(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/00 20060101AFI20230328BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20230328BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20230328BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
B60C15/00 H
B60C9/08 B
B60C9/00 A
B60C9/22 C
B60C9/08 J
(21)【出願番号】P 2019028730
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】河野 恭介
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-210535(JP,A)
【文献】特開2009-012566(JP,A)
【文献】特開2005-001629(JP,A)
【文献】特開2000-016017(JP,A)
【文献】特開2014-094644(JP,A)
【文献】特表2017-534527(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01475249(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0101652(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00-9/22
B60C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスを有する自動二輪車用タイヤであって、
前記カーカスは、カーカスコードの層であるカーカスプライを含み、
前記カーカスプライは、第1プライと、前記第1プライとタイヤ半径方向で重ねられる第2プライとを含み、
前記第1プライは、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至るトロイド状の本体部と、前記ビードコアの回りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された巻上げ部とを有し、
前記第2プライは、前記トレッド部から前記ビード部に向かって延び、かつ、前記ビードコアで折り返されることなく終端する巻下げ部からなり、
前記第2プライの前記カーカスコードの
繊度は、前記第1プライの前記カーカスコードの
繊度よりも小さ
く、
前記カーカスコードは、有機繊維からなり、
前記第1プライの前記カーカスコードのタイヤ赤道に対する角度θ1は、前記第2プライの前記カーカスコードのタイヤ赤道に対する角度θ2よりも大きい、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記第1プライの前記カーカスコードのタイヤ赤道に対する角度θ1と前記第2プライの前記カーカスコードのタイヤ赤道に対する角度θ2との差(θ1-θ2)は、4~20度である、請求項1記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記第2プライは、前記第1プライのタイヤ半径方向外側に配される、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記第1プライの前記カーカスコードの
繊度は、前記第2プライの前記カーカスコードの
繊度の1.4倍以上である、請求項1ないし3のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記第1プライの前記カーカスコードの
繊度は、1300dtex以上である、請求項1ないし4のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記カーカスコードのタイヤ赤道に対する角度は、65~90度である、請求項1ないし5のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記第1プライの単位ペリフェリ長さ当たりの前記カーカスコードの打ち込み本数である第1エンズは、前記第2プライの単位ペリフェリ長さ当たりの前記カーカスコードの打ち込み本数である第2エンズよりも大きい、請求項1ないし6のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記第2プライの内端は、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側に位置する、請求項1ないし7のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記第1プライの前記巻上げ部と前記第2プライとは、タイヤ半径方向に10mm以上重複している、請求項1ないし8のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部にトレッド補強層が設けられ、
前記第1プライの前記巻上げ部のタイヤ半径方向の外端は、前記トレッド補強層のタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ半径方向外側に位置する、請求項1ないし9のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、両ビードの間に架け渡された第一カーカスプライと、前記第一カーカスプライの半径方向外側に位置している第二カーカスプライとを有する自動二輪車用空気入りタイヤが記載されている。前記第一カーカスプライは、本体と、この本体の両端から連続する一対の折り返し部とを有している。第二カーカスプライは、その端が、前記第一カーカスプライの前記折り返し部と前記本体との間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような自動二輪車用空気入りタイヤは、優れた操縦安定性能を有しているが、乗り心地性能や接地感において、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、操縦安定性能を維持しつつ、乗り心地性能や接地感を向上することができる、自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カーカスを有する自動二輪車用タイヤであって、前記カーカスは、カーカスコードの層であるカーカスプライを含み、前記カーカスプライは、第1プライと、前記第1プライとタイヤ半径方向で重ねられる第2プライとを含み、前記第1プライは、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至るトロイド状の本体部と、前記ビードコアの回りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された巻上げ部とを有し、前記第2プライは、前記トレッド部から前記ビード部に向かって延び、かつ、前記ビードコアで折り返されることなく終端する巻下げ部からなり、前記第2プライの前記カーカスコードの太さは、前記第1プライの前記カーカスコードの太さよりも小さい。
【0007】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記カーカスコードが、有機繊維からなるのが望ましい。
【0008】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2プライが前記第1プライのタイヤ半径方向外側に配されるのが望ましい。
【0009】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1プライの前記カーカスコードの太さが、前記第2プライの前記カーカスコードの太さの1.4倍以上であるのが望ましい。
【0010】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1プライの前記カーカスコードの太さが、1300dtex以上であるのが望ましい。
【0011】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記カーカスコードのタイヤ赤道に対する角度が、65~90度であるのが望ましい。
【0012】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1プライの前記カーカスコードのタイヤ赤道に対する角度θ1が、前記第2プライの前記カーカスコードのタイヤ赤道に対する角度θ2よりも大きいのが望ましい。
【0013】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1プライの前記カーカスコードのタイヤ赤道に対する角度θ1と前記第2プライの前記カーカスコードのタイヤ赤道に対する角度θ2との差(θ1-θ2)が、4~20度であるのが望ましい。
【0014】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1プライの単位ペリフェリ長さ当たりの前記カーカスコードの打ち込み本数である第1エンズが、前記第2プライの単位ペリフェリ長さ当たりの前記カーカスコードの打ち込み本数である第2エンズよりも大きいのが望ましい。
【0015】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第2プライの内端が、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向内側に位置するのが望ましい。
【0016】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記第1プライの前記巻上げ部と前記第2プライとが、タイヤ半径方向に10mm以上重複しているのが望ましい。
【0017】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部にトレッド補強層が設けられ、前記第1プライの前記巻上げ部のタイヤ半径方向の外端は、前記トレッド補強層のタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ半径方向外側に位置するのが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の自動二輪車用タイヤのカーカスプライは、両端がビードコアで折り返された第1プライと、両端が前記ビードコアで折り返されることなく終端する第2プライとを含み、前記第2プライの前記カーカスコードの太さが、前記第1プライの前記カーカスコードの太さよりも小さく構成されている。このような構成により、本発明は、サイドウォール部やビード部の剛性を高く維持して、操縦安定性能の低下を抑制し、かつ、トレッド部の剛性が過度に大きくなるのを抑制して、乗り心地性能や接地感を高める。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の自動二輪車空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の自動二輪車用タイヤ(以下、単に、「タイヤ」という場合がある。)1の正規状態におけるタイヤ回転軸(図示省略)を含むタイヤ子午線断面図である。
図1には、例えば、オンロードレース用自動二輪車に適したタイヤ1が示されている。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、オフロードを含む種々の自動二輪車に採用される。
【0021】
前記「正規状態」とは、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法等は、正規状態において特定される値である。
【0022】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2のトレッド端2t、2t間のトレッド接地面2aが、キャンバー角の大きい旋回時においても十分な接地面積が得られるように、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲してのびている。トレッド端2t、2t間のタイヤ軸方向距離が、トレッド幅TWである。タイヤ1は、本実施形態では、トレッド端2tがタイヤ最大幅位置Mに相当する。
【0025】
タイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4に至るトロイド状のカーカス6を含んでいる。本実施形態のビード部4には、ビードコア5及びビードエーペックスゴム8が埋設されている。
【0026】
図2は、カーカス6を含む展開図である。
図2に示されるように、カーカス6は、カーカスコード9の層であるカーカスプライ6Aを含んでいる。カーカスプライ6Aは、並列されたカーカスコード9と、カーカスコード9を被覆するトッピングゴムGとで構成されている。カーカスコード9としては、例えば、ナイロン、レーヨン又は芳香族ポリアミドの有機繊維が好適である。このようなカーカスコード9は、大きな圧縮応力を有し、耐久性能を向上する。
図2のX方向は、タイヤ軸方向を表し、Y方向は、タイヤ周方向を表し、Z方向は、タイヤ半径方向を表している。
【0027】
本実施形態のカーカスプライ6Aは、第1プライ10と、第1プライ10とタイヤ半径方向で重ねられる第2プライ11とで構成されている。
【0028】
本実施形態の第1プライ10は、トロイド状の本体部12(
図1に示す)と巻上げ部13とを有している。本体部12は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る。巻上げ部13は、本体部12に連なって、ビードコア5の回りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。巻上げ部13は、本実施形態では、本体部12のタイヤ軸方向の両側に設けられている。本実施形態の第2プライ11は、トレッド部2からビード部4に向かって延び、かつ、ビードコア5で折り返されることなく終端する巻下げ部14として形成される。
【0029】
本実施形態では、第2プライ11のカーカスコード9bの太さ(図示省略)は、第1プライ10のカーカスコード9aの太さよりも小さく構成されている。これにより、本実施形態のタイヤ1は、サイドウォール部3やビード部4の剛性が高く維持されて、操縦安定性能の低下が抑制され、かつ、トレッド部2の剛性が過度に大きくなるのが抑制されて、乗り心地性能や接地感が高められる。
【0030】
第1プライ10のカーカスコード9aの太さは、第2プライ11のカーカスコード9bの太さの1.4倍以上であるのが望ましい。これにより、上述の作用がバランス良く発揮される。なお、第2プライ11のカーカスコード9bの太さが、第1プライ10のカーカスコード9aの太さよりも過度に小さい場合、トレッド部2の剛性を高めることができず、操縦安定性能の向上が小さくなるおそれがある。このため、第1プライ10のカーカスコード9aの太さは、第2プライ11のカーカスコード9bの太さの2.8倍以下であるのが望ましい。
【0031】
このような第1プライ10のカーカスコード9aの太さは、操縦安定性能の向上を確保するために、1300dtex以上であるのが望ましい。第1プライ10のカーカスコード9aの太さは、乗り心地性能及び接地感を高めるために、2600dtex以下であるのが望ましい。
【0032】
カーカスコード9のタイヤ赤道Cに対する角度θは、65~90度である。このようなカーカスコード9は、トレッド部2のタイヤ軸方向の剛性を適度に小さくして、乗り心地性能や接地感を高める。
【0033】
第1プライ10のカーカスコード9aのタイヤ赤道Cに対する角度θ1は、第2プライ11のカーカスコード9bのタイヤ赤道Cに対する角度θ2よりも大きいのが望ましい。このような構成は、サイドウォール部3やビード部4のタイヤ軸方向の剛性を小さく維持して、一層、乗り心地性能や接地間を高める。また、第2プライ11は、タイヤ周方向の剛性を高めて、直進走行時の安定性を向上する。
【0034】
第1プライ10の前記角度θ1と第2プライ11の前記角度θ2との差(θ1-θ2)が大きくなる場合、タイヤ周方向の剛性が大きくなり、乗り心地性能や接地感が低下するおそれがある。このような作用を効果的に発揮するために、第1プライ10の前記角度θ1と第2プライ11の前記角度θ2との差(θ1-θ2)は、4~20度であるのが望ましい。
【0035】
第1プライ10のカーカスコード9aの角度θ1が90度でない場合、第2プライ11のカーカスコード9bは、第1プライ10のカーカスコード9aとは、タイヤ軸方向に対して逆向きに傾斜しているのが望ましい。これにより、第1プライ10のカーカスコード9a及び第2プライ11のカーカスコード9bによって生じる走行時の横力が相殺されるので、操縦安定性能が高く維持される。
【0036】
第1プライ10の単位ペリフェリ長さ当たりのカーカスコード9aの打ち込み本数である第1エンズE1は、第2プライ11の単位ペリフェリ長さ当たりのカーカスコード9bの打ち込み本数である第2エンズE2よりも大きいのが望ましい。これにより、サイドウォール部3及びビード部4の剛性低下が抑制されるので、操縦安定性能が高く維持される。また、トレッド部2の剛性の適度な低下が維持される。特に限定されるものではないが、第1プライ10のペリフェリ長さ50mm当たりの第1エンズE1は、34~57本であるのが望ましい。第2プライ11のペリフェリ長さ50mm当たりの第2エンズE2は、30~53本であるのが望ましい。本明細書では、「ペリフェリ長さ」とは、正規状態のタイヤ子午線断面において、カーカス6に沿って測定される長さである。
【0037】
図3は、
図1のサイドウォール部3側の拡大図である。
図3に示されるように、本実施形態の第2プライ11は、第1プライ10のタイヤ半径方向外側に配される。タイヤ半径方向外側より、第2プライ11で第1プライ10を拘束することで、タイヤ周方向の拘束力が発生し、直進安定性を高めることができる。
図3は、便宜上、第2プライ11が着色して示される。
【0038】
第2プライ11の内端11iは、本実施形態では、タイヤ最大幅位置Mよりもタイヤ半径方向内側に位置している。このような第2プライ11は、サイドウォール部3の剛性を高くして、操縦安定性能を向上する。
【0039】
第1プライ10の巻上げ部13と第2プライ11とは、タイヤ半径方向に10mm以上の距離Laで重複している。これにより、サイドウォール部3の剛性がさらに高められる。距離Laが大きくなると、サイドウォール部3の剛性が過度に高くなり、乗り心地性能や接地感が低下するおそれがある。このため、距離Laは、ビードベースラインBLとトレッド端2tとの間のタイヤ半径方向の長さL1の60%以下であるのが望ましく、40%以下であるのがさらに望ましい。ビードベースラインBLとは、前記JATMAの規格で定められるリム径を通るタイヤ軸方向線である。
【0040】
特に限定されるものではないが、第2プライ11の内端11iとビードベースラインBLとの間のタイヤ半径方向の長さLbは、前記タイヤ半径方向の長さL1の40%~80%であるのが望ましい。
【0041】
図1~
図3に示されるように、本実施形態のタイヤ1には、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部にトレッド補強層7が設けられている。
【0042】
トレッド補強層7は、補強コード7aをタイヤ赤道Cに対して例えば30度以下の角度θ3で配列した少なくとも1枚、本実施形態では1枚の補強プライ7Aから構成されている。補強コード7aとしては、レーヨン又は芳香族ポリアミド等のような高弾性の有機繊維コードやスチールコードが好適である。このようなトレッド補強層7は、タガ効果を発揮して、走行時の操縦安定性能を高める。補強コード7aの角度θ3は、20度以下が望ましく、10度以下がさらに望ましい。補強コード7aの角度θ3は、本実施形態では、0度である。
【0043】
トレッド補強層7のタイヤ軸方向の幅Tbは、トレッド幅TWの85%~95%であるのが望ましい。このようなトレッド補強層7は、トレッド部2の全域に亘って上述の作用を発揮する。
【0044】
第1プライ10の巻上げ部13のタイヤ半径方向の外端13eは、トレッド補強層7のタイヤ軸方向の外端7eよりもタイヤ半径方向外側に位置するのが望ましい。これにより、トレッド部2のトレッド端2t近傍の剛性が高められ、キャンバー角が大きな旋回走行時のコーナリングパワーが大きくなり、操縦安定性能が向上する。なお、巻上げ部13の外端13eが過度にタイヤ半径方向外側に位置すると、乗り心地性能や接地感が大きく低下するおそれがある。このため、巻上げ部13の外端13eとトレッド端2tとの間のタイヤ半径方向の長さLtは、前記タイヤ半径方向の長さL1の20%~35%が望ましい。
【0045】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0046】
図1の基本構造及び
図2のカーカスプライを有するタイヤが試作され、各試供タイヤの操縦安定性能、乗り心地性能、接地感及び耐パンク性能がテストされた。各試供タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0047】
<操縦安定性能、乗り心地性能及び接地感>
各試供タイヤが、下記の条件で、オンロードレース用の自動二輪車の後輪に装着された。テストライダーは、この自動二輪車をオンロードのサーキットコースにて走行させ、このときの直進時及び旋回時の操縦安定性能、乗り心地性能及び接地感を官能により評価した。結果は、5点満点で表示されている。数値が大きいほど良好である。
タイヤサイズ:120/70ZR17(前輪)、200/55ZR17(後輪)
リムサイズ:MT3.50×17(前輪)、MT6.00×17(後輪)
内圧:250kPa(前輪)、290kPa(後輪)
排気量:1000cc
前輪のタイヤは、全て同じ仕様である。また、表1に記載のない仕様も、全て同じである。
【0048】
<耐久性能(プランジャー指数)>
各試供タイヤが、下記の条件で、JIS D4230の5.1項「タイヤ強度(破壊エネルギー)試験」に準じたプランジャー破壊試験について行われた。結果は、破壊エネルギーの実数で表されている。数値が大きいほど良好である。
タイヤサイズ:200/55ZR17
リムサイズ:MT6.00×17
内圧:290kPa
表1の「A1」は、ビードベースラインと巻上げ部の外端との間のタイヤ半径方向の距離、「A2」は、ビードベースラインと第2プライの内端との間のタイヤ半径方向の距離、「A3」は、ビードベースラインとトレッド補強層の外端との間のタイヤ半径方向の距離である。
また、表1の「第1エンズ」及び「第2エンズ」は、ペリフェリ長さ50mm当たりのカーカスコード打ち込み本数である。
実施例4及び5は、第1プライのカーカスコードと第2プライのカーカスコードとがタイヤ軸方向に対して逆向きに傾斜している。
テストの結果が表1に示される。
【0049】
【0050】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比して、操縦安定性能が維持されつつ、乗り心地性能や接地感が向上しているのが確認できた。
【符号の説明】
【0051】
1 自動二輪車用タイヤ
5 ビードコア
6 カーカス
6A カーカスプライ
9a 第1プライのカーカスコード
9b 第2プライのカーカスコード
10 第1プライ
12 本体部
13 巻上げ部
11 第2プライ
14 巻下げ部