(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】有機マイクロ共振器、有機マイクロ共振器アレイ、偽造防止システム、スイッチング素子、有機マイクロ共振器の製造方法、有機マイクロ共振器アレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/23 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
G02B5/23
(21)【出願番号】P 2019021022
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大地
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044273(JP,A)
【文献】国際公開第2004/027889(WO,A1)
【文献】特開2012-172139(JP,A)
【文献】特開2015-174963(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129416(WO,A1)
【文献】特表2018-504209(JP,A)
【文献】特開2015-137312(JP,A)
【文献】特表2005-507089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の一面に形成された疎液性領域を少なくとも有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる構造体と、を備え、
前記構造体は、前記基板の一面から上方に突出し、先端面が凸球面状をなす突起であって、前記突起の高さをh(μm)、前記突起の半径をr(μm)とした場合、h>r>1μmの関係を満たし、
前記フォトクロミック分子は、下記式(1)で表わされるジアリールエテンであり、
前記構造体の半径が1μm以上50μm以下、前記構造体の高さが0.1μm以上10μm以下であり、
前記疎液性領域の幅および長さが1μm以上50μm以下であることを特徴とする有機マイクロ共振器。
【化1】
【請求項2】
前記基板に対する前記突起の接触角は、90°以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機マイクロ共振器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機マイクロ共振器と、前記有機マイクロ共振器に紫外光および赤外光を照射する照射手段と、を備えることを特徴とするスイッチング素子。
【請求項4】
請求項1または2に記載の有機マイクロ共振器が同一面上に複数配置されたことを特徴とする有機マイクロ共振器アレイ。
【請求項5】
前記自己組織化単分子膜が前記疎液性領域と親液性領域を有し、前記疎液性領域と前記親液性領域が前記基板の一面に交互に形成され、前記疎液性領域の一面に形成された構造体同士の間隔は1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の有機マイクロ共振器アレイ。
【請求項6】
前記同一面上に複数配置された有機マイクロ共振器の発光スペクトルパターンがそれぞれ異なることを特徴とする請求項4または5に記載の有機マイクロ共振器アレイ。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の有機マイクロ共振器アレイによりそれぞれ異なる発光スペクトルパターンを備える偽造防止パターンと、前記偽造防止パターンの発光スペクトル(A)を測定する顕微蛍光分光計測装置と、予め測定された前記偽造防止パターンの発光スペクトル(B)を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶されている前記発光スペクトル(B)と前記顕微蛍光分光計測装置によって測定された前記発光スペクトル(A)とを比較する偽造判定装置と、を有することを特徴とする偽造防止システム。
【請求項8】
基板と、該基板の一面に形成された疎液性領域を少なくとも有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる構造体と、を備え、
前記構造体の半径が1μm以上50μm以下、前記構造体の高さが0.1μm以上10μm以下である有機マイクロ共振器の製造方法であって、
前記基板の一面に、前記自己組織化単分子膜を形成する工程と、
前記基板の一面に形成された前記自己組織化単分子膜に、前記疎液性領域と親液性領域を形成する工程と、
前記自己組織化単分子膜の一面に、フォトクロミック分子を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて、フォトクロミック分子からなる薄膜を形成する工程と、
前記薄膜を、水とアセトンの混合溶媒に浸漬する工程と、
前記混合溶媒に浸漬した後の前記薄膜を自然乾燥することにより、前記疎液性領域の一面に、フォトクロミック分子からなる構造体を形成する工程と、を有し、
前記疎液性領域の幅および長さが1μm以上50μm以下、前記親液性領域の幅および長さが1μm以上50μm以下であり、
前記混合溶媒における水とアセトンの配合比は、体積比で10:5.5~10:7であることを特徴とする有機マイクロ共振器の製造方法。
【請求項9】
前記薄膜を、前記混合溶媒に浸漬するとき、前記混合溶媒の温度は、10℃以上40℃以下であることを特徴とする請求項
8に記載の有機マイクロ共振器の製造方法。
【請求項10】
前記薄膜を、前記混合溶媒に浸漬する時間は、5秒以上であることを特徴とする請求項
8または9に記載の有機マイクロ共振器の製造方法。
【請求項11】
基板と、該基板の一面に形成された疎液性領域を少なくとも有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる複数の構造体と、を備え、
前記構造体の半径が1μm以上50μm以下、前記構造体の高さが0.1μm以上10μm以下である有機マイクロ共振器アレイの製造方法であって、
前記基板の一面に、前記自己組織化単分子膜を形成する工程と、
前記基板の一面に形成された前記自己組織化単分子膜に、前記疎液性領域と親液性領域とを交互に形成する工程と、
前記自己組織化単分子膜の一面に、フォトクロミック分子を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて、フォトクロミック分子からなる薄膜を形成する工程と、
前記薄膜を、水とアセトンの混合溶媒に浸漬する工程と、
前記混合溶媒に浸漬した後の前記薄膜を自然乾燥することにより、前記疎液性領域の一面に、フォトクロミック分子からなる構造体を形成する工程と、を有し、
前記疎液性領域の幅および長さが1μm以上50μm以下、前記親液性領域の幅および長さが1μm以上50μm以下であり、
前記混合溶媒における水とアセトンの配合比は、体積比で10:5.5~10:7であることを特徴とする有機マイクロ共振器アレイの製造方法。
【請求項12】
前記薄膜を、前記混合溶媒に浸漬するとき、前記混合溶媒の温度は、10℃以上40℃以下であることを特徴とする請求項11に記載の有機マイクロ共振器アレイの製造方法。
【請求項13】
前記薄膜を、前記混合溶媒に浸漬する時間は、5秒以上であることを特徴とする請求項11または12に記載の有機マイクロ共振器アレイの製造方法。
【請求項14】
基板と、該基板の一面に形成された親液性領域と疎液性領域を有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる複数の構造体と、を備え、
前記構造体は、前記基板の一面から上方に突出し、先端面が凸球面状をなす突起であり、
前記フォトクロミック分子は、下記式(1)で表わされるジアリールエテンであり、
前記構造体の半径が1μm以上50μm以下、前記構造体の高さが0.1μm以上10μm以下であり、
前記疎液性領域の幅および長さが1μm以上50μm以下、前記親液性領域の幅および長さが1μm以上50μm以下であることを特徴とする有機マイクロ共振器アレイ。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機マイクロ共振器、有機マイクロ共振器アレイ、偽造防止システム、スイッチング素子、有機マイクロ共振器の製造方法、有機マイクロ共振器アレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルからマイクロメートルスケールのポリマー粒子を集積化してなる構造体は、新しい電子・光機能を発現することから注目されている。特に、紫外域から可視域の波長に近い大きさの構造体を集積化すると、新しい光電子機能を示すフォトニック材料の実現が期待できる。
【0003】
π共役交互共重合からなる微粒子およびナノ粒子の形成方法が知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。光異性化分子(ジアリールエテン)の合成と発光特性についても知られている(例えば、非特許文献3、4参照)。有機・高分子マイクロ光共振器、マイクロレーザーについても知られている(例えば、非特許文献5~8参照)。
【0004】
このようなフォトニック材料の球状構造体を形成し、その球状構造体を、例えば、シリコン製の基板上に配列してアレイを形成することにより、発光デバイス等に応用することができる。
本発明者等は、発光性高分子からなる球状または略球状の粒子であり、電子顕微鏡により測定した粒子径が2μm以上であり、かつ、励起光の照射により内部でウィスパリング・ギャレリー・モード発振が生じる、ウィスパリング・ギャレリー・モード発振発現用球状ポリマー粒子を開示している(例えば、特許文献1参照)。また、本発明者等は、基板の一面に、直接形成された、パイ共役高分子からなる球体や半球体から構成される高分子球状アレイおよびその製造方法を開示している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6344756号公報
【文献】特開2016-044273号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Spherical Assemblies from π-Conjugated Alternating Copolymers:Toward Optoelectronic Colloidal Crystals、Taeko Adachi、Liang Tong、Junpei Kuwabara、Takaki Kanbara、Akinori Saeki、Shu Seki、Yohei Yamamoto、J.Am.Chem.Soc.2013,135,870-876、dx.doi.org/10.1021/ja3106626
【文献】Tetramethylbithiophene in π-conjugated alternating copolymers as an effective structural component for the formation spherical assemblies、Liang Tong、Soh Kushida、Junpei Kuwabara、Takaki Kanbara、Noriyuki Ishii、Akinori Saeki、Shu Seki,Seiichi Furumi、Yohei Yamamoto、Polym.Chem.2014,5,3583-3587.DOI:10.1039/c4py00023d
【文献】In Situ Preparation of Highly Fluorescent Dyes upon Photoirradiation、Kakishi Uno、Hiroyuki Niikura、Masakazu Morimoto、Yukihide Ishibashi、Hiroshi Miyasaka、Masahiro Irie、J.Am.Chem.Soc.2011,133,13558-13564、dx.doi.org/10.1021/ja204583e
【文献】Photoswitchable fluorescent diarylethene derivatives with short alkyl chain substitutents、Yuta Takagi、Tomohiro Kunshi、Tetsuro Katayama、Yukihide Ishibashi、Hiroshi Miyasaka、Masakazu Morimoto、Masahiro Irie、Photochem,Photobiol.Sci.,2012,11,1661-1665、DOI:10.1039/c2pp25078k
【文献】Self-assembled conjugated polymerspheres as fluorescent microresonators、Kenichi Tabata、Daniel Braam、Soh Kushida、Liang Tong、Junpei Kuwabara、Takaki Kanbara、Andreas Beckel、Axel Lorke、Yohei Yamamoto、Scientific Reports、2014,4,5902、DOI:10.1038/srep05902
【文献】Color-Tunable Resonant Photoluminescence and Cavity-Mediated Multistep Energy Transfer Cascade、Daichi Okada、Takashi Nakamura、Daniel Braam、Thang Duy Dao、Satoshi Ishii、Tadaaki Nagano、Axel Lorke、Tatsuya Nabeshima、Yohei Yamamoto、ACS Nano 2016,10,7053-7063、DOI:10.1021/acsnano.6b03188
【文献】Low-Threshold Whispering Gallery Mode Lasing from Self-Assembled Microsheres of Single-Sort Conjugated Polymers、Soh Kushida、Daichi Okada、Fumio Sasaki、Zhan-Hong Lin、Jer-Shing Huang、Yohei Yamamoto、Adv.Optical Mater.2017,5,1700123、DOI:10.1002/adom.201700123
【文献】π-Electronic Co-crystal Microcavities with Selective Vibronic-Mode Light Amplification: Toward Foerster Resonance Energy Transfer Lasing、Daichi Okada、Stefano Azzini、Hiroki Nishioka、Anna Ichimura、Hayato Tsuji、Eiichi Nakamura、Fumio Sasaki、Cyriaque Genet、Thomas W.Ebbesen、Yohei Yamamoto、Nano Lett.2018,18,4396-4402、DOI:10.1021/acs.nanolett.8b01442
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的な認証システムにおいては、例えば、バーコードのような1次元的な情報配列やQRコード(登録商標)のような2次元的な0/1の情報配列が用いられている。しかしながら、これらの情報配列は画像認識が容易であるため、容易に偽造することができるという課題があった。そこで、高度情報化社会においては、高い安全性を有する情報記録システムの構築が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い安全性を有する情報記録システムの構築を可能とする有機マイクロ共振器、有機マイクロ共振器アレイ、偽造防止システム、スイッチング素子、有機マイクロ共振器の製造方法、有機マイクロ共振器アレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]基板と、該基板の一面に形成された疎液性領域を少なくとも有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる構造体と、を備え、前記構造体は、前記基板の一面から上方に突出し、先端面が凸球面状をなす突起であって、前記突起の高さをh(μm)、前記突起の半径をr(μm)とした場合、h>r>1μmの関係を満たす有機マイクロ共振器。
【0010】
[2]前記基板に対する前記突起の接触角は、90°以下である[1]に記載の有機マイクロ共振器。
【0011】
[3]前記フォトクロミック分子は、下記式(1)で表わされるジアリールエテンである[1]または[2]に記載の有機マイクロ共振器。
【0012】
【0013】
[4][1]~[3]のいずれかに記載の有機マイクロ共振器と、前記有機マイクロ共振器に紫外光および赤外光を照射する照射手段と、を備えるスイッチング素子。
【0014】
[5][1]~[3]のいずれかに記載の有機マイクロ共振器が同一面上に複数配置された有機マイクロ共振器アレイ。
【0015】
[6]前記自己組織化単分子膜が前記疎液性領域と親液性領域を有し、前記疎液性領域と前記親液性領域が前記基板の一面に交互に形成され、前記疎液性領域の一面に形成された構造体同士の間隔は1μm以上10μm以下である[5]に記載の有機マイクロ共振器アレイ。
【0016】
[7]前記同一面上に複数配置された有機マイクロ共振器の発光スペクトルパターンがそれぞれ異なる[5]または[6]に記載の有機マイクロ共振器アレイ。
【0017】
[8][5]~[7]のいずれかに記載の有機マイクロ共振器アレイによりそれぞれ異なる発光スペクトルパターンを備える偽造防止パターンと、前記偽造防止パターンの発光スペクトル(A)を測定する顕微蛍光分光計測装置と、予め測定された前記偽造防止パターンの発光スペクトル(B)を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶されている前記発光スペクトル(B)と前記顕微蛍光分光計測装置によって測定された前記発光スペクトル(A)とを比較する偽造判定装置と、を有する偽造防止システム。
【0018】
[9]基板と、該基板の一面に形成された疎液性領域を少なくとも有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる構造体と、を備えた有機マイクロ共振器の製造方法であって、前記基板の一面に、前記自己組織化単分子膜を形成する工程と、前記基板の一面に形成された前記自己組織化単分子膜に、前記疎液性領域と親液性領域を形成する工程と、前記自己組織化単分子膜の一面に、フォトクロミック分子を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて、フォトクロミック分子からなる薄膜を形成する工程と、前記薄膜を、水とアセトンの混合溶媒に浸漬する工程と、前記混合溶媒に浸漬した後の前記薄膜を自然乾燥することにより、前記疎液性領域の一面に、フォトクロミック分子からなる構造体を形成する工程と、を有する有機マイクロ共振器の製造方法。
【0019】
[10]前記混合溶媒における水とアセトンの配合比は、体積比で10:5.5~10:7である[9]に記載の有機マイクロ共振器の製造方法。
【0020】
[11]前記薄膜を、前記混合溶媒に浸漬するとき、前記混合溶媒の温度は、10℃以上40℃以下である[9]または[10]に記載の有機マイクロ共振器の製造方法。
【0021】
[12]前記薄膜を、前記混合溶媒に浸漬する時間は、5秒以上である[9]~[11]のいずれかに記載の有機マイクロ共振器の製造方法。
【0022】
[13]基板と、該基板の一面に形成された疎液性領域を少なくとも有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる複数の構造体と、を備えた有機マイクロ共振器アレイの製造方法であって、前記基板の一面に、前記自己組織化単分子膜を形成する工程と、前記基板の一面に形成された前記自己組織化単分子膜に、前記疎液性領域と親液性領域とを交互に形成する工程と、前記自己組織化単分子膜の一面に、フォトクロミック分子を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて、フォトクロミック分子からなる薄膜を形成する工程と、前記薄膜を、水とアセトンの混合溶媒に浸漬する工程と、前記混合溶媒に浸漬した後の前記薄膜を自然乾燥することにより、前記疎液性領域の一面に、フォトクロミック分子からなる構造体を形成する工程と、を有する有機マイクロ共振器アレイの製造方法。
【0023】
[14]前記混合溶媒における水とアセトンの配合比は、体積比で10:5.5~10:7である[13]に記載の有機マイクロ共振器アレイの製造方法。
【0024】
[15]前記薄膜を、前記混合溶媒に浸漬するとき、前記混合溶媒の温度は、10℃以上40℃以下である[13]または[14]に記載の有機マイクロ共振器アレイの製造方法。
【0025】
[16]前記薄膜を、前記混合溶媒に浸漬する時間は、5秒以上である[13]~[15]のいずれかに記載の有機マイクロ共振器アレイの製造方法。
【0026】
[17]基板と、該基板の一面に形成された親液性領域と疎液性領域を有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる複数の構造体と、を備え、前記構造体は、前記基板の一面から上方に突出し、先端面が凸球面状をなす突起である有機マイクロ共振器アレイ。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高い安全性を有する情報記録システムの構築を可能とする有機マイクロ共振器、有機マイクロ共振器アレイ、偽造防止システム、スイッチング素子、有機マイクロ共振器の製造方法、有機マイクロ共振器アレイの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の有機マイクロ共振器の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1のA-A線に沿う断面図の第1の例である。
【
図3】
図1のA-A線に沿う断面図の第2の例である。
【
図4】本発明のスイッチング素子を示す模式図である。
【
図5】本発明の有機マイクロ共振器アレイの一実施形態を示す斜視図である。
【
図6】
図5のB-B線に沿う断面図の第1の例である。
【
図7】
図5のB-B線に沿う断面図の第2の例である。
【
図8】本発明の偽造防止システムを示す模式図である。
【
図9】本発明の偽造防止システムを構成する顕微蛍光分光計測装置を示す模式図である。
【
図10】本発明の有機マイクロ共振器の製造方法および本発明の有機マイクロ共振器アレイの製造方法を示す断面図である。
【
図11】本発明の有機マイクロ共振器の製造方法および本発明の有機マイクロ共振器アレイの製造方法を示す断面図である。
【
図12】実験例1において、試験用基板上に形成されたジアリールエテン溶液からなる塗膜の走査型電子顕微鏡である。
【
図13】実験例1において、試験用基板上に形成されたジアリールエテン溶液からなる塗膜の光学顕微鏡像である。
【
図14】実験例1において、試験用基板上に形成されたジアリールエテン溶液からなる塗膜の蛍光顕微鏡像である。
【
図15】実験例1において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の走査型電子顕微鏡である。
【
図16】実験例1において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の走査型電子顕微鏡である。
【
図17】実験例1において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の光学顕微鏡像である。
【
図18】実験例1において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の蛍光顕微鏡像である。
【
図19】実験例1において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の吸収スペクトルと発光スペクトルを測定した結果を図である。
【
図20】実験例1において、試験用基板上に形成された複数の構造体の光学顕微鏡像である。
【
図21】
図20に示す構造体(1-1)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図22】
図20に示す構造体(1-2)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図23】
図20に示す構造体(1-3)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図24】
図20に示す構造体(1-4)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図25】
図20に示す構造体(1-5)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図26】
図20に示す構造体(1-6)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図27】
図20に示す構造体(1-7)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図28】
図20に示す構造体(2-1)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図29】
図20に示す構造体(2-2)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図30】
図20に示す構造体(2-3)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図31】
図20に示す構造体(2-4)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図32】
図20に示す構造体(2-5)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図33】
図20に示す構造体(2-6)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図34】
図20に示す構造体(2-7)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図35】
図20に示す構造体(3-1)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図36】
図20に示す構造体(3-2)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図37】
図20に示す構造体(3-3)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図38】
図20に示す構造体(3-4)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図39】
図20に示す構造体(3-5)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図40】
図20に示す構造体(3-6)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図41】
図20に示す構造体(3-7)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図42】
図20に示す構造体(4-1)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図43】
図20に示す構造体(4-2)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図44】
図20に示す構造体(4-3)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図45】
図20に示す構造体(4-4)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図46】
図20に示す構造体(4-5)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図47】
図20に示す構造体(4-6)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図48】
図20に示す構造体(4-7)から発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
【
図49】実験例2において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の走査型電子顕微鏡である。
【
図50】実験例2において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の光学顕微鏡像である。
【
図51】実験例2において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の蛍光顕微鏡像である。
【
図52】実験例3において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の走査型電子顕微鏡である。
【
図53】実験例3において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の光学顕微鏡像である。
【
図54】実験例3において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の蛍光顕微鏡像である。
【
図55】実験例4において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の走査型電子顕微鏡である。
【
図56】実験例4において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の光学顕微鏡像である。
【
図57】実験例4において、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体の蛍光顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の有機マイクロ共振器、有機マイクロ共振器アレイ、偽造防止システム、スイッチング素子、有機マイクロ共振器の製造方法、有機マイクロ共振器アレイの製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0030】
[有機マイクロ共振器]
本実施形態の有機マイクロ共振器は、基板と、該基板の一面に形成された疎液性領域を少なくとも有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる構造体と、を備える。本実施形態の有機マイクロ共振器において、前記構造体は、前記基板の一面から上方に突出し、先端面が凸球面状をなす突起であって、前記突起の高さをh(μm)、前記突起の半径をr(μm)とした場合、h>r>1μmの関係を満たす。
【0031】
以下、
図1~
図3を参照しながら、本実施形態の有機マイクロ共振器を説明する。
図1は、本実施形態の有機マイクロ共振器の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1のA-A線に沿う断面図の第1の例である。
図3は、
図1のA-A線に沿う断面図の第2の例である。
本実施形態の有機マイクロ共振器10は、基板20と、基板20の一面20aに形成された疎液性領域31を少なくとも有する自己組織化単分子膜30と、疎液性領域31の一面31aに形成されたフォトクロミック分子からなる構造体40とから概略構成されている。なお、
図2および
図3には、自己組織化単分子膜30が親液性領域32を有する場合を示す。
【0032】
構造体40は、基板20の一面20aから上方(基板20の一面20aから離隔する側)に突出し、先端面が凸球面状をなす突起である。すなわち、構造体40は、自己組織化単分子膜30よりも基板20の一面20aとは反対側(基板20の厚さ方向)に突出する突起である。
【0033】
自己組織化単分子膜30は、次のようにして形成されたものである。
基板20を、後述する有機化合物を含む溶液に浸漬すると、その有機化合物が、基板20の一面20aに化学吸着する。すると、その化学吸着の過程で、分子間相互作用により、有機化合物がさらに基板20の一面20aに高密度に集積し、有機化合物の配向性が揃って自己組織化単分子膜30が形成される。
【0034】
自己組織化単分子膜30を形成する有機化合物は、自己組織化単分子膜30を形成した場合に、基板20の一面20aとは反対側の末端(基板20の一面20aと結合していない末端)に疎液性(疎水性)の官能基を有する分子である。疎液性(疎水性)の官能基としては、アルキル基、フェニル基、フッ素基等が挙げられる。
【0035】
自己組織化単分子膜30の疎液性領域31は、後述する親液化処理により、上記の有機化合物の疎液性の官能基を除去することにより、後述する親液化処理が施されて(すなわち、上記の有機化合物の疎液性の官能基が除去されて)相対的に親液性(親水性)とした親液性領域32に対して、相対的に疎液性(疎水性)とした領域である。このような疎液性領域31は、後述する、フォトクロミック分子を含む溶液の濡れ性に優れる。したがって、後述する有機マイクロ共振器の製造方法によって、疎液性領域31の一面31aに、フォトクロミック分子からなる構造体40が形成される。
【0036】
疎液性領域31の幅(
図1に示すX方向の長さ)W
1は、特に限定されず、有機マイクロ共振器10の用途等に応じて適宜調整されるが、例えば、1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。疎液性領域31の幅W
1が前記の範囲内であれば、疎液性領域31に形成される構造体40が可視から近赤外光領域のフォトニック結晶を構築する。また、構造体40が励起光の照射により、内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(Whispering Gallery Mode、WGM)発振する。
【0037】
また、疎液性領域31の長さ(
図1に示すY方向の長さ)L
1は、特に限定されず、有機マイクロ共振器10の用途等に応じて適宜調整されるが、例えば、1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。疎液性領域31の長さL
1が前記の範囲内であれば、疎液性領域31に形成される構造体40が可視から近赤外光領域のフォトニック結晶を構築する。また、構造体40が励起光の照射により内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(WGM)発振する。
【0038】
構造体40としては、例えば、
図2に示す第1の例の突起が挙げられる。ここで、第1の例の構造体を「構造体40A」とする。
構造体40Aは、球体の一部を切り落としたような形状をなしている。また、構造体40Aの基端部(基板20の一面20a側の部分)の外径は、上方(基板20の一面20aから離隔する側)から下方(基板20の一面20a側)に向かうに従って径が小さくなっている。また、
図2に示すように、構造体40Aと基板20の一面20aとで形成される角度である接触角θ
1は90°よりも小さくなっていることが好ましい。
【0039】
さらに、
図2に示すように、構造体40Aの高さ(疎液性領域31の一面31aを基準とした構造体40Aの頂点までの高さ)をh
1(μm)、構造体40Aの半径をr
1(μm)とした場合、h
1>r
1>1μmの関係を満たしている。構造体40Aがこの関係を満たすことにより、構造体40Aが励起光の照射により、内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(WGM)発振する。
【0040】
構造体40Aの半径r1は、特に限定されず、有機マイクロ共振器10の用途等に応じて適宜調整されるが、可視から近赤外光領域のフォトニック結晶を構築する観点から、1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。なお、構造体40Aは、疎液性領域31内に形成されるため、構造体40Aの半径r1は、疎液性領域31の幅W1と疎液性領域31の長さL1以下である。
【0041】
構造体40Aの高さh1は、特に限定されず、有機マイクロ共振器10の用途等に応じて適宜調整されるが、可視~近赤外光の閉じ込めの観点から、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0042】
構造体40としては、例えば、
図3に示す第2の例の突起が挙げられる。ここで、第2の例の構造体を「構造体40B」とする。
構造体40Bは、半球体と円柱が複合したような形状をなしている。また、構造体40Bの基端部(基板20の一面20a側の部分、円柱状の部分)の外径は、上下方向の位置によらず同径となっている。また、
図3に示すように、構造体40Bと基板20の一面20aとで形成される角度である接触角θ
2は約90°となっていることが好ましい。
【0043】
さらに、
図3に示すように、構造体40Bの高さ(疎液性領域31の一面31aを基準とした構造体40Bの頂点までの高さ)をh
2(μm)、構造体40Bの半径をr
2(μm)とした場合、h
2>r
2>1μmの関係を満たしている。構造体40Bがこの関係を満たすことにより、構造体40Bが励起光の照射により、内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(WGM)発振する。
【0044】
構造体40Bの半径r2は、特に限定されず、有機マイクロ共振器10の用途等に応じて適宜調整されるが、可視から近赤外光領域のフォトニック結晶を構築する観点から、1μm以上20μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。なお、構造体40Bは、疎液性領域31内に形成されるため、構造体40Bの半径r2は、疎液性領域31の幅W1と疎液性領域31の長さL1以下である。
【0045】
構造体40Bの高さh2は、特に限定されず、有機マイクロ共振器10の用途等に応じて適宜調整されるが、可視~近赤外光の閉じ込めの観点から、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0046】
基板20としては、シリコン基板、石英基板、ガラス基板、サファイア基板、マイカ基板等が挙げられる。
【0047】
自己組織化単分子膜30を形成する有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、石英、ガラス基板を用いる場合には、シランカップリング剤(ヘキサメチルジシラザン、アリールアルキルシラン、フルオロアルキルシラン、フルオロフェニルシラン等)やこれらの酸化物が用いられ、金属基板を用いる場合には、チオールやホスホン酸の結合部位と、アルキル基等が結合したアルキルチオールやアルキルホスホン酸等が用いられる。これらの有機化合物は、アルキル基、フェニル基、フッ素基等の疎液性(疎水性)の官能基を有する。
【0048】
構造体40は、フォトクロミック分子からなる。
本実施形態において、フォトクロミック分子とは、光反応により色が異なる2つの状態を可逆に生成することができる化合物である。フォトクロミック分子は、例えば、ある波長範囲(A)の光を照射すると、光を照射する前とは異なる色に変化し、波長範囲(A)とは異なる波長範囲(B)の光を照射すると、波長範囲(A)の光を照射する前の色に戻る性質を有する。2つの状態はともに同じ分子量をもち同じ原子から構成されているが、その結合様式が異なる。
【0049】
本実施形態におけるフォトクロミック分子としては、例えば、下記式(1)で表わされるジアリールエテン(1,2-ジチエニルエテンの誘導体群)、アゾベンゼン、スピロピラン、ヘキサアリールイミダゾール誘導体等が挙げられる。ジアリールエテンは、紫外光を照射すると、下記式(1)に示す閉環構造(closed)となり、赤外光を照射すると、下記式(1)に示す開環構造(open)となる。この性質を利用することにより、ジアリールエテンからなる構造体40を有する有機マイクロ共振器10を紫外光と赤外光を用いたスイッチング素子に利用することが可能である。
【0050】
【0051】
構造体40が、フォトクロミック分子から構成されるため、構造体40に、ある波長範囲(A)の光を照射すると、構造体40は波長範囲(A)の光を照射する前とは異なる色に変化する。また、構造体40に、波長範囲(A)とは異なる波長範囲(B)の光を照射すると、構造体40は波長範囲(A)の光を照射する前の色に戻る。したがって、本実施形態の有機マイクロ共振器10を光メモリーデバイスやディスプレイ等として利用することができる。
【0052】
本実施形態の有機マイクロ共振器10は、基板20と、基板20の一面20aに形成された疎液性領域31を少なくとも有する自己組織化単分子膜30と、疎液性領域31の一面31aに形成されたフォトクロミック分子からなる構造体40とを備え、構造体40は、基板20の一面20aから上方に突出し、先端面が凸球面状をなす突起であって、突起の高さをh(μm)、突起の半径をr(μm)とした場合、h>r>1μmの関係を満たすため、構造体40に励起光を照射すると、構造体40の内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(WGM)発振するので、高い安全性を有する情報記録システムの構築が可能である。
【0053】
なお、本実施形態では、自己組織化単分子膜30の疎液性領域31内に、1つの構造体40が形成されている場合を例示したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態にあっては、疎液性領域31の大きさ(面積)に応じて、疎液性領域31内に複数の構造体40が隣接して形成されていてもよい。
【0054】
[スイッチング素子]
本実施形態のスイッチング素子は、上述の本実施形態の有機マイクロ共振器と、有機マイクロ共振器に紫外光および赤外光を照射する照射手段と、を備える。
【0055】
以下、
図4を参照しながら、本実施形態のスイッチング素子を説明する。
図4は、本実施形態のスイッチング素子を示す模式図である。
図4において、
図1に示した有機マイクロ共振器と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態のスイッチング素子100は、有機マイクロ共振器10と、有機マイクロ共振器10に紫外光および赤外光を照射する照射手段110とから概略構成されている。
【0056】
有機マイクロ共振器10のフォトクロミック分子からなる構造体40は、上述のように、紫外光を照射すると閉環構造(closed)となり、可視光を照射すると開環構造(open)となる。この性質を利用することにより、構造体40を有する有機マイクロ共振器10を紫外光と可視光を用いたスイッチング素子として利用することが可能である。
【0057】
照射手段110としては、有機マイクロ共振器10の構造体40に、紫外光と赤外光を照射することができるものであれば特に限定されない。
【0058】
本実施形態のスイッチング素子100によれば、紫外光を照射した場合と赤外光を照射した場合とで、構造体40を形成するフォトクロミック分子の構造が変化することを利用して、種々の電子部品等のスイッチング(On/Offの切り替え)を行うことができる。構造体40を形成するフォトクロミック分子は、特定の波長の光を照射することによって構造が変化するため、スイッチングにおける誤作動を防止することができる。
【0059】
[有機マイクロ共振器アレイ]
本実施形態の有機マイクロ共振器アレイは、上述の本実施形態の有機マイクロ共振器が同一面上に複数配置されたものである。
また、本実施形態の有機マイクロ共振器アレイは、基板と、該基板の一面に形成された親液性領域と疎液性領域を有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる複数の構造体と、を備え、前記構造体は、前記基板の一面から上方に突出し、先端面が凸球面状をなす突起である。
【0060】
以下、
図5~
図7を参照しながら、本実施形態の有機マイクロ共振器アレイを説明する。
図5は、本実施形態の有機マイクロ共振器アレイの一例を示す斜視図である。
図6は、
図5のB-B線に沿う断面図の第1の例である。
図7は、
図5のB-B線に沿う断面図の第2の例である。
図5~
図7において、
図1~
図3に示した有機マイクロ共振器と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の有機マイクロ共振器アレイ200は、基板20と、基板20の一面20aに形成された疎液性領域31と親液性領域32を有する自己組織化単分子膜30と、疎液性領域31の一面31aに形成されたフォトクロミック分子からなる複数の構造体40とから概略構成されている。
【0061】
疎液性領域31と親液性領域32は、
図5に示すように、基板20の一面20aに、基板20の幅方向(
図5に示すX方向)と基板20の長さ方向(
図5に示すY方向)に沿って、間隔をおいて交互に形成されていることが好ましい。言い換えれば、親液性領域32は、疎液性領域31からなる膜(自己組織化単分子膜30)に間隔をおいて形成された格子状の領域である。
したがって、複数の構造体40は、
図5に示すように、間隔をおいて形成された疎液性領域31の一面31aに形成されることにより、基板20の幅方向(
図5に示すX方向)と基板20の長さ方向(
図5に示すY方向)に沿って、間隔をおいて形成されている。このように、疎液性領域31と親液性領域32が間隔をおいて交互に形成されていることにより、基板20の一面20aにおいて、構造体40を高密度に(緻密に)配置することができる。
【0062】
疎液性領域31の幅(
図5に示すX方向の長さ)W
1と親液性領域32の幅(
図5に示すX方向の長さ)W
2は、特に限定されず、有機マイクロ共振器アレイ200の用途等に応じて適宜調整されるが、例えば、1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。疎液性領域31の幅W
1と親液性領域32の幅W
2が前記の範囲内であれば、疎液性領域31に形成される構造体40が可視から近赤外光領域のフォトニック結晶を構築する。また、構造体40が励起光の照射により、内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(Whispering Gallery Mode、WGM)発振する。なお、
図5に示すX方向において、構造体40同士の間隔は、疎液性領域31の幅W
1と親液性領域32の幅W
2で調節することができるため、疎液性領域31の一面31aに形成された構造体40同士の間隔は1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0063】
また、疎液性領域31の長さ(
図5に示すY方向の長さ)L
1と親液性領域32の長さ(
図5に示すY方向の長さ)L
2は、特に限定されず、有機マイクロ共振器アレイ200の用途等に応じて適宜調整されるが、例えば、1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。疎液性領域31の長さL
1と親液性領域32の長さL
2が前記の範囲内であれば、疎液性領域31に形成される構造体40が可視から近赤外光領域のフォトニック結晶を構築する。また、構造体40が励起光の照射により内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(WGM)発振する。なお、
図5に示すY方向において、構造体40同士の間隔は、疎液性領域31の長さL
1と親液性領域32の長さL
2で調節することができるため、構造体40同士の間隔は1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0064】
構造体40としては、例えば、
図6に示す第1の例の突起が挙げられる。
有機マイクロ共振器アレイ200において、複数の構造体40Aはそれぞれ、互いに大きさが異なっていることが好ましい。すなわち、複数の構造体40Aはそれぞれ、互いに半径r
1と高さh
1が異なっていることが好ましい。このようにすれば、励起光を照射した場合に、それぞれの構造体40Aから発する蛍光(発光)のスペクトルパターンが異なるものとなり、それぞれの構造体40Aから発する蛍光(発光)のスペクトルパターンが同一ではなくなる。
【0065】
構造体40としては、例えば、
図7に示す第2の例の突起が挙げられる。
有機マイクロ共振器アレイ200において、複数の構造体40Bはそれぞれ、互いに大きさが異なっていることが好ましい。すなわち、複数の構造体40Bはそれぞれ、互いに半径r
2と高さh
2が異なっていることが好ましい。このようにすれば、励起光を照射した場合に、それぞれの構造体40Aから発する蛍光(発光)のスペクトルパターンが異なるものとなり、それぞれの構造体40Bから発する蛍光(発光)のスペクトルパターンが同一ではなくなる。
【0066】
本実施形態によれば、複数の構造体40が、間隔おいて形成された疎液性領域31の一面31aに形成されるため、複数の構造体40が、基板20の幅方向(
図5に示すX方向)と基板20の長さ方向(
図5に示すY方向)に沿って高密度に配置された有機マイクロ共振器アレイ200が得られる。
【0067】
本実施形態の有機マイクロ共振器アレイ200は、上述の本実施形態の有機マイクロ共振器10が同一面上に複数配置されたものであり、例えば、基板20と、基板20の一面20aに形成された疎液性領域31と親液性領域32を有する自己組織化単分子膜30と、疎液性領域31の一面31aに形成されたフォトクロミック分子からなる複数の構造体40とを備えるため、構造体40に励起光を照射すると、構造体40の内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(WGM)発振するので、高い安全性を有する情報記録システムの構築が可能である。また、本実施形態の有機マイクロ共振器アレイ200は、フォトクロミック分子からなる複数の構造体40が高密度に配置されているため、光メモリーデバイス、超高解像度ディスプレイ、網膜投影ディスプレイとしても好適に用いられる。
【0068】
なお、本実施形態では、有機マイクロ共振器アレイ200として、基板20と、基板20の一面20aに形成された疎液性領域31と親液性領域32を有する自己組織化単分子膜30と、疎液性領域31の一面31aに形成されたフォトクロミック分子からなる複数の構造体40とを備えるものを例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明の有機マイクロ共振器アレイは、本発明の有機マイクロ共振器が同一基板の同一面上に複数配置されたものであってもよい。
【0069】
[偽造防止システム]
本実施形態の偽造防止システムは、上述の本実施形態の有機マイクロ共振器アレイによりそれぞれ異なる発光スペクトルパターンを備える偽造防止パターンと、前記偽造防止パターンの発光スペクトル(A)を測定する顕微蛍光分光計測装置と、予め測定された前記偽造防止パターンの発光スペクトル(B)を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶されている前記発光スペクトル(B)と前記顕微蛍光分光計測装置によって測定された前記発光スペクトル(A)とを比較する偽造判定装置と、を有する。
【0070】
以下、
図8および
図9を参照しながら、本実施形態の偽造防止システムを説明する。
図8は、本実施形態の偽造防止システムを示す模式図である。
図9は、偽造防止システムを構成する顕微蛍光分光計測装置を示す模式図である。
本実施形態の偽造防止システム300は、偽造防止パターン400と、偽造防止パターン400の発光スペクトル(A)を測定する顕微蛍光分光計測装置500と、予め測定された偽造防止パターン400の発光スペクトル(B)を記憶する記憶装置600と、記憶装置600に記憶されている発光スペクトル(B)と顕微蛍光分光計測装置500によって測定された発光スペクトル(A)とを比較する偽造判定装置700とから概略構成されている。
【0071】
偽造防止パターン400は、上述の有機マイクロ共振器アレイ200から形成される任意形状のパターンである。偽造防止パターン400を形成する有機マイクロ共振器アレイ200を構成する複数の構造体40はそれぞれ、互いに大きさが異なっている。すなわち、複数の構造体40はそれぞれ、互いに半径(構造体40Aの半径r1、構造体40Bの半径r2)と高さ(構造体40Aの高さh1、構造体40Bの高さh2)が異なっていることが好ましい。このようにすれば、励起光を照射した場合に、それぞれの構造体40から発する蛍光(発光)のスペクトルパターン(発光スペクトルパターン)が異なるものとなる。
【0072】
偽造防止パターン400は、複数の構造体40に対向するように、フォトマスクを配置し、フォトマスクを介して、複数の構造体40に紫外線(波長355nm)を照射することにより、構造体40を構成するジアリールエテンの構造が変化している。それぞれの構造体40は大きさが異なるため、構造体40に励起光を照射することによって、構造体40の内部で発振したウィスパリング・ギャレリー・モード(WGM)によって、構造体40から発する蛍光のスペクトルパターンが異なる。すなわち、複数の構造体40に紫外線を照射することにより、複数の構造体40に互いに異なる蛍光のスペクトルパターンを形成することができる。このスペクトルパターンの差異を利用して、偽造防止パターン400に絵や文字等からなるパターンを描画することができる。
【0073】
フォトマスクとしては、フォトマスクの厚さ方向に光を透過する透過部を有するものが用いられる。透過部は、任意の絵や文字等に対応するパターンからなる。
【0074】
顕微蛍光分光計測装置500は、
図9に示すように、レーザー光源510と、スペクトロメーター520と、撮像装置530と、ビームスプリッター540と、オブジェクティブレンズ550と、フリップミラー560と、ロングパスフィルター570と、X-Yステージ580とから概略構成されている。
【0075】
レーザー光源510は、X-Yステージ580上に載置された偽造防止パターン400に、レーザー光(励起光)を照射する。レーザー光源510としては、波長400nm~500nmの光を、周波数1kHz~100MHzで発光するか、もしくは連続光で発光するものが用いられる。
【0076】
スペクトロメーター520は、偽造防止パターン400の複数の構造体40それぞれから発する蛍光(発光)のスペクトルを測定する。
【0077】
撮像装置530は、偽造防止パターン400を撮影(観察)する。
【0078】
ビームスプリッター540は、レーザー光源510から発せられた光を反射して、その光の光路を偽造防止パターン400側に向ける。
【0079】
オブジェクティブレンズ550は、レーザー光源510から発せられた光を収束して、偽造防止パターン400に照射する。また、オブジェクティブレンズ550は、偽造防止パターン400から発する蛍光(発光)を収束する。
【0080】
フリップミラー560は、偽造防止パターン400から発せられた蛍光(発光)を反射して、その光の光路をスペクトロメーター520側に向ける。
【0081】
ロングパスフィルター570は、偽造防止パターン400から発せられた蛍光(発光)のうち、長波長側の光を透過し、短波長側の光を透過しない。
【0082】
X-Yステージ580は、測定対象である偽造防止パターン400を載置して、所定の測定位置に設定する。
【0083】
顕微蛍光分光計測装置500では、レーザー光源510からレーザー光(励起光)を発すると、そのレーザー光がビームスプリッター540で反射し、さらに、オブジェクティブレンズ550で収束されて、偽造防止パターン400に照射される。
偽造防止パターン400にレーザー光が照射されると、偽造防止パターン400の複数の構造体40はそれぞれ、内部でウィスパリング・ギャレリー・モード(WGM)発振する。これにより、複数の構造体40はそれぞれ、蛍光を発する。
構造体40が発する蛍光は、フリップミラー560で反射し、さらに、その蛍光のうち、長波長側の光がロングパスフィルター570を透過して、スペクトロメーター520に入射する。
スペクトロメーター520では、受光した蛍光のスペクトルを測定し、そのスペクトルパターンを表示装置等に出力する。
なお、撮像装置530で偽造防止パターン400を観察しながら蛍光のスペクトルを測定することにより、偽造防止パターン400の複数の構造体40のうち、特定の構造体40の蛍光のスペクトルを測定することができる。
【0084】
記憶装置600は、顕微蛍光分光計測装置500を用いて、予め測定しておいた偽造防止パターン400の発光スペクトル(B)を記憶する。
記憶装置600としては、顕微蛍光分光計測装置500で測定した偽造防止パターン400に関するデータ(発光スペクトルに関するデータ)を記憶することができるものであれば特に限定されず、例えば、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)等が挙げられる。
【0085】
偽造判定装置700は、記憶装置600に記憶されている発光スペクトル(B)と顕微蛍光分光計測装置500によって測定された発光スペクトル(A)とを比較して、偽造防止パターン400の真贋(真偽)を判定する。
偽造判定装置700としては、発光スペクトル(A)と発光スペクトル(B)を比較するプログラムを内蔵するとともに、そのプログラムを実行するパーソナルコンピューター等が挙げられる。
【0086】
本実施形態の偽造防止システム300によれば、予め顕微蛍光分光計測装置500によって測定され、記憶装置600に記憶されている偽造防止パターン400の発光スペクトル(B)と、顕微蛍光分光計測装置500によって測定された偽造防止パターン400の発光スペクトル(A)とを、偽造判定装置700によって比較することにより、偽造防止パターン400の真贋(真偽)を判定することができる。なお、偽造防止パターン400は、半径が2μm以上10μm以下、高さが1μm以上10μm以下であり、互いに大きさが異なる複数の構造体40を有する有機マイクロ共振器アレイ200からなるため、容易に複製することができない。従って、本実施形態の偽造防止システム300によれば、高い安全性を有し、偽造を防止することができる。
【0087】
[有機マイクロ共振器の製造方法]
本実施形態の有機マイクロ共振器の製造方法は、基板と、該基板の一面に形成された疎液性領域を少なくとも有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる構造体と、を備えた有機マイクロ共振器の製造方法であって、前記基板の一面に、前記自己組織化単分子膜を形成する工程と、前記基板の一面に形成された前記自己組織化単分子膜に、前記疎液性領域と親液性領域を形成する工程と、前記自己組織化単分子膜の一面に、フォトクロミック分子を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて、フォトクロミック分子からなる薄膜を形成する工程と、前記薄膜を、水とアセトンの混合溶媒に浸漬する工程と、前記混合溶媒に浸漬した後の前記薄膜を自然乾燥することにより、前記自己組織化単分子膜の疎液性領域の一面に、フォトクロミック分子からなる構造体を形成する工程と、を有する。
【0088】
以下、
図10および
図11を参照しながら、本実施形態の有機マイクロ共振器の製造方法を説明する。
図10および
図11は、本実施形態の有機マイクロ共振器の製造方法を示す断面図である。
【0089】
基板20を、自己組織化単分子膜30を形成する有機化合物を含む溶液に浸漬して、
図10(a)に示すように、基板20の一面20aに自己組織化単分子膜30を形成する(自己組織化単分子膜形成工程)。
【0090】
上記の有機化合物を含む溶液の溶媒、すなわち、有機化合物を溶解するための溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン等が挙げられる。
また、有機化合物を含む溶液における有機化合物の含有量(濃度)は、0.1mg/mL以上10mg/mL以下であることが好ましく、1mg/mL以上2mg/mL以下であることがより好ましい。
【0091】
図10(b)に示すように、自己組織化単分子膜30は、基板20の一面20aとは反対側の末端(基板20の一面20aと結合していない末端)に疎液性の官能基(
図10(b)ではメチル基(CH
3))を有する。
【0092】
次に、
図10(c)および
図10(d)に示すように、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に、疎液性領域31と親液性領域32を交互に形成する(親液/疎液パターン形成工程)。
【0093】
親液/疎液パターン形成工程では、
図10(c)に示すように、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に対向するように、フォトマスク1000を配置した状態で、フォトマスク1000を介して、自己組織化単分子膜30に紫外線αを照射し、自己組織化単分子膜30を露光する。
【0094】
フォトマスク1000としては、フォトマスク1000の厚さ方向に光を透過する透過部1000aを有するものが用いられる。透過部1000aは、フォトマスク1000の幅方向とフォトマスク1000の長さ方向に沿って間隔をおいて形成されている。また、透過部1000aは、フォトマスク1000の一面1000bおよび他方の面1000cにて開口している。透過部1000aの幅W
3は、目的とする親液性領域32の幅に応じて適宜調整される。なお、ここでは、説明を簡略化するために、透過部1000aの幅W
3を、フォトマスク1000の幅方向に沿う幅およびフォトマスク1000の長さ方向に沿う幅とする。その場合、透過部1000aの幅W
3は、上記の親液性領域32の幅(
図5に示すX方向の長さ)W
2と親液性領域32の長さ(
図5に示すY方向の長さ)L
2に応じて適宜調整される。すなわち、疎液性領域31および親液性領域32の面積や、疎液性領域31および親液性領域32を設ける間隔は、特に限定されず、親液性領域32に形成される構造体40に求められる大きさ(直径)や高さ、構造体40を設ける間隔等に応じて適宜調整される。
【0095】
紫外線αとしては、指向性が高い紫外線を用いる。このような紫外線としては、波長が150nm以上240nm以下の範囲に発光強度を有する光が用いられる。このような指向性が高い紫外線を用いることにより、フォトマスク1000を介して、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に紫外線αを照射した際に、
図10(c)に示すように、フォトマスク1000に設けられた透過部1000aの形状に沿って、自己組織化単分子膜30に紫外線αを照射することができる。その結果、
図10(d)に示すように、自己組織化単分子膜30における紫外線αを照射した領域の疎液性の官能基を消失させて、自己組織化単分子膜30の目的の位置に、相対的に親液性を示す親液性領域32を形成することができる。また、自己組織化単分子膜30における紫外線αを照射していない領域は、疎液性の官能基が消失していないため相対的に疎液性を示す疎液性領域31となる。このようにして、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に、疎液性領域31と親液性領域32を交互に形成する。
【0096】
フォトマスク1000を介して、基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に紫外線αを照射する時間は、100秒以上150秒以下であることが好ましい。
【0097】
基板20の一面20aに形成された自己組織化単分子膜30に指向性が高い紫外線を照射する手段としては、例えば、エキシマランプや真空紫外線ランプを用いる。
【0098】
次に、
図11(a)に示すように、疎液性領域31の一面31aと親液性領域32の一面32aに、フォトクロミック分子を含む溶液を塗布し、その溶液からなる塗膜を形成し、その塗膜を乾燥させて、フォトクロミック分子からなる薄膜50を形成する(薄膜形成工程)。
【0099】
フォトクロミック分子を含む溶液の溶媒、すなわち、フォトクロミック分子を溶解するための溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン等が挙げられる。
【0100】
また、フォトクロミック分子を含む溶液におけるフォトクロミック分子の含有量(濃度)は、0.1mg/mL以上10mg/mL以下であることが好ましく、1.0mg/mL以上2.0mg/mL以下であることがより好ましい。
【0101】
疎液性領域31の一面31aと親液性領域32の一面32aに、フォトクロミック分子を含む溶液からなる塗膜を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、バーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、はけ塗り法等、通常のウェットコート法が用いられる。
【0102】
塗膜の厚さは、最終的に得られる有機マイクロ共振器10の用途にて、構造体40に求められる高さに応じて適宜調整される。
【0103】
薄膜形成工程において、次いで、疎液性領域31の一面31aと親液性領域32の一面32aに形成した塗膜を乾燥(例えば、真空乾燥)させることにより、疎液性領域31の一面31aと親液性領域32の一面32aにフォトクロミック分子からなる薄膜50を形成する。
塗膜を乾燥する温度は、特に限定されず、溶媒の種類に応じて適宜調整されるが、例えば、30℃以上80℃以下であることが好ましい。
また、均一な大きさの構造体40を形成するためには、薄膜50の厚さが均一であることが好ましい。
【0104】
次に、
図11(b)、
図11(c)に示すように、疎液性領域31の一面31aと親液性領域32の一面32aに形成された薄膜50を、水とアセトンの混合溶媒に浸漬し、薄膜50を水とアセトンの混合溶媒に接触させることにより、疎液性領域31に、フォトクロミック分子からなる構造体40を形成する(構造体形成工程)。
【0105】
次に、基板20、自己組織化単分子膜30の疎液性領域31および1つの構造体40からなる積層体を切り出す(
図11(c)に示す積層体の厚さ方向の破線に沿って切り出す)ことにより、
図11(d)に示すような有機マイクロ共振器10が得られる。なお、自己組織化単分子膜30には親液性領域32があってもよい。
【0106】
水とアセトンの混合溶媒における水とアセトンの配合比は、体積比で10:5.5~10:7であることが好ましく、10:6~10:6.5であることがより好ましい。
水とアセトンの配合比が、体積比で10:5.5未満では、フォトクロミック分子からなる不定形の突状の構造体が形成されるか、あるいは、薄膜50が全く変化しない。一方、水とアセトンの配合比が、体積比で10:7を超えると、アセトンに薄膜50が溶解してしまい、薄膜50が破壊してしまう。
【0107】
薄膜50を、混合溶媒に浸漬するとき、混合溶媒の温度は、10℃以上40℃以下であることが好ましく、20℃以上30℃以下であることがより好ましい。
混合溶媒の温度が10℃未満では、構造体40を形成することができない。一方、混合溶媒の温度が40℃を超えても効果に差異がない。
【0108】
薄膜50を、混合溶媒に浸漬する時間は、5秒以上であることが好ましく、5分以上であることがより好ましい。
薄膜50を混合溶媒に接触させる時間が5秒未満では、疎液性領域31の一面31aに構造体40を形成できない。
【0109】
次に、
図11(c)に示すように、混合溶媒に浸漬した後の薄膜50を自然乾燥することにより、自己組織化単分子膜30の疎液性領域31の一面31aに、フォトクロミック分子からなる構造体40を形成する(構造体形成工程)。
【0110】
構造体形成工程において、薄膜50を乾燥することにより、薄膜50を形成するフォトクロミック分子を含む溶液が疎液性領域31の一面31aに移動して、最終的にフォトクロミック分子が構造体40を形成する。
【0111】
本実施形態の有機マイクロ共振器の製造方法によれば、基板20と、基板20の一面20aに形成された少なくとも疎液性領域31を有する自己組織化単分子膜30と、疎液性領域31の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる構造体40と、を備え、構造体40は、基板20の一面20aから上方に突出し、先端面が凸球面状をなす突起であって、突起の高さをh(μm)、突起の半径をr(μm)とした場合、h>r>1μmの関係を満たす有機マイクロ共振器10が得られる。
【0112】
なお、本実施形態の有機マイクロ共振器の製造方法では、疎液性領域31の一面31aに構造体40を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明の有機マイクロ共振器の製造方法にあっては、フォトクロミック分子を溶解するための溶媒の種類や、フォトクロミック分子を含む溶液におけるフォトクロミック分子の濃度等を調整することにより、フォトクロミック分子が集まる場所を制御して、構造体が形成される位置を制御することができる。
【0113】
[有機マイクロ共振器アレイの製造方法]
本実施形態の有機マイクロ共振器アレイの製造方法は、基板と、該基板の一面に形成された疎液性領域を少なくとも有する自己組織化単分子膜と、前記疎液性領域の一面に形成されたフォトクロミック分子からなる複数の構造体と、を備えた有機マイクロ共振器アレイの製造方法であって、前記基板の一面に、前記自己組織化単分子膜を形成する工程と、前記基板の一面に形成された前記自己組織化単分子膜に、前記疎液性領域と親液性領域とを交互に形成する工程と、前記自己組織化単分子膜の一面に、フォトクロミック分子を含む溶液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて、フォトクロミック分子からなる薄膜を形成する工程と、前記薄膜を、水とアセトンの混合溶媒に浸漬する工程と、前記混合溶媒に浸漬した後の前記薄膜を自然乾燥することにより、前記疎液性領域の一面に、フォトクロミック分子からなる構造体を形成する工程と、を有する。
【0114】
本実施形態の有機マイクロ共振器アレイの製造方法は、上述の本実施形態の有機マイクロ共振器の製造方法と同様に行うことができる。
すなわち、構造体形成工程の後、基板20、自己組織化単分子膜30の疎液性領域31および1つの構造体40からなる積層体を切り出さなければ、得られた基板20、自己組織化単分子膜30の疎液性領域31および複数の構造体40からなる積層体は、有機マイクロ共振器アレイ200となる。
【0115】
なお、本実施形態の有機マイクロ共振器アレイの製造方法によれば、均一な厚さの薄膜50を形成しても、最終的に得られる複数の構造体40はそれぞれ、互いに大きさが異なるものとなる。
【実施例】
【0116】
以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0117】
[実験例1]
厚さ0.5μmのシリコン基板を、縦10mm×横10mmの大きさに切り出して、試験用基板とした。
この試験用基板を、UVオゾン洗浄により、10分間洗浄した。
次いで、硫酸(H2SO4)と過酸化水素(H2O2)の混合液中に、試験用基板を、50℃で30分間、静置した。混合液における硫酸と過酸化水素の配合比を、体積比で4:1とした。
その後、試験用基板を純水で洗浄し、試験用基板の洗浄を完了した。
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)をクロロホルムに溶解して、HMDS液を調製した。この溶液におけるHMDSの含有量(濃度)を2mg/mLとした。
次いで、洗浄後の試験用基板を、HMDS溶液に24時間、浸漬して、試験用基板の一面に自己組織化単分子膜を形成した。
次いで、試験用基板の一面に形成された自己組織化単分子膜に対向するように、フォトマスクを配置し、フォトマスクを介して、自己組織化単分子膜に紫外線を照射し、自己組織化単分子膜を露光した。
フォトマスクとしては、その全面に複数の透過部が等間隔に形成されたものを用いた。透過部におけるフォトマスクの幅方向に沿う幅およびフォトマスクの長さ方向に沿う幅を2μmとした。また、透過部同士の間隔を2μmとした。
自己組織化単分子膜に照射する紫外線は、ピーク発光波長が200nm、ピーク発光波長の半値幅が10nmであった。
また、自己組織化単分子膜に対して、紫外線を照射する時間を130秒、紫外線を照射する周期を151Hzとした。
フォトクロミック分子のジアリールエテンをクロロホルムに溶解して、ジアリールエテン溶液を調製した。この溶液におけるジアリールエテンの含有量(濃度)を1mg/mLとした。
次いで、自己組織化単分子膜が形成された試験用基板上に、ジアリールエテン溶液を20μL直接滴下し、ジアリールエテン溶液からなる塗膜を形成した。
【0118】
次に、ジアリールエテン溶液からなる塗膜を形成した後の試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察し、その走査型電子顕微鏡像を
図12に示す。また、ジアリールエテン溶液からなる塗膜を形成した後の試験用基板を、光学顕微鏡で観察し、その光学顕微鏡像を
図13に示す。また、試験用基板上に形成されたジアリールエテン溶液からなる塗膜に、波長450nm~490nmの光を照射した際に、蛍光顕微鏡で観察し、その蛍光顕微鏡像を
図14に示す。
図12の走査型電子顕微鏡像、
図13の光学顕微鏡像および
図14の蛍光顕微鏡像から、試験用基板の一面に形成された自己組織化単分子膜の疎液性領域上に、ジアリールエテンからなる構造体が形成されていないことが確認された。
【0119】
次に、ジアリールエテン溶液からなる塗膜を形成した試験用基板を真空乾燥して、試験用基板の自己組織化単分子膜上にジアリールエテンからなる薄膜を形成した。
次いで、自己組織化単分子膜上に形成された薄膜を、水とアセトンの混合溶媒に浸漬し、薄膜を水とアセトンの混合溶媒に接触させた。水とアセトンの混合溶媒における水とアセトンの配合比を、体積比で10:6とした。また、自己組織化単分子膜上に形成された薄膜を、混合溶媒に浸漬するとき、混合溶媒の温度を30℃とした。また、自己組織化単分子膜上に形成された薄膜を、混合溶媒に浸漬する時間を5分間とした。
次いで、混合溶媒に浸漬した後の薄膜を自然乾燥することにより、自己組織化単分子膜の疎液性領域上に、フォトクロミック分子からなる構造体を形成し、有機マイクロ共振器が試験用基板の一面上に複数形成された有機マイクロ共振器アレイを得た。
【0120】
次に、自然乾燥後の試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察し、その走査型電子顕微鏡像を
図15および
図16に示す。また、自然乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡で観察し、その光学顕微鏡像を
図17に示す。また、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体に、波長450nm~490nmの光を照射した際に、蛍光顕微鏡で観察し、その蛍光顕微鏡像を
図18に示す。
図15および
図16の走査型電子顕微鏡像、
図17の光学顕微鏡像並びに
図18の蛍光顕微鏡像から、試験用基板の一面に形成された自己組織化単分子膜の疎液性領域上に、ジアリールエテンからなる構造体が形成されていることが確認された。
また、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体に、波長450nm~490nmの光を照射した際に、構造体の吸収スペクトルと発光スペクトルを測定した結果を
図19に示す。
図19の結果から、構造体は、波長450nmの光を吸収し、その吸収した光よりも長波長の波長540nmの光を発光していることが確認された。
【0121】
次に、試験用基板上に形成された複数の構造体に対向するように、フォトマスクを配置し、フォトマスクを介して、複数の構造体に紫外線(波長355nm)を照射し、有機マイクロ共振器アレイに絵や文字等からなるパターンを描画した。
次に、顕微蛍光分光計測装置(商品名:Alpha 300s、WITec社製)を用いて、試験用基板上に形成された複数の構造体それぞれから発する蛍光(発光)のスペクトルを測定した。
結果を
図20~
図48に示す。
図20は、試験用基板上に形成された複数の構造体の光学顕微鏡像である。
図21~
図48は、
図20に示す複数の構造体それぞれから発する蛍光(発光)のスペクトルパターンを示す図である。
図21~
図48に示す「1-1」、「2-1」等の記号は、
図20に示す数字に対応しており、
図20の紙面左右方向の1~4の数字が「1-1」、「2-1」等の記号の左側の数字に対応し、
図20の紙面上下方向の1~7の数字が「1-1」、「2-1」等の記号の右側の数字に対応する。
図21~
図48の結果から、試験用基板上に形成された複数の構造体それぞれから発する蛍光(発光)のスペクトルパターンが異なることが確認された。
【0122】
[実験例2]
実験例1と同様にして、試験用基板の一面に自己組織化単分子膜を形成し、自己組織化単分子膜を露光した。
また、水とアセトンの混合溶媒における水とアセトンの配合比を、体積比で10:5としたこと以外は実験例1と同様にして、自己組織化単分子膜の親液性領域上に、フォトクロミック分子からなる複数の構造体を形成した。
次に、自然乾燥後の試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察し、その走査型電子顕微鏡像を
図49に示す。また、自然乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡で観察し、その光学顕微鏡像を
図50に示す。また、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体に、波長450nm~490nmの光を照射した際に、蛍光顕微鏡で観察し、その蛍光顕微鏡像を
図51に示す。
図49の走査型電子顕微鏡像、
図50の光学顕微鏡像および
図51の蛍光顕微鏡像から、試験用基板の一面に形成された自己組織化単分子膜の疎液性領域上に、ジアリールエテンからなる構造体が形成されているものの、それぞれの構造体が独立していないことが確認された。
【0123】
[実験例3]
実験例1と同様にして、試験用基板の一面に自己組織化単分子膜を形成し、自己組織化単分子膜を露光した。
また、水とアセトンの混合溶媒における水とアセトンの配合比を、体積比で10:4としたこと以外は実験例1と同様にして、自己組織化単分子膜の親液性領域上に、フォトクロミック分子からなる複数の構造体を形成した。
次に、自然乾燥後の試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察し、その走査型電子顕微鏡像を
図52に示す。また、自然乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡で観察し、その光学顕微鏡像を
図53に示す。また、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体に、波長450nm~490nmの光を照射した際に、蛍光顕微鏡で観察し、その蛍光顕微鏡像を
図54に示す。
図52の走査型電子顕微鏡像、
図53の光学顕微鏡像および
図54の蛍光顕微鏡像から、試験用基板の一面に形成された自己組織化単分子膜の疎液性領域上に、ジアリールエテンからなる構造体が形成されていないことが確認された。
【0124】
[実験例4]
実験例1と同様にして、試験用基板の一面に自己組織化単分子膜を形成し、自己組織化単分子膜を露光した。
また、水とアセトンの混合溶媒における水とアセトンの配合比を、体積比で10:2.5としたこと以外は実験例1と同様にして、自己組織化単分子膜の親液性領域上に、フォトクロミック分子からなる複数の構造体を形成した。
次に、自然乾燥後の試験用基板を、走査型電子顕微鏡で観察し、その走査型電子顕微鏡像を
図55に示す。また、自然乾燥後の試験用基板を、光学顕微鏡で観察し、その光学顕微鏡像を
図56に示す。また、試験用基板上に形成されたジアリールエテンからなる構造体に、波長450nm~490nmの光を照射した際に、蛍光顕微鏡で観察し、その蛍光顕微鏡像を
図57に示す。
図55の走査型電子顕微鏡像、
図56の光学顕微鏡像および
図57の蛍光顕微鏡像から、試験用基板の一面に形成された自己組織化単分子膜の疎液性領域上に、ジアリールエテンからなる構造体が形成されていないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の有機マイクロ共振器は、フォトクロミック分子からなる構造体を備え、構造体が基板の一面から上方に突出し、先端面が凸球面状をなす突起であって、突起の高さをh(μm)、突起の半径をr(μm)とした場合、h>r>1μmの関係を満たすため、有機フォトニック結晶としての用途、光メモリーデバイスとしての用途、発光デバイスとしての用途、超高解像度ディスプレイとしての用途、網膜投影ディスプレイとしての用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0126】
10・・・有機マイクロ共振器、20・・・基板、30・・・自己組織化単分子膜、31・・・疎液性領域、32・・・親液性領域、40,40A,40B・・・構造体、50・・・薄膜、100・・・スイッチング素子、110・・・照射手段、200・・・有機マイクロ共振器アレイ、300・・・偽造防止システム、400・・・偽造防止パターン、500・・・顕微蛍光分光計測装置、510・・・レーザー光源、520・・・スペクトロメーター、530・・・撮像装置、540・・・ビームスプリッター、550・・・オブジェクティブレンズ、560・・・フリップミラー、570・・・ロングパスフィルター、580・・・X-Yステージ、600・・・記憶装置、700・・・偽造判定装置、1000・・・フォトマスク。