(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/32 20060101AFI20230328BHJP
G01B 11/14 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
B29D30/32
G01B11/14 Z
(21)【出願番号】P 2019097519
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中元 信太朗
(72)【発明者】
【氏名】中島 三郎
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051669(JP,A)
【文献】特開2016-037019(JP,A)
【文献】特開2012-236359(JP,A)
【文献】特開2013-006391(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0348933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
G01B 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードトランスファにおける一対のビードコア保持リングの軸方向位置を測定する測定装置であって、
前記ビードコア保持リングによって保持された状態で回転可能な成形ドラムの外周側に搬送され、かつ前記成形ドラムの外周面に固定される一対の測定リングと、
前記成形ドラムに固定された前記測定リングの軸方向位置を測定するセンサと、を備えている、測定装置。
【請求項2】
前記測定リングが、ビードコアを模した模擬リング又はビードコアである、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記センサが、前記測定リングまでの軸方向距離を測定する距離センサである、請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記距離センサが、一対の前記測定リングに対応して一対設けられている、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記一対の距離センサが、一対の前記測定リングの間に配置される、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記測定リングの軸方向位置を測定する測定位置と、前記測定位置よりも径方向外側の退避位置との間で前記距離センサを移動させる移動機構をさらに備えている、請求項3~5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
ビードトランスファにおける一対のビードコア保持リングの軸方向位置を測定する測定方法であって、
前記ビードコア保持リングによって保持された一対の測定リングを回転可能な成形ドラムの外周側に搬送し、前記成形ドラムの外周面に固定する工程と、
前記成形ドラムを回転させながら当該成形ドラムに固定された前記測定リングの軸方向位置をセンサにより測定する工程と、
前記測定リングの軸方向位置に基づいて、前記ビードコア保持リングの軸方向位置を求める工程と、を含む測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの生タイヤを成形する際に、ビードコアを保持してカーカスプライ上に搬送するビードコア保持リングの軸方向位置を測定する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、トレッド、サイドウォール、カーカスプライ、ビードコア等の種々の部品により構成されている。このうち、ビードコアは、空気入りタイヤの軸方向両側に一対設けられている。この一対のビードコアは、生タイヤの成形段階で、成形ドラム上に巻き付けられたカーカスプライの外周面に圧着される。このとき、成形ドラムの軸方向における一対のビードコアの間隔や各ビードコアの位置が周方向においてバラついていると、空気入りタイヤのユニフォミティが低下する可能性がある。そのため、従来は、タイヤの製造に先駆けて、成形ドラムへビードコアを搬送するビードトランスファの一対のビードコア保持リングの軸方向間隔が測定され、その寸法が所定に維持されるようにビードトランスファの定期的なセッティングが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、ビードコア保持リングの軸方向間隔は、成形ドラムの外周面に装着された距離センサを用いて測定されている。具体的には、成形ドラムの外周面に距離センサを装着した状態で成形ドラムを手動で回転させ、一対のビードコア保持リングに対する距離センサの周方向の位置を変えながら、当該距離センサから一対のビードコア保持リングまでの距離を測定し、測定した距離によって一対のビードコア保持リングの軸方向間隔が求められている(従来技術1)。
【0004】
また、特許文献1記載の技術では、一対のビードコア保持リングにビードコアを供給するビードコア供給装置が、ビードコア保持リングに対向しかつビードコア保持リングにビードコアを受け渡すビードコア供給リングを備えており、このビードコア供給リングに、ビードコア保持リングまでの距離を測定する距離センサが設けられている。そして、特許文献1記載の技術では、距離センサがビードコア保持リングまでの距離を測定し、測定した距離によって一対のビードコア保持リングの軸方向間隔が求められる(従来技術2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の従来技術1においては、一対のビードコア保持リングの軸方向間隔の測定のたびに、作業者が距離センサを成形ドラムに取り付け、測定精度のチェックが行われる。この距離センサの成形ドラムへの取り付け及び測定精度のチェックには時間がかかるため、作業効率が悪化する。
【0007】
また、前述の従来技術2では、一対のビードコア保持リングが、それぞれ周方向に複数のセグメントに分割されており、距離センサは、各セグメントに対応して複数設けられている。そのため、多くの距離センサが必要となり、構造の複雑化を招く。
【0008】
本発明は、少ないセンサで効率よくビードコア保持リングの軸方向位置を測定することができる、測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、ビードトランスファにおける一対のビードコア保持リングの軸方向位置を測定する測定装置であって、
前記ビードコア保持リングによって保持された状態で回転可能な成形ドラムの外周側に搬送され、かつ前記成形ドラムの外周面に固定される一対の測定リングと、
前記成形ドラムに固定された前記測定リングの軸方向位置を測定するセンサと、を備えている。
【0010】
以上のような構成により、成形ドラムを回転させながら、センサによって成形ドラムに固定された測定リングの軸方向位置を測定することができ、当該センサを周方向に複数設けなくても、測定リングの全周を対象として軸方向位置を測定することができる。そして、測定リングは、成形ドラムの外周面に固定されるまでビードコア保持リングによって保持された状態で搬送されるので、測定リングの軸方向位置をビードコア保持リングの軸方向位置に容易に換算することができる。したがって、一対のビードコア保持リングの軸方向位置を間接的に測定することができる。成形ドラムへのセンサの取り付けが不要なので、この取り付け及び精度チェックのための作業を省略できる。したがって、測定リングの軸方向位置を効率よく測定することができる。
【0011】
(2)好ましくは、前記測定リングが、ビードコアを模した模擬リングである。
このような構成によって、ビードコアを使用しなくても、ビードコアを成形ドラムの外周面に固定するのと同等の状態を再現することができる。
【0012】
また、前記測定リングは、ビードコアそのものであってもよい。
このような構成によって、ビードコアの軸方向位置を直接的に測定することができる。
【0013】
(3)好ましくは、前記センサが、前記測定リングまでの軸方向距離を測定する距離センサである。
このような構成によって、距離センサを用いて測定リングの軸方向位置を容易に測定することができる。
【0014】
(4)好ましくは、前記距離センサが、一対の前記測定リングに対応して一対設けられている。
このような構成によって、一対の測定リングのそれぞれについて個別に軸方向位置を測定することができる。
【0015】
(5)好ましくは、前記一対の距離センサが、一対の前記測定リングの間に配置される。
このような構成によって、一対の距離センサを近接して配置し、測定装置をコンパクトに構成することができる。
【0016】
(6)好ましくは、測定装置が、前記測定リングの軸方向位置を測定する測定位置と、前記測定位置よりも径方向外側の退避位置との間で前記距離センサを移動させる移動機構をさらに備えている。
このような構成によって、測定リングの軸方向位置を測定するときのみ測定位置に距離センサを配置し、通常の生タイヤの成形の際には、距離センサを退避させることができる。
【0017】
(7)本発明は、ビードトランスファにおける一対のビードコア保持リングの軸方向位置を測定する測定方法であって、
前記ビードコア保持リングによって保持された一対の測定リングを回転可能な成形ドラムの外周側に搬送し、前記成形ドラムの外周面に固定する工程と、
前記成形ドラムを回転させながら当該成形ドラムに固定された前記測定リングの軸方向位置をセンサにより測定する工程と、
前記測定リングの軸方向位置に基づいて、前記ビードコア保持リングの軸方向位置を求める工程と、を含む。
【0018】
以上のような構成により、成形ドラムを回転させながら、成形ドラムに固定された測定リングの軸方向位置を測定することで、センサを周方向に複数設けなくても、測定リングの全周を対象として軸方向位置を測定することができる。そして、測定リングは、成形ドラムの外周面に固定されるまでビードコア保持リングによって保持された状態で搬送されるので、測定リングの軸方向位置をビードコア保持リングの軸方向位置に容易に換算することができる。したがって、一対のビードコア保持リングの軸方向位置を間接的に測定することができる。成形ドラムへのセンサの取り付けが不要なので、この取り付け及び精度チェックのための作業を省略できる。したがって、測定リングの軸方向位置を効率よく測定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、少ないセンサで効率よくビードコア保持リングの軸方向位置を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る測定装置が適用される生タイヤ成形装置の一例を示す正面図である。
【
図2】(a)はビードトランスファの正面図(一部断面図)、(b)は、(a)のA部拡大図である。
【
図4】(a)は、測定準備状態の測定装置を示す正面図、(b)は、(a)のB部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る測定装置が適用される生タイヤ成形装置の一例を示す正面図である。
図1において、本実施形態の生タイヤ成形装置10は、成形ドラム13を有する生タイヤ形成フォーマ11と、成形ドラム13上に巻回されたカーカスプライc上にビードコアbを搬入するビードトランスファ12とを有する。ビードトランスファ12は、図示しない供給装置からビードコアbが供給される供給位置P1と、成形ドラム13にビードコアbを搬入する搬入位置P2との間を成形ドラム13の軸心Oに沿った方向に移動する。なお、本明細書においては、成形ドラム13の軸心Oに沿った方向を「軸方向」ともいう。
【0022】
生タイヤ形成フォーマ11は、成形ドラム13と、駆動装置14とを有している。
成形ドラム13は、円筒形状に形成されている。成形ドラム13は、例えば周方向に分割される複数のセグメントを有し、各セグメントは、周知構造の拡縮手段により、縮径又は拡径される。
【0023】
駆動装置14は、回転軸15と、駆動部16と、制御部17とを有する。回転軸15には、成形ドラム13が同心状に取り付けられている。駆動部16は、回転軸15を回転駆動するモータ等からなる。したがって、成形ドラム13は、駆動部16によって回転軸15を介して軸心O回りに回転する。制御部17は、駆動部16の動作を制御する。
【0024】
駆動装置14は、成形ドラム13の回転位置(回転角度)を検出するセンサ(図示省略)を備える。成形ドラム13の回転数及び回転位置の情報は、制御部17から後述する測定装置41の処理装置45に送信される。
【0025】
ビードトランスファ12は、ガイド装置18と、移動装置19と、ビードコア保持リング20と、拡縮機構21とを備えている。
ガイド装置18は、台板23上に敷設された第1ガイドレール24を有している。第1ガイドレール24は、成形ドラム13の軸心O方向に沿って配置されている。
【0026】
移動装置19は、ベース部材26と、移動台27と、連結具28とを有している。
ベース部材26は、第1ガイドレール24によって成形ドラム13の軸方向に移動自在に支持されている。ベース部材26上には、成形ドラム13の軸心O方向に沿って延びる第2ガイドレール31が設けられている。
【0027】
移動台27は、2台設けられ、成形ドラム13の軸心O方向に並べて配置されている。本実施形態では、成形ドラム13側の一方の移動台27を第1移動台27Aといい、他方の移動台27を第2移動台27Bという。
【0028】
図2(a)はビードトランスファの正面図(一部断面図)、(b)は、(a)のA部拡大図である。
図3は、ビードトランスファの側面図である。
第1移動台27Aは、第1基台33Aと、第1リング状フレーム34Aとを有している。
第1基台33Aは、第2ガイドレール31によって成形ドラム13の軸心O方向に沿って移動自在に支持されている。
【0029】
第1リング状フレーム34Aは、第1基台33Aの上部に設けられている。第1リング状フレーム34Aは、リング状に形成され、その中心が成形ドラム13の軸心O上に配置されている。
【0030】
第2移動台27Bは、第2基台33Bと、第2リング状フレーム34Bとを有している。
第2基台33Bは、第2ガイドレール31によって成形ドラム13の軸心O方向に沿って移動自在に支持されている。
第2リング状フレーム34Bは、第2基台33Bの上部に設けられている。第2リング状フレーム34Bは、リング状に形成され、その中心が成形ドラム13の軸心O上に配置されている。
【0031】
連結具28は、第1移動台27Aと第2移動台27Bとを連結する。連結具28は、ネジ軸35と、駆動モータ36とを有する。ネジ軸35の軸心方向の一方側には左ネジが形成され、軸心方向の他方側には右ネジが形成されている。そして、左ネジ及び右ネジには、それぞれ第1移動台27A、第2移動台27Bが螺合されている。
【0032】
駆動モータ36は、ネジ軸35を正逆回転させる。ネジ軸35を正逆一方向に回転させると、左ネジ及び右ネジに螺合された第1移動台27Aと第2移動台27Bとが互いに接近し、ネジ軸35を正逆他方向に回転させると、第1移動台27Aと第2移動台27Bとが互いに離反する。駆動モータ36の回転数は、図示しない制御装置によって制御される。したがって、制御装置によって、第1移動台27Aと第2移動台27Bとの軸心O方向の間隔(軸方向間隔)、すなわち後述する一対のビードコア保持リング20の軸方向間隔が設定される。
【0033】
ビードコア保持リング20及び拡縮機構21は、第1リング状フレーム34A及び第2リング状フレーム34Bの互いに対向する側面にそれぞれ取り付けられている。
図3に示すように、ビードコア保持リング20は、第1及び第2リング状フレーム34A,34Bと同心状のリング状に形成されている。したがって、第1及び第2リング状フレーム34A,34Bとビードコア保持リング20とは、成形ドラム13と同一の軸心Oを有している。
【0034】
ビードコア保持リング20は、周方向に分割されている複数のセグメント20aからなる。本実施形態のビードコア保持リング20は、6個のセグメント20aにより構成されている。各セグメント20aは、円弧形状に形成されている。各セグメント20aは、拡縮機構21によって第1及び第2リング状フレーム34A,34Bの径方向に移動する。
【0035】
拡縮機構21は、支持部材38と、アクチュエータ39とを有する。
支持部材38は、ビードコア保持リング20の各セグメント20aを支持している。支持部材38は、第1、第2リング状フレーム34A,34Bの径方向に沿って配置されたガイドロッド38aを有し、このガイドロッド38aは、第1及び第2リング状フレーム34A,34Bに径方向に移動自在に支持されている。
【0036】
アクチュエータ39は、エアシリンダ、油圧シリンダ、又は電動シリンダ等からなる。アクチュエータ39は、伸縮することによって、支持部材38及びセグメント20aを径方向に移動させる。
ビードコア保持リング20は、拡縮機構21によって各セグメント20aが径方向内側に移動したときに、全セグメント20aが周方向に連なったリング状に形成される。また、ビードコア保持リング20は、拡縮機構21によって各セグメント20aが径方向外側に移動したときに、周方向に分断された形状となる。
【0037】
図2(b)に示すように、ビードコア保持リング20は、軸方向の内側の側面に吸着部材20bを有する。吸着部材20bは、例えばマグネットである。吸着部材20bは、ビードコアbを吸着して保持する。なお、
図2に示すビードコアbには、エイペックスゴムgが一体に接合されている。
【0038】
生タイヤの成形工程は、成形ドラム13の外周面にカーカスプライcを巻回する第1工程と、成形ドラム13に巻回されたカーカスプライcの外周側にビードコアbを搬入する第2工程と、カーカスプライcの外周面にビードコアbを圧着する第3工程とを含む。
【0039】
このうち第2工程では、
図1に示すように、供給位置P1において、図示しないビードコア供給装置によって、ビードトランスファ12のビードコア保持リング20にビードコアbが供給される。そして、ビードトランスファ12が搬入位置P2まで軸心O方向に移動し、カーカスプライcの外周側へビードコアbが搬入される。
【0040】
第3工程では、成形ドラム13が拡径されることにより、カーカスプライcがビードコアbの半径方向内周面に押し付けられ、これによりカーカスプライcの外周面にビードコアbが固定される。
【0041】
以上のような生タイヤの成形工程において、ビードコア保持リング20が傾くなど、ビードトランスファ12にセッティング不良があると、カーカスプライcの外周面に固定された一対のビードコアbの軸心O方向の位置(以下、「軸方向位置」ともいう)や軸心O方向の間隔(以下、「軸方向間隔」ともいう)が周方向においてばらつく可能性があり、このようなばらつきは空気入り測定装置のユニフォミティを低下させる原因となる。そのため、本実施形態では、空気入りタイヤの製造(生タイヤの成形)に先駆けて、次に説明する測定装置41を用いて一対のビードコア保持リング20の軸方向位置に関する判定が行われる。
【0042】
図4(a)は、測定準備状態の測定装置を示す正面図、
図4(b)は、(a)のB部拡大断面図である。
図5は、測定状態の測定装置を示す正面図である。
測定装置41は、測定リング42と、センサ43と、移動機構44と、処理装置45とを有する。
測定リング42は、リング状に形成されている。測定リング42は、ビードコアbと同一の内外径、軸方向の幅を有している。したがって、測定リング42の断面形状における軸方向の幅と径方向の厚さとは、ビードコアbの断面形状における軸方向の幅と径方向の厚さと同一である。測定リング42は、ビードコアbを模した模擬リングである。
【0043】
図4(b)に示すように、測定リング42は、リング本体部42aと、被吸着部材42bとを有する。リング本体部42aは、合成樹脂材料によりリング状に形成されている。リング本体部42aは、例えば、ナイロン樹脂等により形成することができる。被吸着部材42bは、リング状の薄板材により形成され、リング本体部42aの軸方向の一側面に固定されている。被吸着部材42bは、ビードコア保持リング20における吸着部材20bによって吸着される材質、例えば鉄によって形成されている。
【0044】
測定リング42は、生タイヤの成形段階におけるビードコアbと同様に、
図1に示す供給位置P1において、図示しないビードコア供給装置によりビードトランスファ12に供給され、一対のビードコア保持リング20のそれぞれに吸着される。
そして、一対の測定リング42は、ビードトランスファ12を搬入位置P2まで移動させることで、成形ドラム13の外周側に配置され、成形ドラム13を拡径することによって成形ドラム13の外周面に固定される。
【0045】
図5に示すように、センサ43は、成形ドラム13の外周面に固定された1対の測定リング42の軸心O方向の間に配置される。そして、センサ43は、一方の測定リング42までの軸心O方向の距離(以下、「軸方向距離」ともいう)L1を測定する第1距離センサ43Aと、他方の測定リング42までの軸方向距離L2を測定する第2距離センサ43Bとを備えている。第1、第2距離センサ43A,43Bは、例えばレーザー変位計により構成することができる。測定された第1、第2距離L1,L2は、第1、第2距離センサ43A,43Bの位置を基準とする測定リング42の軸方向位置に相当する。
【0046】
第1及び第2距離センサ43A,43Bは、所定の時間ごとに距離L1,L2を測定する。本実施形態では、成形ドラム13が一定速度で1回転する間に、12~24回、好ましくは18回、距離L1,L2が測定されるように測定時間(サンプリング周期)が設定される。したがって、第1及び第2距離L1,L2の測定は、測定リング42の周方向に一定の間隔をあけて12~24か所(好ましくは、18か所)で行われることになる。
【0047】
移動機構44は、取付台44aと、昇降装置44bとを備えている。取付台44aは、第1距離センサ43Aと第2距離センサ43Bとの双方を取り付けている。昇降装置44bは、取付台44aを上下に昇降させる。例えば、昇降装置44bは、エアシリンダ、油圧シリンダ、又は電動シリンダ等のアクチュエータからなる。昇降装置44bは、生タイヤ成形装置10の装置フレーム等に取り付けられている。昇降装置44bは、取付台44aを昇降させることによって、一対の測定リング42の間の測定位置(
図5参照)と、測定位置よりも成形ドラム13の径方向外側の退避位置(
図4(a)参照)との間で、第1及び第2距離センサ43A,43Bを移動させる。
【0048】
退避位置にある第1、第2距離センサ43A,43Bは、ビードトランスファ12よりも上方(径方向外側)に退避するため、ビードトランスファ12の軸心O方向の移動を妨げない。
【0049】
処理装置45は、CPU等のプロセッサ、RAM、ROM等を含むメモリ、入出力インタフェース等を備えたコンピュータにより構成されている。処理装置45には、第1及び第2距離センサ43A,43Bによって測定されたデータが入力される。また、処理装置45は、生タイヤ形成フォーマ11における制御部17から、成形ドラム13の回転角度及び回転数についてのデータが入力される。処理装置45は、測定リング42の全周について軸方向位置や軸方向間隔等を求めるとともに、これらのデータの周方向のばらつきを求め、このばらつきに対して所定の判定処理を行う。
【0050】
以下、測定装置41を用いた測定方法について説明する。
図5に示すように、成形ドラム13に一対の測定リング42が固定され、第1、第2距離センサ43A,43Bが測定位置に配置された状態で、成形ドラム13が所定の回転数で回転駆動される。成形ドラム13の回転角度と回転数とは処理装置45に入力される。
【0051】
第1及び第2距離センサ43A,43Bは、成形ドラム13が回転している間、所定の時間ごとに一対の測定リング42までの軸方向距離L1,L2を測定する。測定された軸方向距離L1,L2は、処理装置45に入力される。
【0052】
処理装置45は、入力された距離L1,L2のデータと、成形ドラム13の回転角度(回転位置)とを対応付けてメモリに記憶させる。また、処理装置45は、同一の回転位置で測定された距離L1と距離L2との和を求める。この和は、一対の測定リング42の軸方向間隔から第1距離センサ43Aと第2距離センサ43Bとの間隔L5を差し引いたものとなり、一対の測定リング42の軸方向間隔と同等に扱うことができる。さらに、処理装置45は、測定された各距離L1,L2の周方向におけるばらつきや、距離L1と距離L2との和の周方向におけるばらつき等を求める。また、これらのばらつきは、例えば最大値と最小値との差分とすることができる。
【0053】
測定リング42の軸方向距離L1,L2は、測定リング42を保持していた一対のビードコア保持リング20の軸方向距離に換算することができる。具体的には、各軸方向距離L1,L2に測定リング42の軸方向の幅を加算することによって、ビードコア保持リング20の軸方向距離を求めることができる。また、測定リング42の軸方向距離L1,L2のばらつきや距離L1,L2の和のばらつきは、一対のビードコア保持リング20の軸方向距離のばらつきや距離の和のばらつきに相当する。
【0054】
処理装置45は、算出した差分と所定の閾値とを比較し、差分が当該閾値を超えた場合には、一対のビードコア保持リング20のセッティング不良と判定する。このような判定がなされた場合、作業者によってビードトランスファ12のセッティング調整を行い、成形後の空気入りタイヤのユニフォミティの低下を防止する。
【0055】
なお、処理装置45において取り扱われた測定データ、算出データ、判定結果などのデータは、処理装置45から作業者が所有するPC、スマートフォン、タブレットに送信することができる。送信の形態としては、電子メールによる送信等を採用することができる。
【0056】
<変形例>
図6は、測定装置の変形例を示す正面図である。
図6(a)に示す測定装置41は、一対の測定リング42が対向する側とは反対側(軸方向の外側)に配置された第1、第2距離センサ43A,43Bを備えている。そして、第1、第2距離センサ43A,43Bによって、各測定リング42までの距離L3,L4が測定される。そして、本変形例においても、距離L3,L4を用いて、一対の測定リング42及び一対のビードコア保持リング20の軸方向位置、軸方向間隔、及びこれらの周方向におけるばらつき等を求めることができる。
【0057】
図6(b)に示す測定装置41は、一対の測定リング42のそれぞれの径方向外方に配置された一対の距離センサ43Cを備えている。この距離センサ43Cは、軸心O方向に移動可能である。そして、処理装置45は、各距離センサ43Cから各測定リング42の外周面及び成形ドラム13の外周面までの径方向の距離と、距離センサ43Cの軸方向位置とに基づいて、測定リング42の軸方向位置を求める。したがって、本変形例においても、一対の測定リング42及び一対のビードコア保持リング20の軸方向位置、軸方向間隔、及びこれらの周方向におけるばらつき等を求めることができる。
【0058】
<本実施形態の作用効果>
上記実施形態の測定装置41は、ビードコア保持リング20によって保持された状態で回転可能な成形ドラム13の外周側に搬送され、かつ成形ドラム13の外周面に固定される一対の測定リング42と、成形ドラム13に固定された測定リング42の軸方向位置を測定するセンサ43とを備える。そのため、成形ドラム13を回転させながら、成形ドラム13に固定された測定リング42の軸方向位置を測定することができ、センサを周方向に複数設けなくても、測定リング42の全周を対象として軸方向位置を測定することができる。そして、測定リング42は、成形ドラム13の外周面に固定されるまでビードコア保持リング20によって保持された状態で搬送されるので、測定リング42の軸方向位置をビードコア保持リング20の軸方向位置に容易に換算することができる。したがって、一対のビードコア保持リング20の軸方向位置や軸方向間隔を間接的に求めることができ、これらのデータの周方向におけるバラツキ等を判定したり、その判定結果に基づいてビードトランスファ12のセッティング調整を行ったりすることができる。また、本実施形態では、成形ドラム13へのセンサの取り付けが不要なので、この取り付け及び精度チェックのための作業を省略できる。したがって、測定リング42の軸方向位置を効率よく測定することができる。
【0059】
また、上記構成の測定装置41によって、測定リング42の全周について軸方向位置を迅速に測定することができ、測定にあたって作業者の特別な技能が要求されることもない。
【0060】
測定リング42は、ビードコアbを模した模擬リングであるので、ビードコアbを使用しなくても、ビードコアbを成形ドラム13の外周面に固定するのと同等の状態を再現することができる。
なお、測定リング42として、ビードコアbをそのまま使用することも可能であり、その場合、測定装置41によってビードコアbの軸方向位置を直接的に測定することができる。
【0061】
センサ43は、測定リング42までの軸方向距離を測定する距離センサ43A,43Bであるので、測定リング42の軸方向位置を容易に測定することができる。
【0062】
距離センサ43A,43Bは、一対の測定リング42に対応して一対設けられているので、一対の測定リング42のそれぞれについて個別に軸方向位置を測定することができる。
【0063】
一対の距離センサ43A,43Bは、一対の測定リング42の間に配置されるので、両距離センサ43A,43Bを近接して配置し、測定装置41をコンパクトに構成することができる。
【0064】
測定装置41は、測定リング42の軸方向位置を測定する測定位置と、測定位置よりも径方向外側の退避位置との間で距離センサ43A,43Bを移動させる移動機構44を備えているので、測定リング42の軸方向位置を測定するときのみ測定位置に距離センサ43A,43Bを配置し、通常の生タイヤの成形の際には、距離センサ43A,43Bを退避させることができる。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、適宜変更することができる。
例えば、測定リング42は、成形ドラム13の外周面に直接的に固定されるに限らず、他の部材(カーカスプライやそれに相当する部材等)を介して間接的に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
12 :ビードトランスファ
13 :成形ドラム
20 :ビードコア保持リング
41 :測定装置
42 :測定リング
43 :センサ
43A :距離センサ
43B :距離センサ
44 :移動機構
L1 :距離
L2 :距離
L3 :距離
L4 :距離
b :ビードコア