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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/0423 20190101AFI20230328BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
F15B21/0423
E02F9/00 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019047752
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020148296
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大雄
(72)【発明者】
【氏名】君谷 司
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-283801(JP,A)
【文献】特公昭47-046554(JP,B1)
【文献】特開2011-042958(JP,A)
【文献】特開2014-009805(JP,A)
【文献】特開2000-257608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F15B 21/0423
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
作動油を貯留する作動油タンクと、
上記エンジンの駆動によって上記作動油タンク内の作動油を吐出する油圧ポンプと、
上記エンジン、作動油タンク及び油圧ポンプを収容するエンジンルームと、
上記油圧ポンプから吐出された作動油によって作動する油圧アクチュエータと、
上記エンジンルーム外に設けられ、上記油圧アクチュエータから排出された作動油を上記作動油タンク側に送る第1戻り配管と
上記エンジンルームが搭載される上部旋回体と、
上記上部旋回体に取り付けられる足場と
を備え、
上記第1戻り配管が放熱室を有しており、
上記放熱室が、少なくとも上記足場の一部を構成している建設機械。
【請求項2】
上記足場が上記上部旋回体に対して着脱可能に設けられている請求項に記載の建設機械。
【請求項3】
エンジンと、
作動油を貯留する作動油タンクと、
上記エンジンの駆動によって上記作動油タンク内の作動油を吐出する油圧ポンプと、
上記エンジン、作動油タンク及び油圧ポンプを収容するエンジンルームと、
上記油圧ポンプから吐出された作動油によって作動する油圧アクチュエータと、
上記エンジンルーム外に設けられ、上記油圧アクチュエータから排出された作動油を上記作動油タンク側に送る第1戻り配管と
を備え、
上記第1戻り配管が放熱室を有しており、
上記エンジンルーム内に収容され、上記放熱室に対し、その作動油の流れの下流側に配設される熱交換器をさらに備える建設機械。
【請求項4】
エンジンと、
作動油を貯留する作動油タンクと、
上記エンジンの駆動によって上記作動油タンク内の作動油を吐出する油圧ポンプと、
上記エンジン、作動油タンク及び油圧ポンプを収容するエンジンルームと、
上記油圧ポンプから吐出された作動油によって作動する油圧アクチュエータと、
上記エンジンルーム外に設けられ、上記油圧アクチュエータから排出された作動油を上記作動油タンク側に送る第1戻り配管と、
上記エンジンルーム内に収容され、上記油圧アクチュエータから排出された作動油を上記作動油タンク側に送る第2戻り配管と、
上記油圧アクチュエータから排出された作動油の流路を上記第1戻り配管及び第2戻り配管のいずれかに切り替え可能な切替弁と、
上記切替弁の切替を制御するコントローラと
を備え、
上記第1戻り配管が放熱室を有する建設機械。
【請求項5】
上記油圧アクチュエータを含み、湿式クラッチを有するウインチを備え、
上記湿式クラッチが、上記油圧ポンプから吐出された作動油が導入される熱交換路を有する請求項に記載の建設機械。
【請求項6】
上記コントローラが、上記ウインチのフリーフォールモード時に上記切替弁を上記第2戻り配管側に切り替える請求項に記載の建設機械。
【請求項7】
上記熱交換路に導入される作動油の油温を測定可能な温度センサをさらに備え、
上記コントローラが、上記ウインチのフリーフォールモード時に上記温度センサによって測定された作動油の油温が閾値以下であった場合に上記切替弁を上記第2戻り配管側に切り替える請求項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械では、上部旋回体にエンジンルームが搭載されている。このエンジンルーム内には、例えばオイルクーラ、冷却ファン、エンジン、油圧ポンプ、作動油タンクがこの順で配設されている(特開2008-261270号公報参照)。このエンジンルーム内は高温となりやすいため、吸気口及び排気口を設けて冷却ファンによってオイルクーラ側から作動油タンク側に冷却風を通風している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-261270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日、輸送規制や輸送コスト削減の観点から建設機械の小型化が図られており、エンジンルームのサイズも小さくなってきている。これに伴って、エンジンルーム内の空間が小さくなることで、エンジンルーム内の高温化が顕著になってきている。
【0005】
この点、例えばオイルクーラの放熱機能を高めることでエンジンルーム内の高温化を抑制することが考えられる。しかしながら、上述のようにエンジンルームが小型化されるとオイルクーラのサイズを大きくし難いため、このオイルクーラの放熱機能を高めることは困難である。また、仮にオイルクーラの放熱機能を高めることが可能であったとしても、熱交換された高温の気体がエンジンルーム内に滞留しやすくなり、オイルクーラよりも冷却風の流れ方向の下流側に位置する作動油タンクの表面からの放熱を十分に確保できないおそれがある。
【0006】
一方、上記冷却ファンの風量を大きくすることや排気側にさらなるファンを設けることで放熱効果を高めることも考えられる。しかしながら、この構成によると、風量やファンの増加に起因して騒音が大きくなる。
【0007】
上記不都合に鑑みて、本発明は、騒音の増大を防ぎつつエンジンルーム内の高温化を抑制することができる建設機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る建設機械は、エンジンと、作動油を貯留する作動油タンクと、上記エンジンの駆動によって上記作動油タンク内の作動油を吐出する油圧ポンプと、上記エンジン、作動油タンク及び油圧ポンプを収容するエンジンルームと、上記油圧ポンプから吐出された作動油によって作動する油圧アクチュエータと、上記エンジンルーム外に設けられ、上記油圧アクチュエータから排出された作動油を上記作動油タンク側に送る第1戻り配管とを備え、上記第1戻り配管が放熱室を有する。
【0009】
当該建設機械は、油圧アクチュエータから排出された作動油を作動油タンク側に送る第1戻り配管がエンジンルーム外に設けられており、この第1戻り配管が放熱室を有しているので、騒音の増大を防ぎつつ、エンジンルーム内の高温化を抑制することができる。
【0010】
当該建設機械は、上記エンジンルームが搭載される上部旋回体と、上記上部旋回体に取り付けられる足場とをさらに備え、上記放熱室が少なくとも上記足場の一部を構成しているとよい。このように、上記エンジンルームが搭載される上部旋回体と、上記上部旋回体に取り付けられる足場とをさらに備え、上記放熱室が少なくとも上記足場の一部を構成していることによって、上記放熱室の表面積を容易かつ確実に大きくすることができると共に、放熱室を設けることに起因する機械の大型化を抑制することができる。
【0011】
上記足場が上記上部旋回体に対して着脱可能に設けられているとよい。このように、上記足場が上記上部旋回体に対して着脱可能に設けられていることによって、上記放熱室を上記エンジンルーム外に設けることに起因して当該建設機械が輸送制限に抵触するのを防止することができる。
【0012】
当該建設機械は、上記エンジンルーム内に収容され、上記放熱室に対し、その作動油の流れの下流側に配設される熱交換器をさらに備えるとよい。当該建設機械は、上記放熱室によって作動油の熱を十分に放熱することができるので、この放熱室の下流側でエンジンルーム内に熱交換器を設けた場合でも、この熱交換器の熱交換によって上記エンジンルーム内が過度に高温になり難い。
【0013】
当該建設機械は、上記エンジンルーム内に収容され、上記油圧アクチュエータから排出された作動油を上記作動油タンク側に送る第2戻り配管と、上記油圧アクチュエータから排出された作動油の流路を上記第1戻り配管及び第2戻り配管のいずれかに切り替え可能な切替弁と、上記切替弁の切替を制御するコントローラとをさらに備えるとよい。この構成によると、例えば作動油に必要とされる温度に基づいて切替弁を切り替えることで、作動油の油温を適切に制御することができる。
【0014】
当該建設機械は、上記油圧アクチュエータを含み、湿式クラッチを有するウインチを備え、上記湿式クラッチが、上記油圧ポンプから吐出された作動油が導入される熱交換路を有するとよい。当該建設機械は、上記切替弁によって作動油の流路を第1戻り配管及び第2戻り配管のいずれかに切り替えることができるので、適切に温度調整された作動油を上記熱交換路に導入することができる。これにより、上記ウインチの作動効率を高めることができる。
【0015】
上記コントローラが、上記ウインチのフリーフォールモード時に上記切替弁を上記第2戻り配管側に切り替えるとよい。このように、上記コントローラが、上記ウインチのフリーフォールモード時に上記切替弁を上記第2戻り配管側に切り替えることによって、フリーフォールモード時における吊り荷の落下速度を容易に大きくすることができる。
【0016】
当該建設機械は、上記熱交換路に導入される作動油の油温を測定可能な温度センサをさらに備え、上記コントローラが、上記ウインチのフリーフォールモード時に上記温度センサによって測定された作動油の油温が閾値以下であった場合に上記切替弁を上記第2戻り配管側に切り替えるとよい。このように、上記熱交換路に導入される作動油の油温を測定可能な温度センサをさらに備え、上記コントローラが、上記ウインチのフリーフォールモード時に上記温度センサによって測定された作動油の油温が閾値以下であった場合に上記切替弁を上記第2戻り配管側に切り替えることによって、フリーフォールモード時における吊り荷の落下速度を容易に制御することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る建設機械は、騒音の増大を防ぎつつエンジンルーム内の高温化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の一部分を示す模式的平面図である。
図2図1の建設機械の模式的部分側面図である。
図3図1の建設機械の油圧回路図である。
図4図1の建設機械の放熱室の模式的斜視図である。
図5図1の建設機械の作動油の流路の切替手順を示すフローチャートである。
図6図1の建設機械の作動油の流路の図5とは異なる切替手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0020】
[建設機械]
図1図3の建設機械は、建設作業を行う機械であり、例えばクローラクレーンである。当該建設機械は、下部走行体1と、下部走行体1上に搭載される上部旋回体2とを備える。下部走行体1は、自走可能に構成されており、走行装置として一対のクローラーを有する。当該建設機械は、エンジン11と、作動油を貯留する作動油タンク12と、エンジン11の駆動によって作動油タンク12内の作動油を吐出する油圧ポンプ13(第1油圧ポンプ13a及び第2油圧ポンプ13b)と、エンジン11、作動油タンク12及び油圧ポンプ13を収容するエンジンルーム3とを備える。エンジンルーム3は上部旋回体2に搭載されている。また、上部旋回体2には、キャブ4、ウインチ5(図1では不図示)等が搭載されている。キャブ4は、作業者が搭乗する運転室であり、エンジンルーム3に隣接する位置に配置されている。
【0021】
図3に示すように、当該建設機械は、油圧ポンプ13a,13bから吐出された作動油によって作動する油圧アクチュエータ14,15を備える。具体的には、当該建設機械は、第1油圧ポンプ13aから吐出された作動油によって作動する第1油圧アクチュエータ14及び第2油圧ポンプ13bから吐出された作動油によって作動する第2油圧アクチュエータ15を備える。
【0022】
当該建設機械は、エンジンルーム3外に設けられ、第2油圧アクチュエータ15から排出された作動油を作動油タンク12側に送る第1戻り配管16と、エンジンルーム3内に収容され、第1油圧アクチュエータ14及び第2油圧アクチュエータ15から排出された作動油を作動油タンク12側に送る第2戻り配管17と、第2油圧アクチュエータ15から排出された作動油の流路を第1戻り配管16及び第2戻り配管17のいずれかに切り替え可能な切替弁18と、切替弁18の切替を制御するコントローラ19とを備える。図2及び図4に示すように、第1戻り配管16は放熱室16aを有する。
【0023】
さらに、当該建設機械は、上部旋回体2に取り付けられる足場20a,20bと、エンジンルーム3内に収容され、放熱室16aに対し、その作動油の流れの下流側に配設される熱交換器21と、冷却ファン22とを備える。エンジンルーム3内では、冷却ファン22による冷却風の流れ方向の上流側から下流側に向けて、例えば熱交換器21、冷却ファン22、エンジン11、油圧ポンプ13及び作動油タンク12がこの順で配置されている。
【0024】
(油圧ポンプ)
第1油圧ポンプ13aは、例えば固定容量型のポンプである。第1油圧ポンプ13aと作動油タンク12との流路にはフィルター23が配設されている。第2油圧ポンプ13bは、例えば可変容量型のポンプである。第2油圧ポンプ13bと作動油タンク12との流路にはフィルター23が配設されている。後述するように、当該建設機械の組立作業の際には、第1油圧ポンプ13aから吐出された作動油は、第1コントロールバルブ26を介して第1油圧アクチュエータ14を駆動させる。一方、当該建設機械の組立後には、第1油圧ポンプ13aから吐出された作動油は、第1コントロールバルブ26を介して湿式クラッチ24の冷却ラインを構成する熱交換路24fを通過し、フィルター27aを介して作動油タンク12に還流する。
【0025】
(ウインチ)
ウインチ5は、第2油圧アクチュエータ15を含む。また、ウインチ5は湿式クラッチ24を有する。具体的には、ウインチ5は、ワイヤ5aを巻き取るウインチドラム5bと、第2油圧ポンプ13bから吐出された作動油によって駆動される油圧モータ(第2油圧アクチュエータ15)と、第2油圧アクチュエータ15の回転を減速してウインチドラム5bに伝達する減速機5cと、減速機5cの動力伝達を遮断又は接続状態に切り替え可能な湿式クラッチ24とを有する。
【0026】
(湿式クラッチ)
湿式クラッチ24は、中心部が連結シャフトに回転一体可能、かつ軸方向に摺動可能にスプライン結合された複数枚のインナディスク24a(1枚のみ図示)と、インナディスク24aの周縁部と軸方向に沿って交互に配置され、かつケーシング24bに軸方向に移動可能に支持された複数枚のアウタディスク24c(1枚のみ図示)と、インナディスク24a及びアウタディスク24cをケーシング24bの側壁24eとの間に押圧可能なピストン24dとをする。また、湿式クラッチ24は、第1油圧ポンプ13aから吐出された作動油が導入される熱交換路24fを有する。熱交換路24fは、ピストン24dの中心軸上に沿って延びるよう設けられている。また、作動油が熱交換路24fに導入される流路には、熱交換路24fに導入される作動油の油温を測定可能な温度センサ25が設けられている。
【0027】
また、湿式クラッチ24は、ピストン24dを押圧方向に付勢するばね24gと、ピストン24dを押圧方向及びその反対方向に移動させるためにピストン24dとケーシング24bとの間に形成される制御室(第1制御室24h及び第2制御室24i)とを有する。第1制御室24h及び第2制御室24iは油が供給されるよう構成されている。
【0028】
湿式クラッチ24は、第1制御室24h及び第2制御室24iに油が供給されていない状態では、ピストン24dがばね24gによって付勢される。この場合、インナディスク24a及びアウタディスク24cは互いに離間してブレーキが解放され、クラッチは切れた状態となる。一方、第1制御室24h及び第2制御室24iに油が供給されている場合には、ピストン24dは油圧によって押圧方向と反対側に付勢される。つまり、この場合、ばね24gを圧縮しつつ、インナディスク24a及びアウタディスク24cは互いに密着しブレーキが効き、クラッチが接続した状態となる。
【0029】
(第1油圧アクチュエータ)
第1油圧アクチュエータ14は、例えば組立用のシリンダである。当該建設機械は、下部走行体1、上部旋回体2等の複数の部分に分割された状態でトレーラ等で輸送され、作業場所に到着した後に各部が組み立てられる。第1油圧アクチュエータ14は、主としてこの組立作業に用いられる。第1油圧ポンプ13aから吐出された作動油は、第1コントロールバルブ26を介して第1油圧アクチュエータ14を駆動させ、当該建設機械の組立準備を行う。第1油圧ポンプ13aから吐出された作動油は、第1油圧アクチュエータ14を駆動させた後、第1コントロールバルブ26を通過してフィルター27aを介して作動油タンク12に還流する。
【0030】
(第2油圧アクチュエータ)
本実施形態において、第2油圧アクチュエータ15は、上述の油圧モータである。第2油圧ポンプ13bから吐出された作動油は、第2コントロールバルブ28を介して第2油圧アクチュエータ15に供給される。コントロールバルブ28は、オペレータのウインチ操作によって切替可能に構成されている。第2油圧ポンプ13bから吐出された作動油は、コントロールバルブ28の制御に基づいて第2油圧アクチュエータ15を巻上げ側及び巻下げ側に駆動する。
【0031】
(切替弁)
上述のように、切替弁18は、第2油圧アクチュエータ15から排出された作動油の流路を第1戻り配管16及び第2戻り配管17のいずれかに切り替え可能に構成されている。本実施形態では、切替弁18は、コントローラ19によって励磁されることで、作動油の流路を第1戻り配管16側に切り替えるよう構成されている。当該建設機械は、第2油圧アクチュエータ15から排出された作動油の流路を第1戻り配管16及び第2戻り配管17のいずれかに切り替え可能な切替弁18と、切替弁18の切替を制御するコントローラ19とを備えるので、例えば作動油に必要とされる温度に基づいて切替弁18を切り替えることで、作動油の油温を制御することができる。
【0032】
(第1戻り配管)
第1戻り配管16は、放熱室16aと、この放熱室16aと切替弁18及び熱交換器21とを接続する連結管16bとを有する。放熱室16aは、好ましくは中空板状である。当該建設機械は、放熱室16aが中空板状であることで、放熱室16aの表面積を大きくし、放熱効果を高めやすい。当該建設機械では、第1戻り配管16は着脱可能に構成されている。上述のように、当該建設機械は、作業場所に到着した後に各部が組み立てられる。この各部の組み立ては、主として第1油圧アクチュエータ14を駆動することで行われる。この際エンジンルーム3内は比較的低い温度に維持可能なため、各部の組立時には作動油の放熱回路を構成する第1戻り配管16はなくてもよい。一方、各部の組立後の作業時には、エンジンルーム3内は温度が高くなりやすい。そのため、第1戻り配管16は、各部の組立後に第2油圧アクチュエータ15からの排油経路に接続される。当該建設機械は、第1戻り配管16が着脱可能に構成されることで、輸送規制の制限を受けることなく、必要なタイミングで第1戻り配管16を設けることができる。なお、「板状」とは、全体として厚さに対して幅が大きいことをいい、平板状に限定されるものではなく、例えば部分的に凹凸を有する形状や、表裏面が非平行な形状を含む。
【0033】
図2に示すように、放熱室16aは、少なくとも足場20aの一部を構成している。放熱室16aは、上部旋回体2の側方でエンジンルーム3に隣接して設けられる足場20aの一部を構成しており、より詳しくは機械のメンテナンス時等に作業者が踏む踏板(足場本体)の少なくとも一部を構成している。放熱室16aが踏板を構成することで、放熱室16aの長さを十分に大きくして放熱効果を高めやすい。また、当該建設機械は、足場20aがエンジンルーム3に隣接して設けられるので、連結管16bの長さを小さくしやすい。
【0034】
図4に示すように、放熱室16aは、上下方向に扁平な直方体状に構成されている。放熱室16aは、上記踏板を構成するので、このような扁平形状に形成しやすい。また、放熱室16aは、このような扁平形状であることで、表裏面の面積を大きくして放熱効果をより高めやすい。なお、放熱室16aは、1枚の中空板状部材を用いて形成されたものであってもよく、複数の部材を連結して形成されたものであってもよい。放熱室16aが複数の部材を連結して形成される場合、輸送時等の取扱性を高めることができる。
【0035】
放熱室16aは内部にリターン室(不図示)を有する。このリターン室にはリターンフィルタが設けられている。放熱室16aに導入された作動油は、上記リターンフィルタを介してリターン室に導入される。上記リターン室に導入された作動油は、上記リターンフィルタによって油中のコンタミナントが除去される。
【0036】
当該建設機械は、放熱室16aが少なくとも足場20aの一部を構成しているので、放熱室16aの表面積を容易かつ確実に大きくすることができる。また、従来の足場の構成部品に代えて放熱室16aを設ければよいので、全体としての部品点数の増加を抑えると共に、放熱室16aを設けることに起因する機械の大型化を抑制することができる。また、当該建設機械は、放熱室16aが足場20aの一部を構成するので、この足場20aと別個に放熱室を取り付ける作業を要しない。そのため、当該建設機械は、放熱室16aを設けたことに起因する組立作業の煩雑化を抑制することができる。
【0037】
また、当該建設機械は、放熱室16aが内部にリターン室を有するので、建設機械全体として、小型化を促進すると共に強度の向上を図ることができる。つまり、従来の建設機械では、作動油タンク内に仕切りを設けてリターン室を形成していた。この構成によると、作動油タンク全体のサイズが大きくなりやすい。また、エンジンルーム3の大きさを所定のサイズに抑える場合、作動油タンクの形状は例えば細長い直方体状となる。この作動油タンクは、リターン室と大気に開放されたサクション室とに区画され、リターン室に導入され、フィルターを通過した作動油がサクション室に導入される。この場合、リターン室とサクション室とを区画する仕切りの強度は、作動油圧力やフィルターを通過する作動油粘度に起因して不十分となりやすい。これに対し、当該建設機械は、従来の足場に代えて配設される放熱室16aの内部にリターン室を設けることで、作動油タンク12の小型化を図ると共に、作動油タンク12に仕切りを形成しないことで強度を大きくすることができる。
【0038】
足場20aは、上部旋回体2に対して着脱可能に設けられることが好ましい。足場20aが上部旋回体2に対して着脱可能に設けられる場合、例えば足場20aは、エンジンルーム3等が搭載される旋回フレーム(不図示)へのボルトの締め付けによって上部旋回体2に取り付けられる。当該建設機械は、足場20aが上部旋回体2に対して着脱可能に設けられることによって、放熱室16aをエンジンルーム3外に設けることに起因して当該建設機械が輸送制限に抵触するのを確実に防止することができる。
【0039】
(第2戻り配管)
上述のように、第2戻り配管17はエンジンルーム3内に配設されている。そのため、第2油圧アクチュエータ15から排出され、第2戻り配管17に導入された作動油は、エンジンルーム3内を通り、フィルター27bを介して作動油タンク12に還流される。
【0040】
<作動油の流路の切替手順>
次に、適宜図面を参照しつつ、作動油の流路の切替手順について例示する。
【0041】
(第1戻り配管取付後)
第1戻り配管16が取り付けられると、その旨の信号をコントローラ19が認識し、切替弁18が励磁される。これにより第2油圧ポンプ13bから吐出され、第2油圧アクチュエータ15から排出された作動油は第1戻り配管16及び熱交換器21を介して作動油タンク12に還流する。一方、第1油圧ポンプ13aから吐出され、第1油圧アクチュエータ14から排出された作動油は、発熱量が小さいため、エンジンルーム3内を通ってフィルター27aを介して作動油タンク12に還流する。
【0042】
(ウインチ作業時)
〔ブレーキモード時〕
第1油圧ポンプ13aから吐出された作動油は、発熱量が小さいため、エンジンルーム3内を通ってフィルター27aを介して作動油タンク12に還流する。一方、第2油圧ポンプ13bから吐出された作動油は、第2コントロールバルブ28の切替のもと、第2油圧アクチュエータ15を駆動させる。また、第2油圧アクチュエータ15を駆動させた作動油は、コントローラ19による切替弁18の励磁により第1戻り配管16に流れ、放熱室16aを通過することで放熱されたうえ、熱交換器21を介して作動油タンク12に還流する。熱交換器21に導入される作動油は、放熱室16aを通過することで温度が低くなっているため、熱交換器21による放熱量が抑えられる。また、エンジンルーム3内の作動油の油温が低くなることで、冷却ファン22の風量を大きくしなくてもエンジンルーム3内の温度を低く維持することができ、騒音の増加を抑えることができる。さらに、エンジンルーム3内の温度が低くなることで、作動油タンク12の表面からの放熱量も高められる。
【0043】
〔フリーフォールモード時〕
フリーフォールモード時には、例えばコントローラ19が切替弁18を非励磁状態とすることで、切替弁18を第2戻り配管17側に切り替える。これにより、作動油の放熱が抑制され、作動油の油温が高くなると共に作動油の粘度が低下する。そのため、フリーフォールモード時には、第1油圧ポンプ13aから吐出された低粘度の作動油が湿式クラッチ24の熱交換路24fを通過する。その結果、フリーフォールモード時における吊り荷の落下が円滑となり、作業効率が高められる。
【0044】
また、フリーフォールモード時には、上述の手順に代えて図5に示す手順を採用することも可能である。図5の手順では、まず温度センサ25によって熱交換路24fに導入される作動油の油温を測定する。この測定値が閾値(例えば70℃)超であった場合、コントローラ19が切替弁18を励磁することで、切替弁18を第1戻り配管16側に切り替える。一方、温度センサ25による測定値が閾値以下であった場合、コントローラ19が切替弁18を非励磁状態とすることで、切替弁18を第2戻り配管17側に切り替える。これによって、熱交換路24fを通過する作動油の粘度を一定以下に制御することができ、フリーフォールモード時における吊り荷の落下が円滑となり、作業効率が高められる。なお、本発明でいう「閾値以下」は、閾値未満に置き換え可能である。また、この場合「閾値超」は「閾値以上」に置き換えられる。
【0045】
このように、当該建設機械は、コントローラ19が、ウインチ5のフリーフォールモード時に切替弁18を第2戻り配管17側に切り替えることによって、フリーフォールモード時における吊り荷の落下速度を容易に大きくすることができる。
【0046】
一方、当該建設機械は、コントローラ19が、ウインチ5のフリーフォールモード時に温度センサ25によって測定された作動油の油温が閾値以下であった場合に切替弁18を第2戻り配管17側に切り替えることによって、フリーフォールモード時における吊り荷の落下速度を容易に制御しつつ、エンジンルーム3内の温度が高くなるのを抑制することができる。
【0047】
なお、当該建設機械は、フリーフォールモード後、インナディスク24a及びアウタディスク24cが互いに密着し、クラッチが接続された場合には、コントローラ19が切替弁18を励磁することで、切替弁18を第1戻り配管16側に切り替える。これによって、巻き上げ操作時の放熱量が十分に確保される。
【0048】
(寒冷地での作業時)
図6を参照して、当該建設機械が寒冷地での作業に用いられる場合の作動油の流路の切替手順の一例について説明する。
【0049】
まず、作動油の油温が閾値超である場合、コントローラ19が切替弁18を励磁することで、切替弁18を第1戻り配管16側に切り替える。一方、作動油の油温が閾値以下である場合、コントローラ19がエンジン11に負荷をかける。エンジン11の負荷によってエンジンルーム3内の単位時間あたりの上昇温度が閾値以上となり、作動油の油温が閾値超となった場合、コントローラ19が切替弁18を励磁状態とすることで、切替弁18を第1戻り配管16側に切り替える。
【0050】
当該建設機械は、エンジンルーム3がキャブ4に隣接しているため、エンジンルーム3内が高温になることでキャブ4内の雰囲気温度が高められる。そのため、当該建設機械は、エンジンルーム3内の温度を適度に高くすることで、寒冷地における作業環境を改善することができる。なお、エンジン11に負荷をかける具体的な手段としては、例えばエンジン11の回転数や、ポンプ流量、リリーフ圧等の上昇が挙げられる。
【0051】
<利点>
当該建設機械は、第2油圧アクチュエータ15から排出された作動油を作動油タンク12側に送る第1戻り配管16がエンジンルーム3外に設けられており、この第1戻り配管16が放熱室16aを有しているので、騒音の増大を防ぎつつ、エンジンルーム3内の高温化を抑制することができる。
【0052】
当該建設機械は、放熱室16aによって作動油の熱を十分に放熱することができるので、この放熱室16aの下流側でエンジンルーム3内に熱交換器21を設けた場合でも、この熱交換器21の熱交換によってエンジンルーム3内が過度に高温になり難い。
【0053】
当該建設機械は、切替弁18によって作動油の流路を第1戻り配管16及び第2戻り配管17のいずれかに切り替えることができるので、適切に温度調整された作動油を熱交換路24fに導入することができる。これにより、ウインチ5の作動効率を高めることができる。
【0054】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0055】
例えば、上記実施形態では、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプの2つの油圧ポンプを有する構成について説明したが、当該建設機械は上述の第2油圧ポンプのみを有していてもよい。また、上記実施形態では第2油圧アクチュエータがウインチの油圧モータである場合について説明したが、上記第2油圧アクチュエータは建設機械の作業用途に応じて変更可能であり、必ずしも上述の油圧モータでなくてもよい。さらに、第2油圧アクチュエータがウインチの油圧モータである場合でも、このウインチの構成は上記実施形態のものに限定されるものではなく、例えば作動油が導入される熱交換路を有しないものであってもよい。
【0056】
上述のように、当該建設機械は、上記放熱室が足場の踏板を構成することが好ましい。但し、上記放熱室は、上記踏板以外を構成してもよい。例えば上記放熱室は踏板の下方を支持する部材として設けられてもよい。また、上記足場は、輸送制限等の制約がない場合、上部旋回体に対して着脱不能に構成されていてもよい。さらに、設置スペース等の制約がない場合、上記放熱室は足場以外を構成するよう設けられてもよい。
【0057】
上記実施形態では、上記放熱室が上下方向に扁平な直方体状である構成について説明した。但し、上記放熱室の具体的形状は、設置スペース等に合わせて変更可能である。
【0058】
当該建設機械は、必ずしも上述の熱交換器を有していなくてもよい。
【0059】
当該建設機械は、作動油の温度を調整する観点からは第1戻り配管に加え、第2戻り配管を備えることが好ましい。しかしながら、作動油の温度の調整が特に要求されない場合であれば、必ずしも第2戻り配管を備えていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る建設機械は、騒音の増大を防ぎつつエンジンルーム内の高温化を抑制することができるので、作業の安全性及び快適性を図るのに適している。
【符号の説明】
【0061】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 エンジンルーム
4 キャブ
5 ウインチ
5a ワイヤ
5b ウインチドラム
5c 減速機
11 エンジン
12 作動油タンク
13 油圧ポンプ
13a 第1油圧ポンプ
13b 第2油圧ポンプ
14 第1油圧アクチュエータ
15 第2油圧アクチュエータ
16 第1戻り配管
16a 放熱室
16b 連結管
17 第2戻り配管
18 切替弁
19 コントローラ
20a,20b 足場
21 熱交換器
22 冷却ファン
23 フィルター
24 湿式クラッチ
24a インナディスク
24b ケーシング
24c アウタディスク
24d ピストン
24e 側壁
24f 熱交換路
24g ばね
24h 第1制御室
24i 第2制御室
25 温度センサ
26 第1コントロールバルブ
27a,27b フィルター
28 第2コントロールバルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6