(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20230328BHJP
H01R 13/629 20060101ALI20230328BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
H01R13/629
H01R13/42 E
(21)【出願番号】P 2019145079
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】パーティウッティパット ピパッタナ
(72)【発明者】
【氏名】原 照雄
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-216434(JP,A)
【文献】特開2013-214437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
H01R 13/629
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側ハウジングに嵌合されるハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記相手側ハウジングに係止することで前記ハウジングと前記相手側ハウジングを嵌合状態にロックするロック機能部と、
前記ハウジングとは別体の部品であり、前記ハウジングに対して着脱可能な解除部材とを備え、
前記解除部材は、前記ハウジングに装着し
て移動規制された状態において、前記ロック機能部を前記相手側ハウジングから解離させるように変位させることが可能であり、
前記解除部材は、前記ハウジングに取り付けられる取付部と、前記取付部から片持ち状に延出して前記ロック機能部に当接するアーム部とを有し、
前記アーム部の延出端部が、前記ロック機能部を変位させるための操作部となっており、
前記操作部を指で押し操作することによって、前記ロック機能部を変位させるコネクタ。
【請求項2】
相手側ハウジングに嵌合されるハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記相手側ハウジングに係止することで前記ハウジングと前記相手側ハウジングを嵌合状態にロックするロック機能部と、
前記ハウジングとは別体の部品であり、前記ハウジングに対して着脱可能な解除部材とを備え、
前記解除部材は、前記ハウジングに装着した状態において、前記ロック機能部を前記相手側ハウジングから解離させるように変位させることが可能であり、
前記ロック機能部が、前記ハウジングとは別体の可動部材に形成されており、
前記可動部材は、前記ロック機能部を前記ハウジングの外面から突出させて前記相手側ハウジングに係止させるロック位置と、前記ロック位置よりも前記ハウジングの内部側へ退避して前記ロック機能部を前記相手側ハウジングから解離させる解除位置との間で変位可能であるコネクタ。
【請求項3】
前記解除部材は、前記ハウジングに取り付けられる取付部と、前記取付部から片持ち状に延出して前記ロック機能部に当接するアーム部とを有し、
前記アーム部の延出端部が、前記ロック機能部を変位させるための操作部となっている請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記解除部材は、前記ロック機能部の一部を覆う形態で前記ハウジングの前記外面と対向するように取り付けられる請求項2又は請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ロック機能部は、前記相手側ハウジングに対する前記ハウジングの嵌合方向と交差する幅方向に細長く延びた形状であり、
前記解除部材は、前記ロック機能部のうち前記幅方向中央部のみを覆う形態である請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記可動部材には、前記可動部材が前記ロック位置にあるときに前記ハウジングに挿入された端子金具を抜止めする抜止め部が形成されている請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記可動部材は、前記ハウジングに対する前記端子金具の挿入を許容する仮係止位置へ変位可能であり、
前記解除部材には、前記可動部材が前記仮係止位置にあるときに前記可動部材と干渉することで、前記ハウジングに対する前記解除部材の取り付けを規制する干渉部が形成されている請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングには端子金具が挿入され、
前記端子金具は、前記相手側ハウジングに取り付けた相手側端子に対して弾性的に接触する弾性接触片を有し、
前記可動部材は、前記弾性接触片と対向する押圧部を有しており、
前記可動部材が前記解除位置にあるときには、前記弾性接触片が前記押圧部で押圧されることにより前記相手側端子から遠ざかるように弾性変形し、
前記可動部材が前記ロック位置にあるときには、前記弾性接触片が前記押圧部の押圧から解放される請求項2から請求項7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記可動部材には、前記可動部材が前記解除位置へ変位したときに弾性変形する弾性撓み部が形成され、
前記可動部材は、前記弾性撓み部の弾性復元力により前記解除位置から前記ロック位置へ変位する方向の付勢力を付与される請求項2から請求項8のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハウジングの外面にロックアームが形成されたコネクタが開示されている。このコネクタを相手側コネクタに嵌合した状態では、ロックアームの係止突起が相手側コネクタの係止部に係止することにより、両コネクタが嵌合状態にロックされる。嵌合状態の両コネクタを離脱する際には、ロックアームの解除操作部(連結部)を指で押し操作することにより、ロックアームを弾性変形させて係止突起を係止部から解離させる。この操作により、ロックアームによるロック状態が解除されるので、両コネクタを離脱させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コネクタは、治具を用いることなく解除操作部を指で押し操作するだけで、両コネクタのロックを解除することができるので、ロック解除の作業性が良い。したがって、このコネクタは、相手側コネクタと嵌合した後に離脱する頻度が多い場合に有用である。しかし、離脱頻度の少ない場合は、解除操作部が有効活用されない。この対策としては、解除操作部が形成されたハウジングと解除部材が形成されていないハウジングとを用意し、この2つのタイプのハウジングを離脱頻度に応じて使い分けることが考えられる。しかし、2種類のハウジングを製造すると、金型コストが高くなるという問題がある。
【0005】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
相手側ハウジングに嵌合されるハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記相手側ハウジングに係止することで前記ハウジングと前記相手側ハウジングを嵌合状態にロックするロック機能部と、
前記ハウジングとは別体の部品であり、前記ハウジングに対して着脱可能な解除部材とを備え、
前記解除部材は、前記ハウジングに装着した状態において、前記ロック機能部を前記相手側ハウジングから解離させるように変位させることが可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1において雄側コネクタから離脱した雌側コネクタ(コネクタ)の分解状態を斜め上前方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、雌側ハウジング(ハウジング)に可動部材と解除部材を取り付けた状態を斜め上後方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、解除部材を斜め下後方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、雌側ハウジング(ハウジング)に対し可動部材を仮係止位置に取り付け、雌側ハウジングに雌端子金具(端子金具)を挿入している状態をあらわす側断面図である。
【
図5】
図5は、雌側ハウジングに雌端子金具を挿入し、可動部材をロック位置へ変位させた状態をあらわす側断面図である。
【
図6】
図6は、雌側コネクタと雄側コネクタの嵌合過程において、雌端子金具と雄端子金具(相手側端子)が接触していない状態をあらわす側断面図である。
【
図9】
図9は、雌側コネクタと雄側コネクタの嵌合過程において、可動部材が解除位置へ変位し、雌端子金具の弾性接触片が雄端子金具から遠ざかる方向へ弾性変形している状態をあらわす側断面図である。
【
図11】
図11は、雌側コネクタと雄側コネクタが嵌合し、ロック機能部が雄側ハウジング(相手側ハウジング)に係止して両コネクタが離脱規制されているロック状態をあわらす側断面図である。
【
図12】
図12は、解除部材を操作してロック機能部を雄側ハウジングから解離させたロック解除状態をあらわす側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)相手側ハウジングに嵌合されるハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記相手側ハウジングに係止することで前記ハウジングと前記相手側ハウジングを嵌合状態にロックするロック機能部と、
前記ハウジングとは別体の部品であり、前記ハウジングに対して着脱可能な解除部材とを備え、
前記解除部材は、前記ハウジングに装着した状態において、前記ロック機能部を前記相手側ハウジングから解離させるように変位させることが可能である。
【0010】
本開示の構成によれば、嵌合状態のハウジングと相手側ハウジングを離脱させる際には、ハウジングに装着した解除部材を操作することにより、ロック機能部を相手側ハウジングから解離させるように変位させる。離脱頻度に応じてハウジングに対する解除部材の着脱を選択することができるので、ハウジングは1種類だけで済む。本発明によれば、2種類のハウジングを製造する場合に比べて金型のコストを低減できる。
【0011】
(2)前記解除部材は、前記ハウジングに取り付けられる取付部と、前記取付部から片持ち状に延出して前記ロック機能部に当接するアーム部とを有し、前記アーム部の延出端部が、前記ロック機能部を変位させるための操作部となっていることが好ましい。この構成によれば、テコの作用により、小さい操作力を操作部に加えるだけで、ロック機能部を相手側ハウジングから解離させることができる。
【0012】
(3)前記ロック機能部が、前記ハウジングとは別体の可動部材に形成されており、前記可動部材は、前記ロック機能部を前記ハウジングの外面から突出させて前記相手側ハウジングに係止させるロック位置と、前記ロック位置よりも前記ハウジングの内部側へ退避して前記ロック機能部を前記相手側ハウジングから解離させる解除位置との間で変位可能であることが好ましい。この構成によれば、ロック機能部をハウジングに一体に形成する場合に比べると、ハウジングの形状を簡素化することができ、ひいては、ハウジングの金型コストを低減することができる。
【0013】
(4)前記解除部材は、前記ロック機能部の一部を覆う形態で前記ハウジングの前記外面と対向するように取り付けられることが好ましい。この構成によれば、解除部材をハウジングの外面に接近させるように押し操作すれば、可動部材を解除位置側へ変位させてロック機能部を相手側ハウジングから解離させることができる。
【0014】
(5)前記ロック機能部は、前記相手側ハウジングに対する前記ハウジングの嵌合方向と交差する幅方向に細長く延びた形状であり、前記解除部材は、前記ロック機能部のうち前記幅方向中央部のみを覆う形態であることが好ましい。この構成によれば、幅方向における解除部材の寸法を小さくすることができる。また、ロック解除操作の際には、解除部材がロック機能部の幅方向中央部に当接するので、可動部材を傾かせることなく解除位置側へ変位させることができる。
【0015】
(6)前記可動部材には、前記可動部材が前記ロック位置にあるときに前記ハウジングに挿入された端子金具を抜止めする抜止め部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、可動部材は、ハウジングと相手側ハウジングを嵌合状態にロックする機能と、端子金具を抜止めするためのリテーナとしての機能を兼ね備えている。したがって、可動部材とは別にリテーナを設ける場合に比べると、部品点数を削減できる。
【0016】
(7)前記可動部材は、前記ハウジングに対する前記端子金具の挿入を許容する仮係止位置へ変位可能であり、前記解除部材には、前記可動部材が前記仮係止位置にあるときに前記可動部材と干渉することで、前記ハウジングに対する前記解除部材の取り付けを規制する干渉部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、解除部材をハウジングに取り付けることができるか否かに基づいて、可動部材が仮係止位置とロック位置のいずれの位置にあるかを検知することができる。
【0017】
(8)前記ハウジングには端子金具が挿入され、前記端子金具は、前記相手側ハウジングに取り付けた相手側端子に対して弾性的に接触する弾性接触片を有し、前記可動部材は、前記弾性接触片と対向する押圧部を有しており、前記可動部材が前記解除位置にあるときには、前記弾性接触片が前記押圧部で押圧されることにより前記相手側端子から遠ざかる方向へ弾性的に変位し、前記可動部材が前記ロック位置にあるときには、前記弾性接触片が前記押圧部の押圧から解放されることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、端子金具と相手側端子を接続する際には、可動部材を解除位置へ変位させ、弾性接触片を相手側金具から遠ざかる方向へ弾性的に変位させておく。これにより、相手側端子と弾性接触片との間の摺動抵抗に起因する嵌合抵抗を回避又は低減できる。ハウジングと相手側ハウジングが嵌合して可動部材がロック位置へ変位すると、押圧部の押圧から解放された弾性接触片が、相手側端子に対して弾性的に接触する。したがって、端子金具の極数が多くても、レバーによる倍力機構を用いることなく小さい操作力で相手側端子と端子金具の接続を行うことができる。
【0019】
(9)前記可動部材には、前記可動部材が前記解除位置へ変位したときに弾性変形する弾性撓み部が形成され、前記可動部材は、前記弾性撓み部の弾性復元力により前記解除位置から前記ロック位置へ変位する方向の付勢力を付与されることが好ましい。この構成によれば、可動部材は弾性撓み部の弾性復元力によってロック位置に保持されるので、他部材を用いなくても、可動部材によるロック状態を保つことができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1を、
図1~
図12を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
本実施例1において、前後の方向については、
図4~6,9,11,12における左方を前方と定義する。上下の方向については、
図1~12にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、
図7,8,10にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0022】
本実施例の雌側コネクタF(請求項に記載のコネクタ)は、雄側コネクタMに嵌合されるものである。
図1に示すように、雄側コネクタMは、回路基板Pの表面(上面)に実装される雄側ハウジング10(請求項に記載の相手側ハウジング)と、雄側ハウジング10に取り付けた複数本の雄端子金具18(請求項に記載の相手側端子)とを有し、基板用コネクタと称されるものである。
雄側ハウジング10は、雄端子金具18を貫通させる壁状の端子保持部11と、端子保持部11の外周縁から雌側コネクタF側に向かって突出した角筒状のフード部12とを有する。
【0023】
図1,7に示すように、フード部12の上壁部13には、上壁部13の内面(下面)を凹ませた形態の逃がし凹部14が形成されている。逃がし凹部14は、左右方向における中央部に配され、フード部12の先端(開口端)から奥端まで前後方向に延びている。上壁部13のうち逃がし凹部14が形成されている領域には、上壁部13を貫通した形態の操作孔15が形成されている。操作孔15は、フード部12の先端よりも少し後方の位置に配されている。
【0024】
図6,7に示すように、フード部12の上壁部13には、左右一対のロック用係止部16が形成されている。一対のロック用係止部16は、左右方向に間隔を空けた位置関係で、上壁部13のうち逃がし凹部14の左右両側に隣接する部位に配されている。
図6に示すように、ロック用係止部16は、前後方向においてはフード部12の開口縁部(先端部)に配され、フード部12の奥側に面する係止面17を有する。フード部12を側方から見た側面視において、ロック用係止部16は、操作孔15の前方(フード部12の開口端側)に隣り合うように配されている。上下方向においては、一対のロック用係止部16は、逃がし凹部14の下面よりも低い位置に配されている。
【0025】
図1,6に示すように、雄端子金具18は、細長い金属棒材をL字形に屈曲したものである。雄端子金具18の基板接続部19は、端子保持部11の外部に露出し、スルーホールHに挿入された状態で回路基板Pに接続されている。雄端子金具18のタブ20は、端子保持部11からフード部12内へ突出しており、後述する雌端子金具45(請求項に記載の端子金具)に接続される。
【0026】
雌側コネクタFは、合成樹脂製の雌側ハウジング30(請求項に記載のハウジング)と、複数の雌端子金具45と、合成樹脂製の可動部材52と、解除部材63とを備えて構成されている。
図1,2に示すように、雌側ハウジング30は、全体としてブロック状をなす。両コネクタF,Mが嵌合する際には、フード部12内に雌側ハウジング30が収容される。
図4に示すように、雌側ハウジング30内には、雌側ハウジング30を前後方向に貫通した形態の複数の端子収容室31が形成されている。複数の端子収容室31は、上下方向及び左右方向に整列して配置されている。端子収容室31の前端部には、弾性変形可能なランス32が形成されている。
【0027】
雌側ハウジング30は収容空間33を有している。
図1に示すように、収容空間33は、雌側ハウジング30の外面30S(上面)と左右両側面とに開口し、全ての端子収容室31と連通している。収容空間33は、前後方向(雌側ハウジング30に対する雌端子金具45の挿抜方向と直交する方向)において、雌側ハウジング30の中央部(ランス32よりも後方の位置)に配されている。
【0028】
図1,8,10に示すように、雌側ハウジング30の左右両外側面には、左右一対の仮係止部34と、左右一対の本係止部35が形成されている。仮係止部34と本係止部35は、収容空間33の前方に配されている。本係止部35は仮係止部34の下方に配されている。仮係止部34は、可動部材52を仮係止位置に保持する機能を発揮する。本係止部35は、可動部材52をロック位置に保持する機能を発揮する。
【0029】
雌側ハウジング30の左右両外側面には、左右一対の拡開部36が形成されている。拡開部36は、本係止部35よりも下方の位置に配されている。拡開部36は、収容空間33の前端側領域と収容空間33よりも前方の領域とにわたり、前後方向に細長く延びた形状である。拡開部36の前端側部位は、前後方向において仮係止部34及び本係止部35と同じ領域に配されている。拡開部36の側面は、雌側ハウジング30を前方から見た正面視において、上下方向に対して斜めをなす拡開面37となっている。拡開面37は、下方に向かって雌側ハウジング30の外側面から遠ざかるように傾斜している。
【0030】
図1,4,7に示すように、雌側ハウジング30の外面30Sには、可動部材52を取り付けるための台座部38が一体に形成されている。台座部38は、前後方向においては雌側ハウジング30の前端部に配され、左右方向(幅方向)においては雌側ハウジング30の中央部に配されている。台座部38の左右両側縁部には、前後方向に延びてリブ状に突出した形態の左右一対のガイド部39が形成されている。台座部38の上面には抜止め突起40が形成されている。
【0031】
図1,4に示すように、雌側ハウジング30の外面30Sには、保護部41が形成されている。保護部41は、雌側ハウジング30の後端部に配され、左右対称な一対の保護壁部42と、連結部43とを有している。保護壁部42は、雌側ハウジング30の外面30Sから上方へ立ち上がっている。連結部43は、左右方向に細長く、左右両保護壁部42の上端縁部の前端部同士を連結している。保護部41の上面部のうち連結部43より後方の領域には、切欠部44が構成されている。切欠部44は、左右両保護壁部42の間に挟まれ、保護部41の後方へ開放されている。
【0032】
雌端子金具45は、金属板材に曲げ加工等を施して成形され、全体として前後方向に細長い形状をなす。
図1,4に示すように、雌端子金具45の前端部には角筒部46が形成されている。雌端子金具45の後端部には圧着部47が形成され、圧着部47は電線48の前端部に圧着されている。雌端子金具45は、雌側ハウジング30の後方から端子収容室31に挿入され、ランス32の係止作用により抜止めされている。雌端子金具45が端子収容室31の正規位置に挿入された状態では、角筒部46の後端縁部46Rが、収容空間33の前端の前方に隣接するように位置する。
【0033】
図4,11に示すように、雌端子金具45は、雄端子金具18のタブ20に対して弾性的に接触する弾性接触片49を有する。弾性接触片49は、角筒部46を構成する下板部の前端から後方へ折り返されて片持ち状に延出している。弾性接触片49のうち前端よりも少し後方の位置には、タブ20に対して点接触又は線接触する接点部50が形成されている。弾性接触片49の後端部(延出端部)は、受圧部51として機能する。弾性接触片49のうち受圧部51を除き且つ接点部50を含む大部分の領域は、角筒部46内に収容されている。受圧部51は、角筒部46の後端よりも後方へ突出している。
【0034】
可動部材52は、雌側ハウジング30とは別体の独立した合成樹脂製の部品である。
図1に示すように、可動部材52は、前方から見た正面視形状が方形をなす本体部53と、ロック機能部57と、一対の弾性撓み部61とを有する左右対称な単一部品である。本体部53は、上下方向及び左右方向に整列した複数の貫通孔54を有する。正面視において、複数の貫通孔54は上下方向及び左右方向に整列配置されている。この貫通孔54の整列形態は、複数の端子収容室31の整列形態と同じである。
図4に示すように、本体部53の前面のうち各貫通孔54の上縁部は、抜止め部55として機能する。各貫通孔54の上面における前端部は、下方に面する押圧部56として機能する。押圧部56と抜止め部55は、直角をなして連なっている。
【0035】
図1に示すように、ロック機能部57は、本体部53の上壁部13から上方へ突出し、左右方向に延びた形態である。ロック機能部57のうち左右方向中央部は、受け部58として機能する。ロック機能部57のうち左右両端部は、ロック部59として機能する。一対のロック部59は受け部58を左右両側から挟むように配されている。受け部58と一対のロック部59は連続的に連なっている。ロック機能部57の上面には、前方に向かって低くなるように傾斜した誘導面60が形成されている。
【0036】
図1に示すように、一対の弾性撓み部61は、本体部53の左右両側壁部の前端縁から前方へ片持ち状に延出した形態である。一対の弾性撓み部61は、方形の板状をなし、互いに拡開するように弾性変形することが可能である。
図1,8,10に示すように、弾性撓み部61の下端縁部には、弾性撓み部61の内面(相手側の弾性撓み部61と対向する面)から突出した形態の係止縁部62が形成されている。
【0037】
可動部材52は、雌側ハウジング30の上方から本体部53を収容空間33内に収容し、一対の弾性撓み部61を雌側ハウジング30の左右両外側面に重ね合わせた状態で、雌側ハウジング30に取り付けられている。可動部材52は、多機能を有する部品であり、雌側ハウジング30に取り付けられることにより、リテーナ機能と嵌合力低減機能とロック機能とを発揮する。リテーナ機能は、雌側ハウジング30(端子収容室31)に対する雌端子金具45の挿入状態の検知と、雌側ハウジング30(端子収容室31)に挿入された雌端子金具45の抜止めを行う機能である。嵌合力低減機能は、両コネクタF,Mの嵌合過程で、雌端子金具45と雄端子金具18との間の摩擦に起因する嵌合抵抗を低減する機能である。ロック機能は、正規嵌合した両コネクタF,M(両ハウジング10,30)を離脱規制状態にロックする機能である。
【0038】
雌側ハウジング30に取り付けた可動部材52は、仮係止位置(
図4を参照)と、ロック位置(
図2,5,6,8,11を参照)と、解除位置(
図9,10,12を参照)との3つの位置に保持されるようになっている。仮係止位置は、3位置のうち最も高い位置に設定されている。係止縁部62が、仮係止部34と本係止部35との間で上下に挟まれることにより、可動部材52が仮係止位置に保持される。仮係止位置に保持された可動部材52は、雌端子金具45の挿入状態を検知し得る準備状態となる。
【0039】
ロック位置は、仮係止位置よりも低く解除位置よりも高い位置に設定されている。
図8に示すように、係止縁部62が本係止部35と拡開面37との間で上下に挟まれることにより、可動部材52がロック位置に保持される。ロック位置に保持された可動部材52は、雌端子金具45を抜止めする機能と、両コネクタF,Mを嵌合状態にロックする機能を発揮し得る。
【0040】
解除位置は、3位置のうちもっとも低い位置に設定されている。解除位置の可動部材52は、両コネクタF,Mを嵌合状態にロックする機能を失い、嵌合抵抗低減機能を発揮する。また、可動部材52が解除位置にあるときには、
図10に示すように、一対の弾性撓み部61の下端部が拡開部36により左右方向(幅方向)外方へ湾曲するように変形させられるので、弾性撓み部61には弾性復元力が蓄えられる。
【0041】
図1,3に示すように、解除部材63は、雌側ハウジング30及び可動部材52とは別体の独立した合成樹脂製の部品である。解除部材63は、可動部材52によって嵌合状態にロックされた両コネクタF,M(両ハウジング10,30)のロック状態を解除する操作を行うための部品である。解除部材63は、全体として前後方向に細長い板状の部品である。
図3に示すように、解除部材63は、取付部64とアーム部71と操作部74とを有し、左右対称な形状である。
【0042】
取付部64は、解除部材63の前端部に形成されている。取付部64は、板厚方向を上下方向に向けた上板部65と、左右両側板部66と、左右一対の摺接部67と、引掛部68と、前止まり部69とを有する。左右両側板部66は、上板部65の左右両側縁部から下方へ延出している。左右一対の摺接部67は、左右両側板部66の下端縁から内側(左右方向中央側)へリブ状に突出している。引掛部68は、上板部65の後端縁から下方へ突出した形態である。前止まり部69は、上板部65の前端縁と左右両側縁部の前端縁とに連なっている。前止まり部69には、引掛部68を金型成型する際に形成された型抜き孔70が開口している。
【0043】
アーム部71は、上板部65の後端縁に面一状に連なり、上板部65から後方へ片持ち状に延出した形態である。アーム部71の下面には、左右一対の当て部72が形成されている。当て部72は、アーム部71の左右両側縁から下方へ突出し、前後方向に延びた形態である。前後方向における当て部72の形成領域は、取付部64の側板部66の後端から、アーム部71の前後方向中央部にわたる範囲である。
【0044】
アーム部71の下面には、干渉部73が形成されている。干渉部73は、アーム部71の前後方向中央部からアーム部71の後端にわたって形成されている。
図3に示すように、干渉部73の前端側領域は、アーム部71の左右両側縁部に配され、当て部72の後端に連なっている。干渉部73の後端部は、アーム部71の全幅にわたっている。
図6に示すように、干渉部73の下面は、前方に向かって低くなるように傾斜している。
【0045】
図1~3に示すように、操作部74は、アーム部71の後端部に形成されている。操作部74は、アーム部71の上面から階段状に突出した形態である。階段状に突出することにより、操作部74に当てた指が後方へ外れ難くなっている。操作部74は、解除部材63の上方から下向きの押圧力を付与することができるようになっている。
【0046】
解除部材63は、雌側ハウジング30に対して着脱可能であるが、着脱の要否に関しては、両コネクタF,Mを離脱する頻度に応じて任意に選択することができる。即ち、可動部材52によるロックを解除する頻度が多い場合は、解除部材63を雌側ハウジング30に取り付ける。可動部材52によるロックを解除する頻度が少ない場合は、解除部材63を雌側ハウジング30に取り付けずに、両コネクタF,Mの嵌合を行う。
【0047】
次に、解除部材63を雌側ハウジング30に取り付ける場合の使用形態について説明する。まず、可動部材52を、雌側ハウジング30に取り付けて仮係止位置に保持する。この状態では、
図4に示すように、貫通孔54の高さが端子収容室31の高さと合致し、抜止め部55が端子収容室31に対する雌端子金具45の挿入経路の上方へ退避する。したがって、端子収容室31に対する雌端子金具45の挿抜が可能である。可動部材52を仮係止位置に保持した状態で、雌端子金具45を端子収容室31に挿入する。
【0048】
全ての雌端子金具45を挿入した後、可動部材52を仮係止位置からロック位置へ押し下げる。可動部材52がロック位置に移動した状態では、
図5に示すように、抜止め部55が、雌端子金具45の挿入経路内へ進出し、角筒部46の後端縁部46Rに対し後方から接近した位置関係で対向する。したがって、電線48に作用する外力等によって雌端子金具45が後方へ引っ張られると、角筒部46の後端縁部46Rが抜止め部55に当たって引っ掛かり状態になる。これにより、雌端子金具45は、後方への移動を規制され、端子収容室31内に収容された状態に保持される。
【0049】
また、全ての雌端子金具45の挿入工程を終えたときに、正規位置まで挿入されていない雌端子金具45が存在していた場合には、可動部材52を仮係止位置からロック位置へ押し下げようとしたときに、押圧部56が角筒部46の上面に当たる。そのため、可動部材52をロック位置へ押し下げることができない。したがって、仮係止位置の可動部材52をロック位置へ押し込むことができるか否かに基づき、雌端子金具45の挿入状態(即ち、全ての雌端子金具45が正規挿入されているか、半挿入状態の雌端子金具45が存在するか)を検知することができる。
【0050】
可動部材52をロック位置へ移動させた後、解除部材63を雌側ハウジング30に取り付ける。取り付けに際しては、台座部38を上からアーム部71で覆いながら、取付部64を雌側ハウジング30の前方から台座部38に接近させる。そして、引掛部68を台座部38の上面に摺接させるとともに、側板部66と摺接部67をガイド部39の側面と下面に摺接させる。これらの摺接により、解除部材63が、台座部38に対し上下方向及び左右方向への相対変位を規制され、一定の姿勢に保持された状態で取り付けられる。
【0051】
解除部材63が適正に取り付けられた状態では、
図6に示すように、引掛部68が、抜止め突起40を乗り越え、抜止め突起40に対して後方から当接するとともに、前止まり部69が台座部38に対し前方から当接する。この当接作用により、解除部材63は、台座部38(雌側ハウジング30)に対して前後方向の移動を規制された状態に保持される。
【0052】
解除部材63が適正に取り付けられた状態では、
図8に示すように、当て部72の下面が、ロック機能部57の受け部58に対し上方から接近した位置関係で対向する。
図2に示すように、左右一対のロック部59は、解除部材63の左右両側方において上方へ露出している。
図6に示すように、操作部74は、保護部41内に収容され、左右両保護壁部42の間に挟まれるとともに、連結部43よりも下方に位置する。これにより、操作部74に対して上方や左右側方から異物が干渉することが防止される。また、保護部41の上面部には切欠部44が形成されているので、左右両保護壁部42の間に指を収容し、その指で操作部74を上から押し操作することは可能である。
【0053】
また、可動部材52が仮係止位置にある状態のままで、解除部材63を台座部38に取り付けようとした場合は、引掛部68が台座部38の上面に接触するとともに、側板部66と摺接部67がガイド部39の側面と下面に接触し、解除部材63が一定の取り付け姿勢に保持された直後に、解除部材63の干渉部73の下面が、受け部58(ロック機能部57)と干渉する。この状態のままで解除部材63の組付けを進めると、干渉部73の傾斜した下面と受け部58との間の摺動摩擦が増大していくので、組付けに対する抵抗が増大していく。そのため、解除部材63の取り付けを進め難くなる。
【0054】
また、干渉部73と受け部58との間の摩擦抵抗が増大している状態で、無理に組み付けを進めると、引掛部68が抜止め突起40に突き当たるので、組み付け抵抗が一気に増大する。そのため、無理に組み付けを進めても、正規の組み付け状態に至る前に、解除部材63の取り付け動作が困難となる。したがって、可動部材52が仮係止位置にある状態のままで、解除部材63が雌側ハウジング30に取り付けられてしまうおそれがない。また、解除部材63を取り付けることができるか否かに基づいて、可動部材52がロック位置へ移動しているか否かを検知することができる。
【0055】
なお、組み付け抵抗を上回る大きな力で解除部材63の組み付けを無理に進めた場合には、干渉部73の傾斜した下面により、仮係止位置の可動部材52をロック位置へ押し下げることが可能である。この場合、相当に大きな力が必要であるが、解除部材63の組み付けが完了すると同時に、可動部材52がロック位置に保持されるようになる。
【0056】
雌側コネクタFを雄側コネクタMに嵌合する際には、フード部12内に雌側コネクタFを挿入する。挿入(嵌合)の過程では、ロック機能部57の誘導面60が、上壁部13のうち逃がし凹部14の左右両側のロック用係止部16の下面に摺接することにより、ロック位置の可動部材52が解除位置へ押し込まれる。可動部材52が解除位置へ移動すると、押圧部56が受圧部51を押し下げるので、弾性接触片49はタブ20の挿入経路から下方へ遠ざかる方向へ弾性的に変位する。したがって、雄端子金具18のタブ20が、雌端子金具45内に挿入されたときに、タブ20と弾性接触片49との間の摺動抵抗(摩擦抵抗)が低減される。これにより、両コネクタF,M間の嵌合抵抗が低減される。なお、両コネクタF,Mの嵌合過程では、解除部材63は逃がし凹部14内に収容されるので、フード部12と接触によって変形したり変位したりすることはない。
【0057】
また、可動部材52が解除位置へ移動する過程では、
図10に示すように、弾性撓み部61の係止縁部62が、拡開部36に摺接することにより拡開するように弾性変形させられる。これにより、弾性撓み部61には弾性復元力が蓄えられるので、可動部材52はロック位置側へ移動しようとする。また、可動部材52には、弾性接触片49の弾性復元力によっても、ロック位置側への復帰力が付与される。
【0058】
両コネクタF,Mが正規の嵌合状態に至ると、ロック部59(ロック機能部57)がロック用係止部16を通過するので、可動部材52が解除位置からロック位置へ弾性的に復帰する。可動部材52がロック位置に復帰すると、ロック機能部57が雌側ハウジング30の外面30Sから突出するように変位し、左右両ロック部59が、左右両ロック用係止部16の係止面17に係止する。ロック部59がロック用係止部16に係止することにより、両コネクタF,Mは離脱を規制された状態にロックされる。また、可動部材52がロック位置に移動すると、押圧部56が受圧部51から解離するので、弾性接触片49がタブ20に接近する方向へ弾性復帰し、タブ20と弾性接触片49とが所期の接触圧で接続される。両コネクタF,Mの嵌合開始から嵌合完了まで、解除部材63は移動しない。
【0059】
嵌合状態の両コネクタF,Mを離脱する際には、解除部材63の操作部74を押し操作し、アーム部71を雌側ハウジング30の外面30Sに接近させるように変位させる。このとき、解除部材63が弾性変形する。操作部74の押し操作により、解除部材63の当て部72が受け部58を押圧するので、ロック位置の可動部材52が解除位置へ押し下げられる。可動部材52が解除位置へ移動すると、ロック機能部57が雌側ハウジング30内(収容空間33内)に収容され、ロック部59がロック用係止部16(係止面17)から解離する。これにより、ロック部59によるロック状態が解除されるので、ロック解除状態を保ったまま両コネクタF,M(両ハウジング10,30)を引き離せばよい。
【0060】
操作部74を押し操作によって可動部材52が解除位置へ移動すると、押圧部56が受圧部51を押すので、弾性接触片49がタブ20から遠ざかる方向へ変位する。これにより、弾性接触片49とタブ20との間の摺動抵抗が低減されるので、両コネクタF,Mの離脱時の抵抗も低減される。可動部材52が解除位置へ移動すると弾性撓み部61が弾性変形するので、可動部材52にはロック位置へ復帰しようとする力が蓄えられる。したがって、両コネクタF,Mが離脱した後は、操作部74から指を離せば、可動部材52が弾性撓み部61の弾性復元力によってロック位置に復帰する。以上により、両コネクタF,Mの離脱が完了する。
【0061】
次に、雌側ハウジング30に解除部材63を取り付けない使用形態について説明する。両コネクタF,Mの嵌合過程については、解除部材63を雌側ハウジング30に取り付けた場合と同じであるから、説明は省略する。両コネクタF,Mが正規嵌合した状態では、フード部12の上方(外方)から操作孔15を通してロック機能部57のうち受け部58を目視することができる。換言すると、受け部58が操作孔15を介してフード部12の外部へ露出した状態なっている。
【0062】
したがって、嵌合状態の両コネクタF,Mを離脱する際には、操作孔15から治具や工具(図示省略)又は指を挿入して受け部58を下方へ押し、可動部材52をロック位置から解除位置へ押し込めばよい。可動部材52を解除位置へ押し込むことにより、ロック状態が解除される。可動部材52が解除位置へ移動したときの作用は、解除部材63を用いて可動部材52を解除位置へ移動させたときと同じであるから、説明は省略する。この後は、治具や工具又は指で可動部材52を解除位置へ押し込んだ状態を保ったままで、両コネクタF,M(両ハウジング10,30)を離脱させる。離脱後は、可動部材52から治具や工具又は指を外せば、両コネクタF,Mの離脱が完了する。
【0063】
本実施例1の雌側コネクタFは、雄側ハウジング10に嵌合される雌側ハウジング30と、雌側ハウジング30に設けたロック機能部57と、解除部材63とを備えている。ロック機能部57は、雄側ハウジング10に係止することで雌側ハウジング30と雄側ハウジング10を嵌合状態にロックする。解除部材63は、雌側ハウジング30とは別体の部品であり、雌側ハウジング30に対して着脱可能である。解除部材63は、雌側ハウジング30に装着した状態において、ロック機能部57を雄側ハウジング10から解離させるように変位させることが可能である。
【0064】
嵌合状態の雌側ハウジング30と雄側ハウジング10を離脱させる際には、雌側ハウジング30に装着した解除部材63を操作することにより、ロック機能部57を雄側ハウジング10から解離させるように変位させる。離脱頻度に応じて雌側ハウジング30に対する解除部材63の着脱を選択することができるので、雌側ハウジング30は1種類だけで済む。したがって、本実施例の雌側コネクタFによれば、2種類の雌側ハウジング30を製造する場合に比べて金型のコストを低減できる。
【0065】
解除部材63は、雌側ハウジング30に取り付けられる取付部64と、取付部64から片持ち状に延出してロック機能部57に当接するアーム部71とを有する。アーム部71の延出端部は、ロック機能部57をロック解除方向へ変位させるための操作部74となっている。操作部74を操作すると、アーム部71が取付部64を支点として姿勢を傾けるように変位し、ロック機能部57を押し動かす。アーム部71のうちロック機能部57に当接する部位は、操作部74に比べて取付部64に近い。したがって、小さい操作力を操作部74に加えるだけで、テコの作用により、ロック機能部57を動かして雄側ハウジング10から解離させることができる。
【0066】
ロック機能部57は、雌側ハウジング30とは別体の可動部材52に形成されている。可動部材52は、ロック位置と、ロック位置よりも雌側ハウジング30の内部側(収容空間33内)へ退避した解除位置との間で変位可能である。可動部材52がロック位置にある状態では、ロック機能部57が、雌側ハウジング30の外面30Sから突出して雄側ハウジング10に係止される。可動部材52が解除位置にある状態では、ロック機能部57が雄側ハウジング10から解離する。ロック機能部57は、雌側ハウジング30とは別体の可動部材52に形成されているので、ロック機能部57を雌側ハウジング30に一体に形成する場合に比べると、雌側ハウジング30の形状を簡素化することができる。これにより、雌側ハウジング30の金型コストを低減することができる。
【0067】
解除部材63は、ロック機能部57の一部(左右方向中央の受け部58のみ)を覆う形態で、雌側ハウジング30の外面30Sと対向するように取り付けられている。この構成によれば、解除部材63を雌側ハウジング30の外面30Sに接近させるように押し操作すれば、可動部材52を解除位置側へ変位させてロック機能部57を雄側ハウジング10から解離させることができる。
【0068】
ロック機能部57は、雄側ハウジング10に対する雌側ハウジング30の嵌合方向と交差する幅方向(左右方向)に細長く延びた形状であり、解除部材63は、ロック機能部57のうち幅方向中央部(受け部58)のみを覆う形態である。この構成によれば、幅方向における解除部材63の寸法を小さくすることができる。また、ロック解除操作の際には、解除部材63がロック機能部57の幅方向中央部に当接するので、可動部材52を傾かせることなく解除位置側へ変位させることができる。
【0069】
可動部材52には抜止め部55が形成されている。抜止め部55は、可動部材52がロック位置にあるときに、雌側ハウジング30に挿入された雌端子金具45を抜止めする。即ち、可動部材52は、雌側ハウジング30と雄側ハウジング10を嵌合状態にロックする機能に加えて、雌端子金具45を抜止めするためのリテーナとしての機能も兼ね備えている。したがって、本実施例の雌側コネクタFは、可動部材52とは別にリテーナを設ける場合に比べると、部品点数を削減できる。
【0070】
可動部材52は、雌側ハウジング30に対する雌端子金具45の挿入を許容する仮係止位置へ変位可能である。解除部材63には、可動部材52が仮係止位置にあるときに可動部材52と干渉することで、雌側ハウジング30に対する解除部材63の取り付けを規制する干渉部73が形成されている。この構成によれば、解除部材63を雌側ハウジング30に取り付けることができるか否かに基づいて、可動部材52が仮係止位置とロック位置のいずれの位置にあるかを検知することができる。
【0071】
雌側ハウジング30には雌端子金具45が挿入されるようになっている。雌端子金具45は、雄側ハウジング10に取り付けた雄端子金具18に対して弾性的に接触する弾性接触片49を有している。可動部材52は、弾性接触片49と対向する押圧部56を有している。可動部材52が解除位置にあるときには、弾性接触片49が押圧部56で押圧されることにより雄端子金具18のタブ20から遠ざかる方向へ弾性的に変位する。可動部材52がロック位置にあるときには、弾性接触片49が押圧部56の押圧から解放される。
【0072】
この構成によれば、雌端子金具45と雄端子金具18を接続する際には、可動部材52を解除位置へ変位させ、弾性接触片49を雄端子金具18から遠ざかる方向へ弾性的に変位させておく。これにより、雄端子金具18と弾性接触片49との間の摺動抵抗に起因する嵌合抵抗を回避又は低減できる。雌側ハウジング30と雄側ハウジング10が嵌合して可動部材52がロック位置へ変位すると、押圧部56の押圧から解放された弾性接触片49が、雄端子金具18に対して弾性的に接触する。したがって、雌端子金具45の極数が多くても、レバーによる倍力機構を用いることなく小さい操作力で雄端子金具18と雌端子金具45の接続を行うことができる。
【0073】
可動部材52には、可動部材52が解除位置へ変位したときに弾性変形する弾性撓み部61が形成されている。可動部材52は、弾性撓み部61の弾性復元力により解除位置からロック位置へ変位する方向の付勢力を付与される。この構成によれば、可動部材52は弾性撓み部61の弾性復元力によってロック位置に保持されるので、他部材を用いなくても、可動部材52によるロック状態を保つことができる。
【0074】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、解除部材をハウジングの外面に接近させることで、ロック機能部によるロックが解除されるようになっているが、ロック解除の際の解除部材の変位方向は、ハウジングの外面と平行な方向であってもよい。
上記実施例では、ロック解除操作の際には解除部材を押し操作するが、解除部材を引っ張ることによってロックを解除するようにしてもよい。
上記実施例では、解除部材がロック機能部の幅方向中央部のみを覆うようになっているが、解除部材は、ロック機能部の幅方向両端部を覆うようになっていてもよい。この場合、ロック機能部の幅方向中央部が相手側ハウジングに係止する。
上記実施例では、解除部材が後方へ片持ち状に延出した形態であるが、解除部材は、前方又は側方へ片持ち状に延出した形態でもよい。
上記実施例では、解除部材がハウジングに対し片持ち状に延出する形態で取り付けられるが、解除部材は、ハウジングに対し両持ち梁状に取り付けられるものでもよい。
上記実施例では、解除部材の取付部がハウジングに固定され、解除部材が弾性変形することによってロック機能部を相手側ハウジングから解離させるようになっているが、解除部材は、ハウジングに対して軸を中心に回動又は揺動するように取り付けられていてもよい。
上記実施例では、可動部材が仮係止位置にあるときに、解除部材の干渉部が可動部材と干渉するようになっているが、解除部材は干渉部を有しない形態であってもよい。この場合、可動部材が仮係止位置にある状態でも、解除部材をハウジングに取り付けることができる。
上記実施例では、可動部材が、端子金具を抜止めするためのリテーナとしての機能を兼ね備えているが、可動部材は、リテーナとしての機能を有しないものでもよい。
上記実施例では、ロック機能部が、ハウジングとは別体の可動部材に形成されているが、ロック機能部はハウジングに一体に形成されていてもよい。
上記実施例では、ロック機能部が、ハウジングの外面から突出する方向へ変位することで相手側ハウジングに係止するようになっているが、ロック機能部は、ハウジングの外面に沿うように変位することで相手側ハウジングに係止されるようになっていてもよい。
上記実施例では、可動部材が、端子金具と相手側端子との間の摺動抵抗に起因する嵌合抵抗を回避又は低減する機能を有しているが、可動部材は、嵌合抵抗を回避又は低減する機能を有しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…雄側ハウジング(相手側ハウジング)
11…端子保持部
12…フード部
13…上壁部
14…逃がし凹部
15…操作孔
16…ロック用係止部
17…係止面
18…雄端子金具(相手側端子)
19…基板接続部
20…タブ
30…雌側ハウジング(ハウジング)
30S…雌側ハウジングの外面
31…端子収容室
32…ランス
33…収容空間
34…仮係止部
35…本係止部
36…拡開部
37…拡開面
38…台座部
39…ガイド部
40…抜止め突起
41…保護部
42…保護壁部
43…連結部
44…切欠部
45…雌端子金具(端子金具)
46…角筒部
46R…角筒部の後端縁部
47…圧着部
48…電線
49…弾性接触片
50…接点部
51…受圧部
52…可動部材
53…本体部
54…貫通孔
55…抜止め部
56…押圧部
57…ロック機能部
58…受け部
59…ロック部
60…誘導面
61…弾性撓み部
62…係止縁部
63…解除部材
64…取付部
65…上板部
66…側板部
67…摺接部
68…引掛部
69…前止まり部
70…型抜き孔
71…アーム部
72…当て部
73…干渉部
74…操作部
F…雌側コネクタ(コネクタ)
H…スルーホール
M…雄側コネクタ
P…回路基板