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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20230328BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20230328BHJP
   B60K 15/03 20060101ALI20230328BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20230328BHJP
   F02B 63/06 20060101ALI20230328BHJP
   F02B 61/00 20060101ALI20230328BHJP
   F02B 29/04 20060101ALI20230328BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20230328BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20230328BHJP
   F01M 11/00 20060101ALI20230328BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
F02D29/00 B
E02F9/00 D
B60K15/03 B
F02M37/00 Z
F02B63/06 Z
F02B61/00 B
F02B29/04 K
F02D29/04 G
F02B37/00 302Z
F01M11/00 Z
F01P3/18 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019115097
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021001567
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 良昭
(72)【発明者】
【氏名】喜多 智隆
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-151727(JP,A)
【文献】実開昭59-22975(JP,U)
【文献】実開昭56-76161(JP,U)
【文献】実開昭57-68901(JP,U)
【文献】実開昭57-87801(JP,U)
【文献】特開2008-38808(JP,A)
【文献】特開2004-68603(JP,A)
【文献】特開平2-283852(JP,A)
【文献】特開2010-236287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00
E02F 9/00
B60K 15/03
F02M 37/00
F02B 63/06
F02B 61/00
F02B 29/04
F02D 29/04
F02B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、オイルタンクと、前記エンジンへ空気を供給するための第1給気路と、前記第1給気路に介装されているターボチャージャとを備えている建設機械であって、
前記第1給気路の前記ターボチャージャよりも下流側となる位置に介装され、前記ターボチャージャから供給された空気を冷却するインタークーラと、前記インタークーラから前記オイルタンクに空気を供給するための第2給気路とを備えていることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記ターボチャージャから前記オイルタンクに空気を供給するための第3給気路と、前記第2給気路を介して前記オイルタンクに空気を供給する状態と前記第3給気路を介して前記オイルタンクに空気を供給する状態とを切り換える切換機構を備えていることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の作業機械において、
前記第2給気路に介装され、前記オイルタンクへ供給される空気の圧力を調整する圧力調整機構を備えていることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の作業機械において、
作業機と、作業機を駆動させるための油圧装置と、前記油圧装置に供給される作動油を貯留する作動油タンクとを備え、
前記オイルタンクは、前記作動油タンクであることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の作業機械において、
前記エンジンに供給される燃料を貯留する燃料タンクを備え、
前記オイルタンクは、前記燃料タンクであることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載されている上部旋回体と、前記燃料タンクから前記エンジンに燃料を供給するための燃料回路と、前記下部走行体及び前記上部旋回体を貫くように配置されたスイベルジョイントとを備え、
前記燃料タンクは、前記下部走行体に配置され、
前記エンジンは、前記上部旋回体に配置され、
前記スイベルジョイントは、前記燃料回路に介装されていることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンへ加圧された空気を供給するためのターボチャージャを備えている作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンへ加圧された空気を供給するためのターボチャージャを備えたエンジンシステムがある。この種のエンジンシステムとしては、ターボチャージャで加圧された空気を、エンジンに供給するだけではなく、燃料タンクに供給するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のエンジンシステムでは、加圧された空気を燃料タンクに供給することによって、燃料タンクの内部の圧力を上昇させて、燃料タンクから燃料を導出しやすくして、燃料をエンジンに供給するためのポンプの動作を補助している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭54-151727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ターボチャージャで加圧された空気は高温であるので、その空気を燃料タンク、作動油タンク等のオイルタンクに供給すると、そのオイルタンクに貯留されているオイルの温度が必要以上に上昇してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、オイルタンクに貯留されているオイルの温度変化を抑制しつつ、オイルタンクに加圧された空気を供給することができる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業機械は、
エンジンと、オイルタンクと、前記エンジンへ空気を供給するための第1給気路と、前記第1給気路に介装されているターボチャージャとを備えている建設機械であって、
前記第1給気路の前記ターボチャージャよりも下流側となる位置に介装され、前記ターボチャージャから供給された空気を冷却するインタークーラと、前記インタークーラから前記オイルタンクに空気を供給するための第2給気路とを備えていることを特徴とする。
【0008】
一般的に、ターボチャージャでは、空気を加圧する際に、その空気の温度が150℃程度まで上昇する。一方、寒冷地等で使用される作業機械では、オイルタンクに貯留されるオイルの温度は、そのオイルタンクが燃料タンクである場合には70℃程度、作動油タンクである場合には、80℃~100℃程度である。
【0009】
そのため、ターボチャージャで加圧された空気をそのままオイルタンクに供給すると、その空気とオイルタンクに貯留されているオイルとの温度差によって、オイルタンクの内部に貯留されているオイルの温度が、オイルタンクの内部において好適とされる温度以上に上昇してしまうおそれがある。
【0010】
そこで、本発明の作業機械では、このように、ターボチャージャで加圧された空気を、そのままオイルタンクに供給するのではなく、インタークーラで冷却してから供給している。
【0011】
すなわち、オイルタンクに供給される空気の温度を、そのオイルタンクに既に貯留されているオイルの温度に近づけてから、又は、一致させてから(具体的には、例えば、60℃~100℃程度まで冷却してから)、オイルタンクに供給している。
【0012】
これにより、この作業機械によれば、オイルタンクに加圧された空気を供給する際に、オイルタンクに供給される空気とオイルとの温度差に起因するオイルの温度変化を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の作業機械においては、
前記ターボチャージャから前記オイルタンクに空気を供給するための第3給気路と、前記第2給気路を介して前記オイルタンクに空気を供給する状態と前記第3給気路を介して前記オイルタンクに空気を供給する状態とを切り換える切換機構を備えていることが好ましい。
【0014】
寒冷地等において作業機械を使用する場合、その環境の影響によって、オイルタンクの内部に貯留されているオイルの温度も低下してしまうことがある。そのような場合、例えば、オイルタンクが作動油タンクであったとすると、冷えた作動油の温度を適正値までに上昇させるための暖機運転に必要な時間が長くなるので、エンジンの始動後に作業機械による作業を開始するまでに時間がかかってしまうおそれがあった。
【0015】
そこで、このように、第2給気路を介してオイルタンクに空気を供給する状態(すなわち、インタークーラを介して空気を供給する状態)と、第3給気路を介してオイルタンクに空気を供給する状態(すなわち、インタークーラを介さずに空気を供給する状態)とを切り換えることができるように構成すると、必要に応じて、インタークーラで冷却される前の高温の空気をオイルタンクに供給することができる。
【0016】
これにより、オイルタンクの内部の温度を素早く上昇させることができる。ひいては、エンジンの始動後に作業機械による作業を開始するまでの時間を短縮化することができる。
【0017】
また、本発明の作業機械においては、
前記第2給気路に介装され、前記オイルタンクへ供給される空気の圧力を調整する圧力調整機構を備えていることが好ましい。
【0018】
ターボチャージャにおける加圧の度合い、供給する空気の量等によっては、オイルタンクに空気を供給した結果、オイルタンクの内部の圧力が、オイルタンクの内部において好適とされる圧力以上に上昇してしまうおそれがある。
【0019】
そこで、このように、圧力調整機構(例えば、内圧調整弁)を設けると、ターボチャージャから空気をオイルタンクに供給した場合であっても、オイルタンクの内部における圧力を好適な範囲の圧力に維持しやすくなる。
【0020】
また、本発明の作業機械においては、
作業機と、作業機を駆動させるための油圧装置と、前記油圧装置に供給される作動油を貯留する作動油タンクとを備え、
前記オイルタンクは、前記作動油タンクであってもよい。
【0021】
また、本発明の作業機械においては、
前記エンジンに供給される燃料を貯留する燃料タンクを備え、
前記オイルタンクは、前記燃料タンクであってもよい。
【0022】
また、本発明の作業機械においては、オイルタンクが燃料タンクである構成の場合、
下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載されている上部旋回体と、前記燃料タンクから前記エンジンに燃料を供給するための燃料回路と、前記下部走行体及び前記上部旋回体を貫くように配置されたスイベルジョイントとを備え、
前記燃料タンクは、前記下部走行体に配置され、
前記エンジンは、前記上部旋回体に配置され、
前記スイベルジョイントは、前記燃料回路に介装されていることが好ましい。
【0023】
このような構成においては、スイベルジョイントを通過する際に、燃料に圧損が生じてしまう。そこで、本発明のように、燃料タンクにターボチャージャで加圧された空気を供給するようにすると、そのスイベルジョイントにおける圧損を補填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る油圧ショベルの概略構成を示す側面図。
図2図1の油圧ショベルを後側上方から見た斜視図。
図3図1の油圧ショベルの給気経路及び作動油供給経路を示す模式図。
図4】第2実施形態に係る油圧ショベルの給気経路及び燃料供給経路を示す模式図。
図5】変形例に係る油圧ショベルの給気経路及び作動油供給経路を示す模式図。
【0025】
[第1実施形態]
以下、図1図3を参照して、本実施形態に係る作業機械である油圧ショベルS1について説明する。以下の説明においては、油圧ショベルS1の進行方向前側を単に「前側」といい、進行方向後方及び後側を単に「後方」及び「後側」という。
【0026】
なお、本実施形態では作業機械の一例として油圧ショベルS1を用いるが、本発明の作業機械は、エンジン、オイルタンク、ターボチャージャを備えているものであればよく、油圧ショベルに限定されるものではない。例えば、クレーン車、ダンプカー等であってもよい。
【0027】
まず、図1及び図2を参照して、油圧ショベルS1の概略構成について説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、油圧ショベルS1は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載されている上部旋回体2とを備えている。
【0029】
下部走行体1は、ロアフレーム1aと、ロアフレーム1aの両側に設けられた一対のクローラ1bとを備えている。クローラ1bは、油圧アクチュエータである走行用油圧モータによって駆動される。ロアフレーム1aには、後述するエンジン3aに供給する燃料を貯留する燃料タンク7a(オイルタンク)が配置されている。
【0030】
なお、本発明の下部走行体は、ロアフレームとクローラとによって構成されたものに限定されるものではない。例えば、下部走行体は、車輪で移動するものであってもよいし、脚式移動のものであってもよい。また、作業機械が水上で使用されるものである場合には、下部走行体は台船等であってもよい。
【0031】
上部旋回体2は、ロアフレーム1aに対して旋回自在に支持されているアッパーフレーム2aと、アッパーフレーム2aの前側に設けられている運転室2bと、運転室2bの側方に設けられている作業機2cと、運転室2b及び作業機2cの後方に搭載されているカウンタウエイト2dと、アッパーフレーム2aとカウンタウエイト2dとで画成されている機械室2eとを有している。
【0032】
運転室2bには、運転者が作業機2cの運動、上部旋回体2の旋回、及び、下部走行体1の移動を操作するための各種レバー(不図示)等、油圧ショベルS1を操作するための各種機器が設けられている。
【0033】
作業機2cは、上部旋回体2のアッパーフレーム2aに回動自在に連結されているブーム2c1と、ブーム2c1に回動自在に連結されているアーム2c2と、アーム2c2に回動自在に連結されているバケット2c3とを有している。
【0034】
また、作業機2cは、上部旋回体2のアッパーフレーム2a及びブーム2c1に両端が取り付けられているブームシリンダ2c4と、ブーム2c1及びアーム2c2に両端が取り付けられているアームシリンダ2c5と、アーム2c2及びバケット2c3に両端が取り付けられているバケットシリンダ2c6とを有している。
【0035】
ブーム2c1は、上部旋回体2のアッパーフレーム2aに回動可能に軸支されており、その軸を支点として、ブームシリンダ2c4の伸縮動作によって回動する。アーム2c2は、ブーム2c1に回動可能に軸支されており、その軸を支点として、アームシリンダ2c5の伸縮動作によって回動する。バケット2c3は、アーム2c2に回動可能に軸支されており、その軸を支点として、バケットシリンダ2c6の伸縮動作によって回動する。
【0036】
カウンタウエイト2dは、その重量によって、作業機2cとの間で、油圧ショベルS1全体としてのバランスを保っている。カウンタウエイト2dの形状は、上部旋回体2のアッパーフレーム2aの後方部分の形状と一致するように湾曲した形状となっている。これにより、カウンタウエイト2dと運転室2b及び作業機2cとの間には、機械室2eとなる空間が形成されている。
【0037】
次に、図3を参照して、油圧ショベルS1の給気経路及び作動油供給経路について説明する。
【0038】
図3に示すように、油圧ショベルS1の機械室2eの内部には、駆動源であるエンジン3aが設置されている、エンジン3aには、エアクリーナ3bによって粉塵等が除去された空気が、空気供給路3c(第1給気路)を介して、供給される。
【0039】
空気供給路3cには、導入された空気を加圧するためのターボチャージャ3dが介装されている。また、空気供給路3cのターボチャージャ3dよりも下流側となる位置には、ターボチャージャ3dによって加圧された空気を冷却するためのインタークーラ3eが介装されている。
【0040】
エンジン3aからの排気は、排気路3f及びマフラ3gを介して排出される。
【0041】
また、機械室2eの内部には、作業機2cを駆動させるための油圧装置4a、及び、油圧装置4aに供給される作動油を貯留する作動油タンク4b(オイルタンク)が設置されている。油圧装置4aと作動油タンク4bとは、循環するように構成された作動油路4cで接続されている。
【0042】
作動油路4cは、作動油タンク4bの下流側、且つ、油圧装置4aの上流側となる位置に、メインポンプ4dが介装されている。メインポンプ4dは、エンジン3aからの動力によって駆動して、作動油路4cに作動油を循環させる。これにより、作動油タンク4bに貯留されている作動油は、作動油タンク4bから吸い上げられて、油圧装置4aに供給される。
【0043】
また、作動油路4cには、油圧装置4aの下流側、且つ、作動油タンク4bの上流側となる位置に、オイルクーラ4eが介装されている、オイルクーラ4eは、油圧装置4aから排出された作動油を冷却する。これにより、作動油は、冷却された後に、作動油タンク4bに戻される。
【0044】
油圧ショベルS1では、前述の空気供給路3c及び排気路3f、並びに、作動油路4cに加え、第1内圧調整回路5(第2給気路)を備えている。第1内圧調整回路5は、空気供給路3cのインタークーラ3eの下流側、且つ、エンジン3aの上流側となる位置から分岐し、作動油タンク4bに接続されている。
【0045】
この第1内圧調整回路5を介して、ターボチャージャ3dで加圧された後にインタークーラ3eで冷却された空気の一部が、エンジン3aだけでなく、作動油タンク4bにも供給される。
【0046】
また、第1内圧調整回路5には、第1内圧調整回路5の内部の空気の圧力を調整するための第1内圧調整弁5a(内圧調整機構)が設けられている。第1内圧調整弁5aは、作動油タンク4bに備え付けられた圧力計(不図示)によって測定された圧力に基づいて自動的に制御される。
【0047】
この第1内圧調整弁5aによって、インタークーラ3eで冷却された空気の圧力は、作動油タンク4bに供給される前に調整される。これにより、作動油タンク4bの内部における圧力は、好適な範囲の圧力に維持される。
【0048】
油圧ショベルS1では、このように、ターボチャージャ3dで加圧された空気を作動油タンク4bに供給している。これにより、作動油タンク4bの内部における圧力は、作動油タンク4bの容量、形成素材に適した所定の範囲(例えば、0.03~0.05MPa程度)に維持されて、安定したものになる。
【0049】
そして、そのように作動油タンク4bの内部における圧力が安定すると、油圧装置4aの駆動に基づく、作動油タンク4bに貯留されている作動油の脈動、油圧ショベルS1を寒冷地で使用した場合における流路抵抗の上昇に基づく、作動油の循環状態の悪化等を抑制することができる。
【0050】
ところで、ターボチャージャ3dに、一般的なターボチャージャを採用した場合、空気を加圧する際に、その空気の温度が150℃程度まで上昇する。一方、油圧ショベルS1が寒冷地等の環境下で使用されものである場合、作動油タンク4bに貯留される作動油の温度は、80℃~100℃程度である。
【0051】
そのため、ターボチャージャ3dで加圧された空気をそのまま作動油タンク4bに供給すると、その空気と作動油タンク4bに貯留されている作動油との温度差によって、作動油タンク4bの内部に貯留されている作動油の温度が、作動油タンク4bの内部において好適とされる温度以上に上昇してしまうおそれがある。そのような温度の上昇は、作動油の性能劣化の要因となる。
【0052】
そこで、油圧ショベルS1では、このように、ターボチャージャ3dで加圧された空気を、そのまま作動油タンク4bに供給するのではなく、インタークーラ3eで冷却してから供給している。
【0053】
すなわち、作動油タンク4bに供給される空気の温度を、その作動油タンク4bに既に貯留されている作動油の温度に近づけてから、又は、一致させてから(具体的には、例えば、60℃~100℃程度まで冷却してから)、作動油タンク4bに供給している。これにより、油圧ショベルS1によれば、作動油タンク4bに供給される空気と作動油との温度差に起因する作動油の高温化を抑制することができる。
【0054】
また、油圧ショベルS1は、バイパス回路6(第3給気路)を備えている。バイパス回路6は、空気供給路3cのターボチャージャ3dの下流側、且つ、インタークーラ3eの上流側となる位置から分岐し、作動油タンク4bに接続されている。なお、油圧ショベルS1では、このようにバイパス回路6を空気供給路3cから分岐させているので、バイパス回路6を設けるために、特別な構成のターボチャージャを用いる必要はない。
【0055】
油圧ショベルS1では、このバイパス回路6を介することによって、ターボチャージャ3dで加圧された空気を、インタークーラ3eを介さずに、作動油タンク4bへ供給することが可能となっている。
【0056】
第1内圧調整回路5とバイパス回路6との接続部分には、切換弁6a(切換機構)が設けられている。切換弁6aは、第1内圧調整回路5のみを介して作動油タンク4bに空気を供給する状態(すなわち、インタークーラ3eを介して空気を供給する状態)と、バイパス回路6と第1内圧調整回路5を介して作動油タンク4bに空気を供給する状態(すなわち、インタークーラ3eを介さずに空気を供給する状態)とを切り換える。
【0057】
切換弁6aの制御は、運転室2bに設けられたスイッチ等による手動制御であってもよいし、作動油タンク4bに備え付けられた温度計(不図示)の検出した温度に基づく自動制御であってもよい。
【0058】
寒冷地等において油圧ショベルS1を使用する場合、その環境の影響によって、作動油タンク4bの内部に貯留されている作動油の温度も低下してしまうことがある。そのような場合、冷えた作動油の温度を適正値までに上昇させるための暖機運転に必要な時間が長くなるので、エンジン3aの始動後に油圧ショベルS1による作業を開始するまでに時間がかかってしまうおそれがある。
【0059】
そこで、このように、油圧ショベルS1では、切換弁6aを用いて、ターボチャージャ3dで加圧された空気の作動油タンク4bへの供給経路を、インタークーラ3eを介して空気を供給する経路と、インタークーラ3eを介さずに空気を供給する状態とを切り換えることができるように構成している。
【0060】
これにより、必要に応じて、インタークーラ3eで冷却される前の高温の空気を作動油タンク4bに供給して、作動油タンク4bの内部の温度を素早く上昇させることができる。ひいては、エンジン3aの始動後に油圧ショベルS1による作業を開始するまでの時間を短縮化することができる。
【0061】
[第2実施形態]
以下、図4を参照して、本実施形態に係る油圧ショベルS2について説明する。
【0062】
なお、本実施形態に係る油圧ショベルS2と第1実施形態の油圧ショベルS1とは、作動油供給経路に代わって、燃料供給経路を備えている点のみが異なっている。そのため、以下の説明においては、同一又は対応する構成については、同じの符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。
【0063】
図4に示すように、油圧ショベルS2の上部旋回体に設けられている機械室2eの内部には、駆動源であるエンジン3aが設置されている、エンジン3aには、エアクリーナ3bによって粉塵等が除去された空気が、空気供給路3c(第1給気路)を介して、供給される。
【0064】
空気供給路3cには、導入された空気を加圧するためのターボチャージャ3dが介装されている。また、空気供給路3cのターボチャージャ3dよりも下流側となる位置には、ターボチャージャ3dによって加圧された空気を冷却するためのインタークーラ3eが介装されている。
【0065】
エンジン3aからの排気は、排気路3f及びマフラ3gを介して排出される。
【0066】
一方、油圧ショベルS2の下部走行体のロアフレーム1aの内部には、エンジン3aに供給される燃料を貯留する燃料タンク7aが設置されている。エンジン3aと燃料タンク7aとは、燃料回路7bを介して接続されている。そのため、燃料回路7bの上流側の部分は、ロアフレーム1aの内部に位置し、下流側の部分は、機械室2eの内部に位置している。
【0067】
燃料回路7bの上流側の部分には、燃料ポンプ7cが介装されている。燃料タンク7aに貯留されている燃料は、燃料ポンプ7cによって燃料タンク7aから吸い上げられて、エンジン3aに供給される。
【0068】
また、燃料回路7bには、燃料ポンプ7cの下流側であって、機械室2eが設けられている上部旋回体とロアフレーム1aを備えている下部走行体との間となる位置に、上部旋回体と下部走行体とを貫くようにして、スイベルジョイント8が介装されている。
【0069】
油圧ショベルS2では、前述の空気供給路3c及び排気路3f、並びに、燃料回路7bに加え、第2内圧調整回路9(第2給気路)を備えている。第2内圧調整回路9は、空気供給路3cのインタークーラ3eの下流側、且つ、エンジン3aの上流側となる位置から分岐し、燃料タンク7aに接続されている。
【0070】
この第2内圧調整回路9を介して、ターボチャージャ3dで加圧された後にインタークーラ3eで冷却された空気の一部が、エンジン3aだけでなく、燃料タンク7aにも供給される。
【0071】
また、第2内圧調整回路9には、第2内圧調整回路9の内部の空気の圧力を調整するための第2内圧調整弁9a(内圧調整機構)が設けられている。第2内圧調整弁9aは、燃料タンク7aに備え付けられた圧力計(不図示)によって測定された圧力に基づいて自動的に制御される。
【0072】
この第2内圧調整弁9aによって、インタークーラ3eで冷却された空気の圧力は、燃料タンク7aに供給される前に調整される。これにより、燃料タンク7aの内部における圧力は、好適な範囲の圧力に維持される。
【0073】
ここで、前述のように、インタークーラ3eは、上部旋回体の機械室2eの内部に設置されており、燃料タンク7aは、下部走行体のロアフレーム1aの内部に設置されている。すなわち、第2内圧調整回路9の上流側の部分は、機械室2eの内部に位置し、下流側の部分は、ロアフレーム1aの内部に位置している。
【0074】
また、機械室2eが設けられている上部旋回体とロアフレーム1aを備えている下部走行体との間となる位置には、上部旋回体と下部走行体とを貫くようにして、スイベルジョイント8が設置されている。第2内圧調整回路9には、燃料回路7bと同様に、そのスイベルジョイント8が介装されている。
【0075】
油圧ショベルS2では、このように、ターボチャージャ3dで加圧された空気を燃料タンク7aに供給している。これにより、燃料タンク7aの内部における圧力は、燃料タンク7aの容量、形成素材に適した所定の範囲(例えば、0.03~0.015MPa程度)に維持されて、安定したものになる。
【0076】
そして、そのように燃料タンク7aの内部における圧力が安定すると、油圧ショベルS2を寒冷地等で使用した場合における流路抵抗の上昇に基づく、燃料の供給状態の悪化等を抑制することができる。
【0077】
ところで、一般的なターボチャージャが空気を加圧する際には、その空気の温度は150℃程度まで上昇する。一方、油圧ショベルS2の燃料タンク7aに貯留される燃料の温度は、エンジン3aの性能を維持するうえでは、50~70℃が好ましい。
【0078】
そのため、ターボチャージャ3dで加圧された空気をそのまま燃料タンク7aに供給すると、その空気と燃料タンク7aに貯留されている燃料との温度差によって、燃料タンク7aの内部に貯留されている燃料の温度が、燃料タンク7aの内部において好適とされる温度以上に上昇してしまうおそれがある。
【0079】
そこで、油圧ショベルS2では、このように、ターボチャージャ3dで加圧された空気を、そのまま燃料タンク7aに供給するのではなく、インタークーラ3eで冷却してから供給している。
【0080】
これにより、油圧ショベルS2によれば、燃料タンク7aに供給される空気と燃料との温度差に起因する燃料の高温化を抑制することができる。
【0081】
また、前述のように、油圧ショベルS2では、機械室2eが設けられている上部旋回体とロアフレーム1aを備えている下部走行体との間となる位置には、上部旋回体と下部走行体とを貫くようにして、スイベルジョイント8が設置されている。そして、そのスイベルジョイント8は、燃料回路7bに介装されている。
【0082】
そのスイベルジョイント8の内部における燃料回路7bは、複雑な経路となっている。そのため、このような構成においては、スイベルジョイント8を通過する際に、燃料に圧損が生じてしまう。そこで、油圧ショベルS2のように、燃料タンク7aにターボチャージャ3dで加圧された空気を供給するようにすると、そのスイベルジョイント8における圧損を補填することができる。
【0083】
[その他の実施形態]
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0084】
例えば、上記の第1実施形態では、図3に示すように、作動油タンク4bに加圧された空気を供給し、第2実施形態では、図4に示すように、燃料タンク7aに加圧された空気を供給している。しかし、本発明は、そのような構成に限定されるものではなく、加圧された空気の供給先は、オイルタンクであればよく、また、複数であってもよい。
【0085】
例えば、内圧調整回路を複数分岐させて、作動油タンク及び燃料タンクの両方に対して、加圧された空気を供給するようにしてもよい。
【0086】
また、上記の第1実施形態及び第2実施形態では、図3及び図4に示すように、第1内圧調整回路5及び第2内圧調整回路9(第2給気路)は、空気供給路3c(第1給気路)から分岐している。しかし、本発明は、そのような構成に限定されるものではなく、第2給気路は、インタークーラからオイルタンクに空気を供給するためのものであればよい。
【0087】
例えば、第2給気路を第1給気路から分岐させるのではなく、第1給気路と独立している第2給気路を、インタークーラとオイルタンクとの間に設けてもよい。
【0088】
また、上記の第2実施形態では、エンジン3aが上部旋回体に設置され、燃料タンク7aが下部走行体に設置されているので、それらを接続する燃料回路7bには、上部旋回体と下部走行体とを貫くように配置されているスイベルジョイント8が介装されている。しかし、本発明は、そのような構成に限定されるものではない。
【0089】
例えば、エンジン及び燃料タンクが、いずれも上部旋回体に設置されている、又は、いずれも下部走行体に設置されている場合には、当然のことながら、燃料回路にスイベルジョイントを介装させる必要はない。
【0090】
また、上記の第1実施形態では、インタークーラ3eをバイパスするためのバイパス回路6(第3給気路)と、作動油タンク4bに対し、インタークーラ3eを介して空気を供給する状態と、インタークーラ3eを介さずに空気を供給する状態とを切り換えるための切換弁6a(切換機構)とを備えている。しかし、本発明は、そのような構成に限定されるものではない。
【0091】
例えば、第3給気路及び切換機構を省略してもよい。また、切換弁に代わり、ターボチャージャの内部に設けた切換機構を用いて、又は、図5に示す変形例のように、その切換機構と切換弁とを併用して、オイルタンクに対し、インタークーラを介して空気を供給する状態とインタークーラを介さずに空気を供給する状態とを切り換えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…下部走行体、1a…ロアフレーム、1b…クローラ、2…上部旋回体、2a…アッパーフレーム、2b…運転室、2c…作業機、2c1…ブーム、2c2…アーム、2c3…バケット、2c4…ブームシリンダ、2c5…アームシリンダ、2c6…バケットシリンダ、2d…カウンタウエイト、2e…機械室、3a…エンジン、3b…エアクリーナ、3c…空気供給路(第1給気路)、3d…ターボチャージャ、3e…インタークーラ、3f…排気路、3g…マフラ、4a…油圧装置、4b…作動油タンク(オイルタンク)、4c…作動油路、4d…メインポンプ、4e…オイルクーラ、5…第1内圧調整回路(第2給気路)、5a…第1内圧調整弁(圧力調整機構)、6…バイパス回路、6a…切換弁(切換機構)、7a…燃料タンク(オイルタンク)、7b…燃料回路、7c…燃料ポンプ、8…スイベルジョイント、9…第2内圧調整回路(第2給気路)、9a…第2内圧調整弁(圧力調整機構)、S1,S2…油圧ショベル(作業機械)。
図1
図2
図3
図4
図5