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特許7251399オイル用増粘剤およびそれを含んでなる化粧用オイル組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】オイル用増粘剤およびそれを含んでなる化粧用オイル組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20230328BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230328BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230328BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230328BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q5/00
A61Q1/00
A61K47/32
A61K9/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019145936
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021024834
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】宗形 裕基
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197321(JP,A)
【文献】特開2019-094437(JP,A)
【文献】特開2016-210912(JP,A)
【文献】特開2013-56951(JP,A)
【文献】特表平06-501957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00
A61K47/00
C08F16/00
CAPLUS/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるモノマー(i)、およびドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびベヘニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれるモノマー(ii)をモル比((i)/(ii))として10/90~30/70で含有する共重合体であって、重量平均分子量が10,000~1,000,000である共重合体からなることを特徴とする、オイル用増粘剤。

【化1】

(式(1)において、
XおよびYはそれぞれ独立してNH又はOであって、少なくとも一方がNHであり、
は水素原子またはメチル基であり、
は水素原子、メチル基またはエチル基であり、
は炭素数2~22のアルキル基である。)
【請求項2】
請求項1記載のオイル用増粘剤(A)、およびイソドデカンおよび流動パラフィンからなる群より選ばれた化粧用オイル(B)を含有する化粧用オイル組成物であって、
前記オイル用増粘剤(A)と前記化粧用オイル(B)との質量比((A)/(B))が5/95~30/70であることを特徴とする、化粧用オイル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増粘性、チキソトロピー性に温度依存があるオイル用増粘剤およびそれを含んでなる化粧用オイル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オリーブ油などの動植物油類、流動パラフィンやイソドデカンなどの炭化水素類、イソノナン酸イソトリデシルなどの脂肪酸エステル類等のオイルは化粧料、医薬品、食品、塗料、インク、潤滑油等の様々な分野で広く利用されている。特に化粧品分野では、上記オイルがフェイスオイル、ヘアオイルなどへと利用されるが、これらを手に取ったときに指の間から垂れ落ち易いことが問題となる。このような問題を解決する方法として増粘剤を添加して上記オイルを適度に増粘することが考えられる(特許文献1)。
【0003】
しかし、オイルを増粘させると伸び広がりにくく、均一に塗布することが困難になる。そこで、増粘剤に要求される性能としては展延性を改善するために、チキソトロピー性を有する化粧用オイル組成物を生成することが要求されている。
【0004】
従来のチキソトロピー性を有する増粘剤としては、例えば、デキストリン脂肪酸エステル等が知られている(特許文献2)。これらの増粘剤を使用すると固体あるいは半固体のオイルが得られ、手に取ったときに垂れ落ちにくいが、塗布していくと徐々にせん断され、チキソトロピー性を発揮することで粘度が低下し、展延性が良好となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO 2015/174343 A1
【文献】特開2017-186379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの増粘剤を含むオイルはチキソトロピー性が高いがゆえに、伸び広げる際に強いシェアを必要とする。特に手で塗布するせん断速度においては、粘度が下がりにくく、塗った際に抵抗を感じるため、使用感が十分とは言えない。
【0007】
一方、粘度やチキソトロピー性といった粘弾特性は温度にも影響を受けるため、これを利用することで使用感を改善できる可能性がある。しかし、上記した増粘剤を含むオイルは温度による影響を受けにくく、効果が期待できない。
【0008】
本発明の課題は、化粧用オイルに配合すると、増粘性およびチキソトロピー性に優れ、温度変化によるチキソトロピー性の変化が大きいという特性を付与可能な増粘剤を提供することである。
また、本発明の課題は、このような増粘剤を利用することで、増粘効果があって垂れにくい上に、手で塗布した際には粘度が容易に低下することで、抵抗を感じず、使用感が優れた化粧用オイルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、ウレア構造やウレタン構造を有する特定構造のオイル用増粘剤とオイルを組み合わせた化粧用オイル組成物が、体温で粘度およびチキソトロピー性を変化させることで、手に取ったときは垂れ落ちにくく、手で塗布するせん断速度においても伸び拡がりが容易で使用感を改善できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のものである。
(1) 下記式(1)で示されるモノマー(i)、およびドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびベヘニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれるモノマー(ii)をモル比((i)/(ii))として10/90~30/70で含有する共重合体であって、重量平均分子量が10,000~1,000,000である共重合体からなることを特徴とする、オイル用増粘剤。

【化1】

(式(1)において、
XおよびYはそれぞれ独立してNH又はOであって、少なくとも一方がNHであり、
は水素原子またはメチル基であり、
は水素原子、メチル基またはエチル基であり、
は炭素数2~22のアルキル基である。)
【0011】
(2) (1)のオイル用増粘剤(A)、およびイソドデカンおよび流動パラフィンからなる群より選ばれた化粧用オイル(B)を含有する化粧用オイル組成物であって、
前記オイル用増粘剤(A)と前記化粧用オイル(B)との質量比((A)/(B))が5/95~30/70であることを特徴とする、化粧用オイル組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオイル用増粘剤は、オイルに配合すると、増粘性およびチキソトロピー性に優れるだけでなく、温度変化によるチキソトロピー性の変化が大きいという特性を付与することができる。その特性により、本発明の増粘剤を含有する化粧用オイル組成物は、手に取った際には液だれを生じない適度な粘性を有しているが、体温付近ではチキソトロピー性が大きく低下するため、肌に手で塗った際に展延性に優れるという効果を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
〔モノマー(i)〕
本発明で用いるモノマー(i)は、下記一般式(1)で示される。
【化1】
【0014】
式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、重合のしやすさの観点からメチル基が特に好ましい。Rは水素原子、メチル基またはエチル基を示すが、アミンまたはアルコールとの反応性の観点からは、水素原子が特に好ましい。
【0015】
は、炭素数2~12のアルキル基である。炭素数2~12のアルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基)、ヘキシル基(n-ヘキシル基等)、オクチル基(n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等)、デシル基、ドデシル基などが挙げられ、合成のしやすさと粘度特性の観点から、Rの炭素数は3~6がより好ましく、3~5が特に好ましい。
【0016】
XとYは、酸素原子(-O-)あるいはNH基であり、チキソトロピー性の観点から、XとYとの少なくとも一方がNH基であ、XおよびYが両方ともNH基であることが更に好ましい。
【0017】
モノマー(i)は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
オイル用増粘剤を構成するモノマーのうち、モノマー(i)のモル比は、10モル%以上とする。モノマー(i)のモル比が低すぎると、チキソトロピー性が低下するおそれがあるので、10mol%以上とするが、20mol%以上が更に好ましい。また、モノマー(i)のモル比は、30mol%を超えると、オイルへの溶解性が低下して、オイル用増粘剤の効果が十分に得られないおそれがある。このため、モノマー(i)のモル比は、30mol%以下とする。
【0019】
[モノマー(ii)]
モノマー(ii)としては、モノマー(i)と共重合可能なビニル系モノマーであり、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびベヘニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれるモノマーである。
【0023】
モノマー(ii)は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。その中でも、オイル溶解性の観点からドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0024】
モノマー混合物においては、モノマー(i)とモノマー(ii)の合計量を100モル%とする。ゆえに、モノマー(ii)のモル比は70~90モル%となる。
【0025】
[重合体]
本発明のオイル用増粘剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができ、10,000~1,000,000であり、好ましくは10,000~800,000、より好ましくは30,000~300,000である。重合体の重量平均分子量が低すぎると、ポリマーの強度や粘度が不足し、重量平均分子量が高すぎると、オイルへの溶解性の低下が生じるおそれがある。
【0026】
〔モノマー(i)の製造方法〕
本発明のモノマー(i)は、ウレア結合もしくはウレタン結合を有するモノマーである。上記モノマー(i)は例えば、イソシアネート基含有モノマーとアミン化合物もしくはアルコール化合物の反応や、ヒドロキシ基含有モノマーとアルキルイソシアネートの反応によって得ることができる。
【0027】
前記イソシアネート基含有モノマーとしては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましく、重合安定性の観点から、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートがより好ましい。
【0028】
前記アミン化合物は、1級アミン化合物又は2級アミン化合物であることが好ましく、1級アミン化合物であることがさらに好ましい。上記1級アミン化合物としては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミンn-ヘキシルアミンn-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、アニリン等が挙げられ、これらは単独で又は2
種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、粘度特性の観点から、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミンn-ヘキシルアミンn-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミンが好ましく、n-ブチルアミンがさらに好ましい。
【0029】
また、前記2級アミン化合物としては、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジオクチルアミン(
ジn-オクチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミ、ピペリジン、モルホリン等が挙げられ、これらは単独で又は2 種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
また、前記アルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、反応時の安定性の観点から、上記アルコール化合物が、炭素数2~8のアルコールであることが好ましい。該炭素数2~8のアルカノールとしては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等が挙げられ、なかでもエタノール、プロパノール、ブタノールが好ましい。
【0031】
前記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物が挙げられる。その中でも、イソシアネート基との反応性の観点から、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0032】
前記アルキルイソシアネートとしては、例えば、エチルイソシアネート、n-ブチルイソシアネート、iso-ブチルイソシアネート、tert-ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、n-オクチルイソシアネート、2-エチルヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネートなどが挙げられるが、オイル用増粘剤のチキソトロピー性の観点から、n-ブチルイソシアネートが好ましい。
【0033】
前記イソシアネート基含有モノマーとアミン化合物もしくはアルコール化合物との反応および、ヒドロキシ基含有モノマーとアルキルイソシアネートの反応は、両者を混合し、所望により温度を上げ、公知の方法で実施することができる。また必要に応じて、触媒を添加してもよく、例えば、スタナスオクトエート、ジブチルスズジラウリレートなどのスズ系触媒、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒など公知の触媒を用いることができる。この反応は5~100℃
、好ましくは20~80℃ の温度で行うことが望ましい。また、上記反応は溶剤を使用してもよく、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン等の存在下で行うことができる。
【0034】
〔オイル用増粘剤の製造方法〕
次に、本発明のオイル用増粘剤を製造する方法について説明する。
本発明におけるオイル用増粘剤は、モノマー(i)を少なくとも含有するモノマー混合物をラジカル重合させることにより得ることができる。重合は公知の方法で行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられるが、オイル用増粘剤の重量平均分子量を上記範囲内に調整しやすいという面で、溶液重合や懸濁重合が好ましい。
【0035】
重合開始剤は、公知のものを使用することができる。例えば、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエートなどの有機過酸化物、2,2
’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は1 種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
重合開始剤の使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。
【0037】
なお、重合開始剤を投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしてもよいし、一部を一括仕込みして残りを滴下してもよく、あるいは全量を滴下してもよい。また、前記モノマーとともに重合開始剤を滴下すると、反応の制御が容易となるので好ましく、さらにモノマー滴下後も重合開始剤を添加すると、残存モノマーを低減できるので好ましい。
【0038】
溶液重合の際に使用する重合溶媒としては、モノマーと重合開始剤が溶解するものを使用することができ、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。これらの重合溶媒は1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
重合溶媒に対するモノマー(合計量)の濃度は、10~70質量%が好ましく、特に好ましくは20~60質量%
である。モノマー混合物の濃度が低すぎると、モノマーが残存しやすく、得られるオイル用増粘剤の分子量が低下するおそれがあり、モノマーの濃度が高すぎると、発熱を制御し難くなるおそれがある。
【0040】
モノマーを投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしても良いし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、あるいは全量を滴下しても良い。
重合温度は、重合溶媒の種類などに依存し、例えば、50℃~110℃である。重合時間は、重合開始剤の種類と重合温度に依存し、例えば、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシネオデカノエートを使用した場合、重合温度を70℃
として重合すると、重合時間は6時間程度が適している。
【0041】
以上の重合反応を行なうことにより、本発明の樹脂組成物に係るオイル用増粘剤が得られる。得られたオイル用増粘剤は、そのまま用いてもよいし、重合反応後の反応液に、ろ取や精製を施して単離してもよい。
【0042】
[化粧用オイル(B)]
本発明の化粧用オイル(B)としては、イソドデカンおよび流動パラフィンからなる群より選ばれたオイルである。オイルは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
[化粧用オイル組成物]
本発明の化粧用オイル組成物は、上記オイル用増粘剤(A)とオイル(B)を含有する化粧用オイル組成物を含む。
【0046】
上記オイル用増粘剤(A)とオイル(B)からなる油組成物は、例えば、オイル用増粘剤(A)とオイル(B)を相溶させる工程を経て製造することができる。より詳細には、上記オイル用増粘剤(A)とオイル(B)の全量を混合して加温し、相溶させた後、冷却することにより製造することができる。また、オイル(B)の一部に上記オイル用増粘剤(A)を混合して、加温、相溶させた後、冷却し、その後、残りのオイル(B)を混合する方法でも製造することができる。
【0047】
オイル用増粘剤(A)の含有量は、化粧用オイル組成物全量の5~30重量%であり、前記範囲の下限は好ましくは10重量%である。また、前記範囲の上限は、好ましくは25重量%である。オイル用増粘剤(A)を前記範囲で配合することによりオイル(B)に適度な粘度を付与することができる。
【0048】
本発明の化粧用オイル組成物は適度な粘性を有し、その粘度[25℃
、せん断速度1(1/s)における]は、例えば1,000~200,000mPa・s
の範囲内において適宜選択することができる。粘度が上記範囲であれば、ハンドリング性とチキソトロピー性がともに十分に得られやすい。
【実施例
【0049】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
下記の表1に、モノマー(i)の構造と略号を示す。
【表1】

【0050】
(合成例1:モノマーi-1)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び空気導入管を取り付けた300mLフラスコに、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製「カレンズMOI」)51.2g、テトラヒドロフラン40g、メトキノン0.012gを仕込んだ。フラスコ内に空気を導入し、内温を40℃に保持しながら、n-ブチルアミン24.1gを1時間かけて滴下した。その後、40℃で2時間熟成させたのち、テトラヒドロフランを60℃
で減圧留去し、モノマーi-1を得た(収率92%)。
【0051】
(重合例1:オイル用増粘剤A)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、イソプロパノール170g、ヘプタン75g、ステアリルメタクリレート(製品名:ブレンマーSMA (日油(株)製)175g(70mol%)とモノマーi-1 75g(30mol%)を仕込み、フラスコ内を窒素置換して、窒素雰囲気下にした。そこにイソプロパノール5gとt-ブチルパーオキシネオデカノエート(製品名:パーブチルND-100(日油(株)製)5gを混合した重合開始剤溶液をそれぞれ調製した。
【0052】
反応容器内を70℃まで昇温し、重合開始剤溶液を一括で添加した。その後、70℃で6時間反応させオイル用増粘剤1のイソプロパノール/ヘプタン溶液を得た。ついで、120℃、減圧下で120分かけ脱溶剤し、オイル用増粘剤1を得た。
【0053】
(重合例2:オイル用増粘剤2)
ステアリルメタクリレートの使用量を200g(80mol%)、モノマーi-1(20mol%)の使用量を50gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法でオイル用増粘剤2を得た。
【0054】
(重合例3:オイル用増粘剤3)
ステアリルメタクリレートの使用量を225g(90mol%)、モノマーi-1の使用量を25g(10mol%)に変更したこと以外は重合例1と同様の手法でオイル用増粘剤3を得た。
【0055】
(重合例4:オイル用増粘剤4)
ラウリルメタクリレートの使用量を200g(80mol%)、モノマーi-1の使用量を50g(20mol%)に変更したこと以外は重合例1と同様の手法でオイル用増粘剤4を得た。
【0056】
(比較例1:オイル用増粘剤5)
ステアリルメタクリレートの使用量を250g(100mol%)、モノマーi-1の使用量を0gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法でオイル用増粘剤5を得た。
【0057】
〔重量平均分子量の測定〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件により、オイル用増粘剤1~5の重量平均分子量を求めた。

装置: 東ソー(株)社製、HLC-8220
カラム: shodex社製、LF-804
標準物質: ポリスチレン
溶離液: THF(テトラヒドロフラン)
流量: 1.0ml/min
カラム温度: 40℃
検出器: RI(示差屈折率検出器)
【0058】
下記の表2に、オイル用増粘剤1~5の組成と質量平均分子量を示す。
【0059】
【表2】

【0060】
(実施例1)
重合例1で得られたオイル用増粘剤1を20重量部と、流動パラフィン80重量部を混合し、70℃で加熱撹拌してこれらを相溶させ、その後、25℃
まで冷却して化粧用オイル組成物(1)を得た。得られた化粧用オイル組成物(1)について下記方法により、手に取った時の垂れ落ちにくさ、チキソトロピー性の変化、粘度変化について評価を行った。
【0061】
(実施例2~5、比較例1~2)
下記表に示す処方(単位:重量部)に変更した以外は実施例1と同様にして化粧用オイル組成物を得、それらについて実施例1と同様にして評価を行った。
【0062】
〔手に取った時の垂れ落ちにくさの評価〕
専門パネル10名により、上記で調製した化粧用オイル組成物を片手に約1gとり、手を垂直に傾けた時の垂れ落ちの程度を下記評価基準で評価した。
(評価基準)

◎: 垂れ落ちない
〇: やや垂れ落ちる
×: 垂れ落ちる
【0063】
〔チキソトロピー性、加熱時の粘度低下の評価〕
上記で調製した化粧用オイル組成物を、レオメーターにて1s-1から1,000s-1の範囲で粘度のせん断速度依存性を測定した。TI値は各温度(25、40℃)における、せん断速度1s-1 と10s-1のときの粘度の比として算出した。その後、得られたTI値を用いてTI値変化比を算出し、下記評価基準で評価した。また、粘度はせん断速度1s-1における、温度25℃と40℃の時の値を測定した。その後、得られた粘度を用いて粘度変化比を算出し、下記評価基準で評価した。
【0064】
なお、オイル(B)としては、流動パラフィン(商品名「流動パラフィン」SAJ1級
Sigma Aldrich社)を用いた。
(評価基準)
(TI値変化比)
◎: 3.5以上、 ○: 1.5以上、3.5未満、 ×: 1.5未満
(粘度変化比)
◎: 50以上、○: 5以上、50未満、 ×: 5未満
【0065】
【表3】
【0066】
実施例1~5では、チキソトロピー性が高くなり、かつ、粘度変化比が向上した。
【0067】
比較例1では、従来公知の増粘剤(パルミチン酸デキストリン)を使用したが、前記増粘剤は加熱によるTI値変化比は実施例1~5よりも低かった。
比較例2では、本発明のモノマーを含有しないオイル用増粘剤を用いたが、前記増粘剤は加熱によるTI値変化比は実施例1~5よりも低かった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の化粧用オイル組成物は適度な粘性を有し、チキソトロピー性や加熱による粘度変化特性を有している。そのため、本発明の化粧用オイル組成物は化粧料、医薬品、食品、あるいは工業油剤用途等へと用いることができる。