(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/54 20060101AFI20230328BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
F04D29/54 D
F04D29/66 N
F04D29/54 G
F04D29/54 E
(21)【出願番号】P 2019026292
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】391008294
【氏名又は名称】フルタ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【氏名又は名称】竹中 一宣
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】古田 成広
(72)【発明者】
【氏名】鰐部 幸政
(72)【発明者】
【氏名】九里 博幸
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-205194(JP,A)
【文献】特開2014-043780(JP,A)
【文献】実開昭55-071099(JP,U)
【文献】特開2016-217306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/54
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機本体の吹出し側に設けた風胴と、この風胴に内設した静翼を備えてなる送風機において、
前記静翼には、前記送風機のファンを収容する筒状の本体(10a)を備え、かつ前記静翼は、前記風胴の内周面の中心方向に突設した複数本の翼板と、
前記翼板の自由端に架承した外郭体の
組合せとし、
前記外郭体の外周面と当該風胴の前記内周面の
間に、前記送風機からの空気が流れるための通路
があり、
前記風胴と、前記通路には、
前記空気が流れる吸込み側と吹出し側を
備え、
前記風胴に設けた前記静翼と、前記通路に設けた
前記静翼を支持する支持体
は、分離形態とし、
前記ファンの回転で生じた、前記送風機本体の吹出し風の一部
は、前記吸込み側の吸込み口において、旋回流方向から
受け入れ可能とし、かつ前記吹出し側に送り、前記吹出し側の吹出し口から外部に
吹出し可能とし、
前記支持体は、前記空気が流れる板面を有し、前記板面の前記吸込み側は、前記吹出し風の旋回流方向に向かって曲折する曲折面を備え、
前記曲折面は、前記本体(10a)端部より延設される構成で、前記板面に対し前記旋回流方向に向かって角度θ°を備え、
前記ファンは、前記送風機本体を正面視して時計回り方向に回転し、かつ空気の流れは、反時計回り方向に流れることを特徴とした
送風機。
【請求項2】
前記板面は、前記吹出し側において、真直ぐとすることを特徴とした請求項1に記載の
送風機。
【請求項3】
前記板面は、前記静翼の前記吸込み側(10d)から、前記静翼の前記吹出し側に形成されていることを特徴とした請求項1に記載の
送風機。
【請求項4】
前記曲折面は、前記本体(10a)端部より延設された前記吸込み側(10d)に形成することを特徴とした請求項1に記載の
送風機。
【請求項5】
前記板面の
前記曲折面は、前記通路の前記吸込み側より突出したことを特徴とした請求項1に記載の
送風機。
【請求項6】
前記送風機は、軸流ファンであることを特徴とした請求項1に記載の
送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、この種の送風機の静翼の構造に関しては、種々の提案をしている。例えば、特開2016-217306号公報に記載の発明である。概要は、風胴を設けるとともに、この風胴に静翼を設け、静翼の外郭体と風胴の内面との間に環状空間を形成し、この環状空間に位置する支持体を介して静翼が支持される静翼付き送風機である。
【0003】
そして、今回は、静翼付き送風機を改良したものであり、概要は、支持体の数を増やすとともに、この支持体の板面を曲折する構成であり、例えば、この板面は送風機の吹出し風の旋回流方向に向かって曲がっているので、ファン(動翼)からの風を環状空間に効率よく導入できるという提案である。
【0004】
この考えを基に、先行技術文献を調査した結果によれば、「静翼の形状などを工夫して気流の整流を図った文献」として次のような発明が挙げられる。
【0005】
特開2015-025425号公報は、静翼の吹出し口側の端部より手前に誘導部としてL字型の溝や突起を設けた発明である(文献1)。
【0006】
また、特開2008-261280号公報は、8枚の内側静翼、8枚の外側静翼、および、環状の連結部を備える。内側と外側の静翼の大きさを変えることで、軸流ファンの静圧-風量特性を向上させた。ハウジングを環状の連結部で仕切るので、前記特開2016-217306号公報の静翼付き送風機に関連する発明であるが、概要は、外側静翼が主である(文献2)。
【0007】
さらに、特開2006-214419号公報は、回転ブレード(動翼)と静止ブレード(静翼)の枚数がそれぞれ7枚と8枚の場合に、風量及び静圧共に大きくなった発明である。概要は、動翼と静翼の位置関係に関する(文献3)。
【文献】特開2015-025425号公報
【文献】特開2008-261280号公報
【文献】特開2006-214419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
文献1-3は、何れも、静翼に関する発明である。
【0009】
文献1では、静翼(50)の吹出し口側(2)の端部(52)より手前(吸込み口側1)に、L字型の溝の誘導部(51)を設けることで、気流は、誘導面(53)に沿って流れ、吹出し口側(2)の方向に誘導する。これにより、例えば、反り返り成分の発生が抑制され、かつ空気抵抗も減少される。結果として、吹出し口側(2)に向かうように整流された流れと確保しつつ、効率よく吹出し口から外部へ排出される。
【0010】
また、文献2では、内側静翼(241)の(径方向外側の)端部と、外側静翼(243)の(径方向内側の)端部とが、連結部(242)により連結される。かつ連結部(242)の内側面(421)は中心軸(J1)へと向かう法線がステータ部(221)よりもロータ部(222)側へと傾斜しており、連結部(242)は、吸気側から排気側に向かって、径が漸次減少する帯状である。従って、軸流ファン(1)は、外側静翼(243)で十分な集風効果を得るとともに、内側静翼(241)での気流の妨げを抑制することにより、軸流ファン(1)の静圧-風量特性を向上することができる。
【0011】
さらに文献3では、軸流送風機1は、ハウジング(3)内に、好ましくは、7枚の回転ブレード(5)と、8枚の静止ブレード(11)を備えた構造であって、インペラ(7)、回転軸(8)を備えたモータ(9)等を備えている。そして、回転ブレード(5)は、横断面形状が、インペラ(7)の回転方向に向かって凹部が開口する湾曲形状を有している。また、静止ブレード(11)は、軸線方向と直交する方向に静止ブレード(11)を切断したときの横断面形状が、回転方向とは逆の方向に向かって凹部が開口する湾曲形状を有している。これにより、従来よりも風量が多く、かつ静圧が高い軸流送風機を提供できる。また、従来よりも騒音を低減できる軸流送風機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記に鑑み本発明は、静翼を支持する支持体の数を増やすとともに、この支持体の板面を曲折とする構成であって、例えば、この板面が、送風機の吹出し風の旋回流方向に向かって曲がっている構造を採用する。これにより、例えば、ファン(動翼)からの風を環状空間に効率よく導入する提案をする。その好ましい、一例が、請求項1-6である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、送風機本体の吹出し側に設けた風胴と、この風胴に内設した静翼を備えてなる送風機において、
前記静翼には、前記送風機のファンを収容する筒状の本体(10a)を備え、かつ前記静翼は、前記風胴の内周面の中心方向に突設した複数本の翼板と、前記翼板の自由端に架承した外郭体の組合せとし、
前記外郭体の外周面と当該風胴の前記内周面の間に、前記送風機からの空気が流れるための通路があり、
前記風胴と、前記通路には、前記空気が流れる吸込み側と吹出し側を備え、
前記風胴に設けた前記静翼と、前記通路に設けた前記静翼を支持する支持体は、分離形態とし、
前記ファンの回転で生じた、前記送風機本体の吹出し風の一部は、前記吸込み側の吸込み口において、旋回流方向から受け入れ可能とし、かつ前記吹出し側に送り、前記吹出し側の吹出し口から外部に吹出し可能とし、
前記支持体は、前記空気が流れる板面を有し、前記板面の前記吸込み側は、前記吹出し風の旋回流方向に向かって曲折する曲折面を備え、
前記曲折面は、前記本体(10a)端部より延設される構成で、前記板面に対し前記旋回流方向に向かって角度θ°を備え、
前記ファンは、前記送風機本体を正面視して時計回り方向に回転し、かつ空気の流れは、反時計回り方向に流れることを特徴とした送風機である。
【0014】
これにより、請求項1では、静翼を支持する支持体の数を増やし、かつ支持体の板面を曲折とする構成であって、例えば、
図7の送風機の吹出し風の旋回流方向(旋回流方向を、矢視する)に向かって曲がっている構造を採用する。この構造の採用で、例えば、ファン(動翼)からの風を、後述する環状空間に効率的に、かつ過流発生もなく(乱気流もなく)、極めて、スムーズに導入できる特徴がある。
【0017】
請求項2の発明は、板面は、吹出し側において、真直ぐとすることを特徴とした送風機である。
【0018】
これにより、請求項2では、請求項1の特徴を達成できることと、請求項1の特徴を達成するに最適な、支持体の吹出し側の板面の形態を提供できる。
【0019】
請求項3の発明は、板面は、静翼の吸込み側(10d)から、静翼の前記吹出し側に形成されていることを特徴とした送風機である。
【0020】
これにより、請求項3では、請求項1の特徴を達成できることと、請求項1の特徴を達成するに最適な、それぞれの支持体の全体の形態を提供できる。
【0021】
請求項4の発明は、曲折面は、本体(10a)端部より延設された吸込み側(10d)に形成することを特徴とした送風機である。
【0022】
これにより、請求項4では、請求項1の特徴を達成できることと、請求項1の特徴を達成するに最適な、それぞれの支持体の板面の曲折の形態を提供できる。
【0023】
請求項5の発明では、板面の曲折は、通路の吸込み側(送風機本体側)より突出したことを特徴とした送風機である。
【0024】
これにより、請求項5では、請求項1の特徴を達成できることと、請求項1の特徴を達成するに最適な、それぞれの支持体の板面の曲折の形態と、吸込み側における曲折の吐出構造を提供できる。
【0025】
請求項6の発明では、送風機は、軸流ファンであることを特徴とした送風機である。
【0026】
これにより、請求項6では、請求項1の特徴を達成できることと、請求項1の特徴を達成するに最適な、送風機(ファン)の機種を提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図7】本発明の風胴に設けた支持体(支持板)の板面の曲折による風の流れを模式的に示した要部の拡大斜視図
【
図8】本発明の送風機において、
図7に示した板面の一部(吸込み側)に曲折を備えた静翼による風の流れを模式的に示した断面図
【
図10】
図7の支持板を設けたことによるファンからの吹出し風(静翼側より視て、吸込み風となる)の流れを説明する模式図
【
図11】本発明の支持体を一枚取出し、拡大して要部を表現した斜視図
【
図12】従来の支持体の板面の風の流れを模式的に示した拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい、一実施例を、順に説明する。
【0029】
図1~
図5に示した送風機1(例えば、軸流ファン)は、好ましい一例であって、その構成の要部は、コード(図示しない)を備えたモータ2と、このモータ2の外周面に突設したフランジ(図示せず)に取付けられた線材で構成したガード3(保護網)と、モータ2の出力軸201に支持したファン5(羽根で、動翼)でなる。
【0030】
そして、この一例では、ガード3の環状線材300は、モータ側が大径で、反モータが小径に構成されている。一例であり、限定されない。図中301はガード3の枠線材を示す。
【0031】
図3~
図5等に示した、風胴7は、この一例では環状(筒状)であり、例えば、ファン5によって取り込まれた風は、風胴7の吸込み側7aの吸込み口7a1から吹出し側7bの吹出し口7b1に至る。この例では、吸込み側7a>吹出し側7bの径とするが一例である。この風胴7の内部(内周面7c)には、複数本の支持体8、8……(ブラケット)を設けるとともに、この支持体8に静翼10の環状外郭体10bを取付けることで、静翼10が風胴7に支持されることと、風胴7の内周面7cと、この静翼10を構成する外郭体10bの外周面10b2との間に筒状の空間の通路11が形成される。この通路11は、筒状であり、風胴7の吸込み側7aから吹出し側7bに至る。また、通路11は、ファン5の回転で、生じた風(
ファン5からの吹出し風)の一部を、その吸込み側11aの吸込み口11a1で受け入れ、吹出し側11bに送り、吹出し側11bの吹出し口11b1から外部に吹出
す(送る特徴がある)。尚、風胴7の形態は、ファン側がガード3の環状外形と相似形とすることで、例えば、製造、及び/又は、組付けの容易化とか、
ファン5からの吹出し
風の吸込み容易化、或いは騒音軽減化等を意図するが、限定されない。
【0032】
一方、吹出し風の多くは、静翼10の外郭体10bの内周面10b1と本体の外周面10a1との空間(吸込み口10d1)で、かつ翼板10cに向かって、この空間の吸込み側10dより、吹出し側10eに送られる。そして、静翼10の吸込み口10d1より吸い込んだ風(吸込み風Yとする。)は、静翼10の多数枚の翼板10cの働きで整流され、例えば、直線状の空気の流れとなり、吹出し口10e1から外部に吹出される。
【0033】
そして、静翼10は、この一例では吹出し側に盲板を備えた環状(筒状)の本体10aと、風胴7より小径の環状(一例)の外郭体10bと、本体の外周面10a1と外郭体10bの内周面10b1との間に数枚設けた渦巻き形状の翼板10cで構成されている。従って、ファン5からの吹出し風は、静翼10の吸込み側10dから吹出し側10eに流れる。また通路11の吸込み側11aから吹出し側11bに流れる。又は板面8aの吸込み側8a1から吹出し側(符号なし)に流れる。
【0034】
図6~
図10等に示した支持体8の、板面8aの吸込み側8a1
には、風胴7への吸込み風Yの旋回流方向に向かって曲折した曲折面80を備える。これにより、例えば、曲折面80は、
この吸込み風Yの旋回流方向に向かって曲がっている。この曲折面80を備えることで、送風機1の
ファン5からの吹出し
風を効率良く、風胴7に取り込みできることと、圧損の減少とか、騒音発生の軽減化等に寄与できる。
【0035】
尚、
図7~
図10を参考として、送風機1からの風の流れを説明すると、ファン5が回転して、風が生成されるとともに、この風は、送風される。例えば、
図8と
図9において、風の多くは、風胴7の吸込み側7aから吹出し側7bに向かって流れる(押し出される)。この際に、風胴7の内周面7cには、障害物がなく、かつ翼板10cが設けられており、乱気流の発生がない。従って、整流された風がスムーズに流れること(スムーズな送風が図れること)、併せて、風速低下もなく、遠方への到達が期待できる。殊に、
図7において、略J形状の支持体8を多数(例えば、16枚)とすることで、支持体8の、板面8aの吸込み側8a1に形成した曲折面80は、
図7の如く、静翼10よりもさらに吸込み側7a側に位置している関係よりして、
図10に示すように風の流れに対して、角度θ°が形成されている関係上から、ファン5が、時計回り方向に回転すると、空気は
図7の如く、反時計回り方向に流れる。この空気は、矢視の如く、ファン5の回転力で渦巻状となり、通路11側程、流速が早くなる(
図8、
図9参照)。殊に、送風の一部は、通路11(環状空間)の吸込み口11a1より吸い込まれるが、その際に、支持体8(支持板)の板面8aの曲折面80に受入れられ、かつ前述の如く、通路11の存在で、ファン5からの風量が最大に供給される(この通路11は、風胴7に送り込まれた風の道として活用できる)。これらの総合的な効果により、例えば、利用分野の拡充が図れる。例えば、前記角度θ°は、ファン5の回転数との関係で導かれるが、回転数が少なくても、5°程度は期待できる。よって、この角度θ°は、回転数が増加すれば、顕著な差が発生する。例えば、この総合的な効果に併せて、従来のような騒音発生も少なく、かつ遠方までの送風ができて、利用分野の拡充が図れる。
【0036】
これに対して、
図12に示した従来例の支持体08では、この支持体08が直立していることから、流れる(流入する)風のために、渦流08aが発生し易く、この影響で、通路011を通過する風量が低下する。
【0037】
前述した各構造・特徴等は、本発明の好ましい一例の説明である。従って、本発明は上述した各実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨の範囲において構成の一部を変更する構造とか、同じ特徴と効果を達成できる構造、等は、本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0038】
1 送風機
2 モータ
3 ガード
201 出力軸
300 環状線材
301 枠線材
5 ファン(羽根)
7 風胴
7a 吸込み側
7a1 吸込み口
7b 吹出し側
7b1 吹出し口
7c 内周面
8 支持体
8a 板面
8a1 吸込み側
80 曲折面
10 静翼
10a 本体
10a1 本体の外周面
10b 外郭体
10b1 外郭体の内周面
10b2 外郭体の外周面
10c 翼板
10d 吸込み側
10d1 吸込み口
10e 吹出し側
10e1 吹出し口
11 通路
11a 吸込み側
11a1 吸込み口
11b 吹出し側
11b1 吹出し口
Y 吸込み風
08 支持体
08a 渦流
011 通路