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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】ロック治具
(51)【国際特許分類】
   H02B 3/00 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
H02B3/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019016410
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020124095
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】杉本 修治
(72)【発明者】
【氏名】半田 圭一
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-287342(JP,A)
【文献】特開昭63-160609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具本体と、複数の位置固定部材と、を備えたロック治具であって、
前記治具本体は、
長さ方向における途中部分で直角に屈曲したアングル形状をなし、屈曲により内側に位置する面において長さ方向に沿って突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなす第1の係合部と、
前記治具本体のアングル形状をなす2面にそれぞれ設けられて当該治具本体を板厚方向に貫通し前記長さ方向に長い第1の貫通孔と、
を備え、
前記位置固定部材は、
板形状をなし、一面において一方向に沿って前記第1の係合部と同一ピッチで突出部と没入部とが交互に出現する波形形状をなす第2の係合部と、
板厚方向に貫通する第2の貫通孔と、
を備えたことを特徴とするロック治具。
【請求項2】
前記第1の係合部および前記第2の係合部は、先端側ほど尖り根元側ほど幅広となる略三角形状をなす突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなすことを特徴とする請求項1に記載のロック治具。
【請求項3】
前記第1の係合部および前記第2の係合部は、先端側と根元側とが同寸法の矩形状をなす突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなすことを特徴とする請求項1に記載のロック治具。
【請求項4】
前記位置固定部材は、突出部と没入部との出現方向に直交する方向における2カ所で屈曲した略コの字形状をなし、屈曲により内側に位置する面における少なくとも中央の面に前記第2の係合部を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のロック治具。
【請求項5】
前記治具本体は、少なくとも一方の側面に前記第1の係合部を備え、
前記位置固定部材は、屈曲により内側に位置する面であって、前記治具本体における前記第1の係合部が設けられた側面に対向する面に前記第2の係合部を備えたことを特徴とする請求項4に記載のロック治具。
【請求項6】
前記治具本体は、両側面に前記第1の係合部を備え、
前記位置固定部材は、屈曲により内側に位置するすべての面に前記第2の係合部を備えたことを特徴とする請求項4に記載のロック治具。
【請求項7】
前記第2の貫通孔は、固定対象とするスイッチギアに設けられた、固定用の孔の内径寸法よりも大きく、当該固定用の孔に螺合されるボルトの頭部の直径寸法よりも小さい寸法で開口することを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載のロック治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチギアの位置を固定するロック治具に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチギアは、ハウジング内に、遮断器・避雷器・計器用変圧器・所内変圧器などの各種の機器を備えている。スイッチギアが備える各種の機器は、ハウジングから引き出し可能に収容されており、たとえば、定期点検などに際して、ハウジングから引き出される。スイッチギアが備える各種の機器は、通常運転時にはハウジング内に挿入された挿入位置(通常位置)に位置づけられている。
【0003】
このようなスイッチギアは、各種の機器を挿入位置に位置づけた状態で固定する引出ロック機構を備えている。これにより、各種の機器が不用意にハウジングの外に引き出されることを防止している。従来、大地震などが発生した場合を想定し、引出ロック機構に加えて、L形治具を用いて、スイッチギアが備える各種の機器を、挿入位置に位置づけた状態で固定するようにしていた。
【0004】
このようなL形治具は、スイッチギアに設けられた既設の孔を利用してスイッチギアに固定される。具体的に、L形治具は、L形治具における直角をなす2面のうちの一方の面に設けられた貫通孔をスイッチギアに設けられた既設の孔にあわせるとともに、2面のうちの他方の面に設けられた貫通孔をスイッチギアを下方から支持するチャンネルベースに設けられた既設の孔にあわせ、各貫通孔および既設の孔にそれぞれボルトを螺合させることによってスイッチギアに取り付けられる。これにより、スイッチギアが備える各種の機器を、挿入位置に位置づけた状態で固定するようにしていた。
【0005】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、多角形状をなす首部(角根部)を有する丸頭角根ボルトと、丸頭角根ボルトの軸部に螺合されるナットと、丸頭角根ボルトの軸部の長さ方向に突出する係止部を備えた外れ防止板と、を備えた固定治具、および、だるま孔を有し、丸頭角根ボルトにおける頭部とナットとの間に挟持される板材によって実現される配電盤用転倒防止具を用いて、係止部をだるま孔に係合させた状態でナットをボルトに螺合させることによって、作業者の手が入らないような場所であっても配電盤などの運搬時における転倒事故を防止するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-121257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スイッチギアに設けられた既設の孔の位置は、機種や型式などの違いに起因してスイッチギアごとに異なっているため、上述したように既設の孔を利用してL形治具を取り付ける従来の技術は、スイッチギアごとに既設の孔の位置にあわせたL形治具を用いなければならず、煩わしいという問題があった。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、既設の孔を利用して、確実にスイッチギアを固定することができるロック治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるロック治具は、長さ方向における途中部分で直角に屈曲したアングル形状をなし、屈曲により内側に位置する面において長さ方向に沿って突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなす第1の係合部と、前記治具本体のアングル形状をなす2面にそれぞれ設けられて当該治具本体を板厚方向に貫通し前記長さ方向に長い第1の貫通孔と、を備えた治具本体と、板形状をなし、一面において一方向に沿って前記第1の係合部と同一ピッチで突出部と没入部とが交互に出現する波形形状をなす第2の係合部と、板厚方向に貫通する第2の貫通孔と、を備えた複数の位置固定部材と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるロック治具は、上記の発明において、前記第1の係合部および前記第2の係合部が、先端側ほど尖り根元側ほど幅広となる略三角形状をなす突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなすことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるロック治具は、上記の発明において、前記第1の係合部および前記第2の係合部が、先端側と根元側とが同寸法の矩形状をなす突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなすことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるロック治具は、上記の発明において、前記位置固定部材が、突出部と没入部との出現方向に直交する方向における2カ所で屈曲した略コの字形状をなし、屈曲により内側に位置する面における少なくとも中央の面に前記第2の係合部を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるロック治具は、上記の発明において、前記治具本体が、少なくとも一方の側面に前記第1の係合部を備え、前記位置固定部材が、屈曲により内側に位置する面であって、前記治具本体における前記第1の係合部が設けられた側面に対向する面に前記第2の係合部を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるロック治具は、上記の発明において、前記治具本体が、両側面に前記第1の係合部を備え、前記位置固定部材が、屈曲により内側に位置するすべての面に前記第2の係合部を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるロック治具は、上記の発明において、前記第2の貫通孔が、固定対象とするスイッチギアに設けられた、固定用の孔の内径寸法よりも大きく、当該固定用の孔に螺合されるボルトの頭部の直径寸法よりも小さい寸法で開口することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明にかかるロック治具によれば、既設の孔を利用して、確実にスイッチギアを固定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明にかかる実施の形態のロック治具の構成を示す説明図(その1)である。
図2】この発明にかかる実施の形態のロック治具の構成を示す説明図(その2)である。
図3】この発明にかかる実施の形態のロック治具の構成を示す説明図(その3)である。
図4】この発明にかかる実施の形態のロック治具の使用例を示す説明図である。
図5】この発明にかかる実施の形態のロック治具の別の使用例を示す説明図である。
図6】この発明にかかる実施の形態2のロック治具の構成を示す説明図(その1)である。
図7】この発明にかかる実施の形態2のロック治具の構成を示す説明図(その2)である。
図8】この発明にかかる実施の形態2のロック治具の構成を示す説明図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるロック治具の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
<実施の形態1>
(ロック治具の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態1のロック治具の構成について説明する。図1図3は、この発明にかかる実施の形態1のロック治具の構成を示す説明図である。図1においては、この発明にかかる実施の形態1のロック治具を分解した斜視状態を示している。図2においては、この発明にかかる実施の形態1のロック治具の一部を示している。図3においては、この発明にかかる実施の形態1のロック治具の外観を示している。
【0020】
図1図3において、この発明にかかる実施の形態1のロック治具100は、治具本体110と、位置固定部材120と、ボルト130と、を備えている。治具本体110は、長さ方向における途中部分で直角に屈曲したアングル形状をなす。以降、この実施の形態1においては、治具本体110において、屈曲部分から一方側に延出する部分を第1の本体部111、屈曲部分から他方側に延出する部分を第2の本体部112として説明する。
【0021】
治具本体110において、第1の本体部111と第2の本体部112とは、それぞれ、略平板形状をなす。治具本体110において、屈曲することにより内側に位置する2面、および、外側に位置する2面は、いずれも直角をなしている。
【0022】
治具本体110は、第1の係合部113を備えている。第1の係合部113は、治具本体110において内側に位置する2面に、それぞれ設けられている。第1の係合部113は、直角をなす2面が連続する方向(以下、適宜「治具本体110の長さ方向」という)に沿って、突出部(山)と没入部(谷)とが交互に出現する波形形状をなす。
【0023】
第1の係合部113における波形形状は、治具本体110の長さ方向に沿って一定のピッチで、突出部と没入部とが繰り返して交互に出現する。また、第1の係合部113における波形形状は、突出部の高さおよび没入部の深さが一定に揃えられている。第1の係合部113における突出部および没入部は、直角をなす2面の各面に平行であって治具本体110の長さ方向に直交する方向(以下、適宜「治具本体110の幅方向」という)に沿って一定の幅で設けられている。
【0024】
第1の係合部113は、幅方向に沿って治具本体110を見た場合に、先端側ほど尖り根元側ほど幅広となる略三角形状をなす突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなす。突出部の先端は没入部の開口縁をなし、突出部の根本は没入部の底をなす。このため、没入部は、底側ほど幅が狭くなり開口側ほど幅広の溝をなす。
【0025】
治具本体110において、第1の本体部111および第2の本体部112には、それぞれ、板厚方向に沿って治具本体110を貫通する第1の貫通孔114が設けられている。第1の貫通孔114は、第1の本体部111と第2の本体部112とが連続する方向に沿って長い長孔形状をなす。
【0026】
位置固定部材120は、所定の厚さの板形状をなす。位置固定部材120は、4辺によって囲まれた方形状をなし、相対する2組の辺のうち少なくとも1組の辺の長さ寸法が、治具本体110の幅寸法と同等とされている。位置固定部材120の一面には、第2の係合部121が設けられている。第2の係合部121は、位置固定部材120の一面において、第1の係合部113における第1の係合部と同一ピッチで突出部と没入部とが一方向に沿って交互に出現する波形形状をなす。
【0027】
位置固定部材120には、当該位置固定部材120を板厚方向に貫通する第2の貫通孔122が設けられている。第2の貫通孔122は、たとえば、ロック治具100による固定対象とするスイッチギア(図4および図5を参照)に既設の孔の内径寸法と同寸法、あるいは、既設の孔の内径寸法よりも大きくボルト130の頭部131の直径寸法よりも小さい寸法で開口している。
【0028】
(ロック治具100の使用例)
つぎに、この発明にかかる実施の形態1のロック治具100の使用例について説明する。図4は、この発明にかかる実施の形態1のロック治具100の使用例を示す説明図である。図4に示すように、この発明にかかる実施の形態1のロック治具100は、スイッチギア400の位置を固定するために用いられる。
【0029】
スイッチギア400は、ハウジング401内に、変電所から引き込まれた電力を供給する電力ケーブルや、当該電力ケーブルに接続される遮断器・避雷器・計器用変圧器・所内変圧器などの各種の機器を備えている(いずれも図示を省略する)。ハウジング401の内部は、隔壁などによって電力ケーブルや変圧器を収容するケーブル室、遮断器を収容する遮断器室などのように複数に区画されている。
【0030】
スイッチギア400が備える各種の機器は、ハウジング401から引き出し可能に収容されている。スイッチギア400が備える各種の機器は、たとえば、定期点検などに際して、ハウジング401から引き出される。ハウジング401には、スイッチギア400が備える機器を引き出す際に把持するハンドル402が設けられている。
【0031】
スイッチギア400が備える各種の機器のうち、ハウジング401から引き出し可能な機器の下側には、各種の機器をハウジング401から引き出すことを想定し、下側にキャスターなどが設けられている。このため、たとえば、大地震などが発生して、各種の機器に対してハウジング401の外に押し出す外力が加えられた場合、各種の機器がハウジング401から飛び出してしまうことが想定される。各種の機器は、重量が大きいため、一旦動き始めてしまうと容易に抑えることは難しい。
【0032】
また、スイッチギア400においては既設の引出ロック機構を備えたものがあるが、このような既設の引出ロック機構は、各種の機器が動いてしまうほどの大地震などを想定したものではなく、既設の引出ロック機構のみによって各種の機器の移動を抑えようとしても、一旦動き出してしまった各種の機器を抑えることは難しく、破損してしまうおそれがあった。この発明にかかる実施の形態1のロック治具100は、既設の引出ロック機構を備えていないスイッチギア400の他、上記のように、既設の引出ロック機構を備えたスイッチギア400にも適用することができる。
【0033】
具体的には、ロック治具100は、たとえば、図4に示すようにしてスイッチギア400に取り付けて使用する。具体的には、まず、治具本体110の外側に位置する2面のうちの一方の面をスイッチギア400の正面に当接させ、2面のうちの他方の面をスイッチギア400を支持するチャンネルベース403に当接させる。
【0034】
つぎに、第1の本体部111に設けられた第1の係合部113および第2の本体部112に設けられた第1の係合部113に、それぞれ、位置固定部材120に設けられた第2の係合部121を噛み合わせるようにして、治具本体110および位置固定部材120を重ね合わせる。そして、治具本体110および位置固定部材120を重ね合わせた状態で、治具本体110および位置固定部材120を貫通するようにして、スイッチギア400およびチャンネルベース403に設けられた既設の孔にボルト130を螺合させる。
【0035】
ボルト130を螺合させる際には、第1の貫通孔114の長さ方向に沿って、位置固定部材120を貫通させた状態のボルト130を、当該ボルト130が既設の孔に螺合できる位置に移動させる。第1の貫通孔114が長孔形状をなすため、第1の貫通孔114内においてボルト130を無段階に移動させることができる。これにより、既設の孔の位置にかかわらず、当該既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0036】
第2の貫通孔122を、スイッチギア400に既設の孔の内径寸法よりも大きく、ボルト130の頭部131の直径寸法よりも小さい寸法で開口させることにより、第1の係合部113と第2の係合部121とのかみ合い位置によって第2の貫通孔122の中心位置とボルト130の軸心位置とが一致しない場合にも、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0037】
この発明にかかる実施の形態1のロック治具100は、ハウジング401内から機器を引き出す構造のスイッチギア400の固定に用いるものに限らない。図5は、この発明にかかる実施の形態1のロック治具100の別の使用例を示す説明図である。この発明にかかる実施の形態1のロック治具100は、図5に示すように、各種の機器を収容するハウジング401における正面に、開閉扉501を備えた構成のスイッチギア400に使用してもよい。
【0038】
このようなスイッチギア400においては、開閉扉501の正面側であって、開閉扉501の正面とスイッチギア400の設置面502とがなす角部に、ロック治具100を取り付ける。具体的には、上述と同様に、まず、治具本体110の外側に位置する2面のうちの一方の面をスイッチギア400における開閉扉501の正面に当接させ、2面のうちの他方の面をスイッチギア400の設置面502に当接させる。
【0039】
つぎに、第1の本体部111に設けられた第1の係合部113および第2の本体部112に設けられた第1の係合部113に、それぞれ、位置固定部材120に設けられた第2の係合部121を噛み合わせるようにして、治具本体110および位置固定部材120を重ね合わせる。そして、治具本体110および位置固定部材120を重ね合わせた状態で、治具本体110および位置固定部材120を貫通するようにして、スイッチギア400およびスイッチギア400の設置面502に設けられた既設の孔にボルト130を螺合させる。
【0040】
ボルト130を螺合させる際には、第1の貫通孔114の長さ方向に沿って、位置固定部材120を貫通させた状態のボルト130を、当該ボルト130が既設の孔に螺合できる位置に移動させる。第1の貫通孔114が長孔形状をなすため、第1の貫通孔114内においてボルト130を無段階に移動させることができる。これにより、既設の孔の位置にかかわらず、当該既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0041】
第2の貫通孔122を、スイッチギア400に既設の孔の内径寸法よりも大きく、ボルト130の頭部131の直径寸法よりも小さい寸法で開口させることにより、第1の係合部113と第2の係合部121とのかみ合い位置によって第2の貫通孔122の中心位置とボルト130の軸心位置とが一致しない場合にも、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0042】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態1の形態のロック治具100は、長さ方向における途中部分で直角に屈曲したアングル形状をなし、屈曲により内側に位置する面において長さ方向に沿って突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなす第1の係合部113と、治具本体110のアングル形状をなす2面にそれぞれ設けられて当該治具本体110を板厚方向に貫通し長さ方向に長い第1の貫通孔114と、を備えた治具本体110と、板形状をなし、一面において一方向に沿って第1の係合部と同一ピッチで突出部と没入部とが交互に出現する波形形状をなす第2の係合部121と、板厚方向に貫通する第2の貫通孔122と、を備えた複数の位置固定部材120と、を備えたことを特徴としている。
【0043】
この発明にかかる実施の形態1のロック治具100によれば、治具本体110の外側に位置する2面のうちの一方の面をスイッチギア400の正面に当接させ、2面のうちの他方の面をスイッチギア400を支持するチャンネルベース403に当接させ、第1の本体部111に設けられた第1の係合部113および第2の本体部112に設けられた第1の係合部113に、それぞれ、位置固定部材120に設けられた第2の係合部121を噛み合わせた状態で、治具本体110および位置固定部材120を貫通するようにして、スイッチギア400およびチャンネルベース403に設けられた既設の孔にボルト130を螺合させることによって、スイッチギア400を固定することができる。
【0044】
第1の貫通孔114は治具本体110の長さ方向に長い長孔形状をなすため、第1の貫通孔114の長さ方向に沿ってボルト130を移動させることができ、これによってスイッチギア400に設けられた既設の孔の位置に確実にボルト130を螺合することができる。これにより、既設の孔の位置にかかわらず、当該既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0045】
また、治具本体110の長さ方向に沿って突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する第1の係合部113と第2の係合部121とを噛み合わせた状態でボルト130を螺合させることにより、治具本体110に対する位置固定部材120の位置を確実に固定することができる。これにより、ボルト130を螺合した後に、当該ボルト130と治具本体110との位置関係がずれることを防止し、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0046】
また、第1の係合部113および第2の係合部121においては、突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現するため、第2の貫通孔122に挿入されたボルト130を第1の貫通孔114内において移動させることにともなって、位置固定部材120の位置を移動させた場合にも、第1の係合部113と第2の係合部121とを噛み合わせた状態でボルト130を螺合させることができる。これにより、ボルト130を螺合した後に、当該ボルト130と治具本体110との位置関係がずれることを確実に防止し、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0047】
そして、これにより、スイッチギア400における既設の孔に位置を合わせたL形治具の作成が不要となり、同じ形状のロック治具100を種類やサイズの異なる複数のスイッチギア400に適用することができるため、ロック治具100の製造や管理にかかるコストを抑えることができる。
【0048】
また、この発明にかかる実施の形態1のロック治具100は、第1の係合部113および第2の係合部121が、先端側ほど尖り根元側ほど幅広となる略三角形状をなす突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなすことを特徴としている。
【0049】
この発明にかかる実施の形態1のロック治具100によれば、第1の係合部113と第2の係合部121とを噛み合わせた状態において、治具本体110と位置固定部材120とを互いに平面で接触させ、たとえば、位置固定部材120に対して、治具本体110の長さ方向に沿って位置をずらす方向への外力が加えられた場合に、当該外力を接触面を介して治具本体110に伝達し、位置固定部材120を治具本体110へ押しつけるように作用させることができる。これにより、ボルト130を螺合した後に、当該ボルト130と治具本体110との位置関係がずれることを確実に防止し、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0050】
また、この発明にかかる実施の形態1のロック治具100によれば、突出部と没入部とを略三角形状とすることにより、第1の係合部113および第2の係合部121を、簡易な形状によって実現することができる。これにより、ロック治具100の製造の容易化を図ることができる。
【0051】
<実施の形態2>
つぎに、この発明にかかる実施の形態2のロック治具について説明する。実施の形態2においては、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。図6図8は、この発明にかかる実施の形態2のロック治具の構成を示す説明図である。図6においては、この発明にかかる実施の形態2のロック治具を分解した斜視状態を示している。図7においては、この発明にかかる実施の形態2のロック治具の一部を示している。図8においては、この発明にかかる実施の形態2のロック治具の外観を示している。
【0052】
図6図8において、この発明にかかる実施の形態2のロック治具600は、治具本体110と位置固定部材620とを備えている。治具本体110は、両側面に第1の係合部113を備えている。両側面に設けられた第1の係合部113は、治具本体110の幅方向において、内側に位置する面に設けられた第1の係合部113がなす波形形状に連続している。
【0053】
位置固定部材620は、突出部と没入部との出現方向に直交する方向における2カ所で屈曲した略コの字形状をなす。位置固定部材620は、略コの字形状に屈曲した形状により内側に位置する面のすべての面に、第2の係合部121を備えている。位置固定部材620が備える第2の係合部121は、略コの字形状をなす3面が連なる方向に沿って連続している。
【0054】
このようなロック治具600は、実施の形態1のロック治具600と同様にして、スイッチギア400に取り付けて使用することができる。具体的には、まず、治具本体110の外側に位置する2面のうちの一方の面をスイッチギア400の正面に当接させ、2面のうちの他方の面をスイッチギア400を支持するチャンネルベース403に当接させる。
【0055】
つぎに、第1の本体部111に設けられた第1の係合部113および第2の本体部112に設けられた第1の係合部113に、それぞれ、位置固定部材620に設けられた第2の係合部121を噛み合わせるようにして、治具本体110および位置固定部材620を重ね合わせる。このとき、位置固定部材620を、治具本体110に被せるようにして、当該治具本体110に取り付ける。
【0056】
そして、治具本体110および位置固定部材620を重ね合わせた状態で、治具本体110および位置固定部材620を貫通するようにして、スイッチギア400およびチャンネルベース403に設けられた既設の孔にボルト130を螺合させる。第1の貫通孔114が長孔形状をなすため、第1の貫通孔114内においてボルト130を無段階に移動させることができ、既設の孔の位置にかかわらず、当該既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0057】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態2のロック治具600は、位置固定部材620が、突出部と没入部との出現方向に直交する方向における2カ所で屈曲した略コの字形状をなし、屈曲により内側に位置する面における少なくとも中央の面に第2の係合部121を備えたことを特徴としている。
【0058】
この発明にかかる実施の形態2のロック治具600によれば、位置固定部材620を、治具本体110に被せるようにして、当該治具本体110に取り付けることにより、治具本体110に対して、幅方向に沿って位置固定部材620が移動することを防止できる。これにより、ボルト130を螺合した後に、当該ボルト130と治具本体110との位置関係がずれることを一層確実に防止し、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0059】
また、この発明にかかる実施の形態2のロック治具600は、治具本体110が、両側面に第1の係合部113を備え、位置固定部材620が、屈曲により内側に位置するすべての面に第2の係合部121を備えたことを特徴としている。
【0060】
この発明にかかる実施の形態2のロック治具600によれば、治具本体110および位置固定部材620における3面において、第1の係合部113と第2の係合部121とをそれぞれ噛み合わせることができる。これにより、ロック治具600を大型化することなく、第1の係合部113と第2の係合部121とが噛み合う面積を確保することができ、ボルト130を螺合した後に、当該ボルト130と治具本体110との位置関係がずれることを一層確実に防止し、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0061】
上述した実施の形態2においては、屈曲により内側に位置するすべての面に第2の係合部121を備えた位置固定部材620を備えたロック治具600について説明したが、これに限るものではない。この発明にかかるロック治具においては、治具本体110における少なくとも一方の側面に第1の係合部113を備え、位置固定部材620における屈曲により内側に位置する面のうち、治具本体110における第1の係合部113が設けられた側面に対向する面に第2の係合部121を備えた構成であってもよい。
【0062】
このような構成のロック治具においても、治具本体110および位置固定部材620における2面において、第1の係合部113と第2の係合部121とをそれぞれ噛み合わせることができる。これにより、ロック治具を大型化することなく、第1の係合部113と第2の係合部121とが噛み合う面積を確保することができ、ボルト130を螺合した後に、当該ボルト130と治具本体110との位置関係がずれることを一層確実に防止し、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0063】
また、実施の形態2のロック治具600においては、突出部と没入部との出現方向に直交する方向における2カ所で屈曲した略コの字形状をなす位置固定部材620において、屈曲により内側に位置する面における少なくとも中央の面に第2の係合部121を備えていればよい。
【0064】
このような構成のロック治具600によれば、位置固定部材620を、治具本体110に被せるようにして、当該治具本体110に取り付けることにより、治具本体110に対して、幅方向に沿って位置固定部材620が移動することを防止できる。これにより、ボルト130を螺合した後に、当該ボルト130と治具本体110との位置関係がずれることを一層確実に防止し、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0065】
また、上述した実施の形態1および実施の形態2においては、略三角形状をなす突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなす第1の係合部113を備えたロック治具100、600について説明したが、波形形状は、略三角形状をなす突出部と没入部とによって構成されるものに限らない。具体的には、第1の係合部113は、たとえば、先端側と根元側とが同寸法の矩形状をなす突出部と没入部とが同一ピッチで交互に出現する波形形状をなすものであってもよい。
【0066】
このような構成のロック治具によれば、第1の係合部113と第2の係合部121とを噛み合わせた状態において、治具本体110と位置固定部材620とを互いに平面で接触させ、たとえば、位置固定部材620に対して、治具本体110の長さ方向に沿って位置をずらす方向への外力が加えられた場合に、当該外力を接触面を介して治具本体110に伝達し、位置固定部材620を治具本体110へ押しつけるように作用させることができる。これにより、ボルト130を螺合した後に、当該ボルト130と治具本体110との位置関係がずれることを確実に防止し、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【0067】
また、このような構成のロック治具によれば、突出部と没入部とを矩形状とすることにより、加えられた外力の向きにかかわらず当該外力の向きを治具本体110の長さ方向に変え、接触面を介して治具本体110に伝達することができる。これにより、ボルト130を螺合した後に、当該ボルト130と治具本体110との位置関係がずれることを確実に防止し、既設の孔を利用して、確実にスイッチギア400を固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、この発明にかかるロック治具は、スイッチギアの位置を固定するロック治具に有用であり、特に、スライド式のスイッチギアの位置を固定するロック治具に適している。
【符号の説明】
【0069】
100、600 ロック治具
110 治具本体
113 第1の係合部
114 第1の貫通孔
120 位置固定部材
121 第2の係合部
122 第2の貫通孔
130 ボルト
400 スイッチギア
401 ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8