(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】車載無線通信装置、無線通信システム、無線通信装置及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230328BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/09 V
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2020007703
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中條 充
(72)【発明者】
【氏名】安則 裕通
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-105082(JP,A)
【文献】特開2013-001351(JP,A)
【文献】特開2019-202605(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の外部に設置された車外装置との間で無線通信を行う無線通信部、及び、通信に係る処理を行う処理部を備える車載無線通信装置であって、
前記処理部は、
前記車両の制御を行う車載制御装置が車内ネットワークへ出力する制御データのデータフォーマットに係る情報を、前記無線通信部にて前記車外装置へ送信し、
前記車外装置から送信される前記データフォーマットの制御データを含むデータを前記無線通信部にて受信し、
受信したデータに含まれる前記制御データを前記車内ネットワークへ出力する、
車載無線通信装置。
【請求項2】
前記車両には、前記車載制御装置と、前記車載制御装置の制御対象となる車載装置とが搭載されており、
前記処理部は、前記車外装置から受信したデータに含まれる前記制御データを、前記車載制御装置を介さずに、前記車載装置へ送信する、
請求項1に記載の車載無線通信装置。
【請求項3】
前記車外装置から受信したデータに含まれる前記制御データは、前記車両の走行を停止する制御を前記車載装置に行わせる制御データである、請求項2に記載の車載無線通信装置。
【請求項4】
前記車外装置から受信したデータに含まれる前記制御データは、前記車両のドアのロックを解除する制御を前記車載装置に行わせる制御データである、請求項2又は請求項3に記載の車載無線通信装置。
【請求項5】
前記車外装置から受信するデータには、前記制御データと、無線通信に付随する付随情報とを含み、
前記処理部は、前記車外装置から受信したデータから前記付随情報を除去した制御データを、前記車内ネットワークへ出力する、請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の車載無線通信装置。
【請求項6】
車両に搭載され、前記車両の外部との無線通信を行う無線通信部及び通信に係る処理を行う処理部を有する車載無線通信装置と、前記車両の外部に設置され、車両との無線通信を行う無線通信部及び通信に係る処理を行う処理部を有する車外装置とが無線通信を行う無線通信システムであって、
前記車載無線通信装置の処理部は、前記車両の制御を行う車載制御装置が車内ネットワークへ出力する制御データのデータフォーマットに係る情報を前記車外装置へ送信し、
前記車外装置の処理部は、
前記車載無線通信装置が送信した前記データフォーマットに係る情報を受信し、
受信した前記情報に基づいて、前記車両を制御する前記データフォーマットの制御データを生成し、
生成した前記制御データを含むデータを前記車載無線通信装置へ送信し、
前記車載無線通信装置の処理部は、
前記車外装置が送信した前記データを受信し、
受信したデータに含まれる前記制御データを前記車内ネットワークへ出力する、
無線通信システム。
【請求項7】
前記車両には、前記車載制御装置の制御対象となる車載装置と、前記車載制御装置が送信した制御データを受信して前記車載装置へ送信する車載中継装置とが搭載されており、
前記車載中継装置は、前記車載無線通信装置が送信した制御データを受信し、受信した制御データを、前記車載制御装置を介さずに、前記車載装置へ送信する、請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
車両との無線通信を行う無線通信部、及び、通信に係る処理を行う処理部を有する無線通信装置であって、
前記処理部は、
前記車両が送信したデータフォーマットに係る情報を受信し、
受信した前記情報に基づいて、前記車両を制御する前記データフォーマットの制御データを生成し、
生成した前記制御データを含むデータを前記車両へ送信する、
無線通信装置。
【請求項9】
車両の外部に設置された車外装置との間で無線通信を行う車載無線通信装置を搭載した車両を制御する車両制御方法であって、
前記車載無線通信装置が、
前記車両の制御を行う車載制御装置が車内ネットワークへ出力する制御データのデータフォーマットに係る情報を前記車外装置へ送信し、
前記車外装置から送信される前記データフォーマットの制御データを含むデータを受信し、
受信したデータに含まれる前記制御データを前記車内ネットワークへ出力する、
車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、路車間での無線通信により車両の制御を行う車載無線通信装置、無線通信システム、無線通信装置及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路上に設置された路側無線通信装置から車両に搭載された車載無線通信装置に対して、無線信号により種々の情報を提供する路車間無線通信システムが実用化されている。路側無線通信装置から車載無線通信装置へ送信される情報は、例えば信号機の点灯状態及び周辺の交通情報等の情報とすることができ、これらの情報を受信した車両では、例えば車両の運転者に対する注意喚起又は車両の運転補助制御等の処理を行うことができる。
【0003】
特許文献1においては、車両の所有者端末からの要請に応じて管理者端末が路側装置に特定の所有者コードを配信させ、この所有者コードを受信した車両制御装置が自車を自動的に停止制御モードへ移行させ、車間制御を利用しつつ自社を強制的に停止させる車両停止制御システムが提案されている。この車両停止制御システムは、盗難車両を強制停止させ、停止位置を把握することを目的とするシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両を外部から強制的に制御する必要が生じる場合には、特許文献1に記載の車両停止制御システムのように盗難車を停止させる場合以外に、例えば事故を未然に防ぐために車両を停止させる場合が考えられる。このような緊急性の高い車両の制御は、できるだけ迅速に行われる必要がある。
【0006】
本開示は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、外部からの車両の制御を迅速に行うことが期待できる車載無線通信装置、無線通信システム、無線通信装置及び車両制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本態様に係る車載無線通信装置は、車両に搭載され、前記車両の外部に設置された車外装置との間で無線通信を行う無線通信部、及び、通信に係る処理を行う処理部を備える車載無線通信装置であって、前記処理部は、前記車両の制御を行う車載制御装置が車内ネットワークへ出力する制御データのデータフォーマットに係る情報を、前記無線通信部にて前記車外装置へ送信し、前記車外装置から送信される前記データフォーマットの制御データを含むデータを前記無線通信部にて受信し、受信したデータに含まれる前記制御データを前記車内ネットワークへ出力する。
【0008】
本願は、このような特徴的な処理部を備える装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。これらの装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、これらの装置を含むその他の装置又はシステムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0009】
上記によれば、外部からの車両の制御を迅速に行うことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る無線通信システムの概要を説明するための模式図である。
【
図2】本実施の形態に係る無線通信システムの車両の一構成例を示す模式図である。
【
図3】本実施の形態に係る車載無線通信装置の構成を示す模式図である。
【
図4】本実施の形態に係る路側無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】路側無線通信装置2による制御データの生成及び送信を説明するための模式図である。
【
図6】本実施の形態に係る車載無線通信装置が行うフォーマット送信処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係る路側無線通信装置が行うフォーマット受信処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】本実施の形態に係る路側無線通信装置が行う制御データ送信処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】本実施の形態に係る車載無線通信装置が行う制御データ受信処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施の形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0012】
(1)本態様に係る車載無線通信装置は、車両に搭載され、前記車両の外部に設置された車外装置との間で無線通信を行う無線通信部、及び、通信に係る処理を行う処理部を備える車載無線通信装置であって、前記処理部は、前記車両の制御を行う車載制御装置が車内ネットワークへ出力する制御データのデータフォーマットに係る情報を、前記無線通信部にて前記車外装置へ送信し、前記車外装置から送信される前記データフォーマットの制御データを含むデータを前記無線通信部にて受信し、受信したデータに含まれる前記制御データを前記車内ネットワークへ出力する。
【0013】
本態様にあっては、車載制御装置が制御データを車内ネットワークへ出力することで車両の制御を行い、車載無線通信装置がこの制御データのデータフォーマットに係る情報を無線通信により車両外に設けられた車外装置へ送信する。これにより車外装置は、車両の制御を行う制御データのデータフォーマットを把握することができ、車両を外部から制御する必要が生じた場合にはこのデータフォーマットに従う制御データを作成して車両へ送信することができる。車外装置からのデータを受信した車載無線通信装置は、受信したデータに含まれる制御データを車内ネットワークへ出力する。これにより車両では、車内ネットワークへ出力された制御データに従う制御が行われる。予め車載無線通信装置から通知されたデータフォーマットに従って車外装置が制御データを作成して送信することにより、これを受信した車両では、車外装置からの制御命令の解釈等を行うことなく、単に受信した制御データを送受信するのみで車両の制御が行われるため、外部からの迅速な車両の制御を行うことが期待できる。
【0014】
(2)前記車両には、前記車載制御装置と、前記車載制御装置の制御対象となる車載装置とが搭載されており、前記処理部は、前記車外装置から受信したデータに含まれる前記制御データを、前記車載制御装置を介さずに、前記車載装置へ送信することが好ましい。
【0015】
本態様にあっては、車両には上述の車載制御装置と、この車載制御装置の制御対象となる車載装置とが搭載されており、車載制御装置からの制御データを車載装置が受信することで車両の制御が行われる。車外装置からのデータを受信した車載無線通信装置は、このデータに含まれる制御データを、車載制御装置を介さずに、車載装置へ直接的に送信する。これにより、車載制御装置が介在することによる遅延等が生じることがなく、より迅速に制御データを車載無線通信装置から車載装置へ送受信することができる。
【0016】
(3)前記車外装置から受信したデータに含まれる前記制御データは、前記車両の走行を停止する制御を前記車載装置に行わせる制御データであることが好ましい。
【0017】
本態様にあっては、車外装置は車両の走行を停止する制御データを車両へ送信し、車両はこの制御データに応じて走行を停止する。これにより、事故の発生を未然に防ぐ等の目的で車両の走行を外部から停止させる場合に、より迅速な車両の停止が期待できる。
【0018】
(4)前記車外装置から受信したデータに含まれる前記制御データは、前記車両のドアのロックを解除する制御を前記車載装置に行わせる制御データであることが好ましい。
【0019】
本態様にあっては、車外装置は車両のドアのロックを解除する制御データを車載無線通信装置へ送信し、車両はこの制御データに応じてドアのロックを解除する。これにより、災害発生時等においてドアのロックを緊急に解除する必要が生じた場合に、より迅速なロックの解除が期待できる。
【0020】
(5)前記車外装置から受信するデータには、前記制御データと、無線通信に付随する付随情報とを含み、前記処理部は、前記車外装置から受信したデータから前記付随情報を除去した制御データを、前記車内ネットワークへ出力することが好ましい。
【0021】
本態様にあっては、車外装置が車載無線通信装置へ送信するデータには、車両を制御する制御データと、無線通信に付随する例えばヘッダ及びフッタ等の付随情報とが含まれる。車載無線通信装置は、受信したデータから付随情報を除去して制御データを取得し、この制御データを直接的に車内ネットワークへ出力することで、制御データに応じた車両の制御を実現する。車載無線通信装置は、付随情報を除去する容易な処理で制御データを得ることができる。
【0022】
(6)本態様に係る無線通信システムは、車両に搭載され、前記車両の外部との無線通信を行う無線通信部及び通信に係る処理を行う処理部を有する車載無線通信装置と、前記車両の外部に設置され、車両との無線通信を行う無線通信部及び通信に係る処理を行う処理部を有する車外装置とが無線通信を行う無線通信システムであって、前記車載無線通信装置の処理部は、前記車両の制御を行う車載制御装置が車内ネットワークへ出力する制御データのデータフォーマットに係る情報を前記車外装置へ送信し、前記車外装置の処理部は、前記車載無線通信装置が送信した前記データフォーマットに係る情報を受信し、受信した前記情報に基づいて、前記車両を制御する前記データフォーマットの制御データを生成し、生成した前記制御データを含むデータを前記車載無線通信装置へ送信し、前記車載無線通信装置の処理部は、前記車外装置が送信した前記データを受信し、受信したデータに含まれる前記制御データを前記車内ネットワークへ出力する。
【0023】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、外部からの迅速な車両の制御を行うことが期待できる。
【0024】
(7)前記車両には、前記車載制御装置の制御対象となる車載装置と、前記車載制御装置が送信した制御データを受信して前記車載装置へ送信する車載中継装置とが搭載されており、前記車載中継装置は、前記車載無線通信装置が送信した制御データを受信し、受信した制御データを、前記車載制御装置を介さずに、前記車載装置へ送信することが好ましい。
【0025】
本態様にあっては、態様(2)と同様に、より迅速に制御データを車載無線通信装置から車載装置へ送受信することができる。
【0026】
(8)本態様に係る無線通信装置は、車両との無線通信を行う無線通信部、及び、通信に係る処理を行う処理部を有する無線通信装置であって、前記処理部は、前記車両が送信したデータフォーマットに係る情報を受信し、受信した前記情報に基づいて、前記車両を制御する前記データフォーマットの制御データを生成し、生成した前記制御データを含むデータを前記車両へ送信する。
【0027】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、外部からの迅速な車両の制御を行うことが期待できる。
【0028】
(9)本態様に係る車両制御方法は、車両の外部に設置された車外装置との間で無線通信を行う車載無線通信装置を搭載した車両を制御する車両制御方法であって、前記車載無線通信装置が、前記車両の制御を行う車載制御装置が車内ネットワークへ出力する制御データのデータフォーマットに係る情報を前記車外装置へ送信し、前記車外装置から送信される前記データフォーマットの制御データを含むデータを受信し、受信したデータに含まれる前記制御データを前記車内ネットワークへ出力する。
【0029】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、外部からの迅速な車両の制御を行うことが期待できる。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る無線通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0031】
<システム構成>
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの概要を説明するための模式図である。本実施の形態に係る無線通信システムは、車両101に搭載された車載無線通信装置1と、道路の交差点等に設置された信号機102に設けられた路側無線通信装置2とが無線通信を行うシステムである。なお、本実施の形態において路側無線通信装置2は信号機102に設けられるものとするが、これに限るものではなく、例えば道路に設置された街灯、標識柱、歩道橋又はガードレール等の種々の施設又は設備に設けられてよい。車載無線通信装置1は、車両101から所定範囲(無線の電波が到達する範囲)内に存在する一又は複数の路側無線通信装置2との間で無線通信を行うことができる。同様に、路側無線通信装置2は、信号機102の設置位置から所定範囲内に存在する一又は複数の車載無線通信装置1との間で無線通信を行うことができる。
【0032】
本実施の形態に係る無線通信システムでは、例えば信号機102等に設けられたカメラ103が撮影した交差点の画像データを基に、路側無線通信装置2が交差点周辺での事故の発生を予測する。路側無線通信装置2は、事故が発生すると予測した場合に、この事故に関係する車両101を強制的に停車させる制御を行う。このときに路側無線通信装置2は、車両101を強制停止させるためのデータを車両101の車載無線通信装置1へ送信する。このデータを受信した車載無線通信装置1は、車両101の走行を制御する車載装置へこのデータを転送することによって、車両101を停止させる。
【0033】
また例えば、本実施の形態に係る無線通信システムでは、地震又は水害等の災害が発生した場合に、路側無線通信装置2が車両101のドアのロックを強制的に解除させる制御を行ってもよい。これにより、車両101に関する救助活動を支援する事が期待できる。災害の発生の有無は、例えば路側無線通信装置2が単独で判断してもよく、例えば通信により路側無線通信装置2が他の装置から災害発生の通信を受信して判断してもよい。
【0034】
なお本実施の形態に係る無線通信システムにて路側無線通信装置2が行う車両101の制御は、上記の強制的な停車又はドアのロック解除に限らず、どのような制御であってもよい。
【0035】
図2は、本実施の形態に係る無線通信システムの車両101の一構成例を示す模式図である。本実施の形態に係る車両101には、上述の車載無線通信装置1が搭載されると共に、車載制御装置3、GW(ゲートウェイ)4及びECU(Electronic Control Unit)5等の種々の装置が搭載されている。車載制御装置3は、車両101の制御を行う装置であり、例えば車両101の操舵、加減速もしくは停止等の走行制御、又は、車両101のドアのロック及びロック解除等の制御を行う。GW4は、車両101の車内ネットワークを構成する複数の通信線が接続されており、通信線間の通信を中継する。ECU5は車両101に複数が搭載され、それぞれ車両101の適所に搭載されている。ECU5は、車載制御装置3から与えられる制御データ(制御命令)に応じて動作し、車両101の各部に制御データに応じた動作を行わせることによって、車載制御装置3による車両101の制御を実現する。
【0036】
本実施の形態に係る車両101の車内ネットワークは、GW4を中心としたスター型のネットワーク構成である。即ち、車両101に搭載された車載無線通信装置1、車載制御装置3及びECU5は、それぞれ個別の通信線を介してGW4に接続されている。GW4は、一の通信線にて受信したデータを他の通信線から送信することによって、データを中継する。これにより車載無線通信装置1、車載制御装置3及びECU5は、GW4を介して相互にデータの送受信を行うことができる。ただし、車内ネットワークの構成はスター型に限らず、例えばバス型又はリング型等の種々の構成が採用されてよく、複数のネットワーク構成が混在したものであってもよい。
【0037】
車両101が通常の走行を行っている場合、車載制御装置3は、運転者の運転操作に応じてECU5への制御データを送信し、運転操作に応じた車両101の走行を実現する。また自動運転の場合には、車載制御装置3は、車両101に搭載された各種のセンサ(図示は省略する)から得られる情報に基づいて制御データをECU5へ送信し、車両101の自動的な走行を実現する。車載制御装置3がECU5へ送信する制御データは、制御対象となるECU5の仕様等により定められる命令コード等に、車内ネットワークの通信規格により定められる通信用のヘッダ情報及びフッタ情報等の付随情報を付加したものである。このため、例えば車両101を停止させる制御データ及び車両101のドアのロックを解除させる制御データ等のデータフォーマットは、車両101の設計段階等において予め定まる。
【0038】
本実施の形態に係る無線通信システムでは、車載無線通信装置1が路側無線通信装置2との無線通信が可能となった際に、強制的な車両101の停止又はドアのロック解除等を行うための制御データのフォーマットの情報を路側無線通信装置2へ通知する。フォーマットの情報には、例えば制御データを構成する命令コードのビット長及びそのコード種別、並びに、ヘッダ情報及びフッタ情報等として設定すべき情報等が含まれ得る。また例えば、路側無線通信装置2が行う車両101の制御が停止のみである場合、又は、数種類程度の少ない制御のみである場合、制御データそのものをフォーマットの情報として車載無線通信装置1が路側無線通信装置2へ送信してもよい。
【0039】
路側無線通信装置2は、車載無線通信装置1から受信したフォーマットの情報を記憶しておき、車両101を強制的に制御する必要があると判断した場合には、記憶したフォーマットに従って制御データを生成して車載無線通信装置1へ送信する。車載無線通信装置1は、路側無線通信装置2から受信した制御データを車内ネットワークへ直接的に出力する。車載無線通信装置1が出力した制御データはGW4にてECU5へ中継され、ECU5は受信した制御データに応じて車両101の停止等を実施する。このときに車載無線通信装置1が送信する制御データは通常時において車載制御装置3が送信する制御データと同じであってよく、GW4及びECU5は受信した制御データの内容からはこの制御データの送信元が車載制御装置3又は車載無線通信装置1のいずれであるかを判断できなくてよい。このためGW4は、車載無線通信装置1からの制御データを、車載制御装置3を介することなく、直接的にECU5へ送信し、車両101の停止等を実施することができる。
【0040】
<装置構成>
図3は、本実施の形態に係る車載無線通信装置1の構成を示す模式図である。本実施の形態に係る車載無線通信装置1は、処理部(プロセッサ)11、記憶部(ストレージ)12、無線通信部(トランシーバ)13及び車内通信部(トランシーバ)14等を備えて構成されている。処理部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、種々の処理を行うことができる。本実施の形態において処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラム12aを読み出して実行することにより、車両101を制御するための制御データのフォーマットに関する情報を路側無線通信装置2へ送信する処理、及び、路側無線通信装置2からの制御データを車内ネットワークへ出力する処理等の種々の処理を行う。
【0041】
記憶部12は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部12は、処理部11が実行するプログラム12aを記憶している。
【0042】
なおプログラム12aは、例えば車載無線通信装置1の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよく、また例えば遠隔のサーバ装置などが配信するものを車載無線通信装置1が通信にて取得してもよく、また例えばメモリカード又は光ディスク等の記録媒体99に記録されたプログラムを車載無線通信装置1が読み出して記憶部12に記憶してもよく、また例えば記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出して車載無線通信装置1の記憶部12に書き込んでもよい。プログラム12aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体99に記録された態様で提供されてもよい。
【0043】
無線通信部13は、車両101の外部に設けられた路側無線通信装置2との間で無線通信を行う。無線通信部13は、処理部11から与えられた送信用のデータを変調した信号をアンテナ(図示は省略する)から出力することによって、路側無線通信装置2へのデータ送信を行うと共に、アンテナにて受信した信号を復調することにより路側無線通信装置2からのデータを受信し、受信したデータを処理部11へ与える。
【0044】
車内通信部14は、車内ネットワークを構成する通信線に接続され、車内ネットワークを介して車載制御装置3及びECU5等の装置との間でデータの送受信を行う。本実施の形態において車内通信部14は、例えばイーサネット(登録商標)又はCAN(Controller Area Network)等の通信規格に従うデータの送受信を行う。車内通信部14は、例えばイーサネットPHY(PHYsical layer)又はCANコントローラ等のIC(Integrated Circuit)を用いて構成され得る。ただし車内通信部14が用いる通信規格はイーサネット又はCANに限らず、種々の通信規格が用いられ得る。車内通信部14は、処理部11から与えられた送信用のデータを電気信号として車内ネットワークを構成する通信線へ出力することによりデータ送信を行う。また車内通信部14は、通信線の電位をサンプリングして取得することにより、通信線の電気信号をデジタルデータに変換し、変換したデータを受信データとして処理部11へ与える。
【0045】
また本実施の形態に係る車載無線通信装置1は、記憶部12に記憶されたプログラム12aを処理部11が読み出して実行することにより、フォーマット送信部11a、データ受信部11b、制御データ取得部11c及び制御データ送信部11d等が処理部11にソフトウェア的な機能部として実現される。なお
図2においては、車両101の外部からの制御に関する処理を行う機能部を処理部11内に図示し、これ以外の処理を行う機能部については図示を省略している。
【0046】
フォーマット送信部11aは、車両101に搭載されたECU5に対する制御データのデータフォーマットに係る情報を、無線通信部13にて路側無線通信装置2へ送信する処理を行う。フォーマット送信部11aが送信するデータフォーマットに係る情報は、例えば車両101の設計段階等において予め作成され、車載無線通信装置1の製造段階等において記憶部12に予め記憶される。データフォーマットに係る情報は、例えば制御データを構成する命令コードのビット長及びそのコード種別、並びに、ヘッダ情報及びフッタ情報等として設定すべき情報等である。また例えば、路側無線通信装置2が行う車両101の制御が停止又はドアのロック解錠等のように限られた制御のみである場合、制御に応じて送信すべき制御データそのものをデータフォーマットに係る情報としてもよい。フォーマット送信部11aは、データフォーマットに係る情報に、車両101又は車載無線通信装置1等を識別する識別情報を付して、路側無線通信装置2へ送信する。
【0047】
データ受信部11bは、路側無線通信装置2が送信する種々のデータを、無線通信部13にて受信する処理を行う。データ受信部11bは、受信したデータを、記憶部12又は処理部11内のバッファ等に記憶する。
【0048】
制御データ取得部11cは、データ受信部11bが受信したデータが、路側無線通信装置2からの車両101の制御に関するデータである場合に、受信したデータに含まれる制御データを取得する処理を行う。制御データ取得部11cは、例えば受信したデータからヘッダ情報及びフッタ情報を除去することによって、制御データを取得する。
【0049】
制御データ送信部11dは、制御データ取得部11cが取得した制御データを、車内通信部14にて車内ネットワークへ送信する処理を行う。制御データ送信部11dが送信した制御データは、GW4を介してECU5へ中継され、ECU5にて受信される。ECU5は、車載無線通信装置1から受信した制御データを、車載制御装置3から受信する制御データと同様に扱い、車両101の制御を行う。
【0050】
図4は、本実施の形態に係る路側無線通信装置2の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る路側無線通信装置2は、処理部(プロセッサ)21、記憶部(ストレージ)22、無線通信部(トランシーバ)23及び有線通信部(トランシーバ)24等を備えて構成されている。処理部21は、例えばCPU又はMPU等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部21は、記憶部22に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、種々の処理を行うことができる。本実施の形態において処理部21は、記憶部22に記憶されたプログラム22aを読み出して実行することにより、車両101の制御の要否を判定する処理、及び、車両101を強制的に制御するための制御データを車両101へ送信する処理等の種々の処理を行う。
【0051】
記憶部22は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部22は、処理部21が実行する各種のプログラム、及び、処理部21の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部22は、処理部21が実行するプログラム22aを記憶している。
【0052】
なおプログラム22aは、例えば路側無線通信装置2の製造段階において記憶部22に書き込まれてもよく、また例えば遠隔のサーバ装置などが配信するものを路側無線通信装置2が通信にて取得してもよく、また例えばメモリカード又は光ディスク等の記録媒体98に記録されたプログラムを路側無線通信装置2が読み出して記憶部22に記憶してもよく、また例えば記録媒体98に記録されたものを書込装置が読み出して路側無線通信装置2の記憶部22に書き込んでもよい。プログラム22aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体98に記録された態様で提供されてもよい。
【0053】
無線通信部23は、車両101に設けられた車載無線通信装置1との間で無線通信を行う。無線通信部23は、処理部21から与えられた送信用のデータを変調した信号をアンテナ(図示は省略する)から出力することによって、車載無線通信装置1へのデータ送信を行うと共に、アンテナにて受信した信号を復調することにより車載無線通信装置1からのデータを受信し、受信したデータを処理部21へ与える。
【0054】
本実施の形態に係る路側無線通信装置2は、信号機102が設置された交差点の周辺に設置されたカメラ103と通信線又は信号線等を介して接続されている。カメラ103は、例えば交差点の周辺を撮影し、撮影により得られた画像(静止画像又は動画像)データを路側無線通信装置2へ送信する。有線通信部24は、かめら103との間で通信線又は信号線等を介したデータの送受信を行う。有線通信部24は、カメラ103から送信されたデータを受信して処理部21へ与えると共に、処理部21から与えられたデータをカメラ103へ送信する。有線通信部24は、どのような通信規格に基づいてかめら103とのデータ送受信を行ってもよい。また有線通信部24は、例えばインターネット等の広域のネットワークを介してカメラ103との通信を行ってもよい。なお本実施の形態に置いては、路側無線通信装置2がカメラ103と有線通信を行うものとするが、これに限るものではなく、路側無線通信装置2がカメラ103と無線通信を行ってもよい。また路側無線通信装置2は、カメラ103以外の装置、例えば交差点に存在する車両101又は歩行者等を検知するセンサ等との間でデータの送受信を行ってもよい。
【0055】
また本実施の形態に係る路側無線通信装置2は、記憶部22に記憶されたプログラム22aを処理部21が読み出して実行することにより、フォーマット受信部21a、車両制御判定部21b、制御データ生成部21c及びデータ送信部21d等が処理部21にソフトウェア的な機能部として実現される。
【0056】
フォーマット受信部21aは、車両101に搭載された車載無線通信装置1が送信する制御データのデータフォーマットに係る情報を受信する処理を行う。フォーマット受信部21aは、車載無線通信装置1から受信したデータフォーマットに係る情報を、送信元の車両101又は車載無線通信装置1等を識別する識別情報に対応付けて、記憶部22又は処理部21内の記憶領域等に記憶する。なお、記憶したデータフォーマットに係る情報は、例えば送信元の車両101又は車載無線通信装置1との無線通信が行われなくなってから所定時間が経過した後等に、破棄されてよい。
【0057】
車両制御判定部21bは、カメラ103が撮影した画像データに基づいて、交差点周辺に存在する車両101の強制的な制御を行うか否かを判定する処理を行う。車両制御判定部21bは、例えば画像データに写された車両101が事故を起こすか否かを予測し、事故を起こすことが予測される場合にこの車両101を強制的に停止させると判定する。なお車両制御判定部21bによる事故の発生の予測は、どのような方法により行われてもよいが、例えば画像データに写された車両101の位置及び速度、複数の車両101の間の距離、又は、車両101及び歩行者の間の距離等に基づいて行われ得る。また車両制御判定部21bは、事故の発生を予測して車両101を停止するか否かを判定するのではなく、例えば災害の発生の有無に基づいて車両101のドアのロックを解除するか否かを判定してもよく、これら以外の要因に基づいて車両101の種々の制御を行うか否かを判定してよい。
【0058】
制御データ生成部21cは、車両制御判定部21bが車両101の強制的な制御を行うと判定した場合に、この車両101を制御するための制御データを生成する処理を行う。制御データ生成部21cは、制御対象となる車両101の識別情報等に対応付けて記憶されているデータフォーマットに係る情報を取得し、取得した情報に基づいて、所定のデータフォーマットに従った制御データを生成する。
【0059】
データ送信部21dは、制御データ生成部21cが生成した制御データを含む送信データを、無線通信部23にて制御対象となる車両101へ送信する処理を行う。データ送信部21dが送信したデータは車両101の車載無線通信装置1にて受信され、このデータに含まれる制御データに応じた制御が車両101にてなされる。
【0060】
<車両制御方法>
図5は、路側無線通信装置2による制御データの生成及び送信を説明するための模式図である。本実施の形態に係る路側無線通信装置2の制御データ生成部21cは、車載無線通信装置1から得たデータフォーマットに係る情報に基づいて、車両101を制御するための制御データを生成する。
図5の上段には、制御データ生成部21cが生成した制御データの一例を図示している。制御データ生成部21cが生成する制御データは、車両101にて車載制御装置3がECU5へ送信する制御データと同じデータフォーマットである。制御データは、例えばECU5に対する制御命令に対して、車両101の車内通信の通信規格に応じた車内通信用ヘッダ情報及び車内通信用フッタ情報等の付随情報を付加した構成である。データフォーマットに係る情報には、例えばこれらのヘッダ情報及びフッタ情報の構成及びこれらの情報に設定すべき内容等と、ECU5への制御命令として設定し得るコード等の情報とが含まれ得る。
【0061】
路側無線通信装置2のデータ送信部21dは、制御データ生成部21cが生成した制御データに対して、無線通信に通信規格に応じた無線通信用ヘッダ情報及び無線通信用フッタ情報等の付随情報を付加した送信データを生成し、無線通信部23にて送信する。
図5の下段には、データ送信部21dが生成した送信データの一例を図示している。
【0062】
路側無線通信装置2が送信したデータを受信した車載無線通信装置1は、受信したデータから制御データ取得部11cが無線通信用ヘッダ情報及び無線通信用フッタ情報を除去することによって、制御データを取得することができる。車載無線通信装置1は、制御データ取得部11cが取得した制御データを車内ネットワークへ送信する。
【0063】
車載無線通信装置1が送信した制御データは、車両101のGW4にて受信される。GW4は、車両101の車載制御装置3から受信した制御データと、車載無線通信装置1から受信した制御データとを同等のものとして扱い、この制御データを制御対象となるECU5へ送信する。GW4は、車載無線通信装置1から受信した制御データを、車載制御装置3へ中継する必要はない。
【0064】
GW4が中継した制御データを受信したECU5は、制御データに応じて車両101の制御を行う。ECU5は、車載制御装置3から受信した制御データと、車載無線通信装置1から受信した制御データとを同等のものとして扱って、この制御データに応じた制御を行う。又は、ECU5は、車載制御装置3から受信した制御データと、車載無線通信装置1から受信した制御データとを区別することができなくてよい。
【0065】
なお本実施の形態においては、路側無線通信装置2が作成する制御データに車内通信用ヘッダ情報及び車内通信用フッタ情報を含むものとするが、これに限るものではない。路側無線通信装置2は車内通信用ヘッダ情報及び車内通信用フッタ情報を含まない制御データを車載無線通信装置1へ送信し、車載無線通信装置1は路側無線通信装置2からの制御データに車内通信用ヘッダ情報及び車内通信用フッタ情報を付して車内ネットワークへ送信してもよい。
【0066】
図6は、本実施の形態に係る車載無線通信装置1が行うフォーマット送信処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る車載無線通信装置1の処理部11のフォーマット送信部11aは、無線通信部13にて車両101の外部に設けられた路側無線通信装置2との無線通信が可能であるか否かを判定する(ステップS1)。路側無線通信装置2との通信が可能でない場合(S1:NO)、フォーマット送信部11aは、路側無線通信装置2との通信が可能となるまで待機する。
【0067】
路側無線通信装置2との通信が可能となった場合(S1:YES)、フォーマット送信部11aは、この路側無線通信装置2に対して制御データのデータフォーマットに係る情報を送信済みであるか否かを判定する(ステップS2)。フォーマット送信部11aは、例えば所定時間内に通信を行った路側無線通信装置2を識別する識別情報と、この路側無線通信装置2に対するデータフォーマットに係る情報の送信の実施有無とを対応付けて記憶し、記憶したこれらの情報に基づいてフォーマットに係る情報が送信済みであるか否かを判定する。
【0068】
データフォーマットに係る情報が送信済みではない場合(S2:NO)、フォーマット送信部11aは、記憶部12に記憶されたフォーマットに係る情報を通信可能な路側無線通信装置2へ送信し(ステップS3)、フォーマット送信処理を終了する。データフォーマットに係る情報が送信済みである場合(S2:YES)、フォーマット送信部11aは、路側無線通信装置2に対するデータフォーマットに係る情報の送信を行うことなく、フォーマット送信処理を終了する。
【0069】
図7は、本実施の形態に係る路側無線通信装置2が行うフォーマット受信処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る路側無線通信装置2の処理部21のフォーマット受信部21aは、無線通信部23にて車載無線通信装置1からのデータフォーマットに係る情報を受信したか否かを判定する(ステップS11)。データフォーマットに係る情報を受信していない場合(S11:NO)、フォーマット受信部21aは、データフォーマットに係る情報を受信するまで待機する。
【0070】
車載無線通信装置1からデータフォーマットに係る情報を受信した場合(S11:YES)、フォーマット受信部21aは、受信したデータフォーマットに係る情報を、例えば送信元の車両101の識別情報に対応付けて、記憶部12に記憶し(ステップS12)、フォーマット受信処理を終了する。
【0071】
図8は、本実施の形態に係る路側無線通信装置2が行う制御データ送信処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る路側無線通信装置2の処理部21の車両制御判定部21bは、カメラ103が撮影した画像データを有線通信部24にて取得する(ステップS21)。車両制御判定部21bは、取得した画像データに基づいて、交差点等における事故発生を予測する事故予測処理を行う(ステップS22)。事故予測処理の結果に基づいて、車両制御判定部21bは、車両101を停止する制御が必要であるか否かを判定する(ステップS23)。車両101の停止が必要ではない場合(S23:NO)、車両制御判定部21bは、ステップS21へ処理を戻す。
【0072】
車両101の停止が必要であると判定した場合(S23:YES)、処理部21の制御データ生成部21cは、制御対象となる車両101の制御データのデータフォーマットに係る情報を、記憶部12から読み出す(ステップS24)。制御データ生成部21cは、読み出したデータフォーマットに応じて、車両101を制御する制御データを生成する(ステップS25)。処理部21のデータ送信部21dは、制御データ生成部21cが生成した制御データに対して、無線通信に必要なヘッダ情報及びフッタ情報等の付随情報を付加することにより、送信データを生成する(ステップS26)。データ送信部21dは、生成した送信データを無線通信部23にて制御対象となる車両101へ送信し(ステップS27)、制御データ送信処理を終了する。
【0073】
図9は、本実施の形態に係る車載無線通信装置1が行う制御データ受信処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る車載無線通信装置1の処理部11のデータ受信部11bは、路側無線通信装置2からのデータを無線通信部13にて受信したか否かを判定する(ステップS31)。路側無線通信装置2からのデータを受信していない場合(S31:NO)、データ受信部11bは、路側無線通信装置2からのデータを受信するまで待機する。
【0074】
路側無線通信装置2からのデータを受信した場合(S31:YES)、データ受信部11bは、受信したデータが車両101を強制的に制御するためのデータであるか否かを判定する(ステップS32)。路側無線通信装置2は、例えば送信データが車両101を強制的に制御するための制御データを含むものであるか否かを示すフラグ等の情報を無線通信用ヘッダ情報に付与して送信する。データ受信部11bは、受信したデータの無線通信用ヘッダ情報に含まれるこのフラグ等の情報に基づいて、受信したデータが車両101を強制制御するものであるか否かを判定することができる。受信したデータが車両101を強制的に制御するものでない場合(S32:NO)、データ受信部11bは、受信したデータを通常のデータとして扱い、ステップS31へ処理を戻す。
【0075】
受信したデータが車両101を強制的に制御するものである場合(S32:YES)、処理部21の制御データ取得部11cは、受信したデータに付された無線通信用ヘッダ情報及び無線通信用フッタ情報等の付随情報を除去することで制御データを取得する(ステップS33)。処理部11の制御データ送信部11dは、制御データ取得部11cが取得した制御データを、車内通信部14にて車内ネットワークへ送信し(ステップS34)、処理を終了する。
【0076】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る無線通信システムは、車載制御装置3が制御データを車内ネットワークへ送信(出力)することで車両101の制御を行い、車載無線通信装置1がこの制御データのデータフォーマットに係る情報を無線通信により車両101の外部に設けられた路側無線通信装置2へ送信する。これにより路側無線通信装置2は、車両101の制御を行う制御データのデータフォーマットを把握することができ、車両101を外部から強制的に制御する必要が生じた場合にはこのデータフォーマットに従う制御データを作成して車両101へ送信することができる。路側無線通信装置2からのデータを受信した車載無線通信装置1は、受信したデータに含まれる制御データを車内ネットワークへ送信(出力)する。これにより車両101では、車内ネットワークへ送信された制御データに従う制御が行われる。予め車載無線通信装置1から通知されたデータフォーマットに従って路側無線通信装置2が制御データに生成して送信することにより、これを受信した車両101では、路側無線通信装置2からの制御命令の解釈等を行うことなく、単に受信した制御データを送受信するのみで車両101の制御が行われるため、外部からの迅速な車両101の制御を行うことが期待できる。
【0077】
また本実施の形態に係る無線通信システムでは、車両101には車載制御装置3と、この車載制御装置3の制御対象となるECU5とが搭載されており、車載制御装置3からの制御データをECU5が受信することで車両101の制御が行われる。路側無線通信装置2からのデータを受信した車載無線通信装置1は、このデータに含まれる制御データを、車載制御装置3を介さずに、ECU5へ直接的に送信する。これにより、車載制御装置3が介在することにより遅延等が生じることがなく、より迅速に制御データを車載無線通信装置1からECU5へ送受信することができる。
【0078】
また本実施の形態に係る無線通信システムでは、路側無線通信装置2は車両101の走行を停止する制御データを車載無線通信装置1へ送信し、車両101はこの制御データに応じて走行を停止する。これにより、事故の発生を未然に防ぐ等の目的で車両101の走行を外部から停止させる場合に、より迅速な車両101の停止が期待できる。
【0079】
また本実施の形態に係る無線通信システムでは、路側無線通信装置2は車両101のドアのロックを解除する制御データを車載無線通信装置1へ送信し、車両101はこの制御データに応じてドアのロックを解除する。これにより、災害発生時等においてドアのロックを緊急に解除する必要が生じた場合に、より迅速なロックの解除が期待できる。
【0080】
また本実施の形態に係る無線通信システムでは、路側無線通信装置2が車載無線通信装置1へ送信するデータには、車両101を制御する制御データと、無線通信に付随する例えばヘッダ情報及びフッタ情報等の付随情報とが含まれる。車載無線通信装置1は、受信したデータから付随情報を除去して制御データを取得し、取得した制御データを直接的に車内ネットワークへ送信することで、制御データに応じた車両101の制御を実現する。車載無線通信装置1は、付随情報を除去する容易な処理で制御データを取得することができる。
【0081】
なお本実施の形態においては、路側無線通信装置2が車両101との無線通信と、車両101の強制的な制御とを行う構成としたが、これに限るものではない。車両101との無線通信を行う装置と、カメラ103が撮影した画像データに基づいて車両101の制御を行う装置とを別の装置としてよい。同様に、車載無線通信装置1が路側無線通信装置2との無線通信と、データフォーマットに係る情報の送信処理と、制御データの送信処理とを行う構成としたが、これに限るものではない。路側無線通信装置2との無線通信を行う装置と、データフォーマットに係る情報の送信処理及び制御データの送信処理を行う装置とを別の装置としてもよい。
【0082】
車載システムにおける各装置は、マイクロプロセッサ、ROM及びRAM等を含んで構成されるコンピュータを備える。マイクロプロセッサ等の演算処理部は、
図3及び
図5に示すような、シーケンス図又はフローチャートの各ステップの一部又は全部を含むコンピュータプログラムを、ROM、RAM等の記憶部からそれぞれ読み出して実行してよい。これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、外部のサーバ装置等からインストールすることができる。また、これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通する。
【0083】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 車載無線通信装置
2 路側無線通信装置(車外装置、無線通信装置)
3 車載制御装置
4 GW(車載中継装置)
5 ECU(車載装置)
11 処理部
11a フォーマット送信部
11b データ受信部
11c 制御データ取得部
11d 制御データ送信部
12 記憶部
12a プログラム
13 無線通信部
14 車内通信部
21 処理部
21a フォーマット受信部
21b 車両制御判定部
21c 制御データ生成部
21d データ送信部
22 記憶部
22a プログラム
23 無線通信部
24 有線通信部
101 車両
102 信号機
103 カメラ