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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/34 20060101AFI20230328BHJP
   B60T 13/16 20060101ALI20230328BHJP
   F16D 55/28 20060101ALI20230328BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20230328BHJP
   F16D 125/14 20120101ALN20230328BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20230328BHJP
   F16D 121/10 20120101ALN20230328BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20230328BHJP
   F16D 121/06 20120101ALN20230328BHJP
【FI】
F16D55/34
B60T13/16
F16D55/28 B
F16D65/18
F16D125:14
F16D121:14
F16D121:10
F16D121:22
F16D121:06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019207423
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021080972
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】松木 孝憲
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-066303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0114461(US,A1)
【文献】特開2007-205390(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1381694(KR,B1)
【文献】特開平10-068436(JP,A)
【文献】特開昭55-111638(JP,A)
【文献】特開2015-154685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
B60T 13/16
H02P 3/04
H02K 7/102
F16D 125/14
F16D 121/14
F16D 121/10
F16D 121/22
F16D 121/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非通電時に回転軸を制動し、通電時に前記回転軸の制動を解除する電磁ブレーキ装置と、前記非通電時に前記回転軸の制動を強制的に解除するブレーキ解除装置とを具備したブレーキシステムであって、
前記電磁ブレーキ装置は、
前記回転軸と一体化されたブレーキディスクと、
前記ブレーキディスクと対向して配置されたステータと、
前記ブレーキディスクに対して前記ステータの反対側に配置されたブレーキ用プレートと、
前記ブレーキディスクと前記ステータとの間に配置され、前記ブレーキ用プレートと協働して前記ブレーキディスクを挟むアーマチュアと、
前記ステータと前記アーマチュアとの間に配置され、前記アーマチュアを前記ブレーキディスクに対して押し付ける方向に付勢する付勢部材と、
前記ステータに設けられ、通電されると励磁する電磁コイルとを備え、
前記ブレーキ解除装置は、
筒状のガイド部材と、
前記ガイド部材の内部に配置され、前記アーマチュアと係合する解除用プレートと、
前記解除用プレートを前記回転軸の延在方向に移動させる移動ユニットとを備え
前記移動ユニットは、前記ガイド部材の内部に配置され、前記回転軸の延在方向に膨張収縮可能な袋体と、前記袋体の内部に空気を供給する空気供給部とを有するブレーキシステム。
【請求項2】
前記解除用プレートの前記電磁ブレーキ装置側の側面の周縁部には、前記アーマチュアに当接する複数の突起部が設けられており、
前記ブレーキ用プレートの周縁部には、前記突起部が通過する複数の切欠部が設けられている請求項1記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記袋体は、前記解除用プレートに固定されていない請求項1または2記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記ブレーキ解除装置は、2つの前記電磁ブレーキ装置の間に配置され、
前記解除用プレートは、前記ガイド部材の内部における前記回転軸の延在方向の両側に配置される請求項1~の何れか一項記載のブレーキシステム。
【請求項5】
非通電時に回転軸を制動し、通電時に前記回転軸の制動を解除する2つの電磁ブレーキ装置と、前記2つの電磁ブレーキ装置の間に配置され、前記非通電時に前記回転軸の制動を強制的に解除するブレーキ解除装置とを具備したブレーキシステムであって、
前記電磁ブレーキ装置は、
前記回転軸と一体化されたブレーキディスクと、
前記ブレーキディスクと対向して配置されたステータと、
前記ブレーキディスクに対して前記ステータの反対側に配置されたブレーキ用プレートと、
前記ブレーキディスクと前記ステータとの間に配置され、前記ブレーキ用プレートと協働して前記ブレーキディスクを挟むアーマチュアと、
前記ステータと前記アーマチュアとの間に配置され、前記アーマチュアを前記ブレーキディスクに対して押し付ける方向に付勢する付勢部材と、
前記ステータに設けられ、通電されると励磁する電磁コイルとを備え、
前記ブレーキ解除装置は、
筒状のガイド部材と、
前記ガイド部材の内部に配置され、前記アーマチュアと係合する解除用プレートと、
前記解除用プレートを前記回転軸の延在方向に移動させる移動ユニットとを備え、
前記解除用プレートは、前記ガイド部材の内部における前記回転軸の延在方向の両側に配置されるブレーキシステム。
【請求項6】
前記解除用プレートの前記電磁ブレーキ装置側の側面の周縁部には、前記アーマチュアに当接する複数の突起部が設けられており、
前記ブレーキ用プレートの周縁部には、前記突起部が通過する複数の切欠部が設けられている請求項記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記移動ユニットは、前記ガイド部材の内部に配置され、前記回転軸の延在方向に膨張収縮可能な袋体と、前記袋体の内部に空気を供給する空気供給部とを有する請求項5または6記載のブレーキシステム。
【請求項8】
前記袋体は、前記解除用プレートに固定されていない請求項7記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記移動ユニットは、前記ガイド部材及び前記解除用プレートにより画成される空間内に作動油を供給する油圧源と、前記空間内から前記作動油を排出するバルブとを有する請求項5または6記載のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブレーキシステムとしては、例えば特許文献1に記載されている無励磁作動型電磁ブレーキが知られている。特許文献1に記載の無励磁作動型電磁ブレーキでは、電磁コイルに電流が供給されないときは、反負荷側ブラケットが励磁されず、アーマチュアが制動ばねの力によってブレーキライニングに圧接するので、ブレーキライニングが回転不能な状態となり、モータ軸が制動される。電磁コイルに電流が供給されると、反負荷側ブラケットが励磁され、アーマチュアが制動ばねの力に抗して反負荷側ブラケット側に吸着されることで、ブレーキライニングから離間するので、ブレーキライニングが回転可能な状態となり、モータ軸の制動状態が解放される。また、無励磁作動型電磁ブレーキは、手動解放装置を備えている。手動解放装置は、アーマチュアを制動ばねの力に抗して移動させてブレーキライニングから離間させる解放カムと、この解放カムを回動させる手動解放アームと、この手動解放アームをブレーキ作動位置で保持するアーム保持金具とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-295551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、無励磁作動型の電磁ブレーキ装置の周りのスペースが狭い場合には、手動解放アームを操作することが困難となり、手動解放装置によりモータ軸(回転軸)の制動を機械的に解除することができない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、電磁ブレーキ装置の周りのスペースが狭くても、回転軸の制動を機械的に解除することができるブレーキシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、非通電時に回転軸を制動し、通電時に回転軸の制動を解除する電磁ブレーキ装置と、非通電時に回転軸の制動を強制的に解除するブレーキ解除装置とを具備したブレーキシステムであって、電磁ブレーキ装置は、回転軸と一体化されたブレーキディスクと、ブレーキディスクと対向して配置されたステータと、ブレーキディスクに対してステータの反対側に配置されたブレーキ用プレートと、ブレーキディスクとステータとの間に配置され、ブレーキ用プレートと協働してブレーキディスクを挟むアーマチュアと、ステータとアーマチュアとの間に配置され、アーマチュアをブレーキディスクに対して押し付ける方向に付勢する付勢部材と、ステータに設けられ、通電されると励磁する電磁コイルとを備え、ブレーキ解除装置は、筒状のガイド部材と、ガイド部材の内部に配置され、アーマチュアと係合する解除用プレートと、解除用プレートを回転軸の延在方向に移動させる移動ユニットとを備える。
【0007】
このようなブレーキシステムにおいては、アーマチュア及びブレーキ用プレートによりブレーキディスクが挟まれることで、回転軸が制動されている状態で、移動ユニットにより解除用プレートが回転軸の延在方向に沿って電磁ブレーキ装置側に移動すると、解除用プレートがアーマチュアをステータ側に押し付ける。すると、アーマチュアが付勢部材の付勢力に抗してステータ側に移動してブレーキディスクから離れるため、回転軸の制動が解除される。これにより、電磁ブレーキ装置の周りのスペースが狭くても、回転軸の制動を機械的に解除することができる。
【0008】
解除用プレートの電磁ブレーキ装置側の側面の周縁部には、アーマチュアに当接する複数の突起部が設けられており、ブレーキ用プレートの周縁部には、突起部が通過する複数の切欠部が設けられていてもよい。このような構成では、移動ユニットにより解除用プレートが電磁ブレーキ装置側に移動すると、解除用プレートの各突起部がブレーキ用プレートの各切欠部を通過してアーマチュアをステータ側に押し付けることになる。従って、ブレーキ用プレートの径が大きくても、アーマチュアの構造を変更することなく、回転軸の制動を解除することができる。
【0009】
移動ユニットは、ガイド部材の内部に配置され、回転軸の延在方向に膨張収縮可能な袋体と、袋体の内部に空気を供給する空気供給部とを有してもよい。このような構成では、空気供給部により袋体の内部に空気が供給されると、袋体が回転軸の延在方向に膨張するため、解除用プレートが袋体により押圧される。このため、解除用プレートは、電磁ブレーキ装置側に移動してアーマチュアをステータ側に押し付ける。このように空気圧を用いて解除用プレートを作動させることにより、低コストで回転軸の制動を解除することができる。
【0010】
袋体は、解除用プレートに固定されていなくてもよい。このような構成では、解除用プレートを予め電磁ブレーキ装置に取り付けておき、袋体が内部に収容されたガイド部材を後から電磁ブレーキ装置に隣接して配置することが可能となる。従って、電磁ブレーキ装置の周りのスペースが十分に狭い箇所でも、ブレーキ解除装置を使用することができる。
【0011】
移動ユニットは、ガイド部材及び解除用プレートにより画成される空間内に作動油を供給する油圧源と、空間内から作動油を排出するバルブとを有してもよい。このような構成では、油圧源からガイド部材及び解除用プレートにより画成される空間内に作動油が供給されると、作動油の油圧により解除用プレートが回転軸の延在方向に沿って電磁ブレーキ装置側に移動する。このため、解除用プレートがアーマチュアをステータ側に押し付ける。このように油圧を用いて解除用プレートを作動させることにより、付勢力が強い付勢部材が使用されている場合でも、回転軸の制動を解除することができる。
【0012】
ブレーキ解除装置は、2つの電磁ブレーキ装置の間に配置され、解除用プレートは、ガイド部材の内部における回転軸の延在方向の両側に配置されてもよい。このような構成では、移動ユニットにより各解除用プレートが対応する電磁ブレーキ装置側に移動すると、各解除用プレートが対応する電磁ブレーキ装置のアーマチュアをステータ側に押し付けるため、各アーマチュアがブレーキディスクから離れる。従って、2つの電磁ブレーキ装置の間のスペースが狭くても、回転軸の制動を同時に解除することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電磁ブレーキ装置の周りのスペースが狭くても、回転軸の制動を機械的に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るブレーキシステムの一部を備えた駆動装置を示す概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るブレーキシステムを示す断面図である。
図3図2に示された電磁ブレーキ装置を示す概略斜視図である。
図4図2に示されたブレーキ解除装置の一部を示す斜視図である。
図5図2に示されたブレーキ解除装置の動作を示す概略断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るブレーキシステムを示す断面図である。
図7図6に示された油圧駆動ユニットの油圧回路を示す図である。
図8図7に示された油圧駆動ユニットの油圧回路の変形例を示す図である。
図9図2に示されたブレーキシステムの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図中、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係るブレーキシステムの一部を備えた駆動装置を示す概略構成図である。図1において、駆動装置1は、車両に搭載されている。駆動装置1は、左右2つの車輪2をそれぞれ回転駆動させる2つのモータ3と、モータ3と車輪2との間に配置された2つの減速機4と、2つのモータ3の間に配置された2つの電磁ブレーキ装置6とを具備している。電磁ブレーキ装置6は、例えば車両のパーキングブレーキとして使用される。
【0017】
図2は、本発明の第1実施形態に係るブレーキシステムを示す断面図である。図1及び図2において、本実施形態のブレーキシステム5は、上記2つの電磁ブレーキ装置6と、2つの電磁ブレーキ装置6の間に配置されたブレーキ解除装置7とを具備している。
【0018】
電磁ブレーキ装置6は、非通電時にモータ3の回転軸8を制動し、通電時にモータ3の回転軸8の制動を解除する無励磁作動型の電磁ブレーキである。ブレーキ解除装置7は、非通電時にモータ3の回転軸8の制動を強制的に解除する装置である。
【0019】
電磁ブレーキ装置6は、図2及び図3に示されるように、ブレーキディスク10と、ステータ11と、ブレーキ用プレート12と、アーマチュア13と、複数のコイルバネ14と、電磁コイル15とを備えている。
【0020】
ブレーキディスク10は、モータ3の回転軸8と円筒状の固定部16を介して一体化されている。ブレーキディスク10は、モータ3の回転軸8と一緒に回転する。
【0021】
ステータ11は、ブレーキベース17に取り付けられている。ステータ11は、アーマチュア13を挟んでブレーキディスク10と対向して配置されている。ステータ11には、モータ3の回転軸8を貫通させる貫通孔11aが設けられている。
【0022】
ブレーキ用プレート12は、ブレーキディスク10に対してステータ11の反対側(ブレーキ解除装置7側)に配置されている。ブレーキ用プレート12は、特に図示はしないが、例えば複数のネジにより固定部を介してステータ11に固定されている。ブレーキ用プレート12の周縁部には、後述する突起部24が通過する複数(ここでは3つ)の切欠部18が設けられている。切欠部18は、例えばU字状を呈している。
【0023】
アーマチュア13は、ブレーキディスク10とステータ11との間に配置されている。アーマチュア13は、特に図示はしないが、例えばステータ11を固定する固定部(前述)に回転軸8の延在方向(図2中のA方向)に移動可能に支持されている。アーマチュア13は、ブレーキ用プレート12と協働して回転軸8の延在方向にブレーキディスク10を挟む。
【0024】
コイルバネ14は、ステータ11とアーマチュア13との間に配置されている。具体的には、コイルバネ14の一端は、ステータ11に設けられたバネ収容穴19の底部に接触している。コイルバネ14の他端は、アーマチュア13に接触している。コイルバネ14は、アーマチュア13をブレーキディスク10に対して押し付ける方向に付勢する付勢部材である。
【0025】
電磁コイル15は、ステータ11に設けられている。電磁コイル15に電流が流れていない状態では、コイルバネ14の付勢力によりアーマチュア13がブレーキディスク10側に押されるため、アーマチュア13がブレーキ用プレート12と共にブレーキディスク10を挟み込み、モータ3の回転軸8に制動力が発生する。
【0026】
電磁コイル15に電流が流れると、電磁コイル15が励磁されるため、アーマチュア13がコイルバネ14の付勢力に抗してステータ11に引き付けられる。従って、アーマチュア13がブレーキディスク10から離間するため、モータ3の回転軸8の制動が解除される。
【0027】
ブレーキ解除装置7は、図2及び図4に示されるように、円筒状のガイド部材20と、2つの解除用プレート21と、袋体22と、エアーポンプ23とを備えている。
【0028】
解除用プレート21は、ガイド部材20の内部におけるモータ3の回転軸8の延在方向の両側に回転軸8の延在方向に移動可能に配置されている。モータ3の回転軸8の延在方向は、ガイド部材20の軸方向に相当する。解除用プレート21は、アーマチュア13と係合する円形状のプレートである。
【0029】
解除用プレート21の外側面21aの周縁部には、ブレーキ用プレート12の切欠部18を通過してアーマチュア13に当接する複数(ここでは3つ)の突起部24が設けられている。解除用プレート21の外側面21aは、解除用プレート21の電磁ブレーキ装置6側の面である。突起部24は、例えば円柱状を呈している。
【0030】
袋体22は、ガイド部材20の内部における2つの解除用プレート21の間に配置されている。袋体22は、ゴム等の弾性体により形成されている。袋体22は、空気圧によってガイド部材20の軸方向に膨張収縮可能である。袋体22は、2つの解除用プレート21の内側面21bに接触している。解除用プレート21の内側面21bは、解除用プレート21における外側面21aとは反対側の面である。ただし、袋体22は、解除用プレート21に固定されていない。
【0031】
袋体22には、袋体22の内部に空気を導入するための空気バルブ25が設けられている。空気バルブ25は、ガイド部材20に設けられた貫通孔(図示せず)を貫通してガイド部材20の外部に突き出ている。
【0032】
エアーポンプ23は、手動により袋体22の内部に空気を供給するための手動式ポンプである。エアーポンプ23のホース23aの先端部には、空気バルブ25に取り付けられる口金(図示せず)が設けられている。エアーポンプ23は、袋体22の内部に空気を供給する空気供給部である。
【0033】
袋体22及びエアーポンプ23は、解除用プレート21をモータ3の回転軸8の延在方向に移動させる移動ユニット26を構成している。
【0034】
以上のようなブレーキシステム5において、通常は図5(a)に示されるように、ブレーキ解除装置7の解除用プレート21が電磁ブレーキ装置6のアーマチュア13と離間している。そのような状態では、電磁コイル15が通電されていないときは、アーマチュア13及びブレーキ用プレート12によりブレーキディスク10が挟み込まれることで、モータ3の回転軸8が制動される。なお、図5では、便宜上ブレーキディスク10及びブレーキ用プレート12を省略している。
【0035】
例えば電力が使用不能な状態で、回転軸8の制動を強制的に解除する場合には、図5(b)に示されるように、エアーポンプ23の口金(図示せず)を袋体22の空気バルブ25に取り付ける。そして、エアーポンプ23を手動操作して、袋体22の内部に空気を入れる。すると、空気圧により袋体22がガイド部材20の軸方向に膨張し、2つの解除用プレート21が袋体22により押圧される。
【0036】
従って、図5(c)に示されるように、各解除用プレート21が互いに離れる側に移動し、各解除用プレート21の突起部24がアーマチュア13を押し付ける。このため、各アーマチュア13は、コイルバネ14の付勢力に抗してステータ11側に移動して、ブレーキディスク10から離間する。これにより、電力を使用しなくても、回転軸8の制動が解除された状態となる。このとき、各解除用プレート21がアーマチュア13をそれぞれ押す際に、各アーマチュア13が互いに反力受けとなる。
【0037】
なお、エアーポンプ23の口金(図示せず)を袋体22の空気バルブ25から取り外すと、袋体22内の空気が空気バルブ25から抜けるため、袋体22がガイド部材20の軸方向に収縮し、解除用プレート21の突起部24がアーマチュア13から離れる。
【0038】
ところで、モータ3の回転軸8の制動を機械的に解除するには、例えば六角レンチで解除用ネジを締め込んだり、或いは手動解除用レバーを使用することが考えられる。しかし、電磁ブレーキ装置6の周りのスペースが狭い場合には、六角レンチや手動解除用レバーを操作することができず、結果的にモータ3の回転軸8の制動を解除することができない可能性がある。
【0039】
そのような問題に対し、本実施形態においては、アーマチュア13及びブレーキ用プレート12によりブレーキディスク10が挟まれることで、回転軸8が制動されている状態で、移動ユニット26により解除用プレート21が回転軸8の延在方向に沿って電磁ブレーキ装置6側に移動すると、解除用プレート21がアーマチュア13をステータ11側に押し付ける。すると、アーマチュア13がコイルバネ14の付勢力に抗してステータ11側に移動してブレーキディスク10から離れるため、回転軸8の制動が解除される。これにより、電磁ブレーキ装置6の周りのスペースが狭くても、回転軸8の制動を機械的に解除することができる。
【0040】
また、本実施形態では、解除用プレート21の外側面21aの周縁部には、アーマチュア13に当接する複数の突起部24が設けられており、ブレーキ用プレート12の周縁部には、突起部24が通過する複数の切欠部18が設けられている。このため、移動ユニット26により解除用プレート21が電磁ブレーキ装置6側に移動すると、解除用プレート21の各突起部24がブレーキ用プレート12の各切欠部18を通過してアーマチュア13をステータ11側に押し付けることになる。従って、ブレーキ用プレート12の径が大きくても、アーマチュア13の構造を変更することなく、回転軸8の制動を解除することができる。
【0041】
また、本実施形態では、移動ユニット26は、ガイド部材20の内部に配置され、回転軸8の延在方向に膨張収縮可能な袋体22と、袋体22の内部に空気を供給するエアーポンプ23とを有している。このような移動ユニット26では、エアーポンプ23により袋体22の内部に空気が供給されると、袋体22が回転軸8の延在方向に膨張するため、解除用プレート21が袋体22により押圧される。このため、解除用プレート21は、電磁ブレーキ装置6側に移動してアーマチュア13をステータ11側に押し付ける。このように空気圧を用いて解除用プレート21を作動させることにより、低コストで回転軸8の制動を解除することができる。
【0042】
また、本実施形態では、袋体22は、解除用プレート21に固定されていない。このため、解除用プレート21を予め電磁ブレーキ装置6に取り付けておき、袋体22が内部に収容されたガイド部材20を後から電磁ブレーキ装置6に隣接して配置することが可能となる。従って、電磁ブレーキ装置6の周りのスペースが十分に狭い箇所でも、ブレーキ解除装置7を使用することができる。
【0043】
また、本実施形態では、移動ユニット26により各解除用プレート21が対応する電磁ブレーキ装置6側に移動すると、各解除用プレート21が対応する電磁ブレーキ装置6のアーマチュア13をステータ11側に押し付けるため、各アーマチュア13がブレーキディスク10から離れる。従って、2つの電磁ブレーキ装置6の間のスペースが狭くても、回転軸8の制動を同時に解除することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、袋体22は解除用プレート21に固定されていないが、特にその形態には限られない。袋体22は、接着等により解除用プレート21に固定されていてもよい。
【0045】
図6は、本発明の第2実施形態に係るブレーキシステムを示す断面図である。図6において、本実施形態のブレーキシステム5Aは、上記の第1実施形態におけるブレーキ解除装置7に代えて、ブレーキ解除装置30を具備している。
【0046】
ブレーキ解除装置30は、上記のガイド部材20と、上記2つの解除用プレート21と、2つのシールリング31と、油圧駆動ユニット32とを備えている。
【0047】
シールリング31は、ガイド部材20と解除用プレート21との間に配置されている。シールリング31は、ガイド部材20と解除用プレート21との間を封止する。
【0048】
ガイド部材20、各解除用プレート21及び各シールリング31は、油圧シリンダとして機能するアクチュエータ33を構成している。ガイド部材20には、ガイド部材20、各解除用プレート21及び各シールリング31により画成される空間S内(以下、アクチュエータ33内)に作動油を導入するための導入部20aが設けられている。
【0049】
図7は、油圧駆動ユニット32の油圧回路を示す図である。図7において、油圧駆動ユニット32は、作動油をタンク34から吸い込んで吐出する手動式の油圧ポンプ35と、この油圧ポンプ35の吐出口35aとタンク34との間に配置された圧抜きバルブ36とを有している。油圧ポンプ35は、アクチュエータ33内に作動油を供給する油圧源である。油圧ポンプ35は、例えば油圧ジャッキ方式により作動する。圧抜きバルブ36は、アクチュエータ33内からタンク34に作動油を排出する手動式のバルブである。
【0050】
油圧ポンプ35の吐出口35aとタンク34との間には、油圧ポンプ35の吐出圧が設定圧以上になると開くリリーフ弁37が配置されている。また、油圧ポンプ35の吐出口35aとガイド部材20の導入部20a(図6参照)とは、配管38を介して接続されている。配管38には、油圧ポンプ35の吐出口35aへの作動油の逆流を防ぐためのチェック弁39が配設されている。
【0051】
このような油圧駆動ユニット32は、解除用プレート21をモータ3の回転軸8の延在方向に移動させる移動ユニットを構成している。
【0052】
以上のようなブレーキシステム5Aにおいて、油圧ポンプ35を作動させると、油圧ポンプ35からアクチュエータ33内に作動油が供給される。すると、作動油の油圧により2つの解除用プレート21が互いに離れるように電磁ブレーキ装置6側に移動し、各解除用プレート21の突起部24がアーマチュア13を押し付ける。従って、各アーマチュア13は、コイルバネ14の付勢力に抗してステータ11側に移動して、ブレーキディスク10から離間する。これにより、モータ3の回転軸8の制動が解除された状態となる。
【0053】
なお、圧抜きバルブ36を開くと、アクチュエータ33内からタンク34に作動油が排出されるため、解除用プレート21の突起部24がアーマチュア13から離れる。
【0054】
本実施形態においては、油圧ポンプ35からガイド部材20及び解除用プレート21により画成される空間S内に作動油が供給されると、作動油の油圧により解除用プレート21が回転軸8の延在方向に沿って電磁ブレーキ装置6側に移動する。このため、解除用プレート21がアーマチュア13をステータ11側に押し付ける。このように油圧を用いて解除用プレート21を作動させることにより、付勢力が強いコイルバネ14が使用されている場合でも、回転軸8の制動を解除することができる。
【0055】
図8は、図7に示された油圧駆動ユニット32の油圧回路の変形例を示す図である。図8において、本変形例の油圧駆動ユニット32Aは、上記の手動式の油圧ポンプ35に代えて、電動式の油圧ポンプ40を有している。油圧ポンプ40は、電動モータ41により回転駆動される。
【0056】
なお、本実施形態及び変形例では、作動油の油圧により解除用プレート21が回転軸8の延在方向に移動しているが、解除用プレート21を作動させるための流体としては、特に作動油には限られず、空気や水等であってもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、2つの電磁ブレーキ装置6の間にブレーキ解除装置が配置されているが、使用するモータ3の数が1つである場合には、電磁ブレーキ装置6の数も1つであるため、電磁ブレーキ装置6の片側のみにブレーキ解除装置が配置される。
【0058】
図9は、図2に示されたブレーキシステム5の変形例を示す断面図である。図9において、本変形例のブレーキシステム5Bでは、電磁ブレーキ装置6と壁部50との間にブレーキ解除装置7が配置されている。この場合には、エアーポンプ23により袋体22の内部に空気が供給されると、袋体22が電磁ブレーキ装置6側に膨張するため、電磁ブレーキ装置6側の解除用プレート21が袋体22により押圧されてアーマチュア13をステータ11側に押し付ける。従って、電磁ブレーキ装置6と壁部50との間のスペースが狭くても、回転軸8の制動を解除することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、解除用プレート21の外側面21aの周縁部に、アーマチュア13に当接する複数の突起部24が設けられているが、特にそのような形態には限られず、アーマチュア13のブレーキディスク10側の側面の周縁部に、解除用プレート21に当接する複数の突起部を設けてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、ガイド部材20は円筒状を呈しているが、ガイド部材20の形状としては、特に円筒状には限られず、解除用プレート21が回転軸8の延在方向に移動可能であれば、角筒状等であってもよい。
【0061】
また、電磁ブレーキ装置6はブレーキ解除装置7またはブレーキ解除装置30と別体であり、回転軸8の制動を強制的に解除したい場合に、ブレーキ解除装置7またはブレーキ解除装置30を電磁ブレーキ装置6に装着して使用する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
5,5A,5B…ブレーキシステム、6…電磁ブレーキ装置、7…ブレーキ解除装置、8…回転軸、10…ブレーキディスク、11…ステータ、12…ブレーキ用プレート、13…アーマチュア、14…コイルバネ(付勢部材)、15…電磁コイル、18…切欠部、20…ガイド部材、21…解除用プレート、22…袋体、23…エアーポンプ(空気供給部)、24…突起部、26…移動ユニット、30…ブレーキ解除装置、32,32A…油圧駆動ユニット(移動ユニット)、35…油圧ポンプ(油圧源)、36…圧抜きバルブ(バルブ)、40…油圧ポンプ(油圧源)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9