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特許7251843超音波診断装置及びそのためのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】超音波診断装置及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021559349
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2021030728
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】石黒 稔道
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-330966(JP,A)
【文献】特表2020-500685(JP,A)
【文献】特開平09-224934(JP,A)
【文献】特開2013-027468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0083068(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブを体表面に当てて超音波を照射したときの反射波を受信し、受信信号の振幅を輝度に変換して断層像を生成する画像処理を行って、表示装置の表示画面上に前記断層像を表示する超音波診断装置であって、
前記断層像内における生体内注目部位の周辺にて関心領域を設定する関心領域設定手段と、
設定された関心領域内に存在するピクセルごとの輝度の総和の値を算出する手段であって、前記ピクセルごとの輝度を高いものから順に並べて分布を作成し、その分布における上位の部分を抽出して総和の値を算出し、この算出によって得た結果を輝度総和値とする輝度総和値算出手段と、
算出された前記輝度総和値を前記生体内注目部位からの反射の強度として視覚化することにより、前記超音波プローブを前記体表面に当てるときの適切なスライス角を操作者が決定する作業を補助する反射強度視覚化手段と
を備えた超音波診断装置。
【請求項2】
前記反射強度視覚化手段は、前記輝度総和値のレベルを示すレベルメータ画像を生成し、前記表示装置は、前記レベルメータ画像を前記表示画面上に表示することを特徴とする請求項に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
超音波プローブを体表面に当てて超音波を照射したときの反射波を受信し、受信信号の振幅を輝度に変換して断層像を生成する画像処理を行って、表示装置の表示画面上に前記断層像を表示する超音波診断装置であって、
前記断層像内における生体内注目部位の周辺にて関心領域を設定する関心領域設定手段と、
設定された関心領域内に存在する全部または一部のピクセルごとの輝度の総和の値を算出する輝度総和値算出手段と、
算出された輝度総和値を前記生体内注目部位からの反射の強度として視覚化することにより、前記超音波プローブを前記体表面に当てるときの適切なスライス角を操作者が決定する作業を補助する反射強度視覚化手段と、
記スライス角を変更したときの前記輝度総和値の推移からその極大値を探索するとともに、探索した前記極大値から推奨スライス角範囲を表す好適輝度総和値範囲を設定し、前記輝度総和値との比較を行う極大値探索比較手段と、
前記極大値探索比較手段による比較の結果、前記輝度総和値が前記好適輝度総和値範囲から外れたときにその旨を通知する通知手段と
備えた音波診断装置。
【請求項4】
前記通知手段は、前記輝度総和値が前記好適輝度総和値範囲から外れた旨を、前記輝度総和値のレベルを示すレベルメータ画像上に重畳したマーキング表示、及び/または音によって通知することを特徴とする請求項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記極大値探索比較手段は、前記好適輝度総和値範囲に基づいて下限値を設定するとともに、その下限値にヒステリシス特性を持たせて前記輝度総和値との比較を行うことを特徴とする請求項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
超音波プローブを体表面に当てて超音波を照射したときの反射波を受信し、受信信号の振幅を輝度に変換して断層像を生成する画像処理を行って、表示装置の表示画面上に前記断層像を表示する超音波診断装置のためのプログラムであって、
前記超音波診断装置が備えるプロセッサに、
前記断層像内における生体内注目部位の周辺にて関心領域を設定する関心領域設定ステップと、
設定された関心領域内に存在するピクセルごとの輝度の総和の値を算出するステップであって、前記ピクセルごとの輝度を高いものから順に並べて分布を作成し、その分布における上位の部分を抽出して総和の値を算出し、この算出によって得た結果を輝度総和値とする輝度総和値算出ステップと、
算出された前記輝度総和値を前記生体内注目部位からの反射の強度として視覚化する反射強度視覚化ステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項7】
超音波プローブを体表面に当てて超音波を照射したときの反射波を受信し、受信信号の振幅を輝度に変換して断層像を生成する画像処理を行って、表示装置の表示画面上に前記断層像を表示する超音波診断装置のためのプログラムであって、
前記超音波診断装置が備えるプロセッサに、
前記断層像内における生体内注目部位の周辺にて関心領域を設定する関心領域設定ステップと、
設定された関心領域内に存在する全部または一部のピクセルごとの輝度の総和の値を算出する輝度総和値算出ステップと、
算出された輝度総和値を前記生体内注目部位からの反射の強度として視覚化する反射強度視覚化ステップと
前記スライス角を変更したときの前記輝度総和値の推移からその極大値を探索するとともに、探索した前記極大値から推奨スライス角範囲を表す好適輝度総和値範囲を設定し、前記輝度総和値との比較を行う極大値探索比較ステップと、
前記極大値探索比較ステップでの比較の結果、前記輝度総和値が前記好適輝度総和値範囲から外れたときにその旨を通知する通知ステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の送受信により得た情報に基づいて生体内部の様子を画像化する超音波診断装置及びそのためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体内部の様子を画像化するための簡便で安全性の高い診断装置として、超音波診断装置がよく知られている。この種の超音波診断装置では、体表面に当てた超音波プローブから超音波を送信し、その超音波の反射波を受信する。受信した反射波信号に対しては、振幅を輝度に変換する画像処理(Bモード処理)が行われることで、断層像を表示するためのデータが生成される。
【0003】
そして、このデータに基づいて表示装置の表示画面上に断層像が表示されるようになっている(例えば特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-012427号公報
【文献】特開2010-259678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、超音波プローブを体表面に当てて断層像を得る場合、生体内にある注目部位や組織を捉えているかどうかは断層像を見ればわかるため、超音波プローブを体表面の正しい箇所に当てることは比較的容易である。
【0006】
しかしながら、超音波プローブを体表面の正しい箇所に当てることができたとしても、超音波プローブを体表面に対して直角に当てることが必ずしも良いとは限らない。例えば、生体内にある注目部位の表面が体表面と平行であれば、超音波プローブを体表面の正しい箇所にて直角に当てて超音波を送信することにより、注目部位の表面に直交して入射する超音波ビームで注目部位をスキャンすることができる。従って、注目部位からの反射強度が大きくなり、結果として鮮明な断層像が得やすくなる。
【0007】
ところが、生体内にある注目部位は肉眼では見ることができないため、注目部位の表面が体表面と平行であるかどうかは把握しにくく、注目部位の表面が体表面に対して傾斜していることもある。この場合、超音波プローブを体表面の正しい箇所にて直角に当てて超音波を送信しても、注目部位の表面に超音波ビームを直交して入射させることができず、大きな反射強度が得られない。ちなみに、図6(a)は、生体101内にある注目部位102の表面103と体表面104とが平行であるときの様子を示している。この状態で超音波プローブ105を体表面104に直角に当てて超音波を送信すると、反射されて返ってくる超音波ビーム106の強度は大きくなる。これに対し、図6(b)は、生体101内にある注目部位102の表面103と体表面104とが平行でないときの様子を示している。この状態で超音波プローブ105を体表面104に直角に当てて超音波を送信すると、反射されて返ってくる超音波ビーム106の強度は小さくなる。
【0008】
それゆえ、超音波診断装置を操作する者は、注目部位102からの反射強度が最も大きくなるように超音波プローブ105を傾ける角度(スライス角)を適宜調整し、適切なスライス角を見つけ出したうえで対象部位を超音波ビーム106でスキャンする必要がある。このような作業は知識や経験がある熟練者にとってはそれほど困難ではないが、知識や経験に乏しい不慣れな者にとっては必ずしも容易ではない。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、知識や経験に乏しい不慣れな者であっても比較的容易に鮮明な断層像を得ることができる超音波診断装置及びそのためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、超音波プローブを体表面に当てて超音波を照射したときの反射波を受信し、受信信号の振幅を輝度に変換して断層像を生成する画像処理を行って、表示装置の表示画面上に前記断層像を表示する超音波診断装置であって、前記断層像内における生体内注目部位の周辺にて関心領域を設定する関心領域設定手段と、設定された関心領域内に存在するピクセルごとの輝度の総和の値を算出する手段であって、前記ピクセルごとの輝度を高いものから順に並べて分布を作成し、その分布における上位の部分を抽出して総和の値を算出し、この算出によって得た結果を輝度総和値とする輝度総和値算出手段と、算出された前記輝度総和値を前記生体内注目部位からの反射の強度として視覚化することにより、前記超音波プローブを前記体表面に当てるときの適切なスライス角を操作者が決定する作業を補助する反射強度視覚化手段とを備えた超音波診断装置をその要旨とする。
【0011】
従って、請求項1に記載の発明によると、輝度総和値算出手段は、関心領域内に存在するピクセルごとの輝度の総和の値を算出する。反射強度視覚化手段は、算出された輝度総和値を、生体内注目部位からの反射の強度として視覚化する。その結果、装置の操作者は、生体内注目部位からの反射強度を視認できるようになり、超音波プローブを体表面に当てるときの適切なスライス角を決定しやすくなる。
【0012】
上記発明では、前記輝度総和値算出手段は、前記ピクセルごとの輝度を高いものから順に並べて分布を作成し、その分布において上位の部分を抽出して総和の値を算出し、この算出によって得た結果を前記輝度総和値とする
【0013】
例えば、関心領域内に存在する全てのピクセルを輝度総和値の算出対象としたとき、生体内注目部位の種類によっては、超音波プローブを操作してスライス角を変更しても反射強度の変化が小さく、適切なスライス角を見出しにくい場合がある。これに対して上記発明では、関心領域内に存在する一部のピクセル(輝度分布における上位の部分のピクセル)を輝度総和値の算出対象としている。そのため、全てのピクセルを輝度総和値の算出対象とする場合に比べて、反射強度の変化が大きくなる。よって、反射強度が最大値付近となる適切なスライス角を決定しやすくなる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項において、前記反射強度視覚化手段は、前記輝度総和値のレベルを示すレベルメータ画像を生成し、前記表示装置は、前記レベルメータ画像を前記表示画面上に表示することをその要旨とする。
【0015】
従って、請求項に記載の発明によると、表示画面上に表示されたレベルメータ画像を視認することができる。このため、ファン操作を行った場合の生体内注目部位からの反射強度を容易に把握することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、超音波プローブを体表面に当てて超音波を照射したときの反射波を受信し、受信信号の振幅を輝度に変換して断層像を生成する画像処理を行って、表示装置の表示画面上に前記断層像を表示する超音波診断装置であって、 前記断層像内における生体内注目部位の周辺にて関心領域を設定する関心領域設定手段と、設定された関心領域内に存在する全部または一部のピクセルごとの輝度の総和の値を算出する輝度総和値算出手段と、算出された輝度総和値を前記生体内注目部位からの反射の強度として視覚化することにより、前記超音波プローブを前記体表面に当てるときの適切なスライス角を操作者が決定する作業を補助する反射強度視覚化手段と、前記スライス角を変更したときの前記輝度総和値の推移からその極大値を探索するとともに、探索した前記極大値から推奨スライス角範囲を表す好適輝度総和値範囲を設定し、前記輝度総和値との比較を行う極大値探索比較手段と、前記極大値探索比較手段による比較の結果、前記輝度総和値が前記好適輝度総和値範囲から外れたときにその旨を通知する通知手段とを備えた超音波診断装置をその要旨とする。
【0017】
従って、請求項に記載の発明によると、請求項1に記載の発明の上記効果に加えて、以下の効果を奏する。即ち、操作者がスライス角を変更する操作を行うと、極値探索比較手段が輝度総和値の極大値を探索し、探索した前記極大値から好適輝度総和値範囲を設定して輝度総和値との比較を行う。輝度総和値が好適輝度総和値範囲から外れたとき、つまり輝度総和値が推奨スライス角範囲から外れたときには、通知手段がその旨を通知するため、操作者はスライス角が適切ではないことを容易に把握することができる。よって、反射強度が最大値付近となる適切なスライス角となるように、超音波プローブを操作して修正することができる。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項において、前記通知手段は、前記輝度総和値が前記好適輝度総和値範囲から外れた旨を、前記輝度総和値のレベルを示すレベルメータ画像上に重畳したマーキング表示、及び/または音によって通知することをその要旨とする。
【0019】
従って、請求項に記載の発明によると、レベルメータ画像のみにより通知する場合に比較して、操作者はスライス角が適切ではないことをより容易にかつ確実に把握することができる。
【0020】
請求項に記載の発明は、請求項において、前記極大値探索比較手段は、前記好適輝度総和値範囲に基づいて下限値を設定するとともに、その下限値にヒステリシス特性を持たせて前記輝度総和値との比較を行うことをその要旨とする。
【0021】
従って、請求項に記載の発明によると、ヒステリシス特性を持たせた下限値と輝度総和値との比較を行うことにより、通知手段による通知が必要以上に頻繁に行われる煩わしさが解消される。よって、装置の使い勝手が向上する
請求項6に記載の発明は、超音波プローブを体表面に当てて超音波を照射したときの反射波を受信し、受信信号の振幅を輝度に変換して断層像を生成する画像処理を行って、表示装置の表示画面上に前記断層像を表示する超音波診断装置のためのプログラムであって、前記超音波診断装置が備えるプロセッサに、前記断層像内における生体内注目部位の周辺にて関心領域を設定する関心領域設定ステップと、設定された関心領域内に存在するピクセルごとの輝度の総和の値を算出するステップであって、前記ピクセルごとの輝度を高いものから順に並べて分布を作成し、その分布における上位の部分を抽出して総和の値を算出し、この算出によって得た結果を輝度総和値とする輝度総和値算出ステップと、算出された前記輝度総和値を前記生体内注目部位からの反射の強度として視覚化する反射強度視覚化ステップとを実行させるためのプログラムをその要旨とする。
【0022】
請求項7に記載の発明は、超音波プローブを体表面に当てて超音波を照射したときの反射波を受信し、受信信号の振幅を輝度に変換して断層像を生成する画像処理を行って、表示装置の表示画面上に前記断層像を表示する超音波診断装置のためのプログラムであって、前記超音波診断装置が備えるプロセッサに、前記断層像内における生体内注目部位の周辺にて関心領域を設定する関心領域設定ステップと、設定された関心領域内に存在する全部または一部のピクセルごとの輝度の総和の値を算出する輝度総和値算出ステップと、算出された輝度総和値を前記生体内注目部位からの反射の強度として視覚化する反射強度視覚化ステップと、前記スライス角を変更したときの前記輝度総和値の推移からその極大値を探索するとともに、探索した前記極大値から推奨スライス角範囲を表す好適輝度総和値範囲を設定し、前記輝度総和値との比較を行う極大値探索比較ステップと、前記極大値探索比較ステップでの比較の結果、前記輝度総和値が前記好適輝度総和値範囲から外れたときにその旨を通知する通知ステップとを実行させるためのプログラムをその要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、請求項1~7に記載の発明によると、知識や経験に乏しい不慣れな者であっても比較的容易に鮮明な断層像を得ることができる超音波診断装置及びそのためのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を具体化した一実施形態の超音波診断装置を示す正面図。
図2】同装置の電気的構成を示すブロック図。
図3】(a)~(c)は、同装置におけるレベルメータ画像を示す概略図。
図4】(a)、(b)は、手指の根本付近の断層像を示す写真。
図5】(a)、(b)は、胸部の断層像を示す写真。
図6】(a)、(b)は従来の超音波診断装置を用いた場合の問題点を説明するための概略図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を超音波診断装置に具体化した一実施の形態を図1図5に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態の超音波診断装置11を示す正面図であり、図2は、その超音波診断装置11の電気的構成を示すブロック図である。
【0026】
図1及び図2に示されるように、この超音波診断装置11は、装置本体12と、その装置本体12に接続される超音波プローブ13とを備えている。超音波プローブ13は、信号ケーブル14と、信号ケーブル14の先端に接続されるプローブヘッド15と、信号ケーブル14の基端に設けられるプローブ側コネクタ16とを備えている。装置本体12には本体側コネクタ17が設けられ、その本体側コネクタ17には超音波プローブ13のプローブ側コネクタ16が着脱可能に接続されている。
【0027】
図2に示されるように、超音波プローブ13のプローブヘッド15は、直線状に配置された複数の超音波振動子15aを有している。超音波プローブ13の使用時には、プローブヘッド15を対象物である生体(ここでは人体)18の体表面19に対して接触させ、この状態で超音波を送受信する。超音波プローブ13の形式は特に限定されないが、本実施形態のものはリニア型プローブであり、例えば5MHzの超音波を発信する。この超音波プローブ13では、超音波放射面上に設けた図示しない音響レンズによって、複数の超音波振動子15aが並んでいるプローブヘッド長手方向と直交する方向(即ちプローブヘッド短手方向)にビームが集束するように構成されている。
【0028】
装置本体12は、コントローラ21、パルス発生回路22、送信回路23、受信回路24、メモリ26、記憶装置27、表示装置28、入力装置29、スピーカ30等を備えている。
【0029】
コントローラ21は、周知の中央処理装置(CPU)を含んで構成されており、メモリ26を利用して所定の制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。なお、この制御プログラムのなかには、適切なスライス角の決定を補助するためのプログラムをはじめとして各種のプログラムが含まれる。
【0030】
表示装置28は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ、投影式ディスプレイなどのカラーディスプレイであり、生体組織の断層像や血流画像を表示したり、各種設定の入力画面を表示したりするために用いられる。
【0031】
入力装置29は、例えばキーボード、スイッチ類、各種のポインティング・デバイスなどによって構成されており、作業者からの指示の入力、パラメータの入力、関心領域R1を設定する際の入力などに用いられる。なお、ポインティング・デバイスの例としては、タッチパッド、タッチパネル、マウス、ペンタブレット、トラックボール、ジョイスティックなどを挙げることができる。
【0032】
記憶装置27は、例えば磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置などであり、制御プログラム及び各種のデータを記憶している。コントローラ21は、入力装置29による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置27からメモリ26へ転送し、それを逐次実行する。なお、コントローラ21が実行するプログラムは、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、CD、DVD、BD等の光ディスク、USBメモリ、フラッシュメモリ、SDカード等の半導体メモリなどの記憶媒体に記憶されたプログラムでもよいほか、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよい。このようなプログラムは、実行される前に記憶装置27にインストールされる。
【0033】
スピーカ30は音声を出力するための装置であって、ここでは後述する通知音を出力する。通知音としては特に限定されるわけではなく、広く各種の音を使用することができる。
【0034】
パルス発生回路22は、コントローラ21からの制御信号に応答して動作し、所定周期のパルス信号を生成して出力する。
【0035】
送信回路23は、超音波プローブ13における超音波振動子15aの素子数に対応した複数の遅延回路(図示略)を含んでいる。この送信回路23は、パルス発生回路22から出力されるパルス信号に基づき、各超音波振動子15aに応じて遅延させた駆動パルスを出力する。各駆動パルスの遅延時間は、超音波プローブ13から出力される超音波が所定の照射点で焦点を結ぶように設定されている。
【0036】
受信回路24は、超音波プローブ13における各超音波振動子15aが受信した各反射波信号(エコー信号)を増幅する。
【0037】
本実施形態の信号処理部25は、受波処理部31、輝度変換部32、画像処理部34等を備えている。
【0038】
受波処理部31は、輝度変換を行う前に反射波信号を処理する部分である。より具体的にいうと、受波処理部31は、受信回路24によって増幅された各反射波信号を入力し、受信指向性を考慮した遅延時間を反射波信号に付加した後に整相加算する。この加算によって、各超音波振動子15aが受信した反射波信号の位相差が調整される。
【0039】
輝度変換部32は、図示しない対数変換回路、包絡線検波回路、A/D変換回路などから構成されている。輝度変換部32は、位相差が調整された前記反射波信号に基づいて信号強度を輝度に変換する処理(即ちBモード処理)を行い、断層像D1を得るためのBモードデータを生成する。対数変換回路は反射波信号を対数変換し、包絡線検波回路は対数変換回路の出力信号の包絡線を検波する。また、A/D変換回路は、包絡線検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0040】
画像処理部34は、輝度変換部32から出力される信号に基づいて所定の画像処理を行い、断層像D1(Bモード画像)の画像データを生成する。具体的には、画像処理部34は、反射波信号の振幅(信号強度)に応じた輝度の画像表示データを生成する。画像処理部34で生成された画像表示データは逐次メモリ26に記憶される。そして、そのメモリ26に記憶された1フレーム分の画像表示データに基づいて、生体18内部の断層像D1が白黒の濃淡で表示装置28の表示画面28aに表示される。つまり、本実施形態において表示される断層像D1は、単色画像(モノトーン画像)である。
【0041】
次に、本実施形態の超音波診断装置11における適切スライス角決定補助機構について説明する。この適切スライス角決定補助機構は、操作者が超音波プローブ13のファン操作を行って適切なスライス角を決定するときの作業を補助するための機構である。そのためにこの超音波診断装置11は、関心領域設定手段、輝度総和値算出手段、反射強度視覚化手段等を備えている。
【0042】
関心領域設定手段であるコントローラ21は、入力装置29からの指示信号に基づいて、表示装置28の断層像D1内に関心領域R1を設定する。関心領域R1が設定されると、関心領域R1を示す線分画像が断層像D1に重畳される。関心領域R1を示す線分画像の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、四角形などとすることができる。また、このときの線分は着色された実線や破線などであってもよいほか、線状に配置されたドットであってもよい。
【0043】
設定された関心領域R1内には多数のピクセルが存在しており、これらピクセルは個々に輝度データを有している。輝度総和値算出手段としての輝度総和値算出部41は、画像処理部34を介して得たピクセルごとの輝度データに基づいて、当該輝度の値を加算する。そして、輝度総和値算出部41は、設定された関心領域内R1に存在するピクセルごとの輝度の総和の値(即ち「輝度総和値」)を算出する。なお、輝度総和値算出部41は、1フレームの画像に基づいて輝度総和値を算出してもよいほか、隣接する複数フレームの画像に基づきフレーム間平均値を求めてこれを平滑化することで輝度総和値を算出してもよい。
【0044】
反射強度視覚化手段としてのレベルメータ画像生成部42は、輝度総和値算出部41によって算出された輝度総和値を、生体内注目部位P1からの反射の強度として視覚化する。本実施形態において具体的には、レベルメータ画像生成部42は、輝度総和値のレベルを示すレベルメータ画像G1を生成する。レベルメータ画像G1は画像処理部34を介して表示装置28に出力され、その結果としてレベルメータ画像G1を表示装置28が表示画面28a上に表示する。
【0045】
図3(a)に示されるように、本実施形態のレベルメータ画像G1は縦長の矩形状を呈している。このレベルメータ画像G1は、枠画像61と、伸縮バー画像62と、マーキング画像63、64、65とを含んで構成されている。伸縮バー画像62は、枠画像61の範囲内にて縦方向(上下方向)に伸縮するように表示される。伸縮バー画像62は、輝度総和値のレベルに応じて上下する。例えば、輝度総和値が増加すると伸縮バー画像62は伸長し(図3(b)参照)、輝度総和値が減少すると伸縮バー画像62は短縮する(図3(c)参照)。
【0046】
この超音波診断装置11は、適切スライス角決定補助機構の一部をなす構成として、極大値探索比較手段と通知手段とをさらに備えている。
【0047】
極大値探索比較手段としての極大値探索比較部43は、スライス角を変更したときの輝度総和値の推移から、輝度総和値の極大値を探索する。そして極大値探索比較部43は、探索した極大値から推奨スライス角範囲を表す好適輝度総和値範囲を設定し、その設定した好適輝度総和値範囲と輝度総和値との比較を行う。ここで「推奨スライス角範囲」とは、生体内注目部位P1からの反射強度が最大値付近となるスライス角の範囲であって、操作者自らが適切なスライス角を決定するにあたり推奨されるスライス角の範囲のことを指す。
【0048】
通知手段としての通知部44は、極大値探索比較部43によって好適輝度総和値範囲と輝度総和値とを比較した結果、輝度総和値が好適輝度総和値範囲から外れたとき、つまり輝度総和値が推奨スライス角範囲から外れたときにその旨を通知する。特に本実施形態の通知部44は、輝度総和値が好適輝度総和値範囲(推奨スライス角範囲)から外れた旨を、輝度総和値のレベルを示すレベルメータ画像G1上に重畳したマーキング表示により視覚を通じて通知する。
【0049】
具体的にいうと、上記のマーキング表示は、図3に示されるように、第1マーキング画像63、第2マーキング画像64及び第3マーキング画像65からなる。第1マーキング画像63、第2マーキング画像64及び第3マーキング画像65は、いずれも枠画像61を横方向(左右方向)に横切る線分として表示される。
【0050】
第1マーキング画像63は、第2マーキング画像64及び第3マーキング画像65よりも上方位置に表示される。第1マーキング画像63は、輝度総和値の極大値を示す画像であり、伸縮バー画像62の最高到達点に対応して表示される。これに対して、第3マーキング画像65は最も下方位置に表示される。
【0051】
第2マーキング画像64は好適輝度総和値範囲(即ち推奨スライス角範囲)の下限値を示す画像であり、第3マーキング画像65よりも上方位置に表示される。なお、第2マーキング画像64は、第1マーキング画像63と第3マーキング画像65とのちょうど中間に位置するように表示される。そして、第1マーキング画像63と第2マーキング画像64との間の領域が、好適輝度総和値範囲(即ち推奨スライス角範囲に対応したものとなる。
【0052】
また、本実施形態の通知部44は、輝度総和値が好適輝度総和値範囲(推奨スライス角範囲)から外れた旨を、マーキング表示によって通知するばかりでなく、音により聴覚を通じても通知する。本実施形態では、輝度総和値が好適輝度総和値範囲(推奨スライス角範囲)の下限値を下回った場合、つまり伸縮バー画像62の上端が第2マーキング画像64よりも下になった場合に(図3(c)参照)、通知部44は、警報音として例えば「ピー」という音を生成する。すると、その生成した警報音がスピーカ30から出力される。
【0053】
次に、本実施形態の超音波診断装置11の動作手順を説明する。この動作は、作業者(例えば医師)が生体(患者)18の体表面19に超音波プローブ13を接触させ、入力装置29に設けられている開始スイッチを操作したときに開始する。
【0054】
まず、コントローラ21は、超音波診断に関する情報として、被検体の識別番号、年齢、診断日時などの管理情報、画像表示の表示方向や表示レンジなどの設定情報等の入力を促すメッセージを表示装置28の入力画面に表示する。ここで、作業者により入力装置29のキーボードやトラックボール等が操作されて、各種情報が入力される。コントローラ21は、その情報を取り込みメモリ26に一旦記憶する。
【0055】
各種情報の入力が完了した後、コントローラ21は、パルス発生回路22を動作させ、超音波プローブ13による超音波の送受信を開始させる。具体的には、コントローラ21から出力される制御信号に応答してパルス発生回路22が動作し、所定周期のパルス信号が送信回路23に供給される。そして、送信回路23では、パルス信号に基づいて各超音波振動子15aに対応した遅延時間を有する駆動パルスが生成され、かつ超音波プローブ13に供給される。これにより、超音波プローブ13の各超音波振動子15aが振動して超音波が生体18の内部の組織20に向けて照射される。生体18の内部を伝搬する超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる組織20の表面20aなどで反射して超音波プローブ13で受信される。このとき、超音波プローブ13の各超音波振動子15aによって反射波が電気信号(反射波信号)に変換される。そして、その反射波信号は、受信回路24で増幅等された後、信号処理部25に出力される。
【0056】
続いてコントローラ21は、受信回路24からの信号を信号処理部25の受波処理部31に入力する。受波処理部31を経て位相差調整された反射波信号は、輝度変換部32にてBモード処理される。その後、画像処理部34では、輝度変換部32から出力される信号に基づいて、断層像D1の画像データを生成するための画像処理が行われる。そして、コントローラ21は、断層像D1の画像データをメモリ26に一旦記憶させる。
【0057】
ここで操作者は、入力装置29を操作することにより、表示されている断層像D1内において、所望とする場所に所望とする形状及び大きさの関心領域R1を指定する。すると、関心領域R1の設定を要求する制御信号が入力装置29によって入力され、それを契機としてコントローラ21が、断層像D1内に関心領域R1を設定する。このようにして設定された関心領域R1は、生体18において操作者が観察したい組織20の生体内注目部位P1に対応したものとなる。
【0058】
所望とする位置に関心領域R1が設定された後、輝度総和値算出部51は、画像処理部34を介して得たピクセルごとの輝度データに基づいて、関心領域内R1における輝度総和値を算出する。
【0059】
次に、レベルメータ生成部42は、そのときの輝度総和値のレベルを示す伸縮バー画像62を含むレベルメータ画像G1を生成し、その画像データを表示装置28に出力する。その結果、表示装置28が表示画面28a上における断層像D1の右脇に、レベルメータ画像G1を表示する。
【0060】
次に、操作者は超音波ビームでスキャンを行いながら、スライス角を変更するファン操作を行う。その間、輝度総和値算出部51は、随時、関心領域内R1における輝度総和値を算出する。生体内注目部位P1からの反射強度が大きくなるようにスライス角を変更した場合には、輝度総和値が増加する結果、レベルメータ画像G1の伸縮バー画像62が伸長する。逆に生体内注目部位P1からの反射強度が小さくなるようにスライス角を変更した場合には、輝度総和値が減少する結果、レベルメータ画像G1の伸縮バー画像62が短縮する。
【0061】
すると、極大値探索比較部43は、一連のファン操作に基づく輝度総和値の推移から、輝度総和値の極大値を探索するとともに、探索した極大値から推奨スライス角範囲を表す好適輝度総和値範囲を設定する。このとき、レベルメータ生成部42は、それぞれ所定の位置に第1マーキング画像63、第2マーキング画像64及び第3マーキング画像65を表示する。ファン操作を行っている間、極大値探索比較部43は、設定した好適輝度総和値範囲(即ち推奨スライス角範囲)と輝度総和値との比較を行う。
【0062】
例えば、操作者がレベルメータ画像G1を見たときに、伸縮バー画像62が第1マーキング画像63と第2マーキング画像64との間に位置していれば、現在の輝度総和値が好適輝度総和値範囲内にあること、即ち現在のスライス角が推奨スライス角範囲内にあることを視認することができる(図3(a)、図3(b)参照)。なお、このとき警報音は鳴っていないため、その事実からも好適輝度総和値範囲内(即ち推奨スライス角範囲内)にあることを認識することができる。この場合、操作者は自らの判断でその位置にてスライス角を決定してもよい。あるいは、さらにファン操作を行って、伸縮バー画像62がさらに伸張する位置を探した後、スライス角を決定してもよい。このように適切なスライス角が決定できたら、操作者は、この条件で超音波ビームのスキャンを行って得た断層像D1を用いることで、注目部位P1の観察を行う。
【0063】
ここで、操作者がレベルメータ画像G1を見たときに、伸縮バー画像62が第2マーキング画像64よりも下に位置していれば、現在の輝度総和値が好適輝度総和値範囲外にあること、即ち現在のスライス角が推奨スライス角範囲外にあることを視認することができる(図3(c)参照)。このときには警報音が鳴るため、作業者は聴覚を通じて好適輝度総和値範囲外(即ち推奨スライス角範囲外)にあることを認識することができる。この場合、操作者は再びファン操作を行い、伸縮バー画像62が第2マーキング画像64よりも上に位置するようにして、スライス角を適正化することができる。
【0064】
図4(a)、図4(b)は、ともに手指(中指第三関節部)付近に超音波プローブ13を当てた状態で超音波の送受信を行って取得した断層像D1の写真である。これらの断層像D1内において中央部上寄りの位置には、横長楕円形状の関心領域R1が設定されている。ここでは屈筋腱の観察を目的としていることから、関心領域R1は生体内注目部位P1である屈筋腱に対応している。
【0065】
適切なスライス角を決定する前の図4(a)では、関心領域R1内の輝度が低くて全体的に暗くなっており、所望とする屈筋腱の断層像が得られていない。その理由としては、生体内注目部位P1からの反射強度が小さいことが原因である。これに対し、ファン操作により適切なスライス角を決定した後の図4(b)では、生体内注目部位P1からの反射強度が十分大きくなっている。それゆえ、関心領域R1内の輝度が高くて全体的に明るくなっており、所望とする鮮明な屈筋腱の断層像が得られていることがわかる。
【0066】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0067】
(1)本実施形態の超音波診断装置11は、上記のような関心領域設定手段、輝度総和値算出手段及び反射強度視覚化手段を備えることを特徴としている。このため、算出された輝度総和値が生体内注目部位P1からの反射の強度として視覚化される。その結果、操作者は、生体内注目部位P1からの反射強度を視認できるようになり、超音波プローブ13を体表面19に当てるときの適切なスライス角を決定しやすくなる。従って、この超音波診断装置11によれば、知識や経験に乏しい不慣れな者であっても、比較的容易に鮮明な断層像D1を得ることが可能となる。
【0068】
(2)本実施形態の超音波診断装置11では、表示画面28a上に表示されたレベルメータ画像G1を視認することで、ファン操作を行った場合の生体内注目部位P1からの反射強度を容易に把握することができる。また、このレベルメータ画像G1によれば、反射強度の増減をリアルタイムで感覚的に把握することができる。
【0069】
(3)本実施形態の超音波診断装置11は、上記のような極大値探索比較部43及び通知部44を備えることを特徴としている。このため、推奨スライス角範囲を表す好適輝度総和値範囲と、輝度総和値との比較の結果、輝度総和値が好適輝度総和値範囲から外れたときには、通知部44がその旨を通知する。ゆえに、操作者はスライス角が適切ではないことを容易に把握することができる。よって、反射強度が最大値付近となる適切なスライス角となるように、超音波プローブ13を操作して修正することができる。特に本実施形態の通知部44は、輝度総和値が好適輝度総和値範囲から外れた旨を、レベルメータ画像G1上に重畳したマーキング表示と、音との2つの方法によって通知する。従って、レベルメータ画像G1のみにより通知する場合に比較して、操作者はスライス角が適切ではないことをより容易にかつ確実に把握することができる。また、操作者が表示画面28aを見なくても音を聞くことでスライス角の適否を把握することができるため、作業に集中することができるという利点がある。
【0070】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、関心領域R1内に存在する全てのピクセルを輝度総和値の算出対象としたが、これに限定されず、例えば関心領域R1内に存在する一部のピクセルを輝度総和値の算出対象としてもよい。具体的には、まずピクセルごとの輝度を高いものから順に並べて分布(輝度分布)を作成する。その輝度分布において上位の部分(即ち比較的高輝度のピクセル)を抽出して総和の値を算出する。そして、この算出によって得た結果を輝度総和値として用いるようにする。なお、輝度分布における上位部分を抽出するにあたり、その割合は限定されないが、例えば分布全体の10%~50%程度とすればよい。この方法によると、全てのピクセルを輝度総和値の算出対象とする場合に比べて、反射強度の変化を大きくすることができる。よって、反射強度が最大値付近となる適切なスライス角を決定しやすくなる。
【0072】
図5(a)、図5(b)は、ともに胸部に超音波プローブ13を当てた状態で超音波の送受信を行って取得した断層像D1の写真である。これらの断層像D1内において中央部上寄りの位置には、図4(a)、図4(b)のときよりもさらに横長の楕円形状の関心領域R1が設定されている。ここでは筋肉と表在臓器(例えば肺)との境界面の観察を目的としていることから、関心領域R1はその部分に対応して設定されている。
【0073】
ちなみに、図5(a)と図5(b)とを比較すると、前者では関心領域R1内の境界面の断層像が暈けて暗くなっているのに対し、後者では関心領域R1内の境界面の断層像がシャープで明るくなっている。ところが、上記実施形態のように関心領域R1内に存在する全てのピクセルを輝度総和値の算出対象とした場合には、図5(a)と図5(b)とで輝度総和値の差は生じにくい。それゆえ、超音波プローブ13をファン操作してスライス角を変更しても、レベルメータ画像G1の伸縮バー画像62の伸縮変化が小さく、適切なスライス角を決定することが困難である。しかしながら、比較的高輝度のピクセルを抽出して輝度総和値を算出すれば、輝度総和値の差が生じやすくなる。その結果、レベルメータ画像G1の伸縮バー画像62の伸縮変化を大きくすることができる。よって、肺のような表在臓器を対象とした場合であっても、反射強度が最大値付近となる適切なスライス角を容易に決定することが可能となる。ちなみに、関心領域R1内の全てのピクセルを輝度総和値の算出対象とするモードと、関心領域R1内の一部のピクセルを輝度総和値の算出対象とするモードとを、観察対象に応じて適宜選択できるように構成してもよい。
【0074】
・上記実施形態では、極大値探索比較部43は、好適輝度総和値範囲に基づいて設定された下限値を特に変更せずに比較を行うように構成されていたが、これに限定されず、当該下限値を適宜変更しながら比較を行うように構成されていてもよい。具体的にいうと、好適輝度総和値範囲に基づいて下限値を設定するとともに、その設定した下限値にヒステリシス特性を持たせて輝度総和値との比較を行うようにしてもよい。つまり、輝度総和値が下限値を下回ったときには、下限値が今までより若干高めになるように、極大値探索比較部43が設定変更を行う。逆に、輝度総和値が下限値を上回ったときには、下限値が今までより若干低めになるように、極大値探索比較部43が設定変更を行う。このようにすることで、通知部44による通知が必要以上に頻繁に行われる煩わしさ(言い換えるとチャタリングによる煩わしさ)が解消される。よって、装置11の使い勝手が向上する。
【0075】
・上記実施形態では、輝度総和値が好適輝度総和値範囲から外れたときに「ピー」という警報音が鳴って警告されるように構成したが、これに限定されない。例えば、「ピー」という単純な警報音に代えて、メッセージ性を有する音声などによって警告してもよい。また、輝度総和値が好適輝度総和値範囲内のときに音を鳴らし、当該範囲外のときに音を消すようにしてもよいほか、好適輝度総和値範囲の内外で音色を変えるようにしてもよい。
【0076】
・上記実施形態では、図3に示したようなレベルメータ画像G1を表示画面28a上に表示することにより、生体内注目部位P1からの反射強度を視覚化したが、これに限定されない。例えば、レベルメータ画像G1に代えて、文字、数字、記号などを用いて表示を行ったり、あるいはアイコンを用いて表示を行ったりすることで、生体内注目部位P1からの反射強度を視覚化してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、人体を対象とした超音波診断装置11の例を挙げて説明したが、人間以外の動物、例えばウシ、ウマ、ブタ等の家畜を対象とした超音波診断装置11に本発明を適用しても勿論よい。
【0078】
・上記実施形態における超音波プローブ13に、例えば加速度センサ等のセンシング手段を設けてもよい。この場合、ファン操作を行う際の傾斜角度や傾斜方向などを検知し、その検知結果を表示画面28a上に表示することで、スライス角の決定を補助するように構成することができる。
【符号の説明】
【0079】
11…超音波診断装置
13…超音波プローブ
19…体表面
21…関心領域設定手段としてのコントローラ
28…表示装置
28a…表示画面
41…輝度総和値算出手段としての輝度総和値算出部
42…反射強度視覚化手段としてのレベルメータ画像生成部
43…極大値探索比較手段としての極大値探索比較部
44…通知手段としての通知部
D1…断層像
G1…レベルメータ画像
P1…生体内注目部位
R1…関心領域
【要約】
知識や経験に乏しい不慣れな者でも比較的容易に鮮明な断層像を取得できる超音波診断装置の提供を目的とする。この超音波診断装置11は、関心領域設定手段21と輝度総和値算出手段41と反射強度視覚化手段42とを備える。関心領域設定手段21は、断層像D1内の生体内注目部位P1の周辺にて関心領域R1を設定する。輝度総和値算出手段41は、設定された関心領域R1内に存在するピクセルごとの輝度の総和の値を算出する。反射強度視覚化手段42は、算出された輝度総和値を生体内注目部位P1からの反射の強度として視覚化する。その結果、超音波プローブ13を体表面19に当てるときの適切なスライス角を操作者が決定する作業が補助される。選択図:図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6