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特許7251446伝熱部材付基板及び伝熱部材付基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】伝熱部材付基板及び伝熱部材付基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20230328BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230328BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
H05K7/20 F
H05K7/20 D
H05K1/02 F
H01L23/36 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019195337
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021068868
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】原口 章
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-159702(JP,A)
【文献】特開2012-99540(JP,A)
【文献】特開2014-135418(JP,A)
【文献】特開2014-50847(JP,A)
【文献】特開2015-153925(JP,A)
【文献】特開2019-176015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H05K 1/02
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された基板と、
前記貫通孔内に配設された伝熱部材と、
前記基板の一方主面側に実装された発熱部品と、
前記発熱部品を前記伝熱部材の一方端面にはんだ付けするはんだ部と、
を備え、
前記伝熱部材のうち少なくとも前記一方端面にニッケル下地めっき層が形成され、
前記ニッケル下地めっき層の酸化を抑制する金めっき層が、前記はんだ部に混じって、前記はんだ部が前記ニッケル下地めっき層に接合された状態となっており、
前記伝熱部材は、前記一方端面が形成された第1伝熱部と、前記第1伝熱部に対して前記一方端面とは反対側に直接接して接合された第2伝熱部とを備え、
前記第1伝熱部は銅又は銅合金によって形成され、
前記第2伝熱部はアルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、
前記第2伝熱部の表面の少なくとも一部にアルマイト皮膜が形成されており、
前記第2伝熱部は、前記第1伝熱部の周囲に突出する板状に形成されている、伝熱部材付基板。
【請求項2】
請求項1に記載の伝熱部材付基板であって、
前記第2伝熱部のうち前記第1伝熱部の周囲に突出しかつ前記第1伝熱部側を向く面を、前記基板の他方主面に接着する、熱硬化性接着剤をさらに備える、伝熱部材付基板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の伝熱部材付基板であって、
前記基板の他方主面側に配設された放熱部材をさらに備え、
前記伝熱部材の他端部が前記基板の他方主面から突出しており、
前記放熱部材に、前記伝熱部材の前記他端部が収容される凹部が形成され、
前記凹部と前記伝熱部材の前記他端部との間に熱伝導性材料が設けられている、伝熱部材付基板。
【請求項4】
(a)一方端面が形成された第1伝熱部と、前記第1伝熱部に対して前記一方端面とは反対側に直接接して接合された第2伝熱部とを備え、前記第1伝熱部は銅又は銅合金によって形成され、前記第2伝熱部はアルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、少なくとも前記一方端面にニッケル下地めっき層が形成されると共に、前記ニッケル下地めっき層の表面に前記ニッケル下地めっき層の酸化を抑制する金めっき層が形成され、前記第2伝熱部の表面の少なくとも一部にアルマイト皮膜が形成されており、前記第2伝熱部は、前記第1伝熱部の周囲に突出する板状に形成されている、伝熱部材を準備するステップと、
(b)前記伝熱部材を基板における貫通孔に挿入するステップと、
(c)発熱部品を前記伝熱部材の前記一方端面にはんだ付けするステップと、
を備える伝熱部材付基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の伝熱部材付基板の製造方法であって、
前記ステップ(a)において、前記金めっき層を、0.01μm以上0.03μm以下の厚みに形成する、伝熱部材付基板の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の伝熱部材付基板の製造方法であって、
前記伝熱部材は、前記一方端面とは反対側の端部でつば状に突出するつば状部を含み、
前記ステップ(b)の後、前記ステップ(c)の前に、前記つば状部を前記基板の他方主面に、熱硬化性接着剤によって接着する、伝熱部材付基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝熱部材付基板及び伝熱部材付基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配線基板の伝熱部材嵌込み孔に伝熱部材が圧入されること、伝熱部材は、銅板等の熱伝導性のよい材質から形成されること、発熱部品が伝熱部材にはんだ付けされることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-170493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝熱部材付基板において、発熱部品の熱性能を改善することが要請されている。
【0005】
そこで、本開示は、発熱部品の熱性能を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の伝熱部材付基板は、貫通孔が形成された基板と、前記貫通孔内に配設された伝熱部材と、前記基板の一方主面側に実装された発熱部品と、前記発熱部品を前記伝熱部材の一方端面にはんだ付けするはんだ部と、を備え、前記伝熱部材のうち少なくとも前記一方端面にニッケル下地めっき層が形成され、前記ニッケル下地めっき層の酸化を抑制する金めっき層が、前記はんだ部に混じって、前記はんだ部が前記ニッケル下地めっき層に接合された状態となっている、伝熱部材付基板である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、発熱部品の熱性能が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態に係る伝熱部材付基板を示す斜視図である。
図2図2図1におけるII-II線断面図である。
図3図3は伝熱部材を示す斜視図である。
図4図4は伝熱部材を示す分解斜視図である。
図5図5は基板を示す斜視図である。
図6図6は基板に伝熱部材が挿入される工程を示す図である。
図7図7は基板に伝熱部材が挿入される工程を示す図である。
図8図8は伝熱部材に発熱部品がはんだ付けされる工程を示す図である。
図9図9は発熱部品が実装された基板を示す図である。
図10図10は伝熱部材に発熱部品がはんだ付けされる工程を示す断面図である。
図11図11は基板に他の部品が実装される工程を示す図である。
図12図12は部品が実装された基板を示す平面図である。
図13図13は部品が実装された基板を示す底面図である。
図14図14は放熱部材が基板に組付けられる工程を示す図である。
図15図15は放熱部材が基板に組付けられる工程を示す図である。
図16図16は実施例におけるボイドを示す図である。
図17図17は例におけるボイドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の伝熱部材付基板は、次の通りである。
【0011】
(1)貫通孔が形成された基板と、前記貫通孔内に配設された伝熱部材と、前記基板の一方主面側に実装された発熱部品と、前記発熱部品を前記伝熱部材の一方端面にはんだ付けするはんだ部と、を備え、前記伝熱部材のうち少なくとも前記一方端面にニッケル下地めっき層が形成され、前記ニッケル下地めっき層の酸化を抑制する金めっき層が、前記はんだ部に混じって、前記はんだ部が前記ニッケル下地めっき層に接合された状態となっており、前記伝熱部材は、前記一方端面が形成された第1伝熱部と、前記第1伝熱部に対して前記一方端面とは反対側に接合された第2伝熱部とを備え、前記第1伝熱部は銅又は銅合金によって形成され、前記第2伝熱部はアルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、前記第2伝熱部の表面の少なくとも一部にアルマイト皮膜が形成されており、前記第2伝熱部は、前記第1伝熱部の周囲に突出する板状に形成されている、伝熱部材付基板である。
【0012】
伝熱部材の一方端面にニッケル下地めっき層が形成されている。このニッケル下地めっき層は、金めっき層によって酸化が抑制された状態に保たれ得る。伝熱部材の一方端面に発熱部品がはんだ付けされると、金めっき層は、溶融はんだに混じり、はんだ部がニッケル下地めっき層にはんだ付けされることになる。溶融はんだは、金めっきされたニッケル下地めっき層に対して良好になじんでいき、また、酸化が抑制されたニッケル下地めっき層に良好にはんだ付けされる。結果、伝熱部材の表面においてボイドが発生し難くなる。また、伝熱部材のうち発熱部品が実装される側の部分は、銅又は銅合金によって形成された第1伝熱部であるため、発熱部品から伝熱部材に良好に熱が伝わることができる。伝熱部材のうち発熱部品が実装される側と反対側の部分も、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成された第2伝熱部であるため、伝熱部材に伝わった熱は、基板のうち発熱部品が実装された側とは反対側に向けて良好に伝わることができる。前記第2伝熱部の表面の少なくとも一部にアルマイト皮膜が形成されており、アルマイト皮膜は絶縁性を持つ。このため、第2伝熱部の表面のうちアルマイト皮膜が形成された部分に、ヒートシンク等の放熱部材を配置しても、伝熱部材と放熱部材との間で絶縁性が確保され易い。さらに、前記第2伝熱部は、前記第1伝熱部の周囲に突出する板状に形成されているため、第2伝熱部の熱抵抗が小さくなり、しかも、表面積が大きくなる。上記のようにボイドの発生が抑制されること、及び、第2伝熱部の熱抵抗が小さくなり、しかも、表面積が大きくなることによって、発熱部品で生じた熱が第2伝熱部から放熱部材等を介して効果的に熱が放たれ、熱性能が改善する。
【0013】
(2)前記第2伝熱部のうち前記第1伝熱部の周囲に突出しかつ前記第1伝熱部側を向く面を、前記基板の他方主面に接着する、熱硬化性接着剤をさらに備えてもよい。熱硬化性接着剤によって、伝熱部材が基板に接着されているため、はんだ付け時に伝熱部材が基板から脱落し難い。
【0014】
(3)前記基板の他方主面側に配設された放熱部材をさらに備え、前記伝熱部材の他端部が前記基板の他方主面から突出しており、前記放熱部材に、前記伝熱部材の前記他端部が収容される凹部が形成され、前記凹部と前記伝熱部材の前記他端部との間に熱伝導性材料が設けられていてもよい。この場合、前記凹部と前記伝熱部材の他端部との間に熱伝導性材料が設けられるため、伝熱部材と放熱部材との間で、熱伝導性材料の配設状況が安定する。これにより、放熱部材を介した放熱性能が安定する。
【0015】
また、本開示の伝熱部材付基板の製造方法は、次の通りである。
【0016】
(4)一方端面が形成された第1伝熱部と、前記第1伝熱部に対して前記一方端面とは反対側に接合された第2伝熱部とを備え、前記第1伝熱部は銅又は銅合金によって形成され、前記第2伝熱部はアルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、少なくとも前記一方端面にニッケル下地めっき層が形成されると共に、前記ニッケル下地めっき層の表面に前記ニッケル下地めっき層の酸化を抑制する金めっき層が形成され、前記第2伝熱部の表面の少なくとも一部にアルマイト皮膜が形成されており、前記第2伝熱部は、前記第1伝熱部の周囲に突出する板状に形成されている、伝熱部材を準備するステップと、(b)前記伝熱部材を基板における貫通孔に挿入するステップと、(c)発熱部品を前記伝熱部材の前記一方端面にはんだ付けするステップと、を備える伝熱部材付基板の製造方法である。
【0017】
伝熱部材の一方端面にニッケル下地めっき層が形成されている。このニッケル下地めっき層は、金めっき層によって酸化が抑制された状態に保たれている。伝熱部材の一方端面に発熱部品がはんだ付けされると、金めっき層は、溶融はんだに混じり、はんだ部がニッケル下地めっき層にはんだ付けされることになる。このため、はんだ部は金めっき層に対して良好になじんでいき、また、酸化が抑制されたニッケル下地めっき層に良好にはんだ付けされる。結果、伝熱部材の表面においてボイドが発生し難くなる。また、伝熱部材のうち発熱部品が実装される側の部分は、銅又は銅合金によって形成された第1伝熱部であるため、発熱部品から伝熱部材に良好に熱が伝わることができる。伝熱部材のうち発熱部品が実装される側と反対側の部分も、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成された第2伝熱部であるため、伝熱部材に伝わった熱は、基板のうち発熱部品が実装された側とは反対側に向けて良好に伝わることができる。前記第2伝熱部の表面の少なくとも一部にアルマイト皮膜が形成されており、アルマイト皮膜は絶縁性を持つ。このため、第2伝熱部の表面のうちアルマイト皮膜が形成された部分に、ヒートシンク等の放熱部材を配置しても、伝熱部材と放熱部材との間で絶縁性が確保され易い。さらに、前前記第2伝熱部は、前記第1伝熱部の周囲に突出する板状に形成されているため、第2伝熱部の表面積が大きくなる。これにより、第2伝熱部から放熱部材等を介して効果的に熱が放たれる。
【0018】
(5)前記ステップ(a)において、前記金めっき層を、0.01μm以上0.03μm以下の厚みに形成してもよい。はんだ付け時にはんだに混じる程度に薄い金めっき層を形成できる。
【0019】
(6)前記伝熱部材は、前記一方端面とは反対側の端部でつば状に突出するつば状部を含み、前記ステップ(b)の後、前記ステップ(c)の前に、前記つば状部を前記基板の他方主面に、熱硬化性接着剤によって接着してもよい。熱硬化性接着剤によって、伝熱部材が基板に接着されるため、はんだ付け時に伝熱部材が基板から脱落し難い。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の伝熱部材付基板及び伝熱部材付基板の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
[実施形態]
以下、実施形態に係る伝熱部材付基板及び伝熱部材付基板の製造方法について説明する。図1は伝熱部材付基板10を示す斜視図である。図2図1におけるII-II線断面図である。
【0022】
伝熱部材付基板10は、例えば、電気接続箱に組込まれる基板である。電気接続箱は、例えば、自動車において、電源と各種電装品との間の電力供給路に設けられる。
【0023】
伝熱部材付基板10は、基板20と、伝熱部材30と、発熱部品40と、はんだ部50とを備える。
【0024】
基板20は、板状に形成される。基板20には、両面側に開口する貫通孔21hが形成される。より具体的には、基板20は、絶縁材料によって形成された絶縁板22を含む。絶縁板22に貫通孔21hが形成されている。絶縁板22の一方主面(図1及び図2では上面)に銅箔等の金属によって形成された導電層23が形成される。導電層23は、発熱部品40が半田付される領域、及び、所定の配線回路をなす領域に形成される。後に参照される図5図6図8等では、発熱部品40が実装される領域における導電層23が図示される。貫通孔21hの内周面にも導電層25が形成されている。貫通孔21hの一方側開口周縁部において、導電層25は導電層23に繋がっていてもよい。
【0025】
絶縁板22の他方主面(図2では下面)にも導電層が形成されてもよい。絶縁板22の厚み方向の中間層にも導電層が形成されてもよい。
【0026】
本実施形態では、貫通孔21hは、円孔形状に形成されている。貫通孔21hが円孔形状であることは必須ではなく、楕円孔形状、多角形孔形状等に形成されていてもよい。
【0027】
基板20の一方主面側に発熱部品40が実装される。発熱部品40は、発熱する部品であり、例えば、電界効果トランジスタ(以下「FET」とも称す:field effect transistor)で例示される半導体スイッチング(switching)素子である。素子は、抵抗であってもよいし、コイルであってもよいし、コンデンサであってもよい。
【0028】
発熱部品40は、素子本体と、端子とを備える。端子は、素子本体のうち基板20に実装される面側に設けられている。上記導電層23のうち貫通孔21hの周りに形成された部分は、端子に応じた形状に形成される。例えば、端子は、方形状に広がる領域に設けられており、導電層23のうち貫通孔21hの周りに形成された部分も、当該端子と同じように方形状に広がる領域に形成される。端子の全体が導電層23に半田付された状態で、発熱部品40が基板20に実装される。
【0029】
発熱部品40は、素子本体から突出する他の端子を有していてもよい。当該他の端子も、基板20の一方主面に形成された他の導電層23に対して半田付けされるとよい。
【0030】
伝熱部材30は、金属によって形成されている。伝熱部材30のうち半田付される部分は、銅又は銅合金によって形成されていることが好ましい。伝熱部材30は、貫通孔21h内に配設される。すなわち、伝熱部材30は、貫通孔21hの内部空間に応じた形状部分を有している。伝熱部材30が貫通孔21h内に配設された状態で、伝熱部材30の一方端面が、基板20における一方主面側に露出する。ここでは、基板20の一方主面と伝熱部材30の一方端面とが面一となる。伝熱部材30の一方端面は、基板20の一方主面側に実装された発熱部品40に対して基板20側から対向する。伝熱部材30の一方端面は、基板の一方主面において貫通孔21hを囲むように形成された導電層23によって囲まれている。発熱部品40の端子は、貫通孔21hの周囲において導電層23にはんだ付けされると共に、伝熱部材30の一方端面にもはんだ付けされる。
【0031】
はんだ部50は、発熱部品40の端子と伝熱部材30の一方端面とをはんだ付けする部分である。はんだはスズを主成分としており、従って、はんだ部50もスズを主成分としている。
【0032】
伝熱部材30のうち少なくとも一方端面には、ニッケル下地めっき層33が形成されている(図10参照)。はんだ部50は、伝熱部材30側でニッケル下地めっき層33に接合された状態となっている。また、ニッケル下地めっき層33の酸化を抑制する金めっき層34(図10参照)がはんだ部50に混じった状態となっている。金めっき層34は、極めて短時間に行う薄いめっき方法によって形成される。換言すれば、金めっき層34は、はんだ付けによってはんだに溶解してしまう程度に薄いめっき層である。金めっき層34は、ニッケル下地めっき層33とはんだ部50との間に残存していてもよい。
【0033】
図3は伝熱部材30を示す斜視図であり、図4は伝熱部材30を示す分解斜視図である。より具体的には、図1から図4に示すように、伝熱部材30は、第1伝熱部32と、第2伝熱部36とを備える。第1伝熱部32は、伝熱部材30の上記一方端面が形成された部分である。第2伝熱部36は、第1伝熱部32に対して上記一方端面とは反対側に接合される部分である。
【0034】
第1伝熱部32は、貫通孔21h内に収った状態で配置可能な形状に形成されている。ここでは、第1伝熱部32は円柱状に形成されている。第1伝熱部32の高さは、基板20の厚みと同じに形成されている。第1伝熱部32の直径は、貫通孔21hの直径と同じか小さく(僅かに小さく)形成されている。第1伝熱部32は、その一方端面を基板20の一方主面と面一になるようにした状態で、貫通孔21h内に配置される。上記第1伝熱部32は、銅又は銅合金によって形成されているとよい。これにより、第1伝熱部32が発熱部品40に良好にはんだ付けされる。また、第1伝熱部32が貫通孔21h内の導電層25に良好にはんだ付けされてもよい。また、銅又は銅合金によって形成された第1伝熱部32は、良好な熱伝導性を有している。なお、第1伝熱部32の寸法は、貫通孔21hに対して圧入されるように設定されていてもよいし、貫通孔21hに対して間隔をあけた状態で挿入される設定であってもよい。
【0035】
第2伝熱部36は、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成されているとよい。また、第2伝熱部36の表面の少なくとも一部にアルマイト皮膜37が形成されているとよい。アルミニウム又はアルミニウム合金の熱伝導性は、銅又は銅合金よりは劣るが、その他の一般的な絶縁材料、例えば、樹脂等よりは良好である。このため、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成された第2伝熱部36も、良好な熱伝導性を有している。また、アルマイト皮膜37は、絶縁性を示す。このため、第2伝熱部36の表面の少なくとも一部に絶縁性を持たせることができる。アルマイト皮膜37は、少なくとも第2伝熱部36の他方端面(放熱部材60に対向する面)に形成されていることが好ましい。アルマイト皮膜37は、第2伝熱部36の周面にも形成されていてもよい。
【0036】
第1伝熱部32と第2伝熱部36とを接合する構成は、特に限定されない。例えば、第1伝熱部32と第2伝熱部36とは、異種金属同士の接合方法、例えば拡散接合法や圧延接合法を用いて接合されてもよい。または、平板状の銅板材とアルミニウム板材を拡散接合したクラッド材を、研削加工にて伝熱部材30の形状に加工してもよい。
【0037】
伝熱部材30のうちの他端部は、基板20の他方主面から突出している。ここでは、第2伝熱部36は、第1伝熱部32の周囲に突出する板状に形成されている。第2伝熱部36が基板20の他方主面から突出する。第2伝熱部36は、円板状に形成されている。第1伝熱部32が貫通孔21hに挿入された状態で、第2伝熱部36が貫通孔21hの周囲で基板20の他方主面に当接することができる。これにより、基板20の厚み方向において、伝熱部材30の位置決めがなされる。第2伝熱部36は楕円板状、多角形板状であってもよい。第2伝熱部は、第1伝熱部の周囲に張出している必要は無い。
【0038】
第2伝熱部36のうち第1伝熱部32の周囲に突出しかつ第1伝熱部32側を向く面は、基板20の他方主面に対して、熱硬化性接着剤28によって接着されていてもよい。熱硬化性接着剤28は、熱によって硬化し、再加熱しても柔らかくならない。このため、第2伝熱部36を熱硬化性接着剤28によって基板20に接着しておけば、はんだ付けの際に伝熱部材30及び基板20が加熱されても、伝熱部材30が基板20から脱落し難い。
【0039】
なお、図1及び図2等において、基板20には、発熱部品40以外の部品48も実装されている。部品48は、基板20の配線を他に接続する端子、コネクタ等である。
【0040】
また、ここでは、基板20の他方主面側に放熱部材60が配設されている。放熱部材60は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の熱伝導性が良好な材質によって形成されている。放熱部材60は、板部62と、放熱構造部64とを備える。板部62は、平たい面を有しており、当該平たい面が基板20の他方主面に対向して配設される。放熱構造部64は、表面積を大きくするための形状、例えば、フィン構造を有している。放熱部材60に伝わった熱は、放熱構造部64から外部に放たれる。
【0041】
放熱部材60が基板20の他方主面に配設された状態で、放熱部材60の一方主面と基板20の他方主面との間に絶縁スペーサ68が介在される。絶縁スペーサ68は、伝熱部材30が設けられた部分を除き、放熱部材60の一方主面全体に広がっていてもよいし、部分的に設けられてもよい。ここでは、絶縁スペーサ68は、放熱部材60の一方主面のうち4つのコーナー部分に設けられる。
【0042】
放熱部材60の一方主面に、伝熱部材30の他端部、ここでは、第2伝熱部36が収容される凹部63が形成される。ここでは、凹部63は、有底円穴状に形成されている。凹部63の径は、第2伝熱部36の径と同じかこれよりも大きい(僅かに大きい)。また、放熱部材60の一方主面と基板20の他方主面とが、絶縁スペーサ68を介して対向した状態で、凹部63の底面は、伝熱部材30の他端面に対して間隔をあけた位置に設けられる。より具体的には、第2伝熱部36は、基板20の他方主面から突出し、凹部63内に部分的に収納されている。凹部63内の底側に熱伝導性材料69が設けられる。熱伝導性材料69は、サーマルインターフェースマテリアル(TIM)とも呼ばれる材料である。具体的には、熱伝導性材料69は、例えば、シリコーン樹脂を用いた熱伝導性シート、熱伝導性グリース等である。凹部63内において、伝熱部材30の他端面(第2伝熱部36の外向き端面)と凹部63の底面との間に熱伝導性材料69が介在する。第2伝熱部36に伝わった熱は、熱伝導性材料69を介して、放熱部材60に伝わることができる。
【0043】
上記伝熱部材付基板10の製造方法の一例について説明する。
【0044】
まず、伝熱部材30を準備する(ステップ(a)、図3及び図4参照)。上記したように、はんだ付け前の状態において、伝熱部材30の少なくとも一方端面にニッケル下地めっき層33が形成されている。また、ニッケル下地めっき層33の表面に金めっき層34が形成されている。
【0045】
より具体的な例として、伝熱部材30のうち第1伝熱部32は、純銅(合金番号C1020)等によって形成される。第1伝熱部32の大きさは、基板20に実装される発熱部品40の大きさに合わせられる。例えば、発熱部品40がJEDEC(Joint Electron Device Engineering Council standards)の規格品の1つであるパッケージTO-263に応じたMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)であるとする。この場合、発熱部品40のドレイン電極の寸法は、おおよそ縦6mm、横6mmとなるので、第1伝熱部32の外径は6mmに設定されるとよい。
【0046】
なお、伝熱部材の外径が大きいほど、熱抵抗は小さくなり、温度が伝わり易くなる。しかしながら、発熱部品40のサイズに合わせると、伝熱部材30の第1伝熱部32を大きくすることは困難であり、熱抵抗が大きくなる。
【0047】
第1伝熱部32の軸方向長さは、基板20にはんだ付けされた状態で伝熱部材30の一方端面が基板20の導電層(ランドとも呼ばれる)23と同一面上に揃って配置されるように、基板20の厚みと同じとするとよい。たとえば、基板20の厚みが2mmである場合、第1伝熱部32の軸方向長さは2mmである。
【0048】
第2伝熱部36の表面をマスキングした状態で、第1伝熱部32の表面処理がなされる。ここでは、第1伝熱部32の表面のうち第2伝熱部36への接合部分を除く部分、即ち、第1伝熱部32の一方端面及び周面の全体に表面処理がなされる。表面処理として、第1伝熱部32に無電解ニッケル下地フラッシュ金めっき処理が施される。無電解ニッケル下地金めっき処理によって形成されるニッケル下地めっき層33の厚みは、例えば、1μm以上3μm以下であり、金めっき層34の厚みは、例えば、0.01μm以上0.03μm以下である。
【0049】
第2伝熱部36は、アルミニウム(合金番号A1050)等によって形成される。第2伝熱部36の外径は、伝熱部材30を基板20にはんだ付けした状態で、放熱部材60等と干渉しないような大きさに設定されることが好ましい。例えば、第2伝熱部36の外径は、20mmに設定される。第2伝熱部36の厚みは、熱容量を大きくできるように、なるべく大きく設定するとよい。もっとも、第2伝熱部36の熱容量が大きくなり過ぎると、はんだ付け時のリフロー設定温度を高く設定する必要があり、そうすると、リフロー設定温度が他の実装部品の耐熱温度を超える恐れが生じる。第2伝熱部36の厚みは、それらを考慮した範囲内で設定されることが好ましく、例えば、20mmに設定されるとよい。
【0050】
第2伝熱部36の表面には、陽極酸化処理等によるアルマイト加工処理が施される。これにより、第2伝熱部36の他端面及び周面に、アルマイト皮膜37が形成される。アルマイト皮膜37の厚みは、例えば、20μm以上70μm以下である。
【0051】
伝熱部材30とは別に、図5に示すような基板20が準備される。基板20には、貫通孔21hが形成される。基板20には、上記導電層23、25が形成される。貫通孔21hの外径は、伝熱部材30の第1伝熱部32を装着可能な大きさに設定される。導電層23、25の表面には、第1伝熱部32の表面と同じように、無電解ニッケル下地フラッシュ金めっき処理が施されてもよい。この場合のニッケル下地めっき層の厚みは1μm以上3μm以下に設定されるとよい。金めっき層の厚みは0.01μm以上0.03μm以下に設定されてもよい。基板20には、導電層23によって電源回路及び信号回路が形成される。基板20には、電源回路及び信号回路を外部回路と接続するための電源端子、信号端子等の部品48を取付けるためのスルーホールが形成されている。
【0052】
次に、図6及び図7に示すように、伝熱部材30が、基板20における貫通孔21hに挿入される(ステップ(b))する。伝熱部材30は、基板20の他方主面側から挿入される。ここでは、8つの貫通孔21hが形成され、それぞれの貫通孔21hに伝熱部材30が挿入される。
【0053】
はんだ付けの際に、伝熱部材30が脱落しないように、第2伝熱部36と基板20とが熱硬化性接着剤28によって接着されるとよい。熱硬化性接着剤28としては、例えば、熱硬化性エポキシ接着剤が用いられる。熱硬化性接着剤28の塗布領域は、基板20と第2伝熱部36との接触領域、すなわち、基板20の他方主面のうち貫通孔21hの周り部分と第2伝熱部36のうち基板20の面との接触部分である。熱硬化性接着剤28は、第1伝熱部32と貫通孔21hとの間には流れ込まないようにすることが好ましい。
【0054】
図8及び図9に示すように、発熱部品40が、伝熱部材30の一方端面にはんだ付けされる(ステップ(C))。より具体的には、基板20の一方主面において、発熱部品40の一方端面が露出すると共にその周囲の導電層23の一部(ランド)が一体的に広がっており、これらの表面に、発熱部品40の端子(ここではMOSFETのドレイン端子)がはんだ付けされる。発熱部品40の他の端子(ここではMOSFETのソース端子、ゲート端子)が、基板20の一方主面における導電層23の他の部分(ランド)にはんだ付けされる。はんだ付けは、例えば、リフローはんだ付けによりなされる。
【0055】
ここで、図10に示すように、第1伝熱部32の表面には、ニッケル下地金フラッシュめっき処理が施されている。つまり、第1伝熱部32の表面には、ニッケル下地めっき層33が形成される。ニッケル下地めっき層33の表面に金めっき層34が形成される。金めっき層34の表面にはんだペースト50aが塗布され、その上に発熱部品40が置かれた状態で加熱される。これにより、第1伝熱部32に発熱部品40の端子がはんだ付けされると、最表面の金めっき層34がはんだに溶解した状態で、当該はんだがニッケル下地めっき層33にはんだ付けされる。このため、溶けたはんだは、第1伝熱部32の表面に良好になじむことができ、ボイドの発生要因とされる金属酸化物が発生し難くなり、第1伝熱部32と発熱部品40との間にボイドが発生し難い。導電層23、25の表面にも、ニッケル下地金フラッシュめっきが施されていれば、同様に、ボイドが発生し難い。伝熱部材30と発熱部品40との間のはんだ部50に、空気層であるボイドが発生し難くなる結果、伝熱部材30と発熱部品40との間で、熱抵抗の上昇、ばらつきが抑えられる。
【0056】
また、伝熱部材30の表面におけるはんだ濡れ性が向上することから、第1伝熱部32と貫通孔21hの隙間にも溶けたはんだが流れ込み易くなり、第1伝熱部32と貫通孔21hとの間で強固な接合状態が得られる。このため、伝熱部材30と基板20との間で接続信頼性が向上する。例えば、冷熱サイクル試験によるクラックの発生が低減する。
【0057】
この後、図11図12及び図13に示されるように、電源端子、信号端子等の部品48が基板20にはんだ付けされる。
【0058】
この後、図14及び図15に示すように、放熱部材60が基板20の他方主面側に組付けられる。放熱部材60と基板20との固定は、ネジ止によってなされてもよいし、接着剤によってなされてもよい。
【0059】
放熱部材60には、上記凹部63が形成されている。凹部63内には、熱伝導性材料69が配置される。ここでは、熱伝導性材料69として、例えば、熱伝導率が2W/m・K以上、粘度が50Pa・s以上500Pa・s以下の粘度を有する、熱伝導性シリコーングリースが用いられる。熱伝導性シリコーングリースは、凹部63の底部全面を覆うように塗布される。この後、第2伝熱部36の他方主面を凹部63の奥に向けて押込み、熱伝導性材料69の厚みが0.5mm以上1.0mm以下になるように管理する。熱伝導性材料69は、凹部63内に収っているため、第2伝熱部36と放熱部材60との間で熱伝導性材料69の介在状態が安定する。特に、熱伝導性材料69が流動体である場合、流動体が凹部63内に安定して収っているため、熱伝導性材料69が周りに大きく広がったりし難い。
【0060】
本伝熱部材付基板10では、発熱部品40で生じた熱は、第1伝熱部32から第2伝熱部36、さらに、熱伝導性材料69を経由して、放熱部材60に移動する。熱は、主に放熱部材60において外部に放たれる。
【0061】
ここで、熱抵抗は、次式で表される。
【0062】
熱抵抗(℃/W)=厚み(m)÷{断面積(m)×熱伝導率(W/mK)}
このため、断面積(上記接触面積)が大きくなれば熱抵抗が小さくなること、熱伝導率が大きくなれば熱抵抗が小さくなることがわかる。
【0063】
伝熱部材30における第1伝熱部32の材質が銅(合金番号C1020)であるとすると、熱伝導率は398W/mKである。第2伝熱部36の材質がアルミニウム(合金番号A1050)であるとすると、熱伝導率は236W/mKである。しかしながら、第2伝熱部36のうちアルマイト皮膜37の熱伝導率は、未処理時の約1/3相当の80W/mKまで下がる。仮に、第2伝熱部36の材料が銅であれば、絶縁処理として電着塗装等によって表面に樹脂をコーティングする必要がある。その場合、熱伝導率は0.4W/mK程度と大きく下がってしまう。このため、第2伝熱部36の材料として、アルミニウム或はアルミニウム合金を選択し、その表面においてアルマイト皮膜37によって絶縁を図ることで、絶縁性を確保しつつ熱伝導率を大きくできることがわかる。熱伝導率が大きくなれば、上記式から熱抵抗を小さく抑えることができることがわかる。
【0064】
さらに、第1伝熱部32の外径に対して第2伝熱部36の外径を大きくすること、例えば、第1伝熱部32の外径6mmに対して第2伝熱部36の外径を20mmとすることで、伝熱部材30が熱伝導性材料69を介して放熱部材60に接触する面積(熱が伝わる部分の断面積)も大きくすることができる。このように、伝熱部材30と放熱部材60との接触面積(断面積)を大きくすることによっても、上記式から、熱抵抗を小さくできるころがわかる。
【0065】
以上のように伝熱部材付基板10及び伝熱部材付基板10の製造方法によると、伝熱部材30の一方端面にニッケル下地めっき層33が形成されている。このニッケル下地めっき層33は、金めっき層34によって酸化が抑制された状態に保たれ得る。伝熱部材30の一方端面に発熱部品40がはんだ付けされると、金めっき層34は、溶融はんだに混じり、はんだ部50がニッケル下地めっき層33にはんだ付けされることになる。溶融はんだは、金めっきされたニッケル下地めっき層33に対して良好になじんでいき、また、酸化が抑制されたニッケル下地めっき層33に良好にはんだ付けされる。結果、伝熱部材30の表面においてボイドが発生し難くなる。これにより、熱抵抗の上昇及びばらつきが抑制される。
【0066】
なお、上記金めっき層34が無いと、銅等で形成された伝熱部材の表面には酸化膜が形成される。このため、伝熱部材の表面に対するはんだ濡れ性が阻害される。はんだ濡れ性が阻害されると、伝熱部材の表面においてボイドが発生し易くなる。
【0067】
また、伝熱部材30の周面にニッケル下地めっき層33及び金めっき層34が形成されていると、伝熱部材30と貫通孔21hとの隙間にも溶融はんだが流れ込み易くなり、伝熱部材30と基板20との接合がより強固になる。
【0068】
また、伝熱部材30のうち発熱部品40が実装される側の部分は、銅又は銅合金によって形成された第1伝熱部32であるため、発熱部品40から伝熱部材30に良好に熱が伝わることができる。伝熱部材30のうち発熱部品40が実装される側と反対側の部分も、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成された第2伝熱部36であるため、伝熱部材30に伝わった熱は、反対側の主面に向けて良好に伝わることができる。第2伝熱部36の表面の少なくとも一部にアルマイト皮膜37が形成されており、アルマイト皮膜37は絶縁性を持つ。このため、第2伝熱部36の表面のうちアルマイト皮膜37が形成された部分に、ヒートシンク等の放熱部材60を配置しても、伝熱部材30と放熱部材60との間で絶縁性を確保し易い。よって、伝熱部材30と放熱部材60との間で絶縁性が確保されつつ、伝熱部材30から放熱部材60に熱が伝わりや易い。

【0069】
また、熱伝導性材料69の絶縁性、熱伝導性材料69に生じたピンホールの有無に関係無く、アルマイト皮膜37によって、伝熱部材30と放熱部材60との間の絶縁性が確保される。
【0070】
また、第2伝熱部36は、第1伝熱部32の周囲に突出する板状に形成されている。このため、第2伝熱部36の他方主面の表面積が大きくなる。これにより、伝熱部材30と放熱部材60との接触面積が大きくなり、伝熱部材30から放熱部材60等を介して効果的に熱が放たれる。
【0071】
また伝熱部材30と基板20とが熱硬化性接着剤28によって接着されているため、はんだ付け時に、伝熱部材30が基板から脱落し難い。
【0072】
また、放熱部材60に凹部63が形成されており、凹部63の底部と伝熱部材30の他端部との間に熱伝導性材料69が介在している。このため、伝熱部材30と放熱部材60との間で、熱伝導性材料69の介在状態が安定化する。これにより、放熱部材60を介して放熱性能が安定する。
【0073】
特に、熱伝導性材料69が熱伝導性グリース等の流動体である場合、伝熱部材30、基板20の熱膨張、熱収縮等によって、伝熱部材30と放熱部材60との間隔が変化する恐れがある。この間隔が変化すると、熱伝導性グリース等の広がり方が変動してしまう恐れがある。熱伝導性グリース等の流動体が凹部63内に充填されていると、伝熱部材30、基板20の熱膨張、熱収縮が生じても、凹部63内に収った状態に保たれ易い。このため、伝熱部材30から放熱部材60への熱伝導性が安定する。
【0074】
[実験例]
伝熱部材30における第1伝熱部32の表面に無電解ニッケル下地フラッシュ金めっき処理を施した実施例と、表面に無電解ニッケル下地フラッシュ金めっき処理が施されない伝熱部材130に係る例について、発熱部品40をはんだ付けしてみた。
【0075】
前者の実施例では、図16に示すように、ボイド100はほとんど発生せず、発生したとしても小さいボイドが発生する程度であった。
【0076】
後者の例では、図17に示すように、ボイド100が数多く、また、大きく発生した。
【0077】
このため、無電解ニッケル下地フラッシュ金めっき処理を施した場合、ボイド100の発生が有効に抑制されることがわかった。
【0078】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0079】
10 伝熱部材付基板
20 基板
21h 貫通孔
22 絶縁板
23 導電層
25 導電層
28 熱硬化性接着剤
30 伝熱部材
32 第1伝熱部
33 ニッケル下地めっき層
34 金めっき層
36 第2伝熱部
37 アルマイト皮膜
40 発熱部品
48 部品
50 はんだ部
50a はんだペースト
60 放熱部材
62 板部
63 凹部
64 放熱構造部
68 絶縁スペーサ
69 熱伝導性材料
100 ボイド
130 伝熱部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17