(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】ソレノイド装置
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20230328BHJP
H01F 7/121 20060101ALI20230328BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
H01F7/16 E
H01F7/16 F
F16K31/06 305D
F16K31/06 305E
(21)【出願番号】P 2019018014
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2022-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】倉持 健太
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100517(JP,A)
【文献】特開2011-220401(JP,A)
【文献】特開2002-027723(JP,A)
【文献】特開2004-353774(JP,A)
【文献】特開2000-097361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/16
H01F 7/121
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って貫通した貫通孔を有する筒状のボビンと、
前記ボビンの外周部に巻回されたコイルと、
磁性材からなり、前記貫通孔の軸方向の一端側に配置された筒状のコアと、
磁性材からなり、前記貫通孔の軸方向の他端側に配置され、前記コアに対し磁性的に連続しないで隣り合う筒状のヨークと、
前記コアと前記ヨークとを磁気的に不連続な状態で保持する筒状の樹脂部材とを備え、
前記コアは、軸方向の端部に、外径が軸方向他端側に向かって漸減するテーパ状部で構成され、前記ヨークとの境界部に境界溝を構成する第1傾斜面と、該第1傾斜面よりも軸方向一端側に位置し、周方向に沿ったリング状の第1周方向溝と、前記第1傾斜面から前記第1周方向溝に至り、前記ボビンの軸方向に沿った複数の第1軸方向溝とを有し、
前記樹脂部材は、前記境界溝、前記第1周方向溝および前記第1軸方向溝内に配置され、前記第1傾斜面に密着
し、
前記複数の第1軸方向溝は、前記第1周方向溝の軸方向他端側から前記第1周方向溝を超えて、軸方向に延びることを特徴とするソレノイド装置。
【請求項2】
前記複数の第1軸方向溝は、前記ボビンの軸回りに等間隔に配置されている請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項3】
前記ヨークは、軸方向の端部に、外径が軸方向一端側に向かって漸減するテーパ状部で構成され、前記第1傾斜面とともに前記境界溝を構成する第2傾斜面と、該第2傾斜面よりも軸方向他端側に位置し、周方向に沿った少なくとも1つのリング状の第2周方向溝と、前記第2傾斜面から前記第2周方向溝に至り、前記ボビンの軸方向に沿った複数の第2軸方向溝とを有し、
前記樹脂部材は、前記第2周方向溝および前記第2軸方向溝内に配置され、前記第2傾斜面に密着する請求項1から
2のいずれか1項に記載のソレノイド装置。
【請求項4】
前記複数の第2軸方向溝は、前記ボビンの軸回りに等間隔に配置されている請求項
3に記載のソレノイド装置。
【請求項5】
前記複数の第2軸方向溝は、前記第2周方向溝の軸方向一端側から前記第2周方向溝を超えて、軸方向に延びる請求項
3または
4に記載のソレノイド装置。
【請求項6】
前記ボビンの軸方向に沿った前記第1傾斜面と前記第1周方向溝との距離は、前記ボビンの軸方向に沿った前記第2傾斜面と前記第2周方向溝との距離よりも長い請求項
3から
5のいずれか1項に記載のソレノイド装置。
【請求項7】
前記樹脂部材は、前記コアの前記第1傾斜面と前記第1周方向溝との間の部分が一部突出する少なくとも1つの第1貫通孔と、前記ヨークの前記第2傾斜面と前記第2周方向溝との間の部分が一部突出する少なくとも1つの第2貫通孔とを有する請求項
3から
6のいずれか1項に記載のソレノイド装置。
【請求項8】
前記樹脂部材は、前記第2周方向溝および前記第2軸方向溝内を満たす請求項
3から
7のいずれか1項に記載のソレノイド装置。
【請求項9】
前記樹脂部材は、前記境界溝、前記第1周方向溝および前記第1軸方向溝内を満たす請求項1から
8のいずれか1項に記載のソレノイド装置。
【請求項10】
前記樹脂部材は、前記境界溝に位置する部分の内周部に、前記コアの内側の空間と、前記ヨークの内側の空間とに繋がる内側溝を有する請求項1から
9のいずれか1項に記載のソレノイド装置。
【請求項11】
軸方向に沿って貫通した貫通孔を有する筒状のボビンと、
前記ボビンの外周部に巻回されたコイルと、
磁性材からなり、前記貫通孔の軸方向の一端側に配置された筒状のコアと、
磁性材からなり、前記貫通孔の軸方向の他端側に配置され、前記コアに対し磁性的に連続しないで隣り合う筒状のヨークと、
前記コアと前記ヨークとを磁気的に不連続な状態で保持する筒状の樹脂部材とを備え、
前記コアは、軸方向の端部に、外径が軸方向他端側に向かって漸減することでテーパ状に形成され、前記ヨークとの境界部に境界溝を構成する第1傾斜面を有し、
前記ヨークは、軸方向の端部に、外径が軸方向一端側に向かって漸減するテーパ状部で構成され、前記第1傾斜面とともに前記境界溝を構成する第2傾斜面と、該第2傾斜面よりも軸方向他端側に位置し、周方向に沿った少なくとも1つのリング状の第2周方向溝と、前記第2傾斜面から前記第2周方向溝に至り、前記ボビンの軸方向に沿った複数の第2軸方向溝とを有し、
前記樹脂部材は、前記境界溝、前記第2周方向溝および前記第2軸方向溝内に配置され、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面に密着し
、前記境界溝に位置する部分の内周部に、前記コアの内側の空間と、前記ヨークの内側の空間とに繋がる内側溝を有することを特徴とするソレノイド装置。
【請求項12】
前記コア、前記ヨークおよび前記樹脂部材は、それぞれ、円筒状である請求項1から1
1のいずれか1項に記載のソレノイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車載用電磁弁として、特許文献1に記載の電磁弁が知られている。特許文献1に記載の電磁弁は、コイルボビンと、コイルボビンの外側に巻回されたコイルと、コイルボビンの内側に配置された固定コアと、コイルボビンの内側で、固定コアの一端側に配置されたヨークとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に記載の電磁弁では、固定コアは、特に外周面に凹凸がない円筒状であり、コイルボビンの内側に単に挿入されているのみである。これと同様に、ヨークも、特に外周面に凹凸がない円筒状であり、コイルボビンの内側に単に挿入されているのみである。このような構成では、例えば自動車の振動の程度によっては、コイルボビン内で固定コアとヨークとが位置ズレを起こすおそれがある。この場合、固定コアとヨークとの同軸性が確保されず、ヨーク内に支持された可動コアを円滑に駆動させることができない。
【0005】
また、通電状態のコイルから生じる磁力によって可動コアを駆動させるときに、ヨークが位置ズレを起こした場合、ヨークとコイルと間の磁気回路を十分に生じさせることができず、可動コアの駆動が不十分となる。
また、コイルボビンの内側で、固定コアとヨークとが筒状の樹脂製連結部材を介して連結されている構成もある。この構成の場合、例えば成形時の温度変化によって、樹脂製連結部材に過剰な応力が作用して、亀裂等の破損が生じることがあった。
【0006】
本発明の目的は、樹脂部材での応力緩和が可能となり、よって、当該樹脂部材にクラック等の破損が生じるのを防止することができる。また、コアとヨークとの同軸性を確保して、ヨーク内に支持されたプランジャを円滑に駆動させることができる。また、通電状態のコイルから生じる磁力によってプランジャを駆動させる際、その磁気回路を十分に形成することができるソレノイド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のソレノイド装置の第1の態様は、軸方向に沿って貫通した貫通孔を有する筒状のボビンと、ボビンの外周部に巻回されたコイルと、磁性材からなり、貫通孔の軸方向の一端側に配置された筒状のコアと、磁性材からなり、貫通孔の軸方向の他端側に配置され、コアに対し磁性的に連続しないで隣り合う筒状のヨークと、コアとヨークとを磁気的に不連続な状態で保持する筒状の樹脂部材とを備え、コアは、軸方向の端部に、外径が軸方向他端側に向かって漸減するテーパ状部で構成され、ヨークとの境界部に境界溝を構成する第1傾斜面と、第1傾斜面よりも軸方向一端側に位置し、周方向に沿ったリング状の第1周方向溝と、第1傾斜面から第1周方向溝に至り、ボビンの軸方向に沿った複数の第1軸方向溝とを有し、樹脂部材は、境界溝、第1周方向溝および第1軸方向溝内に配置され、第1傾斜面に密着する。
【0008】
本発明のソレノイド装置の第2の態様は、軸方向に沿って貫通した貫通孔を有する筒状のボビンと、ボビンの外周部に巻回されたコイルと、磁性材からなり、貫通孔の軸方向の一端側に配置された筒状のコアと、磁性材からなり、貫通孔の軸方向の他端側に配置され、コアに対し磁性的に連続しないで隣り合う筒状のヨークと、コアとヨークとを磁気的に不連続な状態で保持する筒状の樹脂部材とを備え、コアは、軸方向の端部に、外径が軸方向他端側に向かって漸減することでーパ状に形成され、ヨークとの境界部に境界溝を構成する第1傾斜面を有し、ヨークは、軸方向の端部に、外径が軸方向一端側に向かって漸減するテーパ状部で構成され、第1傾斜面とともに境界溝を構成する第2傾斜面と、第2傾斜面よりも軸方向他端側に位置し、周方向に沿った少なくとも1つのリング状の第2周方向溝と、第2傾斜面から第2周方向溝に至り、ボビンの軸方向に沿った複数の第2軸方向溝とを有し、樹脂部材は、境界溝、第2周方向溝および第2軸方向溝内に配置され、第1傾斜面および第2傾斜面に密着する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のソレノイド装置の各態様によれば、樹脂部材での応力緩和が可能となり、よって、当該樹脂部材にクラック等の破損が生じるのを防止することができる。また、コアとヨークとの同軸性を確保して、ヨーク内に支持されたプランジャを円滑に駆動させることができる。また、通電状態のコイルから生じる磁力によってプランジャを駆動させる際、その磁気回路を十分に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のソレノイド装置の実施形態を示す垂直断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すソレノイド装置が備えるコアとヨークとを連結したコア・ヨークユニットを示す垂直断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すソレノイド装置が備えるコアとヨークとを連結したコア・ヨークユニットを示す垂直断面図である(
図2の断面図とは切断面が異なる)。
【
図4】
図4は、
図2に示すコア・ヨークユニットの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すコア・ヨークユニットを製造する過程を順に示す垂直断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示すコア・ヨークユニットを製造する過程を順に示す垂直断面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示すコア・ヨークユニットを製造する過程を順に示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のソレノイド装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1~
図7を参照して本発明のソレノイド装置の実施形態について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸を設定している。X軸とY軸を含むXY平面が水平となっており、Z軸が鉛直となっている。X軸と平行な方向を「軸方向(軸O
2方向)」と言い、この軸を中心とする径方向を単に「径方向」と言い、前記軸を中心とする周方向を単に「周方向」と言うことがある。また、X軸方向正側を「軸方向一端側」または単に「一端側」と言い、X軸方向負側を「軸方向他端側」または単に「他端側」と言うことがある。本明細書中において、上下方向、水平方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0012】
図1に示すソレノイド装置1は、例えば自動車の自動変速機における油圧回路で油圧を制御するものである。ソレノイド装置1は、ケース7と、ボビン2と、コイル3と、コア・ヨークユニット10と、プランジャ13と、プランジャピン14と、リング部材8と、弁スリーブ15とを備える。
ケース7は、有底筒状である。すなわち、ケース7は、一端側(軸方向一端側)が開口する開口部71と、他端側(軸方向他端側)を閉塞させる壁部74とを有する筒状の部材である。ケース7は、鉄等のような磁性を有する金属材料で構成されている。
【0013】
ケース7の内側には、ボビン2が配置されている。ボビン2は、筒状であり、その軸O2がX軸方向と平行に配置されている。
また、ボビン2は、軸O2方向に沿って貫通した貫通孔22を有する。この貫通孔22の内径は、軸O2方向に沿って一定である。
【0014】
ボビン2は、一端側で、径方向に突出したフランジ23と、他端側で、径方向に突出したフランジ24とを有する。フランジ24は、ケース7の壁部74に当接している。
ボビン2は、ケース7と同様に、磁性を有する金属材料で構成されている。
【0015】
ボビン2の外周部21には、導電性を有するコイル3が巻回されている。そして、コイル3を通電状態とすることにより、ケース7と、ボビン2と、コア・ヨークユニット10のコア4およびヨーク5とが磁気回路を構成する。これにより、プランジャ13を軸O2方向に沿って往復動させることができる。
【0016】
コア・ヨークユニット10は、軸O
2方向の一端側に配置されたコア4と、軸O
2方向の他端側に配置されたヨーク5と、コア4とヨーク5とにまたがって配置された樹脂部材6とを有する。
図4に示すように、コア4は、全体として円筒状であり、その軸O
4がX軸方向と平行に配置されている。コア4の軸O
4は、ボビン2の軸O
2と重なる。
【0017】
また、ヨーク5も、全体として円筒状であり、その軸O5がX軸方向と平行に配置されている。ヨーク5の軸O5もボビン2の軸O2と重なる。
コア4およびヨーク5と同様に、樹脂部材6も、全体として円筒状であり、その軸O6がX軸方向と平行に配置されている。樹脂部材6の軸O6もボビン2の軸O2と重なる。
なお、コア4、ヨーク5および樹脂部材6は、それぞれ、本実施形態では円筒状であるが、これに限定されず、例えば、角筒状であってもよい。
【0018】
コア4およびヨーク5は、鉄等のような磁性材からなる、すなわち、磁性を有する金属材料で構成されている。これにより、プランジャ13を十分に往復動させることができる程度の磁気回路を生じさせることができる。
また、
図1~
図3に示すように、コア4とヨーク5とは、軸O
2方向に隣り合ってはいるものの、互いに離間している。これにより、コア4とヨーク5とは、磁性的に連続しない状態(以下「磁気的不連続状態」と言う)となっている。ここで、「磁気的不連続状態」とは、磁気回路的に直接つながっていない状態のことを言う。なお、磁気的不連続状態とするには、コア4とヨーク5とを離間させることの他に、例えば、コア4とヨーク5とが接しているが、コア4およびヨーク5のうちの少なくとも一方の表面に非磁性のコーティングを施すこと等が挙げられる。
【0019】
樹脂部材6は、コア4とヨーク5とを磁気的不連続状態で保持する。樹脂部材6は、例えば、熱可塑性樹脂等のような各種樹脂材料を用いることができる。
このような構成のコア・ヨークユニット10の内側には、磁性材からなるプランジャ13が軸O2方向に沿って往復
動可能に支持されている。また、コア・ヨークユニット10の内側には、プランジャ13の一端側にプランジャピン14が配置されている。そして、プランジャ13が往復動することにより、その力がプランジャピン14を介して、前記油圧回路を切り替えるバルブ(図示せず)に伝達される。これにより、当該バルブを作動させることができる。
【0020】
図1に示すように、ケース7内には、円環状のリング部材8が挿入されている。リング部材8は、コア・ヨークユニット10と同心的に配置されている。このリング部材8は、コア4に対して一端側から接する。また、リング部材8の一端側には、弁スリーブ15のフランジ151が接する。さらに、このフランジ151は、ケース7の開口部71側を内側に曲げてなる折り曲げ部73に接する。これにより、ケース7の折り曲げ部73と壁部74との間でコア・ヨークユニット10の軸O
2方向の位置を規制ことができ、よって、磁気回路を安定して構成することができる。
【0021】
図2に示すように、コア4は、一端部に外径φd
4Aが縮径した縮径部44を有する。縮径部44は、リング部材8を貫通する。これにより、リング部材8の径方向の位置を規制ことができる。
また、コア4は、縮径部44の他端側に隣り合い、縮径部44よりも外径φd
4Aが大きい大経部45とを有する。この大経部45には、リング部材8が接する。これにより、リング部材8の軸O
2方向の位置を規制ことができる。
【0022】
次に、コア・ヨークユニット10の詳細な構造について説明する。
前述したように、コア・ヨークユニット10は、軸O2方向の一端側に配置されたコア4と、軸O2方向の他端側に配置されたヨーク5と、コア4とヨーク5とにまたがって配置された樹脂部材6とを有する。
【0023】
図2~
図4に示すように、コア4は、外周部に、軸O
2方向の他端部に位置する第1傾斜面41と、第1傾斜面41よりも軸O
2方向の一端側に位置する第1周方向溝42と、第1傾斜面41から第1周方向溝42に至る複数の第1軸方向溝48とを有する。
図4に示すように、樹脂部材6の一端部68は、第1傾斜面41、第1周方向溝42および複数の第1軸方向溝48が配置された部分(以下「引っ掛かり部49」と言う)に引っ掛かる、すなわち、噛み込むことができる。
【0024】
第1傾斜面41は、外径φd4Aが軸O2方向の他端側に向かって漸減するテーパ状部で構成されている。この第1傾斜面41は、ヨーク5との境界部に境界溝11を構成することができる。
なお、第1傾斜面41よりも一端側には、前述した縮径部44が位置しており、第1傾斜面41と縮径部44との間には、前述した大経部45が位置している。
【0025】
第1周方向溝42は、コア4の周方向に沿ったリング状の溝で構成されている。第1周方向溝42の配置数は、本実施形態では1つであるが、これに限定されず、複数であってもよい。例えば、第1周方向溝42の配置数が3つ以上の場合、これらの第1周方向溝42は、軸O2方向に沿って等間隔に配置されているのが好ましい。
【0026】
各第1軸方向溝48は、ボビン2の軸O2方向に沿った直線状の溝で構成されている。各第1軸方向溝48は、第1周方向溝42の軸方向O2の他端側から第1周方向溝42を超えて、軸O2方向に、すなわち、一端側に向かって延びる。各第1軸方向溝48の全長L48は、同じであるのが好ましいが、異なっていてもよい。
【0027】
また、これらの第1軸方向溝48は、ボビン2の軸O
2回りに等間隔に配置されている。第1軸方向溝48の配置数は、複数であれば、特に限定されないが、例えば、3つ以上であるのが好ましい。
図4に示すように、コア4の第1傾斜面41と第1周方向溝42との間の部分は、第1軸方向溝48により、周方向に沿って複数の凸部46に分けられる。
【0028】
樹脂部材6の一端部68は、このような構成の引っ掛かり部49に引っ掛かることができる。これにより、樹脂部材6の一端部68は、変形が容易となり、よって、後述するインサート成形時に温度変化があったとしても、安定して均一な応力緩和が可能となる。この応力緩和により、樹脂部材6の一端部68に亀裂等の破損が生じるのを防止することができる。なお、一端部68での応力緩和の程度は、例えば、前述した従来よりも少なくとも30%程度は向上する。
【0029】
ヨーク5は、外周部に、軸O
2方向の一端部に位置する第2傾斜面51と、第2傾斜面51よりも軸O
2方向の他端側に位置する第2周方向溝52と、第2傾斜面51から第2周方向溝52に至る複数の第2軸方向溝58とを有する。
図4に示すように、樹脂部材6の他端部69は、第2傾斜面51、第2周方向溝52および複数の第2軸方向溝58が配置された部分(以下「引っ掛かり部59」と言う)に引っ掛かる、すなわち、噛み込むことができる。
【0030】
第2傾斜面51は、外径φd
5Aが軸O
2方向の一端側に向かって漸減するテーパ状部で構成されている。この第2傾斜面51は、第1傾斜面41とともに境界溝11を構成することができる。そして、
図2に示すように、第1傾斜面41の傾斜角度θ
41と、第2傾斜面51の傾斜角度θ
51とは、同じ大きさである。これにより、例えば、コア・ヨークユニット10を製造する際、第1傾斜面41および第2傾斜面51の形成を迅速に行うことができ、よって、製造容易性が向上する。なお、傾斜角度θ
41と傾斜角度θ
51とは、同じ大きさであるが、これに限定されず、異なっていてもよい。
【0031】
第2周方向溝52は、ヨーク5の周方向に沿ったリング状の溝で構成されている。第2周方向溝52の配置数は、本実施形態では1つであるが、これに限定されず、複数であってもよい。例えば、第2周方向溝52の配置数が3つ以上の場合、これらの第2周方向溝52は、軸O2方向に沿って等間隔に配置されているのが好ましい。
【0032】
軸O2方向に沿った第1傾斜面41と第1周方向溝42との距離L4は、軸O2方向に沿った第2傾斜面51と第2周方向溝52との距離L5よりも長い。これにより、第1傾斜面41から第1周方向溝42を離間させることができ、よって、第1傾斜面41の軸O2方向に沿った長さを、磁気回路の確保に十分な大きさとすることができる。
【0033】
また、第1周方向溝42の幅W42と、第2周方向溝52の幅W52とは、同じ大きさであり、第1周方向溝42の深さdp42と、第2周方向溝52の深さdp52とは、同じ大きさである。これにより、例えば、コア・ヨークユニット10を製造する際、第1周方向溝42および第2周方向溝52の形成を迅速に行うことができ、よって、製造容易性が向上する。
【0034】
なお、幅W42と幅W52とは、同じ大きさであるが、これに限定されず、異なっていてもよい。同様に、深さdp42と深さdp52とは、同じ大きさであるが、これに限定されず、異なっていてもよい。
また、深さdp42は、幅W42よりも小さく、深さdp52は、幅W52よりも小さい。これにより、深さdp42および深さdp52をそれぞれ比較的浅く設定することができ、磁気回路にとって好ましくなる。
【0035】
各第2軸方向溝58は、ボビン2の軸O2方向に沿った直線状の溝で構成されている。各第2軸方向溝58は、第2周方向溝52の軸方向O2の一端側から第2周方向溝52を超えて、軸O2方向に、すなわち、他端側に向かって延びる。各第2軸方向溝58の全長L58は、同じであるのが好ましいが、異なっていてもよい。
【0036】
また、これらの第2軸方向溝58は、ボビン2の軸O
2回りに等間隔に配置されている。第2軸方向溝58の配置数は、複数であれば、特に限定されないが、例えば、第1軸方向溝48の配置数と同様に、3つ以上であるのが好ましい。
図4に示すように、ヨーク5の第2傾斜面51と第2周方向溝52との間の部分は、第2軸方向溝58により、周方向に沿って複数の凸部56に分けられる。
【0037】
第1軸方向溝48の深さdp48と、第2軸方向溝58の深さdp58とは、同じ大きさであるが、これに限定されず、異なっていてもよく、各種の諸条件によっても適宜変更可能である。
また、第1軸方向溝48の深さdp48は、第1周方向溝42の深さdp42よりも深いのが好ましい。一方、第2周方向溝52の深さdp52も、第2周方向溝52の深さdp52よりも深いのが好ましい。
【0038】
樹脂部材6の他端部69は、このような構成の引っ掛かり部59に引っ掛かることができる。これにより、樹脂部材6の他端部69は、変形が容易となり、よって、後述するインサート成形時に温度変化があったとしても、安定して均一な応力緩和が可能となる。この応力緩和により、樹脂部材6の他端部69に亀裂等の破損が生じるのを防止することができる。
【0039】
図2に示すように、樹脂部材6は、境界溝11内に配置された第1部分64と、第1周方向溝42内に配置された第2部分65と、第2周方向溝52内に配置された第3部分66とを有する。また、
図3に示すように、樹脂部材6は、第1軸方向溝48内に配置された第4部分60と、第2軸方向溝58内に配置された第5部分67とを有する。
【0040】
第1部分64は、境界溝11内の全体を満たしており、第1傾斜面41および第2傾斜面51の双方に密着する。
第2部分65は、第1周方向溝42内の全体を満たしており、第1周方向溝42の内面に密着する。
第3部分66は、第2周方向溝52内の全体を満たしており、第2周方向溝52の内面に密着する。
第4部分60は、第1軸方向溝48内の全体を満たしており、第1軸方向溝48の内面に密着する。
第5部分67は、第2軸方向溝58内の全体を満たしており、第2軸方向溝58の内面に密着する。
【0041】
このような第1部分64、第2部分65、第3部分66、第4部分60および第5部分67により、コア4(引っ掛かり部49)と樹脂部材6(一端部68)とが引っ掛かり合うとともに、コア4と樹脂部材6との接触面積が増大し、ヨーク5(引っ掛かり部59)と樹脂部材6(他端部69)とが引っ掛かり合うとともに、ヨーク5と樹脂部材6との接触面積が増大する。これにより、例えば自動車のエンジンからの振動がコア・ヨークユニット10に伝達されたとしても、コア4とヨーク5とに位置ズレが生じるのを防止して、コア4とヨーク5との同軸性を十分に確保することができる。そして、コア4とヨーク5との同軸性が十分に確保されていれば、コア・ヨークユニット10内でのプランジャ13を円滑に駆動させることができる。
また、前述したように、コア4とヨーク5とは、プランジャ13を駆動させる際の磁気回路を構成する。そして、コア4とヨーク5との位置ズレが防止されることにより、プランジャ13を迅速に駆動させる程度の磁気回路を十分に生じさせることができる。
【0042】
第1部分64は、境界溝11内の全体を満たした状態となっているが、これに限定されず、境界溝11内の一部を満たした状態となっていてもよい。同様に、第2部分65は、第1周方向溝42内の全体を満たした状態となっているが、これに限定されず、第1周方向溝42内の一部を満たした状態となっていてもよい。また、第3部分66も、第2周方向溝52内の全体を満たした状態となっているが、これに限定されず、第2周方向溝52内の一部を満たした状態となっていてもよい。第4部分60は、第1軸方向溝48内の全体を満たした状態となっているが、これに限定されず、第1軸方向溝48内の一部を満たした状態となっていてもよい。第5部分67は、第2軸方向溝58内の全体を満たした状態となっているが、これに限定されず、第2軸方向溝58内の一部を満たした状態となっていてもよい。
【0043】
図4に示すように、樹脂部材6は、一端部に複数の第1貫通孔61を有し、他端部に複数の第2貫通孔62を有する。
複数の第1貫通孔61は、樹脂部材6の周方向に沿って等間隔に配置されている。そして、各第1貫通孔61には、コア4の第1傾斜面41と第1周方向溝42との間にある凸部46が樹脂部材6の内側から入り込んで外方に向かって突出する。これにより、コア4が樹脂部材6に引っ掛かった状態となる。
【0044】
複数の第2貫通孔62も、樹脂部材6の周方向に沿って等間隔に配置されている。そして、各第2貫通孔62には、ヨーク5の第2傾斜面51と第2周方向溝52との間にある凸部56が樹脂部材6の内側から入り込んで外方に向かって突出する。これにより、ヨーク5が樹脂部材6に引っ掛かった状態となる。
【0045】
樹脂部材6の一端側と他端側とでこのような引っ掛かり状態となることにより、コア4およびヨーク5が樹脂部材6から離脱するのを防止することができ、よって、コア4とヨーク5との位置関係を安定して維持することができる。
なお、第1貫通孔61および第2貫通孔62の配置数は、複数に限定されず、1つであってもよい。また、第1貫通孔61の配置数と、第2貫通孔62の配置数とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
図2および
図3に示すように、樹脂部材6は、コア4とヨーク5との間、すなわち、境界溝11に位置する部分の内周部に内側溝63を有する。内側溝63は、樹脂部材6の周方向に沿ったリング状の溝である。内側溝63は、コア4の内側の空間43と、ヨーク5の内側の空間53とに繋がる。このような内側溝63は、例えば、樹脂部材6での温度変化や経年変化による歪(変形)等を抑制することができ、よって、ヨーク5内に支持されたプランジャ13の円滑な駆動に寄与する。
【0047】
内側溝63の幅W
63は、コア4とヨーク5との離間距離と同じであるが、これに限定されず、異なっててもよい。また、内側溝63の深さdp
63は、例えば、深さdp
42や深さdp
52と同じとすることができるが、これに限定されない。
次に、コア・ヨークユニット10を製造する方法について、
図5~
図7を参照して説明する。
【0048】
まず、コア4およびヨーク5となる、所定長さの円筒状の母材を用意する。この母材は、外径および内径がX軸方向に沿って一定である。また、母材の全長は、そのままコア・ヨークユニット10の全長となる。
次いで、母材を焼鈍する。
【0049】
次いで、母材に対して切削加工を施す。これにより、母材は、
図5に示す状態となる。また、
図5に示す状態では、コア4とヨーク5とは、未だ離間しておらず、薄肉部16にを介して、連結されている。
次いで、母材に対してメッキ加工を施す。
【0050】
次いで、インサート成形により、母材上に樹脂部材6を設ける。これにより、母材は、
図6に示す状態となる。
次いで、母材の内側に切削加工を施すことにより、薄肉部16を除去するとともに、内側溝63を設ける。これにより、コア4とヨーク5とを離間させることができ、よって、
図7に示すコア・ヨークユニット10が得られる。
【0051】
以上、本発明のソレノイド装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ソレノイド装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0052】
なお、コアは、第1周方向溝および第1軸方向溝が省略されていてもよい。この場合、ヨークにおける第2傾斜面、第2周方向溝および第2軸方向溝は、必須要件となる。
また、ヨークは、第2傾斜面、第2周方向溝および第2軸方向溝が省略されていてもよい。この場合、コアにおける第1周方向溝および第1軸方向溝は、必須要件となる。
【符号の説明】
【0053】
1…ソレノイド装置、2…ボビン、21…外周部、22…貫通孔、23…フランジ、24…フランジ、3…コイル、4…コア、41…第1傾斜面、42…第1周方向溝、43…空間、44…縮径部、45…大経部、46…凸部、48…第1軸方向溝、49…引っ掛かり部、5…ヨーク、51…第2傾斜面、52…第2周方向溝、53…空間、56…凸部、58…第2軸方向溝、59…引っ掛かり部、6…樹脂部材、60…第4部分、61…第1貫通孔、62…第2貫通孔、63…内側溝、64…第1部分、65…第2部分、66…第3部分、67…第5部分、68…一端部、69…他端部、7…ケース、71…開口部、73…折り曲げ部、74…壁部、8…リング部材、10…コア・ヨークユニット、11…境界溝、13…プランジャ、14…プランジャピン、15…弁スリーブ、151…フランジ、16…薄肉部、dp42…深さ、dp48…深さ、dp52…深さ、dp58…深さ、dp63…深さ、L4…距離、L48…全長、L5…距離、L58…全長、O2…軸、O4…軸、O5…軸、O6…軸、W42…幅、W52…幅、W63…幅、φd4A…外径、φd5A…外径、θ41…傾斜角度、θ51…傾斜角度