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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】印刷装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230328BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20230328BHJP
   B41J 3/407 20060101ALN20230328BHJP
【FI】
B41J2/01 213
A45D29/00
B41J2/01 451
B41J3/407
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021120105
(22)【出願日】2021-07-21
(62)【分割の表示】P 2019056922の分割
【原出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2021176707
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修一
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153526(JP,A)
【文献】特開平09-226127(JP,A)
【文献】特開2001-058427(JP,A)
【文献】特開2003-305830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01ー2/215
B41J 29/00-29/70
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y方向に第1距離ごとに複数のブロックに区分けされ、かつ、前記Y方向に配列された、インクを吐出するノズル群を有し、前記ノズル群の移動可能な範囲である印刷可能領域が決められている印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを前記Y方向と交差するX方向に沿って移動させながら印刷媒体上に設定された印刷領域に向けて前記ノズル群からインクを吐出させる第1動作と、前記ノズル群の前記Y方向の位置を前記第1距離だけ移動させる第2動作と、を繰り返し実行させるプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記印刷領域の前記Y方向の距離が前記第1距離の整数倍でない場合に、前記第1動作において前記ノズル群のうちのインクを吐出させない一部のノズルの位置に対応する非印刷領域を設け、
前記印刷可能領域内における前記印刷領域の位置に基づいて、前記印刷領域と前記非印刷領域との位置関係を設定する、
印刷装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記Y方向の手前側または奥方側における前記印刷可能領域の端部から前記印刷媒体の端部までの距離を前記第1距離と比較し、前記比較の結果に応じて、前記非印刷領域を前記印刷領域の手前側に設定するか奥方側に設定するかを選択する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記Y方向の手前側または奥方側における前記印刷可能領域の端部から前記印刷媒体の端部までの距離が前記第1距離よりも短いか否かを判断し、前記判断の結果に応じて、前記第2動作の開始時または終了時における前記ノズル群の前記Y方向の位置を前記第1距離よりも短い距離で調整する、
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記印刷可能領域内における前記印刷領域の位置に基づいて、前記第2動作において前記ノズル群を移動させる方向を、前記Y方向の手前側から奥方側の方向または奥方側から手前側の方向のいずれかから選択する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記印刷可能領域内における前記印刷領域の位置に基づいて、前記第2動作の開始時における前記ノズル群の前記Y方向の端部の位置を、前記印刷領域の手前側の端部または前記印刷領域の奥方側の端部のいずれかに設定する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
記プロセッサは、
前記印刷領域内の各位置に対して、前記複数のブロックのノズルで順番にインクを吐出していくシングリング方式による印刷を行うように制御する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記印刷可能領域内における前記印刷領域の位置に基づいて、前記第2動作の開始時における前記複数のブロックのうちの互いに隣接するブロックの境界の位置を、前記印刷領域の手前側の端部または前記印刷領域の奥方側の端部のいずれかに設定する、
請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
Y方向に第1距離ごとに複数のブロックに区分けされ、かつ、前記Y方向に配列された、インクを吐出するノズル群を有し、前記ノズル群の移動可能な範囲である印刷可能領域が決められている印刷ヘッドを有する印刷装置が、
前記印刷ヘッドを前記Y方向と交差するX方向に沿って移動させながら印刷媒体上に設定された印刷領域に向けて前記ノズル群からインクを吐出させる第1動作と、前記ノズル群の前記Y方向の位置を前記第1距離だけ移動させる第2動作と、を繰り返し実行させる処理と、
前記印刷領域の前記Y方向の距離が前記第1距離の整数倍でない場合に、前記第1動作において前記ノズル群のうちのインクを吐出させない一部のノズルの位置に対応する非印刷領域を設ける処理と、
前記印刷可能領域内における前記印刷領域の位置に基づいて、前記印刷領域と前記非印刷領域との位置関係を設定する処理と、
を実行する制御方法。
【請求項9】
Y方向に第1距離ごとに複数のブロックに区分けされ、かつ、前記Y方向に配列された、インクを吐出するノズル群を有し、前記ノズル群の移動可能な範囲である印刷可能領域が決められている印刷ヘッドを有する印刷装置のプロセッサに、
前記印刷ヘッドを前記Y方向と交差するX方向に沿って移動させながら印刷媒体上に設定された印刷領域に向けて前記ノズル群からインクを吐出させる第1動作と、前記ノズル群の前記Y方向の位置を前記第1距離だけ移動させる第2動作と、を繰り返し実行させる処理と、
前記印刷領域の前記Y方向の距離が前記第1距離の整数倍でない場合に、前記第1動作において前記ノズル群のうちのインクを吐出させない一部のノズルの位置に対応する非印刷領域を設ける処理と、
前記印刷可能領域内における前記印刷領域の位置に基づいて、前記印刷領域と前記非印刷領域との位置関係を設定する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、印刷装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の印刷装置の1つとして、特許文献1のように、ノズルを移動させながら印刷媒体に印刷を行う装置が知られている。この種の印刷装置では、ノズルを第1の方向に沿って移動させながら印刷媒体に向けてインクを吐出する第1の動作と、第1の方向と直交する第2の方向にノズルを移動させる第2の動作とを繰り返すことにより、印刷媒体の全体に印刷を行うことがある。
【0003】
上記の印刷装置の印刷方式には、シングリング方式と呼ばれる印刷方式がある。シングリング方式では、印刷領域を第2の方向で複数のブロックに分割し、1回の第2の動作において1つのブロックにおける第2の方向の寸法分だけノズルを移動させながら印刷を行う。シングリング方式では、印刷領域内のある小領域に対する印刷を各ブロック毎に分けて複数回行うため、ノズル詰まりなどの影響を受けにくく、高品質の印刷を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-2531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらシングリング方式では、印刷領域内における第2の方向の端部の近傍を印刷する際に、ノズルの一部が印刷領域の外側にはみ出した状態となる。このため、シングリング方式の印刷装置では、印刷可能領域に対するノズルの移動範囲が大きくなり、印刷装置の小型化が難しい。
【0006】
本発明の一側面に係る利点は、上記の実情を踏まえたものであり、印刷装置における印刷可能領域に対するノズルの移動範囲を小さくすることが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る印刷装置は、Y方向に第1距離ごとに複数のブロックに区分けされ、かつ、前記Y方向に配列された、インクを吐出するノズル群を有し、前記ノズル群の移動可能な範囲である印刷可能領域が決められている印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを前記Y方向と交差するX方向に沿って移動させながら印刷媒体上に設定された印刷領域に向けて前記ノズル群からインクを吐出させる第1動作と、前記ノズル群の前記Y方向の位置を前記第1距離だけ移動させる第2動作と、を繰り返し実行させるプロセッサと、を備え、前記プロセッサは、前記印刷領域の前記Y方向の距離が前記第1距離の整数倍でない場合に、前記第1動作において前記ノズル群のうちのインクを吐出させない一部のノズルの位置に対応する非印刷領域を設け、前記印刷可能領域内における前記印刷領域の位置に基づいて、前記印刷領域と前記非印刷領域との位置関係を設定する。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、印刷装置における印刷可能領域に対する印刷ヘッドの移動範囲を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】印刷装置の斜視図である。
図2】印刷装置の側面図である。
図3】印刷装置内部の主要な機構を示す図である。
図4】シングリング方式の印刷方法を説明する図である。
図5】印刷可能領域の位置に対する制限を説明する図である。
図6】印刷可能領域と印刷領域との位置関係の第1の例を示す図である。
図7】印刷可能領域と印刷領域との位置関係の第2の例を示す図である。
図8】印刷可能領域と印刷領域との位置関係の第3の例を示す図である。
図9】印刷可能領域と印刷領域との位置関係の第4の例を示す図である。
図10】実施形態に係る印刷装置における印刷モードを説明する図である。
図11】実施形態に係る印刷装置の機能構成を例示するブロック図である。
図12】印刷装置で行われる処理の流れを説明するフローチャートである。
図13】モード決定処理の第1の例を説明するフローチャートである。
図14図13のフローチャートに沿った処理による印刷モードの決定方法の一例を説明する図である。
図15】モード決定処理の第2の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、図1図3を参照しながら、一実施形態に係る印刷装置の構成について説明する。図1は、印刷装置1の斜視図である。図2は、印刷装置1の側面図である。図3は、印刷装置1の内部の主要な機構を示す図である。なお、図1の印刷装置1は、非使用時に後述する指固定部材3をカバーする蓋4を省略している。また、図1に示したX方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する方向であり、図1中の矢印方向を+方向、矢印と反対方向を-方向とする。また、図2のY軸方向及びZ軸方向はそれぞれ図1のY軸方向及びZ軸方向と一致し、図3のX軸方向及びY軸方向はそれぞれ図1のX軸方向及びY軸方向と一致する。
【0014】
図1図3に示した印刷装置1は、インクジェット方式の印刷装置の一例であり、手の爪等の印刷媒体における所定領域に印刷をするネイルプリンタである。印刷装置1は、筐体2の側面のうちの1つの側面2a(以下「前面」という)に開口201が形成されている。筐体2の開口201には、印刷媒体となる指を挿入する挿入口301を有する指固定部材3が設置されている。筐体2の前面2aの開口201は、例えば、筐体2内に配設された保持部材502に対するインクカートリッジの着脱が可能な形状となっている。筐体2には、前面2aの開口201を開閉する蓋4が取り付けられている。該蓋4は、筐体2の前面2aの上辺部にヒンジ(図示せず)により取り付けられている。
【0015】
筐体2内には、図3に示したように、第1の駆動ユニット(第1のキャリッジ)5と、第2の駆動ユニット(第2のキャリッジ)6とが収納されている。また、筐体2内には、図3には示していない各種電気部品、及び各種機構の機械部品等が収容されている。
【0016】
第1の駆動ユニット5は、印刷ヘッド7を第1の方向に沿って移動可能な態様で保持し、第2の駆動ユニット6は、第1の駆動ユニット5を第1の方向と直交する第2の方向に沿って移動可能な態様で保持する。本実施形態では、第1の方向をX軸方向とし、第2の方向をY軸方向とする。すなわち、筐体2の前面2aは、Y軸方向の端面となる側面の1つである。ここで、印刷ヘッド7は、図3に示すように、インクカートリッジと一体型であり、保持部材502に保持されているが、インクカートリッジと別体であってもよい。印刷ヘッド7は、下面側に、インクジェットにより液滴を吐出するノズルが配置されている。
【0017】
第1の駆動ユニット5は第1の方向を軸心方向とするガイドシャフト501を有する。印刷ヘッド7を保持する保持部材502は、取付部材503により、ガイドシャフト501の軸心方向(すなわちX軸方向)に沿って移動可能な状態でガイドシャフト501に取り付けられている。また、図示は省略するが、第1の駆動ユニット5は、DCモータ等の第1のモータと、該第1のモータの回転を第1の方向の運動に変換する変換機構とを有する。保持部材502は、該変換機構のベルトと連結しており、第1のモータが回転することにより第1の方向に沿って移動する。保持部材502及び印刷ヘッド7は、例えば、図3に実線で示した最も右方となる位置から、二点鎖線で示した最も左方となる位置まで移動可能である。また、図示は省略するが、第1の駆動ユニット5は、第1の方向における保持部材502(印刷ヘッド7)の位置の計測に用いるエンコーダを有する。
【0018】
第2の駆動ユニット6は、第2の方向を軸心方向とするガイドシャフト601,602を有する。第1の駆動ユニット5は、取付部材504,505により、ガイドシャフト601,602の軸心方向(すなわちY軸方向)に沿って移動可能な状態でガイドシャフト601,602に取り付けられている。また、第2の駆動ユニット6は、ステッピングモータ等の第2のモータ(図示せず)と、該第2のモータの回転を第2の方向の運動に変換する変換機構とを有する。第1の駆動ユニット5は、取付部材506,507により該変換機構のベルト603,604と連結しており、第2のモータが回転することにより第2の方向に沿って移動する。第1の駆動ユニット5は、図3に二点鎖線で示した最前位置まで移動可能である。
【0019】
図3に実線で示した第1の駆動ユニット5の保持部材502及び印刷ヘッド7の位置、すなわち、筐体2の前面2aから最も遠方となり、かつ最も右方となる位置は、ホームポジション等と呼ばれる位置であり、印刷装置1の電源がオフのときや、印刷処理及びクリーニング処理を行っていない待機状態であるときの保持部材502の位置である。保持部材502がホームポジションに位置する場合、保持部材502により保持される印刷ヘッド7におけるノズルは、筐体2内に設けられたキャップ部材(図示せず)で覆われる。これにより、印刷ヘッド7のノズルの乾燥やインクの蒸発を防止する。
【0020】
印刷処理を行う際には、第1の駆動ユニット5が筐体2の前面2a側の第2の方向(-Y方向)の印刷開始位置まで移動した後、保持部材502(印刷ヘッド7)を第1の方向(+X方向又は-X方向)に移動させる第1の動作と、第1の駆動ユニット5(印刷ヘッド7)を筐体2の前面2a側の第2の方向(-Y方向)に所定距離だけ移動させる第2の動作とを繰り返す。この際、印刷装置1は、第1の動作において印刷ヘッド7のノズルが印刷媒体である爪の上を通過する際に、該ノズルから爪にインクを吐出して爪に印刷をする。
【0021】
また、印刷装置1は、保持部材502のホームポジションの左方となる位置(図3における左方後ろ側)において、印刷ヘッド7のノズルから印刷に用いられないインクを排出するパージ処理及びノズル先端に接触することによりノズル先端のインクやゴミを取り除くワイプ処理を行うことが可能となっている。
【0022】
本実施形態に係る印刷装置1は、上記のように、印刷ヘッド7を第1の方向(X軸方向)に沿って移動させながら印刷媒体に向けてインクを吐出する第1の動作と、印刷ヘッド7を第2の方向(Y軸方向)に移動させる第2の動作とを繰り返して印刷を行う。特に、本実施形態に係る印刷装置1は、シングリング方式と呼ばれる印刷方式に従って第1の動作及び第2の動作を制御し、印刷を行う。
【0023】
図4は、シングリング方式の印刷方法を説明する図である。図4のX軸方向及びY軸方向は、それぞれ、図3のX軸方向及びY軸方向と一致する。
【0024】
本実施形態の印刷装置1で印刷を行う際には、例えば、印刷対象(例えば爪)の寸法及び位置に基づいて、図4に示したような印刷領域10を決定する。そして、印刷装置1の利用者等により選択されたネイルデータ(描画データ)は、印刷領域10の寸法に基づいて、該印刷領域10内に収まるように調整される。ここで、印刷領域10におけるY軸方向の寸法SYは、印刷対象である爪のY軸方向(第2の方向)の寸法である。印刷ヘッド7のノズル群701は、吐出孔であるノズルが複数個Y軸方向に沿って少なくとも1列以上配列されてなる。
【0025】
シングリング方式で印刷する際には、印刷ヘッド7のノズル群701をY軸方向で複数のブロックに区分けし、1回の第2の動作における印刷ヘッド7の移動量(送り量)を1つのブロックのY軸方向の寸法と一致させる。図4に示した例では、ノズル群701をA~Dの4つのブロックに等分している。ここで、筐体2の前面2aから、ブロックD、ブロックC、ブロックB、ブロックAの順に配列されている。各ブロックのY軸方向の寸法をNBとすると、ノズル群701の吐出領域のY軸方向における寸法は寸法NBの4倍となり、1回の第2の動作における印刷ヘッド7の移動量は、ブロックの寸法NBと一致する。ここでn回目(nは正の整数)の第1の動作におけるノズル群701の4つのブロックA、B、C、DをそれぞれブロックAn、Bn、Cn、Dnと定義する。
【0026】
印刷領域10に対する印刷を開始すると、印刷ヘッド7は、ホームポジションから、筐体2の前面2a側の印刷開始位置に移動する。印刷装置1における第2の動作が、印刷ヘッド7をY軸方向(筐体2の前面2aに近づく方向)に移動させる動作である場合、Y軸方向の印刷開始位置は、印刷領域10におけるY軸方向の端部10F,10Nのうち、筐体2の前面2aから見て遠方側の端部(以下「奥方側端部」ともいう)10Fの位置Y0に基づいて決定される。この場合、1回目の第1の動作は、ノズル群701の4つのブロックA1~D1のうち、筐体2の前面2aに最も近いブロックD1のノズルのみが、印刷領域10に対する印刷を行い、残りのブロックA1~C1のノズルは印刷を行わない。このため、Y軸方向の印刷開始位置は、図4に示したように、ノズル群701におけるブロックD1と、該ブロックD1に隣接するブロックC1との境界のY軸方向の位置が、印刷領域10の奥方側端部10Fと同じ位置Y0となるように決定される。印刷開始位置に移動した印刷ヘッド7は、その後、第1の方向に沿って移動する。印刷ヘッド7は、ノズル群701のブロックD1が印刷領域10内を通過する際にブロックD1から爪に向けてインクを吐出し、印刷領域10内の位置Y0から位置Y1までの部分領域R1のうちの領域PD1に対する1回目の印刷を行う。位置Y1は、位置Y0よりもブロックの寸法NBだけ筐体2の前面2a側となる位置(すなわちY1=Y0-NB)である。
【0027】
部分領域R1に対する1回目の印刷(1回目の第1の動作)を終えると、印刷ヘッド7は、第2の動作としてY軸方向(以下「手前」ともいう)にブロックの寸法NBだけ移動する。この状態で2回目の第1の動作を開始する。このときのブロックD2のY軸方向の位置は、1回目の第1の動作時の部分領域R1と同じ位置から、部分領域R1の手前側の部分領域R2と同じ位置に移動する。そして、ブロックC2のY軸方向の位置が部分領域R1と同じ位置となる。2回目の第1の動作を行うと、部分領域R1のうちの領域PC2はブロックC2から吐出されたインクにより印刷され、部分領域R2のうちの領域PD2はブロックD2から吐出されたインクにより印刷される。3回目の第1の動作では、部分領域R1のうちの領域PB3はブロックB3から吐出されたインクにより印刷され、部分領域R2のうちの領域PC3はブロックC3から吐出されたインクにより印刷され、部分領域R3のうちの領域PD3はブロックD3から吐出されたインクにより印刷される。このように、領域PAn、領域PBn、領域PCn、領域PDnには、それぞれn回目の第1の動作におけるブロックAn、ブロックBn、ブロックCn、ブロックDnによってインクが吐出されることができる。なお、デザイン等に応じて印刷領域10全てにインクを吐出してもよいし、部分的にインクを吐出してもよい。また奇数回目の第1の動作及び偶数回目の第1の動作における印刷ヘッド7の走査方向は、互いに180°反転したX軸方向としてもよいし、ともに右から左方向、或いはともに左から右方向でもよい。
【0028】
したがって第2の動作及び第1の動作を繰り返すと、部分領域R1では、ブロックD1、ブロックC2、ブロックB3、及びブロックA4がそれぞれ1回ずつ領域PD1、領域PC2、領域PB3、領域PA4を通過するため、1回の印刷処理において最大4回の印刷を行うことができる。すなわち、ノズル群701を4つのブロックに分割したシングリング方式では、1つの部分領域R1に対する印刷を、ノズル群701における4つの異なるブロックのそれぞれにより4回に分けて行うことができる。同様に、他の部分領域R2~R5に対する印刷も、それぞれ、4つのブロックA~Dのそれぞれにより4回に分けて行うことができる。このように、1つの部分領域に対する印刷を、ノズル群701の複数のブロックのそれぞれにより複数回に分けて印刷することにより、ノズル詰まりなどの影響を受けにくくなり、高品質の印刷を行うことが可能となる。例えば、ブロックA~ブロックDのうちのブロックCの1つのノズルにインク詰まりが発生した場合、ある1つの部分領域(例えば部分領域R3)をブロックCのみで印刷すると、該部分領域のみがノズル詰まりの影響を受け、全体的に横縞が発生し、他の部分領域と比べて印刷品質が劣化する。これに対し、シングリング方式では、全ての部分領域がブロックCのノズル詰まりの影響を受けるものの、ブロックCで印刷される領域が部分領域R1~R5に分割されているので横縞が短くなり、各部分領域が受ける影響は、ブロックCのみで印刷した場合と比べて非常に小さく、かつ部分領域間の影響の差が小さい。このため、シングリング方式で印刷することにより、部分領域毎の印刷品質の差が小さくなり、印刷領域全体でみた印刷品質が向上する。
【0029】
なお、シングリング方式で印刷を行う場合、爪のY軸方向の寸法或いはデザインのY軸方向の寸法によっては、図4に示したように、印刷領域10のY軸方向の寸法SYが、ノズル群701のブロックの寸法NBの整数倍にならないことがある。このような場合には、例えば、図4に示したように、印刷領域10における最も手前側の部分領域R5(すなわち最後に印刷が完了する部分領域)に、印刷に用いる描画データのないデータ無し領域11が含まれる。すなわち、図4に示した例では、印刷領域10の手前側に存在するデータ無し領域11(インク非吐出領域)を含む距離ISY(=5×NB)が、実質的な印刷領域12となる。よって、図4に示した例では、第1の動作において、印刷ヘッド7における筐体2の前面2a側の端部は、印刷領域10におけるY軸方向の端部10F,10Nのうち、筐体2の前面2aから見て手前側の端部(以下「手前側端部」ともいう)10Nの位置ではなく、さらに筐体2の前面2a側に延び、最長で実質的な印刷領域12の端部の位置YLB(=Y5)から3つのブロックB8、C8、D8がはみ出した状態となる。
【0030】
図5は、印刷可能領域の位置に対する制限を説明する図である。図5のX軸方向及びY軸方向は、それぞれ、図3のX軸方向及びY軸方向と一致する。
【0031】
本実施形態に係る印刷装置1では、印刷ヘッド7が筐体2に接触することを防ぐため、筐体2の前面2a側における印刷ヘッド7をY軸方向に移動させる際の移動限界は、図5に示したように、筐体2の前面2aの内壁から距離L0だけ離間した位置となる。すなわち、印刷装置1における印刷可能領域13の手前側端部13Nの限界位置は、印刷ヘッド7がY軸方向の移動限界に到達した位置における、ノズル群701のブロックAとブロックBとの境界の位置となる。印刷装置1により爪全体を印刷するには、爪1401の全体が印刷可能領域13内に位置するように挿入口201(301)から指14を挿入する必要がある。ところが、小指や親指は他の指と比べて短く、しかも指14の長さには個人差がある。一方、印刷装置1の小型化のためには、筐体2の前面2aから印刷可能領域13の手前側端部13Nまでの距離Lは、できるだけ短くすることが好ましい。しかしながら、シングリング方式の印刷装置1では、図4に示したように、印刷デザイン等によっては印刷領域10の手前側に位置するデータ無し領域11を含む状態で印刷を行うことがある。このような印刷装置1では、筐体2の前面2aから印刷可能領域13の手前側端部13Nまでの距離を、図5に示した距離Lよりも長くする必要がある。
【0032】
図6は、印刷可能領域と印刷領域との位置関係の第1の例を示す図である。図7は、印刷可能領域と印刷領域との位置関係の第2の例を示す図である。図8は、印刷可能領域と印刷領域との位置関係の第3の例を示す図である。図9は、印刷可能領域と印刷領域との位置関係の第4の例を示す図である。図6図9の各図におけるX軸方向及びY軸方向は、それぞれ、図5のX軸方向及びY軸方向と一致する。
【0033】
図6に示した印刷領域10は、印刷領域10の手前側端部10Nと印刷可能領域13との手前側端部13Nとの距離がノズル群701のブロックの寸法NBよりも長く位置に設定されている。ここで、印刷領域10のY軸方向の寸法がブロックの寸法NBの整数倍ではなく、かつブロックDとブロックCとの境界が印刷領域10の遠方側端部10Fの位置と一致する位置を印刷開始位置として印刷を開始したとする。この場合、印刷領域10における手前側端部10Nの近傍に対する印刷は、印刷領域10の手前側のデータ無し領域11を含む部分領域に対する印刷となる。
【0034】
図6に示した例では、データ無し領域11を含む実質的な印刷領域12全体が印刷可能領域13内に含まれる。このため、印刷終了時における印刷ヘッド7の位置は、ブロックAとブロックBとの境界の位置が印刷可能領域13の手前側端部13Nよりも奥方にある。このため、筐体2の前面2aから印刷可能領域13の手前側端部13Nの距離L1が、図5に示した距離Lと同じであっても、印刷領域10の全体を印刷することができる。
【0035】
ところが、上記のように指の長さには個人差があるため、例えば、図5に示したように、爪1401の全体が印刷可能領域13内に入っているものの、爪1401の付け根部分から印刷可能領域13の手前側端部13Nまでの距離がブロックの寸法NBよりも短くなることがある。このような場合、例えば、図7に示したように、実質的な印刷領域12における手前側端部が、印刷可能領域13の外側(筐体2の前面2a側)にはみ出してしまうことがある。実質的な印刷領域12の一部が印刷可能領域13の外側にはみ出しても、印刷領域10の全体が印刷可能領域13内に含まれる状態であれば、印刷領域10に対する印刷をすることができる。しかしながら、実質的な印刷領域12の手前側端部が印刷可能領域13の手前側端部13Nよりも筐体2の前面2a側に位置する場合、印刷終了時における印刷ヘッド7の位置は、ブロックAとブロックBとの境界の位置が印刷可能領域13の手前側端部13Nよりも寸法L4だけ筐体2の前面2a側にずれた位置になってしまう。このため、印刷ヘッド7の移動限界等に基づいて設定される、筐体2の前面2aから印刷可能領域13の手前側端部13Nまでの距離L2は、図5に示した距離Lよりも長くなる。よって、実質的な印刷領域12における印刷領域10の手前側にデータ無し領域11が含まれる状態で印刷を行う印刷装置1では、装置の寸法や対応可能な指の長さ等に対する制限が厳しくなる。
【0036】
ところで、印刷装置1では、図5に示すように、画像データ等にしたがって設定される印刷領域10のY軸方向の寸法SYがノズル群701のブロックの寸法NBの整数倍ではない場合に、図8に示すように、ブロックAとブロックBとの境界の位置を印刷領域10の手前側端部10Nの位置と一致させて印刷することも可能である。このような印刷方法は、例えば、印刷装置1は、ブロックAとブロックBとの境界の位置が印刷領域10の手前側端部10Nの位置と一致する位置を印刷開始位置とし、第2の動作において印刷ヘッド7を手前側から奥方側(Y軸方向)に移動させることで実現できる。また、例えば、印刷装置1は、印刷領域10の奥方側端部10Fの更に奥方側であって、印刷領域10の手前側端部10Nからの距離がブロックの寸法NBの整数倍となる位置を印刷開始位置とし、第2の動作において印刷ヘッド7を奥方側から手前側(Y軸方向)に移動させることで実現できる。
【0037】
このような印刷装置1では、印刷を開始してから終了するまでの間、ブロックAとブロックBとの境界の位置が印刷可能領域13の手前側端部13Nよりも手前側になることはない。このため、筐体2の前面2aから印刷可能領域13の手前側端部13Nまでの距離L3は、図5に示した距離Lと同様の最短距離に設定することが可能となる。
【0038】
ところが、実質的な印刷領域12が印刷領域10の奥方側にデータ無し領域11を含む場合、図9に示すように、データ無し領域11を含む実質的な印刷領域12の奥方側の端部が、印刷可能領域13からはみ出してしまうことがある。このような場合、例えば、印刷開始直後、あるいは印刷終了直前に行われるブロックDのみによる印刷時における、ノズルのY軸方向(奥方)へのはみ出し量が、印刷領域10の手前側にデータ無し領域11を含む場合のはみ出し量よりも大きくなってしまう。このため、今度は逆に、印刷可能領域の奥方側に、印刷中の印刷ヘッド7と他の各種部品との接触を回避するためのスペースが必要となり、印刷装置1の小型化が難しくなる。
【0039】
本実施形態の印刷装置1は、上記のような実質的な印刷領域12における印刷領域10の手前側又は奥方側にデータ無し領域11が含まれることによる制限を緩和するため、印刷可能領域13内における印刷領域10の位置に基づいて、印刷領域10とデータ無し領域11との位置関係(印刷モード)を切り替える。
【0040】
図10は、実施形態に係る印刷装置1における印刷モードを説明する図である。
【0041】
本実施形態に係る印刷装置1は、シングリング方式で印刷する際の印刷モードとして、図10に示したような第1のモードと第2のモードとを用意する。
【0042】
第1のモードは、図4及び図6を参照して説明した印刷モードである。すなわち、第1のモードで印刷する場合、Y軸方向の印刷開始位置は、印刷開始時又は印刷終了時におけるノズル群701のブロックの境界の位置が、印刷領域10における奥方側端部10Fと一致する位置に決定する。このため、印刷領域10のY軸方向の寸法SYがブロックの寸法NB(すなわち印刷ヘッド7の送り量)の整数倍ではない場合、第1のモードで印刷をすると、実質的な印刷領域12は、印刷領域10の手前側にデータ無し領域11を含む領域となる。
【0043】
一方、第2のモードは、図8を参照して説明した印刷モードである。すなわち、第2のモードで印刷する場合、Y軸方向の印刷開始位置は、印刷開始時又は印刷終了時におけるノズル群701のブロックの境界の位置が、印刷領域10における手前側端部10Nと一致する位置に決定する。このため、印刷領域10のY軸方向の寸法SYがブロックの寸法NB(すなわち印刷ヘッド7の送り量)の整数倍ではない場合、第2のモードで印刷をすると、実質的な印刷領域12は、印刷領域10の奥方側にデータ無し領域11を含む領域となる。
【0044】
本実施形態の印刷装置1では、例えば、印刷領域10の手前側端部10Nから印刷可能領域13の手前側端部13Nまでの距離が、第2の動作における印刷ヘッド7の送り量(すなわちノズル群701のブロックの寸法NB)よりも短い場合には第2のモードで印刷をする。そして、印刷領域10の手前側端部10Nから印刷可能領域13の手前側端部13Nまでの距離が第2の動作における印刷ヘッド7の送り量(ブロックの寸法NB)よりも長い場合には第1のモードで印刷をする。これにより、データ無し領域11が印刷領域10における手前側端部10N及び奥方側端部10Fのいずれか一方の側にあったとしても、他方側に、ノズル群701の互いに隣接するブロックの境界を位置合わせしているため、印刷可能領域13からのノズル群701のはみ出し量の増大を抑制することが可能となり、本実施形態の印刷装置1のように、あらゆる画像を印刷する際に、状況に従って切り替えられた第1のモードにおけるY軸方向の移動範囲及び第2のモードにおけるY軸方向の移動範囲を重ねた総合的なY軸方向の移動範囲が、従前の第1のモードのみであらゆる画像を印刷した場合のY軸方向の移動範囲よりも短くなり、第2のモードのみであらゆる画像を印刷した場合のY軸方向の移動範囲よりも短くなる。
【0045】
図11は、実施形態に係る印刷装置1の機能構成を例示するブロック図である。
【0046】
図11に示すように、本実施形態の印刷装置1は、制御部100と、表示部110と、操作部120と、撮影部130と、描画部140と、位置検出部150とを含む。
【0047】
制御部100は、印刷装置1の動作を制御する。制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理回路を有し、図示しないRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶回路に含まれたプログラム等のデータにしたがって処理を行う。表示部110は、例えば、ネイルデザインなどを表示する。操作部120は、例えば、ネイルデザインの選択等に使用される。撮影部130は、筐体2内に挿入された指(爪)の画像を取得する。描画部140は、例えば、第1の駆動ユニット5及び第2の駆動ユニット6を含み、印刷ヘッド7に設けられているノズル71のインク吐出を制御して所望のネイルデザインを印刷する。位置検出部150は、例えば、エンコーダ、原点センサユニットなどを含み、ノズル71(ノズル群701)の位置の座標をカウンタ値として検出する。また、本実施形態の印刷装置1では、例えば、制御部100及び描画部140のいずれかにおいて、撮像部130により取得した印刷可能領域13内における指の画像及びネイルデザインデータに基づいて印刷領域10を決定し、第1のモード及び第2のモードのどちらのモードで印刷するかを決定する。
【0048】
図12は、印刷装置1で行われる処理の流れを説明するフローチャートである。
【0049】
印刷装置1の電源をONにすると、印刷装置1は、図12に示す処理を開始する。印刷装置1は、まず、初期化処理を行う(ステップS1)。電源をONにした直後、印刷装置1は、印刷ヘッド7のノズル群701の位置を知らない。このため、制御部100は、原点位置を検出するために描画部140にインクカートリッジを搬送させ、位置検出部150からの出力に基づいて原点位置を検出する。原点位置を検出すると、制御部100は、描画部140にホームポジションまで印刷ヘッド7を搬送させて、ノズル群701をキャッピングする。この動作は、印刷ヘッド7のノズル群701が、電源をONにした直後にホームポジションに位置していたとしても行われる。
【0050】
次に、印刷装置1の利用者によってネイルデザインが選択されると、印刷装置1は、利用者の爪の画像を撮影する(ステップS2)。このネイルデザインは、ネイルデザインの選択にしたがってスマートフォンやパーソナルコンピュータ等の外部機器から通信によりネイルデザインデータとして取得してもよいし、印刷装置1内の記憶回路にデータとして格納されていてもよい。ここでは、制御部100は、撮影部130に撮影指示を出力し、撮影部130に指固定部材3の挿入穴301から挿入された指(爪)を撮影させる。なお、利用者の爪を撮影後にネイルデザインを選択してもよい。
【0051】
爪が撮影されると、印刷装置1は、選択されたネイルデザインを爪に印刷(描画)するための印刷用の画像データを生成する(ステップS3)。ここでは、制御部100は、ステップS2で取得した爪の画像に基づいて、爪の輪郭検出等を行い、爪のサイズ、形状に関する情報を生成する。更に、制御部100は、この爪の情報に基づいて、利用者が選択したネイルデザインに対して爪の輪郭の外をトリミングした画像データに調整して、印刷用の画像データを生成する。
【0052】
印刷用の画像データを生成すると、印刷装置1は、モード決定処理を行う(ステップS4)。ここでは、制御部100は、モード決定部にステップS3で生成した爪の情報及び印刷用の画像データに基づいて、第1のモード及び第2のモードのいずれの印刷モードで印刷するかを決定する。モード決定部は、例えば、制御部100に含まる。
【0053】
印刷モードを決定すると、印刷装置1は、メンテナンス処理を行う(ステップS5)。ここでは、制御部100は、描画部140にインクカートリッジをワイプ位置、パージ位置に順に搬送させ、各位置でワイプ処理、パージ処理を行う。その後、制御部100は、描画部140にインクカートリッジを印刷開始位置に搬送させる。描画部140は、ステップS3で生成した爪の情報、印刷用の画像データにおけるY軸方向の寸法SY、ノズルのブロックの寸法NB、及びステップS4で決定した印刷モード(第1のモード又は第2のモード)に基づいて、印刷開始位置を決定する。
【0054】
最後に、印刷装置1は、ネイルデザインを爪に印刷する印刷処理を行う(ステップS6)。ここでは、制御部100は、ステップS3で生成した画像データに基づいて、ノズル71のインク吐出を制御して、印刷可能領域13に載置された指の爪上にネイルデザインを印刷する。
【0055】
以上の処理を行うことで、印刷装置1は、爪に利用者が選択した所望のネイルデザインを印刷することができる。
【0056】
本実施形態に係る印刷装置1は、ステップS4のモード決定処理として、例えば、図13のフローチャートに沿った処理を行う。
【0057】
図13は、モード決定処理の第1の例を説明するフローチャートである。
【0058】
モード決定処理を開始すると、制御部100は、まず、爪の輪郭座標を取得する(ステップS401)。制御部100は、自身がステップS2で生成した爪の情報に含まれる爪の輪郭座標を取得する。爪の輪郭座標は、X軸方向のX座標、Y軸方向のY座標、Z軸方向のZ座標でもよいし、X座標、Y座標のみでもよい。
【0059】
次に、制御部100は、爪の輪郭座標からY軸方向における爪の先端位置を算出する(ステップS402)。ここでは、制御部100は、爪の輪郭座標に基づいて、Y軸方向の位置が最も奥方となる輪郭部分の座標を、爪の先端位置として算出する。
【0060】
次に、制御部100は、印刷可能領域13の奥方側端部13Fから爪の先端位置までの距離daを算出し(ステップS403)、距離daがノズル群701のブロックの寸法NB以上であるか否かを判定する(ステップS404)。da≧NBの場合(ステップS404;YES)、制御部100は、印刷モードを第2のモードに決定する(ステップS405)。一方、da<NBの場合(ステップS404;NO)、制御部100は、印刷モードを第1のモードに決定する(ステップS406)。ステップS405又はS406により印刷モードを決定した後、制御部100は、モード決定処理を終了する。モード決定処理を終了した後、制御部100は、ステップS5のメンテナンス処理に関する信号とともに、ステップS4で決定した印刷モードを描画部140に通知する。なお、上記では、da=NBの場合、第2のモードに決定したが、代わりに第1のモードに決定してもよい。
【0061】
図14は、図13のフローチャートに沿った処理による印刷モードの決定方法の一例を説明する図である。図14のX軸方向及びY軸方向は、それぞれ、図5のX軸方向及びY軸方向と一致する。
【0062】
図13のフローチャートに沿った処理を行う場合、印刷装置1は、印刷可能領域13の奥方側端部13Fから爪1401の先端位置までの距離daがノズル群701のブロックの寸法NB以上であるか否かを判定する。ここでは、図14に示したように、距離daがブロックの寸法NBよりも短い場合について説明する。
【0063】
距離daがブロックの寸法NBよりも短い場合、実質的な印刷領域12が印刷領域10の奥方側にデータ無し領域11を含む領域であるとすると、図9を参照して説明したように、実質的な印刷領域12の奥方側の端部が印刷可能領域13からはみ出してしまう可能性がある。すなわち、da<NBの場合に第2のモードで印刷をすると、実質的な印刷領域12の奥方側の端部が印刷可能領域13からはみ出してしまう可能性がある。このため、本実施形態の印刷装置1では、da<NBの場合には、第1のモードで印刷をする。第1のモードは、上記のように、ノズル群701の互いに隣接するブロック間の境界が印刷領域10の奥方側端部10Fと一致するように印刷開始位置を設定するモードである。印刷領域10のY軸方向の寸法SYがブロックの寸法NBの整数倍でない場合に第1のモードで印刷すると、実質的な印刷領域12は、図4等に示したように、印刷領域10の手前側にデータ無し領域11を含む領域となる。
【0064】
印刷可能領域13のY軸方向の寸法は、指14の長さの違い等による制限を緩和するため、印刷対象となる平均的な爪1401の寸法と比較して約2倍から3倍となるよう余裕を持たせている。このため、距離daがブロックの寸法NBよりも短い場合、図14に示したように、印刷可能領域13の手前側端部13Nから爪1401の付け根部分までの距離dbは、ノズル群701のブロックの寸法NBよりも長くなる。よって、da<NBである場合に第1のモードを選択し、実質的な印刷領域12が、印刷領域10の手前側にデータ無し領域11を含むことを許容することにより、印刷開始時及び印刷終了時のそれぞれにおけるノズル群701のはみ出し量の増大を防ぐことができる。
【0065】
また、da≧NBである場合、印刷装置1は、第2のモードで印刷を行う。第2のモードは、上記のように、ノズル群701の互いに隣接するブロック間の境界が印刷領域10の手前側端部10Nと一致するように印刷開始位置を設定するモードである。印刷領域10のY軸方向の寸法SYがブロックの寸法NBの整数倍でない場合に第2のモードで印刷すると、実質的な印刷領域12は、図8等に示したように、印刷領域10の奥方側にデータ無し領域11を含む領域となる。
【0066】
da≧NBである場合には、印刷可能領域13の手前側端部13Nから爪1401の付け根部分までの距離dbとブロックの寸法NBとの大小関係が、db<NBとなる場合と、db≧NBとなる場合とが含まれる。db≧NBとなる場合には、第1のモード及び第2のモードのどちらで印刷を行ってもノズルのブロックの境界が印刷可能領域13の外側にはみ出すことは無い。しかしながら、db<NBとなる場合に第1のモードで印刷すると、ノズルのブロックの境界が印刷可能領域13の外側にはみ出してしまう。従って、db<NBとなる場合には、上述のように第2のモードで印刷を行うことで、ノズルのはみ出し量の増大を防ぐことができる。これにより、da≧NBである場合にも、印刷開始時及び印刷終了時のそれぞれにおけるノズル群701のはみ出し量の増大を防ぐことができる。
【0067】
なお、本実施形態の印刷装置1が行うモード決定処理(ステップS4)は、図13のフローチャートに沿った処理に限らず、他の処理であってもよい。モード決定処理は、例えば、図15のフローチャートに沿った処理であってもよい。
【0068】
図15は、モード決定処理の第2の例を説明するフローチャートである。
【0069】
モード決定処理の第2の例では、制御部100は、まず、爪の輪郭座標を取得する(ステップS411)。制御部100は、自身がステップS2で生成した爪の情報に含まれる爪の輪郭座標を取得する。
【0070】
次に、制御部100は、Y軸方向における爪の先端位置及び爪の長さを算出する(ステップS412)。ここでは、制御部100は、爪の輪郭座標に基づいて、Y軸方向の位置が最も奥方となる輪郭部分の座標を、爪の先端位置として算出する。また、制御部100は、Y軸方向の位置が最も手前側となる輪郭部分の座標を付け根位置として算出し、Y軸方向における先端位置から付け根位置までの距離を、爪の長さとして算出する。
【0071】
次に、制御部100は、Y軸方向における爪の長さと送り長とに基づいて、印刷寸法ISYを算出する(ステップS413)。ここでは、制御部100は、ノズル群701のブロックの寸法NBを送り長とし、該送り長の整数倍の長さのうち、算出した爪の長さ以上であり、かつ最も値の短い長さを、印刷寸法ISYとして算出する。印刷寸法ISYは、図4に示したように、実質的な印刷領域12のY軸方向の寸法である。
【0072】
次に、制御部100は、爪の先端位置と印刷寸法ISYとに基づいて、第1のモードでシングリングすると想定した場合の実質的な印刷領域12の手前側端部の位置YLBを算出する(ステップS414)。第1のモードでシングリングする場合には、ノズル群701のブロックの境界を印刷領域10の奥方側端部10Fと一致させる。このため、奥方側端部10F(すなわち爪の先端位置)から印刷寸法ISYだけ手前となる位置が、実質的な印刷領域12の手前側端部の位置YLBとなる。
【0073】
位置YLBを算出した後、制御部100は、算出した位置YLBが印刷可能領域13内であるか否かを判定する(ステップS415)。位置YLBが印刷可能領域13内である場合(ステップS415;YES)、制御部100は、印刷モードを第1のモードに決定する(ステップS416)。一方、位置YLBが印刷可能領域13内ではない場合、すなわち印刷可能領域13の手前側端部13Nよりも更に手前側である場合(ステップS415;NO)、制御部100は、印刷モードを第2のモードに決定する(ステップS417)。ステップS416又はS417により印刷モードを決定した後、制御部100は、モード決定処理を終了する。
【0074】
爪の先端位置及びブロックの寸法NBの整数倍となる印刷寸法ISYとに基づいて算出した位置YLBが印刷可能領域13の手前側端部13Nよりも更に手前である場合、図7に示したように、ノズル群701のブロックの境界が印刷可能領域13の外側にはみ出してしまう。この場合、図14を参照して説明した理由とは逆の理由により、爪の先端位置から印刷可能領域13の奥方側端部13Fまでの距離daがノズル群701のブロックの寸法NBよりも長くなる。よって、ステップS414で算出した位置YLBが印刷可能領域13内ではない場合には、第2のモードを選択し、実質的な印刷領域12のデータ無し領域11を、印刷領域10の手前側に配置させずに印刷領域10の奥方側に配置させることにより、印刷開始時及び印刷終了時のそれぞれにおけるノズル群701のはみ出し量の増大を防ぐことができる。
【0075】
また、ステップS414で算出した位置YLBが印刷可能領域13内である場合には、爪の先端位置から印刷可能領域13の奥方側端部13Fまでの距離daがノズル群701のブロックの寸法NBよりも短い場合(da<NB)が含まれる。このため、位置YLBが印刷可能領域13内である場合には、第1のモードを選択し、実質的な印刷領域12のデータ無し領域11を、印刷領域10の奥方側に配置させずに印刷領域10の手前側に配置させることにより、印刷開始時及び印刷終了時のそれぞれにおけるノズル群701のはみ出し量の増大を防ぐことができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置1によれば、印刷開始時及び印刷終了時におけるノズル群701の印刷可能領域13からのはみ出し量の増大を防ぐことができる。このため、シングリング方式の印刷装置1における印刷可能領域13に対する印刷ヘッド7の移動範囲を小さくすることができる。よって、印刷装置1の小型化や、対応可能な指14の長さの制限の緩和が可能となる。
【0077】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
第1の方向に沿って移動させながらノズルから印刷媒体に向けてインクを吐出する第1の動作と、前記第1の方向と交差する第2の方向で前記ノズルを複数のブロックに区分けされた場合の1つの前記ブロックの前記第2の方向の寸法の送り量で移動する第2の動作とを実行する印刷ヘッドと、
前記印刷媒体の位置と、前記ブロックの前記第2の方向の寸法とに基づいて、前記ノズルの前記複数のブロックのうちの互いに隣接するブロックの境界の1つの位置が前記印刷領域における奥方側の端部の位置と一致するように前記印刷ヘッドの印刷開始位置を設定する第1のモードと、前記ノズルの前記複数のブロックのうちの互いに隣接するブロックの境界の1つの位置が前記印刷領域における手前側の端部の位置と一致するように前記印刷ヘッドの印刷開始位置を設定する第2のモードとのいずれで印刷を行うかを決定する制御部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
[付記2]
付記1に記載の印刷装置において、
前記制御部は、印刷可能領域の奥方側の端部から前記印刷媒体の前記印刷可能領域の奥方側の先端位置までの距離が前記ブロックの前記第2の方向の寸法よりも短い場合には前記第1のモードに決定し、前記距離が前記ブロックの前記第2の方向の寸法よりも長い場合には前記第2のモードに決定する
ことを特徴とする印刷装置。
[付記3]
第1の方向に沿って移動させながらノズルから印刷媒体に向けてインクを吐出する第1の動作と、前記第1の方向と交差する第2の方向で前記ノズルを複数のブロックに区分けされた場合の1つの前記ブロックの前記第2の方向の寸法の送り量で移動する第2の動作とを実行する印刷ヘッドと、
前記印刷媒体の位置及び前記印刷媒体の前記第2の方向における寸法と、印刷可能領域とに基づいて、前記ノズルの前記複数のブロックのうちの互いに隣接するブロックの境界の1つの位置が前記印刷領域における奥方側の端部の位置と一致するように前記印刷ヘッドの印刷開始位置を設定する第1のモードと、前記ノズルの前記複数のブロックのうちの互いに隣接するブロックの境界の1つの位置が前記印刷領域における手前側の端部の位置と一致するように前記印刷ヘッドの印刷開始位置を設定する第2のモードとのいずれで印刷を行うかを決定する制御部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
[付記4]
付記3に記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記印刷媒体の位置及び前記印刷媒体の前記第2の方向における寸法に基づいて前記第1モードでの印刷を想定した場合の前記印刷領域の手前側端部の位置が印刷可能領域内である場合には前記第1のモードに決定し、前記位置が前記印刷可能領域よりも更に手前側である場合には前記第2のモードに決定する
ことを特徴とする印刷装置。
[付記5]
第1の方向に沿って移動させながらノズルから印刷媒体に向けてインクを吐出する第1の動作と、前記第1の方向と交差する第2の方向で前記ノズルを複数のブロックに区分けされた場合の1つの前記ブロックの前記第2の方向の寸法の送り量で移動する第2の動作とを印刷ヘッドが実行する際に、前記印刷媒体の位置と、前記ブロックの前記第2の方向の寸法とに基づいて、前記ノズルの前記複数のブロックのうちの互いに隣接するブロックの境界の1つの位置が前記印刷領域における奥方側の端部の位置と一致するように前記印刷ヘッドの印刷開始位置を設定する第1のモードと、前記ノズルの前記複数のブロックのうちの互いに隣接するブロックの境界の1つの位置が前記印刷領域における手前側の端部の位置と一致するように前記印刷ヘッドの印刷開始位置を設定する第2のモードとのいずれで印刷を行うかを決定する
ことを特徴とする印刷方法。
[付記6]
第1の方向に沿って移動させながらノズルから印刷媒体に向けてインクを吐出する第1の動作と、前記第1の方向と交差する第2の方向で前記ノズルを複数のブロックに区分けされた場合の1つの前記ブロックの前記第2の方向の寸法の送り量で移動する第2の動作とを印刷ヘッドが実行する際に、前記印刷媒体の位置及び前記印刷媒体の前記第2の方向における寸法と、印刷可能領域とに基づいて、前記ノズルの前記複数のブロックのうちの互いに隣接するブロックの境界の1つの位置が前記印刷領域における奥方側の端部の位置と一致するように前記印刷ヘッドの印刷開始位置を設定する第1のモードと、前記ノズルの前記複数のブロックのうちの互いに隣接するブロックの境界の1つの位置が前記印刷領域における手前側の端部の位置と一致するように前記印刷ヘッドの印刷開始位置を設定する第2のモードとのいずれで印刷を行うかを決定する
ことを特徴とする印刷方法。
【符号の説明】
【0078】
1 印刷装置
2 筐体
2a 前面
201 開口
3 指固定部材
301 挿入口
4 蓋
5 第1の駆動ユニット
501 ガイドシャフト
502 保持部材
503,504,505,506,507 取付部材
6 第2の駆動ユニット
601,602 ガイドシャフト
603,604 ベルト
7 印刷ヘッド
71 ノズル
701 ノズル群
10 印刷領域
10F 奥方側端部
10N 手前側端部
11 データ無し領域
12 実質的な印刷領域
13 印刷可能領域
13F 奥方側端部
13N 手前側端部
14 指
1401 爪
100 制御部
110 表示部
120 操作部
130 撮影部
140 描画部
150 位置検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15