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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】水質計着水確認装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/18 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
G01N33/18 106E
G01N33/18 106Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019032527
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020134482
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
(72)【発明者】
【氏名】米田 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】西浦 潤
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178394(JP,A)
【文献】特開2006-053124(JP,A)
【文献】特開平09-269311(JP,A)
【文献】特開昭51-001893(JP,A)
【文献】実開昭52-035260(JP,U)
【文献】実開昭54-039093(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0006938(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上から遠方の水面に向かって、長尺のケーブル(Cb)を接続した水質計(Mw)を垂下し、前記水質計(Mw)が着水したことを確認するための水質計着水確認装置(10)であって、
接眼窓(11w)を一端部に設けた接眼鏡筒(11)、及び、前記接眼鏡筒(11)と屈曲し、対物窓(12w)を他端部に設けた対物鏡筒(12)を有し、前記対物窓(12w)からの光路を複数回反射して前記接眼窓(11w)から前記水質計(Mw)を確認できるペリスコープ(1)と、
前記対物鏡筒(12)の他端部が水面に向かって配置可能に、前記接眼鏡筒(11)を略水平状態に地上で支持する支持装置(2)と、
前記対物鏡筒(12)の外面に沿って、前記水質計(Mw)を昇降自在に、前記ケーブル(Cb)を巻回する巻回装置(3)と、を備え、
前記対物鏡筒(12)は、水面に向かって伸縮自在な、外径の異なる複数のテレスコピック筒(121・122・123)で構成し、
前記対物鏡筒(12)の他端部にワイヤ部材(4w)の一端部を係留し、前記ワイヤ部材(4w)の他端部側を巻回して、複数の前記テレスコピック筒(121・122・123)を収縮させる巻き上げ装置(4)を更に備えている、水質計着水確認装置(10)。
【請求項2】
地上から遠方の水面に向かって、長尺のケーブル(Cb)を接続した水質計(Mw)を垂下し、前記水質計(Mw)が着水したことを確認するための水質計着水確認装置(10)であって、
接眼窓(11w)を一端部に設けた接眼鏡筒(11)、及び、前記接眼鏡筒(11)と屈曲し、対物窓(12w)を他端部に設けた対物鏡筒(12)を有し、前記対物窓(12w)からの光路を複数回反射して前記接眼窓(11w)から前記水質計(Mw)を確認できるペリスコープ(1)と、
前記対物鏡筒(12)の他端部が水面に向かって配置可能に、前記接眼鏡筒(11)を略水平状態に地上で支持する支持装置(2)と、
前記対物鏡筒(12)の外面に沿って、前記水質計(Mw)を昇降自在に、前記ケーブル(Cb)を巻回する巻回装置(3)と、を備え、
前記対物鏡筒(12)は、水面に向かって伸縮自在な、外径の異なる複数のテレスコピック筒(121・122・123)で構成し、
前記対物鏡筒(1)は、複数の前記テレスコピック筒(121・122・123)の外周を囲うと共に、複数の前記テレスコピック筒(121・122・123)が延びる方向に力を付勢する円筒状のベローズ部材(12b・12b)を更に備え、
前記対物鏡筒(12)の他端部にワイヤ部材(4w)の一端部を係留し、前記ワイヤ部材(4w)の他端部側を巻回して、複数の前記テレスコピック筒(121・122・123)を収縮させる巻き上げ装置(4)を更に備えている、水質計着水確認装置(10)
【請求項3】
前記ペリスコープ(1)は、前記対物鏡筒(12)に対して、前記接眼鏡筒(11)を折り畳み自在に連結している、請求項1又は2記載の水質計着水確認装置(10)
【請求項4】
前記支持装置(2)は、地上に設置した柵状物(F)に着脱自在に締め付けできる締め付け装置を備えている、請求項1又は2記載の水質計着水確認装置(10)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質計着水確認装置に関する。特に、河川などの水質を地上から測定するために、水質計を構成するセンサ部が着水したこと確認することが容易な水質計着水確認装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
水質計は、河川などの物理的、化学的及び生物的な水質を測定できる。例えば、水質計を構成するセンサ部を地上から水に浸漬することで、河川などの水質を現地調査できる。河川などの水質を地上から連続して測定する場合には(いわゆる定点観測では)、センサ部を水に長期間浸漬しているので、センサ部の検出面に汚れが付着して測定精度が低減することがある。又、センサ部の感度は、経年変化するため、標準液を用いて、定期的に校正する必要があった。
【0003】
水質計のセンサ部を水に長期間浸漬すると、前述したような不具合があるので、水質計のセンサ部を下端部に配置した円筒状のホルダを引き上げて、センサ部をバスケットに収容し、バスケットに洗浄液又は校正用標準液を供給して、センサ部を洗浄又は校正する水質測定装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、湖沼や海洋の水質を測定する場合には、水面からの深い地点で水質を測定している。この場合に、特許文献1に開示されたように、円筒状のホルダを引き上げて装置を採用すれば、大がかりな引き上げ用の駆動シリンダが必要となる。又、引き上げに要する時間が長くなることから欠測時間が長くなるという不具合があった。
【0005】
特許文献1による水質測定装置は、前述したような不具合があるので、深い地点を測定する場合でも、欠測時間を短縮できる水質測定装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-269311号公報
【文献】特開2007-178394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5は、従来技術による水質測定装置の構成を示す側面図であり、円筒状のホルダの下端部にセンサモジュールを配置した状態図である。図6は、従来技術による水質測定装置の構成を示す側面図であり、円筒状のホルダからセンサモジュールを引き上げた状態図である。図7は、従来技術による水質測定装置の構成を示す側面図であり、円筒状のホルダから引き上げたセンサモジュールを地上側に旋回した状態図である。
【0008】
図8は、従来技術による水質測定装置の構成を示す縦断面図であり、水質測定装置に備わるセンサモジュール及び円筒状のホルダの拡大図である。なお、本願の図5から図8は、特許文献2の図1から図4に相当している。
【0009】
図5から図8を参照すると、従来技術による水質測定装置9は、センサモジュール91と測定部92を備えている。又、水質測定装置9は、支持台93と操作・制御部94を備えている。
【0010】
図5又は図8を参照すると、センサモジュール91には、ケーブル91cの一端部が電気的に接続されている。図5又は図6を参照すると、ケーブル91cの他端部は、操作・制御部94と電気的に接続している。測定部92は、円筒状のホルダ92hの下端部に設置されている(図5から図8参照)。
【0011】
図5から図7を参照すると、支持台93は、河川又は湖沼を保護する護岸Wrに設置されている。支持台93は、スタンド93a、第1支持部材93b、及び、一組の第2支持部材93c・93cを備えている。
【0012】
図5から図7を参照すると、スタンド93aは、起立状態で護岸Wrに固定されている。第1支持部材93bは、スタンド93aの上部に片持ち状に取り付けられている。又、第1支持部材93bは、水平方向に旋回自在に、基端部がスタンド93aと連結している。一組の第2支持部材93c・93cは、スタンド93aの下部に片持ち状に固定されている。又、一組の第2支持部材93c・93cは、ホルダ92hが河川又は湖沼の水面下まで延びるように、ホルダ92hの上部側を支持している。
【0013】
又、図5から図7を参照すると、支持台93は、定滑車931、動滑車932、及び、巻き上げ装置933を備えている。定滑車931は、第1支持部材93bの先端部に取り付けられている。定滑車931には、ケーブル91cが巻き掛けされている。ケーブル91cは、動滑車932を経由して、操作・制御部94に係留している。
【0014】
又、図5又は図6を参照すると、定滑車931には、ワイヤ93wが巻き掛けされている。ワイヤ93wは、巻き上げ装置933に接続している。巻き上げ装置933を一方の方向に駆動すると、定滑車931を一方の方向に回転でき、センサモジュール91をホルダ92hから吊り上げることができる(図6参照)。巻き上げ装置933を他方の方向に駆動すると、定滑車931を他方の方向に回転でき、センサモジュール91をその自重でホルダ92hの下方に移動できる(図5参照)。なお、巻き上げ装置933は、操作・制御部94の指令により動作が制御されている。
【0015】
図5又は図6を参照すると、操作・制御部94は、ケーブル91cを介して、センサモジュール91と電気的に接続している。そして、操作・制御部94は、ケーブル91cを介して、センサモジュール91に測定の開始を指示でき、センサモジュール91から測定結果などのデータを受信できる。
【0016】
図5又は図6を参照すると、巻き上げ装置933を制御することで、センサモジュール91は、ホルダ92hの上端921からホルダ92hに出し入れできる。又、巻き上げ装置933を制御することで、センサモジュール91は、ホルダ92hの中部を昇降できる。更に、巻き上げ装置933を制御することで、センサモジュール91を任意の位置で水中Wへ浸漬状態で保持できる。
【0017】
図7を参照して、スタンド93aを中心に第1支持部材93bを旋回すると、センサモジュール91を河川・湖沼から護岸Wrに移できる。これにより、センサモジュール91を地上側で容易に保守できる。なお、第1支持部材93bの旋回動作に伴って、ケーブル91cが損傷することを防止するために、一方の第2支持部材93cには、ケーブル保持具93mを配設している。
【0018】
図8を参照すると、センサモジュール91は、円筒状の本体部911と架橋部材912を備えている。又、センサモジュール91は、円柱状の仕切り部材913とセンサ部914を備えている。本体部911は、その上面にケーブル91cを接続している。架橋部材912は、本体部911と仕切り部材923を架橋している。仕切り部材913は、その外径が本体部911の外径と略同じであり、センサ部914と対向配置されている。センサ部914は、仕切り部材913に向って突出している。
【0019】
図5又は図8を参照して、ホルダ92hを介して、センサモジュール91を水中Wに浸漬すると、センサ部914は、河川又は湖沼などの水質を測定できる。
【0020】
図8を参照すると、センサモジュール91は、多項目水質計と呼ばれるもので、センサ部914は、温度センサ、pH電極、電気伝導率セル、濁度セル、DO電極などを含んでいる。センサ部914は、これらのセンサ類が本体部に一体化されている。温度センサは、水温を測定できる。pH電極は、検水のpHを測定できる。電気伝導率セルは、検水の電気導電率を測定できる。濁度セルは、検水の濁度を測定できる。DO電極は、検水の溶存酸素を測定できる。
【0021】
図8を参照すると、ホルダ92hの下部に形成され、保護筒部92pと校正筒部92t2に区分されている。保護筒部92pは、センサ部914の周囲を覆うことで、センサ部914を保護できる。校正筒部92tには、校正液を導入できる。
【0022】
図8を参照すると、校正筒部92tは、内部に向って伸縮自在な円環状の第1チューブ92aと内部に向って伸縮自在な円環状の第2チューブ92bを備えている。第1チューブ92aは、校正筒部92tの上部に配置されている。第2チューブ92bは、校正筒部92tの下部に配置されている。又、校正筒部92tには、複数のレベルセンサ92sを取り付けている。複数のレベルセンサ92sは、校正筒部92tの内部が液相状態であるか気相状態であるかを検出できる。
【0023】
図8を参照して、本体部911の下部が第1チューブ92aに対向すると共に、仕切り部材913が第2チューブ92bに対向するように、センサモジュール91を引き上げた状態で、第1チューブ92a及び第2チューブ92bにエアを供給すると、第1チューブ92a及び第2チューブ92bが膨張することで、校正筒部92tの内部にセンサ部914を密閉できる。
【0024】
図8を参照して、最初に、第1チューブ92aを膨張させると共に、第2チューブ92bを収縮させた状態で、校正筒部92tの下部からエアを供給すると、校正筒部92tの内部を気相状態にできる。次に、第2チューブ92bを膨張させることで、校正筒部92tの内部を被測定水から隔離した校正室として利用できる。又、水質測定装置9は、センサ部914の検出面に向って、洗浄液を噴射することで、水中でセンサ部914の検出面の汚れを除去できる。
【0025】
このように、特許文献2による水質測定装置9は、校正用の空間を容易かつ簡易な構成で形成でき、又、深い地点を測定する場合でも欠測時間を短縮化できる、としている。
【0026】
ところで、定点観測以外では、ケーブル付きの多項目水質計を用いて、地上から河川などに向けて、多項目水質計を水中に浸漬することで、河川などの水質を現地調査している。この場合、水深「0(零)」点での観測では、センサ部の検出面が水面に着水したことを目視で確認している。
【0027】
しかし、橋などから河川の水面に向けて、多項目水質計を垂下すると、橋から河川の水面までの距離が長く、センサ部の検出面が水面に着水したことを目視で確認することが困難であるという問題があった。又、橋に設置された欄干を介して、ケーブルを吊り下げると、ケーブルを送り出し又引き上げるとき、多項目水質計は相当の重量があるので、ケーブルが欄干に干渉して、ケーブルが損傷する心配があった。
【0028】
河川などの水質を測定するセンサ部の検出面が水面に着水したことを確認することが容易な水質計着水確認装置が求められている。又、ケーブルに過剰な負荷を生ずることなく、欄干などの柵状部材と干渉しない水質計着水確認装置が求められている。そして、以上のことが本発明の課題をいってよい。
【0029】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、河川などの水質を測定する水質計のセンサ部の検出面が水面に着水したことを確認することが容易な水質計着水確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明者らは、地上から遠方の水面に向かって、長尺のケーブルを接続した水質計を垂下すると共に、ペリスコープ(潜望鏡)を用いて、水質計が着水したことを地上から容易に確認できると考え、これに基づいて、以下のような新たな水質計着水確認装置を発明するに至った。
【0031】
(1)本発明による水質計着水確認装置は、地上から遠方の水面に向かって、長尺のケーブルを接続した水質計を垂下し、前記水質計が着水したことを確認するための水質計着水確認装置であって、接眼窓を一端部に設けた接眼鏡筒、及び、前記接眼鏡筒と屈曲し、対物窓を他端部に設けた対物鏡筒を有し、前記対物窓からの光路を複数回反射して前記接眼窓から前記水質計を確認できるペリスコープと、前記対物鏡筒の他端部が水面に向かって配置可能に、前記接眼鏡筒を略水平状態に地上で支持する支持装置と、前記対物鏡筒の外面に沿って、前記水質計を昇降自在に、前記ケーブルを巻回する巻回装置と、を備え、前記対物鏡筒は、水面に向かって伸縮自在な、外径の異なる複数のテレスコピック筒で構成している。
【0032】
(2)前記対物鏡筒は、複数の前記テレスコピック筒の外周を囲うと共に、複数の前記テレスコピック筒が延びる方向に力を付勢する円筒状のベローズ部材を更に備えていることが好ましい。
【0033】
(3)本発明による水質計着水確認装置は、前記対物鏡筒の他端部にワイヤの一端部を係留し、前記ワイヤの他端部側を巻回して、複数の前記テレスコピック筒を収縮させる巻き上げ装置を更に備えていることが好ましい。
【0034】
(4)前記ペリスコープは、前記対物鏡筒に対して、前記接眼鏡筒を折り畳み自在に連結していることが好ましい。
【0035】
(5)前記支持装置は、地上に設置した柵状物に着脱自在に締め付けできる締め付け装置を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明による水質計着水確認装置は、接眼鏡筒と接眼鏡筒から屈曲した対物鏡筒で構成したペリスコープを備えているので、接眼窓から水質計が着水したことを容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態による水質計着水確認装置の構成を示す斜視図である。
図2】前記実施形態による水質計着水確認装置の構成を示す正面図である。
図3】前記実施形態による水質計着水確認装置の構成を示す図であり、図3(A)は、水質計着水確認装置の縦断面図、図3(B)は、水質計着水確認装置の平面図である。
図4】前記実施形態による水質計着水確認装置に備わる支持装置の構成を示す図であり、図4(A)は、支持装置の正面図、図4(B)は、支持装置の右側面図、図4(C)は、支持装置の左側面図である。
図5】従来技術による水質測定装置の構成を示す側面図であり、円筒状のホルダの下端部にセンサモジュールを配置した状態図である。
図6】従来技術による水質測定装置の構成を示す側面図であり、円筒状のホルダからセンサモジュールを引き上げた状態図である。
図7】従来技術による水質測定装置の構成を示す側面図であり、円筒状のホルダから引き上げたセンサモジュールを地上側に旋回した状態図である。
図8】従来技術による水質測定装置の構成を示す縦断面図であり、水質測定装置に備わるセンサモジュール及び円筒状のホルダの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0039】
[水質計着水確認装置の構成]
(全体構成)
最初に、本発明の一実施形態による水質計着水確認装置の全体構成を説明する。図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態による水質計着水確認装置(以下、確認装置と略称する)10は、地上から遠方の水面Wfに向かって、長尺のケーブルCbを接続した水質計Mwを垂下し、水質計Mwが着水したことを確認できる。
【0040】
図1から図4を参照すると、確認装置10は、ペリスコープ(潜望鏡)1、支持装置2、及び、巻回装置3を備えている。ペリスコープ1は、接眼鏡筒11と対物鏡筒12を備えている。ペリスコープ1は、接眼鏡筒11に対して対物鏡筒12を屈曲している。
【0041】
図1から図3を参照すると、接眼鏡筒11は、接眼窓11wを一端部に設けている。対物鏡筒12は、対物窓12wを他端部に設けている。図3を参照すると、ペリスコープ1は、第1反射鏡M1と第2反射鏡M2を内部に配置している。ペリスコープ1は、対物窓12wからの光路Lpを90度2回反射して、接眼窓11wから対物窓12wの像を確認できる。つまり、ペリスコープ1は、接眼窓11wから水質計Mwを確認できる。
【0042】
図1から図4を参照すると、支持装置2は、対物鏡筒12の他端部が水面Wfに向かって配置可能に、接眼鏡筒11を略水平状態に地上で支持できる。実施の形態では、支持装置2は、橋Bgの端部に設置した欄干などの柵状物Fを挟持すると共に、接眼鏡筒11を着脱自在に支持している。
【0043】
図1から図3を参照すると、巻回装置3は、対物鏡筒12の外面に沿って、水質計Mwを昇降自在に、ケーブルCbを巻回できる。図3を参照すると、対物鏡筒12は、水面Wfに向かって伸縮自在な、外径の異なる複数のテレスコピック筒121・122・123で構成している。
【0044】
図1から図4を参照すると、実施形態による確認装置10は、接眼窓11wから水質計Mwを確認できるペリスコープ1、対物鏡筒12の他端部が水面Wfに向かって配置可能に、接眼鏡筒11を略水平状態に地上で支持する支持装置2、及び、対物鏡筒12の外面に沿って、水質計Mwを昇降自在に、ケーブルCbを巻回する巻回装置3を備え、対物鏡筒12は、水面Wfに向かって伸縮自在な、外径の異なる複数のテレスコピック筒121・122・123で構成しているので、接眼窓11wから水質計Mwが着水したことを容易に確認できる。
【0045】
(水質計の構成)
次に、実施形態による水質計Mwの構成を説明する。図1から図3を参照すると、水質計Mwは、実質的に、図8に示したセンサモジュール91に相当している。水質計Mwは、多項目水質計からなることが好ましく、水質計Mwを水面Wfに浸漬することで、河川又は湖沼などの水質を多項目にわたり測定できる。
【0046】
図1から図3を参照すると、ケーブルCbは、その遠端に、図示しない測定器を電気的に接続している。そして、図示しない測定器は、ケーブルCbを介して、水質計Mwに測定の開始を指示でき、水質計Mwから測定結果などのデータを受信できる。
【0047】
(ペリスコープの構成)
次に、実施形態によるペリスコープ1の構成を説明する。図1から図3を参照すると、対物鏡筒12は、一組の円筒状のベローズ部材12b・12bを備えている。一組のベローズ部材12b・12bは、複数のテレスコピック筒121・122・123の外周を囲っている。
【0048】
又、図1から図3を参照すると、対物鏡筒12は、第1筒枠12s、第2筒枠12t、及び、鏡筒枠12mを更に備えている。第1筒枠12sは、テレスコピック筒121の先端部側に固定されている。第2筒枠12tは、テレスコピック筒122の先端部側に固定されている。鏡筒枠12mは、テレスコピック筒123の先端部に固定されている。
【0049】
図3を参照すると、一方のベローズ部材12bは、第1筒枠12sと第2筒枠12tの間に介在されている。一方のベローズ部材12bは、テレスコピック筒121に対して、テレスコピック筒121が軸方向に延びる方向に力を付勢している。又、他方のベローズ部材12bは、第2筒枠12tと鏡筒枠12mの間に介在されている。他方のベローズ部材12bは、テレスコピック筒122に対して、テレスコピック筒123が軸方向に延びる方向に力を付勢している。
【0050】
このように、図3を参照すると、一組のベローズ部材12b・12bは、複数のテレスコピック筒121・122・123が延びる方向に力を付勢している。なお、ベローズ部材12bには、図示しない圧縮コイルばねを肉厚部に包含しておくことが好ましい。
【0051】
図3を参照すると、鏡筒枠12mは、第2反射鏡M2を内部に配置している。第2反射鏡M2が浸水しないように、対物窓12wを透明なガラス板で防水することが好ましい。又、第2反射鏡M2が浸水しないように、テレスコピック筒123と鏡筒枠12mの隙間を防水することが好ましい。
【0052】
図1から図3を参照すると、ペリスコープ1は、ヒンジ部1hと施錠部1rを備えている。ヒンジ部1hは、対物鏡筒12に対して、接眼鏡筒11を回動自在に連結している。施錠部1rは、対物鏡筒12に対して、接眼鏡筒11が直交した状態を維持できる。
【0053】
図1から図3を参照すると、接眼鏡筒11は、二山クレビス形の第1支持部11hを他方の端部に有している。対物鏡筒12は、一山クレビス形の第2支持部12hを一方の端部に有している。第1支持部11h及び第2支持部12hに貫通した貫通穴に連結ピンを挿入することで、ヒンジ部1hは、対物鏡筒12に対して、接眼鏡筒11を回動自在に連結している。
【0054】
図1から図3を参照すると、接眼鏡筒11は、二山クレビス形の第3支持部11rを他方の端部に有している。対物鏡筒12は、一山クレビス形の第4支持部12rを一方の端部に有している。第3支持部11r及び第4支持部12rに貫通した貫通穴に連結ピンを挿入することで、施錠部1rは、対物鏡筒12に対して、接眼鏡筒11が直交した状態を維持できる。
【0055】
図3を参照すると、施錠部1rから連結ピンを取り外すと、対物鏡筒12に対して、接眼鏡筒11を時計方向に回動できる。対物鏡筒12に対して、接眼鏡筒11を時計方向に270度回動することで、対物鏡筒12に対して、接眼鏡筒11を折り畳むことができる。これにより、ペリスコープ1の外形を縮小した状態で搬送できる。
【0056】
なお、図3を参照すると、対物鏡筒12に対して、接眼鏡筒11を折り畳んだ状態で、対物鏡筒12の開口面から、第1反射鏡M1が突出しないように、第1反射鏡M1を対物鏡筒12の内部に回動自在に配置している。
【0057】
(巻回装置の構成)
次に、実施形態による巻回装置3の構成を説明する。図1から図3を参照すると、巻回装置3は、一つ以上の案内部材3g、固定滑車3p、及び、巻回ドラム3dを含んでいる。案内部材3gは、四つのリンク部材の両端部を相互に回動自在に連結したパンタグラフ構造を採用している。そして、四つのリンク部材を開いた状態では、案内部材3gは、水質計Mwを内部に挿通できる。
【0058】
図1から図3を参照すると、確認装置10は、三つの案内部材3gを対物鏡筒12の軸方向に沿って配置している。これにより、水質計Mwが対物鏡筒12から離間することなく、水質計Mwを対物鏡筒12の軸方向に沿って移動できる。
【0059】
図1から図3を参照すると、固定滑車3pは、接眼鏡筒11の直下に配置されている。又、固定滑車3pは、その回転軸が接眼鏡筒11の外周に片持ち支持されている。固定滑車3pは、巻回ドラム3dから繰り出されたケーブルCbを三つの案内部材3gの内部に向かって方向変換している。
【0060】
図1から図3を参照すると、巻回ドラム3dは、接眼鏡筒11の直下に配置されている。巻回ドラム3dは、ケーブルCbを巻回している。又、巻回ドラム3dは、グリップ3Gpを回転自在に取り付けている。グリップ3Gpを把持して、巻回ドラム3dを手動で回転できる。
【0061】
図1から図3を参照して、巻回ドラム3dを一方の方向に回転すると、固定滑車3pを介して、水質計Mwを垂下できる。巻回ドラム3dを他方の方向に回転すると、固定滑車3pを介して、水質計Mwを引き上げることができる。このように、巻回装置3は、巻回ドラム3dを操作することで、水質計Mwを鉛直方向に昇降できる。
【0062】
(巻き上げ装置の構成)
次に、実施形態による確認装置10に備わる巻き上げ装置4の構成を説明する。図1又は図2及び図3(B)を参照すると、巻き上げ装置4は、頭部をリングで構成した複数のアイボルト4b、ワイヤ部材4w、及び、巻き上げドラム4dを含んでいる。
【0063】
図1又は図2及び図3(B)を参照すると、複数のアイボルト4bは、対物鏡筒12の外周に固定されている。これらのアイボルト4bは、対物鏡筒12の軸方向に沿って一列に配置されている。一部のアイボルト4bは、接眼鏡筒11の外周に固定されている。
【0064】
図1又は図2及び図3(B)を参照すると、ワイヤ部材4wの一端部は、鏡筒枠12mに固定したアイボルト4bに係留されている。ワイヤ部材4wの他端部側は、巻き上げドラム4dに巻回されている。ワイヤ部材4wの中間部は、複数のアイボルト4bの頭部に挿通されている。
【0065】
図1又は図2及び図3(B)を参照すると、巻き上げドラム4dは、接眼鏡筒11の外周に配置されている。巻き上げドラム4dは、その回転軸が接眼鏡筒11の外周に片持ち支持されている。又、巻き上げドラム4dは、グリップ4Gpを回転自在に取り付けている。グリップ4Gpを把持して、巻き上げドラム4dを手動で回転できる。
【0066】
図1から図3を参照して、巻き上げドラム4dを一方の方向に回転すると、一組のベローズ部材12b・12bの付勢力に抗して、複数のテレスコピック筒121・122・123を収縮できる。
【0067】
図1又は図2及び図3(B)を参照すると、巻き上げドラム4dは、ラチェットギアとラチェット爪で構成したラチェット機構4rを基端部に備えている。巻き上げドラム4dを一方の方向に回転すると、ラチェットギアにラチェット爪が噛み合うことで、巻き上げドラム4dが他方の方向に回転することを阻止できる。ラチェットギアからラチェット爪を解除すると、巻き上げドラム4dが他方の方向に回転することを許容できる。
【0068】
図1から図3を参照すると、このように、巻き上げ装置4は、巻き上げドラム4dを操作することで、複数のテレスコピック筒121・122・123の伸縮量を調整できる。
【0069】
(支持装置の構成)
次に、実施形態による支持装置2の構成を説明する。図4を参照すると、支持装置2は、取り付け台21と筒受け本体22を備えている。取り付け台21は、橋Bgなどに設置した欄干などの柵状物Fに着脱自在に固定できる(図1から図3参照)。筒受け本体22は、取り付け台21の上面から立設し、接眼鏡筒11を着脱自在に固定できる。
【0070】
図4を参照すると、取り付け台21は、矩形の取り付け板211、固定側挟持板212、及び、一対の角棒状の可動側挟持部材213・213を備えている。筒受け本体22は、ポール部材22pと円弧部材22sで構成している。ポール部材22pの基端部は、取り付け板211の中央部に固定されている。ポール部材22pの先端部には、円弧部材22sを固定している。
【0071】
図4を参照すると、円弧部材22sには、接眼鏡筒11を外周方向から導入できる。接眼鏡筒11の外周に円弧部材22sが当接した状態で、図示しないねじ部材を用いて、接眼鏡筒11を円弧部材22sに固定できる。
【0072】
図4を参照すると、固定側挟持板212は、取り付け板211の一端部側に下垂した状態で固定されている。固定側挟持板212は、両端部を折り曲げた一対の折り曲げ片を有している。これらの折り曲げ片には、円柱状のステイ21sを架橋している。ステイ21sには、一方の面の歯面を形成した一対の噛み合い板21g・21gを回動自在に連結している。一対の噛み合い板21g・21gは、柵状物Fの一方の面に当接できる。
【0073】
図4を参照すると、支持装置2は、一対のガイドロッド214・214を更に備えている。ガイドロッド214は、その一端部側が取り付け板211の下面に溶接などで固定されている。又、ガイドロッド214は、その他端部側が取り付け板211の他端部から突出している。取り付け板211の他端部から突出したガイドロッド214の部位には、螺旋溝を形成している。
【0074】
図4を参照すると、可動側挟持部材213は、ガイドロッド214を挿通自在なガイド穴を上部に開口している。可動側挟持部材213は、ガイドロッド214に案内されて移動できる。又、可動側挟持部材213は、L字状に形成したストッパー板215を上面に固定している。ストッパー板215は、ガイドロッド214の螺旋溝に噛み合う長穴を他端部に開口している。
【0075】
図4を参照すると、ストッパー板215の他端部と可動側挟持部材213の間には、圧縮コイルばねs1を配置している。圧縮コイルばねs1の付勢力に抗して、ストッパー板215の他端部を可動側挟持部材213に近づけると、ガイドロッド214の螺旋溝とストッパー板215の噛み合いを解除でき、可動側挟持部材213をガイドロッド214に沿って移動できる。ストッパー板215を解放すると、ガイドロッド214の螺旋溝とストッパー板215の噛み合い状態に復帰できる。
【0076】
図4を参照すると、可動側挟持部材213は、締め付けボルト23を下部に備えている。締め付けボルト23は、そのねじ部が可動側挟持部材213と螺合している。締め付けボルト23は、ノブ23aを基端部に有し、回転円盤23bを先端部に有している。
【0077】
図4を参照して、ノブ23aを把持して、締め付けボルト23を一方の方向に回転すると、回転円盤23bを柵状物Fの他方の面に向かって移動できる。これにより、締め付けボルト23と噛み合い板21gで柵状物Fを挟持できる。一方、ノブ23aを把持して、締め付けボルト23を他方の方向に回転すると、回転円盤23bを柵状物Fから後退でき、支持装置2を柵状物Fから取り外すことができる。
【0078】
図4を参照すると、このように、支持装置2は、地上に設置した柵状物Fに着脱自在に締め付けできる締め付け装置を備えている。
【0079】
[水質計着水確認装置の作用]
次に、実施形態による確認装置10の操作方法を説明しながら、確認装置10の作用及び効果を説明する。
【0080】
最初に、図1から図3を参照して、支持装置2を柵状物Fに固定する。次に、確認装置10を支持装置2に取り付ける。この場合、水質計Mwを複数の案内部材3gに挿通しておくことが好ましい。なお、確認装置10に支持装置2に取り付けた後に、支持装置2を柵状物Fに固定してもよい。
【0081】
次に、図1から図3を参照して、巻き上げドラム4dを操作して、鏡筒枠12mを水面Wfに向かって移動する。この場合、対物窓12wが水面Wfから僅かに水没することが好ましく(図3参照)、この状況を接眼窓11wから確認できる。
【0082】
次に、図1から図3を参照して、巻回ドラム3dを操作して、水質計Mwを水面Wfに向かって降下する。この過程では、水質計Mwが水面Wfに着水したことを接眼窓11wから確認できる。水質計Mwが水面Wfに着水したことを確認したら、水深「0(零)」点での水質の測定を開始する。
【0083】
図1から図3を参照すると、実施形態による確認装置10は、接眼鏡筒11と直交配置した対物鏡筒12で構成したペリスコープ1を備えているので、接眼窓11wから水質計Mwが着水したことを容易に確認できる。
【0084】
図1から図3を参照すると、実施形態による確認装置10は、対物鏡筒12の外面に沿って、水質計Mwを昇降自在に、ケーブルCbを巻回する巻回装置3を備えているので、ケーブルCbが欄干などの柵状物Fに干渉することなく、ケーブルCbを保護できる。
【0085】
図1から図3を参照すると、実施形態による確認装置10は、対物鏡筒12に対して、接眼鏡筒11を折り畳み自在に連結しているペリスコープ1を備えているので、搬送が容易であるという効果がある。
【符号の説明】
【0086】
1 ペリスコープ
2 支持装置
3 巻回装置
10 確認装置(水質計着水確認装置)
11 接眼鏡筒
11w 接眼窓
12 対物鏡筒
12w 対物窓
121・122・123 テレスコピック筒
Cb ケーブル
Mw 水質計
Wf 水面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8