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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】バンク逆潮流抑制システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/22 20060101AFI20230328BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230328BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
H02H7/22 A
H02J13/00 301A
H02J3/38 110
H02J13/00 311R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019036523
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020141515
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】石田 直樹
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-178434(JP,A)
【文献】特開2007-074774(JP,A)
【文献】特開2008-236897(JP,A)
【文献】特開2018-098873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0031810(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/22
H02J 3/38
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、前記配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、前記2次母線上で事故が発生した場合に、前記3次側配電線を遮断することにより前記3次側分散型電源から前記配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制システムであって、
事故発生箇所と前記電力系統上に存在する設備に関する情報を入力する入力部と、
電力系統線路データが格納された記憶部と、
前記入力部から入力された前記情報と前記電力系統線路データに基づいて前記2次側配電線を遮断すべきか否かの判断を行うデータ処理部と、を備え、
前記データ処理部は、前記3次母線と前記配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されていないとした場合に、前記3次側配電線を遮断するように判断することを特徴とするバンク逆潮流抑制システム。
【請求項2】
配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、前記配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、前記3次母線上で事故が発生した場合に、前記2次側配電線を遮断することにより前記2次側分散型電源から前記配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制システムであって、
事故発生箇所と前記電力系統上に存在する設備に関する情報を入力する入力部と、
電力系統線路データが格納された記憶部と、
前記入力部から入力された前記情報と前記電力系統線路データに基づいて前記2次側配電線を遮断すべきか否かの判断を行うデータ処理部と、を備え、
前記データ処理部は、前記3次母線と前記配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されて、かつ前記3次母線に他の電力系統から電力が供給されていないとした場合に、前記2次側配電線を遮断するように判断することを特徴とするバンク逆潮流抑制システム。
【請求項3】
配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、前記配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、前記2次母線上で事故が発生した場合に、前記3次側配電線を遮断することにより前記3次側分散型電源から前記配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制方法であって、
前記3次母線と前記配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されていないとした場合に、前記3次側配電線を遮断することを特徴とするバンク逆潮流抑制方法。
【請求項4】
配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、前記配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、前記3次母線上で事故が発生した場合に、前記2次側配電線を遮断することにより前記2次側分散型電源から前記配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制方法であって、
前記3次母線と前記配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されて、かつ前記3次母線に他の電力系統から電力が供給されていないとした場合に、前記2次側配電線を遮断することを特徴とするバンク逆潮流抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源が接続された電力系統において事故が起きた場合に、逆潮流の発生を抑制するシステムとそれを用いてバンク逆潮流の発生を抑制する方法に係り、特に、熟練者でなくとも安全に効率よく復旧作業を行うことが可能なバンク逆潮流抑制システム及びそれを用いたバンク逆潮流抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の企業活動,並びに普段の生活において、電気エネルギーはその扱い易さ等から、今や欠かすことのできない必須エネルギーであり、その活用域は現在も拡大している。特に近年、その拡大傾向は強まっており、これまで電気エネルギーが利用されていなかった分野において電気エネルギーを利用した商品が続々と登場し始めている。例えば、家庭で充電可能な電気自動車,電動式建機がそうである。このように、我々の社会は電気エネルギーを中心としたものへと急速に変化しており、今後電力需要はさらに増加するものと考えられる。
【0003】
このような背景から、電力会社に対し“安定した電力供給体制の構築”を望む需要者からの声がこれまで以上に高まってきている。この“安定した電力供給体制”のあるべき姿としては様々考えられるが、その一つとして、電力系統上において事故が起こった場合であっても、復旧作業を正確・迅速に、かつ安全に実施できる体制であることが挙げられる。このような体制であれば、事故により停電が生じた場合であっても、さらなる停電被害等を抑えながら、素早く安全に復旧作業を完了することができ、我々の生活等への悪影響も最小限に抑えられることができる。
【0004】
ここで、電力系統上での事故の際の復旧方法についてであるが、一般的には、電力系統内の健全な区間への被害拡大を抑制するため、まず事故箇所と健全な区域とを電気的に切り離す作業を行う。具体的には、事故箇所より電圧上位側にある設備(遮断器等)を遮断状態にするなどして、発電所から事故が発生した箇所への電力の供給を停止する操作が行われる。この操作によって、事故による悪影響は健全な区域に波及しなくなるとともに、作業者は事故が発生した箇所の復旧作業を安全に行うことができるようになる。
【0005】
このような復旧作業は、発電所から電力消費者へと電力が一方通行で繋がるような、従来の電力系統に対して行われるものである。しかしながら、近年の電力需要の増加に伴って電力系統の線路は複雑化しており、事故時に操作すべき遮断器等を短時間で特定したり、効率良く作業するための遮断順序を決定したりすること自体が難しくなってきている。さらに最近では、配電線に小規模な分散型電源を多数接続する電力系統も出現しており、このような電力系統では事故時の復旧作業の手順を検討する際に「逆潮流」の発生を考慮しなければならなくなっている。
【0006】
逆潮流とは、配電線上に分散型電源が接続された電力系統において、分散型電源の電力が母線側に向かって流れることをいう。このような逆潮流は、上流側にある発電所からの電力供給が事故等により停止したり、分散型電源が太陽光発電であって、良好な天候のために発電量が過剰になったりしたときなどに起こることが知られている。このような逆潮流は配電用変圧器(一台以上の変圧器のまとまりを特に「バンク」という。)にまで流れる場合もあり、このような逆潮流は特に「バンク逆潮流」と呼ばれる。
【0007】
分散型電源からの逆潮流(バンク逆潮流を含む。)について、簡単に図9を用いながら説明する。図9は電力を発電所からバンクを介して需要者(家庭,太陽光発電所,工場)に供給する電力系統を例示しており、図9(a)は通常の状態を示し、図9(b)はバンクと発電所の間において事故が起こった場合の状態を示し、図9(c)はバンクが故障した場合の状態を示している。
【0008】
図9(a)に示す通常状態では、発電所からの電力の負荷は太陽光発電所の負荷を上回るように調整されているため、電流の流れる方向を示す矢印は発電所から需要者へと向かうのみで、逆潮流は発生しない。しかしながら、図9(b)のようにバンクと発電所の間において事故が起こり、復旧作業のため発電所からの電力を止めた場合、太陽光発電所からの電力負荷が相対的に大きくなることにより、電流の流れは太陽光発電所から他の需要者、そしてバンクに向かうようになる。
【0009】
このように発生するバンク逆潮流は、バンクを破損させる原因となることも知られており、もしバンク逆潮流がバンクを破損させるような事態となれば、復旧期間の長期化は避けられない。このため、バンク逆潮流発生時において、電力会社は原因となる太陽光発電所を可能な限り早急に電力系統から切り離し、バンク逆潮流を停止させなければならない。また、図9(c)のようにバンクが故障し、バンクと配電線を繋ぐ線路が遮断された場合も、太陽光発電所からの電力負荷により、電流の流れは他の需要者に向かうようになる。このような場合も、需要者の電気設備の故障を誘発する可能性があり、電力会社は原因となる太陽光発電所を早急に電力系統から切り離さなければならない。
【0010】
なお、図9に示すような構成の電力系統であれば、バンク逆潮流の発生源は容易に特定可能であり、バンク逆潮流を防止することに何ら支障はない。しかしながら、実際の電力系統はバンク逆潮流の発生源となる分散型電源が複数接続されており、かつ母線,配電線等が複雑に接続されているものが殆どである。このような実際の電力系統において事故が発生した場合、まず事故箇所への電力の供給が停止される。そして、電力系統内の設備の接続状態等に基づいて停電区間の見極めがなされた後、どの分散型電源からバンク逆潮流が発生するのかが手計算等によって特定され、該当する分散型電源が配電線から切り離される。
【0011】
以上のように逆潮流も考慮しなければならないほど電力系統は複雑化・多様化しており、経験豊富な作業者であっても作業内容を間違えて不要な停電を引き起こしたり、逆潮流を防ぐことができずに新たな事故を起こしたり、最悪の場合には作業者自身が受傷したりしてしまうことも十分に予想される。また、職の流動化や少子高齢化を迎えている現代社会では、経験豊富な作業者自体が減少しており、上述した事故の発生確率を押し上げる要因になるとも考えられる。
以上のような背景から、複雑化した電力系統の事故であっても、経験の程度に関係なく、バンク逆潮流を抑制しながら安全・迅速に事故が発生した箇所を復旧するための手法の確立が急務となっている。
【0012】
ここで、事故の復旧を支援するため、最近では特許文献1に「事故復旧管理方法」という名称で、事故復旧の際に使用する設備操作手順が記載された票をコンピュータによって作成する方法が開示されている。
特許文献1で開示されている復旧管理方法は、電力系統上の設備等から作動状態を示す信号データを通信手段により受信し、その信号データを正常時の電力系統のデータと比較することで復旧操作の必要な設備を特定するものである。さらに使用者が特定された設備について操作の優先順位を付けながら、所望の復旧手順票を作成する方法である。
【0013】
また、特許文献1では、上記方法を利用したシステムについても説明されている。本システムは、電力系統の設備情報を通信手段により受信する通信CPUと、通信CPUから受けた信号データと使用者の入力データをもとにして復旧手順を導出する復旧ガイドCPUと、この復旧ガイドCPUが導出した結果をディスプレイ等に出力するための処理を行うガイド表示CPUと、キーボード等の入力装置と、ディスプレイ等の出力装置により構成されている。
【0014】
このような特許文献1に記載の発明においては、電力系統と常時接続されていることで、任意のタイミングで電力状態を確認できるという作用を有する。そして、電力系統に事故等の異常が起こった際には、操作の必要な遮断器の候補抽出処理、遮断器の操作の優先順位付け処理を行いながら、復旧手順票が簡単に作成できるという作用を有する。
【0015】
これらの作用により、遠方にある電力系統であっても通信可能な環境を構築しておけば常時監視可能であり、また通信可能域を拡大させれば複数の電力系統の統括管理も可能となる。さらに、事故が起こった際には、経験の程度によらず事故内容に適した復旧手順票を簡単に作成することができ、誤った設備の操作による被害拡大リスク、作業者の受傷リスクを低減できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開平6-178434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、分散型電源が接続されていることを前提としたものではないため、バンク逆潮流の防止を目的とする場合には対応できないという課題があった。加えて、電力系統の状態を監視するため、信号検出器の設置、通信環境の構築等、本システム導入以外にも様々な設備投資が必要となるため、誰でも簡単に導入して利用できるものではないという課題もあった。さらに、復旧手順票の作成において、使用者の好みにより内容を調整できるという特徴を有するものであることから、ある程度の経験者以外は扱うことができない可能性もあると考えられる。
【0018】
本発明はこれらの課題を鑑みてなされたものであって、その目的は分散型電源が接続された電力系統において事故が発生した場合に、熟練者でなくともバンク逆潮流の発生を防ぎつつ、効率よく復旧作業を行うことが可能なバンク逆潮流抑制システム及びそれを用いたバンク逆潮流抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、第1の発明であるバンク逆潮流抑制システムは、 配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して分散型電源が接続されている電力系統において、2次母線より上流側で事故が発生した場合に、2次側配電線を遮断することにより分散型電源から配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制システムであって、事故発生箇所と電力系統上に存在する設備に関する情報を入力する入力部と、電力系統線路データが格納された記憶部と、入力部から入力された情報と電力系統線路データに基づいて2次側配電線を遮断すべきか否かの判断を行うデータ処理部と、を備え、データ処理部は、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されていない場合に、2次側配電線を遮断するように判断することを特徴とする。
【0020】
このようなバンク逆潮流抑制システムであれば、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して分散型電源が接続されている電力系統において、事故箇所が2次母線より上流側であり、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されていないとする情報を入力部より入力すると、データ処理部は2次母線に接続されている分散型電源を発生源とするバンク逆潮流の発生を瞬時に予測するという作用を有する。そして、この予測結果に基づき、データ処理部は分散型電源からの電力供給の遮断を使用者に促す抑制手順を作成して表示するという作用も有する。
【0021】
また、第2の発明であるバンク逆潮流抑制システムは、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して分散型電源が接続されている電力系統において、2次母線より上流側で事故が発生した場合に、2次側配電線を遮断することにより分散型電源から配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制システムであって、事故発生箇所と電力系統上に存在する設備に関する情報を入力する入力部と、電力系統線路データが格納された記憶部と、入力部から入力された情報と電力系統線路データに基づいて2次側配電線を遮断すべきか否かの判断を行うデータ処理部と、を備え、データ処理部は、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されて、かつ2次母線に他の電力系統から電力が供給されていないとした場合に、2次側配電線を遮断するように判断することを特徴とする。
【0022】
このようなバンク逆潮流抑制システムであれば、バンクの2次母線に2次側配電線を介して分散型電源が接続されている電力系統において、事故箇所が発明1の場合と同様に2次母線より上流側であり、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されているとともに、2次母線に他の電力系統から電力が供給されていないとする情報が入力部より入力されると、データ処理部は2次母線に接続されている分散型電源を発生源とするバンク逆潮流並びに2次側配電線内での逆潮流の発生を瞬時に予測するという作用を有する。そして、この予測結果に基づき、データ処理部は分散型電源からの電力供給の遮断を促す抑制手順を作成し表示するという作用も有する。
【0023】
次に、第3の発明であるバンク逆潮流抑制システムは、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、2次母線上で事故が発生した場合に、3次側配電線を遮断することにより3次側分散型電源から配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制システムであって、事故発生箇所と電力系統上に存在する設備に関する情報を入力する入力部と、電力系統線路データが格納された記憶部と、入力部から入力された情報と電力系統線路データに基づいて2次側配電線を遮断すべきか否かの判断を行うデータ処理部と、を備え、データ処理部は、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されていないとした場合に、3次側配電線を遮断するように判断することを特徴とする。
【0024】
このようなバンク逆潮流抑制システムであれば、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、さらに配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、事故箇所が2次母線上である場合に、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されていないとする情報を入力部より入力すると、データ処理部は3次母線に接続されている3次側分散型電源を発生源とするバンク逆潮流の発生を瞬時に予測するという作用を有する。そして、この予測結果に基づき、データ処理部は3次側分散型電源からの電力供給の遮断を促すような抑制手順を作成して表示するという作用も有する。
【0025】
そして、第4の発明であるバンク逆潮流抑制システムは、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、3次母線上で事故が発生した場合に、2次側配電線を遮断することにより2次側分散型電源から配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制システムであって、事故発生箇所と電力系統上に存在する設備に関する情報を入力する入力部と、電力系統線路データが格納された記憶部と、入力部から入力された情報と電力系統線路データに基づいて2次側配電線を遮断すべきか否かの判断を行うデータ処理部と、を備え、データ処理部は、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されて、かつ3次母線に他の電力系統から電力が供給されていないとした場合に、2次側配電線を遮断するように判断することを特徴とする。
【0026】
このようなバンク逆潮流抑制システムであれば、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、さらに配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、事故箇所が3次母線上である場合に、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されて、かつ3次母線に他の電力系統から電力が供給されていないとする情報を入力部より入力すると、データ処理部は2次母線に接続されている2次側分散型電源を発生源とするバンク逆潮流の発生を瞬時に予測するという作用を有する。そして、この予測結果に基づき、データ処理部は2次側分散型電源からの電力供給の遮断を使用者に促す抑制手順を作成し、手順出力部がこの抑制手順を表示するという作用も有する。
【0027】
さらに、第5の発明であるバンク逆潮流抑制方法は、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して分散型電源が接続されている電力系統において、2次母線より上流側で事故が発生した場合に、2次側配電線を遮断することにより分散型電源から配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制方法であって、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されていない場合に、2次側配電線を遮断することを特徴とする。
【0028】
このようなバンク逆潮流抑制方法であれば、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して分散型電源が接続されている電力系統において、事故箇所が2次母線より上流側であり、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されていない場合に、2次母線に接続されている分散型電源を発生源としたバンク逆潮流が発生すると判断するという作用を有する。
【0029】
加えて、第6の発明であるバンク逆潮流抑制方法は、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して分散型電源が接続されている電力系統において、2次母線より上流側で事故が発生した場合に、2次側配電線を遮断することにより分散型電源から配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制方法であって、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されて、かつ2次母線に他の電力系統から電力が供給されていないとした場合に、2次側配電線を遮断することを特徴とする。
【0030】
このようなバンク逆潮流抑制方法であれば、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して分散型電源が接続されている電力系統において、事故箇所が2次母線より上流側であり、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断され、かつ2次母線に他の電力系統から電力が供給されていない場合に、2次母線に接続されている分散型電源を発生源としたバンク逆潮流並びに2次側配電線内での逆潮流が発生すると判断するという作用を有する。
【0031】
また、第7の発明であるバンク逆潮流抑制方法は、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、2次母線上で事故が発生した場合に、3次側配電線を遮断することにより3次側分散型電源から配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制方法であって、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されていないとした場合に、3次側配電線を遮断することを特徴とする。
【0032】
このようなバンク逆潮流抑制方法であれば、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、事故箇所が2次母線上であり、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されていない場合に、3次母線に接続されている3次側分散型電源を発生源としたバンク逆潮流が発生すると判断するという作用を有する。
【0033】
最後に、第8の発明であるバンク逆潮流抑制方法は、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、3次母線上で事故が発生した場合に、2次側配電線を遮断することにより2次側分散型電源から配電用変圧器に向かう逆潮流の発生を防ぐバンク逆潮流抑制方法であって、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されて、かつ3次母線に他の電力系統から電力が供給されていないとした場合に、2次側配電線を遮断することを特徴とする。
【0034】
このようなバンク逆潮流抑制方法であれば、配電用変圧器の2次母線に2次側配電線を介して2次側分散型電源が接続され、配電用変圧器の3次母線に3次側配電線を介して3次側分散型電源が接続されている電力系統において、事故箇所が3次母線上であり、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断され、かつ3次母線に他の電力系統から電力が供給されていない場合に、2次側配電線に接続されている2次側分散型電源を発生源としたバンク逆潮流が発生すると判断するという作用を有する。
【発明の効果】
【0035】
第1の発明のバンク逆潮流抑制システムによれば、事故箇所が2次母線より上流側であり、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されていない場合のバンク逆潮流の発生を瞬時に予測し、その抑制手順を簡単に出力することが可能となる。この結果、同様の事故が起こった際に、この抑制手順を確認しながら慌てることなく事故の復旧を行うことが可能となる。これにより、作業時の設備操作ミスも抑えられ、新たな事故の発生を抑えながら復旧作業を素早く安全に行うことができるという効果があると考えられる。
さらに、上述するように操作容易なシステムであるため、従来のように経験豊富な作業者によらずとも、誰でも簡単に扱うことが可能となる。これにより、将来人材不足が懸念される中、電力関連作業者の確保もし易くなると考えられる。
【0036】
次に、第2の発明のバンク逆潮流抑制システムによれば、事故箇所が2次母線より上流側であり、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されているとともに、2次母線に他の電力系統から電力が供給されていない場合のバンク逆潮流並びに2次側配電線内での逆潮流の発生を瞬時に予測し、その抑制手順を簡単に出力することが可能となる。この結果、同様の事故が起こった際に、この抑制手順を確認しながら慌てることなく事故の復旧を行うことが可能となる。これにより作業時の設備操作ミスも抑えられ、新たな事故の発生を抑えながら復旧作業を素早く安全に行うことができるという効果があると考えられる。
さらに、上述するように操作容易なシステムであるため、従来のように経験豊富な作業者によらずとも、誰でも簡単に扱うことが可能となる。これにより、将来人材不足が懸念される中、電力関連作業者の確保もし易くなると考えられる。
【0037】
そして、第3の発明のバンク逆潮流抑制システムによれば、事故箇所が2次母線上であり、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されていない場合におけるバンク逆潮流の発生を瞬時に予測し、その抑制手順を簡単に出力することが可能となる。この結果、同様の事故が起こった際に、この抑制手順を確認しながら慌てることなく事故の復旧を行うことが可能となる。作業時の設備操作ミスも抑えられ、新たな事故の発生を抑えながら復旧作業を素早く安全に行うことができるという効果があると考えられる。
さらに、上述するように操作容易なシステムであるため、従来のように経験豊富な作業者によらずとも、誰でも簡単に扱うことが可能となる。これにより、将来人材不足が懸念される中、電力関連作業者の確保もし易くなると考えられる。
【0038】
そして、第4の発明のバンク逆潮流抑制システムによれば、事故箇所が3次母線上であり、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断され、3次母線に他の電力系統から電力が供給されていない場合におけるバンク逆潮流の発生を瞬時に予測し、その抑制手順を簡単に出力することが可能となる。
【0039】
この結果、同様の事故が起こった際に、この抑制手順を確認しながら慌てることなく事故の復旧を行うことが可能となる。作業時の設備操作ミスも抑えられ、新たな事故の発生を抑えながら復旧作業を素早く安全に行うことができるという効果があると考えられる。さらに、上述するように操作容易なシステムであるため、従来のように経験豊富な作業者によらずとも、誰でも簡単に扱うことが可能となる。これにより、将来人材不足が懸念される中、電力関連作業者の確保もし易くなると考えられる。
【0040】
また、第5の発明であるバンク逆潮流抑制方法によれば、事故箇所が2次母線より上流側であり、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されていないとする入力に対し、直ちに2次側配電線を遮断することを抑制手順として出力する。このため、同じ状況下で事故が起こった際に慌ててバンク逆潮流の発生源の特定等の煩雑な作業を行うことなく、単に事故箇所と電力系統上の設備の接続状態を入力するだけで抑制手順を導出でき、バンク逆潮流対策を早期に講じることが可能となる。
さらに、簡単な方法ながらバンク逆潮流を抑制するための正確な手順を提示するため、作業時の設備操作ミスも抑えられ、新たな事故の発生を抑えながら復旧作業を素早く安全に行うことができるという効果があると考えられる。
【0041】
次に、第6の発明であるバンク逆潮流抑制方法によれば、事故箇所が2次母線より上流側であり、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断され、かつ2次母線に他の電力系統から電力が供給されていないとする入力に対し、直ちに2次側配電線を遮断することを抑制手順として出力する。
【0042】
このため、同じ状況下で事故が起こった際に慌ててバンク逆潮流の発生源の特定等の煩雑な作業を行うことなく、単に事故箇所と電力系統上の設備の接続状態を入力するだけで抑制手順を導出でき、バンク逆潮流対策を早期に講じることが可能となる。さらに、簡単な方法ながらバンク逆潮流を抑制するための正確な手順を示すものであり、作業時の設備操作ミスも抑えられ、新たな事故の発生を抑えながら復旧作業を素早く安全に行うことができるという効果があると考えられる。
【0043】
さらに、第7の発明であるバンク逆潮流抑制方法によれば、事故箇所が2次母線上であり、3次母線と配電用変圧器を結ぶ第2の線路が遮断されていないとする入力に対し、直ちに3次側配電線を遮断することを抑制手順として出力する。このため、同じ状況下で事故が起こった際に慌ててバンク逆潮流の発生源の特定等の煩雑な作業を行うことなく、単に事故箇所と電力系統上の設備の接続状態を入力するだけで抑制手順を導出でき、バンク逆潮流対策を早期に講じることが可能となる。
さらに、簡単な方法ながらバンク逆潮流を抑制するための正確な手順を示すものであり、作業時の設備操作ミスも抑えられ、新たな事故の発生を抑えながら復旧作業を素早く安全に行うことができるという効果があると考えられる。
【0044】
そして、第8の発明であるバンク逆潮流抑制方法によれば、事故箇所が3次母線上であり、2次母線と配電用変圧器を結ぶ第1の線路が遮断されていないとする入力に対し、直ちに2次側配電線を遮断することを抑制手順として出力する。このため、同じ状況下で事故が起こった際に慌ててバンク逆潮流の発生源の特定等の煩雑な作業を行うことなく、単に事故箇所と電力系統上の設備の接続状態を入力するだけで抑制手順を導出でき、バンク逆潮流対策を早期に講じることが可能となる。
さらに、簡単な方法ながらバンク逆潮流を抑制するための正確な手順を示すものであり、作業時の設備操作ミスも抑えられ、新たな事故の発生を抑えながら復旧作業を素早く安全に行うことができるという効果があると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムの構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムについて説明するための電力系統の例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムの、第1の出力表示画面の例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムの、第2の出力表示画面の例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムの、第3の出力表示画面の例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムの、第4の出力表示画面の例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムを用いてバンク逆潮流抑制の手順を導出する際の処理手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムを用いてバンク逆潮流を抑制する手順を導出する際の処理手順を示すフローチャートである。
図9】バンク逆潮流の発生について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明のバンク逆潮流抑制システム及びそれを用いたバンク逆潮流抑制方法について、図1乃至図8を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムの構成を示している。バンク逆潮流抑制システム1は、予測事故箇所、対象となる電力系統上の設備に関する設備情報を入力するための入力部2と、この入力部2より入力される予測事故箇所と設備情報を、記憶部4に格納された電力系統データと照合しながら電力系統内の停電区間と線路接続状態を把握し、発生が予想されるバンク逆潮流の発生源を特定することでバンク逆潮流を抑制する手順を導出するデータ処理部3と、このデータ処理部3により導出された抑制手順をディスプレイに表示させたり、プリンターに出力させたりして視覚的に確認できるようにする手順出力部5を備えている。
【0047】
次に、電力系統の基本モデル図を参照しながら、入力部2において入力する情報の内容について説明する。図2図1に示したバンク逆潮流抑制システムに係る電力系統を模式的に示したものであり、1台のバンクをそれぞれ有する2つの電力系統から各変圧器の2次母線と3次母線にそれぞれ電力が供給されるように構成されている。なお、矢印は発電所から電力が供給される向きを示している。
【0048】
図2に示す電力系統6において、送電線7,8に沿って流れる電流は、途中1次母線9により連絡されながらも、バンク10,11に流入する。これらの流入した電流はバンク10,11において、さらに第1の線路7a,8aと第2の線路7b,8bを流れる電流に分けられ、第1の線路7a,8aの電流は各バンクの2次側に設置されている2次母線7hに向けて流れ、第2の線路7b,8bの電流は3次側に設置されている3次母線8hに向けて流れることとなる。そして、電流は最終的に2次,3次母線に接続された需要者に供給される。
【0049】
次に、電力系統6上に設置されている設備に関して説明する。送電線7,8の上と、1次母線9の上には、断路器7c,7e,8c,8e,9aと、遮断器7d,8d,9bが設置されている。
以上の設備は電力系統において必須設備となるが、この他にバンク10,11の下流側には断路器,遮断器が複数設置される。それらの設置状況は電力系統によって様々であるが、図2では電力系統上に設置されている可能性のある設備を全て記載している。設置される可能性のある設備としては、バンク10,11と2次母線7hとの間に設置される遮断器(順に7f,8f)、さらにバンク10,11と3次母線8hとの間に設置される遮断器(順に7g,8g)である。また、2次母線7h,3次母線8h上において、バンク10,11のそれぞれから流入する電流の行き来を調整できるように、遮断器12,13が順に設置されている。
【0050】
そして、2次母線7hには2次側分散型電源14,15が順に2次側配電線18,19を介して接続され、3次母線8hには3次側分散型電源16,17が順に3次側配電線20,21を介して接続されている。なお、2次側配電線18,19と、3次側配電線20,21は何れも遮断器が設けられている。
ここで、バンク逆潮流抑制システム1において必要とする情報の一つは、バンク10,11の下流側に位置する設備の接続状態となる。なお、2次母線7h及び3次母線8hに接続されている配電線は、常時接続されているとしてバンク逆潮流抑制システム1内で処理されるものとする。
【0051】
一方、電力系統上での事故の多くは、図中の破線で囲まれた箇所P1乃至P8において発生する。ここで、P1,P2,P4,P5は2次母線7hより上流側で、P3,P6は2次母線7h上で、P7,P8は3次母線8h上で事故が発生する箇所である。なお、基本的にP1乃至P3,P7で事故が発生した場合には遮断器7d,9bが遮断され、P4乃至P6,P8で事故が発生した場合には遮断器8b,9bが遮断される。
これらの遮断器7d,8d,9bが遮断されるのは発電所からの電力が事故の発生した箇所へ供給されるのを防いで、復旧作業時の安全性を確保するためである。しかしながら、遮断器の操作が適切でない場合、電力系統上の電力負荷のバランスが崩れてしまい、分散型電源からのバンク逆潮流の発生を引き起こす恐れがある。
【0052】
このような電力系統6に対し、P1乃至P3,P7において事故が発生すると予測した場合のバンク逆潮流抑制システムの活用例について、図3乃至図6を用いて説明する。なお、P4乃至P6,P8を事故箇所とした場合については、電力系統6の線路構造の対称性からP1乃至P3,P7と類似の結果となるため、その説明を省略する。
【0053】
まず、P1で事故が発生すると予測する場合について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムの、第1の出力表示画面の例を示す図である。なお、図3乃至図6の全てに共通するが、図中の電力系統図は図2と同じものであり、図が煩雑になるのを避けるため、一部の設備の名称,符号については、その記載を省略している。また、表示されている各種図形については、図中に説明を記載している。
【0054】
図3に示すように、2次母線7hより上流側のP1で事故が発生すると予測する場合(送電線上の事故に対応する)、発電所からの電力が事故箇所へ供給されないよう遮断器7d,9bが基本的に遮断されることとなる(図3中に「基本遮断箇所」として記号で表示)。なお、断路器7eは接続状態にあるが、この断路器7eの接続状態はバンク逆潮流の発生に何ら影響しないため、遮断された状態であっても良い。なぜなら、断路器7eの接続状態によらず、事故箇所より下流側はバンク逆潮流発生のための必須条件と言える停電区間(通常より電力負荷の低下した区間とも考えられる)となるためである。
【0055】
ここで、第1の線路7a上の遮断器7fが遮断されていない場合、矢印記号で示す電流が2次側分散型電源14から停電状態にある2次母線7hへ流れ、その後、遮断器7fを通過してバンク10側へ向かうバンク逆潮流となる。このようなバンク逆潮流を抑制するには、矢印の起点となる2次側分散型電源14と2次母線7hとの間の2次側配電線18を遮断すれば良いことが容易に理解できる。そして、この図のように2次側配電線18に目視確認容易な標識を付せば、遮断箇所をさらに直感的に理解することができるようにもなる。
【0056】
次に、P2で事故が発生すると予測する場合について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムの、第2の出力表示画面の例を示す図である。
図4に示すように、2次母線7hより上流側のP2で事故が発生すると予測する場合(事故原因としてバンク故障等がある)、P1で事故が発生すると予測する場合と同様に、発電所からの電力が事故箇所へ供給されないよう遮断器7d,9bが基本的に遮断される(図4中に「基本遮断箇所」として記号で表示)。加えて、事故箇所に隣接する遮断器7f,7gも基本遮断箇所として通常遮断される。なお、断路器7eは上述したように接続状態であっても、遮断状態であっても良い。
【0057】
ここで、第一の線路7a上の遮断器7fが遮断され、かつ2次母線7hに他の電力系統からの電力が供給されていない(遮断器12が遮断状態にあることを意味する)場合には、矢印記号で示す電流が分散型電源14から停電状態にある2次母線7hへ向かうバンク逆潮流となる。このような逆潮流を抑制するには、矢印の起点となる2次側分散型電源14と2次母線7hとの間の2次側配電線18を遮断すれば良いことが容易に理解できる。そして、この図のように2次側配電線18に目視確認容易な標識を付せば、遮断箇所をさらに直感的に理解することができるようになる。
【0058】
次に、P3で事故が発生すると予測する場合について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムの、第3の出力表示画面の例を示す図である。
図5に示すように、2次母線7h上のP3で事故が発生すると予測する場合、発電所からの電力が事故箇所へ供給されないよう、まず遮断器7d,9bが基本的に遮断される(図5中に「基本遮断箇所」として記号で表示)。加えて、事故箇所に隣接する遮断器7f,12,18も基本遮断箇所として通常遮断される。なお、断路器7eは上述したように接続状態であっても、遮断状態であっても良い。
【0059】
ここで、第2の線路7b上の遮断器7gが遮断されていない場合、矢印記号で示す電流が分散型電源16から停電状態にある3次母線8hへ流れ、その後、遮断器7gを通過してバンク10側へ向かうバンク逆潮流となる。このような逆潮流を抑制するには、矢印の起点となる3次側分散型電源16と3次母線8hとの間の3次側配電線20を遮断すれば良いことが容易に理解できる。そして、この図のように3次側配電線20に目視確認容易な標識を付せば、遮断箇所をさらに直感的に理解することができるようになる。
【0060】
次に、P7で事故が発生すると予測する場合について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムの、第4の出力表示画面の例を示す図である。
図6に示すように、3次母線8h上のP7で事故が発生すると予測する場合、発電所からの電力が事故箇所へ供給されないよう、まず遮断器7d,9bが基本的に遮断される(図6中に「基本遮断箇所」として記号で表示)。加えて、事故箇所に隣接する遮断器7g,13,20も基本遮断箇所として通常遮断される。なお、断路器7eは上述したように接続状態であっても、遮断状態であっても良い。
【0061】
ここで、第1の線路7a上の遮断器7fが遮断されていない場合、矢印記号で示す電流が2次側分散型電源14から停電状態にある2次母線7hへ流れ、その後遮断器7fを通過してバンク10側へ向かうバンク逆潮流となる。このような逆潮流を抑制するには、矢印の起点となる2次側分散型電源14と2次母線7hとの間の2次側配電線18を遮断すれば良いことが容易に理解できる。そして、この図のように2次側配電線18に目視確認容易な標識を付せば、遮断箇所をさらに直感的に理解することができるようになる。
なお、図3乃至図6のいずれにも言えることだが、表示の仕方については特に限定しておらず、例えば別のデザイン図を用いるものでも良く、他の作業上有用な情報が表示されるものであっても良い。
【0062】
以上の通り、バンク逆潮流抑制システム1は明瞭な表示形式でバンク逆潮流の抑制手順を出力することができる。次に、このバンク逆潮流抑制システム1のデータ処理部3が処理の際に用いる、バンク逆潮流を抑制する手順の導出方法について説明する。
図7は本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムを用いてバンク逆潮流抑制の手順を導出する際の処理手順を示すフローチャートである。
【0063】
バンク逆潮流抑制システム1を使用する者はバンク逆潮流抑制手順を導出するため、図7に示すように、まず、事故が発生すると予測する箇所が2次母線の上流側か否かを入力する(ステップS1)。このステップS1において当該箇所が2次母線より上流側であるとした場合、次に第1の線路が遮断されているか否かを入力する(ステップS2)。このステップS2において、対象とする第1の線路が遮断されていないとすれば、2次側分散型電源からのバンク逆潮流が発生するため、2次母線と2次側分散型電源との間の2次側配電線を遮断しなければならないとバンク逆潮流抑制システム1は判断し(ステップS4)、これを抑制手順として出力する。
【0064】
一方、先のステップS2において第1の線路が遮断されているとした場合、次に2次母線に他の電力系統から電力が供給されているか否かを入力する(ステップS3)。このステップS3において、他の電力系統から電力が供給されているとした場合には、2次側分散型電源よりバンク逆潮流は発生しないため、2次側配電線を遮断する必要はないとバンク逆潮流抑制システム1が判断し(ステップS5)、これを抑制手順として出力する。一方、先のステップS3において、他の電力系統から電力が供給されていない場合には、バンク逆潮流又は逆潮流が発生するため、2次側配電線を遮断する必要があるとバンク逆潮流抑制システム1は判断し(ステップS4)、これを抑制手順として出力する。
【0065】
また、ステップS1において、事故が発生すると予測する箇所が2次母線より上流側ではないとした場合、図8に示すフローチャートに基づき処理が為されることになる。ここで、図8は本発明の実施の形態に係るバンク逆潮流抑制システムを用いてバンク逆潮流抑制の手順を導出する際の処理手順を示すフローチャートであり、図7のステップS1において事故が発生すると予測する箇所が2次母線の上流側にない場合に行われるものである。
まず、ステップS6において第2の線路が遮断されているか否かを入力するが、第2の線路が遮断されていないとすれば、3次側分散型電源からのバンク逆潮流が発生するため、3次側配電線を遮断しなければならないとバンク逆潮流抑制システム1は判断し(ステップS8)、これを抑制手順として出力する。
【0066】
一方、ステップS6において第2の線路が遮断されているとした場合、次に3次母線に他の電力系統から電力が供給されているか否かを入力する(ステップS7)。このステップS7において、他の電力系統から電力が供給されている場合には、3次側分散型電源よりバンク逆潮流は発生しないため、3次側配電線を遮断する必要はないとバンク逆潮流抑制システム1が判断し(ステップS9)、これを抑制手順として出力する。
一方、ステップS7において、他の電力系統から電力が供給されていない場合には、3次母線内での逆潮流が発生するため、3次側配電線を遮断する必要があるとバンク逆潮流抑制システム1は判断し(ステップS8)、これを抑制手順として出力する。
【0067】
以上から、本発明のバンク逆潮流抑制システム及びその方法は、事故が発生すると予測する箇所と電力系統上の設備情報を入力するだけで、バンク逆潮流が発生するか否かの判定を行うことができ、発生する場合には抑制手順を簡単かつ迅速に出力できるという作用を有する。この作用により、事故対策を万全なものにすることができるとともに、バンク逆潮流を伴う事故が起こった際に、作業者は慌てることなく抑制手順を出力して正確に作業を行うことができるため、ミスを抑えながら復旧作業を素早く安全に行うことができるという効果も期待される。
【0068】
また、操作自体が簡便であるため、従来のように経験豊富な作業者に依存せずとも、誰でも簡単にバンク逆潮流抑制手順を出力することができる。加えて、処理するデータ量も少なく、タブレット型コンピュータ等でも使用できるため、現場において出力内容を確認しながらの作業も可能となり、さらに作業を迅速かつ正確に行えると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のバンク逆潮流抑制システム及びそれを用いたバンク逆潮流抑制方法は、分散型電源が接続された電力系統において、地絡事故や断線事故等に伴ってバンク逆潮流が発生する可能性がある場合に有用である。
【符号の説明】
【0070】
1…バンク逆潮流抑制システム 2…入力部 3…データ処理部 4…記憶部 5…手順出力部 6…電力系統 7…送電線 7a…第1の線路 7b…第2の線路 7c…断路器 7d…遮断器 7e…断路器 7f,7g…遮断器 7h…2次母線 8…送電線 8a…第1の線路 8b…第2の線路 8c…断路器 8d…遮断器 8e…断路器 8f,8g…遮断器 8h…3次母線 9…1次母線 9a…断路器 9b…遮断器 10,11…バンク 12,13…遮断器 14,15…2次側分散型電源 16,17…3次側分散型電源 18,19,20,21…遮断器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9