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特許7251756測定システム、補正装置、測定方法、補正方法、及びプログラム
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  • 特許-測定システム、補正装置、測定方法、補正方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】測定システム、補正装置、測定方法、補正方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230328BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20230328BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
G01C15/00 103D
G01S7/481
G01C3/06 120Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018231399
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020094851
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊達 央
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-096170(JP,A)
【文献】特開2016-151519(JP,A)
【文献】特開2017-107563(JP,A)
【文献】特開2015-032182(JP,A)
【文献】特開2007-225342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01C 3/06
G01C 7/00 - 7/06
G01D 1/02
G01S 7/481
G01S 17/88 - 17/93
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に備えられ、電磁波の反射を利用して測距を行う測距部と、
前記移動体に備えられ、前記測距部から出射された前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させる方向変更部と、
前記測距部による測距の結果として得られる三次元位置を前記方向変更部が変化させた前記電磁波の進行方向に基づいて補正する補正部と、
を備える測定システムであって、
前記方向変更部は、前記移動体の進行方向側の面の外周部幅方向の略全領域に亘って配置され、さらに、前記移動体の側面の外周部の略進行方向の略全領域に亘って配置される
測定システム。
【請求項2】
前記方向変更部は、
時間の経過とともに少なくとも3方向以上に前記電磁波の進行方向を変化させる
請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記方向変更部は、
前記測距部の位置から見た場合における死角であって、前記移動体が移動する移動面上の前記死角の方向へ前記電磁波の進行方向を変化させる
請求項1又は請求項2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記方向変更部は、
回転可能な第1の鏡と固定された第2の鏡とを有し、
回転させた前記第1の鏡によって前記電磁波を前記第2の鏡の方向へ反射させ、前記第2の鏡によって前記電磁波をさらに反射させることで前記電磁波の進行方向を変化させる
請求項1又は請求項2に記載の測定システム。
【請求項5】
移動体に備えられた測距部が電磁波の反射を利用して行った測距の結果として得られる三次元位置を示す情報を取得する三次元位置取得部と、
記移動体の進行方向側の面の外周部幅方向の略全領域に亘って配置され、さらに、前記移動体の側面の外周部の略進行方向の略全領域に亘って配置された方向変更部が前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させた際の方向を示す情報を取得する方向取得部と、
前記三次元位置を前記方向に基づいて補正する三次元位置補正部と、
を備える補正装置。
【請求項6】
移動体に備えられた測距部が電磁波の反射を利用して測距を行う測距ステップと、
記移動体の進行方向側の面の外周部幅方向の略全領域に亘って配置され、さらに、前記移動体の側面の外周部の略進行方向の略全領域に亘って配置された方向変更部が前記測距ステップによって出射された前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させる方向変更ステップと、
前記測距ステップによる測距の結果として得られる三次元位置を前記方向変更ステップによって変化させられた前記進行方向に基づいて補正する補正ステップと、
を有する測定方法。
【請求項7】
移動体に備えられた測距部が電磁波の反射を利用して行った測距の結果として得られる三次元位置を示す情報を取得するステップと、
記移動体の進行方向側の面の外周部幅方向の略全領域に亘って配置され、さらに、前記移動体の側面の外周部の略進行方向の略全領域に亘って配置された方向変更部が前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させた際の方向を示す情報を取得するステップと、
前記三次元位置を前記方向に基づいて補正する補正ステップと、
を有する補正方法。
【請求項8】
コンピュータに、
移動体に備えられた測距部が電磁波の反射を利用して行った測距の結果として得られる三次元位置を示す情報を取得するステップと、
記移動体の進行方向側の面の外周部幅方向の略全領域に亘って配置され、さらに、前記移動体の側面の外周部の略進行方向の略全領域に亘って配置された方向変更部が前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させた際の方向を示す情報を取得するステップと、
前記三次元位置を前記方向に基づいて補正する補正ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システム、補正装置、測定方法、補正方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば空港や倉庫等の整備された環境において、人間に代わって自律移動ロボットが荷物の運搬及びナビゲーション等を行う場面が増えている。更に今後は、例えば歩道等の屋外や様々な建物等においても、自律移動ロボットが積極的に活用されることが見込まれる。しかしながら、環境によっては、自律移動ロボットの移動を妨げる様々な障害物が存在する。ここでいう障害物とは、例えば地面の段差や溝等の静的な障害物、及び、例えば人間や車両等の動的な障害物である。このような障害物の存在を認識するため、一般に自律移動ロボットは、幾何形状の取得が容易なレーザスキャナ等の測距装置を用いて自装置周辺の環境を測定する(例えば、非特許文献1)。この場合、測距装置の位置から見て死角になる領域がより少なくなるようにして、広範囲に自装置周辺の環境を測定できるようにすることが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Sebastian Thrun, Wolfram Burgard, Dieter Fox, "A Real-Time Algorithm for Mobile Robot Mapping With Applications to Multi-Robot and 3D Mapping", IEEE International Conference on Robotics and Automation, San Francisco, April 2000.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば非特許文献1に記載の技術等の従来技術を用いて、より死角になる領域を少なくし、広範囲に環境を測定できるようにするためには、より多くの測距装置を自律移動ロボットに搭載する必要がある。しかしながら、この場合、例えばレーザスキャナ等の測距装置は一般に高価であることから、装置コストが増大するという課題がある。
【0005】
本発明は、上記のような技術的背景に鑑みてなされたものであり、装置コストを抑えつつ、より広範囲に環境を測定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、移動体に備えられ、電磁波の反射を利用して測距を行う測距部と、前記移動体に備えられ、前記測距部から出射された前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させる方向変更部と、前記測距部による測距の結果として得られる三次元位置を前記方向変更部が変化させた前記進行方向に基づいて補正する補正部と、を備える測定システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記の測定システムであって、前記方向変更部は、時間の経過とともに少なくとも3方向以上に前記進行方向を変化させる。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の測定システムであって、前記方向変更部は、前記測距部の位置から見た場合における死角であって、前記移動体が移動する移動面上の前記死角の方向へ前記進行方向を変化させる。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の測定システムであって、前記方向変更部は、前記移動体の外周部に設置される。
【0010】
また、本発明の一態様は、移動体に備えられた測距部が電磁波の反射を利用して行った測距の結果として得られる三次元位置を示す情報を取得する三次元位置取得部と、前記移動体に備えられた方向変更部が前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させた際の方向を示す情報を取得する方向取得部と、前記三次元位置を前記方向に基づいて補正する三次元位置補正部と、を備える補正装置である。
【0011】
また、本発明の一態様は、移動体に備えられた測距部が電磁波の反射を利用して測距を行う測距ステップと、前記移動体に備えられた方向変更部が前記測距ステップによって出射された前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させる方向変更ステップと、前記測距ステップによる測距の結果として得られる三次元位置を前記方向変更ステップによって変化させられた前記進行方向に基づいて補正する補正ステップと、を有する測定方法である。
【0012】
また、本発明の一態様は、移動体に備えられた測距部が電磁波の反射を利用して行った測距の結果として得られる三次元位置を示す情報を取得するステップと、前記移動体に備えられた方向変更部が前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させた際の方向を示す情報を取得するステップと、前記三次元位置を前記方向に基づいて補正する補正ステップと、を有する補正方法である。
【0013】
また、本発明の一態様は、コンピュータに、移動体に備えられた測距部が電磁波の反射を利用して行った測距の結果として得られる三次元位置を示す情報を取得するステップと、前記移動体に備えられた方向変更部が前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させた際の方向を示す情報を取得するステップと、前記三次元位置を前記方向に基づいて補正する補正ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、装置コストを抑えつつ、より広範囲に環境を測定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る移動ロボット1の構成を示す概略図である。
図2】本発明の本発明の一実施形態に係る測定システム2の全体構成図である。
図3】本発明の一実施形態における電磁波の進行方向の変化の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る測定システム2の機能構成を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る測定システム2と従来の測定システムとの測定可能範囲の違いを示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る測定システム2の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態の変形例における電磁波の進行方向の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
[移動ロボット及び測定システムの構成]
以下、移動ロボット1及び測定システム2の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る移動ロボット1の構成を示す概略図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る測定システム2の全体構成図である。
【0018】
移動ロボット1は、自装置の周辺の環境を示す情報(以下、「環境情報」という。)に基づいて、例えば障害物を避けながら自律的に移動する自律移動ロボットである。移動ロボット1は、環境情報を測定システム2から取得する。ここでいう環境情報とは、移動ロボット1の周辺に存在する物体(障害物等)の三次元位置を示す情報(例えば、三次元の座標データ)である。また、ここでいう物体とは、地面、壁、荷物、及び棚等の静止した物体や、人間、及び車両等の運動する物体である。
【0019】
図1に示すように、移動ロボット1は、移動部10を含んで構成される。移動部10は、例えば台車等の移動機構を含む。なお、移動機構は、台車等の車輪が用いられた機構に限られるものではなく、例えば二足歩行あるいは四足歩行を行うことができる機構等の、車輪が用いられない機構であっても構わない。
【0020】
測定システム2は、移動ロボット1に備え付けられる。図2に示すように、測定システム2は、固定枠20と、測距部21と、方向変更部22と、補正部23と、を含んで構成される。また、図2に示すように、方向変更部22は、3つの鏡220と、3つの鏡220を直列に接続する2つの連結部221と、駆動部222と、を含む。
【0021】
固定枠20は、移動ロボット1に対して、測距部21、方向変更部22、及び補正部23を固定して備え付けるための部材(例えば、固定金具)である。
【0022】
測距部21は、例えば二次元測域センサ等の測距装置である。測距部21は、電磁波(例えば、レーザ、又はマイクロ波等)を出射し、物体に当たって反射した反射波を検知することによって自装置から物体までの距離を測定する。例えば、測距部21は、電磁波を出射してから反射波を検知するまでに要した時間に基づいて距離を計測する。そして、測距部21は、測定された距離と、電磁波を出射した角度とに基づいて、当該物体の三次元位置を特定する。
【0023】
但し、測距部21から出射された電磁波は、鏡220に反射することによって進行方向が変化する。そのため、測距部21によって測定される三次元位置は、鏡220に映る鏡像の中の物体の三次元位置(以下、「見かけ上の三次元位置」という。)である。測距部21は、測定された見かけ上の三次元位置を示す情報を補正部23へ出力する。なお、電磁波の反射を利用して測距する測距装置の代わりに、例えば三角測量の原理を利用して測距する測距装置等が用いられても構わない。
【0024】
方向変更部22は、鏡220の角度を時間の経過とともに変化させることによって、測距部21から出射された電磁波の進行方向を時間とともに変化させる。なお、鏡220は、例えば表面鏡である。表面鏡が用いられることにより、裏面鏡が用いられた場合に生ずるガラスの厚みによる光の屈折が生じない。これにより、測距部21による見かけ上の三次元位置の測定精度は劣化しない。なお、鏡220が用いられる代わりに、例えばプリズム等の他の機構が用いられることによって、測距部21から出射された電磁波の進行方向が時間とともに変化する構成であっても構わない。
【0025】
連結部221によって直列に接続された鏡220の一端には、駆動部222が接続されている。これにより、駆動部222は、3つの鏡220を同期して回転させることができる。駆動部222は、例えばサーボモータ等の駆動装置である。なお、連結部221は、例えば傘歯車等を含み、複数の鏡220を同期して回転させるための部材である。なお、3つの鏡220を同期して回転させることができるならば、1つの鏡220に対してそれぞれ1つずつ駆動部222が接続されている構成であっても構わない。
【0026】
駆動部222は、回転角の値を補正部23に出力する。但し、駆動部222が出力する情報は、回転角の値に限られるものではなく、鏡220の角度を特定することができる情報であるならば、その他の情報(例えば、鏡220の角度そのもの)であっても構わない。なお、方向変更部22は、回転とは異なる動作(例えば往復運動等)によって、所定のタイミングで鏡220の角度を変化させることにより、測距部21から出射された電磁波の進行方向を、例えば少なくとも3方向以上の方向に変化させるようにしてもよい。
【0027】
補正部23(補正装置)は、例えば組込みシステム等の小型の情報処理装置である。補正部23は、測距部21及び補正部23と、有線又は無線の通信路を介してそれぞれ通信接続する。補正部23は、測距部21から出力された見かけ上の三次元位置を示す情報を取得する。また、補正部23は、駆動部222から出力された回転角の値を取得する。なお、補正部23は、移動ロボット1に搭載されない外部の装置(例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等)に備えられる構成であっても構わない。
【0028】
なお、測定システム2は、測距部21による測距と、鏡220の回転角とを、高精度に時刻同期させることができるものとする。すなわち、補正部23は、見かけ上の三次元位置を示す情報と、当該見かけ上の三次元位置の測定が行われた時点における駆動部222の回転角の値とを高精度に関連付けることができる。
【0029】
補正部23は、見かけ上の三次元位置に対し、当該見かけ上の三次元位置に関連付けられた回転角の値を用いて補正を行うことによって、測定対象である物体の実際の三次元位置(以下、単に「三次元位置」という。)を算出する。ここでいう補正とは、測定対象の物体の見かけ上の三次元位置(例えば、三次元の座標データ)を、測定時点における鏡220の角度に応じた電磁波の反射の方向を考慮して、実際の三次元位置に置き換えることである。
【0030】
なお、補正された三次元位置を示す情報は、補正部23が有する例えば半導体メモリや磁気ディスク等の記憶媒体(図示せず)に蓄積される。これにより、複数の三次元位置を示す情報からなる点群データが生成される。生成された点群データは、例えば補正部23にインストールされた、環境地図の生成を行うソフトウェア等に入力されることにより、環境地図が生成される。そして、生成された環境地図が、移動ロボット1の例えば移動部10へ送信される。これにより、移動ロボット1は、取得した環境地図に基づいて自律移動を行うことができる。
【0031】
図1に示すように、移動ロボット1に対して方向変更部22は、鏡220の位置が移動ロボット1の外周部に沿うような位置に設置される。方向変更部22は、測距部21から出射された電磁波を、移動ロボット1の外周部に沿って設置された鏡220に反射させる。これにより、当該電磁波の進行方向は、時間の経過とともに例えば上下方向に任意の角度で変化する。
【0032】
なお、本実施形態においては、鏡220が、移動ロボット1の前面(進行方向側の面)の外周部と、左右の両側面の外周部とに備えられる構成であるが、この構成に限られるものではない。例えば、移動ロボット1の前面の外周部にのみ、鏡220が備えられていてもよい。この場合、測定システム2の構成がより簡易になるため、装置コストを抑えることができる。
【0033】
また、例えば、移動ロボット1の後面の外周部にも鏡220が備えられていてもよい。この場合、測定システム2は、移動ロボット1の後ろの方向に存在する物体も検出することができる。これにより、例えば移動ロボット1が後方へ移動することができる場合であっても、移動ロボット1は、例えば障害物を避けながら自律的に後方へ移動することができる。また、移動ロボットの外周部の形状が本実施形態のような四角形ではなく、例えば、六角形、八角形、又は円形である場合には、形状に合わせてより多くの鏡220が備えられるようにしてもよい。
【0034】
なお、鏡220が、平面鏡ではなく、例えば、柔軟に湾曲させることができる鏡、あるいは、凸面鏡又は凹面鏡等であっても構わない。測距部21が、見かけ上の三次元位置を特定することができる構成であるならば、鏡の種類には限定されない。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態における電磁波の進行方向の変化の一例を示す図である。図3に示すように、時刻tにおいては、鏡220の鏡面の角度は地面と平行の状態である。このとき、測距部21から進行方向D1へ向かって出射された電磁波は、鏡220に当たることなく物体へ向かう。
【0036】
そして、図3に示すように、時刻tから時刻tへ遷移した時点では、鏡220が回転したことにより鏡面の角度が右回りに45度変化した状態であるものする。この場合、測距部21から進行方向D1へ向かって出射された電磁波の進行方向は、当該電磁波が鏡220に当たって反射することによって、鏡220の真下の方向である進行方向D2-1に変化する。さらに、時刻tから時刻tへ遷移すると、鏡220がさらに回転したことによって鏡面の角度がさらに変化する。この場合、例えば図3に示すように、測距部21から進行方向D1へ向かって出射された電磁波の進行方向は、移動ロボット1の筐体の方向である進行方向D2-2に変化する。
【0037】
このように、鏡220が移動ロボット1の外周部に沿って設置されることによって、方向変更部22は、例えば鏡220の真下の方向であっても、移動ロボット1の筐体部分等に干渉させることなく、電磁波を照射させることができる。
【0038】
[測定システムの機能構成]
図4は、本発明の一実施形態に係る測定システム2の機能構成を示すブロック図である。上述したように、測定システム2は、測距部21と、方向変更部22と、補正部23と、を含んで構成される。
【0039】
測距部21は、移動ロボット1(移動体)に備えられ、電磁波の反射を利用して測距を行う。方向変更部22は、移動ロボット1(移動体)に備えられ、測距部21から出射された電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させる。例えば、方向変更部22は、測距部21の位置から見た場合における死角であって、移動ロボット1(移動体)が移動する移動面上の死角の方向へ電磁波の進行方向を変化させる。また、図4に示すように、補正部23は、三次元位置取得部231と、方向取得部232と、三次元位置補正部233と、を含んで構成される。
【0040】
三次元位置取得部231は、測距部21が電磁波の反射を利用して行った測距の結果として得られる三次元位置(すなわち、見かけ上の三次元位置)を示す情報を、当該測距部21から取得する。三次元位置取得部231は、当該見かけ上の三次元位置を示す情報を三次元位置補正部233へ出力する。
【0041】
方向取得部232は、方向変更部22の駆動部222が電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させた際の方向を示す情報(例えば、サーボモータの回転角の値)を、当該駆動部222から取得する。方向取得部232は、当該方向を示す情報を三次元位置補正部233へ出力する。
【0042】
三次元位置補正部233は、三次元位置取得部231から出力された見かけ上の三次元位置を示す情報、及び、方向取得部232から出力された方向を示す情報を取得する。三次元位置補正部233は、取得した情報に基づく見かけ上の三次元位置を、方向を示す情報に基づいて補正することにより、測定対象の物体の実際の三次元位置を特定する。三次元位置補正部233は、特定された三次元位置を示す情報を、自己の補正部23が有する記憶媒体(図示せず)、あるいは移動ロボット1の移動部10等へ出力する。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態に係る測定システム2と従来の測定システムとの測定可能範囲の違いを示す図である。図5(a)は、レーザスキャナ等の測距装置を1つのみ用いた場合における、従来の典型的な測定システムの測定可能範囲を示した図である。従来の測定システムにおいて、1つの測距装置を用いて環境の測定を行おうとした場合、より広範囲の測定を可能にするためには、例えば、より高い位置に測距装置を設置させることが考えられる。
【0044】
なぜならば、図5(a)に示すように、このような従来の測定システムでは、例えば電磁波の出射角度を下方向に向けていった場合、ある角度を超えると電磁波が移動ロボットの筐体の一部に干渉してしまうためである。この場合、例えば移動ロボットの近傍の地面等の範囲は、測距装置の位置から見て死角になる。測距装置と移動ロボットとの距離が遠いほど、このような地面の死角はより少なくなる。
【0045】
しかしながら、移動ロボットの大きさは環境に応じて制限される場合が多い。また、あまり高い位置に測距装置が設置されると、重心が高くなりすぎて自律移動が不安定になることがある。これらのことから、測距装置と移動ロボットとの距離を遠くすることには限界がある。したがって、従来の測定システムでは、例えば移動ロボットの近傍の地面等の、死角になる領域を少なくすることが難しく、環境の測定を行うことができる範囲が制限されやすい。
【0046】
これに対し、図5(b)は、本実施形態に係る測定システム2の測定可能範囲を示したものである。測定システム2では、移動ロボット1の外周部に沿って設置された鏡220によって、測距部21から出射された電磁波の進行方向を、時間とともに様々な方向へ変化させることができる。これにより、測定システム2によれば、1つのレーザスキャナ等の測距部21を用いて環境の測定を行う場合であっても、移動ロボット1の外周部に沿って複数の測距装置が設置された場合と同等の効果が得ることができる。図5(b)に示すように、測定システム2によれば、移動ロボット1の近傍の地面等の範囲であっても死角を作らないようにすることができるため、より広範囲に環境の測定を行うことが可能になる。
【0047】
[測定システムの動作]
以下、測定システム2の動作について説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る測定システム2の動作の一例を示すフローチャートである。
【0048】
測距部21は、電磁波を出射して自装置から測定対象の物体までの測距を行うことにより、当該物体の見かけ上の三次元位置を測定する(ステップS101)。測距部21は、測定された見かけ上の三次元位置を示す情報を補正部23へ出力する。方向変更部22の駆動部222は、回転角の値を補正部23へ出力する(ステップS102)。
【0049】
補正部23の三次元位置取得部231は、測距部21から出力された見かけ上の三次元位置を示す情報を取得する。また、補正部23の方向取得部232は、駆動部222から出力された回転角の値を取得する。補正部23の三次元位置補正部233は、三次元位置取得部231が取得した見かけ上の三次元位置を示す情報と、方向取得部232が取得した回転角の値とを関連付ける(ステップS103)。三次元位置補正部233は、取得した回転角の値を用いて、取得した見かけ上の三次元位置を示す情報を補正する(ステップS104)。これにより、三次元位置補正部233は、測定対象の物体の実際の三次元位置を特定する。
【0050】
予め測定対象としていた方向のうち未測定の方向がある場合(ステップS105・No)、測定システム2は、当該未測定の方向に対する測定を実行する。一方、予め測定対象としていた全ての方向に対して測定が完了した場合(ステップS105・Yes)、測定システム2は動作を終了する。
【0051】
<実施形態の変形例>
以下、実施形態の変形例について説明する。
上述した実施形態に係る測定システム2を用いてもなお、環境の測定が不可能な死角となる領域が存在することがある。これに対し、鏡220に反射して進行方向が変わった電磁波を、固定鏡に反射させて更に進行方向を変化させることによって、死角を少なくすることができる。
【0052】
図7は、本発明の一実施形態の変形例における電磁波の進行方向の変化の一例を示す図である。上述した実施形態においては、例えば、測距部21の位置から見て鏡220の裏側に当たる領域は、鏡220の陰になるため死角になることがある。これに対し、例えば、図7に示すように、鏡220の上方及び下方に固定鏡223をそれぞれ設置することにより、鏡220のみを用いるだけでは死角になる領域であっても、測距を行うことが可能になる。固定鏡223は、鏡220に反射した電磁波の進行方向を更に変化させて、死角の方向へ向けるように設置される鏡である。
【0053】
図7に示すように、例えば、時刻t11の時点では、測距部21から進行方向D11へ向けて出射された電磁波は、鏡220に反射し、次に下方に設置された固定鏡223に反射する。これにより、電磁波の進行方向は、進行方向D12-1のようになる。
【0054】
次に、時刻t12の時点では、測距部21から進行方向D11へ向けて出射された電磁波は、上記と同様に、鏡220に反射し、次に下方に設置された固定鏡223に反射する。これにより、電磁波の進行方向は、進行方向D12-2のようになる。図7に示すように、この進行方向D12-2は、測距部21の位置から見て鏡220の裏側の領域(すなわち、固定鏡223を用いない場合には死角になる領域)へ向かう方向である。さらに、時刻t13の時点では、測距部21から進行方向D11へ向けて出射された電磁波は、鏡220に反射し、次に上方に設置された固定鏡223に反射する。これにより、電磁波の進行方向は、進行方向D12-3のようになる。
【0055】
以上説明したように、上述した実施形態に係る測定システム2は、移動体(移動ロボット1)に備えられ、電磁波の反射を利用して測距を行う測距部(測距部21)と、前記移動体に備えられ、前記測距部から出射された前記電磁波の進行方向を時間の経過とともに変化させる方向変更部(方向変更部22)と、前記測距部による測距の結果として得られる三次元位置を前記方向変更部が変化させた前記進行方向に基づいて補正する補正部(補正部23)と、を備える。
【0056】
このような構成を備えることにより、上述した実施形態に係る測定システム2は、装置コストを抑えつつ、より広範囲に環境を測定する技術を提供することができる。
【0057】
なお、上述した実施形態における測定システム2の一部又は全部を、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。
【符号の説明】
【0059】
1…移動ロボット、2…測定システム、10…移動部、20…固定枠、21…測距部、22…方向変更部、23…補正部、220…鏡、221…連結部、222…駆動部、223…固定鏡、231…三次元位置取得部、232…方向取得部、233…三次元位置補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7