチル安息香酸エチル等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキシド系開始剤として具体的には、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BASFジャパン(株)製、IRGACURE819として市販)等が挙げられる。
【0067】
粘着剤組成物中の自己開裂型光重合開始剤の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましい。また、自己開裂型光重合開始剤の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましい。自己開裂型光重合開始剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートが後硬化した際の硬度を十分に高めることができる。
【0068】
<熱硬化型架橋剤>
本発明の粘着シートにおいては、熱硬化型架橋剤の含有量は、粘着シートの全質量に対して、0.1質量%以下であることが好ましい。これは、粘着シートが実質的に熱硬化型架橋剤を含有しないことを意味する。すなわち、粘着シートにおいては、熱硬化型架橋剤の含有量は、粘着シートの全質量に対して、0質量%であることがより好ましい。なお、熱硬化型架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤が挙げられる。
【0069】
本発明の粘着シートにおいては、粘着シートが上述したようなアクリル単量体を含有し、さらに粘着シートが実質的に熱硬化型架橋剤を含有しないため、粘着シートはエージング工程を設けなくても必要な粘着特性等を発揮することができる。また、粘着シートは、優れた加工性を発揮することができる。具体的には、粘着シートの端面ベタツキが抑えられ、例えば、抜き加工時の打抜き刃への粘着剤の付着やそれに伴う粘着シートの変形などを防ぐことができる。さらに、粘着シートが実質的に熱硬化型架橋剤を含有しないことにより、粘着シートは高温高湿条件下においても優れた基材密着性と耐久性を発揮しやすくなる。
【0070】
<溶剤>
粘着シートを形成する粘着剤組成物は、溶剤を含んでいてもよい。この場合、溶剤は、粘着剤組成物の塗工適性の向上のために用いられる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0071】
粘着剤組成物中の溶剤の含有量は、特に限定されないが、アクリル共重合体100質量部に対し、25~500質量部が好ましく、30~400質量部がより好ましい。
また、溶剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対し、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。溶剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。なお、粘着剤組成物中の溶剤の一部は、粘着シートにも残留する場合があってもよい。
【0072】
<他の成分>
粘着シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分を挙げることができる。例えば可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。また、着色を目的に染料や顔料を添加してもよい。
可塑剤としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル類やスチレン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、粘着剤の相溶性や効果の高さから、ベンゾリアゾール系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。ただし、後硬化時の活性エネルギー線に紫外線を用いる場合は、重合反応を阻害しない範囲で添加することが好ましい。
【0073】
<粘着シートの製造方法>
本発明の粘着シートの製造方法は、剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程を含むことが好ましい。粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0074】
粘着シートの製造方法は、塗膜を加熱する工程を含むことが好ましい。この場合、粘着剤組成物を塗工して形成される塗膜の加熱には、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いることができる。
【0075】
粘着剤組成物は、上述したとおり、熱硬化型架橋剤を実質的に有さないものであることが好ましい。このような場合、塗工後に一定温度で一定期間粘着シートを静置するエージング処理を施す必要がない。従って、エージング工程を設けなくても必要な粘着特性等を発揮し得る粘着シートを提供することができ、粘着シートの製造コスト等を抑制することができる。
【0076】
<粘着シートの使用方法>
本発明の粘着シートの使用方法においては、粘着シートの粘着シートを被着体表面に接触させることが好ましい。特に、粘着シートが未硬化状態のときに被着体と貼合し、例えば活性エネルギー線を照射するなどして粘着シートを硬化させることが好ましい。
【0077】
<粘着シートの用途>
本発明の粘着シートは、高温高湿条件下においても耐久性が必要とされる光学部材、特に形状が複雑で積層体になってからの打抜き加工や切削加工が必要な用途に好ましく用いられる。
【0078】
<積層体>
本発明は、上述した粘着シートに活性エネルギー線を照射することで硬化させた粘着シートと、硬化後の粘着シートの少なくとも一方の面側に被着体と、を備える積層体に関するものでもある。ここで、被着体は、基材および光学部材であることがより好ましく、TACフィルム、ポリカーボネート基材、偏光板、透明フィルム、透明樹脂またはガラスであることが特に好ましい。
【0079】
図2は、本発明の積層体の一例の断面を表す概略図である。図2は、本発明の粘着シート21を基材22と光学部材24に貼合した積層体20の構成の一例を表す断面図である。図2に示されているように、本発明の粘着シート21は、基材22に貼合するために用いられることが好ましく、基材22と他の光学部材24の貼合に用いられることが好ましい。なお、本発明の粘着シート21は、偏光板との貼合に用いられてもよい。
【0080】
積層体に含まれる光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材や最表層のカバーレンズに貼合される飛散防止フィルム等を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。
これらの部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。
【0081】
本発明の粘着シートが両面粘着シートである場合は、2つの被着体の貼合に用いることができる。この場合、本発明の粘着シートは、タッチパネルの内部における透明光学用フィルム同士の貼合、透明光学用フィルムとガラスとの貼合、タッチパネルの透明光学用フィルムと液晶パネルとの貼合、カバーガラスと透明光学用フィルムとの貼合、カバーガラスと透明光学用フィルムとの貼合などに用いられ、いずれかの部材がポリカーボネート基材などの樹脂板である場合に有用である。透明光学用フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムやアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることができる。また、透明光学用フィルムやポリカーボネート基材にはハードコート層が設けられていてもよい。
【0082】
図3は、本発明の積層体の他の一例の断面を表す概略図である。図3に示されているように、被着体は段差部(27a、27b、27c、27d)を有していてもよい。図3では、基材は段差部(27a、27b)を有しており、光学部材が段差部(27c、27d)を有している。なお、段差部(27a、27b、27c、27d)の厚みは、通常5~60μmである。このように本発明の粘着シート21は、段差部を有する部材にも貼合することができ、段差部から生じる凹凸に追従することができる。
【0083】
<積層体の製造方法>
本発明は、上述した粘着シートを被着体に貼合した後、活性エネルギー線を照射して粘着シートを硬化させる工程を含む積層体の製造方法に関するものでもある。積層体の製造方法は、上述した粘着シートの粘着シートを被着体に対して未硬化状態で貼合した後、活性エネルギー線を照射して粘着シートを硬化させる工程を含むことが好ましい。活性エネルギー線を照射する前は、粘着シートの粘着シートは未硬化状態であることから、基材への初期密着性が良好となる。このように、粘着シートを被着体に貼合した後、粘着シートを活性エネルギー線で後硬化させることで、粘着シートの凝集力が高まり、被着体への粘着性が向上する。また、後硬化した粘着シートは基材が変形したり、歪んだりすることを防止できる。
【0084】
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられ、粘着シートに含まれる重合開始剤に応じて適宜選択できる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。
電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種類の電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
紫外線の照射出力は、積算光量が100~10000mJ/cm2となるようにすることが好ましく、500~5000mJ/cm2となるようにすることがより好ましい。
【実施例
【0085】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0086】
[実施例1]
<アクリル共重合体(A-1)の合成>
アクリル共重合体(A-1)を、酢酸エチル中での溶液重合により作製した。2-メトキシエチルアクリレートモノマー(MEA)、2-ヒドロキシエチルアクリレートモノマー(2HEA)、メチルメタクリレート(MMA)、ジメチルアクリルアミド(DMAA)及びブチルアクリレート(BA)を質量比で70:10:10:5:5となるように配合し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶液へ溶解した。溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、固形分濃度が35質量%、23℃における溶液粘度が2000mPa・sのアクリル共重合体溶液(A-1)を得た。
【0087】
アクリル共重合体溶液(A-1)100質量部に対して、多官能単量体として、ビスフェノールA エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成(株)社製、アロニックス M211B、Tg=75℃)15質量部、単官能単量体としてイソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製、IBXA、Tg=97℃)を15質量部、自己開裂型光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASFジャパン(株)製、IRGACURE184)を0.3質量部、水素引抜型光重合開始剤として4-メチルベンゾフェノン(Lambson社製:4MBP)を2.0質量部添加し、固形分濃度が40質量%となるように溶剤として酢酸エチルを添加して粘着剤組成物を得た。
【0088】
上記粘着剤組成物を、第1の剥離シート(重セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)上へ塗工した。塗工は、ヨシミツ精機株式会社製、ドクターブレードYD型を用いて、乾燥後の厚みが25μmとなるように行った。その後、熱風乾燥機にて100℃で3分間乾燥させて溶剤を除去し、粘着シートを形成した。
この粘着シートの片面に第1の剥離シートより剥離性の高い離型処理が施された第2の剥離シート(軽セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製)を貼り合わせ、剥離シート付きの粘着シートである実施例1の粘着シートを得た。
【0089】
[実施例2]
単官能単量体としてイソボルニルアクリレートに代えて、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、ISTA、Tg=-18℃)を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の粘着シートを得た。
【0090】
[実施例3]
自己開裂型光重合開始剤を配合しなかった以外は実施例1と同様にして実施例3の粘着シートを得た。
【0091】
[比較例1]
多官能単量体としてM211Bに代えて、ポリプロピレンジアクリレート(東亞合成社製、二官能モノマーM270、Tg=-32℃)を用いた以外は実施例1と同様にして比較例1の粘着シートを得た。
【0092】
[比較例2]
多官能単量体、単官能単量体及び自己開裂型光重合開始剤を配合しなかった以外は実施例1と同様にして比較例2の粘着シートを得た。
【0093】
[比較例3]
多官能単量体、単官能単量体、自己開裂型光重合開始剤及び水素引抜型光重合開始剤を配合せず、架橋剤としてキシリレンジイソシアネート化合物(三井化学(株)製、タケネートD-110N)を0.2質量部配合した以外は実施例1と同様にして比較例3の粘着シートを得た。
【0094】
[測定及び評価]
<剪断貯蔵弾性率G’>
粘着剤層の厚みが200μmとなるように8枚の粘着シート(1枚25μm)を重ねあわせ、測定用サンプルを作製した。
粘着剤層の厚みが200μmとなるように8枚の粘着シート(1枚25μm)を重ねあわせ、重セパレータフィルムである第1の剥離シート側から紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、後硬化後の測定用サンプルを作製した。
各測定用サンプルの粘着シートの粘着剤層について、動的粘弾性装置Rheogel―E4000(株式会社ユービーエム製)を用いて、個体剪断モード、周波数1Hz、歪み0.1%の条件で、0℃~150℃までの温度領域における粘着剤層の剪断貯蔵弾性率G’を測定した。23℃における粘着剤層の剪断貯蔵弾性率G’を、下記表1に記載した。
【0095】
<ゲル分率>
実施例及び比較例で得た粘着シートを100mm×60mmとなるようにカットし、硬化前の測定用サンプルを作製した。
粘着シートを100mm×60mmとなるようにカットし、重セパレータフィルムである第1の剥離シート側から紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、後硬化後の測定用サンプルを作製した。
各測定用サンプルの粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうした。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥質量(g)を測定した。得られた乾燥質量から下記式1によりゲル分率を求めた。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着シートの採取質量)×100・・・式1
【0096】
<ヤング率>
JIS K 7161-1に準拠してヤング率を測定した。その際、引張速度は10mm/minとし、23℃、相対湿度50%の環境下で測定した。また、測定サンプルとしては、厚さ25μm、幅60mm、長さ200mmの粘着シートを長さ方向に丸め、断面積5mm2、高さ60mmの円柱形状に加工し、酸素阻害の影響受け難いように第1の剥離シートと第2の剥離シートでこの円柱状に加工したサンプルを挟んだ状態で第1の剥離シート側から紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、後硬化したものを用いた。チャック間距離が30mmとなるようサンプルをセットして引っ張り、サンプルの破断伸度が0~3%での破断応力と破断伸度との比をヤング率とした。なお、測定機器としては、島津製作所製のオートグラフAGS-Xを用いた。
【0097】
<破断伸度>
JIS K 7161-1に準拠して破断伸度を測定した。その際、引張速度は10mm/minとし、23℃、相対湿度50%の環境下で測定した。また、測定サンプルとしては、厚さ25μm、幅60mm、長さ200mmの粘着シートを長さ方向に丸め、断面積5mm2、高さ60mmの円柱形状に加工したものを用いた。チャック間距離が30mmとなるようサンプルをセットして引っ張り、サンプルが破断した時の伸度を破断伸度とした。なお、測定機器としては、島津製作所製のオートグラフAGS-Xを用いた。
【0098】
<端面ベタツキ>
重セパレータフィルムである第1の剥離シート側から紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射したA4サイズの粘着シートを、50枚重ねあわせ、後硬化後の裁断用サンプルを作製した。
後硬化後の裁断用サンプルとした粘着シートをギロチン断裁機にて断裁した際のギロチン刃、粘着シートの断裁面である端面を目視判定した。
○:粘着シートの断裁面である端面から粘着剤のはみ出しがなく、ギロチン刃および断裁面である端面にベタツキがなく良好
×:粘着シートの断裁面である端面から粘着剤のはみ出しが酷く、ギロチン刃および断裁面である端面ベタツキが実用上問題となるレベルである
【0099】
<加工性>
粘着剤層の軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がし、厚み25μmのPETフィルムに貼合した。次に重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、PC板に貼着した。PET/粘着剤層/PCの構成のサンプルをオートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30min)し、次いで、PETフィルム側より紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、試験サンプルを得た。次いで、試験サンプルの端部をギロチン断裁機を用いてカットし、カット端部をPC板側から手でPETフィルムを剥がすようにこすった。その際の剥がれ距離を測定した。
◎:剥がれ距離が0.05mm未満
○:剥がれ距離が0.05mm以上0.1mm未満
×:剥がれ距離が0.1mm以上
【0100】
<基材密着性>
第2の剥離シートである軽剥離セパレーターを剥がして、剥がしたセパレーターの代わりにトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製、フジタックTD60UL 厚み60μm)をハンドローラーを用いて貼合し、積層フィルムを作製した。この積層フィルムを幅25mm、長さ100mmの大きさにカットし、第1の剥離シートを剥がした。次いで、露出した幅25mm、長さ100mm粘着面のうち幅25mm、長さ75mmの領域を被着体(ハードコート層付ポリカーボネート板:三菱ガス化学社製、ユーピロンMR58 厚み1mm)のハードコート面側に2kgの圧着ローラーを用いて貼り付けた。この状態で、40℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に30分間保持させてPC板に密着させた後、トリアセチルセルロースフィルム側から紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、試験片を作製した。
この試験片を、85℃、相対湿度85%の環境下で24時間 放置した後、85℃、相対湿度85%の環境下で図4のように、粘着シート1とトリアセチルセルロースフィルム30からなる積層フィルムの非貼合領域(幅25mm、長さ25mm)の長さ方向端部に100gの錘34を吊るし、被着体32の平面に対して90°の方向に100gの荷重を加え、その状態で5分放置した。その間に積層フィルムが剥離した箇所の長さL(mm)を測定し、下記基準で評価した。
◎:L<5mm
○:5mm≦L<25mm
△:25≦L<50
×:50≦L
【0101】
<耐久性>
軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がし、トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製、フジタックTD60UL 厚み60μm)に貼合した。
次に重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、PC板(ハードコート層付ポリカーボネート板:三菱ガス化学社製、ユーピロンMR58 厚み1mm)に貼着した。トリアセチルセルロースフィルム/粘着剤層/PCの構成のサンプルをオートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30min)し、次いで、トリアセチルセルロースフィルム側より紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、100mm×200mmの大きさの試験サンプルを得た。次いで、試験サンプルを85℃、相対湿度85%の環境下に置き、240時間後の浮き及び剥がれの発生の有無を観察した。
○:1.0mm以上の浮き及び剥がれが観察されない
×:1.0mm以上の浮き及び/又は剥がれが観察される
【0102】
【表1】
【0103】
上記表1より、実施例の粘着シートは、端面ベタツキがなく、基材密着性が良好であった。さらに実施例の粘着シートは耐久性と加工性に優れていた。
【符号の説明】
【0104】
1 剥離シート付き粘着シート
11 粘着シート
12a 透明基材または剥離シート
12b 剥離シート
20 積層体
21 粘着シート
22 基材
24 光学部材
27a、27b、27c、27d 段差部
30 トリアセチルセルロースフィルム
32 被着体
34 錘
L 定荷重剥離距離
図1
図2
図3
図4