(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】水中電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 13/08 20060101AFI20230328BHJP
F16K 31/18 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
F04D13/08 Y
F16K31/18 D
(21)【出願番号】P 2023503450
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2022034287
【審査請求日】2023-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】松原 央樹
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-34885(JP,A)
【文献】特開2020-172876(JP,A)
【文献】特開平7-286595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D13/08
F04D29/22
F16K31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦巻形状を有する流
路と、前記流路内に揚液を吸い込む吸込
口とを含むケーシン
グと、
羽根
部と、前記羽根部を保持する主
板と、前記ケーシングの前記吸込口側に開口する側
板とを含む、クローズドインペ
ラと、
前記クローズドインペラに接続される主軸を含むモー
タと、を備え、
前記ケーシングは、前記クローズドインペラに対向し、前記吸込口が凸状に突出するとともに、前記ケーシングと一体的に形成された吸込流路
部を含
み、
前記主軸の延びる方向における、前記羽根部と前記主板と前記側板とを含む前記クローズドインペラの高さである羽根幅は、前記主軸の延びる方向における前記ケーシングの前記流路の最大深さに対して、前記主軸の延びる方向における前記吸込流路部の突出高さの分小さく形成されている、水中電動ポンプ。
【請求項2】
前記吸込流路部は、前記吸込口側から前記クローズドインペラ側に向かって延びる筒形状を有している、請求項
1に記載の水中電動ポンプ。
【請求項3】
前記クローズドインペラの前記側板は、前記吸込流路部側に開口する開口部を有し、
前記主軸の延びる方向から見て、前記開口部の内径と、前記吸込流路部の前記クローズドインペラ側の端部の内径とが略同じである、請求項
2に記載の水中電動ポンプ。
【請求項4】
前記ケーシングと前記吸込流路部とが、樹脂により一体的に形成されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項5】
前記クローズドインペラの前記側板は、前記吸込流路部側に開口する開口部を有し、
前記主軸の延びる方向において、前記開口部と前記吸込流路部とが5mm以下の間隔を空けて配置されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項6】
前記主軸の延びる方向における前記吸込流路部の突出高さは、前記主軸の延びる方向における前記流路の最大深さの20%以上である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項7】
前記ケーシングは、前記ケーシング内の空気を排出する排出
口と、
前記排出口の下方に配置されるとともに、揚液の吸込み時に揚液により押し上げられて、前記排出口を封止する封止部
材と、
前記封止部材が載置されるとともに、前記封止部材を前記排出口に向かって押し上げる揚液の流れを形成する、台座
部とを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項8】
前記台座部は、略V字形状を有する、請求項
7に記載の水中電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中電動ポンプに関し、特に、クローズドインペラを備える水中電動ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、羽根部が覆われていないオープンインペラに対して、羽根部が主板と側板とに覆われているクローズドインペラを備える水中電動ポンプが知られている。このような水中電動ポンプは、たとえば、特開2006-291937号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2006-291937号公報には、モータと、駆動軸と、クローズドインペラと、ポンプケーシングとを備えるポンプが開示されている。特許文献1では、クローズドインペラの吸込部と、ポンプケーシングの吸込部とが連通するように構成されている。また、駆動軸は、クローズドインペラが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2006-291937号公報に開示されていないが、ケーシングのモータ側には、ケーシング内の揚液(たとえば、汲み上げられた水)がモータ側に漏れないようにするためのシール部が主軸に設けられている。また、吸込口とクローズドインペラとの間の隙間から側方に流れる揚液の量を最小限にして、水中電動ポンプの効率低下を抑制することを目的として、クローズドインペラは、吸込口の近傍に下端が位置している。
【0006】
また、上記特開2006-291937号公報に開示されていないが、流量を増やして水中電動ポンプの性能を上げることが検討されている。流量を増やすためにケーシングの深さを大きくする場合に、クローズドインペラとケーシングの吸込口との間隔を大きくすると、吸込口とクローズドインペラとの間の隙間から側方に流れる揚液の量が大きくなるため、クローズドインペラの主軸の延びる方向の高さである羽根幅も併せて大きくすることが考えられる。しかしながら、羽根幅を大きくするとクローズドインペラの重心が下方に位置するとともに、大量の揚液によってクローズドインペラの重心に作用するラジアル方向の力が大きくなるため、クローズドインペラの偏心が生じる可能性がある。この結果、主軸の撓みが発生するとともに、主軸の撓みによりシール部に隙間が生じて、モータ側に揚液が浸入するという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、モータ側に揚液が侵入することを抑制することが可能であるとともに、流量を大きくすることが可能な水中電動ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における水中電動ポンプは、渦巻形状を有する流路と、流路内に揚液を吸い込む吸込口とを含むケーシングと、羽根部と、羽根部を保持する主板と、ケーシングの吸込口側に開口する側板とを含む、クローズドインペラと、クローズドインペラに接続される主軸を含むモータと、を備え、ケーシングは、クローズドインペラに対向し、吸込口が凸状に突出するとともに、ケーシングと一体的に形成された吸込流路部を含み、主軸の延びる方向における、羽根部と主板と側板とを含むクローズドインペラの高さである羽根幅は、主軸の延びる方向におけるケーシングの流路の最大深さに対して、主軸の延びる方向における吸込流路部の突出高さの分小さく形成されている。
【0009】
この発明の一の局面による水中電動ポンプでは、上記のように、ケーシングは、クローズドインペラに対向し、吸込口が凸状に突出するとともに、ケーシングと一体的に形成された吸込流路部を含む。これによって、流量を増やすためにケーシングの深さを大きくした場合にも、吸込流路部の突出高さを調整して、クローズドインペラと吸込口との間隔を小さくすることができる。これにより、クローズドインペラと吸込口との間隔を小さくして、吸込口とクローズドインペラとの間の隙間から側方に流れる揚液の量を最小限に抑制しつつ、ケーシングの深さを大きくして流量を大きくすることができる。また、吸込流路部の突出高さによってクローズドインペラと吸込口との間隔の大きさを調整することができるため、羽根幅を小さくすることができる。これにより、羽根幅を小さくすることができるため、軸撓みが発生することに起因して、モータ側に揚液が浸入することを抑制することができる。これらの結果、モータ側に揚液が浸入することを抑制することができるとともに、流量を大きくすることができる。
【0010】
また、主軸の延びる方向における、羽根部と主板と側板とを含むクローズドインペラの高さである羽根幅は、主軸の延びる方向におけるケーシングの流路の最大深さに対して、主軸の延びる方向における吸込流路部の突出高さの分小さく形成されている。これにより、吸込流路部の突出高さの分だけ、クローズドインペラの羽根幅を小さくすることができるため、羽根幅を容易に小さくすることができる。その結果、羽根幅が大きくなることに起因する主軸の撓みの発生を抑制することができるため、モータ側に揚液が侵入することを容易に抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、吸込流路部は、吸込口側からクローズドインペラ側に向かって延びる筒形状を有している。このように構成すれば、吸込流路部の筒状の内部流路を介して、揚液を吸い込むことができる。
【0012】
この場合、好ましくは、クローズドインペラの側板は、吸込流路部側に開口する開口部を有し、主軸の延びる方向から見て、開口部の内径と、吸込流路部のクローズドインペラ側の端部の内径とが略同じである。このように構成すれば、吸込流路部からクローズドインペラに接続される流路の径を略同じにすることができるため、吸込流路部を通過した揚液を効率よくクローズドインペラが吸い込むことができる。
【0013】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、ケーシングと吸込流路部とが、樹脂により一体的に形成されている。このように構成すれば、吸込流路部が設けられたケーシングを容易に形成することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、クローズドインペラの側板は、吸込流路部側に開口する開口部を有し、主軸の延びる方向において、開口部と吸込流路部とが5mm以下の間隔を空けて配置されている。このように構成すれば、開口部と吸込流路部との隙間から側方に流れる揚液の量を最小限に抑制することができるため、水中電動ポンプの効率低下を抑制することができる。
【0015】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、主軸の延びる方向における吸込流路部の突出高さは、主軸の延びる方向における流路の最大深さの20%以上である。このように構成すれば、クローズドインペラの羽根幅が大きくなることを抑制しつつ、流量が十分に大きい水中電動ポンプを作製することができる。このような効果は、後述する実験(実施例)により証明されている。
【0016】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、ケーシングは、ケーシング内の空気を排出する排出口と、排出口の下方に配置されるとともに、揚液の吸込み時に揚液により押し上げられて、排出口を封止する封止部材と、封止部材が載置されるとともに、封止部材を排出口に向かって押し上げる揚液の流れを形成する台座部とを含む。このように構成すれば、封止部材の重心付近の下方に台座部を位置させることにより、封止部材を安定して押し上げることができるため、排出口の位置に封止部材を確実に押し上げることができるとともに、排出口を確実に封止することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、台座部は、略V字形状を有する。このように構成すれば、V字形状を形成する斜面部によって揚液を集めることができるため、封止部材を押し上げる力を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、モータ側に揚液が侵入することを抑制することが可能であるとともに、流量を大きくすることが可能な水中電動ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態による水中電動ポンプの全体構成を示した概略図である。
【
図2】実施形態による水中電動ポンプの下部ケーシングを示した斜視図である。
【
図3】実施形態による水中電動ポンプのクローズドインペラを側方から示した図である。
【
図4】実施形態によるクローズドインペラを吸込流路部側から示した図である。
【
図5】実施形態によるケーシングをクローズドインペラ側から示した図である。
【
図9】軸動力と、流量との関係を示すグラフである。
【
図10】ポンプ効率と、流量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
【0021】
[実施形態]
(水中電動ポンプの構成)
図1~
図7を参照して、本実施形態の水中電動ポンプ100について説明する。水中電動ポンプ100は、主軸33の回転中心軸線αが上下方向(Z方向)に延びる縦型の水中電動ポンプである。水中電動ポンプ100は、水中に配置されて使用される。
【0022】
図1に示すように、水中電動ポンプ100は、ポンプ室1と、オイル室2と、モータ3とを備えている。ここで、主軸33の回転中心軸線αの延びる方向をZ方向により示し、Z方向のうちクローズドインペラ4側からモータ3側を向く方向をZ1方向により示し、Z1方向の反対方向をZ2方向により示す。
【0023】
ポンプ室1は、ケーシング11によって周囲が覆われている。ケーシング11は、Z2側に位置する下部ケーシング11aと、Z1側に位置する上部ケーシング11bとを含む。ケーシング11は、樹脂により構成されている。下部ケーシング11aと上部ケーシング11bとは、別々に形成されており、下部ケーシング11aと上部ケーシング11bとを接合することによりケーシング11が形成される。
【0024】
ケーシング11は、吸込口12と、吐出口13と、吸込流路部14と、流路15とを含む。
【0025】
吸込口12は、下部ケーシング11aの下方側(Z2側)に設けられている。クローズドインペラ4が回転することにより、吸込口12から揚液(たとえば、汲み上げられた水)がZ1方向に流れて、ポンプ室1内に流入する。
【0026】
吐出口13は、上部ケーシング11bの上方側(Z1側)に設けられている。クローズドインペラ4が回転することにより発生する遠心力によって、ポンプ室1内の揚液が吐出口13から吐出される。
【0027】
吸込流路部14は、下部ケーシング11aの内部に形成されている。吸込流路部14は、吸込口12の周囲からクローズドインペラ4に向かってZ1方向に凸状に突出する。吸込流路部14は、主軸33の延びる方向(Z方向)においてクローズドインペラ4に対向する。吸込流路部14は、樹脂により下部ケーシング11aと一体的に形成されている。
【0028】
図1および
図2に示すように、吸込流路部14は、吸込口12側からクローズドインペラ4側に向かってZ方向に延びる筒形状を有している。主軸33の延びる方向(Z方向)における吸込流路部14の突出高さHは、主軸33の延びる方向における流路15の最大深さDの15%以上、好ましくは、20%以上、より好ましくは25%以上である。突出高さHは、ケーシング11の内部底面からの高さである。
【0029】
図1および
図2に示すように、流路15は、下部ケーシング11aの内部に形成されている。流路15は、Z方向から見て渦巻形状(ボリュート形状)を有する。流路15は、吸込口12から吐出口13に向かうにつれて流路幅が大きくなるように形成されている。主軸33の延びる方向(Z方向)における流路15の最大深さDは、主軸33の延びる方向における羽根部41と主板42と側板43とを含むクローズドインペラ4の大きさである羽根幅Wよりも、主軸33の延びる方向における吸込流路部14の突出高さHの分大きく形成されている。吸込口12と流路15とは、吸込流路部14を介して連通している。
【0030】
図1および
図3に示すように、クローズドインペラ4は、羽根部41と、主板42と、側板43とを含む。クローズドインペラ4は、流路15内に配置される。主軸33の延びる方向(Z方向)における、羽根部41と主板42と側板43とを含むクローズドインペラ4の高さである羽根幅Wは、主軸33の延びる方向(Z方向)におけるケーシング11の流路15の最大深さDに対して、主軸の延びる方向(Z方向)における吸込流路部14の突出高さHの分小さく形成されている。クローズドインペラ4の羽根幅Wは、流路15の最大深さDの80%以下、好ましくは75%以下である。
【0031】
羽根部41は、主軸33のZ2側端部に取り付けられる。羽根部41は回転することにより、揚液を攪拌し、遠心力を発生させる。
【0032】
主板42は、羽根部41のモータ3側を覆う。主板42は、羽根部41を保持する。主板42は、円板形状を有している。
【0033】
側板43は、ケーシング11の吸込口12側に設けられる。主板42と側板43とは、羽根部41を挟んでZ方向に並んで配置される。側板43は、吸込流路部14側に開口する開口部43aを有する。側板43は、円板形状を有している。
【0034】
図4および
図5に示すように、吸込流路部14側から見た開口部43aの内径r1と、吸込流路部14のクローズドインペラ4側(Z1側)の端部の内径r2とが略同じ大きさになるように構成されている。
【0035】
図1に示すように、主軸33の延びる方向において、開口部43aと吸込流路部14とが間隔Gを空けて配置されている。水中電動ポンプ100が使用される場所によって、間隔Gは設定される。間隔Gは、5mm以下であってもよく、好ましくは、1mmよりも大きく5mm以下であってもよく、さらに好ましくは、3mm以下であってもよい。
【0036】
図1に示すように、モータ3は、固定子31と、回転子32と、主軸33を含む。モータ3は、クローズドインペラ4よりもZ1側に位置する。主軸33は、クローズドインペラ4に接続されている。
【0037】
オイル室2は、モータ3とポンプ室1との間に設けられている。オイル室2には、ポンプ室1内の揚液がオイル室2内に流入しないためのメカニカルシール21が設けられている。メカニカルシール21は、主軸33を取り囲むように配置される。
【0038】
メカニカルシール21は、主軸33の回転に伴い摺動する摺動部21aおよび摺動部21bを備える。摺動部21aは、オイル室2のモータ3側(Z1側)に設けられており、オイル室2のオイルがモータ3側に流入するのを抑制している。また、摺動部21bは、オイル室2のポンプ室1側(Z2側)に設けられており、ポンプ室1の揚液がオイル室2に流入するのを抑制している。
【0039】
図6および
図7に示すように、ケーシング11は、ケーシング11内の空気を外部に排出するための排出部20を含む。排出部20は、排出口16と、封止部材17と、台座部18と、排気管19とから構成される。水中電動ポンプ100の運転中には、排出口16が揚液によって押し上げられた封止部材17により封止されて、排出部20から空気が排出されない。ここで、本発明の水中電動ポンプ100では、羽根幅Wを小さくしていることから、揚液が封止部材17を押し上げる力が小さくなり、水中電動ポンプ100の運転中に封止部材17の封止機能が十分に働かない可能性がある。そこで、揚液による封止部材17を押し上げる力を補うために台座部18が設けられている。
図6は、封止部材17が、排出口16を封止する時の揚液の流れを矢印で示す。排出部20は、下部ケーシング11aと連通している。
【0040】
排出口16は、ケーシング11内の空気を外部に排出するために設けられる。排出口16は、Z1側に設けられる。
【0041】
封止部材17は、排出口16の下方側(Z2側)に配置される。封止部材17は、揚液の吸込み時に揚液により押し上げられて排出口16を封止する。封止部材17は、球体である。
【0042】
台座部18は、封止部材17が載置される。台座部18は、ポンプ室1と連通する排気管19の底面に設けられる。台座部18は、揚液の流入時に、封止部材17を排出口16に向かって押し上げる揚液の流れを形成する。台座部18は、交差する斜面部分を有する略V字形状を有している。台座部18の開口している部分から交差する部分に向かって揚液が流れ、交差する部分で揚液が封止部材17を押し上げる流れを形成する。
【0043】
排気管19は、円筒形状を有している。排気管19のZ2側には、ケーシング11と連通する切欠き部が設けられている。ケーシング11内の空気は、排気管19を介して排出口16から排出される。揚液が流入し、ケーシング11内が満たされると、揚液が排気管19内に流入し、台座部18により封止部材17を押し上げる(Z1方向に移動させる)流れが形成される。そして、押し上げられた封止部材17により排出口16が封止される。
【0044】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
本実施形態では、上記のように、ケーシング11は、クローズドインペラ4に対向し、吸込口12が凸状に突出するとともに、ケーシング11と一体的に形成された吸込流路部14を含む。これによって、流量を増やすためにケーシング11の深さを大きくした場合にも、吸込流路部14の突出高さHを調整して、クローズドインペラ4と吸込口12との間隔Gを小さくすることができる。これにより、クローズドインペラ4と吸込口12との間隔を小さくして、吸込口12とクローズドインペラ4との間の隙間から側方に流れる揚液の量を最小限に抑制しつつ、ケーシング11の深さを大きくして流量を大きくすることができる。また、吸込流路部14の突出高さHによってクローズドインペラ4と吸込口12との間隔Gの大きさを調整することができるため、羽根幅Wを小さくすることができる。これにより、羽根幅Wを小さくすることができるため、軸撓みが発生することに起因して、モータ3側に揚液が浸入することを抑制することができる。これらの結果、モータ3側に揚液が浸入することを抑制することができるとともに、流量を大きくすることができる。
【0046】
本実施形態では、上記のように、主軸33の延びる方向における、羽根部41と主板42と側板43とを含むクローズドインペラ4の高さである羽根幅Wは、主軸33の延びる方向におけるケーシング11の流路15の最大深さDに対して、主軸33の延びる方向における吸込流路部14の突出高さHの分小さく形成されている。これにより、吸込流路部14の突出高さHの分だけ、クローズドインペラ4の羽根幅Wを小さくすることができるため、羽根幅Wを容易に小さくすることができる。その結果、羽根幅Wが大きくなることに起因する主軸33の撓みの発生を抑制することができるため、モータ3側に揚液が侵入することを容易に抑制することができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように、吸込流路部14は、吸込口12側からクローズドインペラ4側に向かって延びる筒形状を有している。これにより、吸込流路部14の筒状の内部流路を介して、揚液を吸い込むことができる。
【0048】
本実施形態では、上記のように、クローズドインペラ4の側板43は、吸込流路部14側に開口する開口部43aを有し、主軸33の延びる方向から見て、開口部43aの内径r1と、吸込流路部14のクローズドインペラ4側の端部の内径r2とが略同じである。これにより、吸込流路部14からクローズドインペラ4に接続される流路の径を略同じにすることができるため、吸込流路部14を通過した揚液を効率よくクローズドインペラ4が吸い込むことができる。
【0049】
本実施形態では、上記のように、ケーシング11と吸込流路部14とが、樹脂により一体的に形成されている。これにより、吸込流路部14が設けられたケーシング11を容易に形成することができる。
【0050】
本実施形態では、上記のように、クローズドインペラ4の側板43は、吸込流路部14側に開口する開口部43aを有し、主軸33の延びる方向において、開口部43aと吸込流路部14とが5mm以下の間隔を空けて配置されている。これにより、開口部43aと吸込流路部14との隙間から側方に流れる揚液の量を最小限に抑制することができるため、水中電動ポンプ100の効率低下を抑制することができる。
【0051】
本実施形態では、上記のように、主軸33の延びる方向における吸込流路部14の突出高さHは、主軸33の延びる方向における流路15の最大深さDの20%以上である。これにより、クローズドインペラ4の羽根幅Wが大きくなることを抑制しつつ、流量が十分に大きい水中電動ポンプ100を作製することができる。このような効果は、本願発明者が、後述する実験(実施例)により証明されている。
【0052】
本実施形態では、上記のように、ケーシング11は、ケーシング11内の空気を排出する排出口16と、排出口16の下方に配置されるとともに、揚液の吸込時に揚液により押し上げられて、排出口16を封止する封止部材17と、封止部材17が載置されるとともに、封止部材17を排出口16に向かって押し上げる揚液の流れを形成する台座部18とを含む。これにより、封止部材17の重心付近の下方に台座部18の傾斜面の交わる部分を位置させることにより、封止部材17を安定して押し上げることができるため、排出口16の位置に封止部材17を確実に押し上げることができるとともに、排出口16を確実に封止することができる。
【0053】
本実施形態では、上記のように、台座部18は、略V字形状を有する。これにより、V字形状を形成する斜面部によって揚液を集めることができるため、封止部材17を押し上げる力を大きくすることができる。
【0054】
(実施例)
主軸33の延びる方向における流路15の最大深さDに対する吸込流路部14の突出高さHの割合が異なる水中電動ポンプ100の流量(m
3/min)と揚程(m)との関係を調べた。また、流量が十分に大きい水中電動ポンプ100を製品として販売する場合に、好ましい揚程と流量との関係を目標値として示し、目標値に対して各測定結果を比較した。具体的には、18.3%(羽根幅Wの流路15の最大深さDに対する割合 73.8%)にした実施例1と、23.2%(羽根幅Wの流路15の最大深さDに対する割合 69.0%)にした実施例2と、27.2%(羽根幅Wの流路15の最大深さDに対する割合 65.0%)にした実施例3と、吸込流路部14の突出高さHを流路15の最大深さDの32.1%(羽根幅Wの流路15の最大深さDに対する割合 60.0%)にした実施例4とを作製し、各々の流量(m
3/min)と、揚程(m)とを測定した。
図8では、縦軸は揚程(m)をプロットし、横軸は流量(m
3/min)をプロットした。実験の結果、いずれの場合も目標値の流量が増やすことができる限界(グラフの切れている箇所)よりも流量を増やすことができることを知得した。また、吸込流路部14の突出高さHを最大深さDの18%以上にした場合でも、流量が十分に大きい水中電動ポンプ100を作製することが可能であることを知得した。
【0055】
主軸33の延びる方向における流路15の最大深さDに対する吸込流路部14の突出高さHの割合が異なる水中電動ポンプ100の流量(m
3/min)と軸動力(kW)との関係を調べた。具体的には、上記実施例1、実施例2、実施例3および実施例4の流量(m
3/min)と、軸動力(kW)とを測定した。また、定格95%動力の水中電動ポンプの流量(m
3/min)と、軸動力(kW)とを測定した。
図9では、縦軸は軸動力(kW)をプロットし、横軸は流量(m
3/min)をプロットした。
図9に示すように、本発明の水中電動ポンプ100は、吸込流路部14を設けることにより、定格95%動力の水中電動ポンプと同様に流量を十分に大きくすることが可能であることを本願発明者は知得した。
【0056】
主軸33の延びる方向における流路15の最大深さDに対する吸込流路部14の突出高さHの割合が異なる水中電動ポンプ100の流量(m
3/min)とポンプ効率(%)との関係を調べた。具体的には、上記実施例1、実施例2、実施例3および実施例4の流量(m
3/min)と、ポンプ効率と(%)を測定した。
図10では、縦軸はポンプ効率(%)をプロットし、横軸は流量(m
3/min)をプロットした。
図10に示すように、流量を大きくしたとしても一定のポンプ効率を維持することができることを本願発明者は知得した。
【0057】
以上の結果から、所定の軸動力の制約のもと、撓み抑制の観点から羽根幅Wを小さく維持しつつ、吸込流路部14の突出高さHを調整することにより、流量を十分に大きくすることが可能であるとともに、一定のポンプ効率を維持することが可能であることを本願発明者は知得した。なお、羽根幅の外径を適宜調整することで、水中電動ポンプ100をより最適化することも可能である。
【0058】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0059】
たとえば、上記実施形態では、吸込流路部が筒状である例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、たとえば、吸込流路部が、直方体であってもよい構成してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、主軸の延びる方向から見て、開口部の内径と、吸込流路部の前記クローズドインペラ側の端部の内径とが略同じである例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、主軸の延びる方向から見て、開口部の内径と、吸込流路部のクローズドインペラ側の端部の内径とが異なっていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、ケーシングと吸込流路部とが、樹脂により一体的に形成されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ケーシングと吸込流路部とが、金属により一体的に形成されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、台座部が略V字形状に形成されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、台座部が、たとえば、略U字形状に構成されていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、上部ケーシングと下部ケーシングとが別々に形成される例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、上部ケーシングと下部ケーシングとが一体的に形成されていてもよい。
【要約】
この水中電動ポンプ(100)は、ケーシング(11)と、クローズドインペラ(4)とを備え、ケーシングは、クローズドインペラに対向し、吸込口が凸状に突出するとともに、ケーシングと一体的に形成された吸込流路部(14)を含む。