(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】中継装置、中継方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 47/265 20220101AFI20230328BHJP
【FI】
H04L47/265
(21)【出願番号】P 2018164661
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】咸 元俊
(72)【発明者】
【氏名】真下 誠
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】神田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 章人
(72)【発明者】
【氏名】川内 偉博
【審査官】大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-223155(JP,A)
【文献】特開2011-211530(JP,A)
【文献】国際公開第2012/066628(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/46
H04L 47/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置から第1通信経路又は第2通信経路を介してデータを受信し、受信したデータを送信する中継装置であって、
前記第1通信経路を介して受信したデータが記憶される記憶部と、
前記記憶部に記憶されているデータを送信する第1送信部と、
前記第1通信経路を介して受信するデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するデータ量判定部と、
前記データ量判定部によって前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記第1通信経路を介した送信の休止
及び前記第2通信経路を介した送信
を指示する指示データを前記通信装置に送信する第2送信部とを備え、
前記通信装置の数は2以上であり、
複数の前記通信装置から複数の前記第1通信経路を介してデータを受信し、
前記記憶部には、前記複数の通信装置から受信する、
前記複数の通信装置毎のデータ夫々が記憶され、
前記データ量判定部は、前記複数の通信装置から受信する、
前記複数の通信装置毎のデータ夫々について、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定し、
前記第2送信部は、前記複数の通信装置中の少なくとも1つから受信するデータについて、前記データ量判定部によって前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記データ量が前記閾値以上であると判定されたデータの送信元である前記通信装置に前記指示データを送信する中継装置。
【請求項2】
前記複数の通信装置から受信する複数のデータに係る複数の閾値
における少なくとも2つの閾値は相互に異なる
請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
通信装置から第1通信経路又は第2通信経路を介してデータを受信し、受信したデータを送信する中継装置であって、
前記第1通信経路を介して受信したデータが記憶される記憶部と、
前記記憶部に記憶されているデータを送信する第1送信部と、
前記第1通信経路を介して受信するデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するデータ量判定部と、
前記データ量判定部によって前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記第1通信経路を介した送信の休止
及び前記第2通信経路を介した送信
を指示する指示データを前記通信装置に送信する第2送信部とを備え、
前記通信装置の数は2以上であり、
複数の前記通信装置から複数の前記第1通信経路を介して
前記複数の通信装置毎のデータ夫々を受信し、
前記記憶部には、前記複数の第1通信経路を介して受信した複数種類のデータが記憶され、
前記データ量判定部は、前記複数種類のデータ夫々について、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定し、
前記第2送信部は、前記複数種類のデータ中の少なくとも1種類のデータについて、前記データ量判定部によって前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記データ量が前記閾値以上であると判定されたデータの送信元である前記通信装置に前記指示データを送信する
中継装置。
【請求項4】
データの種類は、前記データを用いる処理に係るアプリケーションプログラムによって決まる
請求項3に記載の中継装置。
【請求項5】
前記複数種類のデータに係る複数の閾値
における少なくとも2つの閾値は相互に異なる
請求項3又は請求項4に記載の中継装置。
【請求項6】
通信装置から第1通信経路又は第2通信経路を介してデータを受信し、受信したデータを送信する中継装置であって、
前記第1通信経路を介して受信したデータが記憶される記憶部と、
前記記憶部に記憶されているデータを送信する第1送信部と、
前記第1通信経路を介して受信するデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するデータ量判定部と、
前記データ量判定部によって前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記第1通信経路を介した送信の休止
及び前記第2通信経路を介した送信
を指示する指示データを前記通信装置に送信する第2送信部とを備え、
前記第2通信経路は、通信バスを介してデータが送信される経路であり、
前記第1通信経路を介した通信で用いられるプロトコルは、前記第2通信経路を介した通信で用いられるプロトコルと異なる
中継装置。
【請求項7】
前記第1通信経路を介した送信を休止する休止時間を、所定期間内に前記第1通信経路を介してデータを受信した回数に基づいて決定する決定部を備え、
前記指示データは、前記決定部が決定した休止時間を示すデータを含む
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の中継装置。
【請求項8】
通信装置から第1通信経路を介して受信したデータを記憶部に記憶するステップと、
前記記憶部に記憶されているデータを送信するステップと、
前記第1通信経路を介して受信したデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するステップと、
前記データ量が前記閾値以上であると判定した場合、前記第1通信経路を介した送信の休止
及び前記第1通信経路とは異なる第2通信経路を介した送信
を指示する指示データを前記通信装置に送信するステップとを含む中継方法であって、
前記通信装置の数は2以上であり、
複数の前記通信装置から複数の前記第1通信経路を介してデータを受信し、
前記記憶部には、前記複数の通信装置から受信する、
前記複数の通信装置毎のデータ夫々が記憶され、
前記複数の通信装置から受信する、
前記複数の通信装置毎のデータ夫々について、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定し、
前記複数の通信装置中の少なくとも1つから受信するデータについて、前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記データ量が前記閾値以上であると判定されたデータの送信元である前記通信装置に前記指示データを送信する
中継方法。
【請求項9】
通信装置から第1通信経路を介して受信したデータを記憶部に記憶するステップと、
前記記憶部に記憶されているデータを送信するステップと、
前記第1通信経路を介して受信したデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するステップと、
前記データ量が前記閾値以上であると判定した場合、前記第1通信経路を介した送信の休止
及び前記第1通信経路とは異なる第2通信経路を介した送信
を指示する指示データを前記通信装置に送信するステップとを含む中継方法であって、
前記通信装置の数は2以上であり、
複数の前記通信装置から複数の前記第1通信経路を介して
前記複数の通信装置毎のデータ夫々を受信し、
前記記憶部には、前記複数の第1通信経路を介して受信した複数種類のデータが記憶され、
前記複数種類のデータ夫々について、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定し、
前記複数種類のデータ中の少なくとも1種類のデータについて、前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記データ量が前記閾値以上であると判定されたデータの送信元である前記通信装置に前記指示データを送信する
中継方法。
【請求項10】
通信装置から第1通信経路を介して受信したデータを記憶部に記憶するステップと、
前記記憶部に記憶されているデータを送信するステップと、
前記第1通信経路を介して受信したデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するステップと、
前記データ量が前記閾値以上であると判定した場合、前記第1通信経路を介した送信の休止
及び前記第1通信経路とは異なる第2通信経路を介した送信
を指示する指示データを前記通信装置に送信するステップとを含む中継方法であって、
前記第2通信経路は、通信バスを介してデータが送信される経路であり、
前記第1通信経路を介した通信で用いられるプロトコルは、前記第2通信経路を介した通信で用いられるプロトコルと異なる
中継方法。
【請求項11】
コンピュータに、
通信装置から第1通信経路を介して受信したデータを記憶部に記憶するステップと、
前記記憶部に記憶されているデータを送信するステップと、
前記第1通信経路を介して受信したデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するステップと、
前記データ量が前記閾値以上であると判定した場合、前記第1通信経路を介した送信の休止
及び前記第1通信経路とは異なる第2通信経路を介した送信
を指示する指示データを前記通信装置に送信するステップとを実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記通信装置の数は2以上であり、
複数の前記通信装置から複数の前記第1通信経路を介してデータを受信し、
前記記憶部には、前記複数の通信装置から受信する、
前記複数の通信装置毎のデータ夫々が記憶され、
前記複数の通信装置から受信する、
前記複数の通信装置毎のデータ夫々について、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定し、
前記複数の通信装置中の少なくとも1つから受信するデータについて、前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記データ量が前記閾値以上であると判定されたデータの送信元である前記通信装置に前記指示データを送信する
コンピュータプログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
通信装置から第1通信経路を介して受信したデータを記憶部に記憶するステップと、
前記記憶部に記憶されているデータを送信するステップと、
前記第1通信経路を介して受信したデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するステップと、
前記データ量が前記閾値以上であると判定した場合、前記第1通信経路を介した送信の休止
及び前記第1通信経路とは異なる第2通信経路を介した送信
を指示する指示データを前記通信装置に送信するステップとを実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記通信装置の数は2以上であり、
複数の前記通信装置から複数の前記第1通信経路を介して
前記複数の通信装置毎のデータ夫々を受信し、
前記記憶部には、前記複数の第1通信経路を介して受信した複数種類のデータが記憶され、
前記複数種類のデータ夫々について、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定し、
前記複数種類のデータ中の少なくとも1種類のデータについて、前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記データ量が前記閾値以上であると判定されたデータの送信元である前記通信装置に前記指示データを送信する
コンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータに、
通信装置から第1通信経路を介して受信したデータを記憶部に記憶するステップと、
前記記憶部に記憶されているデータを送信するステップと、
前記第1通信経路を介して受信したデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するステップと、
前記データ量が前記閾値以上であると判定した場合、前記第1通信経路を介した送信の休止
及び前記第1通信経路とは異なる第2通信経路を介した送信
を指示する指示データを前記通信装置に送信するステップとを実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記第2通信経路は、通信バスを介してデータが送信される経路であり、
前記第1通信経路を介した通信で用いられるプロトコルは、前記第2通信経路を介した通信で用いられるプロトコルと異なる
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置、中継方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、2つの通信装置間の通信を中継装置が中継する通信システム(例えば、特許文献1を参照)が提案されている。特許文献1に記載の通信システムでは、中継装置は2つの通信線の一端に接続され、2つの通信線夫々の他端は2つの通信装置に接続されている。中継装置は、一方の通信装置からデータを、通信線を介して受信し、受信したデータを、通信線を介して他方の通信装置に送信する。2つの通信線を介した通信では、イーサネット(登録商標)用のプロトコルが用いられる。
【0003】
イーサネット用のプロトコルが用いられる通信を中継する従来の中継装置では、2つの通信線中の1つを介して受信したデータを記憶部に記憶し、記憶部に記憶されているデータを他の通信線を介して送信する。従来の中継装置では、データを送信した場合、送信したデータを記憶部から削除する。記憶部に記憶されているデータのデータ量は、単位時間当たりに受信するデータのデータ量と、単位時間当たりに送信されるデータのデータ量とに応じて変動する。
【0004】
従来の中継装置では、記憶部に記憶されているデータのデータ量が上限値に近い値となった場合、データの送信元である通信装置に送信の停止を指示するデータを送信する。通信装置は、データ量が小さな値に低下するまで、データの送信を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の中継装置が、送信の停止を指示する指示データを通信装置に送信した場合、送信元の通信装置から送信先の通信装置へのデータの送信にかかる所要時間が長い。この場合、送信先の通信装置において、送信元の通信装置から受信したデータに基づく処理が適切なタイミングで実行されない可能性がある。
【0007】
例えば、通信装置は、車両の乗員が操作部を操作した場合に、窓の開放を指示するデータを送信するように構成されていると仮定する。乗員が操作部を操作した時点において、送信元の通信装置に送信の停止が指示されていた場合、通信装置は記憶部のデータ量が小さな値に低下するまで、データを送信せずに待機する。このため、窓の開放にかかる時間が長く、乗員に不快感を与える可能性がある。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所要時間が短いデータの送信を実現することができる中継装置、中継方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る中継装置は、通信装置から第1通信経路又は第2通信経路を介してデータを受信し、受信したデータを送信する中継装置であって、前記第1通信経路を介して受信したデータが記憶される記憶部と、前記記憶部に記憶されているデータを送信する第1送信部と、前記第1送信部が送信したデータを前記記憶部から削除する削除部と、前記第1通信経路を介して受信するデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するデータ量判定部と、前記データ量判定部によって前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記第1通信経路を介した送信の休止と、前記第2通信経路を介した送信とを指示する指示データを前記通信装置に送信する第2送信部とを備える。
【0010】
本発明の一態様に係る中継方法は、通信装置から第1通信経路を介して受信したデータを記憶部に記憶するステップと、前記記憶部に記憶されているデータを送信するステップと、送信したデータを前記記憶部から削除するステップと、前記第1通信経路を介して受信したデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するステップと、前記データ量が前記閾値以上であると判定した場合、前記第1通信経路を介した送信の休止と、前記第1通信経路とは異なる第2通信経路を介した送信とを指示する指示データを前記通信装置に送信するステップとを含む。
【0011】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、通信装置から第1通信経路を介して受信したデータを記憶部に記憶するステップと、前記記憶部に記憶されているデータの送信を指示するステップと、送信されたデータを前記記憶部から削除するステップと、前記第1通信経路を介して受信したデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するステップと、前記データ量が前記閾値以上であると判定した場合、前記第1通信経路を介した送信の休止と、前記第1通信経路とは異なる第2通信経路を介した送信とを指示する指示データの前記通信装置への送信を指示するステップとを実行させる。
【0012】
なお、本発明を、このような特徴的な処理部を備える中継装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする中継方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。また、本発明を、中継装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、中継装置を含む通信システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記の態様によれば、所要時間が短いデータの送信を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1における通信システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図2】データフレーム及び休止フレームの説明図である。
【
図3】高機能ECUの要部構成を示すブロック図である。
【
図4】フラグ処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】ECU側送信処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】中継装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図7】装置側記憶処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】装置側送信処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】データ量調整処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】高機能ECUに係る受信回数の説明図である。
【
図11】候補時間及び受信回数の関係を示すグラフである。
【
図12】高機能ECUに係る候補時間の説明図である。
【
図13】実施形態2におけるデータとデータを送信する装置との関係の一例を示す図表である。
【
図14】データ量調整処理の手順を示すフローチャートである。
【
図15】第1アプリケーションデータに係る受信回数の説明図である。
【
図16】第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータに係る候補時間の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0016】
(1)本発明の一態様に係る中継装置は、通信装置から第1通信経路又は第2通信経路を介してデータを受信し、受信したデータを送信する中継装置であって、前記第1通信経路を介して受信したデータが記憶される記憶部と、前記記憶部に記憶されているデータを送信する第1送信部と、前記第1送信部が送信したデータを前記記憶部から削除する削除部と、前記第1通信経路を介して受信するデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するデータ量判定部と、前記データ量判定部によって前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記第1通信経路を介した送信の休止と、前記第2通信経路を介した送信とを指示する指示データを前記通信装置に送信する第2送信部とを備える。
【0017】
(2)本発明の一態様に係る中継装置は、前記第1通信経路を介した送信を休止する休止時間を、所定期間内に前記第1通信経路を介してデータを受信した回数に基づいて決定する決定部を備え、前記指示データは、前記決定部が決定した休止時間を示すデータを含む。
【0018】
(3)本発明の一態様に係る中継装置では、前記通信装置の数は2以上であり、複数の前記通信装置から複数の前記第1通信経路を介してデータを受信し、前記記憶部には、前記複数の通信装置から受信した複数のデータが記憶され、前記データ量判定部は、前記複数の通信装置から受信する複数のデータ夫々について、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定し、前記第2送信部は、前記複数の通信装置中の少なくとも1つから受信するデータについて、前記データ量判定部によって前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記データ量が前記閾値以上であると判定されたデータの送信元である前記通信装置に前記指示データを送信する。
【0019】
(4)本発明の一態様に係る中継装置では、前記複数の通信装置から受信する複数のデータに係る複数の閾値中の2つは相互に異なる。
【0020】
(5)本発明の一態様に係る中継装置では、前記通信装置の数は2以上であり、複数の前記通信装置から複数の前記第1通信経路を介して複数種類のデータを受信し、前記記憶部には、前記複数の第1通信経路を介して受信した複数種類のデータが記憶され、前記データ量判定部は、前記複数種類のデータ夫々について、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定し、前記第2送信部は、前記複数種類のデータ中の少なくとも1種類のデータについて、前記データ量判定部によって前記データ量が前記閾値以上であると判定された場合、前記データ量が前記閾値以上であると判定されたデータの送信元である前記通信装置に前記指示データを送信する。
【0021】
(6)本発明の一態様に係る中継装置では、データの種類は、前記データを用いる処理に係るアプリケーションプログラムによって決まる。
【0022】
(7)本発明の一態様に係る中継装置では、前記複数種類のデータに係る複数の閾値中の2つは相互に異なる。
【0023】
(8)本発明の一態様に係る中継装置では、前記第2通信経路は、通信バスを介してデータが送信される経路であり、前記第1通信経路を介した通信で用いられるプロトコルは、前記第2通信経路を介した通信で用いられるプロトコルと異なる。
【0024】
(9)本発明の一態様に係る中継方法は、通信装置から第1通信経路を介して受信したデータを記憶部に記憶するステップと、前記記憶部に記憶されているデータを送信するステップと、送信したデータを前記記憶部から削除するステップと、前記第1通信経路を介して受信したデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するステップと、前記データ量が前記閾値以上であると判定した場合、前記第1通信経路を介した送信の休止と、前記第1通信経路とは異なる第2通信経路を介した送信とを指示する指示データを前記通信装置に送信するステップとを含む。
【0025】
(10)本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、通信装置から第1通信経路を介して受信したデータを記憶部に記憶するステップと、前記記憶部に記憶されているデータの送信を指示するステップと、送信されたデータを前記記憶部から削除するステップと、前記第1通信経路を介して受信したデータについて、前記記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定するステップと、前記データ量が前記閾値以上であると判定した場合、前記第1通信経路を介した送信の休止と、前記第1通信経路とは異なる第2通信経路を介した送信とを指示する指示データの前記通信装置への送信を指示するステップとを実行させる。
【0026】
上記の一態様に係る中継装置、中継方法及びコンピュータプログラムにあっては、記憶部に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であると判定した場合に指示データを通信装置に送信する。これにより、通信装置は、第1通信経路を介した送信を休止し、第2通信経路を介してデータを送信する。結果、所要時間が短いデータの送信が実現される。
【0027】
上記の一態様に係る中継装置にあっては、所定期間内に第1通信経路を介してデータを受信した回数に基づいて休止時間を適切に決定する。
【0028】
上記の一態様に係る中継装置にあっては、複数の通信装置の中で、データ量が閾値以上であるデータを送信している通信装置に指示データを送信する。これにより、大量のデータを送信している通信装置は、第1通信経路を介した送信を休止し、第2通信経路を介してデータを送信する。このため、データが効率的に送信される。
【0029】
上記の一態様に係る中継装置にあっては、複数の通信装置から受信する複数のデータに係る全ての閾値は、同一ではなく、各別に適宜設定されている。
【0030】
上記の一態様に係る中継装置にあっては、複数種類のデータが中継される。1種類のデータについて、記憶部に記憶されているデータのデータ量が大きい場合、この種類のデータの送信元である通信装置に指示データを送信する。これにより、データ量が大きい種類のデータについて、第1通信経路を介した送信が休止し、第2通信経路を介した送信が行われる。このため、複数種類のデータが効率的に送信される。
【0031】
上記の一態様に係る中継装置にあっては、1つのアプリケーションプログラムに係る処理で用いられるデータは、1種類のデータである。
【0032】
上記の一態様に係る中継装置にあっては、複数種類のデータに係る全ての閾値は、同一ではなく、適宜設定されている。
【0033】
上記の一態様に係る中継装置にあっては、第1通信経路を介して通信では、例えば、イーサネット用のプロトコルが用いられる。第2通信経路を介した通信では、例えば、CAN用のプロトコルが用いられる。
【0034】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0035】
(実施形態1)
図1は、実施形態1における通信システムNの要部構成を示すブロック図である。通信システムNは車両100に好適に搭載されている。通信システムNは、4つの高機能ECU(Electronic Control Unit)10,20、6つの低機能ECU11,21、2つの通信バス12,22、4つの通信線13,23及び中継装置30を備える。
【0036】
2つの高機能ECU10及び3つの低機能ECU11は通信バス12に接続されている。2つの高機能ECU10夫々は更に通信線13に接続されている。同様に、2つの高機能ECU20及び3つの低機能ECU21は通信バス22に接続されている。2つの高機能ECU20夫々は更に通信線23に接続されている。中継装置30は、2つの通信バス12,22及び4つの通信線13,23に各別に接続されている。
【0037】
高機能ECU10,20及び低機能ECU11,21夫々は、車両100に搭載された電気機器に関する制御を行う。高機能ECU10,20及び低機能ECU11,21は、通信装置として機能する。4つの高機能ECU10,20及び6つの低機能ECU11,21は相互に通信し、これらの少なくとも2つは協調動作を行う。
【0038】
例えば、車両100のドアノブを人物が接触した場合、1つの低機能ECU11に、ドアの解錠を指示するデータが入力される。この低機能ECU11は、1つの高機能ECU20にこのデータを送信する。この高機能ECU20は、ドアの解錠を指示するデータを受信した場合、ドアを解錠するドアモータを駆動する駆動機に、受信したデータを出力する。これにより、ドアが解錠される。
【0039】
中継装置30は、2つの高機能ECU20及び3つの低機能ECU21中の1つから受信したデータを、4つの高機能ECU10,20及び3つの低機能ECU11中の少なくとも1つに送信する。同様に、中継装置30は、2つの高機能ECU10及び3つの低機能ECU11中の1つから受信したデータを、4つの高機能ECU10,20及び3つの低機能ECU21中の少なくとも1つに送信する。
【0040】
通信システムNでは、送信先である装置に通知すべき内容を示すメインデータを含むデータフレームを送信することによって、メインデータを送信する。メインデータは、例えば、ドアの解錠を指示するデータである。データフレームには、メインデータの他に種々のサブデータが含まれる。
【0041】
通信バス12,22夫々を介した通信では、CAN(Controller Area Network)用のプロトコルが用いられる。CAN用のデータフレームには、サブデータとして、メインデータを識別するための識別データが含まれている。通信バス12,22夫々はツイストペアケーブルである。
【0042】
高機能ECU10、低機能ECU11及び中継装置30は、通信バス12を介してCAN用のデータフレームを送信する。1つの装置が通信バス12を介して送信したデータフレームは、通信バス12に接続されている全ての装置によって受信される。同様に、高機能ECU20、低機能ECU21及び中継装置30は、通信バス22を介してCAN用のデータフレームを送信する。1つの装置が通信バス22を介して送信したデータフレームは、通信バス22に接続されている全ての装置によって受信される。
【0043】
通信バス12に接続されている装置は、データフレームを受信した場合、受信したデータフレームに含まれる識別データに基づいて、受信したデータフレームを記憶すべきか否かを判定する。この装置は、受信したデータフレームを記憶すべきと判定した場合、受信したデータフレームを記憶する。同様に、通信バス22に接続されている装置は、データフレームを受信した場合、受信したデータフレームに含まれる識別データに基づいて、受信したデータフレームを記憶すべきか否かを判定する。この装置は、受信したデータフレームを記憶すべきと判定した場合、受信したデータフレームを記憶する。
【0044】
高機能ECU10及び低機能ECU11夫々は、通信バス12を介して受信して記憶したデータフレームのメインデータに基づいて、電気機器に関する制御を行う。同様に、高機能ECU20及び低機能ECU21夫々は、通信バス22を介して受信して記憶したデータフレームのメインデータに基づいて、電気機器に関する制御を行う。中継装置30は、通信バス12を介して受信して記憶したデータフレームを、通信バス22を介して送信し、通信バス22を介して受信して記憶したデータフレームを、通信バス12を介して送信する。通信バス12,22夫々を介してデータフレームが送信される経路は第2通信経路に相当する。
【0045】
通信線13,23を介した通信では、イーサネット用のプロトコルが用いられる。従って、通信線13,23を介した通信で用いられるプロトコルは、通信バス12,22を介した通信で用いられるプロトコルと異なる。通信線13,23夫々を介した通信は、1対1の通信である。このため、通信線13,23夫々に接続されている装置の数は2である。通信線13,23を介した通信では、データフレームの他に休止フレームが用いられる。休止フレームは、通信線13,23を介した送信の休止と、通信バス12,22を介した送信とを指示する。休止フレームは指示データに相当する。
【0046】
図2はデータフレーム及び休止フレームの説明図である。
図2には、イーサネット用のデータフレームが示されている。
図2に示すように、データフレーム及び休止フレーム夫々は、送信先の装置を示す送信先データと、送信元の装置を示す送信元データとを含む。データフレームは、更に、メインデータを含む。休止フレームは、更に、通信線13,23を介した送信を休止する休止時間を示す休止時間データを含む。
【0047】
高機能ECU10,20夫々は、通信線13,23を介して中継装置30にデータフレームを送信する。中継装置30は、4つの高機能ECU10,20夫々から通信線13,23を介してデータフレームを受信する。中継装置30は、通信線13,23を介して受信したデータフレームを記憶する。中継装置30は、通信線13,23を介して受信して記憶した受信したデータフレームを、4つの通信線13,23中の1つを介して、4つの高機能ECU10,20中の1つに送信する。4つの通信線13,23夫々を介してデータフレームが送信される経路は、第1通信経路に相当する。第1通信経路の数は4である。
【0048】
高機能ECU10,20夫々は、通信線13,23を介して受信したデータフレームを記憶する。高機能ECU10,20夫々は、通信線13,23を介して受信して記憶したデータフレームのメインデータに基づいて、電気機器に関する制御を行う。
【0049】
高機能ECU10,20夫々は、送信先の装置が6つの低機能ECU11,21中の1つである場合、通信バス12,22を介してCAN用のデータフレームを送信する。
【0050】
高機能ECU10,20夫々は、送信先が4つの高機能ECU10,20中の1つである場合、通常、通信線13,23を介してイーサネット用のデータフレームを送信する。高機能ECU10,20夫々は、中継装置30から休止フレームを受信した場合、受信した休止フレームの休止時間データが示す休止時間、通信線13,23を介したデータフレームの送信を休止する。高機能ECU10,20夫々は、通信線13,23を介したデータフレームの送信を休止している間、通信バス12,22を介して、4つの高機能ECU10,20の中で自装置とは異なる高機能ECUにCAN用のデータフレームを送信する。
【0051】
高機能ECU10,20夫々は、休止フレームを受信してから休止時間が経過した場合、通信線13,23を介した送信を再開する。即ち、高機能ECU10,20夫々は、送信先が4つの高機能ECU10,20中の1つである場合、通信線13,23を介してイーサネット用のデータフレームを送信する。通信線13,23夫々を介した通信の通信速度は、例えば100Mbpsである。通信バス12,22夫々を介した通信の通信速度は、例えば1Mbpsであり、通信線13,23夫々を介した通信の通信速度よりも遅い。
【0052】
以下では、高機能ECU10,20及び中継装置30の具体的な構成を説明する。
図3は高機能ECU10の要部構成を示すブロック図である。高機能ECU10は、CAN通信部40、イーサネット通信部41、一時記憶部42、タイマ43、主記憶部44及び制御部45を有する。これらは、高機能ECU10内において、内部バス46に接続されている。CAN通信部40は、更に、通信バス12に接続されている。イーサネット通信部41は、更に、通信線13に接続されている。
【0053】
CAN通信部40及びイーサネット通信部41夫々は、インタフェースであり、制御部45の指示に従って、データフレームを送信する。CAN通信部40は、通信バス12を介して送信された全てのデータフレームを受信する。イーサネット通信部41は、通信線13を介して中継装置30から送信されたデータフレームを受信する。制御部45は、CAN通信部40及びイーサネット通信部41が受信したデータフレームをこれらから取得する。
【0054】
制御部45は、CAN通信部40及びイーサネット通信部41が受信したデータフレームに含まれるメインデータを、電気機器に関する制御に用いる制御データとして一時記憶部42に記憶する。制御部45は、更に、4つの高機能ECU10,20及び6つの低機能ECU11,21中の1つに送信すべき送信データを一時記憶部42に記憶する。制御部45は、一時記憶部42に記憶されているデータを一時記憶部42から読み出す。制御部45は、一時記憶部42に記憶されているデータを削除する。
【0055】
一時記憶部42には、データが一時的に記憶される。例えば、一時記憶部42への電力供給が停止した場合、一時記憶部42に記憶されている全てのデータは消去される。
【0056】
タイマ43は、制御部45の指示に従って、計時の開始及び終了を行う。タイマ43が計時している計時時間は、制御部45によって読み出される。
【0057】
主記憶部44は不揮発性メモリである。主記憶部44には、フラグの値が記憶されている。制御部45は、フラグの値をゼロ又は1に変更する。フラグの値がゼロであることは、通信線13を介した送信が許可されていることを示す。フラグの値が1であることは、通信線13を介した送信が禁止されていることを示す。
【0058】
主記憶部44には、コンピュータプログラムP1が記憶されている。制御部45は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部45が有する一又は複数のCPUは、コンピュータプログラムP1を実行することによって、制御データ記憶処理、制御処理、送信データ記憶処理、フラグ処理及びECU側送信処理を並行して実行する。
【0059】
制御データ記憶処理及び送信データ記憶処理夫々は、制御データ及び送信データを一時記憶部42に記憶する処理である。制御処理は、制御データに基づいて電気機器に関する制御を行う処理である。フラグ処理は、フラグの値をゼロ又は1に変更する処理である。ECU側送信処理は、CAN通信部40又はイーサネット通信部41にデータフレームを送信させる処理である。コンピュータプログラムP1は、制御部45が有する一又は複数のCPUに、制御データ記憶処理、制御処理、送信データ記憶処理、フラグ処理及びECU側送信処理を実行させるために用いられる。
【0060】
なお、コンピュータプログラムP1は、制御部45が有する一又は複数のCPUが読み取り可能に、記憶媒体A1に記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体A1から読み出されたコンピュータプログラムP1が主記憶部44に記憶される。記憶媒体A1は、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、又は、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムP1をダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムP1を主記憶部44に記憶してもよい。
【0061】
制御部45は、CAN通信部40又はイーサネット通信部41がデータフレームを受信した場合に制御データ記憶処理を実行する。制御データ記憶処理では、制御部45は、CAN通信部40がデータフレームを受信した場合、受信したデータフレームに含まれる識別データに基づいて、受信したデータフレームに含まれるメインデータを制御データとして一時記憶部42に記憶すべきか否かを判定する。
【0062】
主記憶部44に一又は複数の識別データが記憶されている。制御部45は、CAN通信部40が受信したデータフレームの識別データが、主記憶部44に記憶されている一又は複数の識別データに含まれている場合、受信したデータフレームに含まれるメインデータを一時記憶部42に記憶すべきと判定する。
【0063】
制御部45は、CAN通信部40が受信したデータフレームの識別データが、主記憶部44に記憶されている一又は複数の識別データに含まれていない場合、受信したデータフレームに含まれるメインデータを一時記憶部42に記憶すべきではないと判定する。
【0064】
制御部45は、メインデータを記憶すべきと判定した場合、受信したデータフレームに含まれるメインデータを制御データとして一時記憶部42に記憶し、制御データ記憶処理を終了する。制御部45は、メインデータを記憶すべきではないと判定した場合、受信したデータフレームに含まれるメインデータを一時記憶部42に記憶することなく、制御データ記憶処理を終了する。
【0065】
制御部45は、イーサネット通信部41がデータフレームを受信した場合、イーサネット通信部41が受信したデータフレームに含まれるメインデータを制御データとして一時記憶部42に記憶し、制御データ記憶処理を終了する。
【0066】
制御部45は、一時記憶部42に制御データが記憶されている場合、制御処理を実行する。制御処理では、制御部45は、一時記憶部42に記憶されている制御データに基づく処理を実行する。例えば、制御部45は、図示しない出力部に、特定の動作を指示するデータを出力させ、電気機器に特定の動作を行わせる。その後、制御部45は、一時記憶部42から、実行した処理に係る制御データを削除し、制御処理を終了する。他の制御データが一時記憶部42に記憶されている場合、制御部45は再び制御処理を実行する。
【0067】
制御部45は、例えば、センサの検出結果を示すデータ又は特定の動作を指示するデータ等が図示しない入力部に入力された場合に送信データ記憶処理を実行する。送信データ記憶処理では、制御部45は、入力部に入力されたデータに基づいて送信データを生成し、生成した送信データを一時記憶部42に記憶する。その後、制御部45は送信データ記憶処理を終了する。
【0068】
図4はフラグ処理の手順を示すフローチャートである。制御部45は、イーサネット通信部41が中継装置30から休止フレームを受信した場合にフラグ処理を実行する。フラグ処理の実行が開始される時点ではフラグの値はゼロである。フラグ処理では、制御部45は、フラグの値を1に変更し(ステップS1)、制御部45は、タイマ43に計時の開始を指示する(ステップS2)。これにより、タイマ43は計時を開始する。
【0069】
次に、制御部45は、タイマ43が計時している計時時間が、イーサネット通信部41が受信した休止フレームの休止時間データが示す休止時間以上であるか否かを判定する(ステップS3)。制御部45は、計時時間が休止時間未満であると判定した場合(S3:NO)、ステップS3を再び実行し、計時時間が休止時間以上となるまで待機する。制御部45は、計時時間が休止時間以上であると判定した場合(S3:YES)、フラグの値をゼロに変更し(ステップS4)、フラグ処理を終了する。
【0070】
以上のように、高機能ECU10では、イーサネット通信部41が休止フレームを受信してから、受信した休止フレームの休止時間データが示す休止時間が経過するまで、フラグの値は1に設定される。
【0071】
図5は、ECU側送信処理の手順を示すフローチャートである。制御部45は、一時記憶部42に送信データが記憶されている場合、ECU側送信処理を実行する。ECU側送信処理では、制御部45は、まず、送信データの送信先が、自装置を除く3つの高機能ECU10,20中の1つであるか否かを判定する(ステップS11)。
【0072】
制御部45は、送信先が3つの高機能ECU10,20中の1つであると判定した場合(S11:YES)、フラグの値がゼロであるか否かを判定する(ステップS12)。制御部45は、フラグの値がゼロであると判定した場合(S12:YES)、メインデータとして送信データを含むイーサネット用のデータフレームを生成し(ステップS13)、生成したデータフレームの送信をイーサネット通信部41に指示する(ステップS14)。これにより、イーサネット通信部41は、ステップS13で生成したデータフレームを、通信線13を介して中継装置30に送信する。
【0073】
制御部45は、送信先が3つの高機能ECU10,20中の1つではないと判定した場合(S11:NO)、又は、フラグの値がゼロではないと判定した場合(S12:NO)、メインデータとして送信データを含むCAN用のデータフレームを生成する(ステップS15)。送信先が3つの高機能ECU10,20ではないことは、送信先が6つの低機能ECU11,21中の1つであることを意味する。フラグの値がゼロではないことは、フラグの値が1であることを意味する。
【0074】
次に、制御部45は、ステップS15で生成したデータフレームの送信をCAN通信部40に指示する(ステップS16)。これにより、CAN通信部40は、ステップS15で生成したデータフレームを、通信バス12を介して送信する。制御部45は、ステップS14,S16中の1つを実行した後、送信されたデータフレームに含まれている送信データを一時記憶部42から削除し(ステップS17)、ECU側送信処理を終了する。一時記憶部42に他の送信データが記憶されている場合、制御部45はECU側送信処理を再び実行し、この送信データを含むデータフレームが送信される。
【0075】
以上のように、高機能ECU10は、フラグの値が1である間、即ち、イーサネット通信部41が休止フレームを受信してから休止時間が経過するまでの間、通信線13を介したデータフレームの送信を休止する。高機能ECU10は、フラグの値が1である間、送信先が、自装置を除く3つの高機能ECU10,20中の1つである送信データを、通信線13ではなく、通信バス12を介して送信する。
【0076】
高機能ECU20は高機能ECU10と同様に構成されている。高機能ECU10の構成の説明において、高機能ECU10,20、通信バス12及び通信線13夫々を、高機能ECU20,10、通信バス22及び通信線23に置き換える。これにより、高機能ECU20の構成を理解することができる。
【0077】
従って、高機能ECU20も、フラグの値が1である間、即ち、イーサネット通信部41が休止フレームを受信してから休止時間が経過するまでの間、通信線23を介したデータフレームの送信を休止する。高機能ECU20は、フラグの値が1である間、送信先が、自装置を除く3つの高機能ECU10,20中の1つである送信データを、通信線23ではなく、通信バス22を介して送信する。
【0078】
図6は中継装置30の要部構成を示すブロック図である。中継装置30は、2つのCAN通信部50a,50b、4つのイーサネット通信部51a,51b、一時記憶部52、時計部53、主記憶部54及び制御部55を有する。これらは、中継装置30内において、内部バス56に接続されている。CAN通信部50a,50b夫々は、更に、通信バス12,22に接続されている。2つのイーサネット通信部51a夫々は、通信線13に接続されている。2つのイーサネット通信部51b夫々は、通信線23に接続されている。
【0079】
CAN通信部50a,50b及びイーサネット通信部51a,51bは、インタフェースであり、制御部55の指示に従って、データフレームを送信する。
【0080】
CAN通信部50aは、通信バス12を介して送信された全てのデータフレームを受信する。イーサネット通信部51aは、自身に接続されている通信線13を介して高機能ECU10から送信されたデータフレームを受信する。CAN通信部50bは、通信バス22を介して送信された全てのデータフレームを受信する。イーサネット通信部51bは、自身に接続されている通信線23を介して高機能ECU20から送信されたデータフレームを受信する。制御部55は、CAN通信部50a,50b及びイーサネット通信部51a,51bが受信したデータフレームをこれらから取得する。
【0081】
制御部55は、2つのCAN通信部50a,50b及び4つのイーサネット通信部51a,51bが受信したデータフレームを一時記憶部52に記憶する。制御部55は、4つのイーサネット通信部51a,51bがデータフレームを受信した日時と、このデータフレームの送信元の装置とを示す受信時刻データを一時記憶部52に記憶する。送信元の装置は、4つの高機能ECU10,20中の1つである。
【0082】
制御部55は、一時記憶部52に記憶されているデータフレーム及び受信時刻データを一時記憶部42から読み出す。制御部45は、一時記憶部42に記憶されているデータフレームを削除する。一時記憶部52には、データが一時的に記憶される。例えば、一時記憶部52への電力供給が停止した場合、一時記憶部52に記憶されている全てのデータは消去される。
【0083】
制御部55は、時計部53から日時を示す日時データを取得する。制御部55が取得した日時データは、この日時データを取得した時点の日時を示す。
【0084】
主記憶部54は不揮発性メモリである。主記憶部54には、コンピュータプログラムP2が記憶されている。制御部55は、一又は複数のCPUを有する。制御部55が有する一又は複数のCPUは、コンピュータプログラムP2を実行することによって、装置側記憶処理、装置側送信処理及び4つの高機能ECU10,20に対応する4つのデータ量調整処理を並行して実行する。
【0085】
装置側記憶処理は、データフレームを一時記憶部52に記憶する処理である。装置側送信処理は、一時記憶部52に記憶されているデータフレームを送信する処理である。4つのデータ量調整処理夫々は、通信線13又は通信線23を介して送信されるデータのデータ量を調整する処理である。コンピュータプログラムP2は、制御部55が有する一又は複数のCPUに、装置側記憶処理、装置側送信処理及び4つのデータ量調整処理を実行させるために用いられる。
【0086】
なお、コンピュータプログラムP2は、制御部55が有する一又は複数のCPUが読み取り可能に、記憶媒体A2に記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体A2から読み出されたコンピュータプログラムP2が主記憶部54に記憶される。記憶媒体A2は、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムP2をダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムP2を主記憶部54に記憶してもよい。
【0087】
図7は装置側記憶処理の手順を示すフローチャートである。制御部55は、2つのCAN通信部50a,50b及び4つのイーサネット通信部51a,51bがデータフレームを受信した場合に装置側記憶処理を実行する。装置側記憶処理では、制御部55は、まず、2つのCAN通信部50a,50b中の1つがデータフレームを受信したか否かを判定する(ステップS21)。ここで、2つのCAN通信部50a,50b中の1つがデータフレームを受信していないことは、4つのイーサネット通信部51a,51b中の1つがデータフレームを受信したことを意味する。
【0088】
制御部55は、2つのCAN通信部50a,50b中の1つがデータフレームを受信していないと判定した場合(S21:NO)、4つのイーサネット通信部51a,51b中の1つが受信したデータフレームを一時記憶部52に記憶する(ステップS22)。次に、制御部55は、時計部53から日時データを取得し(ステップS23)、受信時刻データを一時記憶部52に記憶する(ステップS24)。受信時刻データは、受信されたデータフレームの送信元データが示す送信元の装置と、ステップS23で取得した日時データが示す日時とを示す。
【0089】
制御部55は、2つのCAN通信部50a,50b中の1つがデータフレームを受信したと判定した場合(S21:YES)、2つのCAN通信部50a,50b中の1つが受信したデータフレームの中継が必要であるか否かを判定する(ステップS25)。
【0090】
主記憶部54には、一又は複数の識別データが記憶されている。ステップS25では、制御部55は、2つのCAN通信部50a,50b中の1つが受信したデータフレームの識別データが、主記憶部54に記憶されている一又は複数の識別データに含まれている場合、中継が必要であると判定する。制御部55は、2つのCAN通信部50a,50b中の1つが受信したデータフレームの識別データが、主記憶部54に記憶されている一又は複数の識別データに含まれていない場合、中継が必要ではないと判定する。
【0091】
制御部55は、中継が必要であると判定した場合(S25:YES)、CAN通信部50a,50b中の1つが受信したデータフレームを一時記憶部52に記憶する(ステップS26)。制御部55は、ステップS24,S26中の1つを実行した後、又は、中継が必要ではないと判定した場合(S25:NO)、装置側記憶処理を終了する。
【0092】
以上のように、中継装置30では、制御部55は、2つのCAN通信部50a,50b及び4つのイーサネット通信部51a,51bが受信したデータフレームを一時記憶部52に記憶する。制御部55は、4つのイーサネット通信部51a,51bがデータフレームを受信した場合、データフレームの送信元の装置と、データフレームを受信した日時とを示す受信時刻データを記憶する。一時記憶部52には、4つのイーサネット通信部51a,51bが受信したイーサネット用のデータフレームを記憶する領域と、2つのCAN通信部50a,50bが受信したCAN用のデータフレームを記憶する領域とが設けられている。
【0093】
図8は装置側送信処理の手順を示すフローチャートである。制御部55は、一時記憶部52にデータフレームが記憶されている場合、装置側送信処理を実行する。制御部55は、一時記憶部52に記憶されている送信対象のデータフレームがイーサネット用のデータフレームであるか否かを判定する(ステップS31)。送信対象のデータフレームがイーサネット用のデータフレームではないことは、送信対象のデータフレームがCAN用のデータフレームであることを意味する。
【0094】
制御部55は、送信対象のデータフレームがイーサネット用のデータフレームであると判定した場合(S31:YES)、4つのイーサネット通信部51a,51bの中から、送信対象のデータフレームの送信先データが示す送信先の装置に接続されているイーサネット通信部を選択する(ステップS32)。次に、制御部55は、送信対象のデータフレームの送信を、ステップS32で選択したイーサネット通信部に指示する(ステップS33)。これにより、ステップS32で選択されたイーサネット通信部は、送信対象のデータフレームを、通信線13,23中の1つを介して、4つの高機能ECU10,20中の1つに送信する。イーサネット通信部51a,51b夫々は第1送信部として機能する。
【0095】
制御部55は、送信対象のデータフレームがイーサネット用のデータフレームではないと判定した場合(S31:NO)、送信対象のデータフレームの識別データに基づいて、2つのCAN通信部50a,50bの中からCAN通信部を選択する(ステップS34)。次に、制御部55は、送信対象のデータフレームの送信を、ステップS34で選択したCAN通信部に指示する(ステップS35)。これにより、ステップS34で選択されたCAN通信部は、送信対象のデータフレームを通信バス12,22中の1つを介して送信する。
【0096】
制御部55は、ステップS33,S35の一方を実行した後、2つのCAN通信部50a,50b及び4つのイーサネット通信部51a,51b中の1つが送信した送信対象のデータフレームを一時記憶部52から削除し(ステップS36)、装置側送信処理を終了する。制御部55は削除部として機能する。
【0097】
以上のように、中継装置30では、2つのCAN通信部50a,50b及び4つのイーサネット通信部51a,51bは、一時記憶部52に記憶されているデータフレームを送信する。制御部55は、送信されたデータフレームを一時記憶部52から削除する。前述したように、2つのCAN通信部50a,50b及び4つのイーサネット通信部51a,51bがデータフレームを受信した場合にデータフレームが一時記憶部52に記憶される。単位時間当たりに一時記憶部52に記憶されるデータのデータ量と、単位時間当たりに送信されるデータのデータ量とに応じて一時記憶部52に記憶されているデータのデータ量は変動する。
【0098】
図9はデータ量調整処理の手順を示すフローチャートである。ここでは、1つの高機能ECU10に係るデータ量調整処理を説明する。制御部55は、このデータ量調整処理を周期的に実行する。データ量調整処理では、制御部55は、一時記憶部52において、対象の高機能ECU10から受信したデータフレームに係るデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS41)。閾値は、一定であり、予め設定されている。制御部55はデータ量判定部としても機能する。対象の高機能ECU10は、データ量調整処理に係る1つの高機能ECU10である。
【0099】
制御部55は、データ量が閾値以上であると判定した場合(S41:YES)、基準時間内に、対象の高機能ECU10から通信線13を介してイーサネット通信部51aがデータフレームを受信した受信回数を計数する(ステップS42)。
【0100】
図10は、高機能ECU10に係る受信回数の説明図である。
図10では、時間軸において、対象の高機能ECU10からイーサネット通信部51aがデータフレームを受信した時点(日時)が黒丸で示されている。受信回数は、ステップS42の実行を開始した時点から基準時間遡った時点から、ステップS42の実行が開始された時点までに、対象の高機能ECU10からデータフレームを受信した回数である。
図10の例では、受信回数は7である。ステップS42では、一時記憶部52に記憶されている複数の受信時刻データに基づいて受信回数を計数する。
【0101】
次に、制御部55は、ステップS42で計数した受信回数に基づいて、対象の高機能ECU10に係る休止時間を決定する(ステップS43)。主記憶部54には、休止時間の候補である候補時間と、受信回数との関係が予め記憶されている。ステップS43では、制御部55は、この関係に基づいて休止時間を決定する。
【0102】
図11は候補時間及び受信回数の関係を示すグラフである。
図11には、対象の高機能ECU10に係る候補時間が示されている。
図11に示す関係は、主記憶部54に予め記憶されている。
図11に示すように、候補時間は、受信回数が多い程、長い。ステップS43では、制御部55は、休止時間を、ステップS42で計数した受信回数に対応する候補時間に決定する。制御部55は決定部としても機能する。
【0103】
次に、制御部55は、対象の高機能ECU10に接続されているイーサネット通信部51aに休止フレームの送信を指示する(ステップS44)。ここで、休止フレームの休止時間データが示す休止時間は、ステップS43で決定した休止時間である。制御部55がステップS44を実行することにより、イーサネット通信部51aは対象の高機能ECU10に休止フレームを送信する。
【0104】
結果、対象の高機能ECU10は、休止フレームを受信してから、休止フレームの休止時間データが示す休止時間が経過するまでの間、通信線13を介した送信を休止する。この間、対象の高機能ECU10は、送信先が自装置を除く3つの高機能ECU10,20中の1つである送信データを、通信バス12を介して送信する。
制御部55は、データ量が閾値未満であると判定した場合(S41:NO)、又は、ステップS44を実行した後、データ量調整処理を終了する。
【0105】
制御部55は、残りの3つの高機能ECU10,20に係る3つのデータ量調整処理夫々を、
図9~
図11を用いて説明したデータ量調整処理と同様に実行する。高機能ECU10に係るデータ量調整処理の説明において、高機能ECU10,20及びイーサネット通信部51a夫々を、高機能ECU20,10及びイーサネット通信部51bに置き換える。これにより、高機能ECU20に係るデータ量調整処理を理解することができる。
【0106】
制御部55は4つのデータ量調整処理を実行する。従って、制御部55が4つの高機能ECU10,20中の少なくとも1つから受信するデータフレームについて、一時記憶部52に記憶されているデータフレームに係るデータのデータ量が閾値以上であると判定したと仮定する。この場合、4つのイーサネット通信部51a,51b中の1つは、データ量が閾値以上であると判定されたデータの送信元である高機能ECUに休止フレームを送信する。4つのイーサネット通信部51a,51b全体は、第2送信部として機能する。
【0107】
4つのデータ量調整処理、即ち、4つの高機能ECU10,20から受信する複数のデータフレームに係る4つの閾値中の2つは相互に異なっている。従って、4つのデータ量調整処理に係る全ての閾値は、同一ではなく、各別に適宜設定されている。また、4つの高機能ECU10,20の全てについて、候補時間及び受信回数の関係は同一ではない。
【0108】
図12は高機能ECU10,20に係る候補時間の説明図である。
図12には、受信回数及び候補時間の関係を示す2つの直線L1,L2が示されている。
図12に示すように、直線L1,L2夫々について、受信回数が多い程、候補時間が長い。また、共通の受信回数について、直線L1に係る候補時間は、直線L2に係る候補時間よりも長い。更に、直線L1の傾きは、直線L2の傾きよりも大きい。
【0109】
例えば、一方の高機能ECU10及び一方の高機能ECU20に係る2つのデータ量調整処理のステップS43では、制御部55は、直線L1で示される関係に基づいて休止時間を決定する。他方の高機能ECU10及び他方の高機能ECU20に係る2つのデータ量調整処理のステップS43では、制御部55は、直線L2で示される関係に基づいて休止時間を決定する。
【0110】
中継装置30では、4つの高機能ECU10,20中の1つが送信するデータについて、一時記憶部52に記憶されているデータが閾値以上であると制御部55が判定した場合、データ量が閾値以上であるデータを送信している高機能ECUに休止フレームを送信する。これにより、大量のデータを送信している高機能ECUは、通信線13,23中の1つを介した送信を休止し、通信バス12,22中の1つを介してデータフレームを送信する。これにより、所要時間が短いデータの送信が実現され、データフレームが効率的に送信される。
【0111】
また、制御部55は、休止フレームの休止時間データが示す休止時間、即ち、4つの高機能ECU10,20夫々が通信線13,23中の1つを介した送信を休止する休止時間を受信回数に基づいて適切に決定する。
【0112】
なお、4つのデータ量調整処理に係る4つの閾値は同一であってもよい。
【0113】
(実施形態2)
実施形態1では、中継装置30の制御部55は、4つの高機能ECU10,20から受信する複数のデータフレーム夫々について、データ量が閾値以上であるか否かを判定する。しかしながら、データ量が閾値以上であるか否かの判定に係るデータフレームは、送信元の装置によって分類されるデータフレームに限定されない。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通している。このため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0114】
図13は、実施形態2におけるデータとデータを送信する装置との関係の一例を示す図表である。実施形態2における通信システムNでは、4つの高機能ECU10,20中の1つの高機能ECUにおいて、制御部45は、第1アプリケーションプログラムを実行することによって処理を実行する。更に、他の高機能ECUにおいて、制御部45は、第2アプリケーションプログラムを実行することによって処理を実行する。
【0115】
図13では、第1アプリケーションプログラムに係る処理で用いられるデータを第1アプリケーションデータと記載し、第2アプリケーションプログラムに係る処理で用いられるデータを第2アプリケーションデータと記載している。
【0116】
図13の例では、2つの高機能ECU10夫々のイーサネット通信部41は、第1アプリケーションデータがメインデータとして含まれるデータフレームを、自装置に接続されている通信線13を介して送信する。2つの高機能ECU20夫々のイーサネット通信部41は、第2アプリケーションデータがメインデータとして含まれるデータフレームを、通信線23を介して送信する。
【0117】
データの種類は、このデータを用いる処理に係るアプリケーションプログラムによって決まり、第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータ夫々は、1種類のデータである。中継装置30の4つのイーサネット通信部51a,51bは、4つの高機能ECU10,20から4つの通信線13,23を介して、2種類のデータを受信する。装置側記憶処理では、制御部55は、4つのイーサネット通信部51a,51bが4つの通信線13,23を介して受信した2種類のデータを一時記憶部52に記憶する。制御部55は、2種類のデータ、即ち、第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータ夫々についてデータ量調整処理を実行する。
【0118】
図14はデータ量調整処理の手順を示すフローチャートである。ここでは、第1アプリケーションデータに係るデータ量調整処理を説明する。制御部55は、このデータ量調整処理を周期的に実行する。データ量調整処理では、制御部55は、一時記憶部52において、第1アプリケーションデータを含むデータフレームに係るデータのデータ量が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS51)。閾値は、実施形態1と同様に、一定であり、予め設定されている。
【0119】
制御部55は、データ量が閾値以上であると判定した場合(S51:YES)、基準時間内に、4つの高機能ECU10,20が第1アプリケーションデータを含むデータフレームを受信した受信回数を計数する(ステップS52)。
図13の例では、2つの高機能ECU10が第1アプリケーションデータを受信する。
【0120】
図15は、第1アプリケーションデータに係る受信回数の説明図である。
図15では、時間軸において、4つのイーサネット通信部51a,51bが、第1アプリケーションデータを含むデータフレームを受信した時点(日時)が黒丸で示されている。受信回数は、ステップS52の実行を開始した時点から基準時間遡った時点から、ステップS52の実行が開始された時点までに、4つのイーサネット通信部51a,51bが受信した回数である。
図15の例では、受信回数は7である。ステップS52では、一時記憶部52に記憶されている複数の受信時刻データと、
図13に示す関係とに基づいて受信回数を計数する。
【0121】
なお、装置側記憶処理のステップS24で、送信元の装置及び日時の他に、データの種類を示す受信時刻データを一時記憶部52に記憶してもよい。この構成では、4つの高機能ECU10,20の中に、第1アプリケーションデータを含むデータフレームと、第2アプリケーションデータを含むデータフレームとを送信する高機能ECUが含まれる場合であっても、制御部55は受信回数を計数することができる。
【0122】
次に、制御部55は、ステップS52で計数した受信回数に基づいて、第1アプリケーションデータに係る休止時間を決定する(ステップS53)。主記憶部54には、第1アプリケーションデータについて、候補時間及び受信回数の関係が予め記憶されている。ステップS53では、制御部55は、休止時間を、ステップS52で計数した受信回数に対応する第1アプリケーションデータの候補時間に決定する。
【0123】
次に、制御部55は、4つのイーサネット通信部51a,51bの中で、第1アプリケーションデータを含むデータフレームの一又は複数の送信元に接続されている一又は複数のイーサネット通信部に休止フレームの送信を指示する(ステップS54)。ここで、休止フレームの休止時間データが示す休止時間は、ステップS53で決定した休止時間である。制御部55はがステップS54を実行することにより、一又は複数のイーサネット通信部は、4つの高機能ECU10,20の中で、第1アプリケーションデータを含むデータフレームの送信元である高機能ECUに休止フレームを送信する。
【0124】
結果、第1アプリケーションデータを含むデータフレームの送信元である高機能ECUは、休止フレームを受信してから、休止フレームの休止時間データが示す休止時間が経過するまでの間、通信線13を介した送信を休止する。この間、対象の高機能ECU10は、送信先が自装置を除く3つの高機能ECU10,20中の1つである送信データがメインデータとして含まれるデータフレームを、通信バス12を介して送信する。
制御部55は、データ量が閾値未満であると判定した場合(S51:NO)、又は、ステップS54を実行した後、データ量調整処理を終了する。
【0125】
制御部55は、第2アプリケーションデータに係るデータ量調整処理を、第1アプリケーションデータに係るデータ量調整処理と同様に実行する。
【0126】
制御部55は、第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータに係るデータ量調整処理を実行する。従って、制御部55が第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータ中の少なくとも1種類のデータについて、一時記憶部52に記憶されているデータのデータ量が閾値以上であると判定したと仮定する。この場合、4つのイーサネット通信部51a,51b中の少なくとも1つは、第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータの中で、データ量が閾値以上であると判定されたデータの送信元である高機能ECUに休止フレームを送信する。
【0127】
2つのデータ量調整処理、即ち、第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータに係る2つの閾値は相互に異なっている。従って、2つのデータ量調整処理に係る2つの閾値は、同一ではなく、各別に適宜設定されている。また、第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータについて、候補時間及び受信回数の関係は同一ではない。
【0128】
図16は、第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータに係る候補時間の説明図である。
図16には、第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータ夫々に係る受信回数及び候補時間の関係が示されている。
図16に示すように、第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータ夫々について、受信回数が多い程、候補時間が長い。また、共通の受信回数について、第1アプリケーションデータに係る候補時間は、第2アプリケーションデータに係る候補時間よりも長い。更に、第1アプリケーションデータに係る関係を示す直線の傾きは、第2アプリケーションデータに係る関係を示す直線の傾きよりも大きい。
【0129】
中継装置30では、1種類のデータについて、一時記憶部52に記憶されているデータのデータ量が大きい場合、4つの高機能ECU10,20の中で、この種類のデータの送信元である高機能ECUに休止フレームを送信する。これにより、4つの高機能ECU10,20の中で、データ量が大きい種類のデータを送信する高機能ECUは、通信線13,23を介した送信を休止し、通信バス12,22を介した送信を行う。これにより、所要時間が短いデータの送信が実現され、データフレームが効率的に送信される。
【0130】
また、制御部55は、休止フレームの休止時間データが示す休止時間、即ち、4つの高機能ECU10,20夫々が通信線13,23中の1つを介した送信を休止する休止時間を受信回数に基づいて適切に決定する。
【0131】
なお、実施形態2において、データの種類の数は、2に限定されず、3以上であってもよい。この場合、K(K:3以上の整数)個のデータ量調整処理、即ち、N種類のデータに係るK個の閾値中の2つは相互に異なっている。K個の閾値は、同一ではなく、各別に適宜設定される。K個のアプリケーションプログラム夫々は4つの高機能ECU10,20中の1つによって実行される。全種類のデータに係る閾値は同一であってもよい。
【0132】
また、4つの高機能ECU10,20中の1つが、複数種類のデータを含むデータフレームを送信してもよい。この場合、中継装置30は、送信を休止するデータの種類を示す休止フレームを、複数種類のデータを送信する高機能ECUに送信してもよい。例えば、高機能ECU10が第1アプリケーションデータ及び第2アプリケーションデータを送信する構成であると仮定する。中継装置30のイーサネット通信部51aは、第1アプリケーションデータを示す休止フレームを高機能ECU10に送信する。高機能ECU10は、第1アプリケーションデータについて、通信線13を介した送信を停止して通信バス12を介した送信を行い、第2アプリケーションデータについて、通信線13を介した送信を継続する。
【0133】
実施形態1,2において、高機能ECU10,20夫々の数は、2に限定されず、1又は3以上であってもよい。高機能ECU10,20の総数は、4に限定されず、2、3又は5以上であってもよい。通信線13の数は、高機能ECU10の数と同じである。通信線23の数は、高機能ECU20の数と同じである。第1通信経路の数は、通信線13,23の総数と同じである。
【0134】
更に、中継装置30は、2つの通信バス12,22中の1つを介してCAN用のデータフレームを受信した場合、受信したデータフレームのメインデータを含むイーサネット用のデータフレームを生成し、生成したデータフレームを4つの通信線13,23中の1つを介して送信してもよい。また、中継装置30は、4つの通信線13,23中の1つを介してイーサネット用のデータフレームを受信した場合、受信したデータフレームのメインデータを含むCAN用のデータフレームを生成し、生成したデータフレームを2つの通信バス12,22中の1つを介して送信してもよい。
【0135】
更に、通信バス12,22夫々を介した通信で用いられるプロトコルは、CAN用のプロトコルに限定されず、通信バスで用いることが可能なプロトコルであればよい。同様に、通信線13,23夫々を介した通信で用いられるプロトコルは、イーサネット用のプロトコルに限定されず、他のプロトコルであってもよい。
【0136】
また、休止時間は、受信回数に応じて変動しない一定の時間であってもよい。更に、休止時間が経過したか否かを判定するための計時は、高機能ECU10,20によってではなく、中継装置30によって行われてもよい。この場合、中継装置30は、休止時間データが除かれた休止フレームと、通信線13,23中の1つを介した通信の再開を指示する再開フレームとを高機能ECU10,20に送信する。高機能ECU10,20夫々は、休止フレームを受信した場合、通信線13,23中の1つを介した送信を休止し、送信先が自装置を除く3つの高機能ECU10,20中の1つであるメインデータを通信バス12,22中の1つを介して送信する。高機能ECU10,20夫々は、再開フレームを受信した場合、通信線13,23中の1つを介した送信を再開する。また、中継装置30に接続される通信バスの数は、2に限定されず、3以上であってもよい。
【0137】
開示された実施形態1,2はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0138】
10,20 高機能ECU
11,21 低機能ECU
12,22 通信バス
13,23 通信線
30 中継装置
40,50a,50b CAN通信部
41 イーサネット通信部
42,52 一時記憶部
43 タイマ
44,54 主記憶部
45 制御部
46,56 内部バス
51a,51b イーサネット通信部(第1送信部、第2送信部の一部)
53 時計部
55 制御部(削除部、データ量判定部、決定部)
100 車両
A1,A2 記憶媒体
L1,L2 直線
N 通信システム
P1,P2 コンピュータプログラム