(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】上部車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
B62D25/06 A
(21)【出願番号】P 2019105580
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】出先 祐典
(72)【発明者】
【氏名】森本 誠
(72)【発明者】
【氏名】村岡 修二
(72)【発明者】
【氏名】西森 智美
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-362419(JP,A)
【文献】特開2002-362414(JP,A)
【文献】特開2019-043520(JP,A)
【文献】特開2012-071698(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0200314(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009010913(DE,A1)
【文献】特開2009-057032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車両前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、
車両のサイドドアの上部が係合する係合部材とを備えた上部車体構造であって、
前記係合部材に略同じ車両前後方向の位置で、左右の前記ルーフサイドレールを車幅方向に連結するルーフレインフォースメントと、
前記ルーフサイドレール、及び前記ルーフレインフォースメントに接合されるとともに、前記係合部材が取付けられる取付け部材と、
前記取付け部材に略同じ車両前後方向の位置で、前記ルーフサイドレールに対して車幅方向外側から重合する略板状の補強部材とを備え、
該補強部材が、
前記取付け部材と前記ルーフサイドレールとの接合位置よりも車両上方に下端が位置するとともに、車両上下方向で重合する前記ルーフサイドレールに対して接合された
上部車体構造。
【請求項2】
前記ルーフレインフォースメントを、第1のルーフレインフォースメントとして、
該第1のルーフレインフォースメントよりも車両前方の位置で、前記ルーフサイドレールを車幅方向に連結する第2のルーフレインフォースメントを備え、
前記補強部材が、
第1のルーフレインフォースメントと第2のルーフレインフォースメントとの間に位置する前端を有する補強本体部と、
該補強本体部の上部から車両前方に延設された補強前部とを備えた
請求項1に記載の上部車体構造。
【請求項3】
前記ルーフサイドレールが、
車両前後方向に延びる複数の稜線を有する形状に形成され、
前記補強部材の前記補強本体部が、
前記複数の稜線に重合する複数の本体稜線を有する形状に形成され、
前記補強部材の前記補強前部が、
複数の前記本体稜線のうち、車両上方に位置する前記本体稜線に連続して、前記ルーフサイドレールの前記稜線に重合する前部稜線を有する形状に形成された
請求項2に記載の上部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば乗員が乗降する乗降口が観音開き式のサイドドアで覆われたような車両における上部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車両の側部に設けた乗員が乗降する乗降口が、車体に開閉自在に支持されたフロントドアで覆われた車両、または車体に開閉自在に支持されたフロントドア、及びリヤドアで覆われた車両がある。
【0003】
このフロントドアとリヤドアとを有する車両は、フロントドアのみを有する車両よりも乗降口の開口が大きいため、フロントドアのみを有する車両に比べて、車体剛性が低くなり易い。
このため、フロントドアとリヤドアとを有する車両は、例えば、特許文献1のように、乗降口の前部と後部とを仕切るように車体に接合されたセンターピラーを設けることで、車体剛性を確保している。
【0004】
また、フロントドアとリヤドアとを有する車両には、例えば、乗降口の前端縁をなす車体に開閉自在に支持されたフロントドアと、乗降口の後端縁をなす車体に開閉自在に支持されたリヤドアとで構成された、所謂、観音開き式のサイドドアを有する車両がある。
【0005】
このような観音開き式のサイドドアを有する車両では、乗降口の開口を大きく確保するため、特許文献1のようなセンターピラーを備えていない場合が多い。このため、観音開き式のサイドドアを有する車両では、フロントドアの後部、またはリヤドアの前部にセンターピラーにかわる構造体を内蔵している。
【0006】
そして、観音開き式のサイドドアを有する車両は、センターピラーにかわる構造体を、例えばストライカなどの係合部材を介して、乗降口の上端縁を構成するルーフサイドレールに係合させることで、センターピラーを有する車両と略同等の車体剛性を確保している。
【0007】
ところで、上述したフロントドアとリヤドアとを有する車両は、車両側方に被衝突物が衝突した際、車両側方からの衝突荷重が、車幅方向内側へルーフサイドレールを折り曲げ変形させる荷重として車体に作用する。
【0008】
そこで、特許文献1では、ルーフサイドレールの内部空間に、車両前後方向に延びる補強パイプを配設することで、車両側方からの衝突荷重が加わった際、ルーフサイドレールが車幅方向内側へ折り曲げ変形することを抑制している。
【0009】
しかしながら、観音開き式のサイドドアを有する車両は、車両側方からの衝突荷重が、係合部材を介してルーフサイドレールに局所的に作用するため、センターピラーを備えた車両に比べて、ルーフサイドレールが車幅方向内側へ折曲変形し易い傾向にある。
【0010】
このため、観音開き式のサイドドアを有する車両のルーフサイドレールを、特許文献1の補強パイプで補強する場合、補強パイプの肉厚を、センターピラーを有する車両に適用する補強パイプに比べて、厚肉にして高剛性化する必要がある。そうすると、燃費向上や運動性能向上の観点から車両重量の増加を抑えたいという昨今のニーズに反して、車両重量が増加するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の問題に鑑み、車両重量の増加を抑えて、ルーフサイドレールの車幅方向内側への折曲変形を抑制できる下部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、車両の車両前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、車両のサイドドアの上部が係合する係合部材とを備えた上部車体構造であって、前記係合部材に略同じ車両前後方向の位置で、左右の前記ルーフサイドレールを車幅方向に連結するルーフレインフォースメントと、前記ルーフサイドレール、及び前記ルーフレインフォースメントに接合されるとともに、前記係合部材が取付けられる取付け部材と、前記取付け部材に略同じ車両前後方向の位置で、前記ルーフサイドレールに対して車幅方向外側から重合する略板状の補強部材とを備え、該補強部材が、前記取付け部材と前記ルーフサイドレールとの接合位置よりも車両上方に下端が位置するとともに、車両上下方向で重合する前記ルーフサイドレールに対して接合されたことを特徴とする。
【0014】
この発明により、車両重量の増加を抑えて、ルーフサイドレールの車幅方向内側への折曲変形を抑制することができる。
具体的には、ルーフサイドレールに対して車幅方向外側から補強部材が接合されたことにより、上部車体構造は、車両側方からの衝突荷重が、取付け部材を介してルーフサイドレールに作用した際、ルーフサイドレールの車幅方向内側への変位を、略パイプ状の補強部材に比べて軽量な補強部材によって抑えることができる。
【0015】
この際、補強部材が車両上下方向で重合するルーフサイドレールに対して接合されているため、上部車体構造は、ルーフサイドレールと補強部材との接合箇所をせん断させるせん断力として、車両側方からの衝突荷重を接合箇所に作用させることができる。
【0016】
換言すれば、車両側方からの衝突荷重は、ルーフサイドレールと補強部材との接合強度に抗して、ルーフサイドレールを車幅方向内側へ変位させることになる。このため、上部車体構造は、ルーフサイドレールの車幅方向内側への変位を効果的に抑制することができる。
【0017】
これにより、上部車体構造は、車両側方からの衝突荷重が、係合部材を介して取付け部材に作用した際、圧縮変形側となるルーフサイドレールの車幅方向外側における変位量をより小さくすることができる。
【0018】
さらに、取付け部材とルーフサイドレールとの接合位置よりも車両上方に、補強部材の下端が位置するため、上部車体構造は、係合部材に作用した車両側方からの衝突荷重が、取付け部材を介して直接的に補強部材に伝達されることを抑制できる。
【0019】
このため、上部車体構造は、係合部材に作用した車両側方からの衝突荷重を、取付け部材を介して、ルーフレインフォースメントに安定して伝達させることができる。
従って、上部車体構造は、車両重量の増加を抑えて、ルーフサイドレールの車幅方向内側への折曲変形を抑制することができる。
【0020】
この発明の態様として、前記ルーフレインフォースメントを、第1のルーフレインフォースメントとして、該第1のルーフレインフォースメントよりも車両前方の位置で、前記ルーフサイドレールを車幅方向に連結する第2のルーフレインフォースメントを備え、前記補強部材が、第1のルーフレインフォースメントと第2のルーフレインフォースメントとの間に位置する前端を有する補強本体部と、該補強本体部の上部から車両前方に延設された補強前部とを備えてもよい。
【0021】
この発明により、上部車体構造は、補強部材を設けたことによる応力集中の発生を抑えて、車両側方からの衝突荷重によるルーフサイドレールの折曲変形、及び車両上方側からの荷重によるルーフサイドレールの折曲変形を抑制することができる。
【0022】
具体的には、ルーフサイドレールには、車両側方からの衝突荷重だけでなく、例えば、車両の横転などによって車両上方側からの荷重が作用することがある。
特に、第1のルーフレインフォースメントと第2のルーフレインフォースメントとの間におけるルーフサイドレールは、第1のルーフレインフォースメントの近傍、及び第2のルーフレインフォースメントの近傍に比べて剛性が低いため、車両上方側からの荷重によって車両下方側へ折曲変形するおそれがある。
【0023】
そこで、第1のルーフレインフォースメントと第2のルーフレインフォースメントとの間に位置する前端を有する補強本体部と、補強本体部の上部から車両前方に延設した補強前部により、上部車体構造は、第1のルーフレインフォースメントと第2のルーフレインフォースメントとの間におけるルーフサイドレールの剛性を向上することができる。
【0024】
さらに、補強本体部の上部から補強前部が延設されているため、上部車体構造は、第1のルーフレインフォースメントと第2のルーフレインフォースメントとの間において、ルーフサイドレールの比較的上部を補強部材によって補強することができる。このため、上部車体構造は、車両上方側からの荷重に対するルーフサイドレールの剛性を安定して確保することができる。
【0025】
加えて、第1のルーフレインフォースメントから第2のルーフレインフォースメントにかけて、ルーフサイドレールの剛性を段階的に低くできるため、上部車体構造は、第1のルーフレインフォースメントと第2のルーフレインフォースメントとの間において応力集中部位が生じることを防止できる。
【0026】
従って、上部車体構造は、補強部材を設けたことによる応力集中の発生を抑えて、車両側方からの衝突荷重によるルーフサイドレールの折曲変形、及び車両上方側からの荷重によるルーフサイドレールの折曲変形を抑制することができる。
【0027】
また、この発明の態様として、前記ルーフサイドレールが、車両前後方向に延びる複数の稜線を有する形状に形成され、前記補強部材の前記補強本体部が、前記複数の稜線に重合する複数の本体稜線を有する形状に形成され、前記補強部材の前記補強前部が、複数の前記本体稜線のうち、車両上方に位置する前記本体稜線に連続して、前記ルーフサイドレールの前記稜線に重合する前部稜線を有する形状に形成されてもよい。
【0028】
この発明により、上部車体構造は、車幅方向に沿った縦断面における断面積が補強本体部よりも小さい補強前部であっても、第1のルーフレインフォースメントと第2のルーフレインフォースメントとの間におけるルーフサイドレールを安定して補強することができる。
【0029】
このため、上部車体構造は、車両側方からの衝突荷重、及び車両上方側からの荷重による応力集中を抑えて、ルーフサイドレールの剛性をより確実に確保することができる。
従って、上部車体構造は、車両側方からの衝突荷重によるルーフサイドレールの折曲変形、及び車両上方側からの荷重によるルーフサイドレールの折曲変形をより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、車両重量の増加を抑えて、ルーフサイドレールの車幅方向内側への折曲変形を抑制できる下部車体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】車両前方上方視における車両の外観を示す外観斜視図。
【
図2】右側面視における車両の車体側面を示す右側面図。
【
図3】車室内から見たストライカ取付け部材近傍の外観を示す外観斜視図。
【
図4】平面視におけるルーフサイドレールの外観を示す平面図。
【
図6】斜め車両上方から見た補強部材の外観を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態の車体は、乗員が乗降する乗降口を閉塞するサイドドアが観音開き式の車両である。このような車両における上部車体構造について、
図1から
図8を用いて詳しく説明する。
【0033】
なお、
図1は車両前方上方視における車両1の外観斜視図を示し、
図2は右側面視における車両1の右側面図を示し、
図3は車室内から見たストライカ取付け部材23近傍の外観斜視図を示し、
図4は平面視におけるルーフサイドレール10の平面図を示し、
図5は
図4中のA-A矢視断面図を示している。
【0034】
さらに、
図6は斜め車両上方から見た補強部材22の外観斜視図を示し、
図7は
図4中のB-B矢視断面図を示し、
図8は
図4中のC-C矢視断面図を示している。
また、図示を明確にするため、
図1中において、フロントドア、及びリヤドアの図示を省略するとともに、
図2中において、フロントドア、及びリヤドアを二点鎖線で図示している。
【0035】
また、図中において、矢印Fr及び矢印Rrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。さらに、矢印Rh及び矢印Lh、並びに矢印IN及び矢印OUTは車幅方向を示しており、矢印Rhは右方向を示し、矢印Lhは左方向を示し、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示している。
【0036】
車両1は、
図1に示すように、車両1の下部を車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル2と、左右のサイドシル2の間で車室床面をなすフロントフロアパネル3と、左右のサイドシル2を車幅方向に連結する第1フロアクロスメンバ4、及び第2フロアクロスメンバ5と、フロントフロアパネル3の後端から車両上方へ段上げされたキックアップ部6と、キックアップ部6の車両後方に配設されたリヤフロアパネル7とを備えている。
【0037】
さらに、車両1は、
図1及び
図2に示すように、サイドシル2の前端から車両上方に延びる左右一対のヒンジピラー8と、ヒンジピラー8の上端から車両後方上方へ延びる左右一対のフロントピラー9と、フロントピラー9の上端から車両後方へ延びる左右一対のルーフサイドレール10と、ルーフサイドレール10の後端から車両後方下方へ延びる左右一対のリヤピラー11とを備えている。
【0038】
加えて、車両1は、
図1及び
図2に示すように、サイドシル2の後端から車両後方に延びるリヤサイドフレーム(図示省略)の車両上方側で、車室内の内壁をなす左右一対のリヤサイドパネル12と、リヤサイドパネル12を車幅方向外側から覆う外観意匠面である左右一対のボディサイドアウタパネル13と、サイドシル2の後端、及びルーフサイドレール10を車両上下方向に連結するサイドピラー14とを備えている。
【0039】
そして、車両1は、
図1及び
図2に示すように、サイドシル2と、ヒンジピラー8と、フロントピラー9と、ルーフサイドレール10と、サイドピラー14とで囲われた開口を、乗員が乗降するサイドドア開口Sとして構成している。このサイドドア開口Sは、
図2の二点鎖線で示したように、ヒンジピラー8に開閉自在に支持されたフロントドアDfと、サイドピラー14に開閉自在に支持されたリヤドアDrとによって覆われている。
【0040】
このような車両1の上部車体には、
図1に示すように、フロントピラー9を車幅方向に連結するフロントヘッダ15と、リヤピラー11を車幅方向に連結するリヤヘッダ16と、ルーフサイドレール10を車幅方向に連結する第1ルーフレインフォースメント17、第2ルーフレインフォースメント18、第3ルーフレインフォースメント19、及び第4ルーフレインフォースメント20とが配設されている。
【0041】
上述した各構成要素をさらに詳述すると、サイドシル2は、車両1の下部車体における車体骨格をなす閉断面部材であって、車幅方向外側に位置するサイドシルアウタと、車幅方向内側に位置するサイドシルインナとで構成されている。このサイドシル2は、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面となるように形成されている。
【0042】
また、第1フロアクロスメンバ4、及び第2フロアクロスメンバ5は、
図1に示すように、車両前方からこの順番で、フロントフロアパネル3の上面に接合されている。この第1フロアクロスメンバ4、及び第2フロアクロスメンバ5は、フロントフロアパネル3とともに、車両1の下部車体における車体骨格をなす部材であって、フロントフロアパネル3とで車幅方向に延びる閉断面をなす形状に形成されている。
【0043】
例えば、第1フロアクロスメンバ4、及び第2フロアクロスメンバ5は、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が断面略ハット状に形成されるとともに、フロントフロアパネル3の上面に接合されている。
【0044】
また、ヒンジピラー8は、車両1の前部車体における車体骨格をなす閉断面部材であって、車幅方向外側に位置するアウタパネルと、車幅方向内側に位置するインナパネルとで構成されている。このヒンジピラー8は、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が閉断面となるように形成されている。
【0045】
また、フロントピラー9は、車両1の上部車体における車体骨格をなす閉断面部材であって、車幅方向外側に位置するアウタパネルと、車幅方向内側に位置するインナパネルとで構成されている。このフロントピラー9は、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が閉断面となるように形成されている。
【0046】
また、ルーフサイドレール10は、車両1の上部車体における車体骨格をなす閉断面部材である。なお、ルーフサイドレール10については、後ほど詳しく説明する。
また、リヤピラー11は、車両1の後部車体における車体骨格をなす閉断面部材であって、車幅方向外側に位置するアウタパネルと、車幅方向内側に位置するインナパネルとで構成されている。このリヤピラー11は、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面となるように形成されている。
【0047】
また、サイドピラー14は、リヤサイドパネル12の前部とともに、サイドドア開口Sの後端縁に沿った車体骨格をなす部材であって、リヤサイドパネル12とで車両上下方向に延びる閉断面をなす形状に形成されている。例えば、サイドピラー14は、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状に形成されるとともに、リヤサイドパネル12における車幅方向外側の面に接合されている。
【0048】
また、フロントヘッダ15は、
図1に示すように、フロントピラー9とルーフサイドレール10との接合箇所を車幅方向に連結している。このフロントヘッダ15は、車両上方に位置するアッパパネルと、車両下方に位置するロアパネルとで、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面となるように形成されている。
【0049】
また、リヤヘッダ16は、
図1に示すように、リヤピラー11の上端を車幅方向に連結している。このリヤヘッダ16は、車両上方に位置するアッパパネルと、車両下方に位置するロアパネルとで、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面となるように形成されている。
【0050】
また、第1ルーフレインフォースメント17、第2ルーフレインフォースメント18、第3ルーフレインフォースメント19、及び第4ルーフレインフォースメント20は、
図1に示すように、フロントヘッダ15とリヤヘッダ16との間において、車両前後方向に所定間隔を隔てて、車両前方からこの順番で配設されている。
【0051】
このうち、第2ルーフレインフォースメント18は、
図1及び
図3に示すように、リヤドアDrの前端近傍、より詳しくは後述するストライカ21に略同じ車両前後方向の位置において、ルーフサイドレール10を車幅方向に連結している。
【0052】
この第2ルーフレインフォースメント18は、ルーフパネル(図示省略)とともに、車両1の上部車体における車体骨格をなす部材であって、ルーフパネル(図示省略)とで車幅方向に延びる閉断面をなす形状に形成されている。なお、第2ルーフレインフォースメント18については、後ほど詳述する。
【0053】
また、第1ルーフレインフォースメント17は、
図1及び
図4に示すように、フロントヘッダ15と第2ルーフレインフォースメント18との間で、ルーフサイドレール10を車幅方向に連結している。
また、第3ルーフレインフォースメント19は、
図1及び
図4に示すように、第2ルーフレインフォースメント18とサイドピラー14の上端との間で、ルーフサイドレール10を車幅方向に連結している。
また、第4ルーフレインフォースメント20は、
図1及び
図4に示すように、サイドピラー14の上端に略同じ車両前後方向の位置で、ルーフサイドレール10を車幅方向に連結している。
【0054】
また、フロントドアDf、及びリヤドアDrは、周知技術のため、その詳細な図示を省略するが、車両1の外観意匠面をなすドアアウタパネルと、ドアアウタパネルに対して車幅方向内側に対向配置されたドアインナパネルとで構成されている。
【0055】
さらに、リヤドアDrの前部には、ドアインナパネルとともに、車両1の側部車体における車体骨格をなすセンターピラー(図示省略)が、ドアインナパネルの車幅方向外側の面に接合されている。このセンターピラーは、ドアインナパネルとで車両上下方向に延びる閉断面をなす形状に形成されている。例えば、センターピラーは、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状に形成されている。
【0056】
加えて、リヤドアDrの前部、かつ上部には、詳細な図示を省略するが、後述するストライカ21(
図3参照)に係合するラッチが、ドアインナパネルとセンターピラーとで形成された閉断面部に設けられている。
【0057】
そして、上述した車両1は、サイドシル2と、ヒンジピラー8と、フロントピラー9と、ルーフサイドレール10と、サイドピラー14とで、サイドドア開口Sに沿って側面視略環状となる環状車体骨格を構成している。
さらに、車両1は、第2フロアクロスメンバ5、リヤドアDrのセンターピラーと、第2ルーフレインフォースメント18とで、正面視略環状となる環状車体骨格を構成している。
【0058】
引き続き、上述したルーフサイドレール10、及び第2ルーフレインフォースメント18について、さらに詳しく説明する。
ルーフサイドレール10は、
図3から
図5に示すように、車幅方向内側に位置するルーフサイドインナ101と、ルーフサイドインナ101に対して車幅方向外側に位置するルーフサイドアウタ102とで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすように構成されている。
【0059】
ルーフサイドインナ101は、
図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、車両上下方向に所定の厚みを有するインナ上側フランジ部101aと、インナ上側フランジ部101aから車両下方へ延設されたインナ側壁部101bと、インナ側壁部101bの下端から車幅方向外側、かつ僅かに車両下方へ延設されたインナ下面部101cと、インナ下面部101cから車幅方向外側、かつ車両下方へ延設されたインナ下側フランジ部101dとで一体形成されている。
【0060】
一方、ルーフサイドアウタ102は、
図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、車両上下方向に所定の厚みを有するアウタ上側フランジ部102aと、アウタ上側フランジ部102aから車幅方向外側へ延設されたアウタ上面部102bと、アウタ上面部102bから車両下方、かつ僅かに車幅方向外側へ延設されたアウタ側壁部102cと、アウタ側壁部102cの下端から車幅方向内側、かつ車両下方へ延設されたアウタ下面部102dと、アウタ下面部102dの下端から車幅方向外側、かつ車両下方へ延設されたアウタ下側フランジ部102eとで一体形されている。
【0061】
そして、ルーフサイドレール10は、
図5に示すように、インナ上側フランジ部101aの上面とアウタ上側フランジ部102aの下面とを接合するとともに、インナ下側フランジ部101dの車幅方向外側の面とアウタ下側フランジ部102eの車幅方向内側の面とを接合することで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略台形状の閉断面を形成している。
【0062】
このような構成のため、ルーフサイドレール10には、
図5及び
図6に示すように、アウタ上面部102bとアウタ側壁部102cとの角部に車両前後方向に延びる第1稜線10Aが形成され、アウタ側壁部102cとアウタ下面部102dとの角部に車両前後方向に延びる第2稜線10Bが形成され、アウタ下面部102dとアウタ下側フランジ部102eとの角部に車両前後方向に延びる第3稜線10Cが形成されている。
【0063】
さらに、ルーフサイドレール10には、
図4及び
図6に示すように、第1ルーフレインフォースメント17と第3ルーフレインフォースメント19との間に、ルーフサイドアウタ102を車幅方向外側から補強する補強部材22が接合されている。なお、補強部材22については、後ほど詳しく説明する。
【0064】
また、第2ルーフレインフォースメント18は、
図3に示すように、車両下方に突出した略W字状のルーフレイン本体部材181と、ルーフレイン本体部材181の両端に接合された一対の連結部材182とで構成されている。
【0065】
ルーフレイン本体部材181は、
図3及び
図6に示すように、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が車両下方に突出した断面略W字状に折り曲げられた折曲構造部183と、折曲構造部183の前端から車両前方にフランジ状に延設された前側フランジ部184と、折曲構造部183の後端から車両後方にフランジ状に延設された後側フランジ部185とで一体形成されている。
【0066】
このルーフレイン本体部材181は、折曲構造部183における車両前後方向略中央に形成された上面部分である上面部分183a、前側フランジ部184、及び後側フランジ部185が、ルーフパネルの下面に接合されることで、車幅方向に延びる閉断面を形成している。
【0067】
さらに、ルーフレイン本体部材181は、
図6に示すように、前側フランジ部184から車幅方向外側へ延設した部分、及び後側フランジ部185から車幅方向外側へ延設した部分が、ルーフサイドレール10のアウタ上面部102bに接合されている。
【0068】
また、連結部材182は、
図3に示すように、車両下方に突出した側面視略ハット状に形成されている。この連結部材182は、
図3及び
図5に示すように、第2ルーフレインフォースメント18における折曲構造部183の底面、及び前側フランジ部184の下面、及び後側フランジ部185の下面と、ルーフサイドインナ101のインナ側壁部101bとに接合されることで、ルーフレイン本体部材181とルーフサイドインナ101とを連結している。
【0069】
さらに、連結部材182には、
図3に示すように、ストライカ21が固定されるストライカ取付け部材23が接合されている。
ストライカ取付け部材23は、
図3及び
図5に示すように、車両上方、及び車幅方向外側が開口した略ボックス状であって、ルーフサイドレール10と連結部材182とに接合されている。
【0070】
具体的には、ストライカ取付け部材23は、
図3及び
図5に示すように、車両上方、及び車幅方向外側が開口した略ボックス状の本体部231と、本体部231から延設された前方フランジ部232、後方フランジ部(図示省略)、側方フランジ部233、及び下方フランジ部234とで一体形成されている。
【0071】
本体部231は、
図3及び
図5に示すように、車両前後方向で対面する前面部分231a、及び後面部分(図示省略)と、車幅方向内側の側壁をなす側面部分231bと、底面をなす底面部分231cとで略ボックス状に一体形成されている。
【0072】
この本体部231の底面部分231cは、
図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、略水平な下面を有する略平板状であって、ルーフサイドレール10におけるインナ下側フランジ部101dの上端、及びアウタ下側フランジ部102eの上端に略同じ車両上下方向の位置に形成されている。
【0073】
さらに、底面部分231cには、
図3及び
図5に示すように、車幅方向略中央よりも車幅方向内側に、ストライカ21の基部21aが接合されている。
なお、ストライカ21は、リヤドアDrが閉じた状態において、リヤドアDrに設けたラッチが係合する係合部材であって、ストライカ取付け部材23の底面部分231cから下方へ向けて垂設されている。
具体的には、ストライカ21は、
図3及び
図5に示すように、車両上方が開口した側面視略門型形状の線状部材の下部を、車幅方向外側へ屈曲させた形状に形成されている。
【0074】
前方フランジ部232は、
図3に示すように、本体部231の前面部分231aにおける上端縁から車幅方向外側の縁端にかけてフランジ状に延設されている。この前方フランジ部232は、
図3に示すように、連結部材182を介して、第2ルーフレインフォースメント18の折曲構造部183に接合されるとともに、連結部材182を介して、ルーフサイドレール10のインナ側壁部101bに接合されている。
【0075】
後方フランジ部は、詳細な図示を省略するが、本体部231の後面部分における上端縁から車幅方向外側の縁端にかけてフランジ状に延設されている。この後方フランジ部は、連結部材182を介して、第2ルーフレインフォースメント18の折曲構造部183に接合されるとともに、連結部材182を介して、ルーフサイドレール10のインナ側壁部101bに接合されている。
【0076】
側方フランジ部233は、
図3及び
図5に示すように、側面部分231bの上端から車幅方向内側へ延設されている。この側方フランジ部233は、連結部材182を介して、第2ルーフレインフォースメント18の折曲構造部183に接合されている。
【0077】
下方フランジ部234は、
図3及び
図5に示すように、底面部分231cにおける車幅方向外側の縁端から車両下方に延設されている。この下方フランジ部234は、
図3及び
図5に示すように、ルーフサイドインナ101のインナ下側フランジ部101dを介して、ルーフサイドアウタ102のアウタ下側フランジ部102eに接合されている。
【0078】
次に、上述した補強部材22について詳述する。補強部材22は、
図4及び
図6に示すように、第1ルーフレインフォースメント17の後端から、第2ルーフレインフォースメント18と第3ルーフレインフォースメント19との間に至る車両前後方向の長さを有する補強部材である。
【0079】
この補強部材22は、
図4から
図6に示すように、所定の厚みを有する板状材を、ルーフサイドアウタ102における車幅方向外側の面に沿うように屈曲させた形状に形成されている。なお、補強部材22は、
図5に示すように、ルーフサイドインナ101のインナ下側フランジ部101dとストライカ取付け部材23の下方フランジ部234との接合箇所よりも車両上方に下端が位置するように、ルーフサイドレール10のルーフサイドアウタ102に接合されている。
【0080】
具体的には、補強部材22は、
図6に示すように、第2ルーフレインフォースメント18の後端に略同じ位置に後端が位置する補強本体部221と、補強本体部221の上部を車両前方に延設した補強前部222と、補強本体部221の下部を車両後方に延設した補強後部223とで一体形成されている。
【0081】
補強本体部221は、
図6に示すように、第2ルーフレインフォースメント18の後端に略同じ位置に後端が位置し、第1ルーフレインフォースメント17と第2ルーフレインフォースメント18との間における車両前後方向略中央に前端が位置する車両前後方向の長さで形成されている。
【0082】
この補強本体部221は、
図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、ルーフサイドアウタ102のアウタ上面部102b、アウタ側壁部102c、及びアウタ下面部102dに重なり合う断面形状に形成されている。
【0083】
より詳しくは、補強本体部221は、ルーフサイドアウタ102のアウタ上面部102bに沿った略平板状の本体上面部分221aと、アウタ側壁部102cに沿うように本体上面部分221aから車両下方、かつ僅かに車幅方向外側へ延設された本体側壁部分221bと、アウタ下面部102dに沿うように本体側壁部分221bの下端から車幅方向内側、かつ車両下方へ延設された本体下面部分221cとで一体形成されている。
【0084】
このような構成のため、補強本体部221には、
図5及び
図6に示すように、本体上面部分221aと本体側壁部分221bとの角部に車両前後方向に延びる第1本体稜線22Aが形成され、本体側壁部分221bと本体下面部分221cとの角部に車両前後方向に延びる第2本体稜線22Bが形成されている。
【0085】
また、補強前部222は、
図6に示すように、第1ルーフレインフォースメント17と第2ルーフレインフォースメント18との間における車両前後方向略中央に後端が位置し、第1ルーフレインフォースメント17の後端に前端が位置する車両前後方向の長さで形成されている。
【0086】
この補強前部222は、
図7に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、ルーフサイドアウタ102のアウタ上面部102b、及びアウタ側壁部102cに重なり合う断面形状に形成されている。
より詳しくは、補強前部222は、
図6及び
図7に示すように、ルーフサイドアウタ102のアウタ上面部102bに沿って本体上面部分221aを車両前方に延設した前部上面部分222aと、アウタ側壁部102cに沿って本体側壁部分221bを車両前方に延設した前部側壁部分222bとで断面略L字状に形成されている。
【0087】
前部上面部分222aは、
図5から
図7に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、補強本体部221の本体上面部分221aに略同じ車幅方向の長さになるように形成されている。
一方、前部側壁部分222bは、
図5から
図7に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、補強本体部221における本体上面部分221aから本体側壁部分221bの下端までの延設長さよりも短い延設長さで、前部上面部分222aから車両下方、かつ僅かに車幅方向外側へ延設さされている。
【0088】
すなわち、補強前部222は、車幅方向に沿った断面において、補強本体部221の下端よりも車両上方に下端が位置するように、ルーフサイドアウタ102の外面に沿った長さが、補強本体部221よりも短い長さで形成されている。
【0089】
このような構成のため、補強前部222には、
図6及び
図7に示すように、前部上面部分222aと前部側壁部分222bとの角部に車両前後方向に延びるとともに、補強本体部221の第1本体稜線22Aに連続する前部稜線22Cが形成されている。
【0090】
また、補強後部223は、
図6に示すように、第2ルーフレインフォースメント18の後端に略同じ車両前後方向の位置に前端が位置し、第2ルーフレインフォースメント18と第3ルーフレインフォースメント19との間に後端が位置する車両前後方向の長さで形成されている。
この補強後部223は、
図8に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、ルーフサイドアウタ102のアウタ側壁部102c、及びアウタ下面部102dに重なり合う断面形状に形成されている。
【0091】
より詳しくは、補強後部223は、
図6及び
図8に示すように、ルーフサイドアウタ102のアウタ下面部102dに沿って補強本体部221の本体下面部分221cを車両後方に延設した後部下面部分223aと、アウタ側壁部102cに沿って補強本体部221の本体側壁部分221bを車両後方に延設した後部側壁部分223bとで断面略L字状に形成されている。
【0092】
後部下面部分223aは、
図5、
図6、及び
図8に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、補強本体部221の本体下面部分221cに略同じ車幅方向の長さになるように形成されている。
【0093】
一方、後部側壁部分223bは、
図5、
図6、及び
図8に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、補強本体部221における本体下面部分221cから本体側壁部分221bの上端までの延設長さよりも短い延設長さで、後部下面部分223aから車両上方、かつ車幅方向内側へ延設さされている。
【0094】
すなわち、補強後部223は、車幅方向に沿った断面において、補強本体部221の上端よりも車両下方に上端が位置するように、ルーフサイドアウタ102の外面に沿った長さが、補強本体部221よりも短い長さで形成されている。
【0095】
このような構成のため、補強後部223には、
図6及び
図8に示すように、後部側壁部分223bと後部下面部分223aとの角部に車両前後方向に延びるとともに、補強本体部221の第2本体稜線22Bに連続する後部稜線22Dが形成されている。
【0096】
上述した構成の補強部材22は、
図6に示すように、車両前後方向に所定間隔を隔てた接合位置P1において、補強本体部221の本体上面部分221a、及び補強前部222の前部上面部分222aが、車両上下方向で重合する部分であるルーフサイドレール10のアウタ上面部102bに接合されている。
【0097】
さらに、補強部材22は、
図6に示すように、車両前後方向に所定間隔を隔てた接合位置P2において、補強本体部221の本体側壁部分221b、補強前部222の前部側壁部分222b、及び補強後部223の後部側壁部分223bが、車幅方向で重合する部分であるルーフサイドレール10のアウタ側壁部102cに接合されている。
【0098】
加えて、補強部材22は、
図6に示すように、車両前後方向に所定間隔を隔てた接合位置P3において、補強本体部221の本体下面部分221c、及び補強後部223の後部下面部分223aが、略車両上下方向で重合する部分であるルーフサイドレール10のアウタ下面部102dに接合されている。
【0099】
具体的には、補強本体部221の本体上面部分221a、及び補強前部222の前部上面部分222aは、ルーフサイドレール10のアウタ側壁部102cに対して車両上下方向で重合した状態において、スポット溶接用電極で挟持されたのち、スポット溶接によって接合されている。
【0100】
さらに、補強本体部221の本体側壁部分221b、補強前部222の前部側壁部分222b、及び補強後部223の後部側壁部分223bは、ルーフサイドレール10のアウタ側壁部102cに対して略車幅方向で重合した状態において、スポット溶接用電極で挟持されたのち、スポット溶接によって接合されている。
【0101】
加えて、補強本体部221の本体下面部分221c、及び補強後部223の後部下面部分223aは、ルーフサイドレール10のアウタ下面部102dに対して略車両上下方向で重合した状態において、スポット溶接用電極で挟持されたのち、スポット溶接によって接合されている。
【0102】
このため、補強部材22は、
図5から
図8に示すように、ルーフサイドレール10に接合された状態において、車両前後方向に連続する第1本体稜線22Aと前部稜線22Cとが、車両上方に位置するルーフサイドレール10の第1稜線10Aに重合し、車両前後方向に連続する第2本体稜線22Bと後部稜線22Dとが、第1本体稜線22Aよりも車幅方向外側に位置するルーフサイドレール10の第2稜線10Bに重合する。
【0103】
以上のように、車両1の車両前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール10と、車両1のリヤドアDrの上部が係合するストライカ21とを備えた上部車体構造は、ストライカ21に略同じ車両前後方向の位置で、左右のルーフサイドレール10を車幅方向に連結する第2ルーフレインフォースメント18と、ルーフサイドレール10、及び第2ルーフレインフォースメント18に接合されるとともに、ストライカ21が取付けられるストライカ取付け部材23と、ストライカ取付け部材23に略同じ車両前後方向の位置で、ルーフサイドレール10に対して車幅方向外側から重合する略板状の補強部材22とを備え、補強部材22が、ストライカ取付け部材23とルーフサイドレール10との接合位置よりも車両上方に下端が位置するとともに、車両上下方向で重合するルーフサイドレール10に対して接合されたことにより、車両重量の増加を抑えて、ルーフサイドレール10の車幅方向内側への折曲変形を抑制することができる。
【0104】
具体的には、ルーフサイドレール10に対して車幅方向外側から補強部材22が接合されたことにより、上部車体構造は、車両側方からの衝突荷重が、ストライカ取付け部材23を介してルーフサイドレール10に作用した際、ルーフサイドレール10の車幅方向内側への変位を、略パイプ状の補強部材に比べて軽量な補強部材22によって抑えることができる。
【0105】
この際、補強部材22が車両上下方向で重合するルーフサイドレール10に対して接合されているため、上部車体構造は、ルーフサイドレール10と補強部材22との接合箇所をせん断させるせん断力として、車両側方からの衝突荷重を接合箇所に作用させることができる。
【0106】
換言すれば、車両側方からの衝突荷重は、ルーフサイドレール10と補強部材22との接合強度に抗して、ルーフサイドレール10を車幅方向内側へ変位させることになる。このため、上部車体構造は、ルーフサイドレール10の車幅方向内側への変位を効果的に抑制することができる。
【0107】
これにより、上部車体構造は、車両側方からの衝突荷重が、ストライカ21を介してストライカ取付け部材23に作用した際、圧縮変形側となるルーフサイドレール10の車幅方向外側における変位量をより小さくすることができる。
【0108】
さらに、ストライカ取付け部材23とルーフサイドレール10との接合位置よりも車両上方に、補強部材22の下端が位置するため、上部車体構造は、ストライカ21に作用した車両側方からの衝突荷重が、ストライカ取付け部材23を介して直接的に補強部材22に伝達されることを抑制できる。
【0109】
このため、上部車体構造は、ストライカ21に作用した車両側方からの衝突荷重を、ストライカ取付け部材23を介して、第2ルーフレインフォースメント18に安定して伝達させることができる。
従って、上部車体構造は、車両重量の増加を抑えて、ルーフサイドレール10の車幅方向内側への折曲変形を抑制することができる。
【0110】
また、第2ルーフレインフォースメント18よりも車両前方の位置で、ルーフサイドレール10を車幅方向に連結する第1ルーフレインフォースメント17を備え、補強部材22が、第2ルーフレインフォースメント18と第1ルーフレインフォースメント17との間に位置する前端を有する補強本体部221と、補強本体部221の上部から車両前方に延設された補強前部222とを備えたことにより、上部車体構造は、補強部材22を設けたことによる応力集中の発生を抑えて、車両側方からの衝突荷重によるルーフサイドレール10の折曲変形、及び車両上方側からの荷重によるルーフサイドレール10の折曲変形を抑制することができる。
【0111】
具体的には、ルーフサイドレール10には、車両側方からの衝突荷重だけでなく、例えば、車両1の横転などによって車両上方側からの荷重が作用することがある。
特に、第2ルーフレインフォースメント18と第1ルーフレインフォースメント17との間におけるルーフサイドレール10は、第2ルーフレインフォースメント18の近傍、及び第1ルーフレインフォースメント17の近傍に比べて剛性が低いため、車両上方側からの荷重によって車両下方側へ折曲変形するおそれがある。
【0112】
そこで、第2ルーフレインフォースメント18と第1ルーフレインフォースメント17との間に位置する前端を有する補強本体部221と、補強本体部221の上部から車両前方に延設した補強前部222により、上部車体構造は、第2ルーフレインフォースメント18と第1ルーフレインフォースメント17との間におけるルーフサイドレール10の剛性を向上することができる。
【0113】
さらに、補強本体部221の上部から補強前部222が延設されているため、上部車体構造は、第2ルーフレインフォースメント18と第1ルーフレインフォースメント17との間において、ルーフサイドレール10の比較的上部を補強部材22によって補強することができる。このため、上部車体構造は、車両上方側からの荷重に対するルーフサイドレール10の剛性を安定して確保することができる。
【0114】
加えて、第2ルーフレインフォースメント18から第1ルーフレインフォースメント17にかけて、ルーフサイドレール10の剛性を段階的に低くできるため、上部車体構造は、第2ルーフレインフォースメント18と第1ルーフレインフォースメント17との間において応力集中部位が生じることを防止できる。
【0115】
従って、上部車体構造は、補強部材22を設けたことによる応力集中の発生を抑えて、車両側方からの衝突荷重によるルーフサイドレール10の折曲変形、及び車両上方側からの荷重によるルーフサイドレール10の折曲変形を抑制することができる。
【0116】
また、ルーフサイドレール10が、車両前後方向に延びる第1稜線10A、第2稜線10B、及び第3稜線10Cを有する形状に形成され、補強部材22の補強本体部221が、第1稜線10A、及び第2稜線10Bに重合する第1本体稜線22A、及び第2本体稜線22Bを有する形状に形成され、補強部材22の補強前部222が、車両上方に位置する第1本体稜線22Aに連続して、ルーフサイドレール10の第1稜線10Aに重合する前部稜線22Cを有する形状に形成されたことにより、上部車体構造は、車幅方向に沿った縦断面における断面積が補強本体部221よりも小さい補強前部222であっても、第2ルーフレインフォースメント18と第1ルーフレインフォースメント17との間におけるルーフサイドレール10を安定して補強することができる。
【0117】
このため、上部車体構造は、車両側方からの衝突荷重、及び車両上方側からの荷重による応力集中を抑えて、ルーフサイドレール10の剛性をより確実に確保することができる。
従って、上部車体構造は、車両側方からの衝突荷重によるルーフサイドレール10の折曲変形、及び車両上方側からの荷重によるルーフサイドレール10の折曲変形をより確実に抑制することができる。
【0118】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のサイドドアは、実施形態のリヤドアDrに対応し、
以下同様に、
係合部材は、ストライカ21に対応し、
ルーフレインフォースメント、及び第1のルーフレインフォースメントは、第2ルーフレインフォースメント18に対応し、
取付け部材は、ストライカ取付け部材23に対応し、
第2のルーフレインフォースメントは、第1ルーフレインフォースメント17に対応し、
複数の稜線は、第1稜線10A、第2稜線10B、及び第3稜線10Cに対応し、
複数の本体稜線は、第1本体稜線22A、及び第2本体稜線22Bに対応し、
車幅方向内側に位置する稜線は、第1稜線10Aに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0119】
例えば、上述した実施形態において、車両1のサイドドア開口Sを、ヒンジピラー8に開閉自在に支持されたフロントドアDfと、サイドピラー14に開閉自在に支持されたリヤドアDrとで覆う構成としたが、これに限定せず、ヒンジピラー8に開閉自在に支持されたフロントドアと、車両前後方向にスライド移動可能なリヤドアとで、サイドドア開口Sを覆う構成であってもよい。
【0120】
また、リヤドアDrのラッチがストライカ21に係合する構成としたが、これに限定せず、フロントドアDfの後部に設けたラッチがストライカに係合する構成としてもよい。この場合、フロントドアDfの後部には、ドアインナパネルとで車両上下方向に延びる閉断面をなすセンターピラーを配設するとともに、ドアインナパネルとセンターピラーとで形成された閉断面部にラッチを設けるものとする。
【0121】
また、リヤドアDrのラッチが係合するストライカ21を係合部材として説明したが、これに限定せず、リヤドアDrの上部が係合する部材であれば、適宜の係合部材であってもよい。
また、第2ルーフレインフォースメント18を、ルーフレイン本体部材181と一対の連結部材182とで構成したが、これに限定せず、ルーフレイン本体部材181と連結部材182とで一体形成された第2ルーフレインフォースメントであってもよい。
【0122】
また、第2ルーフレインフォースメント18にストライカ取付け部材23が接合された構成としたが、これに限定せず、第2ルーフレインフォースメント18にストライカ取付け部材23が一体形成された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0123】
1…車両
10…ルーフサイドレール
10A…第1稜線
10B…第2稜線
10C…第3稜線
17…第1ルーフレインフォースメント
18…第2ルーフレインフォースメント
21…ストライカ
22…補強部材
22A…第1本体稜線
22B…第2本体稜線
22C…前部稜線
23…ストライカ取付け部材
221…補強本体部
222…補強前部
Dr…リヤドア