(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20230328BHJP
B60C 11/00 20060101ALN20230328BHJP
B60C 11/13 20060101ALN20230328BHJP
B60C 9/18 20060101ALN20230328BHJP
【FI】
B29D30/06
B60C11/00 F
B60C11/13 B
B60C9/18 G
(21)【出願番号】P 2020530215
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2019027235
(87)【国際公開番号】W WO2020013210
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2018131539
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安宅 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 華奈
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第88/010199(WO,A1)
【文献】特開2005-306077(JP,A)
【文献】特開2001-163009(JP,A)
【文献】特開2008-049967(JP,A)
【文献】特開平03-096402(JP,A)
【文献】特開2001-130217(JP,A)
【文献】特開2012-046061(JP,A)
【文献】国際公開第2017/045600(WO,A1)
【文献】特開2004-196142(JP,A)
【文献】特開平04-015104(JP,A)
【文献】特開2017-206144(JP,A)
【文献】特開2012-000644(JP,A)
【文献】特開2004-203343(JP,A)
【文献】特開2015-120439(JP,A)
【文献】特開2018-154075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
B29C 33/02
B29C 35/02
B60C 9/18
B60C 11/00
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接触するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備え
、前記トレッドが前記ベルトに積層される、重荷重用空気入りタイヤを、前記タイヤを成形するモールドを備える加硫装置を用いて製造するための方法であって、
前記トレッド及び前記ベルトを含む生タイヤを準備する工程と、
前記生タイヤをモールドに投入する工程と、
前記モールド内で前記生タイヤを拡径するとともに加圧及び加熱する工程と
を含み、
前記ベルトが径方向に積層された複数の層で構成され、前記複数の層のうち、最も広い軸方向幅を有する層が第一基準層であり、前記第一基準層の外側に積層される層が第二基準層であり、径方向において最も内側に位置する層が第三基準層であり、
前記第三基準層が前記第一基準層の内側に位置し、
前記第三基準層の端部における、以下の式(1)で示されるショルダーストレッチSsに対する、前記第三基準層の中心部における、以下の式(2)で示されるセンターストレッチScの比が1以上3以下であり、
前記ショルダーストレッチSsが、1%以上である、重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
(ショルダーストレッチSs) 100×(Rsa-Rsb)/Rsb ・・・(1)
(センターストレッチSc) 100×(Rca-Rcb)/Rcb ・・・(2)
(ただし、Rsaはタイヤにおける第三基準層の端部の内径であり、Rsbは生タイヤにおける第三基準層の端部の内径である。Rcaはタイヤにおける第三基準層の中心部の内径であり、Rcbは生タイヤにおける第三基準層の中心部の内径である。)
【請求項2】
前記ショルダーストレッチSsが2%以下である、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記トレッドのセンター部におけるラジアルランアウトのオーバーオール値が1.5mm以下であり、
前記トレッドのショルダー部におけるラジアルランアウトのオーバーオール値が1.5mm以下である、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記センター部におけるラジアルランアウトのオーバーオール値と前記ショルダー部におけるラジアルランアウトのオーバーオール値との差の絶対値が0.5mm以下である、請求項3に記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記トレッドの周方向各部における、前記センター部におけるラジアルランアウトと前記ショルダー部におけるラジアルランアウトとの差の絶対値が0.20mm以下である、請求項3又は4に記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記トレッドが、径方向外向きに凸なプロファイルを有するトレッド面を備え、
前記トレッドに少なくとも3本の周方向溝が刻まれることにより、軸方向に並列した少なくとも4本の陸部が構成され、これら陸部のうち、軸方向において内側に位置する陸部がセンター陸部であり、軸方向において外側に位置する陸部がショルダー陸部であり、
前記ベルトを構成する複数の層のそれぞれが、周方向に対して傾斜した多数のベルトコードを含む、請求項1から5のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項7】
少なくとも3本の前記周方向溝が、軸方向において内側に位置するセンター周方向溝と、外側に位置するショルダー周方向溝とを含み、
前記ショルダー周方向溝が前記センター周方向溝よりも細い、請求項6に記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記ショルダー陸部が周方向に途切れることなく連続して延びる、請求項6又は7に記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記タイヤが、軸方向において、前記ショルダー陸部の外側に位置し、周方向に延びる細陸部を備え、
前記細陸部と前記ショルダー陸部との間が細縦溝であり、
軸方向において、前記細縦溝が前記第一基準層の端よりも外側に位置する、請求項6から8のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記ショルダー陸部の実幅が前記センター陸部の実幅よりも広い、請求項6から9のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項11】
前記第一基準層において、前記ベルトコードの層端部における傾斜角度が赤道面における傾斜角度と等しい、請求項6から10のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項12】
前記第一基準層及び前記第二基準層において、前記ベルトコードの赤道面における傾斜角度が12°以上20°以下である、請求項6から11のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項13】
前記第一基準層の軸方向幅が前記トレッド面の軸方向幅と同等である又は前記トレッド面の軸方向幅よりも狭い、請求項6から12のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項14】
前記トレッド面が、前記タイヤの赤道を含むクラウン部と、軸方向においてそれぞれが前記クラウン部の外側に位置する一対のサイド部とを含み、
前記クラウン部のプロファイルが半径Rcを有する円弧で表され、前記サイド部のプロファイルが前記半径Rsを有する円弧で表され、
前記サイド部のプロファイルを表す円弧の半径Rsが前記クラウン部のプロファイルを表す円弧の半径Rcよりも大きい、請求項6から13のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【請求項15】
前記トレッド面の端を通る前記タイヤの内面の法線に沿って計測されるタイヤの厚さが、赤道面に沿って計測されるタイヤの厚さよりも厚い、請求項6から14のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用空気入りタイヤのトレッドには通常、周方向に連続して延びる周方向溝が刻まれる。これにより、軸方向に並列した複数の陸部がこのトレッドには構成される。赤道の部分に位置する陸部は、センター陸部と称される。トレッド面の端の部分に位置する陸部は、ショルダー陸部と称される。
【0003】
赤道から軸方向外側に向けて、赤道との周長差は徐々に大きくなる。ショルダー陸部は路面に対して滑りやすいため、ショルダー陸部には摩耗が発生しやすい。
【0004】
ショルダー陸部の摩耗、すなわちタイヤの偏摩耗は、タイヤの外観はもちろんのこと、このタイヤの接地圧分布に変化を招来するため、走行性能や耐久性を低下させる恐れがある。偏摩耗の発生を抑制するために様々な検討が行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
偏摩耗の発生を抑制するために、トレッドのプロファイルの最適化を中心とする様々な検討が行われている。しかし偏摩耗の発生を完全に抑制できる技術の確立には至っていないのが実状である。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、偏摩耗の発生が抑制された、重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、偏摩耗の発生を抑制する技術について鋭意検討したところ、トレッドの赤道の部分、すなわちセンター部におけるラジアルランアウトとともに、トレッドの端の部分、すなわちショルダー部におけるラジアルランアウトをコントロールすることにより、偏摩耗の発生を抑制できること、そして生タイヤをモールド内で加圧及び加熱する際のベルトの中心部のストレッチだけでなく、ベルトの端部のストレッチを規定することにより、ラジアルランアウトを効果的にコントロールできることを見出し、本発明を完成するに至っている。
【0009】
本発明の一態様に係る重荷重用空気入りタイヤは、生タイヤを加硫成形してなる重荷重用空気入りタイヤであって、路面と接触するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備える。前記トレッドは径方向外向きに凸なプロファイルを有するトレッド面を備え、前記トレッド面は前記タイヤの赤道を含むクラウン部と、軸方向においてそれぞれが前記クラウン部の外側に位置する一対のサイド部とを含み、前記クラウン部のプロファイルが半径Rcを有する円弧で表され、前記サイド部のプロファイルが前記半径Rsを有する円弧で表される。前記トレッドに少なくとも3本の周方向溝が刻まれることにより、軸方向に並列した少なくとも4本の陸部が構成され、これら陸部のうち、軸方向において内側に位置する陸部がセンター陸部であり、軸方向において外側に位置する陸部がショルダー陸部である。前記ベルトは径方向に積層された複数の層で構成され、それぞれの層は周方向に対して傾斜した多数のベルトコードを含む。前記複数の層のうち、最も広い軸方向幅を有する層が第一基準層であり、前記第一基準層の外側に積層される層が第二基準層であり、径方向において最も内側に位置する層が第三基準層である。前記第三基準層の端部における、以下の式(1)で示されるショルダーストレッチSsに対する、前記第三基準層の中心部における、以下の式(2)で示されるセンターストレッチScの比が1以上3以下であり、前記ショルダーストレッチSsが1%以上である。
(ショルダーストレッチ) 100×(Rsa-Rsb)/Rsb ・・・(1)
(センターストレッチ) 100×(Rca-Rcb)/Rcb ・・・(2)
(ただし、Rsaはタイヤにおける第三基準層の端部の内径であり、Rsbは生タイヤにおける第三基準層の端部の内径である。Rcaはタイヤにおける第三基準層の中心部の内径であり、Rcbは生タイヤにおける第三基準層の中心部の内径である。)
【0010】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、少なくとも3本の前記周方向溝は、軸方向において内側に位置するセンター周方向溝と、外側に位置するショルダー周方向溝とを含む。前記ショルダー周方向溝は前記センター周方向溝よりも細い。
【0011】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ショルダーストレッチSsは2%以下である。
【0012】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記トレッドのセンター部におけるラジアルランアウトのオーバーオール値は1.5mm以下であり、前記トレッドのショルダー部におけるラジアルランアウトのオーバーオール値は1.5mm以下である。
【0013】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記センター部におけるラジアルランアウトのオーバーオール値と前記ショルダー部におけるラジアルランアウトのオーバーオール値との差の絶対値は0.5mm以下である。
【0014】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記トレッドの周方向各部における、前記センター部におけるラジアルランアウトと前記ショルダー部におけるラジアルランアウトとの差の絶対値は0.20mm以下である。
【0015】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ショルダー陸部は周方向に途切れることなく連続して延びる。
【0016】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤは、軸方向において、前記ショルダー陸部の外側に位置し、周方向に延びる細陸部を備える。前記細陸部と前記ショルダー陸部との間は細縦溝であり、軸方向において、前記細縦溝が前記第一基準層の端よりも外側に位置する。
【0017】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記第一基準層の軸方向幅は前記トレッド面の軸方向幅と同等である又は前記トレッド面の軸方向幅よりも狭い。
【0018】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ショルダー陸部の実幅は前記センター陸部の実幅よりも広い。
【0019】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ベルトを構成する複数の層のうち、少なくとも一の層において、前記ベルトコードの層端部における傾斜角度が赤道面における傾斜角度と等しい。
【0020】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記第一基準層及び前記第二基準層において、前記ベルトコードの赤道面における傾斜角度は12°以上20°以下である。
【0021】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記トレッド面の端を通る前記タイヤの内面の法線に沿って計測されるタイヤの厚さは、赤道面に沿って計測されるタイヤの厚さよりも厚い。
【0022】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記サイド部のプロファイルを表す円弧の半径Rsは前記クラウン部のプロファイルを表す円弧の半径Rcよりも大きい。
【0023】
本発明の一態様に係る重荷重用空気入りタイヤの製造方法は、路面と接触するトレッドと前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備える、重荷重用空気入りタイヤを、前記タイヤを成形するモールドを備える加硫装置を用いて製造するための方法であって、
(1)前記トレッド及び前記ベルトを含む生タイヤを準備する工程、
(2)前記生タイヤをモールドに投入する工程、及び
(3)前記モールド内で前記生タイヤを拡径するとともに加圧及び加熱する工程
を含む。前記ベルトは径方向に積層された複数の層で構成され、前記複数の層のうち、最も広い軸方向幅を有する層が第一基準層であり、前記第一基準層の外側に積層される層が第二基準層であり、径方向において最も内側に位置する層が第三基準層である。前記第三基準層の端部における、以下の式(1)で示されるショルダーストレッチSsに対する、前記第三基準層の中心部における、以下の式(2)で示されるセンターストレッチScの比は1以上3以下であり、前記ショルダーストレッチSsは1%以上である。
(ショルダーストレッチSs) 100×(Rsa-Rsb)/Rsb ・・・(1)
(センターストレッチSc) 100×(Rca-Rcb)/Rcb ・・・(2)
(ただし、Rsaはタイヤにおける第三基準層の端部の内径であり、Rsbは生タイヤにおける第三基準層の端部の内径である。Rcaはタイヤにおける第三基準層の中心部の内径であり、Rcbは生タイヤにおける第三基準層の中心部の内径である。)
【発明の効果】
【0024】
本発明の重荷重用空気入りタイヤでは、生タイヤにおけるベルトの内径と、この生タイヤを加圧及び加熱することにより得られるタイヤにおけるベルトの内径とに基づいて特定されるベルトのストレッチが所定範囲に設定される。これにより、このタイヤでは、トレッドのセンター部におけるラジアルランアウトとそのショルダー部におけるラジアルランアウトとがバランスよく整えられる。このタイヤのトレッドには、偏摩耗の起点となる恐れのある部分(例えば、凹凸)は形成されにくい。このタイヤでは、偏摩耗の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【
図2】
図2は、ベルトに含まれるベルトコードの配列が示された概略図である。
【
図3】
図3は、
図1のタイヤのトレッド面が示された展開図である。
【
図4】
図4は、タイヤのトレッド面のプロファイルを説明する説明図である。
【
図5】
図5は、加硫成形の際のベルトのストレッチを説明する図である。
【
図6】
図6は、
図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0027】
本発明においては、タイヤをリム(正規リム)に組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ及びタイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0028】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0029】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0030】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、例えば、トラック、バス等の重荷重車両に装着される。
【0032】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。この
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0033】
図1において、タイヤ2はリムRに組み込まれている。このリムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が正規内圧に調整されている。このタイヤ2には、荷重はかけられていない。
【0034】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、ベルト14、クッション層16、インナーライナー18、一対のスチール補強層20及び一対の繊維補強層21を備える。
【0035】
トレッド4は架橋ゴムからなる。トレッド4はその外面22において路面と接触する。トレッド4の外面22はトレッド面である。このトレッド4はトレッド面22を備える。
図1において符号PCは、トレッド面22と赤道面との交点である。この交点PCは、このタイヤ2の赤道である。
【0036】
このタイヤ2では、トレッド4に、少なくとも3本の周方向溝24が刻まれる。これにより、このトレッド4には、少なくとも4本の陸部26が構成される。
【0037】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6の外面28は、タイヤ2の側面をなす。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0038】
それぞれのビード8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード8は、コア30と、エイペックス32とを備える。
【0039】
コア30は、周方向に延びる。コア30は、巻き回されたスチール製のワイヤ34を含む。コア30は略六角形の断面形状を有する。エイペックス32は、コア30の径方向外側に位置する。エイペックス32は、コア30から径方向外向きに延びる。エイペックス32は、内側エイペックス32uと外側エイペックス32sとを備える。内側エイペックス32u及び外側エイペックス32sは架橋ゴムからなる。外側エイペックス32sは内側エイペックス32uに比して軟質である。
【0040】
それぞれのチェーファー10は、ビード8の軸方向外側に位置する。このチェーファー10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。チェーファー10は、リムRのシートS及びフランジFと接触する。チェーファー10は、架橋ゴムからなる。
【0041】
カーカス12は、トレッド4、サイドウォール6及びチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ36を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ36からなる。
【0042】
図示されないが、カーカスプライ36は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは、トッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。このタイヤ2では、カーカスコードが赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。このタイヤ2のカーカス12は、ラジアル構造を有する。このタイヤ2では、カーカスコードの材質はスチールである。有機繊維からなるコードが、カーカスコードとして用いられてもよい。
【0043】
このタイヤ2では、カーカスプライ36はそれぞれのコア30の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。このカーカスプライ36は、一方のコア30と他方のコア30とを架け渡す本体部38と、この本体部38に連なりそれぞれのコア30の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部40とを有する。このタイヤ2では、折り返し部40の端42は、径方向において、内側エイペックス32uの外端44よりも内側に位置する。
【0044】
ベルト14は、トレッド4の径方向内側に位置する。このベルト14は、カーカス12の径方向外側に位置する。
【0045】
ベルト14は、径方向に積層された複数の層46で構成される。このタイヤ2のベルト14は、第一層46A、第二層46B、第三層46C及び第四層46Dからなる4枚の層46で構成される。このタイヤ2では、ベルト14を構成する層46の数に特に制限はない。ベルト14の構成は、タイヤ2の仕様が考慮され適宜決められる。
【0046】
このタイヤ2では、4枚の層46のうち、第一層46Aと第三層46Cとの間に位置する第二層46Bが最も広い軸方向幅を有する。径方向において最も外側に位置する第四層46Dが、最も狭い軸方向幅を有する。
図1に示されるように、第三層46Cの軸方向幅は第一層46Aの軸方向幅よりも広い。このタイヤ2では、ベルト14を構成する、第一層46A、第二層46B、第三層46C及び第四層46Dの端は、軸方向において、後述するショルダー周方向溝の外側に位置する。
【0047】
図2には、このタイヤ2のベルト14の構成が示される。この
図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。
【0048】
ベルト14を構成する、それぞれの層46は、並列した多数のベルトコード46cを含む。各層46におけるベルトコード46cの本数は、このベルトコード46cの延在方向に対して垂直な面に沿った、この層46の断面において、この層46の幅50mmあたりに20本以上40本以下である。ベルトコード46cはトッピングゴム46gで覆われる。このタイヤ2では、ベルトコード46cの材質はスチールである。このベルトコード46cは、スチールコードである。この
図2においては、説明の便宜のために、トッピングゴム46gで覆われたベルトコード46cが実線で表されている。
【0049】
ベルトコード46cは、周方向に対して傾斜する。このタイヤ2では、ベルト14を構成するそれぞれの層46は、周方向に対して傾斜した多数のベルトコード46cを含む。
【0050】
図2に示されるように、第一層46Aのベルトコード46cの周方向に対する傾斜の向きは、第二層46Bのベルトコード46cの周方向に対する傾斜の向きと同じである。第二層46Bのベルトコード46cの周方向に対する傾斜の向きは、第三層46Cのベルトコード46cの周方向に対する傾斜の向きと逆である。第三層46Cのベルトコード46cの周方向に対する傾斜の向きは、第四層46Dのベルトコード46cの周方向に対する傾斜の向きと同じである。なお、第一層46Aのベルトコード46cの周方向に対する傾斜の向きが第二層46Bのベルトコード46cの周方向に対する傾斜の向きと逆であってもよく、第四層46Dのベルトコード46cの周方向に対する傾斜の向きが第三層46Cのベルトコード46cの周方向に対する傾斜の向きと逆であってもよい。
【0051】
本発明においては、ベルトを構成する複数の層のうち、最も広い軸方向幅を有する層が第一基準層であり、第一基準層の外側に積層される層が第二基準層であり、径方向において最も内側に位置する層が第三基準層である。前述したように、このタイヤ2では、ベルト14は径方向に積層された、第一層46A、第二層46B、第三層46C及び第四層46Dで構成される。このタイヤ2では、これら層46のうち、最も広い軸方向幅を有する第二層46Bが第一基準層B1であり、径方向において、この第二層46Bの外側に積層される第三層46Cが第二基準層B2である。径方向において最も内側に位置する第一層46Aが第三基準層B3である。そして第四層46Dが第四基準層B4である。
【0052】
それぞれのクッション層16は、ベルト14の端の部分において、このベルト14とカーカス12との間に位置する。クッション層16は、架橋ゴムからなる。
【0053】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0054】
それぞれのスチール補強層20は、ビード8の部分に位置する。スチール補強層20は、カーカスプライ36に沿って、コア30の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。このタイヤ2では、スチール補強層20の少なくとも一部はカーカスプライ36と接する。図示されないが、スチール補強層20は並列した多数のフィラーコードを含む。フィラーコードの材質はスチールである。
【0055】
それぞれの繊維補強層21は、ビード8の軸方向外側に位置し、スチール補強層20の軸方向外側部分の端部を覆う。この繊維補強層21は、2枚のプライ47からなる。図示されないが、それぞれのプライ47は並列した多数の繊維コードを含む。繊維補強層21において繊維コードはトッピングゴムで覆われる。繊維コードは有機繊維からなる。この有機繊維としてはナイロン繊維が好ましい。
【0056】
図3は、トレッド面22の展開図を示す。この
図3において、左右方向はこのタイヤ2の軸方向であり、上下方向はこのタイヤ2の周方向である。この
図3の紙面に対して垂直な方向は、このタイヤ2の径方向である。
【0057】
図3において、符号PEはトレッド面22の端である。外観上、トレッド面22の端PEの識別が不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としトレッド4を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端がトレッド面22の端PEとして定められる。
【0058】
このタイヤ2では、4本の周方向溝24がトレッド4に刻まれる。これら周方向溝24は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
【0059】
4本の周方向溝24のうち、軸方向において内側に位置する周方向溝24c、すなわち赤道PCに近い周方向溝24cがセンター周方向溝24cである。軸方向において外側に位置する周方向溝24s、すなわち、トレッド面22の端PEに近い周方向溝24sがショルダー周方向溝24sである。なお、トレッド4に刻まれた周方向溝24に、赤道PC上に位置する周方向溝24が含まれる場合には、赤道PC上に位置する周方向溝24がセンター周方向溝とされる。さらにセンター周方向溝24cとショルダー周方向溝24sとの間に周方向溝24が存在する場合には、この周方向溝24がミドル周方向溝とされる。
【0060】
図3において、両矢印TWはトレッドの実幅である。このトレッドの実幅TWは、トレッド面22に沿って計測される、一方のトレッド面22の端PEから他方のトレッド面22の端PEまでの距離で表される。この
図3において、両矢印GCはセンター周方向溝24cの実幅である。両矢印GSはショルダー周方向溝24sの実幅である。実幅GC及び実幅GSは、トレッド面22に周方向溝24がないと仮定して得られる仮想トレッド面に沿って計測される。
図1において、両矢印DCはセンター周方向溝24cの深さである。両矢印DSは、ショルダー周方向溝24sの深さである。
【0061】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、センター周方向溝24cの実幅GCはトレッドの実幅TWの2~10%程度が好ましい。センター周方向溝24cの深さDCは、13~25mmが好ましい。
【0062】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ショルダー周方向溝24sの実幅GSはトレッドの実幅TWの1~7%程度が好ましい。ショルダー周方向溝24sの深さDSは、13~25mmが好ましい。
【0063】
前述したように、このタイヤ2では、4本の周方向溝24がトレッド4に刻まれる。これにより、このトレッド4には5本の陸部26が構成される。これら陸部26は、軸方向に並列され、周方向に延びる。
【0064】
5本の陸部26のうち、軸方向において内側に位置する陸部26c、すなわち赤道PC上に位置する陸部26cがセンター陸部26cである。軸方向において外側に位置する陸部26s、すなわち、トレッド面22の端PEを含む陸部26sがショルダー陸部26sである。さらにセンター陸部26cとショルダー陸部26sとの間に位置する陸部26mが、ミドル陸部26mである。なお、トレッド4に構成された陸部26のうち、軸方向において内側に位置する陸部26が赤道PC上でなく、赤道PCの近くに位置する場合には、この赤道PCの近くに位置する陸部26がセンター陸部とされる。
【0065】
図3において、両矢印RCはセンター陸部26cの実幅である。両矢印RSは、ショルダー陸部26sの実幅である。両矢印RMは、ミドル陸部26mの実幅である。実幅RC、実幅RS及び実幅RMは、トレッド面22に沿って計測される。
【0066】
このタイヤ2では、操縦安定性及びウェット性能の観点から、センター陸部26cの実幅RCは、トレッドの実幅TWの10~18%程度が好ましい。同様の観点から、ミドル陸部26mの実幅RMは、トレッドの実幅TWの10~18%程度が好ましい。
【0067】
図3に示されるように、このタイヤ2のセンター陸部26cには、このセンター陸部26cを横切るサイプ48cが複数刻まれる。センター陸部26cにおいて、これらサイプ48cは周方向に間隔をあけて配置される。センター陸部26cは、周方向に断続して延びる。ミドル陸部26mにも、このミドル陸部26mを横切るサイプ48mが複数刻まれる。これらサイプ48mは、周方向に間隔をあけて配置される。このミドル陸部26mも、センター陸部26cと同様、周方向に断続して延びる。
【0068】
このタイヤ2では、センター陸部26cのサイプ48c及びミドル陸部26mのサイプ48mは、ウェット性能の向上に貢献する。これらサイプ48の幅は、0.5mm以上1.5mm以下の範囲で設定される。サイプ48の深さは、3mm以上12mm以下の範囲で設定される。
【0069】
このタイヤ2では、ショルダー陸部26sには、センター陸部26c及びミドル陸部26mのように、このショルダー陸部26sを横切るサイプや細溝は刻まれない。このショルダー陸部26sは、周方向に途切れることなく連続して延びる。
【0070】
図1及び
図3に示されるように、このタイヤ2では、ショルダー周方向溝24sの軸方向外側に、周方向に連続して延びる細縦溝50がさらに刻まれてもよい。これにより、ショルダー陸部26sの軸方向外側に細陸部52が構成される。この細陸部52は、周方向に連続して延びる。細陸部52は、トレッド面22の端PEにおける接地圧の過度の上昇を抑制する。細陸部52は、偏摩耗の発生を抑制する。この観点から、このタイヤ2は、軸方向において、ショルダー陸部26sの外側に位置し、周方向に延びる細陸部52を備え、この細陸部52とショルダー陸部26sとの間が細縦溝50であるのが好ましい。なお、この場合、細陸部52の幅は通常、3mm以上7mm以下の範囲で設定される。トレッド4、細縦溝50及び細陸部52からなる部分がトレッド部を構成する。このトレッド部の端部に細縦溝50が刻まれることにより、トレッド4と、このトレッド4の軸方向外側に位置する細陸部52とが構成される。
【0071】
図1において、両矢印DTは細縦溝50の深さである。
図3において、両矢印GTは細縦溝50の実幅である。このタイヤ2では、細縦溝50の実幅GTはショルダー周方向溝24sの実幅GSの30%以下に設定される。細縦溝50の深さDTは、ショルダー周方向溝24sの深さDSの0.6倍以上1.0倍以下の範囲に設定される。
【0072】
図4は、タイヤ2のトレッド面22のプロファイルの一部を示す。
図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この
図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0073】
このプロファイルは、タイヤ2をリムR(すなわち、正規リム)に組み込み、このタイヤ2の内圧を正規内圧の10%に調整し、このタイヤ2に荷重をかけない、状態(以下、基準状態とも称される。)における、このタイヤ2の、回転軸を含む平面に沿った断面において、特定される。この基準状態でのプロファイルは、後述するモールドのキャビティ面のプロファイルに対応する。
【0074】
トレッド面22は、径方向外向きに凸なプロファイルを有する。このトレッド面22のプロファイルは、赤道面に対して対称である。このタイヤ2のトレッド面22は、軸方向において、少なくとも3つのゾーンに分割される。このトレッド面22は、クラウン部54cと、一対のサイド部54sとを含む。
【0075】
クラウン部54cは、軸方向において中心に位置する。このクラウン部54cは赤道PCを含む。このタイヤ2では、クラウン部54cのプロファイルは半径Rcを有する円弧で表される。図示されないが、この円弧の中心は赤道面上に位置する。
【0076】
サイド部54sは、軸方向においてクラウン部54cの外側に位置する。このサイド部54sは、トレッド面22の端PEを含む。このタイヤ2では、サイド部54sのプロファイルは半径Rsを有する円弧で表される。
【0077】
図4において、符号Pcsはクラウン部54cとサイド部54sとの境界である。クラウン部54cのプロファイルを表す円弧(以下、クラウン円弧とも称される。)は、この境界Pcsにおいてサイド部54sのプロファイルを表す円弧(以下、サイド円弧とも称される。)と接する。
【0078】
このタイヤ2では、境界Pcsはショルダー陸部26sの内縁56uに一致する。この境界Pcsがミドル陸部26mの外縁58sに一致するように、このトレッド面22のプロファイルが構成されてもよく、この境界Pcsがショルダー陸部26sの内縁56uとミドル陸部26mの外縁58sとの間に位置するように、このトレッド面22のプロファイルが構成されてもよい。この境界Pcsがミドル陸部26mの外面上に位置するように、このトレッド面22のプロファイルが構成されてもよく、この境界Pcsがショルダー陸部26sの外面上に位置するように、このトレッド面22のプロファイルが構成されてもよい。
【0079】
このタイヤ2では、クラウン部54cのプロファイルを表す円弧の半径Rcは、次のようにして特定される。まず、赤道面上に中心を有し、一方のセンター陸部26cの外縁60sと、他方のセンター陸部26cの外縁60s(図示されず)とを通る、仮想円弧(以下、第一仮想円弧とも称される。)が描かれる。一方のセンター陸部26cの外縁60sと、他方のセンター陸部26cの外縁60sとの間において、この第一仮想円弧で表される軌跡とクラウン部54cのプロファイルとのずれが、この第一仮想円弧の法線に沿って計測される。このずれが、一方のセンター陸部26cの外縁60sと、他方のセンター陸部26cの外縁60sとを結ぶ線分の長さの3%以内にあるとき、この第一仮想円弧の半径がクラウン部54cのプロファイルを表す円弧の半径Rcとして特定される。なお、一方のセンター陸部26cの外縁60sと、他方のセンター陸部26cの外縁60sとの間に溝がある場合は、この溝がないと仮定して得られる仮想プロファイルが、クラウン部54cのプロファイルとして用いられる。
【0080】
このタイヤ2では、サイド部54sのプロファイルを表す円弧の半径Rsは、次のようにして特定される。まず、前述の第一仮想円弧を用いて、境界Pcsが特定される。具体的には、トレッド面22のプロファイルと第一仮想円弧との接線の端、又は、トレッド面22のプロファイルと第一仮想円弧との交点が、境界Pcsとして特定される。次に、この境界Pcsと、第一仮想円弧の中心とを通る直線上に中心(図示されず)を有し、この境界Pcsとトレッド面22の端PEとを通る他の仮想円弧(以下、第二仮想円弧とも称される。)が描かれる。境界Pcsとトレッド面22の端PEとの間において、この第二仮想円弧で表される軌跡とサイド部54sのプロファイルとのずれが、この第二仮想円弧の法線に沿って計測される。このずれが、境界Pcsとトレッド面22の端PEとを結ぶ線分の長さの3%以内にあるとき、この第二仮想円弧の半径がサイド部54sのプロファイルを表す円弧の半径Rsとして特定される。なお、境界Pcsとトレッド面22の端PEとの間に溝がある場合は、この溝がないと仮定して得られる仮想プロファイルが、サイド部54sのプロファイルとして用いられる。
【0081】
次にこのタイヤ2の製造方法が説明される。このタイヤ2の製造方法では、トレッド4、サイドウォール6等のタイヤ2の構成部材のための予備成形体が準備される。例えば、トレッド4については、このトレッド4のためのゴム組成物をシート状に加工し、これを所定長さで裁断することにより、トレッド4の予備成形体としてのトレッドシートが準備される。ベルト14を構成する層46については、2枚のトッピングシートの間に、並列したベルトコード46cを挟み込むことでマザーシートを準備した後、このマザーシートを長さ方向に対して斜めに裁断することにより、層46の予備成形体としてのベルトシートが準備される。
【0082】
このタイヤ2の製造方法では、タイヤ2の構成部材のための予備成形体は、図示されない成形機においてアッセンブリーされる。例えば、カーカスプライ36の予備成形体としてのカーカスシートを筒状に加工してカーカスプライ36を得た後、ベルト14が構成される位置に、ベルトシートがこの筒状のカーカスシートに巻かれる。ベルトシートの一方の端部と他方の端部とを接合して、層46が得られる。4枚のベルトシートを巻いてベルト14を成形した後、このベルト14上にトレッドシートが巻かれる。トレッドシートの一方の端部と他方の端部とを接合して、トレッド4が得られる。このように予備成形体を組み合わせて、未架橋状態のタイヤ2、すなわち生タイヤ2rが得られる。このタイヤ2の製造方法は、トレッド4及びベルト14を含む生タイヤ2rを準備する工程を含む。
【0083】
このタイヤ2の製造方法では、所定の温度に設定されたモールドに生タイヤ2rは投入される。加熱媒体の充填により膨張したブラダーが、モールドのキャビティ面に生タイヤ2rを内側から押し付ける。生タイヤ2rは、モールド内で所定時間加圧及び加熱される。これにより、生タイヤ2rのゴム組成物が架橋し、タイヤ2が得られる。このタイヤ2は、生タイヤ2rを加硫成形してなる。このタイヤ2は、生タイヤ2rの加硫成形物である。
【0084】
前述したように、モールドに投入された生タイヤ2rは、その内側から膨張したブラダーによりこのモールドに押し付けられる。このとき、生タイヤ2rは拡径され周方向に引き伸ばされる。つまり、このタイヤ2は、生タイヤ2rをモールドに投入し、このモールド内でこの生タイヤ2rを拡径するとともに加圧及び加熱することにより形成される。このタイヤ2の製造方法は、生タイヤ2rをモールドに投入する工程、及びモールド内で生タイヤ2rを拡径するとともに加圧及び加熱する工程を含む。
【0085】
このタイヤ2のベルト14は、生タイヤ2rの拡径においてストレッチされる。このタイヤ2では、生タイヤ2rにおけるベルト14の内径と、この生タイヤ2rを加圧及び加熱することにより得られるタイヤ2におけるベルト14の内径とに基づいて、このベルト14のストレッチ、詳細には、ベルト14の端部(以下、ベルト端部とも称される。)におけるベルト14のストレッチと、このベルト14の中心部(以下、ベルト中心部とも称される。)におけるベルト14のストレッチと、が特定される。本発明においては、ベルト14のストレッチは、このベルト14を構成する層46のうち、径方向において最も内側に位置する第一層46A、すなわち第三基準層B3に基づいて特定される。
【0086】
図5の左側は、モールドに投入する前の未架橋状態のタイヤ2、すなわち生タイヤ2rにおけるベルト14の状態を示す。この
図5の右側は、生タイヤ2rを加圧及び加熱することで得られたタイヤ2の、モールドM内でのベルト14の状態を示す。符号BDで表される部材は、膨張したブラダーである。この右側のタイヤ2の状態は、タイヤ2をリムR(正規リム)に組み込み、内圧を正規内圧の10%に調整し、そして荷重がかけられていない状態に相当する。
【0087】
図5において、符号Rcbで示される矢印は生タイヤ2rにおける第三基準層B3の中心部の内径である。この内径Rcbは、生タイヤ2rの赤道面における第三基準層B3の内周面の、この生タイヤ2rの中心軸(図示されず)からの径方向距離で表される。符号Rsbで示される矢印は、生タイヤ2rにおける第三基準層B3の端部の内径である。この内径Rsbは、生タイヤ2rの第三基準層B3の端におけるこの第三基準層B3の内周面の、この生タイヤ2rの中心軸からの径方向距離で表される。
【0088】
図5において、符号Rcaで示される矢印はタイヤ2における第三基準層B3の中心部の内径である。この内径Rcaは、タイヤ2の赤道面における第三基準層B3の内周面の、このタイヤ2の中心軸からの径方向距離で表される。符号Rsaで示される矢印は、タイヤ2における第三基準層B3の端部の内径である。この内径Rsaは、タイヤ2の第三基準層B3の端におけるこの第三基準層B3の内周面の、このタイヤ2の中心軸からの径方向距離で表される。
【0089】
本発明において、第三基準層B3の端部におけるベルト14のストレッチ、すなわち、ショルダーストレッチSsは以下の式(1)で示される。このショルダーストレッチSsは、ベルト端部におけるベルト14のストレッチの指標である。
(ショルダーストレッチ) 100×(Rsa-Rsb)/Rsb ・・・(1)
【0090】
第三基準層B3の中心部におけるベルト14のストレッチ、すなわち、センターストレッチScは以下の式(2)で示される。このセンターストレッチScは、ベルト中心部におけるベルト14のストレッチの指標である。
(センターストレッチ) 100×(Rca-Rcb)/Rcb ・・・(2)
【0091】
タイヤ2の縦ぶれを表す指標として、ラジアルランアウト(以下、RROともいう。)がある。本発明においては、このRROを測定することにより、偏摩耗発生の起点となる恐れのある部分(例えば、凹凸)の発生状況が把握される。
【0092】
このタイヤ2では、後述するように、偏摩耗の発生を抑制するために、生タイヤ2rをモールドM内で加圧及び加熱する際のベルト中心部のストレッチと、ベルト端部のストレッチとを規定することにより、トレッド4の赤道の部分、すなわちセンター部CにおけるRROとともに、トレッド4の端の部分、すなわちショルダー部SにおけるRROがコントロールされる。
【0093】
本発明においては、センター部CにおけるRROとして、センター陸部26cの軸方向中心(このタイヤ2では、赤道PC)、詳細には、この中心から±10mmの範囲におけるRROが測定される。ショルダー部SにおけるRROとして、ショルダー陸部26sの軸方向中心、詳細にはこの中心から±10mmの範囲におけるRROが測定される。このRROの測定は、JASO C607:2000の「自動車用タイヤのユニフォミティ試験方法」の試験条件に準拠して、ユニフォミティ試験機を用いて行われる。
【0094】
このタイヤ2では、前述の式(1)で示されるショルダーストレッチSsに対する、前述の式(2)で示されるセンターストレッチScの比は1以上3以下である。
【0095】
このタイヤ2では、ショルダーストレッチSsに対するセンターストレッチScの比が1以上に設定されることにより、加硫成形の際、ベルト14が十分にストレッチされる。このため、このタイヤ2では、センター部C及びショルダー部Sのそれぞれにおいて、小さなRROが得られる。このタイヤ2では、偏摩耗(例えば、ショルダー陸部26sの肩落ち摩耗)の起点となる恐れのある部分(例えば、凹凸)がトレッド4に形成されにくい。この比が3以下に設定されることにより、センター部CにおけるRROのオーバーオール値と、ショルダー部SにおけるRROのオーバーオール値との差の絶対値が小さい、タイヤ2が得られる。この場合においても、偏摩耗の起点がトレッド4に形成されにくい。
【0096】
さらにこのタイヤ2では、ショルダーストレッチSsは1%以上である。これにより、ベルト端部が十分にストレッチされる。このタイヤ2では、ベルト端部におけるRROが小さく抑えられる。このため、このタイヤ2のインフレート状態においても、トレッド4のショルダー部SにおけるRROが小さく抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の起点がトレッド4に形成されにくい。この観点から、ショルダーストレッチSsは1.3%以上が好ましい。
【0097】
このタイヤ2では、ショルダーストレッチSsに対するセンターストレッチScの比が1以上3以下であり、ショルダーストレッチSsが1%以上である。これにより、このタイヤ2では、トレッド4のセンター部CにおけるRROとそのショルダー部SにおけるRROとがバランスよく整えられる。このタイヤ2では、トレッド4に摩耗の起点は形成されにくい。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制される。
【0098】
このタイヤ2では、ショルダーストレッチSsは2.5%以下が好ましい。これにより、このタイヤ2では、ベルト端部が適度にストレッチされ、このストレッチの際に、ゴムが周方向に均一に流動するようにこのゴムの流動がコントロールされる。このタイヤ2では、ショルダー部Sにおいて、小さなRROが得られる。このタイヤ2では、偏摩耗の起点がトレッド4に形成されにくい。この観点から、ショルダーストレッチSsは2%以下がより好ましい。
【0099】
このタイヤ2では、センターストレッチScは2%以上が好ましい。これにより、ベルト中心部が十分にストレッチされる。このタイヤ2では、ベルト中心部におけるRROが小さく抑えられる。このため、このタイヤ2のインフレート状態においても、トレッド4のセンター部CにおけるRROが小さく抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の起点がトレッド4に形成されにくい。この観点から、このセンターストレッチScは2.5%以上がより好ましい。
【0100】
このタイヤ2では、センターストレッチScは3.5%以下が好ましい。これにより、このタイヤ2では、ベルト14の中心部が適度にストレッチされ、このストレッチの際に、ゴムが周方向に均一に流動するようにこのゴムの流動がコントロールされる。このタイヤ2では、センター部Cにおいて、小さなRROが得られる。このタイヤ2では、偏摩耗の起点がトレッド4に形成されにくい。
【0101】
このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑制される観点から、センターストレッチScが2%以上であり、ショルダーストレッチSsが1%以上であるのがより好ましい。このタイヤ2では、このセンターストレッチScが2.5%以上3.5%以下であり、ショルダーストレッチSsが1.3%以上2.5%以下であるのがさらに好ましい。このタイヤ2では、このセンターストレッチScが2.5%以上3.5%以下であり、ショルダーストレッチSsが1.3%以上2.0%以下であるのが特に好ましい。
【0102】
前述したように、ベルト14を構成する層46は、ベルトシートを筒状のカーカスシートに巻いて、このベルトシートの一方の端部と他方の端部とを接合することにより得られる。この層46には、ベルトシートの接合部分が存在する。加硫成形の際のベルト14のストレッチでは、この接合部分もストレッチされる。以上説明したように、このタイヤ2では、ベルト14のストレッチによりRROがコントロールされる。しかし、ストレッチの速度、このストレッチの際のゴムの柔軟性等がゴムの流れに影響するので、偏摩耗の発生を効果的に抑制するには、RROも所定の範囲にあるのが好ましい。
【0103】
このタイヤ2では、トレッド4のセンター部CにおけるRROのオーバーオール値は1.5mm以下であり、そのショルダー部SにおけるRROのオーバーオール値は1.5mm以下であるのが好ましい。これにより、タイヤ2の真円度が向上するので、偏摩耗の起点の形成が抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑えられる。
【0104】
このタイヤ2では、センター部CにおけるRROのオーバーオール値と、ショルダー部SにおけるRROのオーバーオール値との差の絶対値は0.5mm以下であるが好ましい。これにより、タイヤ2のキャンバー量が適切に維持されるので、センター部Cの接地長とショルダー部Sの接地長との乖離が抑えられる。ショルダー部S、すなわち、ショルダー陸部26sの路面に対する滑りが抑えられるので、このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑えられる。
【0105】
このタイヤ2では、トレッド4の周方向各部における、センター部CにおけるRROとショルダー部SにおけるRROとの差の絶対値が0.20mm以下であるのが好ましい。これにより、トレッド4の周方向各部において、センター部CにおけるRROとショルダー部SにおけるRROとが連動するので、ショルダー陸部26sの路面に対する滑りの程度にばらつきが生じることが抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑えられる。なお、このトレッド4の周方向各部における、センター部CにおけるRROとショルダー部SにおけるRROとの差の絶対値は、このタイヤ2の中心軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面において特定される、センター部CのRROと、ショルダー部SのRROとに基づいて算出される。また、トレッド4の周方向各部とは、タイヤ2の中心軸周りに45°刻みで特定される、トレッド面22上の位置(計8か所の検定位置)を意味する。
【0106】
前述したように、このタイヤ2では、トレッド4には周方向に連続して延びる周方向溝24が少なくとも3本刻まれ、これら周方向溝24は軸方向において内側に位置するセンター周方向溝24cと外側に位置するショルダー周方向溝24sとを含む。
【0107】
このタイヤ2では、好ましくは、ショルダー周方向溝24sはセンター周方向溝24cよりも細い。これにより、このショルダー陸部26sの実幅RSが十分に確保される。ショルダー陸部26sが適度な剛性を有するので、このショルダー陸部26sに摩耗は生じにくい。このタイヤ2では、偏摩耗(例えば、ショルダー陸部26s全体が摩耗する片減り)が効果的に抑制される。この観点から、センター周方向溝24cの実幅GCに対するショルダー周方向溝24sの実幅GSの比は0.9以下が好ましい。良好な排水性が維持される観点から、この比は0.7以上が好ましい。
【0108】
前述したように、このタイヤ2では、少なくとも3本の周方向溝24がトレッド4に刻まれることにより、このトレッド4には少なくとも4本の陸部26が構成され、これら陸部26は軸方向において内側に位置するセンター陸部26cと、外側に位置するショルダー陸部26sとを含む。
【0109】
このタイヤ2では、好ましくは、ショルダー陸部26sの実幅RSはセンター陸部26cの実幅RCよりも広い。このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの剛性が十分に確保される。ショルダー陸部26sが適度な剛性を有するので、このショルダー陸部26sに摩耗は生じにくい。このタイヤ2では、偏摩耗(例えば、ショルダー陸部26s全体が摩耗する片減り)が効果的に抑制される。
【0110】
このタイヤ2では、センター陸部26cの幅RCに対するショルダー陸部26sの幅RSの比は1.15以上が好ましく、1.45以下が好ましい。この比が1.15以上に設定されることにより、ショルダー陸部26sの剛性が十分に確保される。ショルダー陸部26sが適度な剛性を有するので、このショルダー陸部26sに摩耗は生じにくい。このタイヤ2では、偏摩耗(例えば、ショルダー陸部26s全体が摩耗する片減り)が効果的に抑制される。この観点から、この比は1.20以上がより好ましい。この比が1.45以下に設定されることにより、ショルダー陸部26s内での周長差が適切に維持される。このタイヤ2では、ショルダー陸部26s各部における路面に対する滑りに違いが生じにくいので、このショルダー陸部26sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。この場合においても、このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑えられる。この観点から、この比は1.40以下がより好ましい。
【0111】
このタイヤ2では、センター陸部26cの実幅RCに対するミドル陸部の実幅RMの比は0.95以上が好ましく、1.05以下が好ましい。この比が0.95以上に設定されることにより、ショルダー陸部26sの実幅RSが適切に確保されるので、ショルダー陸部26s内での周長差が適切に維持される。このタイヤ2では、ショルダー陸部26s各部における路面に対する滑りに違いが生じにくいので、このショルダー陸部26sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑えられる。この比が1.05以下に設定されることにより、ショルダー陸部26sの実幅RSが確保され、このショルダー陸部26sは十分な剛性を有する。ショルダー陸部26sに摩耗が生じにくいので、このタイヤ2では、偏摩耗(例えば、ショルダー陸部26s全体が摩耗する片減り)が効果的に抑制される。
【0112】
前述したように、このタイヤ2では、ショルダーストレッチSsに対するセンターストレッチScの比が1以上3以下であり、ショルダーストレッチSsが1%以上である。このタイヤ2では、ベルト14の端部及び中心部におけるストレッチの程度がバランスよく整えられる。このストレッチのコントロールは、ベルト14を構成する各層46におけるベルトコード46cの配列の乱れを効果的に抑える。
【0113】
図2において、角度Bcは、赤道面において、第二層46B、すなわち第一基準層B1に含まれるベルトコード46cが周方向に対してなす傾斜角度である。角度Beは、層端部において、第一基準層B1に含まれるベルトコード46cが周方向に対してなす傾斜角度である。角度Ccは、赤道面において、第三層46C、すなわち第二基準層B2に含まれるベルトコード46cが周方向に対してなす傾斜角度である。角度Ceは、層端部において、第二基準層B2に含まれるベルトコード46cが周方向に対してなす傾斜角度である。角度Acは、赤道面において、第一層46A、すなわち第三基準層B3に含まれるベルトコード46cが周方向に対してなす傾斜角度である。角度Aeは、層端部において、第三基準層B3に含まれるベルトコード46cが周方向に対してなす傾斜角度である。角度Dcは、赤道面において、第四層46D、すなわち第四基準層B4に含まれるベルトコード46cが周方向に対してなす傾斜角度である。角度Deは、層端部において、第四基準層B4に含まれるベルトコード46cが周方向に対してなす傾斜角度である。なお、ベルトコード46cの赤道面における傾斜角度は、赤道面を中心とする幅10mmの範囲に位置するベルトコード46cの傾斜角度により表される。ベルトコード46cの層端部における傾斜角度は、各層の端から内側に10mmの範囲に位置するベルトコード46cの傾斜角度により表される。
【0114】
このタイヤ2では、好ましくは、第一基準層B1において、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度Beは赤道面における傾斜角度Bcと等しい。言い換えれば、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度Beと赤道面における傾斜角度Bcとの差(Be-Bc)が-0.4°以上0.4°以下であるのが好ましい。このタイヤ2では、これまで差(Be-Bc)が2°以上あり、端部において剛性が低下する傾向にあった、第一基準層B1が、軸方向において略一様な剛性を有する。端部における剛性低下が抑えられ、第一基準層B1による拘束力に偏りが生じにくいので、この第一基準層B1を含むベルト14は偏摩耗の抑制に貢献する。このタイヤ2では、偏摩耗が生じにくい。
【0115】
このタイヤ2では、好ましくは、第二基準層B2において、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度Ceは赤道面における傾斜角度Ccと等しい。言い換えれば、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度Ceと赤道面における傾斜角度Ccとの差(Ce-Cc)が-0.4°以上0.4°以下であるのが好ましい。このタイヤ2では、これまで差(Ce-Cc)が2°以上あり、端部において剛性が低下する傾向にあった、第二基準層B2が、軸方向において略一様な剛性を有する。端部における剛性低下が抑えられ、第二基準層B2による拘束力に偏りが生じにくいので、この第二基準層B2を含むベルト14は偏摩耗の抑制に貢献する。このタイヤ2では、偏摩耗が生じにくい。
【0116】
このタイヤ2では、好ましくは、第三基準層B3において、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度Aeは赤道面における傾斜角度Acと等しい。言い換えれば、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度Aeと赤道面における傾斜角度Acとの差(Ae-Ac)が-0.4°以上0.4°以下であるのが好ましい。このタイヤ2では、これまで差(Ae-Ac)が2°以上あり、端部において剛性が低下する傾向にあった、第三基準層B3が、軸方向において略一様な剛性を有する。端部における剛性低下が抑えられ、第三基準層B3による拘束力に偏りが生じにくいので、この第三基準層B3を含むベルト14は偏摩耗の抑制に貢献する。このタイヤ2では、偏摩耗が生じにくい。
【0117】
このタイヤ2では、好ましくは、第四基準層B4において、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度Deは赤道面における傾斜角度Dcと等しい。言い換えれば、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度Deと赤道面における傾斜角度Dcとの差(De-Dc)が-0.4°以上0.4°以下であるのが好ましい。このタイヤ2では、これまで差(De-Dc)が2°以上あり、端部において剛性が低下する傾向にあった、第四基準層B4が、軸方向において略一様な剛性を有する。端部における剛性低下が抑えられ、第四基準層B4による拘束力に偏りが生じにくいので、この第四基準層B4を含むベルト14は偏摩耗の抑制に貢献する。このタイヤ2では、偏摩耗が生じにくい。
【0118】
このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑えられる観点から、ベルト14を構成する層46のうち、少なくとも第一基準層B1において、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度が赤道面における傾斜角度と等しいのが好ましい。ベルト14を構成する層46のうち、第一基準層B1及び第二基準層B2において、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度が赤道面における傾斜角度と等しいのがより好ましい。ベルト14を構成する全ての層46において、ベルトコード46cの層端部における傾斜角度が赤道面における傾斜角度と等しいのがさらに好ましい。
【0119】
このタイヤ2では、好ましくは、第一基準層B1において、ベルトコード46cの赤道面における傾斜角度Bcは12°以上20°以下である。従来のタイヤのベルトに比べて、この傾斜角度Bcは小さい。この第一基準層B1を含むベルトの拘束力は、従来のベルトのそれよりも高い。このベルト14は偏摩耗の抑制に貢献する。この観点から、この傾斜角度Bcは、14°以上が好ましく、18°以下が好ましい。
【0120】
このタイヤ2では、好ましくは、第二基準層B2において、ベルトコード46cの赤道面における傾斜角度Ccは12°以上20°以下である。従来のタイヤのベルトに比べて、この傾斜角度Ccは小さい。この第二基準層B2を含むベルトの拘束力は、従来のベルトのそれよりも高い。このベルト14は偏摩耗の抑制に貢献する。この観点から、この傾斜角度Ccは、14°以上が好ましく、18°以下が好ましい。
【0121】
このタイヤ2では、ベルト14の剛性を適正に維持するために、赤道面における、第三基準層B3のベルトコード46cの傾斜角度Ac及び第四基準層B4のベルトコード46cの傾斜角度Dcは、第一基準層B1のベルトコード46cの傾斜角度Bc及び第二基準層B2のベルトコード46cの傾斜角度Ccよりも大きな角度で設定される。具体的には、赤道面における、第三基準層B3のベルトコード46cの傾斜角度Acは50°以上が好ましく、70°以下が好ましい。赤道面における、第四基準層B4のベルトコード46cの傾斜角度Dcは15°以上が好ましく、35°以下が好ましい。
【0122】
このタイヤ2では、好ましくは、ベルト14を構成する各層46が、赤道面におけるベルトコード46cの密度と層端部におけるベルトコード46cの密度とが等しくなるように構成される。このタイヤ2では、これまで端部の密度が低下し、この端部において剛性が低下する傾向にあったベルト14が、軸方向において略一様な剛性を有する。ベルト14による拘束力に偏りが生じにくいので、このベルト14は偏摩耗の抑制に貢献する。このタイヤ2では、偏摩耗が生じにくい。なお、ベルトコード46cの密度は、周方向において各層の50mm長さあたりに存在するベルトコード46cの本数により表される。
【0123】
このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑えられる観点から、ベルト14を構成する層46のうち、少なくとも第一基準層B1が、赤道面におけるベルトコード46cの密度と層端部におけるベルトコード46cの密度とが等しくなるように構成されるのが好ましい。ベルト14を構成する層46のうち、第一基準層B1及び第二基準層B2が、赤道面におけるベルトコード46cの密度と層端部におけるベルトコード46cの密度とが等しくなるように構成されるのがより好ましい。ベルト14を構成する全ての層46が、赤道面におけるベルトコード46cの密度と層端部におけるベルトコード46cの密度とが等しくなるように構成されるのがさらに好ましい。
【0124】
このタイヤ2では、トレッド面22は、半径Rcを有する円弧で表されるプロファイルを有するクラウン部54cと、半径Rsを有する円弧で表されるプロファイルを有するサイド部54sとを含む。このタイヤ2では、好ましくは、サイド部54sのプロファイルを表す円弧の半径Rsは、クラウン部54cのプロファイルを表す円弧の半径Rcよりも大きい。このタイヤ2では、タイヤ2の周長に関し、赤道部分の周長とトレッド面22の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持されるので、ショルダー陸部26sの路面に対する滑りが抑えられる。このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。この観点から、クラウン部54cのプロファイルを表す円弧の半径Rcに対する、サイド部54sのプロファイルを表す円弧の半径Rsの比は、1.1以上が好ましく、1.4以下が好ましい。同様の観点から、クラウン部54cのプロファイルを表す円弧の半径Rcは、700mm以上が好ましく、900mm以下が好ましい。
【0125】
図6は、
図1に示された、このタイヤ2の断面の一部を示す。この
図6において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この
図6の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0126】
図6(a)において、矢印WTはトレッド面22の軸方向幅である。この軸方向WTは、トレッド面22の一方の端PEから他方の端PEまでの軸方向距離で表される。矢印W1は、第一基準層B1としての第二層46Bの軸方向幅である。この軸方向幅W1は、第二層46Bの一方の端から他方の端までの軸方向距離により表される。矢印W2は、第二基準層B2としての第三層46Cの軸方向幅である。この軸方向幅W2は、第三層46Cの一方の端から他方の端までの軸方向距離により表される。
【0127】
このタイヤ2では、好ましくは、第一基準層B1の軸方向幅W1はトレッド面22の軸方向幅WTと同等である又はこのトレッド面22の軸方向幅WTよりも狭い。このタイヤ2では、ショルダー陸部26sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される。タイヤ2の周長に関し、赤道部分の周長とトレッド面22の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持されるので、ショルダー陸部26sの路面に対する滑りが抑えられる。このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。
【0128】
このタイヤ2では、トレッド面22の軸方向幅WTに対する第一基準層B1の軸方向幅W1の比は0.85以上が好ましく、1.00以下が好ましい。
【0129】
トレッド面22の軸方向幅WTに対する第一基準層B1の軸方向幅W1の比が0.85以上に設定されることにより、ベルト14がトレッド4全体を十分に拘束する。このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの外縁部、すなわち、トレッド面22の端PEの部分における特異な寸法成長が抑えられるので、このショルダー陸部26sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、この比は0.90以上がより好ましく、0.92以上がさらに好ましい。
【0130】
トレッド面22の軸方向幅WTに対する第一基準層B1の軸方向幅W1の比が1.00以下に設定されることにより、ショルダー陸部26sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される。タイヤ2の周長に関し、赤道部分の周長とトレッド面22の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持されるので、ショルダー陸部26sの路面に対する滑りが抑えられる。このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。この観点から、この比は0.97以下が好ましく、0.95以下がより好ましい。
【0131】
このタイヤ2では、トレッド面22の軸方向幅WTに対する第二基準層B2の軸方向幅W2の比は0.80以上が好ましい。この第二基準層B2はトレッド4の拘束に貢献する。このタイヤ2では、ベルト14がトレッド4全体を十分に拘束するので、ショルダー陸部26sの外縁部における特異な寸法成長が抑えられる。このタイヤ2では、肩落ち摩耗のような偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、この比は0.85以上がより好ましく、0.90以上がさらに好ましい。
【0132】
このタイヤ2では、軸方向において、第二基準層B2の端は第一基準層B1の端よりも内側に位置する。軸方向において、第二基準層B2の端と第一基準層B1の端とが一致しないので、ベルト14の端部に歪が集中することが防止される。このタイヤ2では、ベルト14の端部においてルースのような損傷が生じにくい。しかも、ショルダー陸部26sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される上に、タイヤ2の周長に関し、赤道部分の周長とトレッド面22の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持される。ショルダー陸部26sの路面に対する滑りが抑えられるので、このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。
【0133】
図6(a)において、両矢印Dは、第一基準層B1としての第二層46Bの端から第二基準層B2としての第三層46Cの端までの軸方向距離である。
【0134】
このタイヤ2では、第一基準層B1の端から第二基準層B2の端までの軸方向距離Dは3mm以上が好ましく、8mm以下が好ましい。
【0135】
距離Dが3mm以上に設定されることにより、軸方向において、第二基準層B2の端と第一基準層B1の端とが適度な間隔をあけて配置される。ベルト14の端部への歪の集中が抑えられるので、このタイヤ2では、ベルト14の端部においてルースのような損傷が発生することが防止される。この観点から、この距離Dは4mm以上がより好ましい。
【0136】
距離Dが8mm以下に設定されることにより、ベルト14がトレッド4全体を十分に拘束する。ショルダー陸部26sの外縁部における特異な寸法成長が抑えられるので、このタイヤ2では、このショルダー陸部26sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。この観点から、この距離Dは7mm以下がより好ましい。
【0137】
図6(a)において、両矢印Yは、第二基準層B2としての第三層46Cの端におけるこの第三層46Cから、第一基準層B1としての第二層46Bまでの距離である。この距離Yは、第二層46Bの外面の法線に沿って計測される。
【0138】
このタイヤ2では、第二基準層B2の端においてこの第二基準層B2から第一基準層B1までの距離Yは、2.5mm以上が好ましく、4.0mm以下が好ましい。
【0139】
距離Yが2.5mm以上に設定されることにより、第一基準層B1の端部に対して第二基準層B2の端部が十分な間隔をあけて配置される。このタイヤ2では、トレッド4に対するベルト14の拘束力を確保しつつ、ベルト14の端部への歪の集中が十分に抑えられる。このタイヤ2では、ベルト14の端部における損傷の発生を防止しながら、偏摩耗の発生が抑えられる。この観点から、この距離Yは3.0mm以上がより好ましい。
【0140】
距離Yが4.0mm以下に設定されることにより、トレッド面22に対して第二基準層B2の端部が適切な距離をあけて配置される。第二基準層B2の端部がトレッド面22に近接することにより生じる接地圧の上昇が抑えられるので、このタイヤ2では、ショルダー陸部26sに段差摩耗のような摩耗が発生することが防止される。さらに、第二基準層B2の端部の垂れ下がりが防止されるので、この第二基準層B2の端部の動きが抑えられる。この端部の動きに伴う発熱が抑えられるので、ルースのような損傷の発生が防止される。この観点から、この距離Yは3.5mm以下がより好ましい。
【0141】
図6に示されるように、第二層46B及び第三層46Cの端部はそれぞれゴム層62で覆われる。ゴム層62で覆われたそれぞれの端部の間には、さらに2枚のゴム層62が配置される。このタイヤ2では、第二層46Bの端部と第三層46Cの端部との間に、計4枚のゴム層62からなるエッジ部材64が挟み込まれる。これにより、第三層46Cの端部は、径方向外向きに迫り上げられ、第二層46Bの端部から引き離して配置される。このエッジ部材64は架橋ゴムからなる。前述の距離Yは、このエッジ部材64の厚さでもある。
【0142】
図6(a)において、両矢印W4はベルト14を構成する第四層46Dの軸方向幅である。この軸方向幅W4は、第四層46Dの一方の端から他方の端までの軸方向距離により表される。
【0143】
このタイヤ2では、トレッド面22の軸方向幅WTに対する第四層46Dの軸方向幅W4の比は0.67以上が好ましい。これにより、第四層46Dがトレッド4の拘束に貢献する。このタイヤ2では、ベルト14がトレッド4全体を十分に拘束するので、ショルダー陸部26sの外縁部における特異な寸法成長が抑えられる。ショルダー陸部26sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される上に、タイヤ2の周長に関し、赤道部分の周長とトレッド面22の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持される観点から、この比は0.75以下が好ましい。
【0144】
図6(b)において、符号P1は第一基準層B1としての第二層46Bの端を通り、径方向に延びる直線と、トレッド面22との交点である。この交点P1は、第一基準層B1の端に対応するトレッド面22上の位置である。符号P2は、第二基準層B2としての第三層46Cの端を通り、径方向に延びる直線と、トレッド面22との交点である。この交点P2は、第二基準層B2の端に対応するトレッド面22上の位置である。
【0145】
この
図6(b)において、両矢印S1はショルダー陸部26sの内縁56uから、第一基準層B1の端に対応するトレッド面22上の位置P1までの、トレッド面22に沿って計測される長さである。本発明においては、この長さS1がショルダー陸部26s内での第一基準層B1の実幅である。両矢印S2は、ショルダー陸部26sの内縁56uから、第二基準層B2の端に対応するトレッド面22上の位置P2までの、トレッド面22に沿って計測される長さである。本発明においては、この長さS2がショルダー陸部26s内での第二基準層B2の実幅である。なお、この
図6(b)における両矢印RSは、
図3に示された、ショルダー陸部26sの実幅である。
【0146】
このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの実幅RSに対する、このショルダー陸部26s内での第一基準層B1の実幅S1の比は0.8以上が好ましい。これにより、このタイヤ2では、ベルト14がトレッド4を十分に拘束する。このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの外縁部における特異な寸法成長が抑えられるので、このショルダー陸部26sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、この比は0.85以上がより好ましい。
【0147】
このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの実幅RSに対する、このショルダー陸部26s内での第一基準層B1の実幅S1の比は1.00以下が好ましい。これにより、このタイヤ2では、ショルダー陸部26sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される。タイヤの周長に関し、赤道部分の周長とトレッド面22の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持されるので、ショルダー陸部26sの路面に対する滑りが抑えられる。このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。
【0148】
このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの実幅RSに対する、このショルダー陸部26s内での第二基準層B2の実幅S2の比は0.6以上が好ましい。これにより、このタイヤ2では、第二基準層B2がトレッド4の拘束に貢献する。このタイヤ2では、ベルト14がトレッド4全体を十分に拘束するので、ショルダー陸部26sの外縁部における特異な寸法成長が抑えられる。このタイヤ2では、肩落ち摩耗のような偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、この比は0.70以上がより好ましい。
【0149】
このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの実幅RSに対する、このショルダー陸部26s内での第二基準層B2の実幅S2の比は0.9以下が好ましい。これにより、このタイヤ2では、ショルダー陸部26sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される。タイヤの周長に関し、赤道部分の周長とトレッド面22の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持されるので、ショルダー陸部26sの路面に対する滑りが抑えられる。このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。この観点から、この比は0.85以下がより好ましい。
【0150】
図6(b)において、両矢印Bは赤道PCにおけるタイヤ2の厚さである。この厚さBは、赤道面に沿って計測される。両矢印Eは、トレッド面22の端PEにおけるタイヤ2の厚さである。この厚さEは、トレッド面22の端PEを通るタイヤ2の内面の法線に沿って計測される。
【0151】
このタイヤ2では、好ましくは、トレッド面22の端PEにおけるタイヤ2の厚さEは、赤道PCにおけるタイヤ2の厚さBよりも厚い。このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの剛性が十分に確保される。ショルダー陸部26sが適度な剛性を有するので、このショルダー陸部26sに摩耗は生じにくい。このタイヤ2では、偏摩耗が効果的に抑制される。この観点から、赤道PCにおけるタイヤ2の厚さBに対する、トレッド面22の端PEにおけるタイヤ2の厚さEの比は、1.38以上が好ましく、1.45以下が好ましい。
【0152】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、偏摩耗の発生が抑制された、重荷重用空気入りタイヤ2が得られる。
【0153】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【実施例】
【0154】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0155】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=12R22.5)を得た。
【0156】
この実施例1では、センター陸部の幅RCに対するショルダー陸部の幅RSの比(RS/RC)は1.4であった。センター周方向溝の幅GCに対するショルダー周方向溝の幅GSの比(GS/GC)は、0.85であった。センターストレッチScは、2.6%であった。ショルダーストレッチSsは、2.0%であった。したがってショルダーストレッチSsに対するセンターストレッチScの比は、1.3であった。
【0157】
この実施例1には、細縦溝及び細陸部が設けられている。このことが、表1の細陸部の欄に、「Y」で示されている。
【0158】
この実施例1では、トレッドのショルダー部におけるRROのオーバーオール値は1.1mmであった。このことが、表の「OA」の欄に示されている。センター部におけるRROのオーバーオール値とショルダー部におけるRROのオーバーオール値との差の絶対値は、0.3mmであった。このことが、表の「OA差」の欄に示されている。トレッドの周方向各部における、センター部におけるRROとショルダー部におけるRROとの差の絶対値(最大値)は、0.15mmであった。このことが、表の「RRO差」の欄に示されている。なお、RROは、タイヤをリム(8.25×22.5)に組み込み、空気を充填して、内圧を850kPaに調整した後、ユニフォミティ試験機を用いて測定した。
【0159】
この実施例1では、ベルトの第一層、すなわち、第三基準層において、ベルトコードの赤道面における傾斜角度Acは50°であった。ベルトの第二層、すなわち、第一基準層において、ベルトコードの赤道面における傾斜角度Bcは15°であった。ベルトの第三層、すなわち、第二基準層において、ベルトコードの赤道面における傾斜角度Ccは15°であった。ベルトの第四層、すなわち、第四基準層において、ベルトコードの赤道面における傾斜角度Dcは18°であった。
【0160】
この実施例1では、第一基準層において、ベルトコードの層端部における傾斜角度Beは赤道面における傾斜角度Bcと等しかった。すなわち、傾斜角度Beと傾斜角度Bcとの差(Be-Bc)は0°であった。このことが、表1の角度差の欄に「0」で示されている。
【0161】
この実施例1では、第一基準層は、赤道面におけるベルトコードの密度βcと層端部におけるベルトコードの密度βeとが等しくなるように構成された。すなわち、層端部におけるベルトコードの密度βeと赤道面におけるベルトコードの密度βcとの差(βe-βc)は0エンズ/5cmであった。このことが、表1の密度差の欄に「0」で示されている。
【0162】
[実施例2-5及び比較例2]
比(Sc/Ss)、センターストレッチSc及びショルダーストレッチSsを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-5及び比較例2のタイヤを得た。この実施例2-5及び比較例2のタイヤにおける、角度差、密度差、ショルダー部におけるRROのオーバーオール値、センター部におけるRROとショルダー部におけるRROとの差の絶対値(最大値)及びセンター部におけるRROのオーバーオール値とショルダー部におけるRROのオーバーオール値との差の絶対値は、この表1に示される通りであった。
【0163】
[実施例6及び比較例1]
細縦溝及び細陸部を設けることなく、比(RS/RC)、比(GS/GC)、比(Sc/Ss)、センターストレッチSc及びショルダーストレッチSsを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6及び比較例1のタイヤを得た。この実施例6及び比較例1のタイヤにおける、角度差、密度差、ショルダー部におけるRROのオーバーオール値、センター部におけるRROとショルダー部におけるRROとの差の絶対値(最大値)及びセンター部におけるRROのオーバーオール値とショルダー部におけるRROのオーバーオール値との差の絶対値は、この表1に示される通りであった。なお、この実施例6及び比較例1に、細縦溝及び細陸部は設けられていないことが、表1の細陸部の欄に、「N」で示されている。
【0164】
[偏摩耗]
試作タイヤをリム(サイズ=8.25×22.5)に組み込み空気を充填しタイヤの内圧を850kPaに調整した。このタイヤを、高速バスのフロント軸に装着し、タイヤのローテーションをすることなく、6か月間、この高速バスを走行させた。走行後、タイヤの外観を観察し、偏摩耗の発生状況を確認した。この結果が以下の格付けで下記の表1に示されている。
A・・・偏摩耗の発生が抑えられていた場合
B・・・偏摩耗は発生したが走行性能に変化が認められなかった場合
C・・・偏摩耗が発生しており走行に支障のない程度の性能低下が認められた場合
D・・・偏摩耗が発生しており交換が必要であると判断された場合
【0165】
【0166】
表1に示されるように、実施例では、偏摩耗の発生が抑制されていることが確認される。実施例は、比較例に比して評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0167】
以上説明された偏摩耗の発生を抑制するための技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0168】
2・・・タイヤ
2r・・・生タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
10・・・チェーファー
12・・・カーカス
14・・・ベルト
21・・・繊維補強層
22・・・外面(トレッド面)
24、24c、24s・・・周方向溝
26、26c、26s、26m・・・陸部
36・・・カーカスプライ
38・・・本体部
40・・・折り返し部
46、46A、46B、46C、46D・・・層
46c・・・ベルトコード
50・・・細縦溝
52・・・細陸部
54c・・・クラウン部
54s・・・サイド部
B1・・・第一基準層
B2・・・第二基準層
B3・・・第三基準層
B4・・・第四基準層
M・・・モールド
BD・・・ブラダー