IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図1
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図2
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図3
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図4
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図5
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図6A
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図6B
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図7
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図8
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図9
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図10
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図11
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図12
  • 特許-ハイブリッド車両の駆動制御システム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の駆動制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/26 20060101AFI20230328BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20230328BHJP
   B60W 20/12 20160101ALI20230328BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20230328BHJP
   B60W 20/14 20160101ALI20230328BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20230328BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20230328BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230328BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
B60W10/26 900
B60K6/44 ZHV
B60W20/12
B60W20/13
B60W20/14
B60L3/00 S
B60L7/14
B60L15/20 J
G01C21/26 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018235028
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097252
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 英理
(72)【発明者】
【氏名】武田 健
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-099223(JP,A)
【文献】特開平11-008909(JP,A)
【文献】特開2000-333305(JP,A)
【文献】特開2018-008544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
B60L 1/00-58/40
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用バッテリの充電量を管理可能な充電量管理装置と、
前記充電量管理装置が管理する前記駆動用バッテリの充電量が所定値以上の場合にモータ機能を有する回転電動機を駆動源とする車両のEV走行を可能にするとともに、前記駆動用バッテリの充電量が前記所定値を下回る場合にエンジンを始動する駆動制御装置と、
前記車両の経路上前方に、前記駆動用バッテリの充電量の回復が見込める充電量回復地点を抽出可能な充電量回復地点抽出装置と、
前記駆動用バッテリの充電量が前記所定値を下回る場合であってもEV走行の継続を維持するためのEV走行継続スイッチと、
を備え、
前記駆動制御装置は、
前記EV走行継続スイッチがオン状態にあり、かつ、前記充電量回復地点が抽出された場合に、前記所定値を低下させる制御部を含むこと
を特徴とするハイブリッド車両の駆動制御システム。
【請求項2】
前記充電量回復地点抽出装置は、回生機能を有する回転電動機でエネルギーの回生が見込める回生地点を抽出可能であり、
前記制御部は、前記充電量回復地点が前記回生地点である場合に、前記エネルギーの回生によって前記駆動用バッテリの充電量の回復が見込める充電量に応じて前記所定値を低下させること
を特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動制御システム。
【請求項3】
前記充電量回復地点抽出装置は、前記車両の減速により回生する減速地点と、下り坂により回生する下り坂地点とを抽出可能であり、
前記制御部は、
前記充電量回復地点が前記減速地点のときより前記下り坂地点のときに前記所定値を大きく低下させること
を特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の駆動制御システム。
【請求項4】
前記充電量回復地点抽出装置は、駆動用バッテリの充電が可能な充電設備が設置された地点を抽出可能であり、
前記制御部は、
前記充電量回復地点が駆動用バッテリの充電が可能な充電設備が設置された地点のときに、前記充電量回復地点が前記回生地点のときよりも前記所定値を大きく低下させること
を特徴とする請求項2又は3に記載のハイブリッド車両の駆動制御システム。
【請求項5】
前記駆動制御装置は、
前記駆動用バッテリの充電量が前記所定値を低下させる前の値を下回る場合に、アクセル開度に対応する駆動軸トルクを設定値よりも低下させる駆動軸トルク設定変更部を更に含むこと
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の駆動制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記充電量回復地点が抽出された場合に、前記所定値をエンジン始動に必要な量を上回る充電量に低下させること
を特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のハイブリッド車両の駆動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド車両の駆動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンと駆動用モータを駆動源とするハイブリッド車両の駆動制御装置が開示されている。かかるハイブリッド車両の駆動制御装置は、車両の減速によって発生する回収可能なエネルギーを予測し、車両の進行方向の減速地点の手前において予測されたエネルギーが消費されるように駆動用モータの駆動を制御する。
【0003】
特許文献2には、車両の駆動力を発生させるエンジンとバッテリからの電力を得る駆動用モータの駆動を制御するハイブリット車両の駆動制御装置が開示されている。かかるハイブリッド車両の駆動制御装置は、現在地から目的地までの走行予定ルートに係わる地図情報を参照し、目的地までの間に回生充電を期待できる回生充電期待区間がある場合、該回生充電期待区間までは駆動用モータのみによるモータ走行モードとする走行モード制御手段を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-168743号公報
【文献】特開2015-168370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2が開示するハイブリッド車両の駆動制御装置では、駆動用モータを駆動源とするEV走行中に、駆動用バッテリの充電量が所定値を下回ると、EV走行を継続できない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、モータ機能を有する回転電動機を駆動源とする車両のEV走行中に、駆動用バッテリの充電量が所定値を下回っても、EV走行を継続できるハイブリッド車両の駆動制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システムは、駆動用バッテリの充電量を管理可能な充電量管理装置と、前記充電量管理装置が管理する前記駆動用バッテリの充電量が所定値以上の場合にモータ機能を有する回転電動機を駆動源とする車両のEV走行を可能にするとともに、前記駆動用バッテリの充電量が前記所定値を下回る場合にエンジンを始動する駆動制御装置と、前記車両の経路上前方に、前記駆動用バッテリの充電量の回復が見込める充電量回復地点を抽出可能な充電量回復地点抽出装置と、を備え、前記駆動制御装置は、前記充電量回復地点が抽出された場合に、前記所定値を低下させる制御部を含む。
【0008】
上記(1)の構成によれば、車両の経路上前方に、充電量回復地点が抽出された場合に所定値を低下させるので、ハイブリッド車両は、駆動用バッテリの使用可能な充電量が増えることで、EV走行可能な距離が増えてEV走行を継続できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記充電量回復地点抽出装置は、回生機能を有する回転電動機でエネルギーの回生が見込める回生地点を抽出可能であり、前記制御部は、前記充電量回復地点が前記回生地点である場合に、前記エネルギーの回生によって前記駆動用バッテリの充電量の回復が見込める充電量に応じて前記所定値を低下させる。
【0010】
上記(2)の構成によれば、制御部は、充電量回復地点が回生地点である場合にエネルギーの回生によって駆動用バッテリの充電量の回復が見込める充電量に応じて所定値を低下させる。したがって、例えば、現在位置から回生地点に到着するまでのEV走行に必要な電力量が確保されるように、所定値を低下させれば、ハイブリッド車両は、現在位置から回生地点に到着するまでEV走行を継続できる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記充電量回復地点抽出装置は、前記車両の減速により回生する減速地点と、下り坂により回生する下り坂地点とを抽出可能であり、前記制御部は、前記充電量回復地点が前記減速地点のときより前記下り坂地点のときに前記所定値を大きく低下させる。
【0012】
上記(3)の構成によれば、制御部は、充電量回復地点が減速地点のときより下り坂地点のときに所定値を大きく低下させる。すなわち、充電量回復地点が減速地点のときよりも下り坂の地点のときにエネルギーの回生量が大きいので、制御部は、充電量回復地点が減速地点のときより下り坂地点のときに所定値を大きく低下させることで、ハイブリッド車両は、充電量回復地点が下り坂地点のときに、よりEV走行可能な距離が増える。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、前記充電量回復地点抽出装置は、駆動用バッテリの充電が可能な充電設備が設置された地点を抽出可能であり、前記制御部は、前記充電量回復地点が駆動用バッテリの充電が可能な充電設備が設置された地点のときに、前記充電量回復地点が前記回生地点のときよりも前記所定値を大きく低下させる。
【0014】
上記(4)の構成によれば、制御部は、充電量回復地点が充電設備が設置された地点のときに充電量回復地点が回生地点のときよりも所定値を大きく低下させる。すなわち、充電量回復地点が充電設備が設置された地点のときに、充電量回復地点が回生地点のときよりも充電量を増やすことができるので、制御部は、充電量回復地点が充電設備が設置された地点のときに充電量回復地点が回生地点のときよりも所定値を大きく低下させることで、ハイブリッド車両は、充電量回復地点が充電設備が設置された地点のときに、よりEV走行可能な距離が増える。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)のいずれか一つの構成において、前記駆動制御装置は、前記駆動用バッテリの充電量が前記所定値を低下させる前の値を下回る場合に、アクセル開度に対応する駆動軸トルクを設定値よりも低下させる駆動軸トルク設定変更部を更に含む。
【0016】
上記(5)の構成によれば、駆動軸トルク設定変更部は、駆動用バッテリの充電量が所定値を低下させる前の値を下回る場合にアクセル開度に対応する駆動軸トルクを設定値よりも低下させる。よって、アクセル開度に対応する駆動軸トルク(要求出力)が小さくなり、加速度Gが低下するので、電池出力を低下させることができる。また、アクセル開度に対する駆動軸トルク(要求出力)が小さくなるので、エンジンの始動を抑制できる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)から(5)のいずれか一つの構成において、前記駆動用バッテリの充電量が前記所定値を低下させる前の値を下回る場合であってもEV走行の継続を維持するためのEV走行継続スイッチを更に備え、前記制御部は、前記EV走行継続スイッチがオン状態にあり、かつ、前記充電量回復地点が抽出された場合に、前記所定値を低下させる。
【0018】
上記(6)の構成によれば、制御部は、EV走行継続スイッチがオン状態にあり、かつ、充電量回復地点が抽出された場合に、所定値を低下させる。よって、EV走行継続スイッチがオン状態にあり、充電量回復地点が抽出された場合に、駆動用バッテリの充電量が所定値を下回っても車両のEV走行を継続できる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)のいずれか一つの構成において、前記制御部は、前記充電量回復地点が抽出された場合に、前記所定値をエンジン始動に必要な量を上回る充電量に低下させる。
【0020】
上記(7)の構成によれば、充電量回復地点が抽出された場合に、所定値をエンジン始動に必要な量を上回る充電量に低下させるので、駆動用バッテリにはエンジン始動に必要な充電量が確保される。よって、エンジンが始動できなくなる事態を回避できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、EV走行可能な距離が増えてEV走行を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システムが搭載されるハイブリッド車両の構成を概略的に示す平面模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図5】駆動用バッテリの充電量を概念的に示す図である。
図6A】ハイブリッド車両のEV走行を概念的に示す図である。
図6B】ハイブリッド車両のシリーズ走行を概念的に示す図である。
図7】アクセル開度に関連付けて記憶された駆動軸トルクを示す図である。
図8図2から図4に示したハイブリッド車両の駆動制御システムの制御内容を概略的に示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システムの制御内容を概略的に示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システムの制御内容を概略的に示すフローチャートである。
図11】アクセル開度に関連付けて記憶された駆動軸トルクと、設定値よりも低下させた駆動軸トルクとを示す図である。
図12図3に示したハイブリッド車両の駆動制御システムの制御内容を概略的に示すフローチャートである。
図13図4に示したハイブリッド車両の駆動制御システムの制御内容を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システムが搭載されるハイブリッド車両は、エンジン及びモータ機能を有する回転電動機(駆動用モータ12)を駆動源とする車両であって、車両外部の電源から充電が可能なプラグインハイブリッド車両(PHV,PHEV)が含まれる。ここでは、プラグインハイブリッド車両(PHEV)に搭載されるハイブリッド車両の駆動制御システムを例に説明するが、本発明に係る駆動制御システムが搭載されるハイブリッド車両はプラグインハイブリッド車両(PHEV)に限られるものではない。
【0025】
図1は、本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cが搭載されるハイブリッド車両10の構成を概略的に示す平面模式図である。
【0026】
図1に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cが搭載されるハイブリッド車両10は、エンジン11及び駆動用モータ12と、エンジン11により駆動されるジェネレータ13と、駆動用モータ12に電力を供給するとともに、ジェネレータ13によって発電された電力が供給される駆動用バッテリ14と、エンジン11又は駆動用モータ12で生成された駆動力で駆動される走行装置15と、エンジン11又は駆動用モータ12で生成された駆動力を走行装置15に伝達するトランスアスクル16とを備えている。
【0027】
また、本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cが搭載されるハイブリッド車両10は、エンジン11に供給する燃料を貯留するための燃料タンク17と、駆動用モータ12及びジェネレータ13を制御するモータコントロールユニット18と、エンジン11を制御するエンジンコントロールユニット19(図2から図4参照)とを備えている。
【0028】
また、本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cが搭載されるハイブリッド車両10は、例えば、四輪駆動のハイブリッド車両であって、駆動用モータ12はフロントモータ12Fとリヤモータ12Rとを含み、トランスアスクル16はフロントトランスアスクル16Fとリヤアスクル16Rとを含む。また、モータコントロールユニット18は、フロントモータコントロールユニット18Fとリヤモータコントロールユニット18Rとを含む。
【0029】
図2から図4は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cの構成を概略的に示すブロック図である。
【0030】
図2から図4に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cは、充電量管理装置2、駆動制御装置3及び充電量回復地点抽出装置4を備える。
【0031】
充電量管理装置2は、駆動用バッテリ14の充電量を管理可能である。充電量管理装置2は、例えば、駆動用バッテリ14に設けられた電流センサ(図示せず)からの出力値を積算し、バッテリ容量と残存容量とから充電率を推定することで、駆動用バッテリ14の充電量(State Of Charge(以下「SOC」という)を管理可能である。
【0032】
駆動制御装置3は、充電量管理装置2が管理する駆動用バッテリ14の充電量が所定値以上の場合に駆動用モータ12を駆動源とする走行を可能にする。図5に示すように、駆動用バッテリ14の充電量が所定値以上の場合とは、例えば、駆動用バッテリ14の充電量が通常使用範囲にある場合をいう。駆動用バッテリ14の充電量が通常使用範囲にある場合とは、駆動用バッテリ14を通常使用可能な充電範囲にある場合であり、充電及び放電が可能な範囲にある場合である。図6Aに示すように、駆動用モータ12を駆動源とする走行(以下「EV走行」という)では、エンジン11が停止され、駆動用バッテリ14から駆動用モータ12に電力が供給される。
【0033】
また、駆動制御装置3は、駆動用バッテリ14の充電量が所定値を下回る場合にエンジン11を始動する。駆動用バッテリ14の充電量が所定値を下回る場合とは、例えば、駆動用バッテリ14の充電量が通常使用範囲の下限値を下回る場合である。図5に示すように、駆動用バッテリ14の通常使用範囲の下限値は、例えば、駆動用バッテリ14の充電量を一定に保つために設定された充電量(Charge Sustaining SOC(以下「CSSOC」という))である。エンジン11を始動すると、ジェネレータ13で発電された電力が駆動用モータ12に供給され、駆動用モータ12を駆動源とする走行を可能にする。図6Bに示すように、エンジン11を始動し、ジェネレータ13で発電された電力が駆動用モータ12に供給され、駆動用モータ12を駆動源とする走行(以下「シリーズ走行」という)では、エンジン11が運転され、ジェネレータ13から駆動用モータ12と駆動用バッテリ14とに電力が供給される。
【0034】
また、駆動制御装置3には、アクセルペダル5の踏み込み量(アクセル開度)に関連付けて駆動軸トルクが記憶され(図7参照)、アクセルペダル5の踏み込み量によって駆動軸トルク(出力)が決定される。したがって、アクセルペダル5の踏み込み量によって決定された駆動軸トルクが駆動用バッテリ14の充電量によって出力不能な場合に駆動軸トルク(出力)を賄うべくエンジン11が始動する。すなわち、エンジン11が始動するか否かは、残量SOCがCSSOC以上であるか否かに加え、アクセルペダル5の踏み込み量(アクセル開度)によって決定され、エンジン11は駆動軸トルクが駆動用バッテリ14の充電量によって出力不能な場合に始動する(EV走行からシリーズ走行に移行する)。
【0035】
充電量回復地点抽出装置4は、ハイブリッド車両10の経路上前方に、駆動用バッテリ14の充電量の回復が見込める充電量回復地点(以下「充電量回復地点」という)を抽出可能である。充電量回復地点抽出装置4は、例えば、ハイブリッド車両10の現在位置及び目的地への経路案内が可能であり、ハイブリッド車両10の現在位置から目的地への経路に含まれる駆動用バッテリ14の充電量の回復(充電量の増大)が見込まれる地点を抽出可能である。
【0036】
充電量回復地点は、駆動用バッテリ14の充電量の回復が見込まれる地点であればいかなる地点であってもよく、例えば、回生機能を有する回転電動機でエネルギーの回生が見込まれる地点(回生地点)、及び、充電設備が設置され、駆動用バッテリ14の充電が可能な地点が含まれる。回生機能を有する回転電動機は、ジェネレータ13である。なお、回生機能を有する回転電動機は、駆動用モータ12に回生機能を持たせたものであってもよく、さらに、モータとジェネレータが一体となったモータジェネレータであってもよい。また、回生機能を有する回転電動機とモータ機能を有する回転電動機は同じものであってもよい。回生地点は、例えば、ハイブリッド車両10の減速によるエネルギーの回生が見込まれる地点(減速地点)、及び、ハイブリッド車両10の下り坂の走行によるエネルギーの回生が見込まれる地点(下り坂地点)が含まれる。減速地点は、例えば、車両前方の赤信号にしたがって車両が停止するために減速する地点、車両前方の道路標識(例えば、止まれ)にしたがってハイブリッド車両10が停止するために減速する地点、及び、車両前方の渋滞にしたがってハイブリッド車両10が停止するために減速する地点が含まれる。
【0037】
充電量回復地点抽出装置4は、例えば、カーナビゲーション装置41であり、カーナビゲーション装置41と車載カメラ42を組み合わせたものであってもよい。
【0038】
車両前方の赤信号、車両前方の道路標識、及び、車両前方の渋滞は、例えば、カーナビゲーション装置41のほか、車載カメラ42で撮影された画像に基づいて特定可能であり、車両前方の赤信号、車両前方の道路標識、及び車両前方の渋滞に基づいて車両が停止するために減速する地点が特定される。
【0039】
ハイブリッド車両10の下り坂の走行によるエネルギーの回生が見込まれる地点(下り坂地点)は、例えば、カーナビゲーション装置41に含まれる地図情報に含まれる標高差等によって特定可能である。
【0040】
充電設備が設置されてる地点は、充電設備が設置されている目的地であり、例えば、充電設備が設置されている自宅、勤務先、及び充電スタンドが含まれる。
【0041】
図2から図4に示すように、幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cにおいて、駆動制御装置3は、制御部33を含む。制御部33は、充電量回復地点抽出装置4が充電量回復地点を抽出した場合に、所定値を低下させる。これにより、ハイブリッド車両10は、EV走行可能な距離が増えてEV走行を継続できる。
【0042】
制御部33は、例えば、充電量回復地点が回生地点である場合に、エネルギーの回生によって駆動用バッテリ14の充電量の回復が見込める充電量に応じて所定値を低下させる。したがって、例えば、現在位置から回生地点に到着するまでのEV走行に必要な電力量が確保されるように、所定値を低下させれば、ハイブリッド車両10は、現在位置から回生地点に到着するまでEV走行を継続できる。
【0043】
また、制御部33は、例えば、充電量回復地点が減速地点のときより下り坂地点のときに所定値を大きく低下させる。すなわち、充電量回復地点が減速地点のときよりも下り坂地点のときにエネルギーの回生量が大きいので、制御部33は、充電量回復地点が減速地点のときより下り坂地点のときに所定値を大きく低下させることで、ハイブリッド車両10は、充電量回復地点が下り坂地点のときに、よりEV走行可能な距離が増える。例えば、充電量回復地点が減速地点のときに所定値を低下させた値を第1の所定値とすると、充電量回復地点が下り坂地点のときに所定値を低下させた値を第1の所定値よりも小さな第2の所定値とする(所定値を低下させる前の値>第1の所定値>第2の所定値)。
【0044】
また、制御部33は、例えば、充電量回復地点が充電設備が設置された地点のときに、充電量回復地点が回生地点のときよりも所定値を大きく低下させる。すなわち、充電量回復地点が充電設備が設置された地点のときに、充電量回復地点が回生地点のときよりも充電量を増やすことができるので、制御部33は、充電量回復地点が充電設備が設置された地点のときに充電量回復地点が回生地点のときよりも所定値を大きく低下させることで、ハイブリッド車両10は、充電量回復地点が充電設備が設置された地点のときに、よりEV走行可能な距離が増える。例えば、充電量回復地点が充電設備が設置されたときに所定値を低下させた値を第2の所定値よりも小さな第3の所定値とする(第2の所定値>第3の所定値)。
【0045】
図2から図4に示すように、幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cにおいて、駆動制御装置3は、演算部31、比較部32及び制御部33を含む。
【0046】
演算部31は、緊急発電を開始するまでに使用可能な駆動用バッテリ14の充電量と、ハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまでのEV走行に必要な電力量と、を算出可能である。緊急発電を開始する駆動用バッテリ14の充電量は、駆動用バッテリ14の放電を確保するために発電を開始する充電量である。緊急発電を開始する駆動用バッテリ14の充電量は、アクセルペダル5を踏み込まなくてもエンジン11が始動する充電量であり、ハイブリッド車両10が停車中でもエンジン11が始動する充電量である。したがって、緊急発電を開始する駆動用バッテリ14の充電量はCSSOCよりも少なく(図5参照)、駆動用バッテリ14の充電量が緊急発電を開始する充電量になると、エンジン11を始動し、駆動用バッテリ14の充電量がCSSOCを超えるまでエンジン11の運転を継続する。
【0047】
緊急発電を開始するまでに使用可能な駆動用バッテリ14の充電量は、現在の駆動用バッテリ14の充電量から緊急発電を開始するまでに使用可能な駆動用バッテリ14の充電量である。
【0048】
ハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまでのEV走行に必要な電力量は、例えば、ハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点までの距離と平均電費との積によって算出可能である。
【0049】
比較部32は、演算部31で算出された緊急発電を開始するまでに使用可能な駆動用バッテリ14の充電量と、演算部31で算出された車両の現在位置から充電量回復地点に到着するまでのEV走行に必要な距離と、を比較可能である。
【0050】
制御部33は、比較部32で比較された緊急発電を開始するまでに使用可能な駆動用バッテリ14の充電量が車両の現在位置から充電量回復地点に到着するまでのEV走行に必要な電力量を上回る場合に、通常使用範囲の下限値を設定値よりも低下させる。
【0051】
図8は、図2から図4に示した幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cの制御内容を概略的に示す図である。
【0052】
図8に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cでは、まず、充電量回復地点抽出装置4が充電量回復地点を抽出する(ステップS1)。つぎに、駆動制御装置3の駆動制御装置3の演算部31が、緊急発電を開始するまでに使用可能な駆動用バッテリ14の充電量と、ハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまでのEV走行に必要な電力量と、を算出する(ステップS2,S3)。
【0053】
つぎに、駆動制御装置3の比較部32が、演算部31で算出された緊急発電を開始するまでに使用可能な駆動用バッテリ14の充電量と、演算部31で算出されたハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまでのEV走行に必要な電力量とを比較する(ステップS4)。
【0054】
つぎに、駆動制御装置3の制御部33が、比較部32で比較された緊急発電を開始するまでに使用可能な駆動用バッテリ14の充電量がハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまでのEV走行の電力量を上回る場合(ステップS4:Yes)に、通常使用範囲の下限値を設定値よりも低下させる(ステップS5)。
【0055】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cによれば、駆動用バッテリ14の充電量が通常使用範囲の下限値(設定値)を下回ってもEV走行を継続できる。したがって、例えば、ハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまでのハイブリッド車両10のEV走行に必要な電力量が確保されるように、通常使用範囲の下限値を低下させれば、ハイブリッド車両10は、ハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまでハイブリッド車両10のEV走行を継続できる。
【0056】
本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cでは、制御部33は、充電量回復地点がエネルギーの回生が見込まれる地点の場合に通常使用範囲の下限値を設定値よりも小さく、緊急発電を開始する充電量よりも多い、充電量(値)に低下させる。
【0057】
図9に示すように、例えば、制御部33は、充電量回復地点がハイブリッド車両10の減速によるエネルギー回生地点である場合(ステップS51:Yes,ステップS52:Yes)に通常使用範囲の下限値を設定値よりも小さく、緊急発電を開始させる充電量よりも多い、第1の充電量(値)(図5参照)に低下させる(ステップS53)。
【0058】
したがって、例えば、ハイブリッド車両10の現在位置から減速開始位置に到着するまでのハイブリッド車両10のEV走行に必要な電力量が確保されるように、第1の充電量を設定すれば、ハイブリッド車両10は、ハイブリッド車両の現在位置から減速終了位置(停止位置)に到着するまで車両のEV走行を継続できる。
【0059】
図9に示すように、例えば、制御部33は、充電量回復地点がハイブリッド車両10の下り坂の走行によるエネルギー回生地点である場合(ステップS51:Yes,ステップS52:No)に通常使用範囲の下限値を第1の充電量よりも少なく、緊急発電を開始させる充電量よりも多い、第2の充電量(値)(図5参照)に低下させる(ステップS54)。
【0060】
したがって、例えば、ハイブリッド車両10の現在位置から下り坂の入り口に到着するまでのハイブリッド車両10のEV走行に必要な電力量が確保されるように、第2の充電量を設定すれば、ハイブリッド車両10は、ハイブリッド車両10の現在位置から下り坂の出口に到着するまで車両のEV走行を継続できる。
【0061】
図10に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cでは、制御部33は、充電量回復地点が充電設備が設置され、駆動用バッテリ14の充電が可能な地点の場合(ステップS55:Yes)に通常使用範囲の下限値を緊急発電を開始する充電量(値)(図5参照)に低下させる(ステップS56)。
【0062】
上述した本発明の幾つかの一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cによれば、ハイブリッド車両10は、充電量回復地点が充電設備が設置され、駆動用バッテリ14の充電が可能な地点の場合にハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまでハイブリッド車両10のEV走行を継続できる。
【0063】
ところで、車両出力をPVOUT(kW)、モータ効率をη、ギヤ効率をξとすると、電池出力PBOUT(kW)は数式1で示すことができる。
【数1】
【0064】
駆動力をF,車速をV(km/h)とすると、電池出力PBOUT(kW)は、数式2で示すことができる。
【数2】
【0065】
車両重量をM,加速度をG、走行抵抗をR(N)、重力加速度g(m/s)とすると、電池出力PBOUT(kW)は、数式3で示すことができる。
【数3】
【0066】
転がり抵抗をμr,空気抵抗をμaとすると、電池出力PBOUT(kW)は、数式4で示すことができる。
【数4】
【0067】
よって、電池出力PBOUT(kW)は、数式5で示すことができる。
【数5】
【0068】
よって、加速度Gを低下させれば、電池出力を低下させることができる。また、電池容量は、電池出力と時間の積(電池容量(kWh)=電池出力(kW)×時間(h))であるから加速度Gを低下させれば電池容量も抑えることができる。また、加速度Gを低下させるためには、アクセル開度に対する駆動軸トルクを低下させればよい。
【0069】
本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cは、駆動用バッテリ14の充電量が所定値を低下させる前の値を下回る場合に、アクセル開度に対する駆動トルクを低下させる。駆動用バッテリ14の充電量が所定値を低下させる前の値とは、例えば、駆動用バッテリ14の充電量が通常使用範囲の下限値(設定値)である。
【0070】
図3に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1Bでは、駆動制御装置3は、駆動軸トルク設定変更部34を更に含む。駆動軸トルク設定変更部34は、駆動用バッテリ14の充電量が所定値を低下させる前の値を下回る場合にアクセル開度に対応する駆動軸トルクを設定値よりも低下させる。したがって、例えば、通常使用範囲の下限値(設定値)を下回る場合にアクセル開度に対応する駆動軸トルクを設定値よりも低下させる。例えば、図11に示すように、アクセル開度に対応する駆動軸トルクをアクセル開度に関連づけて記憶された駆動軸トルクの半分に低下させる。
【0071】
上述した駆動軸トルク設定変更部34は、駆動用バッテリ14の充電量が所定値を低下させる前の値を下回る場合に押下されるスイッチ(図示せず)の信号が入力されるものであってもよい。すなわち、駆動軸トルク設定変更部は、スイッチの信号が入力された場合にアクセル開度に対応する駆動軸トルクを設定値よりも低下させるものであってもよい。
【0072】
図12は、図3に示したハイブリッド車両の駆動制御システム1Bの制御内容を概略的に示す図である。
【0073】
図12に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1Bでは、駆動用バッテリ14の充電量が通常使用範囲の下限値を下回るか否かが判断される(ステップS61)。駆動用バッテリ14の充電量が通常使用範囲の下限値(設定値)を下回る場合には、駆動軸トルク設定変更部34がアクセル開度に対応する駆動軸トルクを設定値よりも低下させる(ステップS62)。
【0074】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1Bによれば、アクセル開度に対応する駆動軸トルク(要求出力)が小さくなり、加速度Gが低下するので、電池出力を低下させることができ、電池容量も抑えることができる。また、アクセル開度に対応する駆動軸トルク(要求出力)が小さくなるので、アクセルペダル5を通常よりも大きく踏み込まないと通常の駆動軸トルクを得ることができなくなるが、エンジン11の始動を抑制できる。
【0075】
図4に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1C、更に、EV走行継続スイッチ6を備える。EV走行継続スイッチ6は、駆動用バッテリ14の充電量が所定値を低下させる前の値を下回る場合であってもEV走行の継続を維持するためのスイッチである。駆動用バッテリ14の充電量が所定値を低下させる前の値とは、例えば、駆動用バッテリ14の充電量が通常使用範囲の下限値(設置値)である。
【0076】
本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1Cでは、制御部33は、EV走行継続スイッチ6がオン状態にあり、かつ、充電量回復地点が抽出された場合に、所定値を低下させる。したがって、例えば、制御部33は、EV走行継続スイッチ6がオン状態にあり、かつ、比較部32で比較された緊急発電を開始するまでに使用可能な駆動用バッテリ14の充電量が車両の現在位置から充電量回復地点に到着するまでのEV走行に必要な電力量を上回る場合に、通常使用範囲の下限値を低下させる。
【0077】
図13は、図4に示したハイブリッド車両の駆動制御システム1Cの制御内容を概略的に示す図である。
【0078】
図13に示すように、本発明の幾つか実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1Cでは、制御部33は、EV走行継続スイッチ6がオン状態にあり(ステップS71:Yes)、かつ、比較部32で比較された緊急発電を開始するまでに使用可能な駆動用バッテリ14の充電量がハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまでのEV走行に必要な電力を上回る場合(ステップS72:Yes)に、通常使用範囲の下限値を低下させる(ステップS73)。
【0079】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1Cによれば、EV走行継続スイッチ6がオン状態にある場合には、ハイブリッド車両のEV走行中に駆動用バッテリ14の充電量が通常使用範囲の下限値(設定値)を下回ってもハイブリッド車両のEV走行を継続できる。したがって、例えば、ハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまでの車両のEV走行に必要な電力量が確保されるように、通常使用範囲の下限値を低下させれば、ハイブリッド車両10は、ハイブリッド車両10の現在位置から充電量回復地点に到着するまで車両のEV走行を継続できる。
【0080】
本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cでは、制御部33は、充電量回復地点が抽出された場合に、所定値をエンジン始動に必要な電力量(充電量)を上回る充電量に低下させる。エンジン始動に必要な電力量は、例えば、第3の所定値よりも小さな値であり(第3の所定値>エンジン始動に必要な電力量)、バッテリからの放電が禁止されるように設定された電力量であってもよい。エンジン始動に必要な電力量を上回る充電量は、例えば、上述した緊急発電を開始する駆動用バッテリ14の充電量である。したがって、例えば、充電量回復地点が抽出された場合に、駆動用バッテリ14の通常使用範囲の下限値(設定値)を緊急発電を開始する駆動用バッテリ14の充電量に低下させる。エンジン始動に必要な電力量は緊急発電を開始する駆動用バッテリ14の充電量よりも小さな値であり、差が設けられているため(緊急発電を開始する駆動用バッテリ14の充電量>エンジン始動に必要な電力量)、電力量回復地点が抽出された場合に、駆動用バッテリ14の通常使用範囲の下限値を緊急発電を開始する充電量に低下させれば、エンジンが始動できなくなる事態をより確実に回避できる。
【0081】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御システム1A~1Cによれば、充電量回復地点が抽出された場合に、所定値をエンジン始動に必要な電力量を上回る充電量に低下させるので、駆動用バッテリにはエンジン始動に必要な充電量が確保される。よって、エンジンが始動できなくなる事態を回避できる。
【0082】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0083】
1A,1B,1C ハイブリッド車両の駆動制御システム
2 充電量管理装置
3 駆動制御装置
31 演算部
32 比較部
33 制御部
34 駆動軸トルク設定変更部
4 充電量回復地点抽出装置
41 カーナビゲーション装置
42 車載カメラ
5 アクセルペダル
6 EV走行継続スイッチ
10 ハイブリッド車両
11 エンジン
12 駆動用モータ
12F フロントモータ
12R リヤモータ
13 ジェネレータ
14 駆動用バッテリ
15 走行装置
16 トランスアスクル
16F フロントトランスアスクル
16R リヤトランスアスクル
17 燃料タンク
18 モータコントロールユニット
18F フロントモータコントロールユニット
18R リヤモータコントロールユニット
19 エンジンコントロールユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13