IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-サイドエアバッグ装置 図1
  • 特許-サイドエアバッグ装置 図2
  • 特許-サイドエアバッグ装置 図3
  • 特許-サイドエアバッグ装置 図4
  • 特許-サイドエアバッグ装置 図5
  • 特許-サイドエアバッグ装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20230328BHJP
   B60R 21/217 20110101ALI20230328BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20230328BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/217
B60R21/2338
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020057834
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021154904
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 良和
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-093577(JP,A)
【文献】特開2020-006715(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026663(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの側部内に設けられた収納部に収納され、車幅方向に重ね合わされた一対の布片により袋状に形成されるとともに前方に向かって展開膨張するエアバッグを備えたサイドエアバッグ装置であって、
前記エアバッグに膨張用ガスを供給可能な長尺状のインフレータと、前記インフレータを保持するリテーナとを有するインフレータアセンブリを備え、
前記リテーナには、前記インフレータを保持した状態で、前記インフレータの少なくとも一方の端部から突出するように延びる突出部が一体に形成され、
前記エアバッグ内部の後端部には、前記突出部の前方となる位置に、前記エアバッグの展開膨張時に前記突出部に当接して前記エアバッグの後方への移動を規制する規制部が設けられており、
前記規制部は、前記エアバッグの内部で車幅方向に架け渡された帯状のテザーであり、
前記テザーは、前記インフレータアセンブリの軸線と平行となるように形成された結合部により一対の前記布片のそれぞれに結合されているサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記リテーナは、前記インフレータの軸線に沿って延びる筒状に形成され、
前記突出部は、前記インフレータを保持した状態で該インフレータの後方側に位置する周壁から突出している請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物の側壁部に対し側方から衝撃が加わった場合、又は衝撃が加わることが予測される場合に、乗物用シートに着座している乗員と側壁部との間でエアバッグを展開膨張させて、乗員を衝撃から保護するサイドエアバッグ装置が知られている。サイドエアバッグ装置は、例えば、車両用シートにおけるシートバックの車外側の側部に設けられた収納部内に組み込まれており、長尺状をなすガス発生器から噴出されたガスにより、エアバッグを展開膨張させる。
【0003】
ところで、エアバッグを所望の位置に膨張展開させるように支持する構造として、エアバッグの外側に受圧部材を設けることが知られている。特許文献1に記載されるサイドエアバッグ装置では、ガス発生器の軸線に沿って延びる受圧面を有する受圧部材が、エアバッグの後方に配置されている。受圧部材は、エアバッグ内の膨張用ガスの圧力を受圧面で受け、受圧面に直交する方向である前方へ向かう反力を発生させる。エアバッグは、この反力により前方へ向けて展開膨張するように支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6646119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、受圧部材を別途設けると、部品点数が増えることになる。そして、部品点数が増える分、コストが上昇することになる。さらには、車両軽量化の要請にも沿わないことになる。
【0006】
本発明の目的は、部品点数を増やすことなくエアバッグを所望の位置に展開膨張させることのできるサイドエアバッグ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するサイドエアバッグ装置は、シートバックの側部内に設けられた収納部に収納され、前方に向かって展開膨張するエアバッグを備えたサイドエアバッグ装置であって、前記エアバッグに膨張用ガスを供給可能な長尺状のインフレータと、前記インフレータを保持するリテーナとを有するインフレータアセンブリを備え、前記リテーナには、前記インフレータを保持した状態で、前記インフレータの少なくとも一方の端部から突出するように延びる突出部が一体に形成され、前記エアバッグ内部の後端部には、前記突出部の前方となる位置に、前記エアバッグの展開膨張時に前記突出部に当接して前記エアバッグの後方への移動を規制する規制部が設けられている。
【0008】
上記の構成によれば、乗物の側壁部に対し側方から加わる衝撃に応じ、シートバックの収納部に組み込まれたインフレータで膨張用ガスが発生する。この膨張用ガスが供給されたエアバッグは、乗物用シートに着座している乗員と乗物の側壁部との間を前方に向かって展開膨張する。このとき、膨張用ガスの圧力はエアバッグによって受け止められ、エアバッグの後端部では、エアバッグを後方に向かって展開膨張させようとする押圧力となる。
【0009】
ここで、インフレータを保持するリテーナには、インフレータの少なくとも一方の端部から突出するように延びる突出部が形成されており、エアバッグの後端部には、突出部の前方となる位置に規制部が設けられている。そのため、後方に向かって展開膨張しようとするエアバッグの後端部では、規制部が突出部に当接して、その移動が規制される。これにより、エアバッグは、後方への移動が規制された状態で、エアバッグに作用する押圧力によって前方へ向けて展開膨張し、乗物用シートに着座している乗員と乗物の側壁部との間に入り込む。エアバッグの後方への移動を規制する突出部がリテーナに一体に形成されているため、エアバッグを支持する受圧部材を別途設けることなく、エアバッグを前方へ向けて展開膨張させることができる。部品点数の増加を抑制することができる。また、部品点数の増加の抑制により、コストの上昇が抑制され、車両軽量化にも貢献することができる。
【0010】
上記の構成において、前記リテーナは、前記インフレータの軸線に沿って延びる筒状に形成され、前記突出部は、前記インフレータを保持した状態で該インフレータの後方側に位置する周壁から突出していることが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、インフレータで発生した膨張用ガスは、突出部により邪魔されることなくエアバッグ内の前方に向かって供給される。また、膨張用ガスが突出部で受け止められると、エアバッグ内の前方に向かう反力が発生する。そのため、エアバッグの後端部は前方へ向けて展開膨張し易くなる。
【0012】
上記の構成において、前記規制部は、前記エアバッグの内部で車幅方向に架け渡された帯状のテザーであることが好ましい。
上記の構成によれば、簡単な構成でエアバッグの後方への移動を規制することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記サイドエアバッグ装置によれば、部品点数を増やすことなくエアバッグを所望の位置に展開膨張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態におけるサイドエアバッグ装置が設けられた車両用シートを乗員とともに示す側面図。
図2】エアバッグモジュールが組込まれたシートバックにおける車外側の側部の内部構造を示す部分平断面図。
図3】エアバッグ内に配置されたインフレータアセンブリを示す側面図。
図4】エアバッグの展開膨張した状態を示す側面図。
図5】エアバッグが展開膨張した状態での断面図であり、図4におけるA-A線での断面図。
図6】(a)は、規制部の変更例を示す部分断面図であり、(b)は、突出部の変更例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、乗物としての車両における前席用のサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。以下の記載では、車両の前進方向を前方、後進方向を後方として説明する。また、車両の幅方向(車幅方向)における中央部を基準とし、その中央部に近づく側を「車内側」とし、中央部から遠ざかる側を「車外側」とする。
【0016】
図1に示すように、車両において側壁部の車内側の近傍には、前席を構成する乗物用シートとしての車両用シート11が配置されている。車両用シート11は、シートクッション12及びシートバック13を備えている。シートクッション12は、車体の床に設置された図示しないレールに対し、前後位置調整可能に取付けられている。シートバック13は、シートクッション12の後部から、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態で起立しており、傾斜角度を調整可能に構成されている。車両用シート11は、シートバック13が前方を向く姿勢で車室内に配置されている。このように配置された車両用シート11の幅方向は、車幅方向と合致する。
【0017】
次に、シートバック13における車外側の側部13oの内部構造について説明する。
図2に示すように、シートバック13の内部には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部であるサイドフレーム部14は、シートバック13の車外側の側部13o内に配置されており、金属板を曲げ加工等することによって形成されている。サイドフレーム部14を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド15が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成されたバックボード16が配置されている。
【0018】
シートパッド15における車外側の側部13o内であって、サイドフレーム部14の車外側に隣接する箇所には、収納部17が設けられている。この収納部17は、車両用シート11に着座している乗員P1の側方に位置する。この収納部17には、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールABMが組み込まれている。
【0019】
収納部17の前側かつ車外側の角部からは、斜め前かつ車外側に向けてスリット18が延びている。シートパッド15の車外側の側部13oにおける前側の角部15cとスリット18とによって挟まれた箇所(図2において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、後述するエアバッグ40によって破断される破断予定部19を構成している。
【0020】
図2に示すように、エアバッグモジュールABMは、インフレータアセンブリ20、エアバッグ40、及びエアバッグカバー43を主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
【0021】
ここで、本実施形態では、エアバッグモジュールABM及びその構成部材について「上下方向」、「前後方向」というときは、車両用シート11のシートバック13を基準としている。シートバック13の起立する方向をエアバッグモジュールABM等の「上下方向」とし、シートバック13の厚み方向をエアバッグモジュールABM等の「前後方向」としている。上述したように、シートバック13は後方へ多少傾斜していることから、エアバッグモジュールABM等の「上下方向」は厳密には車両の上下方向(鉛直方向)と合致しておらず、多少傾斜している。同様に、エアバッグモジュールABM等の「前後方向」は、車両の前後方向(水平方向)と合致しておらず、多少傾斜している。
【0022】
<インフレータアセンブリ20>
図1及び図3に示すように、インフレータアセンブリ20は、インフレータ21と、そのインフレータ21を覆うリテーナ30とを備えており、全体が軸線L1に沿って上下方向へ延びる長尺状をなしている。
【0023】
<インフレータ21>
図3に示すように、インフレータ21は略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤が収容されている。インフレータ21は、その上端部にガス噴出部22を有している。また、インフレータ21の下端部には、インフレータ21への作動信号の入力配線となる図示しないハーネスが接続されている。ここでは、インフレータ21として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。
【0024】
<リテーナ30>
図3及び図4に示すように、リテーナ30はインフレータアセンブリ20の外周部分を構成している。このリテーナ30は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ21をエアバッグ40等と一緒にサイドフレーム部14に取り付ける機能を有する部材である。また、後に説明するエアバッグ40のテザー41とともに、エアバッグ40が展開膨張する際に、エアバッグ40が後方へ移動することを規制する機能を有する部材である。
【0025】
図3に示すように、リテーナ30の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって形成されており、筒状の本体部31と、本体部31の上側に隣接する板状の突出部32を有している。突出部32は、本体部31の上端から軸線L1に平行に上方に延びている。
【0026】
図2及び図3に示すように、本体部31は、径方向断面が略八角形の筒状に形成されている。本体部31の長手方向の長さ、つまり、軸線L1に沿う方向の長さH1は、インフレータ21の軸線L1に沿う方向の長さH2と略同一か少し長く形成されている。そのため、インフレータ21がリテーナ30に組み付けられた状態では、インフレータ21は、本体部31によってその外周面全体が覆われた状態となっている。本体部31は、その長手方向における一部が縮径するようにかしめられることにより、インフレータ21に係止されている。
【0027】
本体部31の上下方向に互いに離間した複数箇所には、リテーナ30をサイドフレーム部14に取付けるための部材として、ボルト33が固定されている。ボルト33は、本体部31から車内側へ向けて突出している。各ボルト33の突出する方向は、軸線L1に対し直交する方向の1つである。
【0028】
図3に示すように、突出部32は、本体部31の筒状の周壁の一部を上方へ延ばした形状に形成されている。具体的には、径方向断面が略八角形の筒状である本体部31の8つの周壁31aのうち、最も後方に位置する周壁31aの上端から上方に延びるような形状で、本体部31と一体に形成されている。そして、インフレータ21がリテーナ30に組み付けられた状態では、突出部32は、インフレータ21の上端から上方に突出するように延びている。
【0029】
<エアバッグ40>
図4に示すように、エアバッグ40は、1枚の布片を、その中央部分に設定した折り線に沿って前方へ二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分の周縁部を、周縁結合部S1によって縫合することにより袋状に形成されている。布片としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
【0030】
エアバッグ40は、車両用シート11と側壁部との間で展開膨張したときに、乗員P1の上半身の多くの部分、本実施形態では、腰部PPから肩部PSにかけての部位の側方で展開膨張し得る形状及び大きさに形成されている。
【0031】
エアバッグ40の内部には、インフレータアセンブリ20が配置されている。インフレータアセンブリ20は、インフレータ21のガス噴出部22が上方に位置し、リテーナ30の突出部32が上方に位置するように配置されている。また、インフレータアセンブリ20における複数のボルト33は、エアバッグ40の車内側の布部に貫設されたボルト孔42に挿通されている。この挿通により、インフレータアセンブリ20が、エアバッグ40に対し位置決めされた状態で係止されている。
【0032】
図4は、エアバッグ40が展開膨張された状態を示す側面図である。図4及び図5に示すように、エアバッグ40の車内側の布片と車外側の布片との間には、長四角形状で帯状の布片で構成されたテザー41が架け渡されている。テザー41は、エアバッグ40の展開膨張時に、リテーナ30に形成された突出部32に当接してエアバッグ40の後方への移動を規制する規制部として機能する。
【0033】
テザー41は、その長手方向の一端部で車内側の布片に対して結合部S2によって縫合されているとともに、長手方向の他端部で車外側の布片に対して結合部S2によって縫合されている。結合部S2は、インフレータアセンブリ20の軸線L1と平行となるように形成されている。また、車内側の布片における結合部S2の位置と、車外側の布片における結合部S2の位置は一致している。結合部S2は、リテーナ30の突出部32の前方であって、突出部32に近接した位置に形成されている。
【0034】
図2に示すように、エアバッグ40は、インフレータアセンブリ20よりも前側部分が折り畳まれることにより、コンパクトな形態にされて収納部17内に収納されている。これは、エアバッグ40を、シートバック13における限られた大きさの収納部17に対し、収納に適したものとするためである。
【0035】
エアバッグ40において、折り畳まれた部分の上部と下部とには、それぞれ図示しない結束テープが巻き付けられている。これらの結束テープにより、エアバッグ40は収納部17内で折り畳まれた状態に保持されている。
【0036】
<エアバッグカバー43>
図2に示すように、エアバッグカバー43は、収納部17内で、折り畳まれた状態のエアバッグ40を包み込んでいる。エアバッグカバー43は、不織布等からなる複数の布片によって形成されている。エアバッグカバー43には、エアバッグ40が展開膨張した時に、エアバッグ40によって押圧されて破断されるスリットが設けられている。エアバッグカバー43には、図示しないボルト孔が貫設されている。
【0037】
図2に示すように、エアバッグモジュールABMは収納部17内に配置されている。リテーナ30に固定された複数のボルト33は、エアバッグ40に形成されたボルト孔42及びエアバッグカバー43に形成された図示しないボルト孔を介して、サイドフレーム部14に対して車外側から挿通される。ボルト33に対し、車内側からナット34が締付けられることにより、インフレータアセンブリ20が、エアバッグ40とともに、起立した状態でサイドフレーム部14に固定されている。
【0038】
図1に示すように、サイドエアバッグ装置は、衝撃センサ51及び制御装置52を備えている。衝撃センサ51は加速度センサ等からなり、車両に対して側方から加わる衝撃を検出する。制御装置52は、衝撃センサ51からの検出信号に基づきインフレータアセンブリ20の作動を制御する。
【0039】
次に、本実施形態のサイドエアバッグ装置の作用について説明する。
車両の走行中等に、側方から所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ51によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置52からインフレータアセンブリ20に対し作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータアセンブリ20で膨張用ガスが発生される。この膨張用ガスが供給されたエアバッグ40は、折り状態の解消(展開)を伴いながら膨張する。
【0040】
図5に示すように、インフレータ21から膨張用ガスが供給されると、膨張用ガスの圧力がエアバッグ40によって受け止められる。このとき、エアバッグ40の後端部では、エアバッグ40を後方に向かって展開膨張させようとする押圧力Fが作用する。
【0041】
ここで、軸線L1に沿って延びるインフレータアセンブリ20は、起立した状態で収納部17に組み込まれており、リテーナ30の本体部31の上側には、軸線L1に平行に上方に延びる突出部32が形成されている。また、エアバッグ40の後端部内における突出部32の前方となる位置には、車幅方向にテザー41が架け渡されている。そのため、後方に向かって展開膨張しようとするエアバッグ40の後端部では、テザー41がリテーナ30の突出部32に当接し、後方へのそれ以上の移動が規制される。また、押圧力Fによってもテザー41が突出部32に当接し易くなり、後方へのそれ以上の移動が規制される。エアバッグ40内には膨張用ガスが供給され続けるため、後方への移動が規制された状態のエアバッグ40は、前方へ向けて展開膨張しようとする。
【0042】
また、膨張用ガスの圧力がテザー41を介して板状の突出部32によって受け止められ、これにより、突出部32に直交する方向へ向かう反力が発生される。突出部32は、軸線L1に沿って延びていることから、突出部32によって発生した反力は、前方へ向かう反力となる。
【0043】
これにより、エアバッグ40は、後方への移動が規制された状態で前方へ向けて展開膨張しようとする。展開膨張しようとするエアバッグ40によって、エアバッグカバー43がスリットで破断されて、エアバッグ40がエアバッグカバー43の外部に出る。また、エアバッグ40によってシートバック13のシートパッド15が押圧され、破断予定部19(図2参照)においてシートパッド15が破断される。エアバッグ40は、その一部を収納部17に残した状態で、破断された箇所を通じてシートバック13から前方へ飛び出す。
【0044】
シートバック13から前方へ飛び出した後も、エアバッグ40の内部では突出部32にテザー41が当接し続けており、エアバッグ40は後方への移動が規制されている。この状態で、エアバッグ40は、膨張用ガスによって前方に向かって展開膨張し続ける。また、突出部32によって受け止められた膨張用ガスにより、前方へ向かう反力が発生する。そのため、突出部32が形成されていない場合に比べ、エアバッグ40の前方への展開膨張が早期に行われる。前方へ展開膨張するエアバッグ40は、乗物用シートに着座している乗員P1と乗物の側壁部との間に入り込み、乗員P1の上半身は、展開膨張したエアバッグ40によって押圧されて拘束される。その結果、側壁部を通じて伝わる側方からの衝撃が、エアバッグ40によって緩和されて、乗員P1の上半身が保護される。
【0045】
本実施形態のサイドエアバッグ装置によれば、以下の効果が得られる。
(1)リテーナ30には、エアバッグ40の後方への移動を規制する突出部32が一体に形成され、エアバッグ40の後端部には、突出部32に当接するテザー41が車幅方向に架け渡されている。
【0046】
そのため、エアバッグ40を前方へ向けて展開膨張させるための受圧部材を別途設けなくても、エアバッグ40を前方へ向けて早期に展開膨張させることができる。エアバッグ40を所望の位置に展開膨張させるための部品点数の増加を抑制することができる。また、部品点数の増加を抑制することができるため、コストの上昇が抑制され、車両軽量化にも貢献することができる。
【0047】
(2)突出部32は、インフレータ21を保持した状態のリテーナ30の周壁31aのうち、インフレータ21の後方側に位置する周壁31aから上方へ突出している。
そのため、インフレータ21で発生した膨張用ガスは、突出部32によって流通を邪魔され難く、エアバッグ40内を前方に向かって供給され易い。エアバッグ40の後端部を前方へ向けて早期に展開膨張させることができる。
【0048】
(3)突出部32は、リテーナ30の周壁31aから上方へ延びる板状に形成されている。
そのため、突出部32による前方への反力が発生し易い。エアバッグ40の後端部を前方へ向けて早期に展開膨張させることができる。
【0049】
(4)テザー41は、エアバッグ40の内部で乗物の幅方向に架け渡された帯状の部材として構成されている。
そのため、簡単な構成でありながらエアバッグ40の後方への移動を容易に規制することができる。
【0050】
(5)テザー41は、インフレータアセンブリ20の軸線L1と平行となるように、つまり、突出部32が延びる方向と平行となるように形成された結合部S2により、車内側の布片及び車外側の布片に対して縫合されている。
【0051】
そのため、テザー41は、エアバッグ40の展開膨張時に突出部32の前面に沿い易い。テザー41によるエアバッグ40の移動規制が適切になされる。
上記実施形態は、次のように変更することができる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
【0052】
・リテーナ30の形状は上記実施形態のものに限定されない。例えば、円筒状であってもよく、四角筒状であってもよい。リテーナ30の形状が円筒状である場合、突出部32は、径方向断面が円弧状であってもよい。
【0053】
・リテーナ30の本体部31の長さH1は、インフレータ21の長さH2より長くてもよく、短くてもよい。本体部31の長さに拘わらず、突出部32がインフレータ21の上端から突出しており、テザー41と協働してエアバッグ40の後方への移動を規制することが可能であればよい。
【0054】
・リテーナ30は、本体部31によって、インフレータ21の外周面全体が覆う状態となっていなくてもよい。本体部31が、インフレータ21の一部が露出されるような形状に形成されていてもよい。
【0055】
・上記実施形態の突出部32は、径方向断面が略八角形の筒状である本体部31の8つの周壁31aのうち、最も後方に位置する周壁31aの上端から上方に延びるように形成されているが、その形成位置はこれに限定されない。例えば、図6(a)に示すように、最も後方に位置する周壁31aに隣接する周壁31aから形成されていてもよい。また、膨張用ガスの十分な供給通路が確保されていれば、前方側に位置する周壁31aに形成されていてもよい。
【0056】
・突出部32は、リテーナ30の本体部31の上側に隣接して形成されているものに限定されない。本体部31の下側に隣接して形成されていてもよく、上側及び下側の両方に隣接して形成されていてもよい。
【0057】
・突出部32の形状は特に限定されない。例えば、本体部31に隣接して延びる棒状のものであってもよい。
・突出部32の数は特に限定されない。例えば、図6(a)に示すように2箇所に形成されていてもよく、3箇所以上に形成されていてもよい。
【0058】
・エアバッグ40に形成された規制部は、上記実施形態のようなテザー41でなくてもよい。例えば、図6(b)に示すように、突出部32を包む筒状のインナチューブ44でもよく、袋状のものでもよい。突出部32の前方に当接して、エアバッグ40の後方への移動を規制する部材であれば、その形状は特に限定されない。
【0059】
・上記実施形態では、インフレータアセンブリ20は、インフレータ21のガス噴出部22が上端部に位置するように配置されているが、これに限定されない。ガス噴出部22が下端部に位置していてもよい。
【0060】
・エアバッグ40は、その略全体が膨張するものであってもよく、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
・エアバッグ40は、内部が、複数の膨張室に区画されたものであってもよい。
【0061】
・エアバッグ40の大きさ、形状は特に限定されない。
・エアバッグ40によって保護される部位は、上記実施形態のものに限定されない。例えば、乗員P1の頭部まで保護されるようなものであってもよい。
【0062】
・エアバッグカバー43は省略することができる。
・上記実施形態では、サイドエアバッグ装置として、乗物用シートに着座している乗員と乗物の側壁部との間でエアバッグが展開膨張するものについて説明したが、これに限定されない。例えば、隣り合う乗物用シートの間でエアバッグが展開膨張するファーサイドエアバッグ装置であってもよい。
【0063】
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に追記する。
(A)前記突出部は、板状に形成されている請求項1又は2に記載のサイドエアバッグ装置。
【0064】
上記の構成によれば、膨張用ガスの圧力が突出部によって受け止められて、突出部に直交する方向へ向かう反力が発生され易い。エアバッグ40が前方に向かって早期に展開膨張され易くなる。
【0065】
(B)前記規制部は、前記エアバッグの内部で前記突出部の周囲を覆うように設けられたインナチューブである請求項1又は2に記載のサイドエアバッグ装置。
上記の構成によれば、簡単な構成でエアバッグの後方への移動を規制することができる。
【符号の説明】
【0066】
11…車両用シート(乗物用シート)
13…シートバック
13o…車外側の側部
17…収納部
20…インフレータアセンブリ
21…インフレータ
30…リテーナ
31a…周壁
32…突出部
40…エアバッグ
41…テザー(規制部)
L1…軸線
P1…乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6