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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】加硫装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/04 20060101AFI20230328BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20230328BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20230328BHJP
【FI】
B29C33/04
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019127695
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021011090
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】森岡 大輔
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-043436(JP,A)
【文献】実開昭62-093738(JP,U)
【文献】特開2000-043047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29
F22
F24
F28
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を覆うジャケットと、
前記ジャケットに接続される熱媒体の供給管と、
前記供給管に設けられ、開閉することが可能な供給弁と、
前記ジャケットに接続される前記熱媒体の排出管と、
前記排出管に設けられ、前記熱媒体に含まれるドレンを前記熱媒体から分離するためのドレントラップと、
前記熱媒体が通る配管に設けられる温度計と、
前記温度計によって計測される前記熱媒体の温度に基づいて、前記供給弁の開閉を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記供給弁の開時間に基づいて、前記熱媒体の漏れが発生しているか否かを判定する、
加硫装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記開時間が閾値以上である場合に、前記熱媒体の漏れが発生していると判定する、
請求項1に記載の加硫装置。
【請求項3】
前記制御装置は、加硫条件に基づいて、前記閾値を設定する、
請求項2に記載の加硫装置。
【請求項4】
前記制御装置は、複数回の加硫サイクルにおける前記供給弁の開時間の平均値に基づいて、前記熱媒体の漏れが発生しているか否かを判定する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブラダーに熱圧媒体を供給する供給管と、ブラダーから熱圧媒体を排出する排出管と、排出管に設けられて熱圧媒体に含まれるドレンを熱圧媒体から分離するドレントラップとを備えるタイヤ加硫機が開示されている。特許文献1に開示されているタイヤ加硫機では、ドレントラップにおいて熱圧媒体とドレンとが分離された後、熱圧媒体が供給管に戻される一方、ドレンが外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-043436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドレントラップの故障により、熱圧媒体であるスチームが外部に漏れることがある。スチームの漏れはタイヤの成形不良の原因となり得るため、スチーム漏れの発生を迅速に特定することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る加硫装置は、金型を覆うジャケットと、前記ジャケットに接続される熱媒体の供給管と、前記供給管に設けられ、開閉することが可能な供給弁と、前記ジャケットに接続される前記熱媒体の排出管と、前記排出管に設けられ、前記熱媒体に含まれるドレンを前記熱媒体から分離するためのドレントラップと、前記熱媒体が通る配管に設けられる温度計と、前記温度計によって計測される前記熱媒体の温度に基づいて、前記供給弁の開閉を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記供給弁の開時間に基づいて、前記熱媒体の漏れの発生しているか否かを判定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加硫装置におけるスチームの漏れの発生を迅速に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る加硫装置の構成の一例を示す模式図である。
図2】実施形態に係る加硫機の構成の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る制御装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
図5】実施形態に係る制御装置による蒸気供給制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る制御装置による蒸気漏れ判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図7】第2変形例に係る制御装置による蒸気漏れ判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図8】第3変形例に係る制御装置による蒸気漏れ判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
【0009】
(1) 本実施形態に係る加硫装置は、金型を覆うジャケットと、前記ジャケットに接続される熱媒体の供給管と、前記供給管に設けられ、開閉することが可能な供給弁と、前記ジャケットに接続される前記熱媒体の排出管と、前記排出管に設けられ、前記熱媒体に含まれるドレンを前記熱媒体から分離するためのドレントラップと、前記熱媒体が通る配管に設けられる温度計と、前記温度計によって計測される前記熱媒体の温度に基づいて、前記供給弁の開閉を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記供給弁の開時間に基づいて、前記熱媒体の漏れが発生しているか否かを判定する。
【0010】
熱媒体の漏れはジャケット及び金型の温度低下を招く。このため、熱媒体の漏れが発生すると、温度を維持するため制御装置は供給弁の開状態を維持する。上記の構成により、供給弁の開時間に基づいて、熱媒体の漏れの発生を迅速に判定することができる。
【0011】
(2) 本実施形態に係る加硫装置において、前記制御装置は、前記開時間が閾値以上である場合に、前記熱媒体の漏れが発生していると判定してもよい。
【0012】
熱媒体の漏れが発生していない場合、一定の正常な時間内に加硫が完了する。したがって、熱媒体の漏れが発生していない場合に加硫が完了する時間に応じて閾値を設定することにより、熱媒体の漏れの発生を正確に判定することができる。
【0013】
(3) 本実施形態に係る加硫装置において、前記制御装置は、加硫条件に基づいて、前記閾値を設定してもよい。
【0014】
加硫条件(例えば、熱媒体の温度、圧力など)に応じて、加硫に要する時間は変化する。加硫条件に基づいて閾値を設定することにより、熱媒体の漏れの発生をさらに正確に判定することが可能となる。
【0015】
(4) 本実施形態に係る加硫装置において、前記制御装置は、複数回の加硫サイクルにおける前記供給弁の開時間の平均値に基づいて、前記熱媒体の漏れが発生しているか否かを判定してもよい。
【0016】
1回の加硫サイクルにおいて、熱媒体の漏れとは異なる原因によって供給弁の開時間が突発的に長くなることがあり得る。供給弁の開時間の平均値に基づいて熱媒体の漏れの発生を判定することにより、開時間が突発的に長時間化した場合の誤判定を抑制することができる。なお、ここでいう「開時間の平均値」とは、複数回の加硫サイクルにおける供給弁の開時間の総和を加硫サイクルの回数で除した結果としての平均値(平均時間)、すなわち、単位を「時間」とする数量に限定されない。平均化された開時間の長短を評価できればよいので、平均時間を基準値で割るなどして正規化した値(無次元量)であってもよい。
【0017】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0018】
[加硫装置の全体構成]
図1は、本実施形態に係る加硫装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、加硫装置1は、加硫機100と、供給管3と、排出管4と、ドレントラップ5と、供給弁6と、複数の弁9と、温度計14と、制御装置200とを含む。
【0019】
加硫機100は、投入されたタイヤの原料(以下、ローカバーという。未架橋タイヤとも称される)に対して加硫サイクルを実行し、タイヤを製造する。加硫機100には、供給管3及び排出管4が接続される。
【0020】
供給管3は、熱媒体の一例である高温・高圧の蒸気及び圧力媒体の一例である高圧の窒素ガスを通流し、加硫機100へ供給する。供給された蒸気及び窒素ガスにより加硫機100における加硫サイクルが進行する。
【0021】
供給管3の端部には、蒸気を加硫機100へ供給するための分岐管15と、窒素ガスを加硫機100へ供給するための分岐管16とが設けられている。分岐管15には供給弁6が設けられており、分岐管16には弁9が設けられている。供給弁6は開閉することが可能である。供給弁6が開くことによって蒸気が供給管3へ供給され、供給弁6が閉じることによって供給管3への蒸気の供給が停止される。具体的な一例では、供給弁6は、電磁弁が各ポートに接続されたシリンダ弁である。電磁弁が開閉されることによって水等の流体がシリンダ弁に供給されたり、シリンダ弁から排出されたりし、シリンダ弁が駆動される。弁9も、供給弁6と同様に構成することができる。
【0022】
排出管は、加硫に用いられた蒸気及び窒素ガスを加硫機100から排出する。
【0023】
排出管の端部には、高圧ガスを回収するための分岐管10と、バキューム用の分岐管12と、ドレン用の分岐管13とが設けられている。分岐管10,12,13のそれぞれには弁9が設けられている。排出管4には、管内の温度を測定する温度計14が設けられている。
【0024】
分岐管13にはドレントラップ5が取り付けられている。ドレントラップ5は、蒸気に含まれるドレンを蒸気から分離して外部に排出する。なお、ドレントラップ5としては、公知のフロートタイプ、サーモスタチィクタイプ等のいずれでもよく、フロートタイプ及びサーモスタチィクタイプを併用してもよい。
【0025】
[加硫機の構成]
図2は、本実施形態に係る加硫機の構成の一例を示す図である。なお、以下ではプラテン型の加硫機の構成を説明するが、ドーム型の加硫機であってもよい。
【0026】
図2に示された加硫機100は、ブラダー104と、モールド106と、コンテナ108と、上側プラテン110と、下側プラテン112とを備えている。コンテナ108、上側プラテン110、及び下側プラテン112は、ジャケットの例である。この図1において、左右方向は半径方向であり、上下方向は軸方向である。図2中、Rで示されているのは、ローカバーである。
【0027】
ブラダー104は、モールド106の内側に位置している。ブラダー104は、架橋ゴムからなる。ブラダー104は、袋状である。このブラダー104は、その内部が蒸気又は窒素ガス(以下、「ガス」という)で満たされるように構成されている。ブラダー104にガスが充填されると、このブラダー104は膨張する。一方、ブラダー104からガスが排出されると、このブラダー104は収縮する。図1に示されたブラダー104は、膨張状態にある。
【0028】
モールド106は、ブラダー104の外側に位置している。モールド106は、セクターシュー114と、セグメント116と、上下一対のサイドプレート118と、上下一対のビードリング120と、上側ベースプレート122と、下側ベースプレート124とを備えている。このモールド106は、いわゆる「割モールド」である。
【0029】
図2に示されたモールド106は、閉じられた状態にある。この状態において、セグメント116、サイドプレート118及びビードリング120が組み合わされ、キャビティ面126が構成される。キャビティ面126は、ローカバーRと当接し、タイヤの外面を形成する。
【0030】
コンテナ108は、モールド106の半径方向外側に位置している。コンテナ108は、リング状である。コンテナ108は、モールド106の外周面に沿って周方向に延在している。図示されているように、コンテナ108の内部には、スペース132が設けられている。このコンテナ108は、このスペース132が蒸気で満たされるように構成されている。このスペース132が蒸気で満たされることにより、このコンテナ108の温度が上昇する。高い温度を有するコンテナ108により、前述のモールド106は加熱される。
【0031】
上側プラテン110は、円盤状である。上側プラテン110は、モールド106の上側に位置している。図示されているように、上側プラテン110の内部には、スペース134が設けられている。この上側プラテン110は、このスペース134が、前述のコンテナ108に供給される蒸気と同等の蒸気で満たされるように構成されている。このスペース134が蒸気で満たされることにより、この上側プラテン110の温度が上昇する。高い温度を有する上側プラテン110により、前述のモールド106は加熱される。
【0032】
下側プラテン112は、円盤状である。下側プラテン112は、モールド106の下側に位置している。図示されているように、下側プラテン112の内部には、スペース136が設けられている。この下側プラテン112は、このスペース136が、前述のコンテナ108に供給される蒸気と同等の温度の蒸気で満たされるように構成されている。このスペース136が蒸気で満たされることにより、この下側プラテン112の温度が上昇する。高い温度を有する下側プラテン112により、前述のモールド106は加熱される。
【0033】
この加硫機100では、コンテナ108、上側プラテン110及び下側プラテン112は、ヒーターとも称される。換言すれば、この加硫機100は、ヒーターを備えている。このヒーターの内部は、蒸気で満たされる。
【0034】
[加硫サイクル]
この加硫機100を用いて、タイヤは次のような加硫サイクルにより製造される。以下、1回の加硫サイクルを説明する。まず、予備成形によって、ローカバーRが得られる。ローカバーRは、モールド106が開いておりブラダー104が収縮している状態で、モールド106に投入される。モールド106は閉じられ、第一締め付け力で締め付けられる。供給弁6が開かれ、コンテナ108、上側プラテン110及び下側プラテン112それぞれの内部に、蒸気が供給される。蒸気の温度は、198℃に調整されている。蒸気の圧力は、1.47MPaに調整されている。内部が蒸気で満たされたコンテナ108、上側プラテン110及び下側プラテン112により、モールド106は加熱される。加熱されたモールド106により、ローカバーRは加熱される。この加熱工程では、第一締め付け力でモールド106が締め付けられつつ、ローカバーRは加熱される。温度計14の測定温度が所定の目標値に到達すると、供給弁6が閉じられ、供給管3からの蒸気の供給が停止する。
【0035】
モールド106は、上記第一締め付け力よりも大きな第二締め付け力でさらに締め付けられる。この第二型締め工程の後、供給管3からブラダー104の内部に窒素ガスがさらに供給される。この窒素ガスの供給により、ブラダー104の内圧が高められる。ローカバーRはブラダー104によってモールド106のキャビティ面126に押しつけられ、加圧される。この状態のローカバーRが、図2に示されている。同時にローカバーRは、加熱される。この加圧工程では、加圧と加熱とによりゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが形成される。加圧工程が完了すると、ブラダー104から排出管4を通じて蒸気及び窒素ガスが排出される。モールド106が開かれ、タイヤが取り出される。
【0036】
[制御装置の構成]
図3は、本実施形態に係る制御装置200の構成の一例を示すブロック図である。具体的な一例では、制御装置200は、プロセッサ210と、非一過性メモリ220と、一過性メモリ230と、入出力インタフェース240と、表示部250と、スピーカ260とを備える。
【0037】
一過性メモリ230は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリである。非一過性メモリ220は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリである。非一過性メモリ220には、コンピュータプログラムである制御プログラム211及び制御プログラム211の実行に使用されるデータが格納される。制御装置200は、コンピュータを備えて構成され、制御装置200の各機能は、前記コンピュータの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムである制御プログラム211がCPUであるプロセッサ210によって実行されることで発揮される。制御プログラム211は、フラッシュメモリ、ROM、CD-ROMなどの記録媒体に記憶させることができる。プロセッサ210は、制御プログラム211を実行することにより、後述するような蒸気供給制御処理及び蒸気漏れ判定処理を実行する。
【0038】
なお、プロセッサ210は、CPUに限られない。プロセッサ210は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアロジック回路であってもよい。この場合、ハードウェアロジック回路は、制御プログラム211と同様の処理を実行可能に構成される。
【0039】
入出力インタフェース240は供給弁6及び温度計14に接続される(図1参照)。制御装置200は、信号線を介して供給弁6へ制御信号を送信することができる。制御装置200は、信号線を介して温度計14から温度の測定結果を受信することができる。
【0040】
表示部250は、例えば液晶パネルを含み、文字及び画像を表示することができる。スピーカ260は、音声を出力することができる。
【0041】
図4は、本実施形態に係る制御装置200の機能の一例を示す機能ブロック図である。制御装置200は、入力部201、フィードバック制御部202、制御信号出力部203、開時間計測部204、判定部205、及び通知部206としての機能を有する。
【0042】
入力部201は、温度計14による温度の測定結果を示す温度情報の入力を受け付ける。入力部201は、入出力インタフェース240によって実現される。
【0043】
フィードバック制御部202は、温度による供給弁6のフィードバック制御を行う。フィードバック制御では、入力部201からフィードバック制御部202へ温度情報が与えられる。フィードバック制御部202は、温度情報と加硫サイクルとに基づいて、供給弁6を開状態とするか閉状態とするかを決定する。フィードバック制御部202は、決定結果に応じて供給弁6を制御するための制御信号を生成する。供給弁6は、制御信号に応じて開状態又は閉状態となる。以上の制御サイクルが繰り返されることによって、フィードバック制御が実行される。
【0044】
制御信号出力部203は、フィードバック制御部202によって生成された制御信号を供給弁6へ送信する。制御信号出力部203は、入出力インタフェース240によって実現される。
【0045】
開時間計測部204は、供給弁6の開時間TOPを計測する。本実施形態において、開時間TOPは、供給弁6が開いた時点から現時点までの時間である。本実施形態では、開時間計測部204は、加硫サイクル毎に開時間TOPを計測する。開時間計測部204は、1回の加硫サイクルで開時間TOPを計測し、次の加硫サイクルでは開時間TOPをリセットする。
【0046】
判定部205は、開時間計測部204によって計測された開時間TOPに基づいて、ドレントラップ5における蒸気の漏れが発生しているか否かを判定する。具体的な一例では、判定部205は、開時間計測部204によって計測された開時間TOPを、予め設定された閾値THと比較し、開時間TOPが閾値TH以上である場合に、蒸気の漏れが発生していると判定し、開時間TOPが閾値TH未満である場合に、蒸気の漏れが発生していないと判定する。
【0047】
通知部206は、判定部205によって蒸気の漏れが発生していると判定された場合、即ち開時間TOPが閾値TH以上である場合、オペレータに蒸気の漏れの発生を通知する。具体的な一例では、通知部206は、表示部250に、蒸気の漏れの発生を通知する画面を表示させたり、スピーカ260から、警報音を出力させたりすることができる。
【0048】
フィードバック制御部202、開時間計測部204、判定部205、及び通知部206は、プロセッサ210によって実現される。
【0049】
[制御装置の動作]
次に、本実施形態に係る制御装置200の動作について説明する。図5は、本実施形態に係る制御装置200による蒸気供給制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。図5には、1回の加硫サイクルにおける制御処理が示される。
【0050】
加硫サイクルが始まる前において、供給弁6は閉じている。加硫サイクルが始まると、プロセッサ210は、供給弁6を開き、加硫機100への蒸気の供給を開始する(ステップS101)。
【0051】
温度計14は、排出管4の内部の温度を測定する。制御装置200は、温度計14から出力された温度情報を受信する(ステップS102)。
【0052】
プロセッサ210は、温度計14による測定温度が所定の目標値に到達したか否かを判定する(ステップS103)。測定温度が目標値に到達していないと判定された場合(ステップS103においてNO)、プロセッサ210は、処理をステップS102へ戻す。これにより、新たな温度情報が取得され、測定温度が目標値に到達したか否かの判定が繰り返し実行される。
【0053】
測定温度が目標値に到達したと判定された場合(ステップS103においてYES)、プロセッサ210は、供給弁6を閉じ、加硫機100への蒸気の供給を停止する(ステップS104)。以上で、蒸気供給制御処理が終了する。
【0054】
制御装置200は、上述した蒸気供給制御処理と並行して、蒸気漏れ判定処理を実行する。図6は、本実施形態に係る制御装置200による蒸気漏れ判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0055】
まず、プロセッサ210は、加硫機100への蒸気の供給が開始されたか否か、すなわち、供給弁6が開かれたか否かを判定する(ステップS201)。例えばプロセス間通信により、蒸気供給制御処理において供給弁6を開いた場合に、蒸気供給の開始が蒸気漏れ判定処理に通知される。この通知を受け付けることにより、プロセッサ210は供給弁6が開いたと判定する。なお、供給弁6の開状態及び閉状態を検出するセンサを供給弁6に取り付け、プロセッサ210がセンサの検出結果に基づいて供給弁6が開かれたか否かを判定してもよい。
【0056】
加硫機100への蒸気の供給が開始されていないと判定された場合(ステップS201においてNO)、プロセッサ210は、ステップS201の処理を再度実行する。他方、加硫機100への蒸気の供給が開始されたと判定された場合(ステップS201においてYES)、プロセッサ210は、供給弁6の開時間TOPの計測を開始する(ステップS202)。なお、開時間TOPの初期値は0である。
【0057】
プロセッサ210は、開時間TOPと閾値THとを比較することによって、蒸気漏れの発生を判定する(ステップS203)。開時間TOPが閾値TH未満である場合、すなわち、蒸気漏れが発生していないと判定された場合(ステップS203においてNO)、プロセッサ210は、加硫機100への蒸気の供給が停止されたか否か、すなわち、供給弁6が閉じられたか否かを判定する(ステップS204)。
【0058】
加硫機100への蒸気の供給が停止されていないと判定された場合(ステップS204においてNO)、プロセッサ210は、ステップS203へ処理を戻す。他方、加硫機100への蒸気の供給が停止されたと判定された場合(ステップS204においてYES)、蒸気漏れが発生したと判定されずに、加硫サイクルが完了している。したがって、プロセッサ210は、オペレータに蒸気漏れの発生を通知すること無く、蒸気漏れ判定処理を終了する。
【0059】
開時間TOPが閾値TH以上である場合、すなわち、蒸気漏れが発生したと判定された場合(ステップS203においてYES)、プロセッサ210は、蒸気漏れ発生の通知を出力する(ステップS205)。上述したように、この処理では、例えば表示部250によって蒸気漏れ発生の通知画面が表示され、スピーカ260から蒸気漏れ発生の警報音が出力される。以上で、蒸気漏れ判定処理が終了する。
【0060】
[第1変形例]
加硫機100における加硫条件(例えば、蒸気の温度又は圧力)に応じて、加硫時間は変化する。したがって、制御装置200は、加硫条件に応じて閾値THを設定してもよい。具体的な一例では、オペレータが加硫条件を制御装置200に設定する。プロセッサ210は、設定された加硫条件に応じて、閾値THを設定することができる。例えば、加硫条件における蒸気の温度が上がれば閾値THが低く設定され、蒸気の温度が下がれば閾値THが高く設定される。
【0061】
[第2変形例]
制御装置200が、複数回の加硫サイクルにおける供給弁6の開時間の平均値に基づいて、熱媒体の漏れが発生しているか否かを判定してもよい。本変形例では、開時間計測部204が、複数回の加硫サイクルにおける供給弁6の開時間の平均値(以下、「平均開時間」という)TAVEを算出する(図4参照)。判定部205は、平均開時間TAVEに基づいて、ドレントラップ5における蒸気の漏れが発生しているか否かを判定する。具体的な一例では、判定部205は、平均開時間TAVEを、予め設定された閾値THと比較し、平均開時間TAVEが閾値TH以上である場合に、蒸気の漏れが発生していると判定し、平均開時間TAVEが閾値TH未満である場合に、蒸気の漏れが発生していないと判定する。
【0062】
図7は、本変形例に係る制御装置200による蒸気漏れ判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。プロセッサ210は、加硫サイクルの回数の変数N及び開時間の総和(以下、「総開時間」という)の変数TSUMのそれぞれを初期値0に設定し(ステップS301)、開時間の変数TOPを初期値0に設定する(ステップS302)。
【0063】
プロセッサ210は、加硫機100への蒸気の供給が開始されたか否か、すなわち、供給弁6が開かれたか否かを判定する(ステップS303)。加硫機100への蒸気の供給が開始されていないと判定された場合(ステップS303においてNO)、プロセッサ210は、ステップS303の処理を再度実行する。他方、加硫機100への蒸気の供給が開始されたと判定された場合(ステップS303においてYES)、プロセッサ210は、加硫サイクル回数Nを1つインクリメントし(ステップS304)、供給弁6の開時間TOPの計測を開始する(ステップS305)。
【0064】
プロセッサ210は、加硫機100への蒸気の供給が停止されたか否か、すなわち、供給弁6が閉じられたか否かを判定する(ステップS306)。加硫機100への蒸気の供給が停止されていないと判定された場合(ステップS306においてNO)、プロセッサ210は、ステップS306の処理を再度実行する。
【0065】
加硫機100への蒸気の供給が停止されたと判定された場合(ステップS306においてYES)、プロセッサ210は、供給弁6の開時間TOPの計測を停止する(ステップS307)。
【0066】
プロセッサ210は、総開時間TSUMに開時間TOPを加算し、その結果を新たな総開時間TSUMとする(ステップS308)。プロセッサ210は、総開時間TSUMを加硫サイクル回数Nで除して、平均開時間TAVEを算出する(ステップS309)。
【0067】
プロセッサ210は、平均開時間TAVEと閾値THとを比較することによって、蒸気漏れの発生を判定する(ステップS310)。平均開時間TAVEが閾値TH未満である場合、すなわち、蒸気漏れが発生していないと判定された場合(ステップS310においてNO)、プロセッサ210は、ステップS302へ処理を戻す。
【0068】
他方、平均開時間TAVEが閾値TH以上である場合、すなわち、蒸気漏れが発生したと判定された場合(ステップS310においてYES)、プロセッサ210は、蒸気漏れ発生の通知を出力する(ステップS311)。以上で、蒸気漏れ判定処理が終了する。
【0069】
[第3変形例]
制御装置200が、直近の所定回数の加硫サイクルにおける供給弁6の開時間の平均値(移動平均)に基づいて、熱媒体の漏れが発生しているか否かを判定してもよい。本変形例では、開時間計測部204が、供給弁6の開時間の移動平均(以下、「移動平均開時間」という)TMAVEを算出する(図4参照)。判定部205は、移動平均開時間TMAVEに基づいて、ドレントラップ5における蒸気の漏れが発生しているか否かを判定する。具体的な一例では、判定部205は、移動平均開時間TMAVEを、予め設定された閾値THと比較し、移動平均開時間TMAVEが閾値TH以上である場合に、蒸気の漏れが発生していると判定し、移動平均開時間TMAVEが閾値TH未満である場合に、蒸気の漏れが発生していないと判定する。
【0070】
図8は、本変形例に係る制御装置200による蒸気漏れ判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。プロセッサ210は、加硫サイクルの回数の変数Nを初期値0に設定する(ステップS401)。ステップS402~S406は、第2変形例におけるステップS303~S307と同様であるので、その説明を省略する。
【0071】
プロセッサ210は、計測された開時間を例えば一過性メモリ230に格納する(ステップS407)。ここで、新たに計測された開時間は、過去の開時間とは区別して記憶される。つまり、供給弁6の開時間の履歴が記憶される。
【0072】
プロセッサ210は、直近の所定回数の加硫サイクルにおける開時間の平均値、つまり移動平均開時間TMAVEを算出する(ステップS408)。例えば、5回の加硫サイクルの移動平均開時間を算出する場合、プロセッサ210は、直近の5つの開時間の総和を5で除することにより、移動平均開時間TMAVEを算出する。
【0073】
プロセッサ210は、移動平均開時間TMAVEと閾値THとを比較することによって、蒸気漏れの発生を判定する(ステップS409)。移動平均開時間TMAVEが閾値TH未満である場合、すなわち、蒸気漏れが発生していないと判定された場合(ステップS409においてNO)、プロセッサ210は、ステップS402へ処理を戻す。
【0074】
他方、移動平均開時間TMAVEが閾値TH以上である場合、すなわち、蒸気漏れが発生したと判定された場合(ステップS409においてYES)、プロセッサ210は、蒸気漏れ発生の通知を出力する(ステップS410)。以上で、蒸気漏れ判定処理が終了する。
【0075】
[効果]
以上のように、加硫装置1は、モールド106を覆うコンテナ108、上側プラテン110、及び下側プラテン112と、蒸気の供給管3と、供給弁6と、蒸気の排出管4と、ドレントラップ5と、温度計14と、制御装置200と、を備える。供給管3は、上側プラテン110、及び下側プラテン112に接続される。供給弁6は、供給管3に設けられ、開閉することが可能である。排出管4は、上側プラテン110、及び下側プラテン112に接続される。ドレントラップ5は、排出管4に設けられ、蒸気に含まれるドレンを蒸気から分離する。温度計14は、蒸気が通る配管の1つである排出管4に設けられる。制御装置200は、温度計14によって計測される蒸気の温度に基づいて、供給弁6の開閉を制御する。制御装置200は、供給弁6の開時間TOPに基づいて、蒸気の漏れが発生しているか否かを判定する。
【0076】
蒸気の漏れは、上側プラテン110、及び下側プラテン112並びにモールド106の温度低下を招く。このため、蒸気の漏れが発生すると、温度を維持するため制御装置200は供給弁6の開状態を維持する。上記の構成により、供給弁6の開時間TOPに基づいて、蒸気の漏れの発生を迅速に判定することができる。
【0077】
制御装置200は、開時間TOPが閾値TH以上である場合に、蒸気の漏れが発生していると判定してもよい。
【0078】
蒸気の漏れが発生していない場合、一定の正常な時間内に加硫が完了する。したがって、蒸気の漏れが発生していない場合に加硫が完了する時間に応じて閾値THを設定することにより、蒸気の漏れの発生を正確に判定することができる。
【0079】
制御装置200は、加硫条件に基づいて、閾値THを設定してもよい。
【0080】
加硫条件(例えば、熱媒体の温度、圧力など)に応じて、加硫に要する時間は変化する。加硫条件に基づいて閾値THを設定することにより、蒸気の漏れの発生をさらに正確に判定することが可能となる。
【0081】
制御装置200は、複数回の加硫サイクルにおける供給弁6の開時間TOPの平均値に基づいて、蒸気の漏れが発生しているか否かを判定してもよい。
【0082】
1回の加硫サイクルにおいて、蒸気の漏れとは異なる原因によって供給弁6の開時間が突発的に長くなることがあり得る。供給弁6の開時間TOPの平均値に基づいて蒸気の漏れの発生を判定することにより、開時間TOPが突発的に長時間化した場合の誤判定を抑制することができる。
【0083】
[補記]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 加硫装置
3 供給管
4 排出管
5 ドレントラップ
6 供給弁
9 弁
10,12,13,15,16 分岐管
14 温度計
100 加硫機
104 ブラダー
106 モールド
108 コンテナ
110 上側プラテン
112 下側プラテン
114 セクターシュー
116 セグメント
118 サイドプレート
118a 上側サイドプレート
120 ビードリング
120a 上側ビードリング
122 上側ベースプレート
124 下側ベースプレート
126 キャビティ面
128 内面
130 山
132,134,136 スペース
138 内面
200 制御装置
201 入力部
202 フィードバック制御部
203 制御信号出力部
204 開時間計測部
205 判定部
206 通知部
210 プロセッサ
211 制御プログラム
220 非一過性メモリ
230 一過性メモリ
240 入出力インタフェース
250 表示部
260 スピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8