(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】家畜肉質管理装置、家畜肉質管理システム、家畜肉質管理方法、及び、家畜肉質管理プログラム
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20230328BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20230328BHJP
【FI】
A01K29/00 Z
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2022191539
(22)【出願日】2022-11-30
【審査請求日】2022-12-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518329170
【氏名又は名称】株式会社Eco‐Pork
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100227581
【氏名又は名称】小林 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】牧野 剛士
(72)【発明者】
【氏名】神林 隆
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-140512(JP,A)
【文献】特開2021-101670(JP,A)
【文献】特開2020-161043(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111264415(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部と、
過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、に基づいて前記飼養中の家畜の将来の肉質の変化度合いを推計する肉質推計部と、
を備え
、
前記肉質推計部は、前記変化度合いの変動に寄与する前記飼養中の家畜の先天情報及び/又は後天情報の要素情報を寄与変数として特定し、当該寄与変数の前記変化度合いの変動に対する寄与度を推計する、
家畜肉質管理装置。
【請求項2】
推計された前記変化度合いが所定の警報条件を満たす場合に警報を出力する警報制御部と、
を備える請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項3】
前記肉質推計部は、前記寄与変数のうち、推計された前記変化度合いを所定の警報条件を満たさない変化度合いとするために必要な寄与変数を特定して、当該特定された寄与変数の変動量を推計する、
請求項
1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項4】
前記警報に関連するガイド情報を生成するガイド情報生成部と、
を備え、
前記ガイド情報は、前記特定された寄与変数と前記寄与度と前記変動量とを含む、
請求項
2に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項5】
前記格付情報を所定の標準形式に変換する格付情報標準化部と、
を備える請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項6】
前記格付情報標準化部は、前記格付情報の欠落を補完又は修正して、前記所定の標準形式に変換する、
請求項
5に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項7】
前記格付情報標準化部は、前記格付情報をコード化して、前記所定の標準形式に変換する、
請求項
5又は
6に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項8】
前記先天情報は、前記家畜の家畜識別情報を含み、
前記格付情報は、前記家畜識別情報を含む、
請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項9】
前記格付情報を取得する格付情報取得部と、
前記家畜情報を取得する家畜情報取得部と、
を備える請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項10】
前記肉質推計部は、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値を基準として、前記変化度合いを推計する、
請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項11】
前記肉質推計数理モデルは、品種ごとに生成される、
請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項12】
前記肉質推計数理モデルは、性別ごとに生成される、
請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項13】
前記先天情報は、家畜の品種、性別、に関する情報を含む、
請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項14】
前記後天情報は、家畜の成育履歴に関する成育履歴情報の要素情報、家畜の成育環境に関する環境履歴情報の要素情報、家畜の給餌及び給水に関する給餌履歴情報の要素情報、家畜の健康管理及び投薬に関する健康投薬履歴情報の要素情報、を含む、
請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項15】
前記家畜情報を所定の標準形式に変換する家畜情報標準化部と、
を備える請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項16】
前記家畜情報標準化部は、前記先天情報、及び、前記後天情報をコード化して、前記所定の標準形式に変換する、
請求項
15に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項17】
前記家畜情報の管理設定を変更する管理情報設定部と、
を備え、
前記管理情報設定部は、前記格付情報に含まれる項目を変更する、
請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項18】
前記管理情報設定部は、前記格付情報について出力する項目を変更する、
請求項
17に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項19】
前記家畜は豚である、
請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項20】
前記肉質推計数理モデルを更新する数理モデル管理部を備える、
請求項1に記載の家畜肉質管理装置。
【請求項21】
家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部と、
過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値と、に基づいて前記飼養中の家畜の
将来の肉質の変化度合いを推計する肉質推計部と、
を備え
、
前記肉質推計部は、前記変化度合いの変動に寄与する前記飼養中の家畜の先天情報及び/又は後天情報の要素情報を寄与変数として特定し、当該寄与変数の前記変化度合いの変動に対する寄与度を推計する、家畜肉質管理システム。
【請求項22】
プロセッサと、家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部とを備えるコンピュータにより実行される家畜肉質管理方法であって、
前記プロセッサに、
過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値と、に基づいて前記飼養中の家畜の
将来の肉質の変化度合いを推計する肉質推計ステップと、
を実行させ
、
前記肉質推計部は、前記変化度合いの変動に寄与する前記飼養中の家畜の先天情報及び/又は後天情報の要素情報を寄与変数として特定し、当該寄与変数の前記変化度合いの変動に対する寄与度を推計する、家畜肉質管理方法。
【請求項23】
プロセッサと、家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部とを備えるコンピュータに実行させるための家畜肉質管理プログラムであって、
前記家畜肉質管理プログラムは、前記プロセッサに、
過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値と、に基づいて前記飼養中の家畜の
将来の肉質の変化度合いを推計する肉質推計ステップと、
を実行させ
、
前記肉質推計部は、前記変化度合いの変動に寄与する前記飼養中の家畜の先天情報及び/又は後天情報の要素情報を寄与変数として特定し、当該寄与変数の前記変化度合いの変動に対する寄与度を推計する、家畜肉質管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、家畜肉質管理装置、家畜肉質管理システム、家畜肉質管理方法、及び、家畜肉質管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内で飼養された家畜の売却価格は、大きく分けて、各中央卸売市場・地方食肉市場における競り時点の需要・供給量の関係と、供給された家畜個体の体重・肉質等による格付(等級・ランク)ごとに決められた卸売単価(Kg当たり単価)と、に依存する。
【0003】
その卸売単価に枝肉重量を乗じたものが卸売価格となり、そこから諸経費を引いたものが農家の収入金額となる。そのため、農家は出荷時の卸売価格が最大化するよう家畜の体重を管理している。
【0004】
例えば、特許文献1には、撮像された家畜の画像から家畜の体重を推計し、家畜の体重管理に活用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2021/241085A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
家畜の肉質の評価は屠畜後の格付判定によって決定される。日本における牛の格付判定は、アルファベットの「A」(標準より良い)、「B」(標準)、「C」(標準より劣る)で示される歩留まり等級と、数字の「1」~「5」で示される肉質等級を組み合わせた15段階に分類される。また、日本における豚の格付判定は、半丸枝肉重量と背脂肪の厚さによる等級の判定表によって該当する等級を判定したあと、「外観」と「肉質」の各項目の条件によって等級が決められ、最終的に「極上」、「上」、「中」、「並」、「等外」の5等級に分類される。このように、「肉質」によって等級及び単価が異なるため、出荷する農家にとっては、大きく育ち高体重となった家畜を出荷しても、必ずしも高い収益を得られるとは限らなかった。
【0007】
家畜の肉質の評価は屠畜後の状態を見て初めて決定されるものである。そのため、農家は、格付を高位に引き上げるための情報がないまま飼養を実施している状態である。また、飼養工程の改善活動に生かすための肉質の評価に係る情報も十分に得られていなかった。
【0008】
特に食肉用の家畜豚は、1頭あたりの価格が家畜牛に比べて低い。そのため、コストの観点から、複数の豚を群として管理する群管理が一般に採用されている。さらに人手不足の問題から、飼養頭数の規模に比べて少数の従事者で管理している実態がある。そうすると、値決め単位となる「個体」には目が行き届きづらい。また、農場の飼養設備も群管理にあわせて設計・運用されており、給餌・給水などの豚の体重増加に影響する要因の管理も「群管理」となってしまう。ICT/IoT技術の進歩により、家畜に与えた餌・水の量を群として管理できるようになりつつあるが、屠畜後の肉質の評価に係る情報と組み合わせ、肉質を高位にしていく飼養管理に関するフィードバックプロセスはなかった。
【0009】
また、屠畜後の肉質の評価に係るフィードバック情報を得られたとしても、それをシステムとして取り込み分析し、飼養管理に適用し最適化していくための統一されたものはなく、肉質評価のフィードバック情報を効率的な活用において課題が存在している。
【0010】
そこで、本開示は、上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、屠畜後の家畜の肉質の評価に係る情報を飼養管理において効率的に活用することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、家畜肉質管理装置は、家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部と、過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、に基づいて前記飼養中の家畜の将来の肉質の変化度合いを推計する肉質推計部と、を備え、前記肉質推計部は、前記変化度合いの変動に寄与する前記飼養中の家畜の先天情報及び/又は後天情報の要素情報を寄与変数として特定し、当該寄与変数の前記変化度合いの変動に対する寄与度を推計する。
【0012】
また、上記した目的を達成するため、家畜肉質管理システムは、家畜肉質管理装置、ユーザ端末、及び計測端末からなる家畜肉質管理システムであって、家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部と、過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値と、に基づいて前記飼養中の家畜の将来の肉質の変化度合いを推計する肉質推計部と、を備え、前記肉質推計部は、前記変化度合いの変動に寄与する前記飼養中の家畜の先天情報及び/又は後天情報の要素情報を寄与変数として特定し、当該寄与変数の前記変化度合いの変動に対する寄与度を推計する。
【0013】
また、上記した目的を達成するため、家畜肉質管理方法は、プロセッサと、家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部とを備えるコンピュータにより実行される家畜肉質管理方法であって、前記プロセッサに、過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値と、に基づいて前記飼養中の家畜の将来の肉質の変化度合いを推計する肉質推計ステップと、を実行させ、前記肉質推計部は、前記変化度合いの変動に寄与する前記飼養中の家畜の先天情報及び/又は後天情報の要素情報を寄与変数として特定し、当該寄与変数の前記変化度合いの変動に対する寄与度を推計する。
【0014】
また、上記した目的を達成するため、家畜肉質管理プログラムは、プロセッサと、家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部とを備えるコンピュータに実行させるための家畜肉質管理プログラムであって、前記家畜肉質管理プログラムは、前記プロセッサに、過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値と、に基づいて前記飼養中の家畜の将来の肉質の変化度合いを推計する肉質推計ステップと、を実行させ、前記肉質推計部は、前記変化度合いの変動に寄与する前記飼養中の家畜の先天情報及び/又は後天情報の要素情報を寄与変数として特定し、当該寄与変数の前記変化度合いの変動に対する寄与度を推計する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、屠畜後の家畜の肉質の評価に係る情報を飼養管理において効率的に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】家畜肉質管理システム1の全体の構成を示す図である。
【
図2】家畜肉質管理サーバ10の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】家畜肉質管理サーバ10の記憶部101に格納される主な情報を示す表である。
【
図4】ユーザ端末20の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】センサユニット30の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】格付情報標準化処理の動作を示すフローチャートである。
【
図7】肉質推計処理の動作を示すフローチャートである。
【
図8】警報処理の動作を示すフローチャートである。
【
図9】ガイド生成処理の動作を示すフローチャートである。
【
図10】数理モデル更新処理の動作を示すフローチャートである。
【
図11】コンピュータの基本的なハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の各実施形態について図面を用いて説明する。実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0018】
<システム構成>
本開示における家畜肉質管理システム1は、ユーザが行う家畜飼養業務において、家畜の飼養中における肉質の管理を支援する家畜肉質管理サービスを提供する情報処理システムである。
【0019】
ユーザは主に家畜農家である。家畜農家は、家畜を飼養する農業経営者である個人、又は法人であり、畜産農家、畜産家ともいう。家畜が豚である場合は、養豚業を行う者であり、養豚家ともいう。
【0020】
実施形態において、家畜全般に対する用語と、家畜が特に豚である場合の用語は以下のように読み替えることができる。農場において畜産物が飼養される施設である畜舎は、豚の場合は豚舎ともいう。畜舎内の仕切られた区画の単位である畜房は、豚の場合は豚房ともいう。また、家畜の呼び方には、主な飼養目的ごとに、繁殖用家畜、肥育用家畜がある。繁殖用家畜は、子を産むための親として飼養される家畜であり、家畜が豚の場合は繁殖豚という。肥育用家畜は、食肉として出荷するために育成及び肥育される家畜であり、家畜が豚の場合は肉豚又は肥育豚という。肉豚の肥育の過程は、離乳期、肥育前期、肥育後期に分かれる。繁殖豚は、さらに、親が雌の場合は母豚又は繁殖母豚、親が雄の場合はそのまま雄豚、繁殖雄豚、種豚、又は、種雄豚ともいう。
【0021】
また、家畜の飼養中の管理単位は、豚の場合、一般に、母豚は1頭の個体ごとであり(個体管理)、肉豚はグループ(群・ロット)ごとである(群管理)。飼養中、母豚は個体ごと、肉豚は群ごとに識別情報が付与される。なお、一般的に、ひとつの肉豚群には、出生時期がほぼ同じ所定数の肉豚が所属する。
【0022】
なお、以下で説明する本開示の実施形態は、家畜として群管理される肉豚(肉豚群)を例として説明を行う。必要な場合において、1頭の肉豚を示す「肉豚個体」と複数の肉豚を示す「肉豚群」を区別して表記する。
【0023】
肉豚は、一般的に、農場の中の建造物である豚舎の中に構成される複数に区画された豚房で飼養される。豚房は、数十頭単位の肉豚群を飼養する環境である。以下、肉豚の飼養管理の最小単位である豚房に所属する群を管理肉豚群という。
【0024】
図1は、本開示の実施形態に係る家畜肉質管理システム1のシステム構成図である。家畜肉質管理システム1は、ネットワークNWを介して接続された、家畜肉質管理サーバ10、ユーザ端末20、センサユニット30、の情報処理装置を備える。
【0025】
各情報処理装置は演算装置と記憶装置とを備えたコンピュータにより構成されている。コンピュータの基本ハードウェア構成及び、当該ハードウェア構成により実現されるコンピュータの基本機能構成は後述する。
【0026】
ネットワークNWは、例えばインターネット、VPN(VirtualPrivateNetwork)、イントラネット、近距離無線通信等のネットワークである。説明の簡略化のため、
図1では、1のユーザ端末20と1のセンサユニット30を示しているが、家畜肉質管理サーバ10は、ネットワークNWを介して2以上のユーザ端末20や2以上のセンサユニット30と接続可能である。また、1のユーザ端末20を複数のユーザが使用しても構わない。ユーザ端末20は、端末にインストールされた専用のアプリケーションプログラムによって家畜肉質管理サーバ10にアクセスしてもよい。また、家畜肉質管理サーバ10が提供する動作環境(API(アプリケーションプログラミングインタフェース)、クラウドサービス、プラットフォーム等)を利用して家畜肉質管理サーバ10にアクセスしてもよい。家畜肉質管理サービスの運営業者は、家畜肉質管理システム1を用いてユーザに家畜の肉質の管理を支援するサービスを提供する。
【0027】
<家畜肉質管理サーバの構成>
図2は、家畜肉質管理サーバ10の機能構成を示すブロック図である。
家畜肉質管理サーバ10は、家畜肉質管理サービスを提供する情報処理装置(家畜肉質管理装置)である。家畜肉質管理サーバ10は、記憶部101と制御部103を備える。
【0028】
<家畜肉質管理サーバの記憶部の構成>
家畜肉質管理サーバ10の記憶部101は、主に、飼養中の肉豚の肉質を管理するために家畜肉質管理システム1が用いる情報を記憶する記憶装置である。記憶部101は、
図2において家畜肉質管理サーバ10と一体に記載されているが、家畜肉質管理サーバ10と物理的に独立した記憶装置であっても構わない。
【0029】
記憶部101は、アプリケーションプログラム、家畜情報、数理モデル、等を記憶する。
家畜情報は、家畜基本情報と、飼養履歴情報と、出荷情報と、格付情報と、家畜の肉質を推計した推計肉質情報と、を含む。家畜基本情報は、肉豚の基本的な情報を示す情報である。飼養履歴情報は、肉豚の飼養工程で生成される情報である。出荷情報は、肉豚の出荷に関する情報である。格付情報は、肉豚の格付に関する情報である。推計肉質情報は、肉豚の肉質を推計した情報である。
飼養履歴情報は、成育履歴情報と、環境履歴情報と、給餌履歴情報と、健康投薬履歴情報と、を含む。成育履歴情報は、肉豚の成育履歴に関する情報である。環境履歴情報は、肉豚の成育環境に関する情報である。給餌履歴情報は、肉豚の給餌に関する情報である。健康投薬履歴情報は、肉豚の健康投薬の履歴に関する情報である。
家畜基本情報及び飼養履歴情報に含まれる各要素情報は、データ種別として、主に、先天情報と後天情報に分類される。先天情報は、基本的には、時間の経過に伴いに変化しない情報、又は人為的に固定化される情報である。後天情報は、基本的には、時間の経過に伴って変化する、又は変化する可能性のある情報である。
記憶部101は、アプリケーションプログラム1011を備える。また、記憶部101は、家畜情報を記憶するテーブルとして、肉豚マスタ1012、成育履歴テーブル1013、環境履歴テーブル1014、給餌履歴テーブル1015、健康投薬履歴テーブル1016、出荷情報テーブル1017、格付情報テーブル1018、推計肉質情報テーブル1019、を備える。さらに、記憶部101は、数理モデルとして、肉質推計数理モデル1021、を備える。記憶部101は、これらの記憶部に属さないその他の情報についても記憶している。
【0030】
図3は、家畜肉質管理サーバ10の記憶部101に記憶される主な情報を示す表である。具体的には、記憶部101の各テーブル、各テーブルに含まれる各項目、各項目が属するデータ種別を示す表である。なお、
図3では、データ種別を有するテーブル群と、データ種別を有さないテーブル群の2つに分けて表記している。
図3を参照しながら、各テーブルの詳細を説明する。なお、以下の説明における各テーブルに含まれる項目は、一例であり、肉質管理システム1で選択任意として設定されている項目について、ユーザ(農家)は、飼養工程、飼養方法、飼養設備等に合わせて、管理する情報の項目を設定することができる。また、ユーザが複数の農場を有する場合には、農場ごとに選択任意の項目の設定を変更することも可能である。
【0031】
<家畜肉質管理サーバの記憶部の構成>
肉豚マスタ1012は、家畜肉質管理サービスにおいて肉質管理の対象となる肉豚の基本情報である家畜基本情報を記憶し管理するテーブルである。肉豚マスタ1012において、家畜基本情報は、管理肉豚群単位で生成される。肉豚マスタ1012で管理される管理肉豚群は、離乳工程を終えて肥育工程に入った肉豚を所定頭数ごとに分けたグループであり、いわゆる肥育ロットである。
肉豚マスタ1012は、管理肉豚群IDを主キーとして、所属農場、所属豚舎、所属豚房、群頭数、ステータス、母豚、品種、性別、日齢、警報条件、警報履歴の項目を有する。肉豚マスタ1012の各項目は、家畜基本情報の各要素情報として扱われる。
家畜基本情報は、例えばユーザ端末20を用いて、ユーザにより入力され、記憶部101に記憶される。
【0032】
肉豚マスタ1012の各項目の詳細について説明する。
管理肉豚群IDは、飼養される管理肉豚群を識別するための家畜識別情報を記憶する項目である。家畜識別情報は、管理肉豚群ごとにユニークな値が設定される。家畜識別情報は自動で生成されてもよい。管理肉豚群IDの項目のデータ種別は先天情報である。
所属農場は、管理肉豚群が所属する農場についての情報が記憶される項目である。当該情報は、例えば、農場のユニークな識別情報である農場IDと、管理肉豚群が農場に所属を開始した日時と、を含む。なお、基本的には、所属する農場は肉豚が出荷されるまで変更されることはない。所属農場の項目のデータ種別は先天情報である。
所属豚舎は、管理肉豚群が所属する豚舎についての情報が記憶される項目である。当該情報は、例えば、豚舎のユニークな識別情報である豚舎IDと、管理肉豚群が豚舎に所属を開始した日時と、を含む。所属豚舎の項目のデータ種別は先天情報である。
所属豚房は、管理肉豚群が所属する豚房についての情報が記憶される項目である。当該情報は、例えば、豚房のユニークな識別情報である豚房IDと、管理肉豚群が豚房に所属を開始した日時と、を含む。所属豚房の項目のデータ種別は先天情報である。
群頭数は、管理肉豚群に所属する肉豚の頭数の履歴情報が記憶される項目である。群頭数は肥育過程において、死亡や成育不順等により変化する可能性があるため、群頭数の項目のデータ種別は後天情報である。
ステータスは、管理肉豚群のステータスに関する履歴情報が記憶される項目である。ステータスは、肥育前期、肥育後期、出荷済み(格付確定)、出荷済み(格付未確定)、が含まれる。「出荷済み(格付確定)」は、管理肉豚群の出荷後、家畜肉質管理サーバ10において、屠畜場から発行された格付情報(以下、発行格付情報という)が取得され、取得した発行格付情報と出荷した管理肉豚群とが紐付いて記録されている状態を示す。「出荷済み(格付未確定)」は、管理肉豚群の出荷後であるが、「出荷済み(格付確定)」前の状態を示す。肥育後期は、一般に、肉豚の出荷前3か月間である。ステータスの項目のデータ種別は後天情報である。
母豚は、管理肉豚群に所属する肉豚の母豚の識別情報が記憶される項目である。1の管理肉豚群に対し、複数の母豚の識別情報を登録可能である。母豚の項目のデータ種別は先天情報である。
品種は、管理肉豚群に所属する肉豚の品種が記憶される項目である。品種とは、家畜の品種、血統のことであり、牛、豚、羊などの畜種よりも下位概念に相当するものである。具体的には、豚の場合、例えばランドレース種、デュロック種、大ヨークシャー種、バークシャー種、ハンプシャー種等の品種に加えて、これらの純粋種を掛け合わせた交配種を含む。例えば、ランドレース種(L)、大ヨークシャー種(W)、デュロック種(D)のうち2種をかけ合わせた二元交配種や、3種すべてを掛け合わせた三元交配種も含む。交配種の品種情報としては、血統割合(%)や血統表を用いてもよい。通常、管理肉豚群に所属する肉豚の品種は同一である。異なる場合は、複数の品種を登録可能である。品種の項目のデータ種別は先天情報である。
性別は、管理肉豚群に所属する肉豚の性別での頭数又は割合が記憶される項目である。性別は、雌、雄、去勢雄、を含む。性別の項目のデータ種別は先天情報である。
日齢は、管理肉豚群に所属する肉豚の日齢情報又は週齢情報が記憶される項目である。日齢情報は、肉豚の出生日と、肉豚の出生日を基準日(0日)として起算した経過日数である日齢の情報である。週齢情報は、同様に肉豚の出生日を基準日として起算した経過週数である週数の情報である。なお、出生日の代わりに離乳日を基準日とした日齢又は週齢としてもよい。管理肉豚群には、基本的に同じ出生日の肉豚が所属するが、異なる出生日の肉豚が混在してもよく、その場合、当該日齢には、出生日に紐づいた頭数又は割合を含めることができる。日齢の項目のデータ種別は後天情報である。
警報条件は、肉豚に関する各種警報を出力する条件が記憶される項目である。警報条件は、肉質逸脱条件を含む。警報条件の項目のデータ種別は先天情報である。
肉質逸脱条件とは、飼養中の管理肉豚群について出荷時にあるべき肉質状態として予め設定された育成目標値から逸脱する推計結果が得られた場合である。育成目標値は、例えば、格付情報における等級又は当該等級に対応する肉豚の肉質状態である。本実施形態では、育成目標値は、管理肉豚群ごとに、「極上」、「上」、「中」、「並」の4等級のいずれかに設定される。育成目標値からの逸脱の判定は、肉豚の肉質状態の変化度合い(以下、肉質変化度合いという)を指標として用いる。肉質変化度合いは、肉豚個体の将来の所定時点における目標とする肉質状態に対して、すなわち育成目標値を基準点として、相対的にプラス(正)又はマイナス(負)となる段階的指標である。肉質変化度合いは、例えば、肉豚個体の将来の所定時点における目標とする肉質状態の指標を「0(ゼロ)」として、「0」を含み、プラス又はマイナスの数値で示される。管理肉豚群単位の場合、肉質変化度合いは状態分布として示される。所定時期は、例えば出荷予定時期である。
より具体的には、肉質逸脱条件とは、飼養中の管理肉豚群の先天情報と後天情報とを肉質推計数理モデル1021に入力することにより出力データとして得られる推計された当該管理肉豚群の出荷予定時期の肉質状態の変化度合い(以下、推計肉質変化度合いという)と、飼養中の管理肉豚群に対して予め設定された出荷予定時期にあるべき肉質状態の変化度合い(以下、基準肉質変化度合いという)と、の差分からなる乖離度合いが、許容できる所定の幅(値)である閾値を超過する場合を指す。
警報履歴は、出力された警報の履歴情報が記憶される項目である。警報履歴の項目のデータ種別は後天情報である。
【0033】
成育履歴テーブル1013は、肉豚の成育履歴に関する成育履歴情報を記憶し管理するテーブルである。成育履歴情報は、原則、管理肉豚群単位で生成される。成育履歴情報は管理肉豚群に所属する肉豚の体型情報と生体情報と(いずれも
図3に不図示)を含む。
体型情報は、肉豚の体重、体長、体幅、体高、を含む。体型情報は、図示しない体型測定装置の測定データとして取得されたり、後述するセンサユニット30のカメラ3051により肉豚を撮像した家畜画像から画像認識等で推計されたデータとして取得される。
生体情報は、肉豚の行動量、呼吸回数、咳回数、疾病罹患状況、を含む。本実施形態の肉豚は群管理されているため、管理肉豚群に対する体型情報及び生体情報は、管理肉豚群の基本統計値を含む。基本統計値は、例えば、平均値、中央値、標準偏差、前日又は前回測定からの変化量、移動平均など、である。
成育履歴テーブル1013は、ログ日時、対象家畜ID、体重、体長、体幅、体高、行動量、呼吸回数、咳回数、疾病罹患状況、推計肉質変化度合い、の項目を有するテーブルである。成育履歴テーブル1013の各項目は、成育履歴情報の各要素情報として扱われる。
【0034】
成育履歴テーブル1013の各項目の詳細について説明する。
ログ日時は、成育履歴情報が生成された日時を示す情報が記憶される項目である。ログ日時の項目のデータ種別は後天情報である。
対象家畜IDは、生成された成育履歴情報に紐づく対象の管理肉豚群の管理肉豚群IDを記憶する項目である。対象家畜IDの項目のデータ種別は先天情報である。
体重は、対象の管理肉豚群に所属する肉豚個体の体重及びその基本統計値、又は、管理肉豚群に所属する肉豚全体の群体重及びその基本統計値を記憶する項目である。体重の項目のデータ種別は後天情報である。
体長は、対象の管理肉豚群に所属する肉豚個体の体長及びその基本統計値、又は、管理肉豚群に所属する肉豚全体の群体長及びその基本統計値を記憶する項目である。体長の項目のデータ種別は後天情報である。
体幅は、対象の管理肉豚群に所属する肉豚個体の体幅及びその基本統計値、又は、管理肉豚群に所属する肉豚全体の群体幅及びその基本統計値を記憶する項目である。体幅の項目のデータ種別は後天情報である。
体高は、対象の管理肉豚群に所属する肉豚個体の体高及びその基本統計値、又は、管理肉豚群に所属する肉豚全体の群体高及びその基本統計値を記憶する項目である。体高の項目のデータ種別は後天情報である。
行動量は、対象の管理肉豚群に所属する肉豚個体の行動量及びその基本統計値、又は、管理肉豚群に所属する肉豚全体の行動量の基本統計値を記憶する項目である。行動量の項目のデータ種別は後天情報である。
呼吸回数は、対象の管理肉豚群に所属する肉豚個体の呼吸回数及びその基本統計値、又は、管理肉豚群に所属する肉豚全体の呼吸回数の基本統計値を記憶する項目である。呼吸回数の項目のデータ種別は後天情報である。
咳回数は、対象の管理肉豚群に所属する肉豚個体の咳回数及びその基本統計値、又は、管理肉豚群に所属する肉豚全体の咳回数の基本統計値を記憶する項目である。咳回数の項目のデータ種別は後天情報である。
疾病罹患状況は、対象の管理肉豚群に所属する肉豚個体の疾病罹患状況、又は、管理肉豚群に所属する肉豚全体の疾病罹患状況を記憶する項目である。疾病罹患状況の項目のデータ種別は後天情報である。
【0035】
環境履歴テーブル1014は、肉豚の成育環境に関する環境履歴情報を記憶し管理するテーブルである。成育環境とは、本実施形態では、主に、肉豚が飼養されている豚舎又は豚房内の環境である。環境履歴情報は、温湿度、風量、CO2、NOx、NH3、PM2.5、等に関する情報を含む。環境履歴情報はセンサユニット30から定期的に取得されたセンシング情報に基づいて随時生成され、センシング情報から算出した基礎統計量を含む。環境履歴情報の項目のデータ種別は後天情報である。
環境履歴テーブル1014は、ログ日時、測定場所、温湿度、風量、CO2、Nox、PM2.5、の項目を有するテーブルである。環境履歴テーブル1014の各項目は、環境履歴情報の各要素情報として扱われる。
【0036】
環境履歴テーブル1014の各項目の詳細について説明する。
環境履歴テーブル1014のログ日時は、環境履歴情報が生成された日時を示す情報が記憶される項目である。ログ日時の項目のデータ種別は後天情報である。
測定場所は、生成された環境履歴情報が測定された場所を示す情報を記憶する項目である。測定場所は、センサユニット30の各種センサが設置されている場所であり、センサが移動しない場合は、各種センサの識別情報が記憶されてもよい。センサが移動する場合は、移動に伴って変化する位置情報を含めてもよい。測定場所の項目のデータ種別は後天情報である。
温湿度は、センサユニット30の温湿度センサ3052が定期的に取得した測定場所の温湿度を示す情報を記憶する項目である。温湿度を示す情報はユーザの指示や制御部103により随時取得してもよい。温湿度の項目のデータ種別は後天情報である。
風量は、センサユニット30の風量センサ3053が取得した測定場所の風量を示す情報を記憶する項目である。風量を示す情報はユーザの指示や制御部103により随時取得してもよい。風量の項目のデータ種別は後天情報である。
CO2は、センサユニット30の空気品質センサ3054が取得した測定場所のCO2の量を示す情報を記憶する項目である。CO2を示す情報はユーザの指示や制御部103により随時取得してもよい。CO2の項目のデータ種別は後天情報である。
NOxは、センサユニット30の空気品質センサ3054が取得した測定場所のNOxの量を示す情報を記憶する項目である。NOxを示す情報はユーザの指示や制御部103により随時取得してもよい。NOxの項目のデータ種別は後天情報である。
NH3は、センサユニット30の空気品質センサ3054が取得した測定場所のNH3の量を示す情報を記憶する項目である。NH3を示す情報はユーザの指示や制御部103により随時取得してもよい。NH3の項目のデータ種別は後天情報である。
PM2.5は、センサユニット30の空気品質センサ3054が取得した測定場所のPM2.5の量を示す情報を記憶する項目である。PM2.5を示す情報はユーザの指示や制御部103により随時取得してもよい。PM2.5の項目のデータ種別は後天情報である。
【0037】
給餌履歴テーブル1015は、肉豚の給餌及び給水に関する給餌履歴情報を記憶し管理するテーブルである。給餌履歴情報は、飼料の種類、給餌量、給水量を含む。給餌履歴情報はセンサユニット30から定期的に取得されたセンシング情報に基づいて随時生成され、センシング情報から算出した基礎統計量を含む。
給餌履歴テーブル1015は、ログ日時、対象家畜ID、飼料種類、給餌量、給水量、の項目を有するテーブルである。給餌履歴テーブル1015の各項目は、給餌履歴情報の各要素情報として扱われる。
【0038】
給餌履歴テーブル1015の各項目の詳細について説明する。
給餌履歴テーブル1015のログ日時は、環境履歴情報が生成された日時を示す情報を記憶する項目である。ログ日時の項目のデータ種別は後天情報である。
給餌履歴テーブル1015の対象家畜IDは、給餌履歴情報が生成された対象の管理肉豚群の管理肉豚群IDが記憶される項目である。豚房や豚舎で同一の給餌器を用いている場合などには管理肉豚群IDの代わりに順次的な数値と豚房IDや豚舎IDを組み合わせたものとしてもよい。また、給餌履歴テーブル1015は、豚房又は豚舎単位での給餌量、給水量、等の時系列データを保持してもよい。対象家畜IDの項目のデータ種別は先天情報である。
飼料種類は、対象の管理肉豚群に与えられる飼料の種類に関する情報を記憶する項目である。飼料種類には、飼料の成分やその配合量などの情報を含めてもよい。飼料は、一般に、成育段階に応じて種類が切り替えられる。飼料種類の項目のデータ種別は後天情報である。
給餌量は、対象の管理肉豚群に供給された餌の量に関する情報を記憶する項目である。給餌量は、供給された餌の量(供給量)に加えて、対象の管理肉豚群が摂取した餌の量(摂取量)やそれら供給量・摂取量の累積値を含めてもよい。給餌量の項目のデータ種別は後天情報である。
給水量は、対象の管理肉豚群に供給された飲用水の量に関する情報を記憶する項目である。給水量は、供給された飲用水の量(供給量)に加えて、対象の管理肉豚群が摂取した飲用水の量(摂取量)やそれら供給量・摂取量の累積値を含めてもよい。給水量の項目のデータ種別は後天情報である。
【0039】
健康投薬履歴テーブル1016は、肉豚の健康管理及び投薬に関する健康投薬履歴情報を記憶し管理するテーブルである。健康投薬履歴情報は、例えば、肉豚の健康診断の結果、処方した薬の種類や量を含む投薬履歴、ワクチン摂取履歴、等を含む。健康投薬履歴情報は、例えばユーザ端末20を用いて、ユーザにより入力され、記憶部101に記憶される。
健康投薬履歴テーブル1016は、ログ日時、対象家畜ID、情報種別、情報詳細、の項目を有するテーブルである。健康投薬履歴テーブル1016の各項目は、健康投薬履歴情報の各要素情報として扱われる。
【0040】
健康投薬履歴テーブル1016の各項目の詳細について説明する。
ログ日時は、健康投薬履歴情報が生成された日時を示す情報を記憶する項目である。ログ日時の項目のデータ種別は後天情報である。
対象家畜IDは、健康投薬履歴情報が生成された対象の管理肉豚群の管理肉豚群IDが記憶される項目である。対象家畜IDの項目のデータ種別は先天情報である。
情報種別は肉豚の健康投薬に関する情報の種別を記憶する項目である。情報種別は、例えば、健康診断、投薬、ワクチン接種、を含む。情報種別の項目のデータ種別は後天情報である。
情報詳細は、肉豚の健康投薬に関する情報の詳細を記憶する項目である。情報詳細は、情報種別が健康診断の場合は、健康診断の結果が、投薬の場合は、投薬した薬の種類や量が、ワクチン接種の場合はワクチンの種類や量、である。情報詳細の項目のデータ種別は後天情報である。
【0041】
出荷情報テーブル1017は、肉豚の出荷に関する出荷情報を記憶し管理するテーブルである。出荷情報は、例えば、肉豚を出荷した日時、出荷先、出荷した管理肉豚群の識別情報、出荷頭数、等を含む。出荷情報は、例えばユーザ端末20を用いて、ユーザにより入力され、記憶部101に記憶される。出荷情報は、出荷時に編成される出荷ロットごとに生成され管理される。
出荷情報テーブル1017は、出荷ロットIDを主キーとして、出荷日、出荷先、対象家畜ID、出荷頭数、の項目を有するテーブルである。出荷情報テーブル1017の各項目は、出荷情報の各要素情報として扱われる。
【0042】
出荷情報テーブル1017の各項目の詳細について説明する。
出荷ロットIDは、出荷される複数の肉豚をロットとしてまとめた出荷ロットごとにユニークな値が設定されている項目である。出荷ロットは1又は複数の管理肉豚群を含む。出荷ロットIDは出荷情報の新規生成時に自動付与されてもよい。
出荷日は、肉豚が出荷された日を示す情報を記憶する項目である。
出荷先は、肉豚の屠畜を行う屠畜場に関する情報を記憶する項目である。出荷を外部業者に委託する場合は委託先業者に関する情報を含めてもよい。
対象家畜IDは、出荷対象の管理肉豚群を示す管理肉豚群IDが記憶される項目である。複数の管理肉豚群IDを含めることができる。
出荷頭数は、出荷ロットの肉豚の頭数に関する情報を記憶する項目である。
【0043】
格付情報テーブル1018は、格付情報を記憶し管理するテーブルである。格付情報テーブル1018は、格付情報ID、対象出荷ロットID、ソースファイル、屠畜場、生産者、格付日、枝肉番号、出荷者名、性別、枝肉重量、総合等級、背脂肪、外観、肉質、各落ち理由/詳細情報(備考・自由記述)、等の項目を有する。格付情報テーブル1018の各項目は、格付情報の各要素情報として扱われる。
【0044】
格付情報とは、出荷された肉豚の肉質の評価(格付結果)を示す情報である。出荷された肉豚の肉質の評価は、屠畜場において屠畜された枝肉を対象に枝肉ごとに実施される。格付情報は、評価を実施した屠畜場によって電子ファイル又は印刷物(紙)で発行され、出荷元の農家に提供される。屠畜場から発行された格付情報(豚の場合は、いわゆる豚枝肉格付明細書)を、以下、発行格付情報という。発行格付情報は、後述する格付情報取得部1032により取得され、記憶部101に記憶される。発行格付情報は、発行する屠畜場によって、又は屠畜場が属する国や地域によって、異なるフォーマットにて提供されたり、1つのファイル又は1ページに複数の枝肉に対する格付情報が記載されている可能性がある。そのため、後述する格付情報標準化部1033が、発行格付情報について所定の標準形式に変換する標準化の前処理を実施する。格付情報標準化部1033が発行格付情報を標準化したものを、以下、標準化格付情報という。標準化の処理の詳細については後述する。発行格付情報及び標準化格付情報は、格付情報テーブル1018に記憶される。
【0045】
格付情報は、総合等級、個別観点等級、これら等級の根拠となる肉豚(枝肉)の定量データ及び定性データを含む。総合等級は、肉豚(枝肉)の肉質の総合的な評価を示す情報である。個別観点等級は、肉豚(枝肉)の肉質の個別観点ごとの評価を示す情報である。等級(総合等級、個別観点等級)は、「極上」、「上」、「中」、「並」の4段階の評価に、等級に該当しない「等外」を加えた5段階に分類される。定量データには、肉豚(枝肉)の枝肉重量及び背脂肪厚が含まれる。定性データには、例えば、文字情報で示された各落ち理由や評価に関する詳細情報が含まれる。
個別観点は、「重量及び背脂肪の範囲」の観点、「外観」の観点、「肉質」の観点を含む。「重量及び背脂肪の範囲」の観点は、定量データに基づいて、具体的には、枝肉半丸重量及び背脂肪厚がそれぞれ定められた範囲内にあるか否かを条件として、評価される。「外観」の観点は、細目として、均称、肉づき、脂肪付着、仕上げ、を含み、細目ごとに等級に対応する条件が定められている。「肉質」の観点は、細目として、肉の締まり及びきめ、肉の色沢、脂肪の色沢と質、脂肪の沈着を含み、細目ごとに等級に対応する条件が定められている。
【0046】
格付情報テーブル1018の各項目の詳細について説明する。なお、下記項目は家畜が豚の場合の格付情報の項目の一例であり、格付情報テーブル1018に含まれる項目は、家畜の動物の種類や、格付を発行する国や地域によって異なってもよい。また、格付情報テーブル1018に含まれる項目は、後述する管理情報設定部1039によって項目の追加・変更・削除が可能である。
格付情報IDは、生成された格付情報ごとにユニークな値が設定されている格付情報IDを記憶する項目である。格付情報テーブル1018に格納される格付情報は、枝肉ごとに生成される。格付情報IDは、格付情報の新規生成時に自動付与されてもよい。
対象出荷ロットIDは、格付情報に紐づく対象の出荷ロットを示す出荷ロットIDが記憶される項目である。
ソースファイルは、屠畜場から発行された発行格付情報を含むファイルが記憶される項目である。例えば、発行格付情報が電子情報の場合は、その電子情報のファイルが、紙に印刷された情報の場合は、例えばスキャンした電子情報のファイルが記憶される。
屠畜場は、発行格付情報を発行した屠畜場を示す情報、例えば事業所名、を記憶する項目である。
生産者は、生産者を示す情報を記憶する項目である。生産者は通常、家畜農家である。
格付日は、発行格付情報に含まれる格付が実施された日を示す情報が記憶される項目である。さらに発行格付情報の発行日を記憶してもよい。
枝肉番号は、屠畜場が屠畜時に任意に付加する枝肉番号に関する情報が記憶される項目である。枝肉番号は、肉豚個体の枝肉ごとに付与される。
出荷者名は、生産者から肉豚の出荷を受託した業者に関する情報が記憶される項目である。
性別は、枝肉となった肉豚個体の性別が記憶される項目である。性別は、雌、雄、去勢雄、を含む。
総合等級は、肉豚個体(枝肉)の肉質を総合的に評価した総合等級を示す情報が記憶される項目である。
枝肉重量は、肉豚個体の枝肉重量を示す情報が記憶される項目である。枝重量は、例えば、左右の半丸別に記憶されてもよい。
背脂肪厚は、肉豚個体の枝肉の背脂肪厚を示す情報が記憶される項目である。
重量と背脂肪は、肉豚個体の枝肉の重量と背脂肪厚に基づいた評価を示す情報が記憶される項目である。重量と背脂肪厚の評価を示す表現としては、一般に極上、上、中、並、等外が用いられる。
外観は、肉豚個体の枝肉の外観の評価を示す情報が記憶される項目である。外観の評価を示す表現としては、一般に極上、上、中、並、等外が用いられる。
肉質は、肉豚個体の枝肉の肉質の評価を示す情報が記憶される項目である。肉質の評価を示す表現としては、一般に極上、上、中、並、等外が用いられる。
格落ち理由/詳細情報は、屠畜場が発行した格付情報に含まれている格落ち理由/詳細情報(自由記述)を示す情報が記憶される項目である。
【0047】
推計肉質情報テーブル1019は、後述する肉質推計部1035が後述する肉質推計数理モデル1021を用いて推計した肉豚の肉質に関する情報である推計肉質情報を記憶し管理するテーブルである。
推計肉質情報テーブル1019は、推計肉質情報IDを主キーとして、ログ日時、対象家畜ID、推計肉質変化度合い、肉質逸脱条件判定結果、寄与変数、の項目を有する。推計肉質情報テーブル1019の各項目は、推計肉質情報の各要素情報として扱われる。
推計肉質情報は、肉質推計部1035により生成されて、記憶部101に記憶される。
【0048】
推計肉質情報テーブル1019の各項目の詳細について説明する。
推計肉質情報IDは、生成された推計肉質情報ごとにユニークな値が設定されている推計肉質情報IDを記憶する項目である。推計肉質情報IDは、推計肉質情報の新規生成時に自動付与されてもよい。
ログ日時は、推計肉質情報が生成された日時を示す情報を記憶する項目である。
対象家畜IDは、推計肉質情報の対象の管理肉豚群を示す管理肉豚群IDが記憶される項目である。
推計肉質変化度合いは、肉質推計部1035が肉質推計数理モデル1021を用いて推計した対象の管理肉豚群に属する肉豚の将来の肉質の変化度合いに関する情報が記憶される項目である。「肉質の変化度合い(以下、肉質変化度合いという)」の詳細については後述する。当該項目には、肉豚個体ごとの変化度合いと、管理肉豚群全体の肉質変化度合いの状態分布が記憶される。
肉質逸脱条件判定結果は、後述する警報処理の警報判定ステップの判定結果に関する情報が記憶される項目である。
寄与変数は、寄与変数と、その寄与変数の寄与度と、その寄与変数の変動量の組み合わせと、が記憶される項目である。寄与変数、寄与度、変動量の詳細は後述する。当該項目には、寄与変数、寄与度、変動量の複数の組み合わせを含むことができる。
【0049】
<数理モデル>
肉質推計数理モデル1021は、飼養中の肉豚の先天情報と、飼養中の肉豚の後天情報とを含む家畜の情報である家畜情報を入力データとして、その肉豚の将来の所定の時点の肉質変化度合いを推計し出力する数理モデルである。入力データとして入力される家畜情報の変数は、家畜情報のうち家畜基本情報及び飼養履歴情報の要素情報から選択される。すなわち、入力データは、肉豚マスタ1012、成育履歴テーブル1013、環境履歴テーブル1014、給餌履歴テーブル1015、健康投薬履歴テーブル1016、の各項目に対応する要素情報から選択される。また、各変数は単独で用いても構わないし、複数の変数を組み合わせた合成変数としてもよく、さらに、コード化して用いても良い。コード化については後述する。
将来の所定の時点は、例えば、出荷予定時期である。肉質変化度合いは、例えば、将来の所定の時期において育成目標値より良い肉質となる「3」、「2」、「1」、育成目標値の肉質となる「0」(ゼロ、影響なし)、悪い肉質となる「-1」、「-2」、「-3」、等によって示される。「0」(影響なし)は、例えば出荷時に「上」の格付を得られる状態に育成するという育成目標値に対し、その飼養履歴情報の状態であれば影響がゼロなので、現時点で推計される出荷時の格付は「上」となるという意味である。育成目標値は、あらかじめ肉豚マスタ1012の警報条件のパラメータの1つとして記憶されている。このように、肉質変化度合いという段階的指標(ランキング)を、格付情報の等級と独立して順序尺度として用いることにより、家畜の種類や、国・地域によって異なる格付の等級間の差異を吸収することが可能になる。肉質推計数理モデル1021の更新処理は、後述する。
【0050】
肉質推計数理モデル1021は、出力された肉質変化度合いの改善に寄与する家畜情報の変数(以下、寄与変数という)と、当該寄与変数の肉質変化度合いへの寄与度との組み合わせとして推計し出力することができる。寄与変数は、例えば、入力データとして入力された家畜情報の変数から選択される。さらに、肉質推計数理モデル1021は、出力された肉質変化度合いと、その寄与変数及び寄与度の組み合わせと、に基づいて、育成目標値に対して現在取り得る又は推奨される当該寄与変数とその変動量の組み合わせを推計し出力することができる。
【0051】
肉質推計数理モデル1021は、例えば人工知能(機械学習、深層学習モデル)、線形回帰モデルなどを用いて構築したものである。肉質推計数理モデル1021は、単一のモデルである必要はなく、複数の独立したモデルを組み合わせたり、切り替えたりして実現しても良い。深層学習の例としては、DNN(ディープニューラルネットワーク)、RNN(リカレントニューラルネットワーク)による深層学習モデルを肉質推計数理モデル1021に適用できる。機械学習の例としては、ランダムフォレスト、サポートベクターマシーン(SVM)などを肉質推計数理モデル1021に適用できる。そのほか、状態空間モデルなどの時系列分析モデル、及び、ベイズ、決定木、回帰などの統計モデルを肉質推計数理モデル1021に適用できる。
【0052】
肉質推計数理モデル1021は、過去に出荷した肉豚の格付情報と、当該出荷した肉豚の先天情報と、当該出荷した肉豚の後天情報と、に基づいて生成される。肉質推計数理モデル1021は、肉豚の品種ごとに生成されてもよい。肉質推計数理モデル1021は、肉豚の性別ごと、具体的には、雌、雄、去勢雄ごとに生成されてもよい。肉質推計数理モデル1021は、農場ごとに生成されてもよい。
【0053】
すなわち、肉質推計数理モデル1021は、屠畜後の肉豚個体の肉質に関する格付情報と、その肉豚個体が先天的に有する、品種、親豚、性別、等の先天的な情報群、及び、その肉豚個体が飼養過程にてどのような飼養環境・状況(生まれた月、餌の内容物、餌の切り替えタイミング、給水、温湿度、CO2量、疾病罹患の有無など)で飼養されたかの後天的な情報群の組み合わせから、肉豚個体の肉質をより高品位な(上位の格付や等級を得られる)状態とするための、先天情報と後天情報の最適な組み合わせを解析させた数理モデルである。
【0054】
<家畜肉質管理サーバの制御部の構成>
図2に戻り、家畜肉質管理サーバ10の制御部103について説明する。
家畜肉質管理サーバ10の制御部103は、家畜情報取得部1031、格付情報取得部1032、格付情報標準化部1033、家畜情報標準化部1034、肉質推計部1035、警報制御部1036、ガイド情報生成部1037、数理モデル管理部1038、管理情報設定部1039、を備える。制御部103は、記憶部101に記憶されたアプリケーションプログラム1011を実行することにより、各機能ユニットが実現される。
【0055】
家畜情報取得部1031は、家畜情報をユーザ端末20、センサユニット30、又は、家畜肉質管理サーバ10に接続された図示しない外部入力装置から定期的又は随時に取得して記憶部101に記憶する。当該外部入力装置は、家畜肉質管理サービスを提供する事業者が用いる装置、又は、導入する農家が既設に保有する装置である。また、家畜情報取得部1031は、取得した家畜情報の基礎統計量を算出して記憶部101に記憶する。
【0056】
家畜情報取得部1031は、家畜飼養情報、すなわち、成育履歴情報、環境履歴情報、給餌履歴情報について、定期的に、主に、センサユニット30からセンシング情報を取得し記憶する。
家畜情報取得部1031は、センサユニット30のカメラ3051から家畜である肉豚を撮像した家畜画像を連続、あるいは定期的に取得し、家畜画像の画像認識により、肉豚個体を識別し(画像認識個体識別子で管理)、体型情報と生体情報を画像から推計し成育履歴テーブル1013に記憶する。家畜情報取得部1031は、肉豚個体について推計された体型情報と生体情報から、肉豚個体が所属する肉豚群の体型情報と生体情報の基礎統計量を算出し、成育履歴テーブル1013に記憶する。画像認識を用いた推計は、例えば、画像認識用のAIが用いられる。
【0057】
格付情報取得部1032は、発行格付情報をネットワークNWを介して、又はユーザ端末20やユーザ端末20に接続された周辺機器から取得して記憶部101に記憶する。
【0058】
格付情報標準化部1033は、発行格付情報を標準化して標準化格付情報を生成し記憶する格付情報標準化処理を行う。
格付情報標準化処理のフローの詳細は後述する。
【0059】
家畜情報標準化部1034は、家畜情報に含まれる項目のうち、肉質推計数理モデル1021の生成に必要な項目について空欄や規定のデータ形式から外れている場合に、データの補完や修正を行う家畜情報標準化処理を実行する機能を有する。家畜情報標準化処理は、格付情報標準化処理と扱うデータ項目が異なるだけで、処理のフローや内容は共通するため説明を省略する。
【0060】
肉質推計部1035は、飼養中の肉豚の先天情報と、飼養中の肉豚の後天情報と、に基づいて飼養中の家畜の肉質変化度合いを肉質推計数理モデル1021を用いて推計する処理(肉質推計処理)を行う。
肉質推計処理の詳細は後述する。
【0061】
警報制御部1036は、警報状態が発生した場合に、警報処理を行う。警報状態は、家畜肉質管理システム1においてあらかじめ設定された警報条件に合致する状態である。警報処理は、警報情報を生成し出力する処理である。具体的には、警報制御部1036は、肉質推計部1035が推計した飼養中の家畜の肉質変化度合いが肉質逸脱条件を満たす場合に警報情報を生成し出力する。肉質逸脱条件は、ユーザ端末20から、肉豚の飼養単位となる農場、豚舎、豚房、品種、飼料種類ごとに設定及び変更することが可能である。また、警報情報の出力先(例えばユーザ端末20や獣医の連絡先など)も、ユーザ端末20から、同様に、農場、豚舎、豚房、品種、飼料種類ごとに設定及び変更することが可能である。
警報処理の詳細は後述する。
【0062】
ガイド情報生成部1037は、警報状態が発生した場合に、ガイド生成処理を行う。ガイド生成処理は、その警報状態の解消に有効な対応策であるガイド情報を生成し警報情報とともにユーザに提示する処理である。ガイド情報生成部1037は、ユーザの要求によりガイド生成処理を実行してもよい。
ガイド生成処理の詳細は後述する。
【0063】
数理モデル管理部1038は、数理モデルを生成し更新する数理モデル更新処理を実行する。数理モデルは、肉質推計数理モデル1021を含む。
数理モデル更新処理の詳細は後述する。
【0064】
管理情報設定部1039は、格付情報の項目を変更する、すなわち、格付情報テーブル1018の項目を編集するテーブル編集処理を実行する。
具体的には、テーブル編集処理において、管理情報設定部1039は、格付情報テーブル1018に、新たな項目を追加したり、項目に記憶される内容や言語を変更したり、項目に記憶されるデータの標準形式を指定したりすることができる。
これにより、格付情報テーブル1018の既存の項目では対応できない格付情報、例えば外国の格付情報を取得して、家畜の飼養に利用することができる。
テーブル編集処理は、例えば、ユーザ(家畜肉質管理サービスを提供する事業者)からのリクエスト(例えば、ユーザ端末20において、発行格付情報を取得するための表示画面上に設けられる「テーブル編集」アイコンを選択するなど)に応じて開始されてもよいし、格付情報取得部1032が発行格付情報を取得したときに、格付情報取得部1032が、新規項目や変則項目の有無を判定することにより開始されてもよい。
【0065】
また、管理情報設定部1039は、格付情報について出力する項目を変更する、すなわち、ユーザに表示内容、警告表示、操作音、表示音などのユーザインターフェースを編集させる出力編集処理を実行する。
具体的には、出力編集処理において、管理情報設定部1039は、ユーザ端末20への出力内容・表示内容について、新たな項目を追加出力・追加表示させたり、既存の項目を非表示にしたり、表示項目の配置、サイズ、色などの表示態様を変更したり、警告の項目を新規追加・変更したり、ユーザが指定した表示態様・出力態様でパターン登録したり、することができる。
これにより、格付情報テーブル1018に新規項目が追加された場合でも、新規項目が表示されるよう設定することができる。また、格付情報テーブル1018の既存の項目が編集された場合でも、編集内容に合わせて出力内容・表示内容を変更させることができる。すなわち、家畜の飼養情報の管理において、ユーザ(農場側)ごとに異なるユーザインターフェースであっても、拡張性を備えることで汎用性が具備されるため、家畜の飼養において肉質改善の実行性を高めることができる。
出力編集処理は、例えば、ユーザからのリクエスト(例えば、ユーザ端末20において、ディスプレイ2071の表示画面上に設けられる「表示出力設定」アイコンを選択するなど)に応じて開始されてもよいし、テーブル編集処理に続いて開始されてもよい。
【0066】
<ユーザ端末の構成>
図4はユーザ端末20の機能構成を示すブロック図である。
ユーザ端末20は、家畜肉質管理サービスを利用するユーザが操作する情報処理装置である。ユーザ端末20は、例えば、スマートフォン、タブレット等の携帯端末でもよいし、据え置き型のPC(Personal Computer)、ラップトップPCであってもよい。また、HMD(Head Mount Display)、腕時計型端末等のウェアラブル端末であってもよい。ユーザ端末20は、記憶部201、制御部203、入力装置205、出力装置207を備える。
【0067】
<ユーザ端末の記憶部の構成>
ユーザ端末20の記憶部201は、アプリケーションプログラム2011、ユーザID2012、を備える。
【0068】
アプリケーションプログラム2011は、記憶部201に予め記憶されていても良いし、通信IFを介して家畜肉質管理サービス提供者が運営するウェブサーバ等からダウンロードする構成としても良い。
アプリケーションプログラム2011は、ウェブブラウザアプリケーションなどのアプリケーションを含む。
アプリケーションプログラム2011は、ユーザ端末20に記憶されているウェブブラウザアプリケーション上で実行されるJavaScript(登録商標)などのインタープリター型プログラミング言語を含む。
【0069】
ユーザID2012は家畜肉質管理サービスを利用するユーザのアカウントIDである。ユーザは、ユーザ端末20からユーザID2012を、家畜肉質管理サーバ10へ送信する。家畜肉質管理サーバ10は、サービスを利用する農場側と、サービスを提供する事業者側の2種のユーザを、ユーザID2012に基づき識別し、家畜肉質管理サービスの各機能を適切なユーザに対して提供する。なお、ユーザID2012には、ユーザ端末20を利用しているユーザを識別するにあたり家畜肉質管理サーバ10から一時的に付与されるセッションIDなどの情報を含む。
【0070】
<ユーザ端末の制御部の構成>
ユーザ端末20の制御部203は、入力制御部2031、出力制御部2032を備える。制御部203は、記憶部201に記憶されたアプリケーションプログラム2011を実行することにより、各機能ユニットが実現される。
【0071】
ユーザ端末20の入力装置205は、ユーザが操作することにより情報の入力や選択が可能な装置である。情報の入力と選択とは、例えば数値や文字や記号を電子ペンでの記入やキーボードによる入力、項目の選択、処理を変更/決定する入力などである。入力装置205は、例えば、カメラ2051、マイク2052、位置情報センサ2053、モーションセンサ2054、タッチデバイス2055、キーボード2066を含む。
【0072】
ユーザ端末20の出力装置207は、情報等をユーザに表示、再生、通知が可能な装置である。出力装置207は、ディスプレイ2071を備える。出力装置207は、そのほかに、スピーカ2072を含んでもよい。
【0073】
ディスプレイ2071は、ユーザ端末20と独立したディスプレイ装置であっても構わないし、スマートフォンやタブレットにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置であっても構わない。
【0074】
<センサユニットの構成>
図5は、センサユニット30の機能構成を示すブロック図である。
センサユニット30は、1又は複数のセンサを搭載した計測端末である。センサユニット30は、各センサが常時、随時、又は、定期的に取得したセンシング情報を、家畜肉質管理サーバ10に随時送信する機能を有する。センサユニット30は、主に、家畜肉質管理サービスを利用する農場の豚舎や豚房に設置される。センサユニット30は、記憶部301、制御部303、入力装置305、を備える。センサユニット30は、少なくとも、農場の肉豚の画像を入手する撮像機能をそなえたセンサ(カメラ)を備える。
【0075】
<センサユニットの記憶部の構成>
センサユニット30の記憶部301は、アプリケーションプログラム3011、センサユニットID3012、カメラID3013、を備える。
【0076】
センサユニットID3012は、センサユニット30を識別するためのセンサユニット30ごとにユニークな値が設定されている識別情報である。センサユニット30は、家畜肉質管理サーバ10との通信時にセンサユニットID3012を家畜肉質管理サーバ10に送信する。家畜肉質管理サーバ10は、センサユニットID3012に基づき、センサユニット30を識別し、必要に応じてセンサユニット30へ制御信号を送信する。
【0077】
カメラID3013は、センサユニット30の搭載されたカメラ3051を識別するためのセンサユニット30に搭載されたカメラごとにユニークな値が設定されている識別情報である。本実施形態では、センサユニット30が搭載するカメラはカメラ3051のみのため、カメラ3051に対応する識別子が記憶されている。センサユニット30は、家畜肉質管理サーバ10との通信時にカメラ3051に対応する識別子を含むカメラID3013を家畜肉質管理サーバ10に送信する。家畜肉質管理サーバ10は、カメラID3013に基づき、カメラ3051を識別し、必要に応じてセンサユニット30へカメラ3051の制御信号を送信する。なお、センサユニット30に搭載されるカメラが複数の場合は、各カメラに対応する識別子が複数記憶される。
【0078】
<センサユニットの制御部の構成>
センサユニット30の制御部303は、入力制御部3031、を備える。制御部303は、常時、随時、又は、定期的に、入力装置305の各センサから連続データ又は離散データとして取得した情報であるセンシング情報を取得し、これらのセンシング情報を随時家畜肉質管理サーバ10に送信する。具体的には、カメラ3051から画像情報を、温湿度センサ3052から温湿度情報を、風量センサ3053から風量情報を、空気品質センサ3054から風量情報を、給餌量・給水量センサ3055から給餌情報を、それぞれ取得し、これらのセンシング情報を家畜肉質管理サーバ10に随時送信する。
【0079】
センサユニット30の入力制御部3031は、入力装置305を制御する機能を有する。
【0080】
センサユニット30の入力装置305は、カメラ3051、温湿度センサ3052、風量センサ3053、空気品質センサ3054、給餌量・給水量センサ3055、を備える。また、入力装置305は、音声入力を受け付けるマイクや、文字や選択の入力を受け付けるキーパッド(いずれも不図示)を備えていてもよい。また、入力装置305は、気圧センサや、照度センサ(いずれも不図示)、を備えていてもよい。
【0081】
カメラ3051は、例えば、可視光カメラであり、被写体から反射される光を検出して画像(静止画又は動画)情報を生成する機能を有している。なお、カメラ3051は、夜間撮像も可能なように、上記可視光カメラに加えて、赤外線カメラと赤外線ライトの組み合わせを併用してもよい。また、被写体との距離を測定するデプス情報を併用しても良い。本実施形態では、1のセンサユニット30に対して1のカメラ3051が搭載されているが、複数のカメラを搭載してもよい。カメラ3051は、肉豚を撮像した家畜画像を生成する。
【0082】
温湿度センサ3052は、当該センサが設置されている測定場所(空間)の温度及び湿度を検出して温湿度情報を生成する機能を有している。温湿度センサ3052は、温度及び湿度をそれぞれ測定することができる、温度センサと湿度センサであってよい。温度センサは設置されている場所の気温を摂氏(度)又は華氏(度)で測定することができる。湿度センサは、例えば相対湿度を(%)や(%RH)として測定することができる。
【0083】
風量センサ3053は、当該センサが設置される測定場所(空間)を出入りする空気流量を検出して風量情報を生成する機能を有している。例えば風速計であり、畜舎の屋内や屋外に設置することができ、風量(m/s)を測定することができる。
【0084】
空気品質センサ3054は、当該センサが設置される測定場所(空間)の空気の品質を検出して空気品質情報を生成する機能を有している。空気品質は、CO2の濃度(量)、NOxの濃度(量)、NH3の濃度(量)、PM2.5の量を含み、空気品質情報は、CO2情報、NOx情報、NH3情報、PM2.5情報を含む。また、空気品質センサ3054は、臭気の原因となるメチルメルカプタン等を検出して臭気情報を生成してもよい。
【0085】
給餌量・給水量センサ3055は、当該センサが設置される測定場所(豚房)に供給される餌及び水の量を示す給餌情報を生成する機能を有している。
【0086】
<格付情報標準化処理>
図6は、格付情報標準化処理の動作を示すフローチャートである。
格付情報標準化処理は、屠畜場によってフォーマットや形式、入力形態(データ型、コード値など)が異なる場合がある発行格付情報を標準化し、格付情報と家畜情報を紐づけして、格付情報を肉質推計数理モデル1021で解析可能にするための処理である。
発行格付情報の標準化とは、発行格付情報を、肉質推計数理モデル1021に入力できる所定の形式の電子情報に合致するようにデータ形式を転換することである。標準化格付情報は、格付情報の所定の項目について、肉質推計数理モデル1021に入力できる所定の形式となっている電子情報である。格付情報の所定の項目とは、例えば、格付情報テーブル1018に含まれる項目である。
格付情報標準化処理は、格付情報取得部1032が発行格付情報を取得し、格付情報標準化部1033が、取得した発行格付情報を標準化し、家畜情報と紐づけた標準化格付情報を生成し出力する一連の処理である。
以下、同フローチャートに沿って格付情報標準化処理の動作を説明する。
【0087】
ステップS101において、家畜肉質管理サーバ10の格付情報取得部1032は、屠畜場が発行した発行格付情報を取得する。
具体的には、発行格付情報が紙に印刷されている情報の場合、格付情報取得部1032は、紙面をスキャンし文字認識技術や画像認識技術を用いて、格付情報の各項目とその内容に対応する情報を認識し、テキスト情報や、画像情報等の電子情報に変換する。画像情報は、例えば、等級ごとの印影を含んでもよい。
格付情報取得部1032は、発行格付情報について、格付情報テーブル1018の屠畜場、生産者、格付日、枝肉番号、出荷者名、総合等級、枝肉重量、背脂肪厚、重量と背脂肪厚、外観、肉質、各落ち理由/詳細情報の各項目に対応する情報を取得する。1の発行格付情報に複数の枝肉の格付結果が記載されている場合は、枝肉ごとに格付情報テーブル1018の各項目に対応する情報を取得する。
【0088】
ステップS102において、格付情報標準化部1033は、ステップS101において取得した発行格付情報と出荷情報とを紐づける。具体的には、格付情報標準化部1033は、取得した発行格付情報の屠畜場、生産者、格付日、出荷者名、格付結果が付与された枝肉数と、記憶部101の出荷情報テーブル1017の出荷日、出荷先、対象家畜ID、出荷頭数と、に基づいて、発行格付情報が発行された出荷ロットを特定し、取得した発行格付情報と特定した出荷ロットの出荷情報とを紐づける。発行格付情報に紐づく出荷情報の出荷ロットIDは、格付情報テーブル1018の対象出荷ロットIDに記憶される。1つの発行格付情報に、複数の出荷ロットが紐づくことがある。逆に、1つの出荷ロットに、複数の発行格付情報が紐づくこともある。なお、発行格付情報と出荷ロットの紐付けは、農場の従業者等により手動で行われたり修正されたりしてもよい。
【0089】
ステップS103において、家畜肉質管理サーバ10の格付情報標準化部1033は、ステップS101で取得した発行格付情報について欠落した情報の存否を判定する(欠落判定)。当該判定が真、すなわち発行格付情報に欠落した情報がある場合は、ステップS104に進む。一方、当該判定が偽、すなわち発行格付情報に欠落した情報がない場合は、ステップS105に進む。発行格付情報についての欠落とは、発行格付情報に、項目抜けや項目内の空欄・Null値があることである。項目抜けとは、取得した発行格付情報において、格付情報テーブル1018の項目と同じ又は相当する項目自体が存在しないことである。例えば、取得した発行格付情報に、格付情報テーブル1018の項目「外観」に対応する項目自体が存在しない場合である。この場合、発行格付情報に含まれる全ての枝肉について「外観」の評価が存在しないことになる。また、項目内の空欄・Null値は、例えば、項目「外観」が存在するが、ある枝肉についてその項目の評価が空欄である場合である。
【0090】
ステップS104において、すなわちステップS103において発行格付情報に欠落した情報があると判定された場合、格付情報標準化部1033は、当該欠落した情報について、当該情報に当てはまる内容を推計した補完情報を生成する(補完処理)。欠落した情報が複数ある場合、格付情報標準化部1033は、欠落した情報それぞれについて、補完情報を生成する。
格付情報標準化部1033は、例えば、あらかじめ用意された図示しない格付結果標準化設定情報に規定された規則に基づいて補完情報を生成したり、過去に取得した発行格付情報における同じ情報の統計値を用いて補完情報を生成したりする。格付情報標準化部1033は、他の屠畜場からの格付情報を総合的に統計処理したデータセットを参照し、空欄の項目についてデータセットにおける指定した項目の平均値、又は、全体の確率密度分布に即すようにランダムに値を補完情報として生成してもよい。データセットは自農場の過去の出荷した肉豚について蓄積された格付情報のみを統計処理して生成されてもよいし、他農場において過去に出荷した肉豚について蓄積された格付情報を含めて統計処理して生成されてもよい。なお、ユーザ(農家)は、自農場の格付情報、及び、自農場の格付情報のみから生成されたデータセットを、利用、閲覧、及び、ダウンロードが可能であるが、他農場の格付情報、及び、他農場の格付情報を含めて生成されたデータセットを閲覧、及び、ダウンロードすることは制限される。このようにデータセキュリティをかけることで、他農場の情報を自農場が転用できないようにすることを通じて、肉質推計数理モデル1021の推計精度向上を図るためのサンプル数を増加させることができる。
【0091】
ステップS105において、格付情報標準化部1033はステップS101で取得した発行格付情報について修正が必要な情報の有無を判定する(修正要否判定)。当該判定が真、すなわち発行格付情報に修正が必要な情報がある場合はステップS106に進む。一方、当該判定が偽、すなわち発行格付情報に修正が必要な情報がない場合は、ステップS107に進む。
修正が必要な情報とは、肉質推計数理モデル1021の入力データの形式と異なる形式の情報である。例えば、格付情報の項目「総合等級」について、肉質推計数理モデル1021の入力データの形式が、文字情報の「極上」、「上」、「中」、「並」、「等外」のいずれかであると設定されている場合、格付情報標準化部1033は、これら以外の形式で取得された情報を修正が必要な情報と判断する。「極上」、「上」、「中」、「並」、「等外」という5段階の評価を示す情報の表現について、その他の文字情報で示されていたり、印章や〇(マル)×(バツ)などの記号や図形で示されていたりと、異なる表現が用いられている場合である。
【0092】
ステップS106において、すなわち発行格付情報に修正が必要な情報がある場合、格付情報標準化部1033は、当該修正が必要な情報について、修正情報を生成し、ステップS106に進む(修正処理)。すなわち、格付情報標準化部1033は、修正が必要な情報を、肉質推計数理モデル1021の入力データの形式となるようデータ転換を実施する。データの修正は、例えば、画像情報から文字情報へ転換することや、所定の等級を示す表現として異なる態様がある場合に、あらかじめ指定した態様に転換すること、である。また、発行格付情報が紙の場合において、文字認識技術や画像認識技術を用いて取得したデータが判読不可の場合には、ユーザに該当の元ファイルを提示し、適切なデータを選択させるデータ確認を実施することも含まれる。
【0093】
ステップS107において、格付情報標準化部1033は、ステップS101で取得した発行格付情報について、欠落した情報については補完情報で補完し、修正が必要な情報については修正情報で置き換えた格付標準化情報を生成し、ステップS102で特定した出荷情報と紐づけて格付情報テーブル1018の各項目に記憶して当該フローを終了する(標準化情報生成処理)。なお、発行格付情報の欠落情報について必要な補完や修正を行ったあと、発行格付情報の任意の要素についてコード化を実施してもよい。コード化とは、「極上」は「1」、「上」は「2」など、質的データ(テキストデータ)をモデルが解析できるように数値化(ダミー変数化)することである。数値化(ダミー変数化)を行うのは、目的変数と説明変数の両方に対して、実施することができる。ダミー変数を用いることで、インプットが異なっても、同じ意味や同じ数字として捉えることができる。
【0094】
<肉質推計処理>
図7は、肉質推計処理の動作を示すフローチャートである。
肉質推計処理は、飼養中の肉豚の先天情報及び後天情報から、肉豚の将来の肉質に与える影響を推計するための処理である。なお、先天情報と後天情報について、格付情報標準化処理と同様に、肉質推計処理の目的変数と説明変数として、数値化(ダミー変数化)されたデータ項目をインプットとして処理することも可能である。
肉質推計処理は、肉質推計部1035が、肉質推計数理モデル1021を用いて、肉豚の出荷時の肉質変化度合いを推計する一連の処理である。
以下、同フローチャートに沿って肉質推計処理の動作を説明する。
肉質推計処理は、定期的又はユーザの指示により随時実行される。特に、肉質推計処理は、離乳後直後から出荷数か月前までの時間的余裕がある時期の肉豚に対して肉質推計処理を実施して出荷時の肉質を把握することで、出荷時の目標肉質との差分が小さい段階で、目標肉質との乖離を解消する時間的余裕が発生する。
【0095】
ステップS201において、家畜肉質管理サーバ10の肉質推計部1035は、飼養中の肉豚群の先天情報及び後天情報を参照する(家畜情報参照ステップ)。具体的には、肉質推計部1035は、記憶部101の肉豚マスタ1012、成育履歴テーブル1013、環境履歴テーブル1014、給餌履歴テーブル1015、及び、健康投薬履歴テーブル1016に記憶された各項目の情報をデータ種別の「先天」又は「後天」の分類に基づいて参照する。
【0096】
ステップS202において、肉質推計部1035は、ステップS201で参照した飼養中の肉豚群の先天情報及び後天情報に基づいて、肉質推計数理モデル1021を用いて、飼養中の肉豚群の肉質変化度合いを推計する(肉質推計ステップ)。
具体的には、肉質推計部1035は、ステップS201で参照した管理肉豚群ごとに、管理肉豚群IDに紐づく先天情報と後天情報を入力データとして、肉質推計数理モデル1021に入力し、管理肉豚群の出荷時における肉質変化度合いを出力データとして取得する。また、肉質推計部1035は、出力データを推計肉質変化度合いとして、記憶部101の推計肉質情報テーブル1019の推計変化度合いの項目に管理肉豚群IDと紐づけて記憶する(対象家畜IDに管理肉豚群IDを記憶する)。
【0097】
<警報処理>
図8は、警報処理の動作を示すフローチャートである。
警報処理は、飼養中の肉豚の肉質について警報を生成し出力するための処理である。
警報処理は、警報制御部1036が、飼養中の肉豚について推計された出荷時の肉質が所定の警報条件を満たすか否かを判定し、警報と警報に関する案内情報であるガイド情報を出力する一連の処理である。
以下、同フローチャートに沿って警報処理の動作を説明する。
警報処理は、リアルタイムで実行されても、例えば1日ごとにバッチ処理で実行されても、その組み合わせでもよい。
【0098】
ステップS301において、家畜肉質管理サーバ10の警報制御部1036は、飼養中の肉豚群の肉質の推計結果を参照する(肉質変化度合い参照ステップ)。具体的には、警報制御部1036は、肉豚マスタ1012の管理肉豚群IDで識別される管理肉豚群ごとに、記憶部101の推計肉質情報テーブル1019の推計肉質変化度合いの項目を参照する。
【0099】
ステップS302において、警報制御部1036は、ステップS301で参照した推計肉質変化度合いが、警報条件を満たすか否かを判定する(警報判定)。当該判定が真、すなわち警報条件を満たす場合は、ステップS303に進む。一方、当該判定が偽、すなわち警報条件を満たさない場合は当該フローを終了する。
警報条件は、肉質逸脱条件である。ここで、肉質逸脱条件の「乖離度合いが所定の幅(値)を閾値として超過する場合」を、例えば「乖離度合いが-2以下である(-2と-2より小さい値である)場合」とする。また、参照した「推計肉質変化度合い」と、予め設定された「基準肉質変化度合い」と、それらの差分を示す「乖離度合い」の関係は、
(乖離度合い)=(推計肉質変化度合い)-(基準肉質変化度合い)
である。
例えば、推計肉質変化度合いが「-3」、基準肉質変化度合いが「-1」のとき乖離度合いは「-2」となり警報条件を満たす。
【0100】
ステップS303において、すなわち、推計肉質変化度合いが警報条件を満たす場合、警報制御部1036は、当該推計肉質変化度合いに紐づく管理肉豚群に関する警報情報を生成する。
【0101】
ステップS304において、警報制御部1036は、ガイド情報生成部1037にガイド生成処理を実行させ、推計肉質変化度合いに紐づく管理肉豚群に関するガイド情報を取得する。
ガイド生成処理の詳細は後述する。
【0102】
ステップS305において、警報制御部1036は、ステップS303で生成された推計肉質変化度合いに紐づく管理肉豚群に関する警報情報と、ステップS304で取得した推計肉質変化度合いに紐づく管理肉豚群に関するガイド情報を出力する。すなわち、警報制御部1036は、警報情報とガイド情報を、ユーザ端末20や、あらかじめ設定された連絡先に送信する。また、警報制御部1036は、警報情報とガイド情報を、家畜肉質管理システム1と連携させた他のシステムである、家畜の飼養環境を制御する家畜環境制御システムに対して送信してもよい。これにより、飼養環境をガイド情報に基づいて自動で制御することができる。なお、ユーザは、警報情報とガイド情報の出力するタイミングについて、肉豚に飼養工程に応じて1日に1回から数日に1回というように実行頻度を任意に変更することができる。また、一度出力された警報がユーザにより確認された場合、当該警報に関連する後続の警報を所定の期間出力しないスヌーズ機能を設けてもよい。
【0103】
<ガイド生成処理>
図9は、ガイド生成処理の動作を示すフローチャートである。
ガイド生成処理は、警報に関するガイド情報を生成するための処理である。ガイド情報は、現状に対してどのように飼養環境と成育状態を変化させていけば、出荷時に高品位の格付の肉豚が期待できるかの条件を提示するものである。具体例として、影響のある家畜情報に含まれる変数(寄与変数)とその変動量(寄与度)の組み合わせを示す情報である。
ガイド生成処理は、ガイド情報生成部1037が、肉質推計数理モデル1021を用いて、寄与変数とその寄与度及び変動量を推計し、これら寄与変数とその寄与度及び変動量を含めたガイド情報を生成する一連の処理である。警報処理の途中で実行される場合、寄与変数は警報を解消するために対応が必要な変数を示し、寄与度は警報状態の変化に与えるインパクトを示し、変動量は警報状態を解消するために必要な又は推奨される寄与変数の変動量を示している。
以下、同フローチャートに沿ってガイド生成処理の動作を説明する。
ガイド生成処理は、警報処理において、推計肉質変化度合いが所定の警報条件を満たした場合に実行される。また、ガイド生成処理は、所定の画面において、ユーザが任意に指定した管理肉豚群についてガイド情報生成を要求した場合に実行される。
【0104】
ステップS401において、家畜肉質管理サーバ10のガイド情報生成部1037は、推計肉質情報テーブル1019の推計肉質変化度合いと、予め設定されている基準肉質変化度合と、に基づいて、乖離度合いを算出する。
具体的には、警報処理において警報条件を満たす推計肉質変化度合いに対して、当該ガイド生成処理が実行される場合は、警報処理で算出された乖離度合いを用いる。ユーザの要求により当該ガイド生成処理が実行される場合は、ユーザが指定した管理肉豚群に紐づく推計肉質変化度合いと基準肉質変化度合いの乖離度合いを算出する。
【0105】
ステップS402において、ガイド情報生成部1037は、肉質推計数理モデル1021を用いて、ステップS401で算出した乖離度合いに基づいて、当該乖離度合いが是正される方向に向かって移動するに寄与する寄与変数を特定し、当該寄与変数の寄与度と、乖離度合いの移動程度に応じた寄与変数の変動量を算出する。
具体的には、肉質推計部1035は、推計肉質変化度合いに紐づく管理肉豚群について、先天情報を与件(固定軸)として、後天情報のうち、乖離度合いの移動に寄与する変数(要素)を特定し、乖離度合いの移動量に応じた寄与変数の変動量を算出する。
【0106】
ステップS403において、ガイド情報生成部1037は、ステップS401で算出した乖離度合いと、ステップS402で特定した寄与変数と、寄与度と、変動量と、を用いて、これらの情報に紐づく管理肉豚群に関するガイド情報を生成し、当該ルーチンをリターンする。
なお、ガイド情報生成部1037は、警報処理において警報条件を満たしていない場合においても、定期的に又はユーザの指示により随時、ガイド情報を生成しユーザ端末20に出力してもよい。これにより、ユーザは、現在飼養中の肉豚について、定期的に又は随時、出荷時の推計肉質を把握することができる。
【0107】
<数理モデル更新処理>
図10は、数理モデル更新処理の動作を示すフローチャートである。
数理モデル更新処理は、数理モデルを用いた推計の精度を向上させるために、新たな数理モデルを生成し更新する処理である。数理モデルは、肉質推計数理モデル1021を含む。
数理モデル更新処理は、数理モデル管理部1038が、現在利用している数理モデルの有効性を判定し、有効性がないと判定された場合には、必要なデータセットを生成し、当該データセットを用いて数理モデルの更新版を生成し、置き換えを実行する一連の処理である。
以下、同フローチャートに沿って数理モデル更新処理の動作を説明する。
【0108】
ステップS501において、数理モデル管理部1038は、家畜肉質管理サービスの運用において現在利用されている数理モデル(以下、利用数理モデルという)としての第1の数理モデルの利用期間が所定の期間を経過しているか否かを判定する(期間経過判定)。所定の期間は、数理モデルの精度を統計的に評価するために十分な量の数理モデルの出力結果が蓄積されるまでの期間であり、出力の頻度に応じて決まる。例えば、肉質推計数理モデル1021の場合は、数か月から数年である。
当該判定が真、すなわち第1の数理モデルの利用期間が所定の期間を経過していると判定された場合、ステップS502に進む。
一方、当該判定が偽、すなわち第1の数理モデルの利用期間が所定の期間を経過していないと判定された場合、当該フローを終了する。すなわち、第1の数理モデルが利用数理モデルとして維持される。
【0109】
ステップS502において、数理モデル管理部1038は、第1の数理モデルの有効性の有無を判定する。具体的には、数理モデル管理部1038は、第1の数理モデルの有効性を示す指標を算出し、当該有効性を示す指標が所定の範囲内である場合は有効性があると判定し、範囲外である場合は有効性がないと判定する。有効性は、例えば、育成目標値を「上」に設定された上で、第1の数理モデルを用いて飼養管理された第1の管理肉豚群が出荷され、その管理肉豚群について得られた発行格付情報において、実際に「上」の等級が得られた割合が所定の閾値以上か否かとして判定してもよい。例えば閾値を80%とすると、82%の場合は有効性があると判定される。なお、所定時間を経過していない場合においても閾値が下回るケースは存在するが、そのような精度が低い状態であれば実運用に耐えうるものではないため、第1の数理モデルとして利用可能な水準にモデルの精度を上げる対応(チューニング)を行うのが本質であるため、このフローにおいては記載していない。
当該判定が真、すなわち第1の数理モデルの有効性がある場合、ステップS503に進む。
一方、当該判定が偽、すなわち第1の数理モデルの有効性がない場合、当該フローを修了する。すなわち、第1の数理モデルが利用数理モデルとして維持される。
【0110】
ステップS503において、数理モデル管理部1038は、数理モデルの更新版である第2の数理モデルを生成するためのデータセットを生成する。データセットは、訓練データ、テストデータ、検証データを含む。
肉質推計数理モデル1021について当該処理を実行する場合、数理モデル管理部1038は、過去に出荷した肉豚の先天情報と過去に出荷した肉豚の後天情報とを説明変数とし、それに紐付く過去に出荷した肉豚の格付情報を目的変数とするモデル投入用データを生成する。具体的には、数理モデル管理部1038は、肉豚マスタ1012、成育履歴テーブル1013、環境履歴テーブル1014、給餌履歴テーブル1015、健康投薬履歴テーブル1016から、過去に出荷した肉豚の先天情報及び後天情報を取得する。数理モデル管理部1038は、過去に出荷した肉豚の格付情報として、格付情報テーブル1018から過去に出荷した肉豚の標準化格付情報を取得する。数理モデル管理部1038は、取得したこれらの情報を用いてモデル投入用データを生成する。そして、数理モデル管理部1038は、モデル投入用データに基づき、肉質推計数理モデル1021の訓練データ、テストデータ、検証データのそれぞれのデータセットを作成する。
なお、第1の数理モデルについて既存データセットが記憶部101に記憶されている場合、第2の数理モデルのデータセットの生成には、既存データセットに対して差分データを追加した統合データセットの生成と、直近性を考慮した統合データセット全体の更新を行う。直近性とは、時系列的に最近の状態(データ)をより数理モデルに組み入れ、より現状に即した数理モデルとして、その精度を維持・向上させることを期待して期間的に古いデータと新しいデータを入れ替えることである。
【0111】
ステップS504において、数理モデル管理部1038は、ステップS503で生成した訓練用データ、テストデータに基づき、第2の数理モデルを生成する。第2の数理モデルに対して、検証データを用い、その推論精度の検証を実施し、求める精度となるようにチューニング作業を継続実施し、更新用の数理モデルとして確立する。
【0112】
ステップS505において、数理モデル管理部1038は、第1の数理モデルと第2の数理モデルを所定の期間、並走運用する。具体的には、数理モデル管理部1038は、利用数理モデルとして第1の数理モデルを維持しながら、第2の数理モデルにも第1の数理モデルと同じ肉質推計処理をさせる。すなわち肉質推計部1035が肉質推計処理を実行する場合に、第1の数理モデルの推計結果と、第2の数理モデルの推計結果を出力させる。所定の期間は2つの数理モデルの有効性の比較ができる推計結果の量が十分に得られる期間である。数理モデル管理部1038は、並走運用の期間における肉質推計処理について、第1の数理モデルの推計結果と第2の数理モデルの推計結果を記憶部101に記憶し蓄積する。
【0113】
ステップS506において、数理モデル管理部1038は、ステップS505で蓄積した第1の数理モデルの推計結果と第2のモデルの推計結果に基づいて、第2のモデルの有効性と第1の数理モデルの有効性とを比較し、第2の数理モデルの有効性の方が高いか否かを判定する(有効性比較判定)。当該判定が真、すなわち第2の数理モデルの有効性の方が高い場合は、ステップS507に進む。一方、当該判定が偽、すなわち第2の数理モデルの有効性の方が低い場合は、当該フローを修了する。
【0114】
ステップS507において、数理モデル管理部1038は、利用数理モデルについて、既存の第1の数理モデルからステップS504で生成された第2の数理モデルに置き換える。これにより、第2の数理モデルが、家畜肉質管理サービスの運用において利用される数理モデルとなる。また、数理モデル管理部1038は、第1の数理モデル及び第2の数理モデルについて、数理モデルの生成履歴として記憶部に記憶する。
【0115】
以上で説明したように、本発明に係る肉質管理システム1は、過去の肉豚の先天情報と後天情報と格付情報とを用いて生成された肉質推計数理モデル1021を用いて、現在飼養中の肉豚の先天情報と後天情報とから、出荷時の肉質の変化度合いを推定し、所定の閾値を超えた変化度合いであった場合は、肉質変化度合いの修正に寄与する情報とともに警報を出力する構成である。このようなシステムにより、肉豚の出荷時の肉質を、肉豚の飼養中において継続的に管理し、出荷時の肉質が下がる兆候を早い段階で検知して警報を出力できる。そのため、ユーザである農家は、警報に基づいてタイムリーに対処することで、想定している出荷時の肉質に戻していくことができる。
また、出荷までの成育期間が比較的短い豚は、予測される出荷時の肉質が、一度本格的に下がる傾向に入ると、短期間で上がる傾向に戻すことは容易ではない場合が多い。そのため、下がる傾向に入る境界において予防保全的に警告を出力することで、ユーザの対応にかかる負担やコストを抑えることができる。
すなわち、屠畜後の家畜の肉質の評価に係る情報を飼養管理において効率的に活用することができる。
【0116】
<プログラム>
図11は、コンピュータ801の構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ801は、CPU802(プロセッサ)、主記憶装置803、補助記憶装置804、インタフェース805、画像処理装置(GPU)806を備える。
【0117】
ここで、各実施形態に係る家畜肉質管理サーバ10を構成する各機能を実現するためのプログラムの詳細について説明する。
【0118】
家畜肉質管理サーバ10は、コンピュータ801に実装される。そして、家畜肉質管理サーバ10の各構成要素の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置804に記憶される。CPU802は、プログラムを補助記憶装置804から読みだして主記憶装置803に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU802は、プログラムに従って、上記した記憶部101に対応する記憶領域を主記憶装置803に確保する。
【0119】
当該プログラムは、具体的には、コンピュータ801において、プロセッサと、家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部とを備えるコンピュータに実行させるための家畜肉質管理プログラムであって、前記家畜肉質管理プログラムは、前記プロセッサに、過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値と、に基づいて前記飼養中の家畜の肉質の変化度合いを推計する肉質推計ステップと、を実行させるプログラムである。
【0120】
なお、補助記憶装置804は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース805を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムがネットワークNWを介してコンピュータ801に配信される場合、配信を受けたコンピュータ801が当該プログラムを主記憶装置803に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0121】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置804に既に記憶される他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)
であってもよい。
【0122】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。また、実施形態の説明では家畜として豚を例として説明したが、牛、馬、羊のような他の四肢動物を対象とする家畜に畜産情報管理システムを適用しても構わない。
【0123】
例えば、上記実施形態において、発行格付情報と出荷された肉豚との紐づけは、出荷ロットごとに行われる(すなわち、1の出荷ロットに対して、その出荷ロットに含まれる肉豚個体に対する複数の発行格付情報が紐づけられる)が、肉豚の飼養工程又は出荷時に肉豚個体ごとに二次元コード等の物理タグを個体識別子として付与される個体管理が行われる場合は、肉豚個体と発行格付情報を1対1で紐づけてもよい。この場合、発行格付情報に、個体識別子を示す情報が含まれていることが望ましく、例えば、屠畜場において、ハンティタイプのコードリーダー等で読み取ることで発行格付情報に反映されてもよい。また、個体識別子は、家畜情報取得部1031が家畜画像において識別した肉豚個体に対して付与する仮識別子(画像認識個体識別子)と紐づけられてもよい。
【0124】
例えば、家畜情報標準化部1034は、格付情報標準化部1033と同様に、家畜情報の標準化の処理にコード化を含んでもよい。
【0125】
例えば、上記実施形態の数理モデル更新処理のステップS501では、所定の期間経過を次の処理に進む指標としているが、所定の期間経過に代わり、先天情報に変更があった場合としてもよい。
【0126】
例えば、上記実施形態の数理モデル更新処理のステップS502では、育成目標値と発行格付情報の乖離を用いて判定を行っていたが、管理肉豚群について出荷前に推計された推計肉質変化度合いの状態分布と、その管理肉豚群について得られた発行格付情報で示された等級から算出される等級分布の乖離度を用いて判定してもよい。
【0127】
例えば、上記実施形態の数理モデル更新処理のステップS506において、第2の数理モデルの有効性の方が低いと判定された場合、第1の数理モデルが維持されるが、ステップS503に戻り、新たに更新用の第3の数理モデルを生成するフローしてもよい。
【0128】
<付記>
以上の各実施形態で説明した事項を以下に付記する。
【0129】
(付記1)
家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部と、
過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、に基づいて前記飼養中の家畜の将来の肉質の変化度合いを推計する肉質推計部と、
を備える家畜肉質管理装置 。
これにより、家畜肉質管理装置は、過去に取得した格付情報を活用し、飼養中の家畜の先天的な要因と後天的な要因を考慮して家畜の肉質を管理することができる。また、家畜肉質管理装置は、家畜の現在の飼養状態から肉質推計数理モデルにより効率的に飼養中の家畜の肉質の将来の変化度合いを推計することができる。ユーザは家畜の将来の肉質を予測することができ、現在の飼養業務に生かすことができる。すなわち、屠畜後の家畜の肉質の評価に係る情報を飼養管理において効率的に活用することができる。
(付記2)
推計された前記変化度合いが所定の警報条件を満たす場合に警報を出力する警報制御部と、
を備える付記1に記載の家畜肉質管理装置。
これにより、変化度合いについて許容範囲からの逸脱をユーザに知らせることができる。現在の肉質と将来の目標肉質に乖離があり、対応を取る必要性があることをユーザが把握することができる。
(付記3)
前記肉質推計部は、前記変化度合いの変動に寄与する前記飼養中の家畜の先天情報及び/又は後天情報の要素情報を寄与変数として特定し、当該寄与変数の前記変化度合いの変動に対する寄与度を推計する、
付記2に記載の家畜肉質管理装置。
これにより、特定された寄与変数をユーザ端末20や、特定された寄与変数に関する外部の制御システムに出力することができる。ユーザや制御システムは特定された寄与変数を用いて、予測された肉質に対する対応を具体的に取ることができる。
(付記4)
前記肉質推計部は、前記寄与変数のうち、推計された前記変化度合いを所定の警報条件を満たさない変化度合いとするために必要な寄与変数を特定して、当該特定された寄与変数の変動量を推計する、
付記3に記載の家畜肉質管理装置。
(付記5)
前記警報に関連するガイド情報を生成するガイド情報生成部と、
を備え、
前記ガイド情報は、前記特定された寄与変数と前記寄与度と前記変動量とを含む、
付記4に記載の家畜肉質管理装置。
これにより、ユーザに、警報に関する寄与変数とその寄与度及び変動量をガイド情報として提示することができる。ユーザは、どの変数をどのくらい変動させればよいのか理解することが出来る。
(付記6)
前記格付情報を所定の標準形式に変換する格付情報標準化部と、
を備える付記1から付記5のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
これにより、異なるフォーマットや表示方式で記載された格付情報が標準化されてから記憶されるため、情報の活用が可能となる。人手を介さず自動的にフォーマットや表示方式の差異を吸収できる。肉質推計数理モデルの生成・再生成に利用する前にデータ標準化を行うことができる。
(付記7)
前記格付情報標準化部は、前記格付情報の欠落を補完又は修正して、前記所定の標準形式に変換する、
付記6に記載の家畜肉質管理装置。
これにより、欠けている情報も(他の農場の情報を穴埋めとして用いることで)、解析処理実行を担保できる。
(付記8)
前記格付情報標準化部は、前記格付情報をコード化して、前記所定の標準形式に変換する、
付記6又は付記7に記載の家畜肉質管理装置。
これにより、格付情報のインプットが異なっても、同じ意味又は同じ数字として捉えることができる。
(付記9)
前記先天情報は、前記家畜の家畜識別情報を含み、
前記格付情報は、前記家畜識別情報を含む、
付記1から付記8のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
これにより、家畜飼養情報と格付情報が紐づくことにより、肉質推計数理モデルの推計精度を向上させることができる。また、家畜の個体管理やトレーサビリティが可能になる。
(付記10)
前記格付情報を取得する格付情報取得部と、
前記家畜情報を取得する家畜情報取得部と、
を備える付記1から付記9のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
これにより、新たな格付情報及び新たな家畜情報を取得することにより管理、順次蓄積した情報を用いて数理モデルの有効性の判定や更新のためのデータセットの生成を行うことができる。
(付記11)
前記肉質推計部は、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値を基準として、前記変化度合いを推計する、
付記1から付記10のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
これにより、ユーザは育成目標値を自由に設定でき、育成目標値を基準とした肉質の向上又は低下を把握することができる。
(付記12)
前記肉質推計数理モデルは、品種ごとに生成される、
付記1から付記11のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
品種は、肉質を大きく左右する要素であるため、品種ごとに数理モデルを生成し、推計する対象の家畜に応じた数理モデルを適用することで、推計精度を確保することができる。
(付記13)
前記肉質推計数理モデルは、性別ごとに生成される、
付記1から付記12のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
性別によって発育速度や肉質が異なるため、性別は個体の出荷時の大きさや肉質を大きく左右する要素である。そのため、性別(雄、雌、去勢雄)ごとに数理モデルを生成し、推計する対象の家畜に応じた数理モデルを適用することで、推計精度を確保することができる。
(付記14)
前記先天情報は、家畜の品種、性別、に関する情報を含む、
付記1から付記13のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
これにより、肉質形成の大きな傾向を支配する先天情報の要素ごとに肉質推計の解析を行うことができ、肉質推計の精度を確保することができる。
(付記15)
前記後天情報は、家畜の成育履歴に関する成育履歴情報の要素情報、家畜の成育環境に関する環境履歴情報の要素情報、家畜の給餌及び給水に関する給餌履歴情報の要素情報、家畜の健康管理及び投薬に関する健康投薬履歴情報の要素情報、を含む、
付記1から付記14のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
これにより、ユーザが制御できる後天情報を利用した肉質向上支援をすることができる。
(付記16)
前記家畜情報を所定の標準形式に変換する家畜情報標準化部と、を備える
付記1から付記15のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
これにより、家畜情報が標準化されてから記憶されるため、情報の活用がしやすくなる。また、人手を介さず自動的にフォーマットや表示形式の差異を吸収できる。肉質推計数理モデルの生成・再生成に利用するデータセットとして活用できるようになり、肉質推計数理モデル1021の精度の維持や向上が可能となる。欠けている情報も(他の農場の情報を穴埋めとして用いることで)、解析処理実行を担保できる。
(付記17)
前記家畜情報標準化部は、前記先天情報、及び、前記後天情報をコード化して、前記所定の標準形式に変換する、
付記16に記載の家畜肉質管理装置。
これにより、先天情報及び後天情報のインプットが異なっても、同じ意味又は同じ数字として捉えることができる。
(付記18)
前記家畜情報の管理設定を変更する管理情報設定部と、
を備え、
前記管理情報設定部は、前記格付情報に含まれる項目を変更する、
付記1から付記17のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
これにより、格付情報として扱う項目の拡張性が向上し、新たな項目を含む外国の格付情報等も利用できるようになる。
(付記19)
前記管理情報設定部は、前記格付情報について出力する項目を変更する、
付記18に記載の家畜肉質管理装置。
これにより、格付情報の拡張性に対応したユーザインターフェースを実現できる。
(付記20)
前記家畜は豚である、
付記1から付記19のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
これにより、屠畜後の豚の肉質に係る情報を飼養管理において効率的に活用することができる。
(付記21)
前記肉質推計数理モデルを更新する数理モデル管理部を備える、
付記1から付記20のいずれかに記載の家畜肉質管理装置。
これにより、数理モデルの有効性が低下した場合に新たな数理モデルを生成して置き換えることにより数理モデルの精度の維持や向上が可能となる。
(付記22)
家畜肉質管理装置、ユーザ端末、及び計測端末からなる家畜肉質管理システムであって、
家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部と、
過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値と、に基づいて前記飼養中の家畜の肉質の変化度合いを推計する肉質推計部と、
を備える家畜肉質管理システム。
(付記23)
プロセッサと、家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部とを備えるコンピュータにより実行される家畜肉質管理方法であって、
前記プロセッサに、
過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値と、に基づいて前記飼養中の家畜の肉質の変化度合いを推計する肉質推計ステップと、
を実行させる家畜肉質管理方法。
(付記24)
プロセッサと、家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部とを備えるコンピュータに実行させるための家畜肉質管理プログラムであって、
前記家畜肉質管理プログラムは、前記プロセッサに、
過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデルを用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、前記飼養中の家畜の肉質に係る育成目標値と、に基づいて前記飼養中の家畜の肉質の変化度合いを推計する肉質推計ステップと、
を実行させる家畜肉質管理プログラム。
【符号の説明】
【0130】
1 :家畜肉質管理システム
10 :家畜肉質管理サーバ
1021 :肉質推計数理モデル
1031 :家畜情報取得部
1032 :格付情報取得部
1033 :格付情報標準化部
1034 :家畜情報標準化部
1035 :肉質推計部
1036 :警報制御部
1037 :ガイド情報生成部
1038 :数理モデル管理部
1039 :管理情報設定部
20 :ユーザ端末
30 :センサユニット
3051 :カメラ
3052 :温湿度センサ
3053 :風量センサ
3054 :空気品質センサ
3055 :給水量センサ
801 :コンピュータ
【要約】
【課題】 屠畜後の家畜の肉質の評価に係る情報を飼養管理において効率的に活用する。
【解決手段】 家畜の肉質の評価を示す格付情報、及び、家畜の先天的な特徴を示す先天情報と前記家畜の後天的な特徴を示す後天情報とを含む家畜情報を記憶する記憶部101と、過去に出荷した家畜の格付情報と、前記過去に出荷した家畜の先天情報と、前記過去に出荷した家畜の後天情報と、に基づいて生成された肉質推計数理モデル1021を用いて、飼養中の家畜の先天情報と、前記飼養中の家畜の後天情報と、に基づいて前記飼養中の家畜の将来の肉質の変化度合いを推計する肉質推計部1035と、を備える。
【選択図】
図7