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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】耐火物用断熱材
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20230328BHJP
   C04B 38/08 20060101ALI20230328BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20230328BHJP
   C01B 32/20 20170101ALI20230328BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
B22D11/10 320Z
C04B38/08 D
C01B32/05
C01B32/20
C04B38/06 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021031873
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022133051
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000244176
【氏名又は名称】明智セラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】加知 圭介
(72)【発明者】
【氏名】階戸 雅弘
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127401(JP,A)
【文献】特開2003-095757(JP,A)
【文献】特開平11-268962(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102206084(CN,A)
【文献】特開平06-317383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
C04B 38/06
C04B 35/66-35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造に使用される耐火物の表面をコーティングする断熱材であって、該断熱材は中空粒子および空間形成用焼失材を含有し、前記空間形成用焼失材は、炭素繊維、黒鉛粉末、またはそれらの混合物であると共に、5~50重量%含有されていることを特徴とする耐火物用断熱材。
【請求項2】
前記黒鉛粉末は、鱗片状黒鉛、カーボンブラック、またはそれらの混合物である請求項に記載の耐火物用断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造用ノズルなどの耐火物の表面をコーティングするための耐火物用断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造では、およそ1500~1600℃の溶鋼を連続鋳造用ノズルを介して注湯している。その際、連続鋳造用ノズルには過酷な熱負荷がかかり亀裂や折損等が発生するおそれがあるため、連続鋳造用ノズルを予熱して破損を防止している。その予熱方法としては、例えば図3に示すように、予熱装置10の炉内に配した連続鋳造用ノズル20の下部吐出口21などから、燃料ガスと酸素を供給可能なバーナー22を用いて1000~1300℃に加熱する方法が一般的に行われている。
【0003】
しかし、予熱終了後、鋳込み開始までの間に、連続鋳造用ノズルが冷却してしまうことで溶鋼注湯時に激しい熱衝撃が加わるため、連続鋳造用ノズル(耐火物)20の表面には耐火物用断熱材を施工し待機中の冷却を防止している。
【0004】
そして、この種の耐火物用断熱材としては、例えば図4に示すように、母材30に中空粒子40を添加し、中空粒子40によって空間が形成されることで断熱効果を向上させたものがある(例えば、特開2003-95757号公報のカーボン含有耐火物の断熱コーティング材)。しかし、必要な断熱効果を得るために、この中空粒子40を大量に添加すると、構造強度を高める母材30の割合が低くなり、断熱層施工時の構造強度が十分でなくなる(せん断強度1N/mm未満)という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-95757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、施工時の構造強度を高めると共に断熱性を向上させることができる耐火物用断熱材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するものは、鋳造に使用される耐火物の表面をコーティングする断熱材であって、該断熱材は中空粒子および空間形成用焼失材を含有し、前記空間形成用焼失材は、炭素繊維、黒鉛粉末、またはそれらの混合物であると共に、5~50重量%含有されていることを特徴とする耐火物用断熱材である(請求項1)。
【0008】
前記黒鉛粉末は、鱗片状黒鉛、カーボンブラック、またはそれらの混合物であることが好ましい(請求項2)
【発明の効果】
【0009】
請求項1または2に記載の耐火物用断熱材によれば、施工時の構造強度を高めると共に断熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の耐火物用断熱材の作用を説明するための説明図である。
図2】本発明の耐火物用断熱材の効果を説明するための説明図である。
図3】耐火物の予熱方法を説明するための説明図である。
図4】従来の耐火物用断熱材を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、中空粒子2の他に強度確保用焼失材3を含有することで、施工時の構造強度を高めることができると共に断熱性を向上させることができる耐火物用断熱材1を実現した。
【実施例1】
【0012】
本発明の耐火物用断熱材を図1または図2に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の耐火物用断熱材1は、鋳造に使用される耐火物の表面をコーティングする断熱材であって、中空粒子2および強度確保用焼失材3を含有している。以下、構成について詳述する。
【0013】
この実施例の耐火物用断熱材1は、例えば図3に示した連続鋳造に使用される連続鋳造用ノズルなどの耐火物20の表面をコーティングする吹付けタイプの断熱材であって、中空粒子2および強度確保用焼失材3を含有している。
【0014】
中空粒子2は、中空であることにより、耐火物用断熱材1にて形成される断熱層内に空間が形成され断熱性を向上させるために添加されるものであり、中空粒子としては、例えばシリカ・アルミナ系中空粒子が好適に使用できる。
【0015】
そして、本発明の耐火物用断熱材1は、耐火物の表面に形成される断熱層の断熱性を向上させる材料として中空粒子2の他に強度確保用焼失材3を含有している。この強度確保用焼失材3が母材4に添加されることにより、構造強度を低下させる中空粒子2を大量に添加する必要がなくなり、施工時の構造強度を高めることができると共に断熱性を向上させることができる。
【0016】
具体的には、強度確保用焼失材3は、図1(1)に示すように施工時には強度を確保する材料として機能し、予熱時には強度確保用焼失材3自体が焼失して、図1(2)に示すように耐火物の表面に形成される断熱層内に空間5が形成されることで断熱性を向上させる。
【0017】
なお、この実施例の強度確保用焼失材3は炭素繊維であるが、本発明の耐火物用断熱材における強度確保用焼失材は、これに限定されるものではなく、施工時の構造強度を高めることができると共に予熱時に焼失して断熱性を向上させることができるものであればどのようなものでもよく、例えば、炭素材が好適に使用できる。なお、本願において「炭素材」とは炭素を含む材料を言い、例えば炭素繊維、黒鉛粉末または樹脂繊維のうちのいずれかを単独で使用、またはそれらのうち2種以上の混合物が好適に使用できる。また、前記黒鉛粉末としては、鱗片状黒鉛、カーボンブラック、またはそれらの混合物が好適に使用できる。
【0018】
耐火物用断熱材1を構成する母材4としては、例えば、Al-SiO系化合物、Al、SiO、SiCの単体またはそれらの混合物が好適に使用できるが、それらに限定されるものではない。
【0019】
強度確保用焼失材2は、耐火物用断熱材1中に5~50重量%含有されていることが好ましい。強度確保用焼失材2が5重量%未満であると、施工時の構造強度を高める効果、および予熱時に焼失して形成される断熱層の断熱性を向上させる効果が十分でなくなり、他方、強度確保用焼失材2が50重量%を超えると、断熱材の強度が著しく低下してしまうためである。
【0020】
耐火物用断熱材1は、中空粒子2と強度確保用焼失材3と母材4との合計100重量%の外で、施工に際して結合剤として働き、乾燥時に硬化する働きを有する液状バインダーにて液状化されていることが好ましい。結合剤としては無機バインダーや有機バインダー、またはそれらの混合物が好適に使用できる。無機バインダーとしては、例えば、ケイ酸ソーダやケイ酸カリウム、リン酸ソーダ、コロイダルシリカ、またはそれらの混合物が好適に使用できる。有機バインダーとしては、例えば、フェノール樹脂、糖類の加水分解物または/および還元澱粉糖化物、糖蜜、メチルセルロース、澱粉、天然ゴム、カゼイン、酢酸ビニル、またはそれらの混合物が好適に使用できる。
【0021】
この実施例の耐火物用断熱材1は吹付断熱材であるため、スプレーガン等により耐火物20に吹付け施工するものであり、その際、水を添加して使用するものでもよいが、本発明の耐火物用断熱材1は吹付断熱材に限定されるものではなく、耐火物20の表面にローラーや刷毛等により塗布してもよく、その他、公知の各種施工方法にて施工可能なものは広く本発明の耐火物用断熱材に包含される。
【0022】
(具体的実施例)
強度確保用焼失材として炭素材(炭素繊維)を20重量%、中空粒子としてシリカ-アルミナ系中空粒子を20重量%、母材としてシリカ-アルミナ系粉末を60重量%、これらを混合して本発明の耐火物用断熱材の実施例を作製した。この実施例の耐火物用断熱材に液状バインダーを添加して吹付断熱材を作製し、耐火物(連続鋳造用ノズル)20の表面に吹き付けて乾燥させ断熱層を形成した。
【0023】
(比較例1)
中空粒子としてシリカ-アルミナ系中空粒子を20重量%、母材としてシリカ-アルミナ系粉末を80重量%、これらを混合して強度確保用焼失材を含有しない比較例1を作製した。この実施例の耐火物用断熱材に液状バインダーを添加して吹付断熱材を作製し、耐火物(連続鋳造用ノズル)20の表面に吹き付けて乾燥させ断熱層を形成した。
【0024】
(比較例2)
中空粒子としてシリカ-アルミナ系中空粒子を40重量%、母材としてシリカ-アルミナ系粉末を60重量%、これらを混合して強度確保用焼失材を含有しない比較例2を作製した。この実施例の耐火物用断熱材に液状バインダーを添加して吹付断熱材を作製し、耐火物(連続鋳造用ノズル)20の表面に吹き付けて乾燥させ断熱層を形成した。
【0025】
(断熱層の強度試験および試験結果)
比較例1、比較例2および実施例の耐火物用断熱材にて形成された断熱層の構造強度を測定したところ、図2の表の上段に示すように、比較例1による断熱層の構造強度は2.48N/mm、比較例2による断熱層の構造強度は0.67N/mm、実施例による断熱層の構造強度は2.39N/mmであった。これにより、比較例2の中空粒子40重量%のうち、20重量%を強度確保用焼失材に代替させた実施例では、断熱層の構造強度が高まることが確認された。
【0026】
(断熱層の熱伝導率試験および試験結果)
比較例1、比較例2および実施例の耐火物用断熱材にて形成された断熱層を、それぞれ1000℃で2時間焼成した後、熱伝導率を算出したところ、図2の表の下段に示すように、比較例1による断熱層の熱伝導率は0.70W/m・K、比較例2による断熱層の熱伝導率は0.42W/m・K、実施例による断熱層の熱伝導率は0.46W/m・Kであった。これにより、比較例2の中空粒子40重量%のうち、20重量%を強度確保用焼失材に代替させた実施例では、比較例2と同等レベルの断熱性を維持し、中空粒子を40重量%含有させた比較例2とほぼ同等の高い断熱性が確認された。
【0027】
(考察)
上記断熱層の強度試験結果および熱伝導率試験結果より、耐火物用断熱材に強度確保用焼失材を含有させることにより、中空粒子のみ母材に含有させたものに比して、断熱層の構造強度を高めることができると共に、断熱性も高いレベルで維持できることが確認された。
【符号の説明】
【0028】
1 耐火物用断熱材
2 中空粒子
3 強度確保用焼失材
4 母材
5 空間
10 予熱装置
20 連続鋳造用ノズル(耐火物)
21 吐出口
22 バーナー
30 母材
40 中空粒子
図1
図2
図3
図4