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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】波長選択フィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/26 20060101AFI20230328BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
G02B6/26 311
G02B6/26 321
G02B6/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019101514
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020194150
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆司
(72)【発明者】
【氏名】大久保 年永
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05287214(US,A)
【文献】特開平10-227942(JP,A)
【文献】米国特許第05666225(US,A)
【文献】特開2005-049722(JP,A)
【文献】特開平09-178970(JP,A)
【文献】特開2013-113921(JP,A)
【文献】米国特許第07231116(US,B2)
【文献】特開昭62-066209(JP,A)
【文献】米国特許第05481402(US,A)
【文献】特開2008-122697(JP,A)
【文献】特開平10-239599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26 - 6/27
6/30 - 6/34
6/42 - 6/43
5/28
G02B 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光に含まれる特定の波長帯域の光を出力する波長選択フィルタであって、
送信装置から受信装置に向かう光信号を前記入力光として入力するとともに、前記特定の波長帯域の光を送信装置側に向けて出力し、
前後方向をz軸とした3次元直交座標系において、
前方から後方に向かってz軸上に光ファイバコリメータ、基板上に誘電体薄膜の多層膜が形成されてなる干渉フィルタ、反射板がこの順に配置され、
前記光ファイバコリメータは、後方に開口する光ファイバの後方にコリメートレンズが配置されてなり、
前記干渉フィルタは、互いに対面しつつxy面をy軸周りに所定の回転角度で回転させた状態で固定されて、互いに対面する二面を光の入出射面とし、前方、及び後方から入射した光に含まれる所定の波長帯域の光を透過させるとともに、所定の波長帯域以外の光を反射させ、
前記反射板はz軸方向を法線方向とした前面を反射面として、前記干渉フィルタを介してz軸に沿って前方から入射した光を前方へ反射して、その反射光を前記干渉フィルタに入射させ、
前記光ファイバコリメータは、前方から前記光ファイバを伝播してきた前記入力光を前記干渉フィルタに入射させるとともに、前記干渉フィルタを透過してきた前記反射光を前記光ファイバに結合させて出力し、
前記干渉フィルタのy軸周りの前記回転角度は、所定の波長帯域以外の前記光が戻り光として前記光ファイバに結合しない方向に反射させる角度に設定されている、
ことを特徴とする波長選択フィルタ。
【請求項2】
求項1において、前記反射板は入射した光の強度を減少させて前方に反射させる光減衰手段を備えたことを特徴とする波長選択フィルタ。
【請求項3】
求項1において、前記干渉フィルタは前後方向に光を透過させる過程で、その光の強度を減少させる光減衰手段を備えたことを特徴とする波長選択フィルタ。
【請求項4】
請求項1~のいずれかにおいて、筐体の前端に前記光ファイバコリメータが接続されているとともに、当該筐体の内部に前記干渉フィルタと前記反射板とが保持され、前記筐体は、前記干渉フィルタを内部に保持した状態で前記回転角度を調整するための手段を備えたことを特徴とする波長選択フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は所定の波長帯域の光を選択的に透過あるいは反射する波長選択フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明が対象とする波長選択フィルタは、所定の波長帯域の光を選択的に透過あるいは反射させる光学素子(以下、波長選択素子とも言う)を備えた光学部品であり、電気などの動力を必要とせずに動作する受動部品である。波長選択フィルタは、光通信網における光信号伝送路となる光ファイバの延長途上に介在し、劣化した信号波形を整形したりノイズ光を除去したりするために用いられる。例えば、光信号の受信側に設置される「波長選択リフレクタ」などと呼ばれる波長選択フィルタは、光信号伝送路の両端にある送信装置と受信装置のうち、受信装置側に設置され、送信装置が送出した光信号を整形した上で送信装置側に送り返す。送信装置側では受信装置側からの光信号の有無によって光伝送路の切断などを検出することができる。また受信装置側から帰還してきた光信号に対し、データの欠落、信号強度などを調べることで、送信装置から受信装置に至る光伝送路の途上における異常を検出することができる。そして光通信の分野では、波長選択リフレクタを含めた波長選択フィルタに使用される波長選択素子として、ファイバブラッググレーディング素子(あるいは光ファイバグレーディング素子:以下、FBG素子)がよく知られている。周知のごとく、FBG素子は光ファイバにおけるコアの延長方向に屈折率を周期的に変化させたものである。なおFBGについては以下の非特許文献1にその動作原理や構造などが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】伸興電線株式会社、”FBGについて”、[online]、[令和1年5月30日検索]、インターネット<URL:http://www.shinko-ew.co.jp/products/FBG/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光通信分野において波長選択フィルタに広く利用されていたFBG素子は、ホログラフィック干渉や位相マスクを用い、感光性のある光ファイバに強度が周期的に分布した光を照射することで製造される。このようにFBG素子はその製造過程で光学的に高い精度が要求される工程が含まれるため、波長選択フィルタを安価に提供することが難しい。
【0005】
またFBG素子が選択的に反射する波長(以下、選択波長とも言う)についての特性は極めて鋭敏であり、反射光の波長帯域が極めて狭い。またFBG素子が歪みセンサとしても広く利用されていることからも分かるように、FBG素子は、歪みによって選択波長が変化する。そのためFBG素子からなる波長選択フィルタに温度変化などに起因する僅かな歪みがあると、選択波長が光信号の波長から外れてしまう可能性がある。そのため光伝送路の途上で異常が無いのにも関わらず、送信側に光が戻らず光伝送路に異常がなくても異常として判断されてしまう。そのため極めて安定した環境下に波長選択フィルタを設置する必要がある。あるいは設置環境を一定に維持するための装置や施設が必要となる。したがって波長選択フィルタに用いる波長選択素子には、選択波長が歪みなどに左右されない特性を有していることが望まれる。もちろん選択波長帯域外の光については精度よく除去できる性能を備えていることも必要となる。
【0006】
そこで本発明は、光通信網内に設置するのに適した波長選択フィルタをより安価に提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、入力光に含まれる特定の波長帯域の光を出力する波長選択フィルタであって、
送信装置から受信装置に向かう光信号を前記入力光として入力するとともに、前記特定の波長帯域の光を送信装置側に向けて出力し、
前後方向をz軸とした3次元直交座標系において、
前方から後方に向かってz軸上に光ファイバコリメータ、基板上に誘電体薄膜の多層膜が形成されてなる干渉フィルタ、反射板がこの順に配置され、
前記光ファイバコリメータは、後方に開口する光ファイバの後方にコリメートレンズが配置されてなり、
前記干渉フィルタは、互いに対面しつつxy面をy軸周りに所定の回転角度で回転させた状態で固定されて、互いに対面する二面を光の入出射面とし、前方、及び後方から入射した光に含まれる所定の波長帯域の光を透過させるとともに、所定の波長帯域以外の光を反射させ、
前記反射板はz軸方向を法線方向とした前面を反射面として、前記干渉フィルタを介してz軸に沿って前方から入射した光を前方へ反射して、その反射光を前記干渉フィルタに入射させ、
前記光ファイバコリメータは、前方から前記光ファイバを伝播してきた前記入力光を前記干渉フィルタに入射させるとともに、前記干渉フィルタを透過してきた前記反射光を前記光ファイバに結合させて出力し、
前記干渉フィルタのy軸周りの前記回転角度は、所定の波長帯域以外の前記光が戻り光として前記光ファイバに結合しない方向に反射させる角度に設定されている、
ことを特徴とする波長選択フィルタとしている。
【0009】
前記反射板が入射した光の強度を減少させて前方に反射させる光減衰手段を備えた波長選択フィルタとすることもできる。前記干渉フィルタが前後方向に光を透過させる過程で、その光の強度を減少させる光減衰手段を備えていてもよい。
【0010】
上記いずれかに記載の波長選択フィルタにおいて、筐体の前端に前記光ファイバコリメータが接続されているとともに、当該筐体の内部に前記干渉フィルタと前記反射板とが保持され、前記筐体は、前記干渉フィルタを内部に保持した状態で前記回転角度を調整するための手段を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光通信網内に設置するのに適した波長選択フィルタをより安価に提供することができる。その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光伝送路における波長選択フィルタの設置例を示す図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る波長選択フィルタの構造を示す図である。
図3】上記第1の実施例に係る選択波長フィルタの波長選択特性を示す図である。
図4】本発明の第2の実施例に係る波長選択フィルタの構造を示す図である。
図5】上記第2の実施例に係る波長選択フィルタの波長選択特性を示す図である。
図6】本発明の第3の実施例に係る波長選択フィルタの波長選択特性を示す図である。
図7】本発明のその他の実施例に係る波長選択フィルタの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例について、以下に添付図面を参照しつつ説明する。なお以下の説明に用いた図面において、同一または類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。ある図面において符号を付した部分について、不要であれば他の図面ではその部分に符号を付さない場合もある。
===本発明の実施例===
本発明の実施例として光信号伝送路の受信側に上記の波長選択リフレクタとして設置される波長選択フィルタを挙げる。図1に波長選択フィルタを含む光伝送路の概略構成を示した。光ファイバからなる光伝送路100が光信号の送信装置101から受信装置102まで延長し、受信装置102の近傍(受信側)に本発明の実施例に係る波長選択フィルタ1が設置されている。この例では、光伝送路100において送信側と受信側の双方の近傍に光信号を分岐するための光学素子(以下、カップラー(103、104)とも言う)が双方に設置されており、波長選択フィルタ1は、送信装置101から送信された順方向の光信号110から受信側のカップラー104によって分岐されてきた光信号111を整形したうえで送信装置101側に戻す。この戻り光112は光伝送路100を逆方向に辿り送信側のカップラー103によりフォトダイオードなどの受光素子や受光素子が出力する信号の解析装置などを含んで構成される検出装置105に入力される。検出装置105は戻り光112の有無、あるいは戻り光112の特性を測定し、光伝送路100の異常の有無を検出する。
【0014】
そして本発明の実施例に係る光選択フィルタは、波長選択素子としてFBG素子を用いず、干渉フィルタを用いている。周知のごとく、干渉フィルタはガラスなどの基板上に誘電体薄膜を形成したものであり、特定の波長帯域の光を透過し他の帯域の光を反射する光学素子である。そして実施例に係る波長選択フィルタでは、干渉フィルタの特性をうまく利用することで光通信の用途により適したものとなっている。
===第1の実施例===
図2は本発明の第1の実施例に係る波長選択フィルタ1aの概略構造を示している。図2(A)はその外観図であり、図2(B)は(A)におけるa-a矢視断面に対応する縦断面図である。また図2(B)では当該波長選択フィルタ1aの動作の概略も併せて示している。図2(A)に示したように、第1の実施例に係る波長選択フィルタ(以下、第1実施例1aとも言う)は、内部に干渉フィルタが保持された円筒状の筐体2の一端に円筒状の外観形状を有する光ファイバコリメータ3が接続された外部構造を有している。光ファイバコリメータ3の端部からは光ファイバ31が所謂「ピグテイル」として導出されており、その導出された光ファイバ31の末端には図1に示したカップラー104などが接続されることになる。ここで便宜的に円筒状の筐体2の軸6方向を前後方向とする。また光ファイバコリメータ3が筐体2の前端に接続されていることとして前後の各方向を規定することとする。そして前後方向に平行となるようにz軸を取ってxyz3次元直交座標系を設定したときに、x軸方向を左右方向、y軸方向を上下方向とする。そして図2(B)に示した断面図はzx面に対応している。
【0015】
光ファイバコリメータ3は、その図2(B)に示したように、中空円筒状のスリーブ32内に光ファイバ31を保持したフェルール33とコリメートレンズ34とがスリーブ32と同軸に保持された構造を有し、光ファイバ31は後端に開口35を有している。筐体2内部は前方が開口し後端が閉鎖された円筒状であり、内部には前後方向に延長する中空円筒状の空間21が形成されている。光ファイバ31の開口端を通りつつ前後(z軸)方向に延長する直線を光軸60として、筐体2内には、前方から後方に向かって光軸60上に干渉フィルタ4と反射板5がこの順に配置されている。なお以下ではz軸を光軸60とするとともに、光軸60と筐体2の円筒軸6とが一致しているものとして説明を続ける。
【0016】
干渉フィルタ4は互いに対面する二面(41、42)を光の入出射面としている。また上述したように干渉フィルタ4は特定の波長帯域の光を透過させ、それ以外の波長の光を反射することから、z軸上を進行する光が入射した際にその反射光がz軸上を逆行しないようにする必要がある。そのため干渉フィルタ4における光の入出射面(41、42)の法線43の方向はz軸に対して傾斜している。この例ではxy面をy軸周りに所定の回転角度θで回転させた面を入出射面(41、42)としている。なお反射板5はz軸を法線方向とした前面を反射面51としている。
【0017】
つぎに図2(B)を参照しつつ第1実施例1aの動作について説明する。まず前方から光ファイバ31を伝播してきた光信号(以下、入力光Linとも言う)が当該光ファイバ31の開口より後方に出射すると、その出射光L1はコリメートレンズ34によって平行光L2に整形されて干渉フィルタ4に入射する。干渉フィルタ4は、入射光L2から特定の波長帯域の光L3を後方に透過させ、その帯域以外の光R1を反射する。反射板5は干渉フィルタ4を透過してきた光L3を前方に向けて反射し、干渉フィルタ4はこの反射光L4から所定の波長帯域の光L5を前方に透過させ、それ以外の帯域の光R2を反射させる。そして後方から干渉フィルタ4を透過してきた光L5は、コリメートレンズ34によって光ファイバ31の開口35に結合する。光ファイバ31は後方から入射した光L6を出力光Loutとして入力光Linと逆方向に伝搬する。その出力光Loutは、図1に示したようにカップラー104を介して光伝送路100に合流して送信装置101側へ戻される。
【0018】
このように第1実施例1aでは、極めて簡素な構成によって、光信号の送信側から伝搬してきた入力光Linから特定の波長の光Loutのみを選択的に取り出して送信側へ戻すことができる。また第1実施例1aでは入力光Linは干渉フィルタ4を2回透過する。それによって前方から後方への1回目の光透過機会では反射しきれなかった不要な波長帯域の光L3を後方から前方への2回目の光透過機会によってほぼ完全に除去できるようになっている。図3に第1実施例における透過光強度の波長依存特性(以下、波長選択特性とも言う)を示した。ここでは干渉フィルタとして石英基板上に33μmの厚さのSiOと19μmの厚さのTaを順次積層したものを用い、上記回転角度θを3.0゜に設定している。そして当該図4に示したように、干渉フィルタはある程度幅のある所定帯域の光を透過させることができるが、1回目の光透過機会ではその帯域外の光も僅かに透過させてしまう。しかし干渉フィルタに光を2回透過させることで、波長選択特性が向上する。ここに示した例では選択波長帯域から0.3nm程度ずれただけで透過損失が約40dB変化した。
【0019】
このように第1実施例によれば、波長選択素子として高価なFBR素子を用いず、干渉フィルタを用いている。そして一つの干渉フィルタと反射板を組み合わせることで、実質的に二つの干渉フィルタを光軸上に直列配置した構成の波長選択フィルタと同様の効果を得ることができる。すなわちより安価な部品を用い、さらにその部品点数を削減してコストダウンを達成しながら優れた波長選択特性を有している。また干渉フィルタの選択波長にはある程度の幅があるので、その透過波長帯域中の中に光信号の波長が含まれていればよく、干渉フィルタにおける干渉膜の膜厚を過剰に制御する必要が無い。したがって干渉フィルタに掛かる部品コストも低減させることができる。干渉フィルタや反射板の配置精度についても、これらの光部品における光の入射面領域内にコリメートレンズからの光のビームスポットの領域が包含されればよく、波長選択フィルタの組み立てコストも低減させることができる。FBG素子を用いた波長選択フィルタのように、温度変化などによって波長選択特性が大きく変化することがなく、設置環境を厳密に維持するための装置や施設が不要となる。すなわち波長選択フィルタの設置コストも低減させることができる。
===第2の実施例===
干渉フィルタのように基板上に薄膜を積層させてなる多層膜では、光の入射角度に応じて実質的な干渉膜の厚さが変化するため可変選択波長特性が変化する。そして第1の実施例では図2(B)に示したように、不要な波長成分の戻り光を防止するために干渉フィルタの膜面法線方向をz軸に対して角度θだけ傾け、その角度θを保持した状態で干渉フィルタを筐体内に組み込んでいた。すなわち第1実施例では干渉フィルタに光を斜め方向から入射する構成を基本として、干渉フィルタをy軸周りの回転角θを調整した状態で所望の波長選択特性が得られるように作製していた。言い換えれば、第1実施例において、回転角θを積極的に調整できる機構を追加すれば波長選択特性をある程度可変調整することできるようになる。それによって干渉フィルタの膜厚に誤差があるなどして、所望の波長選択特性が得られないような場合においても、干渉フィルタを筐体内に組み込んだ状態でその回転各θを簡単に調整することができれば、許容される干渉フィルタの膜厚精度の誤差を大きくすることができる。したがって波長選択特性に優れた波長選択フィルタをさらに安価に提供することが可能となる。そこで本発明の第2の実施例として、波長選択特性を可変設定できる機構を備えた波長選択フィルタを挙げる。
【0020】
図4は第2の実施例に係る波長選択フィルタ(以下、第2実施例1bとも言う)の概略構造を示す図である。図4(A)は第2実施例1bの分解斜視図であり、図5(B)は第2実施例1bの外観を示す斜視図である。図4(A)に示したように、円筒状の筐体2bは、前端に光ファイバコリメータ3が接続されつつ内部に反射板を保持した本体部7と、干渉フィルタ4を保持するフィルタ保持部8とから構成されている。フィルタ保持部8は干渉フィルタ4をy軸回りの回転角度θの調整を可能にしつつ本体部7に固定するための構成であり、円筒状の胴部81の上下一方の端面に当該胴部81よりも拡径された円板状の頭部82が形成された形状となっている。そして円筒状の胴部81の側面には干渉フィルタ4を収納するために、当該胴部81の円筒軸83と直交する方向に貫通する孔(以下、フィルタ収納部84とも言う)が形成されている。この例では、直方体状、あるいは矩形平板状の干渉フィルタ4の形状に合わせてフィルタ収納部84の開口85は矩形状となっている。そして干渉フィルタ4は、自身の光の入出射面(41、42)がこのフィルタ収納部84における矩形の開口85から露出するように当該フィルタ収納部84に挿入される。
【0021】
本体部7は中空円筒状で、前端面71側に光ファイバコリメータ3が接続され、中空の内部空間の後端には反射板が保持されている。なおここでも光ファイバコリメータ3における光軸60がこの円筒状の本体部7の円筒軸6に一致しているものとする。そして本体部7には円形断面を有して前端面71にて開口する孔(以下、横孔72とも言う)が円筒軸6に一致する方向に形成されており、光ファイバコリメータ3の光軸60と本体部7の円筒軸6とを一致させるように当該光ファイバコリメータが前端面71に溶接などの方法によって接続される。
【0022】
ここでフィルタ保持部8において頭部82側を上方とすると、本体部7の上方側面において、干渉フィルタが配置される位置を中心とした前後の領域73が切りかかれ、この領域73に上下方向を法線とする平坦面74が形成されている。そしてこの平坦面74となっている領域(以下、切欠部73とも言う)には、上下方向を深さ方向として開口する円形の孔(以下、縦孔75とも言う)が形成され、先の前後方向の横孔72がこの縦孔75の内面に開口している。なおここに示した例では、縦孔75は有底であるが、貫通孔であってもよい。
この縦孔75にはフィルタ保持部8の胴部81が挿入される。なお胴部81は、縦孔75に挿入された状態では、その側面が縦孔75の内面に対して摺動可能な状態で接触する。そして、フィルタ保持部8の胴部81が縦孔75に挿入されると、図4(B)に示したように、フィルタ保持部8の頭部82の下面が本体部7の平坦面74に当接し、フィルタ保持部8が本体部7に対して隙間無く装着される。このとき、フィルタ収納部84における開口85と縦孔75内における横孔72の開口とを対面させることで、光軸60に沿って進行する光線が干渉フィルタ4を透過する。また、縦孔75に挿入した胴部81を円筒軸83周りに回転させると干渉フィルタ4における光の入出射面(41、42)が光軸60に対して傾斜する。そしてフィルタ保持部8には、胴部81を回転させるための構造として、頭部82の上面86に溝87が形成されている。そしてフィルタ保持部8が本体部7に装着された状態でマイナスドライバなどの工具を頭部82のこの溝87に当て、その頭部82を胴部81の円筒軸83周りに回転させると、胴部81に装着されている干渉フィルタ4が光軸60に対して上記の回転角度θで交差させることができる。なお所定の回転角度θに調整した状態で固定する場合は、頭部82をレーザー溶接などの方法によって本体部7の平坦面74に固定すればよい。なお第2実施例1bにおいて、干渉フィルタ4の回転角度θを可変調整するための機構やフィルタ保持部による干渉フィルタの保持構造は図4に示した構成や構造に限定されない。
【0023】
つぎに第2実施例1bの選択波長特性を調べた。図5に第2実施例1bにおける干渉フィルタ4の回転角度θと波長選択特性の関係を示した。この図5に示したように、回転角度θ=2.7゜における選択波長帯域に対し、θ=3.0゜では選択波長帯域が短波長側にシフトすることが分かる。ここに示した例では短波長側に0.167nmシフトしていた。このように第2実施例1bでは、干渉フィルタ4を筐体2内に組み込んだ後でも回転角度θを調整して波長選択特性を可変制御することができ、干渉フィルタ4における干渉膜の膜厚に多少の誤差があっても波長選択特性を精密に調整することができる。
===第3の実施例===
光ファイバを用いた光通信ではデータ伝送媒体となる光がその伝搬中に減衰する。そのため、一定の間隔で光を増幅させてやる必要がある。そして光の増幅を行う装置が光アンプである。光アンプとしては、例えば、エルビウムドープファイバ(EDF)を用いた自己増幅型の光アンプ(EDFA)がよく知られている。そして図1に示した光伝送路100に光アンプが介在している場合、波長選択フィルタ1はその増幅された光に対して波長選択動作を行うことになる。そのため波長選択フィルタ1から送信装置101側に戻ってくる光の強度が過大となる可能性もある。すなわち検出装置105の測定限界を超えた強い光が戻ってくる可能性がある。そこで第3の実施例として、選択的に透過させた光を減衰させる機能(光減衰機能)を備えた波長選択フィルタを挙げる。
【0024】
なお光減衰機能は反射板にあってもよいし干渉フィルタにあってもよい。反射板に光減衰機能を設けるためには、反射板を所謂「ミラーガラス」で構成すればよい。ミラーガラスは、ガラス基板上にスズ、銀、クロムなどを蒸着してなる半透明の金属薄膜を形成した構造を有し、入射した光の一部を透過させることで反射光の強度を減衰させる。なお透過した光に対しては筐体内面にて吸収させればよい。一方、光減衰機能を干渉フィルタ側に設けるためには干渉フィルタにNDフィルタとして機能する薄膜を積層すればよい。もちろん反射板の前面にNDフィルタを配置したり、干渉フィルタの前後いずれかの面に上記の金属薄膜を形成したりしてもよい。図6に光減衰機能を備えた波長選択フィルタの特性を示した。ここでは反射板をミラーガラスで構成した波長選択フィルタの特性を示した。光減衰機能がない波長選択フィルタに対し、光減衰機能を備えた波長選択フィルタでは選択波長帯域の損失が大きくなっている。すなわち波長選択フィルタから出力される光の強度が減衰されている。もちろんミラーガラスからなる反射板以外の構成によって波長選択フィルタに光減衰機能を付加しても同様の効果が得られることは明らかである。
===その他の実施例===
上記各実施例に係る波長選択フィルタでは、1本の光ファイバから光を入力して、同じ光ファイバから所定の波長帯域の光を出力していた。もちろん2本の光ファイバがフェルール内に並んで配置された所謂「パンダファイバ」を用い、一方の光ファイバから光を入力し他方の光ファイバから光を出力することとしてもよい。図7に光ファイバを2本備えた波長選択フィルタ1cの構造を示した。当該図ではzx面に対応する縦断面図によって当該波長選択フィルタ1cを示した。一つのフェルール33内にx軸(左右)方向に2本の光ファイバ(31i、31o)が並んで保持されており、この2本の光ファイバ(31i、31o)の開口間(35o-35i)の左右中央を通って前後方向に延長する方向がコリメートレンズ34の光軸160と一致している。それによって一方の光ファイバ31iを伝播してきた光Linは、当該光ファイバ31iの開口35iから後方に向けて出射した後、図中に示した順方向の光路(L11~L13)を辿って反射板5に至る。反射板5は前方からの入射光L13を反射し、その反射光L14は順方向の光路(L11~L13)に対して上下対称の光路(L14~L16)を辿って他方の光ファイバ31oの開口35oに結合する。そしてこの他方の光ファイバ31oに結合して入射した光L16が出力光Loutとして当該光ファイバ31oを伝搬する。
【符号の説明】
【0025】
1,1a~1c 波長選択フィルタ、2、2b 筐体、3 光ファイバコリメータ、
4 干渉フィルタ、5 反射板、7 本体部、8 フィルタ保持部、
31,31o,31i 光ファイバ、33 フェルール、34 コリメートレンズ、
41,42 干渉フィルタの光の入出斜面、51 反射面、60,160 光軸、
72 横孔、75 縦孔、81 胴部、82 頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7