(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】タイヤ用ペイント組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 109/06 20060101AFI20230328BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230328BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230328BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20230328BHJP
C08K 5/3417 20060101ALI20230328BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230328BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20230328BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230328BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230328BHJP
B29D 30/52 20060101ALN20230328BHJP
B29D 30/72 20060101ALN20230328BHJP
B60C 11/00 20060101ALN20230328BHJP
B60C 13/00 20060101ALN20230328BHJP
【FI】
C09D109/06
C09D7/63
C09D7/61
C08L9/06
C08K5/3417
C08K3/013
B05D7/02
B05D7/24 302J
B05D7/24 302Q
B05D7/24 303E
B60C1/00 Z
B29D30/52
B29D30/72
B60C11/00 E
B60C13/00 A
B60C13/00 J
(21)【出願番号】P 2019090945
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】石野 崇
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0000467(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0042385(KR,A)
【文献】特開2002-128959(JP,A)
【文献】特開2013-170213(JP,A)
【文献】特開2020-050718(JP,A)
【文献】特開平11-059137(JP,A)
【文献】国際公開第2012/096281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/02
C08K 3/00-13/08
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴムを80質量%以上含むゴム成分
100質量部に対し、フタロシアニン顔料を
0.1~30質量部含有するゴム組成物
、および揮発性有機溶媒を含有するペイント組成物。
【請求項2】
さらに無機顔料を含有
し、前記ゴム成分100質量部に対する無機顔料の含有量が1~150質量部、フタロシアニン顔料以外の有機顔料の含有量が10質量部以下である、請求項1記載の
ペイント組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分100質量部に対し、加硫促進剤を0.1~5質量部含有する
、請求項1または2記載のペイント組成物。
【請求項4】
請求項
1~3
のいずれか一項に記載のペイント組成物を、押出加工されたタイヤ材料の表面に塗布してなるタイヤ。
【請求項5】
タイヤ用カラーライン塗布方法であって、
請求項
1~3
のいずれか一項に記載のペイント組成物を、押出加工されたタイヤ材料の表面に塗布し、連続的にカラーラインのマーキングを施す工程を含む塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ材料の表面に識別用のマーキングを施すためのペイント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程においては、成形機から押出されたトレッドゴム等のタイヤ材料を搬送しながら、その表面に塗布用ガンを用いてカラーペイント(以下、単に「ペイント」とも言う)で連続的に識別用のマーキング(カラーライン)を施すことが一般に行われている(例えば、特許文献1)。このようなペイントは、例えば、ゴム成分および顔料を含有するゴム組成物とナフサ等の揮発性有機溶媒とを混合することにより作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように作製されたペイントのうち、フタロシアニン顔料を含有するペイントは、経時変化により溶媒と顔料が分離してしまうという問題がある。このような分離が発生すると、押出工程でペイントを塗布する際に、沈殿物が塗布用ガン内で詰まりを引き起こす可能性があり、詰まりが発生しなかったとしても、カラーラインの色味が不均一となり、外観要因での軽不良発生が増大するリスクがある。また、このような問題を防止するために、補給タンクにペイントを投入する際にペイントを攪拌しなければならないというハンドリング上の手間も生じている。
【0005】
本発明は、塗布用ガン内で詰まりが発生せず、外観要因での軽不良発生を抑制でき、かつハンドリング性が良好なタイヤ用ペイント組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ゴム成分中にスチレンブタジエンゴムを所定量含有することで、保存中に溶媒とフタロシアニン顔料が分離せず、経時的に安定なタイヤ用ペイント組成物が得られること見出した。また、好ましい態様においては、タイヤ材料の表面にカラーラインを施し金型で成形する作業を繰り返しても、ペイント組成物が金型へ色転写しないことを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
〔1〕スチレンブタジエンゴムを80質量%以上含むゴム成分、およびフタロシアニン顔料を含有するゴム組成物、
〔2〕さらに無機顔料を含有する、〔1〕記載のゴム組成物、
〔3〕〔1〕または〔2〕記載のゴム組成物および揮発性有機溶媒を含有するペイント組成物、
〔4〕〔3〕記載のペイント組成物を、押出加工されたタイヤ材料の表面に塗布してなるタイヤ、
〔5〕タイヤ用カラーライン塗布方法であって、〔3〕記載のペイント組成物を、押出加工されたタイヤ材料の表面に塗布し、連続的にカラーラインのマーキングを施す工程を含む塗布方法、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ペイント組成物は、保存中に溶媒とフタロシアニン顔料が分離せず、経時的に安定である。そのため、塗布用ガン内で詰まりが発生せず、外観要因での軽不良発生を抑制でき、かつハンドリング性が良好である。また、好ましい態様においては、タイヤ材料の表面にカラーラインを施し金型で成形する作業を繰り返しても、ペイント組成物が金型へ色転写しない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態であるゴム組成物の製造を含むペイント組成物の作製手順について、以下に詳細に説明する。但し、以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0010】
<ゴム組成物>
本発明の一実施形態であるゴム組成物は、所定量のスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分およびフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0011】
[ゴム成分]
本実施形態において使用されるゴム成分は、スチレンブタジエンゴム(SBR)を必須の成分として含有する。フタロシアニン含量がSBR相に偏在する性質を考慮したものである。
【0012】
(SBR)
SBRとしては、特に限定されず、例えば未変性の乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)や溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、これらを変性した変性乳化重合スチレンブタジエンゴム(変性E-SBR)や変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S-SBR)等の変性SBRが挙げられる。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、伸展油を加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。SBRは、上記のうち1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
SBRのゴム成分中の含有量は、80質量%以上であり、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95量%以上がさらに好ましく、ゴム成分と98質量%が特に好ましい。SBRのゴム成分中の含有量を80質量%以上とすることにより、ナフサ等の揮発性有機溶媒との相溶性が向上する。一方、SBRのゴム成分中の含有量が80質量%未満であると、ペイント組成物の保存中に溶媒とフタロシアニン顔料が分離しやすくなる傾向がある。また、SBRのゴム成分中の含有量の上限は特に制限されず、SBRのみからなるゴム成分としてもよい。なお、SBRとして油展タイプのSBRを用いる場合は、当該油展タイプのSBR中に含まれる固形分としてのSBR自体の含有量をゴム成分中の含有量とする。
【0014】
(その他のゴム成分)
本実施形態に係るゴム成分として、前記のSBR以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、ゴム工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。これらその他のゴム成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができ、天然ゴムが好ましい。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。NRとしては、特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
【0016】
[顔料成分]
本実施形態に係るゴム組成物は、フタロシアニン顔料を含有する。また、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の顔料成分を含有してもよい。
【0017】
(フタロシアニン顔料)
フタロシアニン顔料は、色合いが鮮明で、退色が少なく、耐久性にも優れた顔料である。フタロシアニンの中心部分は遷移金属をはじめとした様々な元素と錯形成し、安定な錯体を形成する。フタロシアニンは、分子全体にπ電子共役系が広がっているため、平面構造をとり、また強い色を呈する。特に錯体では、青から緑色を呈するものが多い。
【0018】
フタロシアニン顔料の具体例としては、例えば、青色の銅フタロシアニン(Pigment Blue 15)、より緑味の青色を呈する無金属フタロシアニン(Pigment Blue 16)、緑色の高塩素化銅フタロシアニン(Pigment Blue 7)、より黄味の緑色を呈する低塩素化銅フタロシアニン(臭素化塩素化銅フタロシアニン)(Pigment Blue 36)等が挙げられる。なかでも、遷移金属が配位したフタロシアニンが好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。これらのフタロシアニン顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。銅フタロシアニンの化学構造式を以下に示す。
【化1】
【0019】
フタロシアニン顔料のゴム成分100質量部に対する含有量は、充分な発色が得られれば特に制限されないが、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。また、フタロシアニン顔料の含有量の上限値は特に制限されないが、コストの観点から、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
【0020】
(その他の顔料)
本実施形態に係るゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、フタロシアニン顔料以外の有機顔料を含有してもよい。フタロシアニン顔料以外の有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料以外の多環顔料、アゾ顔料、レーキ顔料、植物性顔料、動物性顔料等が挙げられる。これらその他の顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
フタロシアニン顔料以外の多環顔料としては、例えば、アントラキノン、インジゴイド等の青色顔料;アゾメチン、ペリレン等の緑色顔料;イソインドリノン、キノフタロン、イソインドリン、アントラキノン、アントロン、キサンテン等の黄色顔料;ジケトピロロピロール、ペリレン、アントラキノン(アントロン)、ペリノン、キナクリドン、インジゴイド等の橙色顔料;アントラキノン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン、インジゴイド等の赤色顔料;ジオキサジン、キナクリドン、ペリレン、インジゴイド、アントラキノン(アントロン)、キサンテン等の紫(菫)色顔料等が挙げられる。
【0022】
フタロシアニン顔料以外の有機顔料を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。また、フタロシアニン顔料以外の含有量の上限値は特に制限されないが、コストの観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。
【0023】
本実施形態に係るゴム組成物は、隠蔽度が高い無彩色の無機顔料を含有することが好ましい。無彩色の無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物顔料;アルミナホワイト等の金属水酸化物顔料;タルク、クレー等の珪酸塩顔料;リトポン等の硫化物顔料;シルバーホワイト、炭酸カルシウム等の炭酸塩顔料等が挙げられ、金属酸化物顔料が好ましい。
【0024】
無機顔料を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましい。また、無機顔料の含有量の上限値は特に制限されないが、コストの観点から、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。
【0025】
[その他の成分]
本実施形態に係るゴム組成物は、上記のゴム成分、顔料成分以外にも、従来、タイヤ工業に使用される配合剤や添加剤、例えば、老化防止剤、ステアリン酸、加硫剤、加硫促進剤等を必要に応じて適宜含有することができる。
【0026】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0027】
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0028】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保するという観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、劣化の観点からは、3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましい。
【0029】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200、フレキシス社製のDURALINK HTS(1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物)、ランクセス社製のKA9188(1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)等の硫黄原子を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0030】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、およびキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、およびグアニジン系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤がより好ましい。また、スルフェンアミド系加硫促進剤と他の加硫促進剤(好ましくは、チアゾール系加硫促進剤および/またはグアニジン系加硫促進剤)との併用も好ましい態様して挙げることができる。
【0031】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、およびN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。
【0032】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0033】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジンが好ましい。
【0034】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加硫促進の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、加工性の観点からは、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0035】
本実施形態に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、上記の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造することができる。
【0036】
<ペイント組成物>
本実施形態に係るペイント組成物は、前記ゴム組成物とナフサ等の揮発性有機溶媒を公知の方法に準じて混合することにより製造することができる。
【0037】
ペイント組成物の粘度は、10~200mPa・sが好ましく、20~180mPa・sがより好ましい。ペイント組成物の粘度を上記の範囲とすることにより、塗布用ガンの吐出口から吐出されるペイント組成物の流量を安定させることができる。
【0038】
公知のタイヤ押出物用のカラーライン塗布装置を用いて、成形機から押出されたトレッドゴム、サイドウォールゴム等のタイヤ材料を搬送しながら、塗布用ガンからタイヤ材料の表面に本実施形態に係るペイント組成物を塗布することにより、その表面に連続的に均一なカラーラインのマーキングを施すことができる。本実施形態に係るペイント組成物は、タイヤ材料の表面にカラーラインを施し金型で成形する作業を繰り返しても金型へ色転写しにくい点からも非常に有用である。
【実施例】
【0039】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0040】
以下、実施例および比較例において用いる各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol 1502(E-SBR)
銅フタロシアニン:住化カラー(株)製のイプシロンブルー
酸化チタン:石原産業(株)製の酸化チタン
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーM-P(2-メルカプトベンゾチアゾール)
【0041】
(実施例および比較例)
表1に示す配合処方に従い、1.7Lのバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150℃で5分間混練りし、混練物を得た。得られた混練物に、オープンロールを用いて硫黄および加硫促進剤を添加し、3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。ナフサ(10L)に得られた未加硫ゴム組成物(2.5kg)を加え12時間静置した後、8時間攪拌した。その後、ナフサ(10L)を追加しさらに10分間攪拌し、ペイント組成物を得た。
【0042】
<ペイント組成物の経時安定性>
温度25℃、湿度40%RHの恒温恒湿の条件下で30日間放置した後の各ペイント組成物の状態を観察し、それぞれ下記の基準で評価した。
[評価基準]
3点(良好):溶媒と顔料の分離は全く発生しなかった
2点(使用可):溶媒と顔料との分離がわずかに観察された
1点(不良):溶媒と顔料が分離した
【0043】
<カラーラインの軽不良率および金型への色転写>
実施例1および比較例2のペイント組成物につき、タイヤ押出物用のカラーライン塗布装置を用いて、搬送中のトレッドゴムに幅3mm、長さ2210mmのカラーラインを施し、金型で成形してトレッドゴムを得た。この作業を1000回行った後、目視によりトレッド表面を外観検査し、カラーラインの不均一がないものを良品とし、軽不良率(%)を測定した。また、金型への色転写の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
表1の結果より、所定量のスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分およびフタロシアニン顔料を含有する本発明のペイント組成物は、保存中に溶媒とフタロシアニン顔料が分離せず、経時的に安定であることがわかる。
【0046】
また、本発明のペイント組成物は、タイヤ材料の表面に塗布した際に外観要因での軽不良発生を顕著に抑制でき、かつ、タイヤ材料の表面にカラーラインを施し金型で成形する作業を繰り返しても、ペイント組成物が金型へ色転写しないことがわかる。