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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】脂肪酸エステル混合物
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/34 20060101AFI20230328BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20230328BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20230328BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20230328BHJP
   C10N 40/22 20060101ALN20230328BHJP
   C10N 40/24 20060101ALN20230328BHJP
【FI】
C10M105/34
C10N20:00 A
C10N30:02
C10N40:20 Z
C10N40:22
C10N40:24
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022041065
(22)【出願日】2022-03-16
【審査請求日】2022-11-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591066362
【氏名又は名称】築野食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】築野 卓夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 弥
(72)【発明者】
【氏名】福 和真
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2444388(EP,A1)
【文献】特開2012-172118(JP,A)
【文献】特開2012-102235(JP,A)
【文献】特開2012-052135(JP,A)
【文献】特開2010-215767(JP,A)
【文献】特開平03-021697(JP,A)
【文献】特開昭55-104231(JP,A)
【文献】特開昭51-065271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動点FAを有する脂肪酸エステル(A)と、FA以下の流動点FBを有する脂肪酸エステル(B)とを含み、流動点FTがFA未満である混合物であって、脂肪酸エステル(A)の水酸基価HA及び脂肪酸エステル(B)の水酸基価HBがいずれも45以下である、混合物。
【請求項2】
HA及HBがいずれも42以下である、請求項1記載の混合物。
【請求項3】
HAとHBとの差の絶対値が40以下である、請求項1又は2記載の混合物。
【請求項4】
総水酸基価HTが40以下である、請求項1~3のいずれかに記載の混合物。
【請求項5】
FAとFBとの差が32℃以下である、請求項1~4のいずれかに記載の混合物。
【請求項6】
脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数が5以上である、請求項1~5のいずれかに記載の混合物。
【請求項7】
FTがFB未満である、請求項1~6のいずれかに記載の混合物。
【請求項8】
FAとFTとの差が1℃以上である請求項1~7のいずれかに記載の混合物。
【請求項9】
HA及HBがいずれも35以下、
HAとHBとの差の絶対値が30以下、
総水酸基価HTが25以下、
FAとFBとの差が30℃以下、
脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数が5以上、
FBとFTとの差が1℃以上、
FAとFTとの差が2℃以上、である、請求項1~8のいずれかに記載の混合物。
【請求項10】
HA及HBがいずれも25以下、総水酸基価HTが15以下、FAとFBとの差が25℃以下である、請求項1~9のいずれかに記載の混合物。
【請求項11】
潤滑油である、請求項1~10のいずれかに記載の混合物。
【請求項12】
流動点FAを有し、水酸基価HAが45以下である脂肪酸エステル(A)に混合し、混合物の流動点FTをFA未満にするための添加剤であって、
FA以下の流動点FBを有し、水酸基価HBが45以下である、脂肪酸エステル(B)で構成された添加剤。
【請求項13】
流動点FAを有し、水酸基価HAが45以下である脂肪酸エステル(A)を含む混合物の流動点FTをFA未満にするための方法であって、
FA以下の流動点FBを有し、水酸基価HBが45以下である、脂肪酸エステル(B)を混合する、方法。
【請求項14】
HAとHBとの差の絶対値が40以下、
総水酸基価HTが40以下
FAとFBとの差が32℃以下、
脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数が5以上、である請求項12記載の剤。
【請求項15】
HAとHBとの差の絶対値が40以下、
総水酸基価HTが40以下
FAとFBとの差が32℃以下、
脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数が5以上、である請求項13記載の方法。
【請求項16】
FTがFB未満、FAとFTとの差が1℃以上である、請求項12又は14記載の剤。
【請求項17】
FTがFB未満、FAとFTとの差が1℃以上である、請求項13又は15記載の方法。
【請求項18】
HA及HBがいずれも35以下、
HAとHBとの差の絶対値が30以下、
総水酸基価HTが25以下、
FAとFBとの差が30℃以下、
脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数が5以上、
FBとFTとの差が1℃以上、
FAとFTとの差が2℃以上、である、請求項12、14又は16記載の剤。
【請求項19】
HA及HBがいずれも35以下、
HAとHBとの差の絶対値が30以下、
総水酸基価HTが25以下、
FAとFBとの差が30℃以下、
脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数が5以上、
FBとFTとの差が1℃以上、
FAとFTとの差が2℃以上、である、請求項13、15又は17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸エステル混合物等に関する。
【背景技術】
【0002】
流動点降下剤は、エステル系基油を含む潤滑油組成物において、流動点を低下させ、潤滑油組成物の適用温度範囲を広げるものであることが知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、脂肪酸エステルに流動点降下剤を添加することで流動点を降下させる方法においては、流動点以外の性能に悪影響を与える可能性及び、流動点降下剤が他の添加剤と反応しスラッジを生成する恐れがあり、基油によって添加剤を使い分ける必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-20993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規な脂肪酸エステル混合物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために、多数の試行錯誤を繰り返し、鋭意研究を重ねた結果、混合する脂肪酸エステルを特定の条件(指標)に基づいて選択することにより、混合物における流動点を低下(少なくとも最大の流動点を有する脂肪酸エステルの流動点よりも低下)しうること等を見出し、さらに鋭意研究を重ね、本発明を完成させた。
【0006】
本発明は、以下の発明等に関する。
[1]
流動点FAを有する脂肪酸エステル(A)と、FA以下の流動点FBを有する(1又は2以上の)脂肪酸エステル(B)とを含み、流動点FTがFA未満である混合物(脂肪酸エステル混合物)であって、脂肪酸エステル(A)の水酸基価HA及び脂肪酸エステル(B)の水酸基価HBがいずれも所定の値以下(例えば、45以下)である、混合物。
[2]
HA及HBがいずれも42以下である、[1]記載の混合物。
[3]
HAとHBとの差(HA-HB)の絶対値が40以下である、[1]又は[2]記載の混合物。
[4]
総水酸基価(混合物全体の水酸基価、脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総量の水酸基価、脂肪酸エステル全体の水酸基価)HTが40以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の混合物。
[5]
FAとFBとの差(FA-FB)が32℃以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の混合物。
[6]
脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数[脂肪酸エステル(A)を構成するアルコール(脂肪酸エステルの原料となるアルコール)のヒドロキシ基の数をX、脂肪酸エステル(B)を構成するアルコール(脂肪酸エステルの原料となるアルコール)のヒドロキシ基の数をYとするとき、X及びYの総数)]が5以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の混合物。
[7]
FTがFB未満である、[1]~[6]のいずれかに記載の混合物。
[8]
FAとFTとの差(FA-FT)が1℃以上である[1]~[7]のいずれかに記載の混合物。
[9]
HA及HBがいずれも35以下、
HAとHBとの差の絶対値が30以下、
総水酸基価HTが25以下、
FAとFBとの差が30℃以下、
脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数が5以上、
FBとFTとの差(FB-FT)が1℃以上、
FAとFTとの差(FA-FT)が2℃以上、である、[1]~[8]のいずれかに記載の混合物。
[10]
HA及HBがいずれも25以下、総水酸基価HTが15以下、FAとFBとの差が25℃以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の混合物。
[11]
潤滑油(潤滑油用)である、[1]~[10]のいずれかに記載の混合物。
[12]
流動点FAを有し、水酸基価HAが45以下である脂肪酸エステル(A)に混合し、混合物の流動点FTをFA未満にするための添加剤であって、
FA以下の流動点FBを有し、水酸基価HBが45以下である、脂肪酸エステル(B)で構成された添加剤(流動点降下剤)。
[13]
流動点FAを有し、水酸基価HAが45以下である脂肪酸エステル(A)を含む混合物の流動点FTをFA未満にするための方法であって、
FA以下の流動点FBを有し、水酸基価HBが45以下である、脂肪酸エステル(B)[で構成された添加剤(流動点降下剤)]を混合[脂肪酸エステル(A)に脂肪酸エステル(B)を混合(添加)]する、方法。
[14]
HAとHBとの差(HA-HB)の絶対値が40以下、
総水酸基価HTが40以下
FAとFBとの差(FA-FB)が32℃以下、
脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数が5以上、である[12]又は[13]記載の剤又は方法。
[15]
FTがFB未満、FAとFTとの差(FA-FT)が1℃以上である、[12]~[14]のいずれかに記載の剤又は方法。
[16]
HA及HBがいずれも35以下、
HAとHBとの差の絶対値が30以下、
総水酸基価HTが25以下、
FAとFBとの差が30℃以下、
脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数が5以上、
FBとFTとの差(FB-FT)が1℃以上、
FAとFTとの差(FA-FT)が2℃以上、である、[12]~[15]のいずれかに記載の剤又は方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規な脂肪酸エステル混合物を提供できる。
このような脂肪酸エステル混合物では、混合する(組み合わせる)脂肪酸エステルを特定の条件・指標で選択すること等により、混合物における流動点を効率よく低くしうる。
【0008】
混合物における流動点は、通常、混合物を構成する脂肪酸エステルの最大の流動点よりも低いものであり、混合物を構成する脂肪酸エステルの最小の流動点以下(特に、最小の流動点よりも低い温度)にまで低くすることもできる。
【0009】
本発明の脂肪酸エステル混合物は、脂肪酸エステルで構成できるため、流動点降下剤といった脂肪酸エステルでない成分によらずとも、流動点を低いものとできる。
そのため、脂肪酸エステルとしての性能(機能)を効率よく維持(発揮)しながらも、流動点を低下でき、有用である。
また、脂肪酸エステル同士であるため、比較的その組み合わせに制約が少ないという点でも有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[脂肪酸エステル混合物(組成物)]
本発明の脂肪酸エステル混合物(以下、単に混合物等ということがある)は、脂肪酸エステル(A)と、脂肪酸エステル(B)とを含む。
【0011】
ここで、脂肪酸エステル(A)は、1種の脂肪酸エステルであって、その流動点(以下、FA等という)が、脂肪酸エステル混合物に含まれる脂肪酸エステルの中で最も高い脂肪酸エステル(通常、1種の脂肪酸エステル)である。
【0012】
一方、脂肪酸エステル(B)は、脂肪酸エステル(A)とは異なる脂肪酸エステルである。なお、脂肪酸エステル(B)の流動点(以下、FB等という)は、脂肪酸エステル(A)の流動点が最大となればよく(すなわち、FM以下であればよく)、後述のように、さらに、FAとの関係において特定の流動点を示すものであってもよい。
【0013】
すなわち、脂肪酸エステル(B)は、組み合わせる脂肪酸エステルとの関係にて選択すればよく、脂肪酸エステルの化学種によって一律に決まるものではない。
【0014】
例えば、組み合わせる脂肪酸エステルによっては、脂肪酸エステル(A)にもなりうる[例えば、より低い流動点を有する脂肪酸エステルと組み合わせる場合には、脂肪酸エステル(A)になる(より低い流動点を有する脂肪酸エステルが脂肪酸エステル(B)になる)]。
【0015】
なお、同じ流動点を有する脂肪酸エステルを組み合わせる場合、いずれの脂肪酸エステルを脂肪酸エステル(A)としてもよい。
【0016】
なお、脂肪酸エステル(B)は、FA以下のFBを有する限り、1種であってもよく、2種以上であってもよい。すなわち、脂肪酸エステル混合物において、構成する脂肪酸エステル数は2以上であってもよく、3以上であってもよい。
【0017】
そして、本発明の混合物では、混合物を構成する脂肪酸エステルを特定の指標・条件で選択できる。
【0018】
まず、混合物において、通常、脂肪酸エステル(A)の水酸基価(以下、HA等という)及び脂肪酸エステル(B)の水酸基価(以下、HB等という)を特定のものとしてもよい。なお、水酸基価は、試料1g中の水酸基に相当する水酸化カリウムのmg数(mgKOH/g)とされている。
【0019】
例えば、HA及びHBは、いずれも45以下(HAが45以下、かつHBが45以下)]であってもよい。このような場合、HA及びHBは、いずれも(それぞれ)、45以下であればよく、43以下(例えば、42以下)、好ましくは40以下(例えば、38以下、37以下)、さらに好ましくは36以下(例えば、35以下)であってもよく、32以下(例えば、30以下、28以下、27以下、26以下、25以下、22以下、20以下、18以下、16以下、15以下、13以下、12以下、10以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下)等とすることもできる。
【0020】
なお、水酸基価(HA及びHBのそれぞれ)の下限値は、特に限定されず、0であってもよく、有限値(例えば、0.05、0.1、0.3、0.5、0.8、1.0、1.2、1.5、1.8、2、2.2、2.5、2.8、3等)であってもよい。
【0021】
なお、脂肪酸エステル(B)が、2種以上である場合、いずれか1種の脂肪酸エステル(B)の水酸基価又はすべての脂肪酸エステル(B)の水酸基価が、上記の範囲を充足してもよい。混合物における脂肪酸エステル(B)の割合等にもよるが、好ましくはすべての脂肪酸エステル(B)の水酸基価が上記の範囲を充足してもよい。
【0022】
脂肪酸エステル(A)及び(B)は、水酸価においてあまり差の無いものを選択してもよい。このような場合、HAとHBとの差(HA-HB)の絶対値は、例えば、44以下(例えば、43以下、42以下)、好ましくは40以下(例えば、38以下、37以下、36以下)、さらに好ましくは35以下(例えば、33以下、32以下)であってもよく、30以下(例えば、30以下、28以下、27以下、26以下、25以下、22以下、20以下、18以下、16以下、15以下、13以下、12以下、10以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下)等とすることもできる。
【0023】
HAとHBとの差(HA-HB)の絶対値の下限値は、特に限定されず、0であってもよく、有限値(例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、1.0、1.2、1.5、1.8、2等)であってもよい。
【0024】
なお、脂肪酸エステル(B)が、2種以上である場合、いずれか1種の脂肪酸エステル(B)の水酸基価又はすべての脂肪酸エステル(B)の水酸基価(HAとHBとの差の絶対値)が、上記の範囲を充足してもよい。混合物における脂肪酸エステル(B)の割合等にもよるが、好ましくはすべての脂肪酸エステル(B)の水酸基価が上記の範囲を充足してもよい。
【0025】
また、混合物において、最も高い流動点の脂肪酸エステルが2種以上存在する場合、いずれを脂肪酸エステル(A)としてもよく、何らかの指標[例えば、最も水酸基価が大きいもの、最も水酸基価の小さいもの、その他の指標(例えば、後述のヒドロキシ数が最も大きい又は小さいもの)等]にて、脂肪酸エステル(A)を決定してもよい。
【0026】
混合物(又は脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)全体)の水酸基価(総水酸基価、以下、HT等ということがある)もまた、あまり大きすぎないものとなるよう調整してもよい。このような場合、総水酸基価(HT)は、例えば、45以下(例えば、44以下)の範囲から選択してもよく、43以下(例えば、42以下)、好ましくは40以下(例えば、38以下、37以下、36以下)、さらに好ましくは35以下(例えば、32以下)であってもよく、30以下(例えば、28以下、27以下、26以下、25以下、22以下、20以下、18以下、16以下、15以下、13以下、12以下、10以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、1.5以下、1以下)等とすることもできる。
【0027】
HTの下限値は、特に限定されず、0であってもよく、有限値(例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、1.0、1.2、1.5、1.8、2、2.5、3等)であってもよい。
【0028】
なお、HTは、混合物(又は脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)全体)として測定できるが、混合物に含まれる各脂肪酸エステルの水酸基価と混合比率(質量割合)をもとに算出した値であってもよい。
【0029】
なお、脂肪酸エステルとして合成したものを使用する場合等において、水酸基価(さらには流動点等)は、原料(アルコール、酸等)の仕込み割合等によって調整しうる。
【0030】
水酸基価の測定方法は、特に限定されず、慣用の方法(例えば、JIS K0070-1992)を使用してもよい。具体的には後述の方法にて水酸基価を測定してもよい。
【0031】
上記のような水酸基価となるよう、脂肪酸エステル(A)及び(B)を組み合わせることにより、混合物の流動点を効率よく低いものとしやすい。この理由は定かではないが、例えば、水素結合の影響を小さくしやすく(ひいては結晶化も抑制しやすく、流動点低下に与える影響を小さくできる)こともその要因であると考えられる。
【0032】
混合物(脂肪酸エステル(A)、脂肪酸エステル(B))は、水酸基価とは異なる別の条件において、特定の範囲(値)を充足してもよい。
【0033】
特に、上記のような水酸基価を充足する場合(例えば、少なくとも、HA及びHBがそれぞれ特定値以下である場合)に加えて、このような特定の範囲を充足することで、より一層効率よく流動点を低下[例えば、混合物の流動点をFA未満にするのみならず、FB以下(特にFB未満)にまで低下]しうる場合がある。
【0034】
例えば、混合物において、脂肪酸エステル(A)の流動点FAと、脂肪酸エステル(B)の流動点FBとの差(FA-FB)は、50℃以下(例えば、48℃、45℃以下、42℃以下等)程度の範囲から選択してもよく、40℃以下(例えば、38℃以下)、好ましくは36℃以下(例えば、35℃以下、35℃未満、34℃以下、33℃以下)、さらに好ましくは32℃以下(例えば、31℃以下以下)であってもよく、30℃以下(例えば、28℃以下、26℃以下、25℃以下、24℃以下、23℃以下、22℃以下、21℃以下、20℃以下、19℃以下、18℃以下、17℃以下、16℃以下、15℃以下、14℃以下、13℃以下、12℃以下、11℃以下、10℃以下、9℃以下、8℃以下、7℃以下、6℃以下、5℃以下等)であってもよい。
【0035】
FA-FBの下限値は、特に限定されず、0℃(すなわち、脂肪酸エステル(A)と(B)の流動点が同じ)であってもよく、有限値(例えば、0.05℃、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.5℃、1.0℃、1.2℃、1.5℃、1.8℃、2℃、2.5℃、3℃、3.5℃、4℃、4.5℃、5℃、5.5℃、6℃、6.5℃、7℃等)であってもよい。
【0036】
なお、脂肪酸エステル(B)が、2種以上である場合、いずれか1種の脂肪酸エステル(B)又はすべての脂肪酸エステル(B)の流動点(FA-FBとの差)が、上記の範囲を充足してもよい。混合物における脂肪酸エステル(B)の割合等にもよるが、好ましくはすべての脂肪酸エステル(B)の流動点FBが上記の範囲を充足してもよい。
【0037】
流動点の測定方法は、特に限定されず、慣用の方法を使用してもよい。具体的には後述の方法(自動流動点・曇り点試験器 mpc-6形(田中科学機器製作株式会社製)を用いた方法)にて流動点を測定してもよい。
【0038】
上記のような流動点差となるよう、脂肪酸エステル(A)及び(B)を組み合わせることにより、混合物の流動点を効率よく低いものとしやすい。この理由は定かではないが、例えば、より結晶化を抑制しやすくなることもその要因であると考えられる。
【0039】
その他、混合物において、脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総ヒドロキシ数[脂肪酸エステル(A)を構成するアルコール(脂肪酸エステルの原料となるアルコール)のヒドロキシ基の数をX、脂肪酸エステル(B)を構成するアルコール(脂肪酸エステルの原料となるアルコール)のヒドロキシ基の数をYとするとき、X及びYの総数(X+Y、以下、単に、総ヒドロキシ数等ということがある)]は、3以上(例えば、4以上)の範囲から選択してもよく、好ましくは5以上(例えば、6以上、7以上等)であってもよい。
【0040】
総ヒドロキシ数の上限値は、特に限定されず、脂肪酸エステル(B)の数等にもよるが、例えば、40、38、35、32、30、28、25、24、22、20、18、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7等であってもよい。
【0041】
なお、脂肪酸エステル(B)が2種以上である場合、総ヒドロキシ数には、各脂肪酸エステル(B)を構成するアルコールのヒドロキシ基の数が含まれる。例えば、脂肪酸エステル(B)が、脂肪酸エステル(B1)と、脂肪酸エステル(B2)との2種である場合、総ヒドロキシ数は、Xと、脂肪酸エステル(B1)を構成するアルコールのヒドロキシ基の数Y1と、脂肪酸エステル(B2)を構成するアルコールのヒドロキシ基の数Y2との総数(X+Y1+Y2)である。
【0042】
また、脂肪酸エステル(A)又は(B)を構成するアルコールが複数である場合、X又はYは、それぞれ、その割合(個数割合、モル割合)に応じて算出されるヒドロキシ基の数(平均数)としてもよい。例えば、ある脂肪酸エステル(B)を構成するアルコールが、ヒドロキシ基の数が3個のアルコールをアルコール全体の30モル%、ヒドロキシ基の数が4個のアルコールをアルコール全体の70モル%とするアルコールである場合、Yは「3.7」(3×0.3+4×0.7)としてもよい。
【0043】
上記のような総ヒドロキシ数となるよう、脂肪酸エステル(A)及び(B)を組み合わせることにより、混合物の流動点を効率よく低いものとしやすい。この理由は定かではないが、例えば、立体的に嵩高くなる、脂肪酸エステルが複雑に絡み合いやすくなる等により、より結晶化を抑制しやすくなることもその要因であると考えられる。
【0044】
本発明の混合物(又は脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総量)の流動点(以下、FT等ということがある)は、通常、脂肪酸エステル(A)の流動点FAよりも低い。
【0045】
このような場合、FAとFTとの差(FA-FT)は、0℃超であればよく、FAとFBとの差や混合物における脂肪酸エステル(B)の割合等によるが、例えば、0.1℃以上(例えば、0.3℃以上)、好ましくは0.5℃以上(例えば、0.8℃以上)、さらに好ましくは1℃以上(例えば、1.5℃以上)であってもよく、2℃以上(例えば、2.5℃以上、3℃以上、3.5℃以上、4℃以上、4.5℃以上、5℃以上、6℃以上、7℃以上、8℃以上、9℃以上、10℃以上、11℃以上、12℃以上等)であってもよい。
【0046】
FTは、上記のように通常FA未満であるが、本発明では、特に、脂肪酸エステル(B)の流動点FB以下(特にFB未満)を充足することも可能である。
【0047】
このような場合、FBとFTとの差(FB-FT)は、0℃超であればよく、FAとFBとの差や混合物における脂肪酸エステル(B)の割合等によるが、例えば、0.1℃以上(例えば、0.3℃以上)、好ましくは0.5℃以上(例えば、0.8℃以上)、さらに好ましくは1℃以上(例えば、1.5℃以上)であってもよく、2℃以上(例えば、2.5℃以上、3℃以上、3.5℃以上、4℃以上、4.5℃以上、5℃以上、6℃以上、7℃以上、8℃以上、9℃以上、10℃以上、11℃以上、12℃以上等)であってもよい。
【0048】
なお、脂肪酸エステル(B)が、2種以上である場合、いずれか1種の脂肪酸エステル(B)又はすべての脂肪酸エステル(B)の流動点(FB-FTとの差)が、上記の範囲を充足してもよい。混合物における脂肪酸エステル(B)の割合等にもよるが、好ましくはすべての脂肪酸エステル(B)の流動点FBが上記の範囲を充足してもよい。
【0049】
FA(さらには、FB、FT)は、特に限定されず、脂肪酸エステル(A)や(B)の種類、その組み合わせや混合物における割合、混合物の用途等に応じて選択できるが、例えば、FA(さらには、FB、FT)は、30℃以下(例えば、25℃以下、20℃以下)程度の範囲から選択してもよく、18℃以下(例えば、15℃以下、12℃以下)、好ましくは10℃以下(例えば、8℃以下)、さらに好ましくは5℃以下(例えば、3℃以下、2℃以下、1℃以下)等であってもよく、0℃以下(例えば、0℃未満、-3℃以下、-5℃以下、-8℃以下、-10℃以下、-12℃以下、-15℃以下、-18℃以下、-20℃以下、-22℃以下等)であってもよい。
【0050】
なお、FA(さらには、FB、FT)の下限値も特に限定されないが、流動点低下の必要性等に鑑み、例えば、-150℃、-120℃、-110℃、-100℃、-90℃、-80℃、-75℃、-70℃、-65℃、-60℃、-55℃、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃等であってもよい。
【0051】
混合物において、脂肪酸エステルの割合は、例えば、上記のような流動点の低下を実現できる範囲や所望の流動点等に応じて選択してもよく、さらには、選択する脂肪酸エステル(A)、組み合わせる脂肪酸エステル(B)の種類やその数等に応じて適宜選択してもよく、特に限定されない。
【0052】
例えば、混合物において、脂肪酸エステル(A)[又は脂肪酸エステル(B)(2種以上である場合には、その総量)]の割合(脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)の総量に対する割合)は、例えば、1質量%以上(例えば、3質量%以上)程度の範囲から選択してもよく、5質量%以上(例えば、8質量%以上)、10質量%以上(例えば、12質量%以上)、15質量%以上(例えば、18質量%以上)、20質量%以上(例えば、22質量%以上)等であってもよく、100質量%未満[例えば、99質量%以下(例えば、97質量%以下)]、95質量%以下(例えば、92質量%以下)、90質量%以下(例えば、88質量%以下)、85質量%以下(例えば、82質量%以下)、80質量%以下(例えば、78質量%以下)等であってもよい。
【0053】
脂肪酸エステル(B)が2種以上である場合、各脂肪酸エステル(B)の割合もまた、上記のような範囲から選択してもよいが、脂肪酸エステル(B)の数に応じて、各脂肪酸エステル(B)の割合を選択(調整)してもよい(例えば、脂肪酸エステル(B)の数が2種であり、脂肪酸エステル(B)の割合が1~80質量%である場合、各脂肪酸エステル(B)の割合を0.5~40質量%(2で除した割合)とする等)。
【0054】
脂肪酸エステル(B)が2種以上である場合、1種の脂肪酸エステル(B)の割合は、脂肪酸エステル(B)全体に対して、1質量%以上(例えば、3質量%以上)程度の範囲から選択してもよく、5質量%以上(例えば、8質量%以上)、10質量%以上(例えば、12質量%以上)、15質量%以上(例えば、18質量%以上)、20質量%以上(例えば、22質量%以上)等であってもよく、100質量%未満[例えば、99質量%以下(例えば、97質量%以下)]、95質量%以下(例えば、92質量%以下)、90質量%以下(例えば、88質量%以下)、85質量%以下(例えば、82質量%以下)、80質量%以下(例えば、78質量%以下)等であってもよい。
【0055】
なお、脂肪酸エステル(B)が2種以上である場合、その数は2以上であればよく、例えば、20以下、18以下、16以下、15以下、12以下、10以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2等であってもよい。
【0056】
脂肪酸エステル(脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B))は、前記のように、通常、アルコールと脂肪酸のエステルであるが、アルコールの種類、脂肪酸の種類、これらの組み合わせ、エステル化の程度(全エステルであるか部分エステルであるか、部分エステルである場合、そのエステル化の程度はどの程度であるか等)は、前記のような混合物(例えば、HA及びHBがいずれも45以下等)を構成する限り、特に限定されない(換言すれば、前記のような混合物となるように選択できる)が、例えば、次のようなものが例示できる。
【0057】
まず、アルコール(エステルを構成するアルコール、エステルの原料となるアルコール)としては、例えば、脂肪族アルコール(脂環式アルコールを含む)、非脂肪族アルコール(例えば、芳香族アルコール等)が挙げられるが、特に脂肪族アルコールであってもよい。
【0058】
アルコールは、モノオール(一価アルコール)であってもよく、ポリオール(多価アルコール)であってもよい。なお、アルコールは、第1級、第2級、第3級、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)、環状などのいずれであってもよく、飽和、不飽和のいずれであってもよい(特に、飽和であってもよい)。
【0059】
代表的なアルコールとしては、例えば、脂肪族モノオール[例えば、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、2-エチルヘキサノール、アミルアルコール等のアルカノール(例えば、C1-40アルカノール、C1-30アルカノール、C2-20アルカノール、炭素数4以上(さらには6以上、8以上等)のアルカノール等)]、芳香族モノオール(例えば、フェノール)等の1価のアルコール;脂肪族ジオール[例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等のC2-20アルカンジオール、C2-10アルカンジオール等)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプリピレングリコール等のポリC2-10アルカンジオール、ポリC2-6アルカンジオール)等]等の2価アルコール;アルカンポリオール[例えば、アルカントリオール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等のC3-10アルカントリオール)、アルカンテトラオール(例えば、ペンタエリスリトール等のC4-10アルカンポリオール)等]、アルカンポリオールの縮合物[ポリアルカントリ乃至ヘキサオール(例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパンン、ジペンタエリスリトール等)等の3価以上(例えば、3~10価、3~6価)のアルコール等が挙げられる。
【0060】
アルコールの分子量は、モノオールかポリオールか、縮合物であるか否かなどにもよるが、例えば、500以下、400以下、300以下(例えば、260以下)等であってもよい。
【0061】
なお、脂肪酸エステルを構成するアルコールは、1種であってもよく、2種以上組み合わせてもよい。
【0062】
特に、脂肪酸エステル(A)を構成するアルコールは1種であってもよい。
【0063】
また、脂肪酸エステル(A)を構成するアルコールと脂肪酸エステル(B)を構成するアルコールとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
特に、脂肪酸エステル(A)を構成するアルコールと脂肪酸エステル(B)を構成するアルコールは異なっていてもよい。
なお、このような場合において、脂肪酸エステル(B)を構成するアルコールが2種以上である場合には、アルコール全体として脂肪酸エステル(A)を構成するアルコールと異なっていればよく、例えば、少なくとも脂肪酸エステル(A)を構成するアルコールと異なるアルコールを含む限り、脂肪酸エステル(A)を構成するアルコールと同じアルコールを含んでいてもよい。
【0065】
代表的には、脂肪酸エステル(A)を構成するアルコールが1種であり、脂肪酸エステル(B)を構成するアルコールが、脂肪酸エステル(A)を構成するアルコールと異なるアルコールであってもよい。
【0066】
脂肪酸(エステルを構成する脂肪酸、エステルの原料となる脂肪酸)は、一価であっても多価であってもよい。なお、脂肪酸は、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)、環状などのいずれであってもよく、飽和、不飽和のいずれであってもよい。不飽和脂肪酸において、不飽和結合(炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合等)の数は、特に限定されず、例えば、1以上(例えば、1~21、1~10、1~5、1~4、1~3等程度)であればよい。
【0067】
脂肪酸の炭素数は、特に限定されないが、通常、2以上であってもよく、炭素数4以上(6以上、7以上、8以上等)の脂肪酸を好適に使用してもよい。脂肪酸の炭素数の上限値は、特に限定されないが、例えば、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、24以下、22以下、20以下などであってもよい。
【0068】
具体的な脂肪酸としては、例えば、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、9-ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、cis-9-オクタデセン酸(オレイン酸)、11-オクタデセン酸(バクセン酸)、cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸(リノール酸)、9,12,15-オクタデカントリエン酸((9,12,15)-リノレン酸)、6,9,12-オクタデカトリエン酸((6,9,12)-リノレン酸)、9,11,13-オクタデカトリエン酸(エレオステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、8,11-エイコサジエン酸、5,8,11-エイコサトリエン酸(ミード酸)、5,8,11-エイコサテトラエン酸(アラキドン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、cis-15-テトラコサン酸(ネルボン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、オクタコサン酸(モンタン酸)、トリアコンタン酸(メリシン酸)等の脂肪酸[例えば、炭素数4~30(好ましくは18~22)飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐の脂肪酸]が挙げられる。
【0069】
また、脂肪酸には、モノマー酸、ダイマー酸、トリマー酸等も含まれる。
【0070】
例えば、モノマー酸、ダイマー酸、トリマー酸の組み合わせた脂肪酸の例(市販品の例)としては、築野食品工業株式会社製の、ツノダイム205(モノマー酸10質量%、ダイマー酸76質量%、トリマー酸14質量%)、ツノダイム216(モノマー酸7質量%、ダイマー酸77質量%、トリマー酸14質量%)、ツノダイム228(モノマー酸5質量%、ダイマー酸81質量%、トリマー酸14質量%)、ツノダイム395(モノマー酸3質量%、ダイマー酸94質量%、トリマー酸3質量%)、ツノダイム346(モノマー酸2質量%、ダイマー酸28質量%、トリマー酸70質量%)等が挙げられる。
【0071】
脂肪酸エステルは、全エステルであってもよく、部分エステルであってもよい。
【0072】
脂肪酸エステルは、市販品を利用してもよく、合成(製造)したものを使用してもよい。市販品の例としては、例えば、築野食品工業株式会社製のTFEシリーズ(例えば、TFE-47TM、TFE-30A、TFE-40A、TFE-100A、TFE-220A等)等がある。
【0073】
なお、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、1種であってもよく、2種以上組み合わせてもよい。
【0074】
また、脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸と脂肪酸エステル(B)を構成する脂肪酸は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
なお、脂肪酸エステル(A)を構成するアルコールと脂肪酸エステル(B)を構成するアルコールが同一である場合、脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸と脂肪酸エステル(B)を構成する脂肪酸は、異なってもよい。
なお、このような場合において、脂肪酸エステル(B)を構成する脂肪酸が2種以上である場合には、脂肪酸全体として脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸と異なっていればよく、例えば、少なくとも脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸と異なる脂肪酸を含む限り、脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸と同じ脂肪酸を含んでいてもよい。
【0075】
脂肪酸エステルエステル(A)と脂肪酸エステル(B)との組み合わせは、前記のような特性(例えば、水酸基価等)を有している限り、特に限定されるものではないが、例えば、次のような組み合わせ(前記のような特性を有する組み合わせ)等が挙げられる。
【0076】
(1)脂肪酸エステル(A)を構成するアルコール(AA)(1種又は2種以上のアルコール、特に1種のアルコール)と、脂肪酸エステル(B)を構成するアルコール(AB)(1種又は2種以上のアルコール)とが異なり、かつ脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸(CA)(1種又は2種以上の脂肪酸)と、脂肪酸エステル(B)を構成する脂肪酸(CB)(1種又は2種以上脂肪酸)とが同じであるか又は異なる、脂肪酸エステル(A)と脂肪酸エステル(B)(1種又は2種以上の脂肪酸エステル(B))との組み合わせ。
【0077】
(2)脂肪酸エステル(A)を構成するアルコール(AA)(1種又は2種以上のアルコール)と、脂肪酸エステル(B)を構成するアルコール(AB)(1種又は2種以上のアルコール)とが同じであり、かつ脂肪酸エステル(A)を構成する脂肪酸(CA)(1種又は2種以上の脂肪酸)と、脂肪酸エステル(B)を構成する脂肪酸(CB)(1種又は2種以上の脂肪酸)とが異なる、脂肪酸エステル(A)と脂肪酸エステル(B)(1種又は2種以上の脂肪酸エステル(B))との組み合わせ。
【0078】
(1)及び(2)において、アルコール(AA)は特に1種であってもよく、アルコール(AB)は1種又は2種以上(例えば、1種)であってもよい。
【0079】
また、(1)及び(2)において、脂肪酸(CA)及び(CB)は、それぞれ1種又は2種以上であってもよい。
【0080】
なお、脂肪酸エステル(混合物)は、エステル以外の成分(例えば、アルコール、脂肪酸等の脂肪酸エステルの原料ないし脂肪酸エステルの製造に由来する成分)を含んでいてもよい。
【0081】
なお、本発明の混合物は、脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)以外の成分を含んでいてもよく、脂肪酸エステルのみで構成してもよい。
【0082】
本発明の混合物は、その構成成分[脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)]を含む限り、特に限定されないが、通常、構成成分を混合することで製造できる。通常は、脂肪酸エステル(A)及び脂肪酸エステル(B)]は均一になるように混合される場合が多い。
【0083】
混合方法は、特に限定されず、慣用の方法にて行うことができる。例えば、混合温度は、脂肪酸エステルの融点ないし流動点等に応じて選択してもよく、例えば、0~30℃(例えば、0~25℃)等であってもよいが、特に限定されない。
【0084】
また、混合は、撹拌下で行ってもよく、常温下、加温下、冷却下等のいずれで行ってもよい。撹拌には、公知の撹拌体(実験室スケール及び工場スケールのものを含む)を使用してよい。
混合(例えば、撹拌)時間は、例えば、5~60分間(例えば、10~30分間)等であってもよいが、特に限定されない。
【0085】
なお、混合は段階的に行ってもよい{例えば、構成成分の一部[例えば、脂肪酸エステルの一部(例えば、脂肪酸エステル(B)が2種以上である場合の脂肪酸エステル(B))]を予め混合する等してもよい}。
【0086】
[脂肪酸エステル混合物の用途等]
本発明の混合物(脂肪酸エステル混合物)は、含まれる脂肪酸エステルの種類等に応じて、種々の用途(例えば、潤滑油、金属加工油、圧延油、金属切削油)に使用できる。
【0087】
特に、本発明の混合物は、構成する脂肪酸エステルの流動点(少なくともFA)よりも低い流動点を有しており、潤滑油等の用途において好適である。なお、このような用途において、脂肪酸エステル混合物は、それ自体のみで適用してもよく、用途に応じてその他の成分を含んでいてもよい(混合物をその他の成分とともに適宜用途に適用してもよい)。
【0088】
なお、本発明では、脂肪酸エステル(A)と脂肪酸エステル(B)とを組み合わせることで、混合物における流動点FTをFMよりも低い温度(FT未満)とすることができる。
【0089】
そうすると、脂肪酸エステル(B)は、脂肪酸エステル(A)に対して流動点降下剤(流動点を低下させるための剤)として機能しているということもできる。
【0090】
そのため、本発明には、このような発明、すなわち、流動点FAを有する脂肪酸エステル(A)[例えば、流動点FAを有し、水酸基価HAが45以下である脂肪酸エステル(A)]に混合(添加)し、混合物の流動点FTをFA未満にするための添加剤であって、脂肪酸エステル(B)[例えば、FA以下の流動点FBを有する有し、水酸基価HBが45以下である、脂肪酸エステル(B)]で構成された添加剤(流動点降下剤)を含む。
【0091】
また、本発明では、脂肪酸エステル(A)と脂肪酸エステル(B)とを組み合わせることで、混合物における流動点を低下することができる。
【0092】
そのため、本発明には、このような発明、すなわち、流動点FAを有する脂肪酸エステル(A)[例えば、流動点FAを有し、水酸基価HAが45以下である脂肪酸エステル(A)]を含む混合物(脂肪酸エステル混合物)の流動点FTをFA未満にするための方法であって、脂肪酸エステル(B)[例えば、FA以下の流動点FBを有する有し、水酸基価HBが45以下である、脂肪酸エステル(B)]を混合(添加、脂肪酸エステル(A)に脂肪酸エステル(B)を混合)する、方法を含む。
【0093】
なお、このような発明(剤、方法に係る発明)において、脂肪酸エステル(A)、脂肪酸エステル(B)、これらの関係等は、すべて前記混合物の項において記載したものと同様である。
【実施例
【0094】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0095】
1.脂肪酸エステルの原料
脂肪酸エステルの製造に用いた原料は下記の通りである。
(アルコール)
2-エチルヘキサノール(2EH);商品名:2-エチルヘキサノール;三菱ケミカル株式会社製
ネオペンチルグリコール(NPG);三菱ガス化学株式会社製
トリメチロールプロパン(TMP);三菱ガス化学株式会社製
ペンタエリスリトール(PE);Perstorp社製
ジペンタエリスリトール(DiPE);Perstorp社製
グリセリン(GL);阪本薬品工業株式会社製
ポリエチレングリコール(PEG);青木油脂工業株式会社製
(脂肪酸)
ヘプタン酸(C7);商品名:OLERIS(登録商標) n-heptanoic acid;アルケマ株式会社製
オクタン酸(C8);商品名:ルナック8-98;花王株式会社製
イソノナン酸(iC9);商品名:キョーワノイックN;KHネオケム株式会社製
デカン酸(C10);商品名:ルナック10-98;花王株式会社製
ステアリン酸(C18); 商品名:STEARIC ACID 98% ;ミヨシ油脂株式会社製
イソステアリン酸(iC18);イソステアリン酸は、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、トール油脂肪酸、或はトール油脂肪酸などの不飽和脂肪酸の重合により副生したモノマー酸(例えば、TFA-45、築野食品工業株式会社製)中に含有される分岐脂肪酸を分離して得られる。
オレイン酸(OL);商品名:SINAR-OL;SOCI MAS社製
TFA-47;築野食品工業株式会社製
NAS-125N;築野食品工業株式会社製
ダイマー酸;商品名:Td216;築野食品工業株式会社製
トリマー酸;商品名:Td346;築野食品工業株式会社製
【0096】
2.流動点の測定方法
自動流動点・曇り点試験器 mpc-6形(田中科学機器製作株式会社製)を用いて、取扱説明書に記載の方法に従って、各種脂肪酸エステルの流動点を測定し、評価を行った。尚、この測定方法は米国規格(ASTM D6749-02(2018) 石油製品の流動点(自動エア圧力法)のための標準試験方法)に従っており、また、日本工業規格(JIS 2269:1987 原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に対応している測定方法である。具体的には、当該試験器の測定用セルに各種脂肪酸を標線まで入れ、45℃まで予備加熱した後、予期点+40℃までは4℃/分、それ以降は試験終了まで1℃/分の速度で冷却した。
【0097】
3.水酸基価の測定方法
JIS K0070-1992に従って測定した。
【0098】
4.脂肪酸エステルの製造
脂肪酸エステルは、次のようにして製造した。
【0099】
[脂肪酸エステルA]
攪拌器、温度計、冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、イソステアリン酸569g(2.00モル)、ネオペンチルグリコール91g(0.87モル)、及び触媒として、酸化スズを総量に対し0.05重量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。水酸基価が5.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、エステル化粗物に対してそれぞれ0.2重量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、濾過してそれらを除去した。次いで、得られたエステル化ろ過物の過剰の酸と低沸点成分を薄膜蒸留器により留去してエステルAを得た。
【0100】
[脂肪酸エステルB]
攪拌器、温度計、冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、Td346 424g(0.50モル)、2-エチルヘキサノール260g(2.00モル)、及び触媒として、酸化スズを総量に対し0.1重量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、それぞれ0.2重量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、濾過してそれらを除去した。次いで、得られたエステル化粗物の過剰のアルコールと低沸点成分を薄膜蒸留により除去してエステルBを得た。
【0101】
[脂肪酸エステルC]
ネオペンチルグリコールの代わりにトリメチロールプロパン78g(0.58モル)、イソステアリン酸の代わりにオレイン酸565g(2.00モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルCを得た。
【0102】
[脂肪酸エステルD]
ネオペンチルグリコールの代わりにトリメチロールプロパン78g(0.58モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルDを得た。
【0103】
[脂肪酸エステルE]
ネオペンチルグリコールの代わりにペンタエリスリトール101g(0.75モル)、イソステアリン酸の代わりにオクタン酸324g(2.24モル)、デカン酸215g(1.25モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルEを得た。
【0104】
[脂肪酸エステルF]
ネオペンチルグリコールの代わりにジペンタエリスリトール134g(0.53モル)、イソステアリン酸の代わりにヘプタン酸37g(0.29モル)、オクタン酸33g(0.23モル)、イソノナン酸469g(2.97モル)、デカン酸41g(0.24モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルFを得た。
【0105】
[脂肪酸エステルG]
ネオペンチルグリコールの代わりにペンタエリスリトール110g(0.81モル)、イソステアリン酸の代わりにオクタン酸198g(1.37モル)、イソノナン酸164g(1.04モル)、デカン酸237g(1.38モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルGを得た。
【0106】
[脂肪酸エステルH]
ネオペンチルグリコールの代わりにジペンタエリスリトール121g(0.48モル)、イソステアリン酸の代わりにイソノナン酸522g(3.30モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルHを得た。
【0107】
[脂肪酸エステルI]
イソステアリン酸の代わりにヘプタン酸508g(3.90モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルIを得た。
【0108】
[脂肪酸エステルJ]
ネオペンチルグリコールの代わりにペンタエリスリトール54g(0.40モル)、イソステアリン酸の代わりにオレイン酸593g(2.20モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルJを得た。
【0109】
[脂肪酸エステルK]
ネオペンチルグリコールの代わりにトリメチロールプロパン121g(0.90モル)、イソステアリン酸337g(1.19モル)の他、イソノナン酸225g(1.42モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルKを得た。
【0110】
[脂肪酸エステルL]
攪拌器、温度計、冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、Td216 214g(0.37モル)、オレイン酸315g(1.11モル)、トリメチロールプロパン101g(0.75モル)仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が5mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、エステルLを得た。
【0111】
[脂肪酸エステルM]
ネオペンチルグリコールの代わりにトリメチロールプロパンg(0.58モル)、イソステアリン酸の代わりにTFA―47 565g(2.00モル)を使用した以外は、エステルBと同様の方法により、エステルMを得た。
【0112】
[脂肪酸エステルN]
Td216 300g(0.52モル)、オレイン酸250g(0.88モル)、トリメチロールプロパン110g(0.82モル)を使用した以外は、エステルLと同様の方法により、エステルNを得た。
【0113】
[脂肪酸エステルO]
ネオペンチルグリコールの代わりにグリセリン72g(0.78モル)、イソステアリン酸の代わりにステアリン酸626g(2.20モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルOを得た。
【0114】
[脂肪酸エステルP]
トリメチロールプロパンの代わりにポリエチレングリコール342g(0.84モル)、ダイマー酸とオレイン酸の代わりにNAS-125N 350g(1.23モル)を使用した以外は、エステルLと同様の方法により、エステルPを得た。
【0115】
[脂肪酸エステルQ]
ネオペンチルグリコールの代わりにトリメチロールプロパン129g(0.96モル)、イソステアリン酸の代わりにデカン酸568g(3.3モル)を使用した以外は、エステルAと同様の方法により、エステルQを得た。
【0116】
[脂肪酸エステルR]
Td346の代わりにイソステアリン酸435g(1.53モル)を使用した以外は、エステルBと同様の方法により、エステルRを得た。
【0117】
5.脂肪酸エステル
脂肪酸エステルの水酸基価、流動点及び構成するアルコールのヒドロキシ基の数(ヒドロキシ数)をまとめたものを下記表に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
5.混合物(脂肪酸エステル混合物)
下記表に示す質量割合にて、脂肪酸エステルを混合し、混合物(脂肪酸エステル混合物)を得た。この混合物について、流動点等を含めた結果を下記表に示す。なお、表には、参考のため各脂肪酸エステル(混合していないもの)についても記載している。
【0120】
なお、表において「エステル」は、混合した脂肪酸エステルの種類と質量比(混合割合)に対応しており、例えば、「A/B=25/75」とは、エステルAとエステルBを質量比25/75で混合した混合物であることを示す。
また、表において、最大水酸基価とは、脂肪酸エステルのうち、最も高い水酸基価であることを示す。
さらに、脂肪酸エステルの数が3以上(脂肪酸エステル(B)が2以上)である場合、表において、水酸基価の差の絶対値及び流動点の差は、すべての脂肪酸エステル(B)について記載している。
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
上記表の結果から明らかなように、特定の指標(条件)により、脂肪酸エステルを選択することにより、混合物における流動点を効率よく低下することができた。
【0126】
例えば、脂肪酸エステル(A)及び(B)の水酸基価をいずれも特定の値(例えば、45以下)とすることにより、混合物の流動点FTを脂肪酸エステル(A)の流動点FAよりも低くすることができた。
【0127】
特に、この指標(条件)に加えて、脂肪酸エステル(A)の流動点の差(FA-FB)を特定の値とする、総水酸基価を特定の値とする等の別の指標(条件)を組み合わせて充足するように脂肪酸エステルを選択することにより、より一層、効率よく混合物の流動点FTを低くする[例えば、脂肪酸エステル(B)の流動点FBよりも低くする]ことができた。
【0128】
一方、脂肪酸エステル(A)及び(B)のいずれか一方の水酸基価が特定の値(例えば、45)よりも十分に大きくなると、その混合割合によっては、混合物の流動点FTを脂肪酸エステル(A)の流動点FAよりも低くできない場合が生じる等、効率よく流動点を低下できなくなる場合があることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明によれば、新規な脂肪酸エステル混合物を提供できる。このような脂肪酸エステル混合物は、種々の用途、例えば、潤滑油、金属加工油、圧延油、金属切削油等に使用できる。
【要約】
【課題】新規な脂肪酸エステル混合物を提供する。
【解決手段】混合物を、流動点FAを有する脂肪酸エステル(A)と、FA以下の流動点FBを有する脂肪酸エステル(B)とを含み、流動点FTがFA未満である混合物であって、脂肪酸エステル(A)の水酸基価HA及び脂肪酸エステル(B)の水酸基価HBがいずれも45以下である、混合物とする。
【選択図】なし