(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】保持具、保持具の製造方法。
(51)【国際特許分類】
B01L 9/06 20060101AFI20230328BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20230328BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
B01L9/06
C08L23/06
C08L101/12
(21)【出願番号】P 2018108713
(22)【出願日】2018-06-06
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】510087564
【氏名又は名称】積水マテリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨永 聡
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-326176(JP,A)
【文献】特開2005-233664(JP,A)
【文献】特開2006-292696(JP,A)
【文献】特表平06-510233(JP,A)
【文献】特開平11-218537(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099647(WO,A1)
【文献】米国特許第05080232(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 9/06
G01N 35/04
C12M 1/00
C08L 23/06
C08L 101/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する板材と、
前記貫通孔に通された保持対象物を保持するための保持体とを備え、
前記保持体は、上端部が前記貫通孔の外縁に結合することで前記板材に吊り下げられて、前記貫通孔の下側に延びるものであって、
前記保持体には、U字状又はV字状を呈する二股部が形成されており、当該二股部は、その二股が前記貫通孔の横断方向に間隔のあいたものとされており、
前記保持体は、前記二股部として第1二股部を有し、
前記第1二股部は、下側に開口するU字状又はV字状を呈し、前記保持体の上端部を構成し、
前記第1二股部を構成する二股のうち、前記貫通孔の径方向外側に位置する股が、前記貫通孔の外縁に結合されており、
前記貫通孔の径方向外側に位置する股が前記貫通孔の外縁に結合することは、前記板材と前記保持体との一体成形、接着剤の使用、或いは熱溶着によって実現されている保持具。
【請求項2】
前記保持体は、前記二股部として第2二股部を有し、
前記第2の二股部は、上側に開口するU字状又はV字状を呈し、前記保持体の下端部を構成する請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記保持体は、前記二股部を複数有する請求項1又は2に記載の試験管立て。
【請求項4】
前記保持体は、ポリエチレン、ポリアセタール、及び液晶樹脂のいずれかを含む材料から形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の保持具。
【請求項5】
前記保持体を形成する材料には、メタロセンポリエチレンと、前記メタロセンポリエチレン100重量部に対し0~100重量部の液晶樹脂と、前記メタロセンポリエチレン100重量部に対し0~60重量部の低分子量ポリエチレンとが含まれている請求項4に記載の保持具。
【請求項6】
前記保持体を形成する材料には、ポリアセタールと、前記ポリアセタール100重量部に対し0~100重量部の液晶樹脂と、前記ポリアセタール100重量部に対し0~60重量部の低分子量ポリエチレンとが含まれている請求項4に記載の保持具。
【請求項7】
前記保持体を形成する材料には、ポリエチレンと、前記ポリエチレン100重量部に対し0~100重量部の液晶樹脂と、前記ポリエチレン100重量部に対し0~60重量部の低分子量ポリエチレンとが含まれている請求項4に記載の保持具。
【請求項8】
前記保持体を形成する材料には、液晶樹脂と、前記液晶樹脂100重量部に対し0~100重量部のポリエチレン又はポリアセタールと、前記液晶樹脂100重量部に対し0~60重量部の低分子量ポリエチレンとが含まれている請求項4に記載の保持具。
【請求項9】
前記保持体の材料には、前記板材の材料が含まれている請求項1乃至8のいずれかに記載の保持具。
【請求項10】
前記保持対象物としての試験管を保持する試験管立てである、請求項1乃至9のいずれかに記載の保持具。
【請求項11】
請求項1に記載される保持具の製造方法であって、
前記板材と前記保持体との一体物に対応した形状の内部空間を有する金型を金属から製造する工程と、
前記金型の内部空間に溶融状態にある熱可塑性樹脂を注入する工程と、
前記熱可塑性樹脂を冷却固化させて、前記板材と前記保持体との一体物を成形する工程と、
前記金型から前記板材と前記保持体との一体物を脱型する工程とを有する保持具の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載される保持具の製造方法であって、
前記板材と前記保持体との一体物に対応した形状の内部空間を有する金型をシリコンから製造する工程と、
前記金型の内部空間を真空脱気しつつ、前記金型の内部空間に熱硬化性樹脂を注入する工程と、
前記金型を加熱することで、前記熱可塑性樹脂を硬化させて、前記板材と前記保持体との一体物を成形する工程と、
前記金型から前記板材と前記保持体との一体物を脱型する工程とを有する保持具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験管、採血管、計測治具や加工治具が備えるシャフト、住宅の基礎を構成するアンカーボルト、傘、光ファイバー、植物の茎等を保持するために使用可能な保持具、及び当該保持具の製造方法に関する。特に、本発明は、低温下で試験管や採血管を保持する試験管立てとして好適に使用できる保持具、及び当該保持具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験管(実験で使用する試薬や血液等を入れる管)を保持する器具として、試験管立てが使用されている。従来の一般的な試験管立ては、特許文献1に開示されるように、試験管に対応する形状の孔(支持部)を有しており、この孔に試験管を嵌め込むことで試験管を保持する。また、このような一般的な試験管立ては、PP(ポリプロピレン)やPS(ポリスチレン)を用いて製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで従来では、試験管立ての用途が、常温下で試験管を保管及び輸送することとされていたが、近年では、低温下(例えばマイナス20℃以下)で試験管を保管及び輸送するためにも試験管立てが使用されている。そしてこのように試験管立ての用途が変わってきたにもかかわらず、従来の試験管立てが使用され続けており、以下の理由1或いは理由2から、試験管立てから試験管が抜ける問題が生じている。
【0005】
理由1:試験管の挿入で試験管立ての孔(支持部)が拡がった状態で、試験管立てが低温下に配置されることで、試験管立ては、孔(支持部)が拡がった状態で硬くなり、試験管を抑え付ける弾性力を生じないものとなる。
【0006】
理由2:試験管立ての材料であるPP(ポリプロピレン)やPS(ポリスチレン)のガラス転移温度が0℃付近や90℃付近と高いため、試験管立てが低温下に配置されると、試験管立ての物性がガラス領域に入り(すなわち試験管立ての物性がゴム領域ではなくなり)、試験管立てが試験管を抑え付ける弾性力を生じないものとなる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、低温下においても試験管を確実に保持可能な保持具や、当該保持具の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0009】
項1.貫通孔を有する板材と、
前記貫通孔に通された保持対象物を保持するための保持体とを備え、
前記保持体は、上端部が前記貫通孔の外縁に結合することで前記板材に吊り下げられて、前記貫通孔の下側に延びるものであって、
前記保持体には、U字状又はV字状を呈する二股部が形成されており、当該二股部は、その二股が前記貫通孔の横断方向に間隔のあいたものとされている保持具。
【0010】
項2.前記保持体は、前記二股部として第1二股部を有し、
前記第1二股部は、下側に開口するU字状又はV字状を呈し、前記保持体の上端部を構成する項1に記載の保持具。
【0011】
項3.前記保持体は、前記二股部として第2二股部を有し、
前記第2の二股部は、上側に開口するU字状又はV字状を呈し、前記保持体の下端部を構成する項1又は2に記載の保持具。
【0012】
項4.前記保持体は、前記二股部を複数有する項1乃至3のいずれかに記載の試験管立て。
【0013】
項5.貫通孔を有する板材と、
前記貫通孔に通された保持対象物を保持するための保持体とを備え、
前記保持体は、その上端部が前記貫通孔の外縁に結合することで前記板材に吊り下げられて、前記貫通孔の下側に延びるものであり、ポリエチレン、ポリアセタール、及び液晶樹脂のいずれかを含む材料から形成されている保持具。
【0014】
項6.前記保持体を形成する材料には、メタロセンポリエチレンと、前記メタロセンポリエチレン100重量部に対し0~100重量部の液晶樹脂と、前記メタロセンポリエチレン100重量部に対し0~60重量部の低分子量ポリエチレンとが含まれている項5に記載の保持具。
【0015】
項7.前記保持体を形成する材料には、ポリアセタールと、前記ポリアセタール100重量部に対し0~100重量部の液晶樹脂と、前記ポリアセタール100重量部に対し0~60重量部の低分子量ポリエチレンとが含まれている項5に記載の保持具。
【0016】
項8.前記保持体を形成する材料には、ポリエチレンと、前記ポリエチレン100重量部に対し0~100重量部の液晶樹脂と、前記ポリエチレン100重量部に対し0~60重量部の低分子量ポリエチレンとが含まれている項5に記載の保持具。
【0017】
項9.前記保持体を形成する材料には、液晶樹脂と、前記液晶樹脂100重量部に対し0~100重量部のポリエチレン又はポリアセタールと、前記液晶樹脂100重量部に対し0~60重量部の低分子量ポリエチレンとが含まれている項5に記載の保持具。
【0018】
項10.前記保持体の材料には、前記板材の材料が含まれている項1乃至9のいずれかに記載の保持具。
【0019】
項11.前記保持対象物としての試験管を保持する試験管立てである、項1乃至10のいずれかに記載の保持具。
【0020】
項12.項1に記載される保持具の製造方法であって、
前記板材と前記保持体との一体物に対応した形状の内部空間を有する金型を金属から製造する工程と、
前記金型の内部空間に溶融状態にある熱可塑性樹脂を注入する工程と、
前記熱可塑性樹脂を冷却固化させて、前記板材と前記保持体との一体物を成形する工程と、
前記金型から前記板材と前記保持体との一体物を脱型する工程とを有する保持具の製造方法。
【0021】
項13.項1に記載される保持具の製造方法であって、
前記板材と前記保持体との一体物に対応した形状の内部空間を有する金型をシリコンから製造する工程と、
前記金型の内部空間を真空脱気しつつ、前記金型の内部空間に熱硬化性樹脂を注入する工程と、
前記金型を加熱することで、前記熱可塑性樹脂を硬化させて、前記板材と前記保持体との一体物を成形する工程と、
前記金型から前記板材と前記保持体との一体物を脱型する工程とを有する保持具の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の保持具によれば、低温下でも、保持対象物を抑え付ける弾性力が生じるので、低温下でも保持対象物を確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る保持具を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る保持具の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る保持具の平面図である。
【
図5】
図5(a)は土台の隅を拡大して示す平面図であり、
図5(b)は
図5(a)のA-A線断面図である。
【
図7】
図7(a)は板材の隅を拡大して示す平面図であり、
図7(b)は
図7(a)のA-A線断面図である。
【
図9】本発明の保持具の変形例を示す側面図である。
【
図12】貫通孔が正方格子状に形成される場合における保持体の上端部の位置を示す概略平面図である。
【
図15】貫通孔が千鳥格子状に形成される場合における保持体の上端部の位置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の保持具は、構造面及び材料面の双方の特徴から、低温下で保持対象物を保持することに適したものである。以下、本発明の実施形態として、本発明の保持具が、試験管(保持対象物)を保持する試験管立てとされる場合について説明する。上記の試験管は、実験で使用する試薬や血液等を入れる管である。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る試験管立てとしての保持具1を示す斜視図であり、保持具1に試験管Sを保持させた状態を示している。
図2は、保持具1の側面図である。
図3は、保持具1の平面図である。
図4は、後述する土台2の底面図であり、土台2を下側から視た状態を示している。
【0026】
本実施形態に係る保持具1は、土台2と、柱体3と、板材4と、保持体5とを備えている。
【0027】
土台2は、支持面(机の表面等)に載置される板材である。
図1や
図4に示すように、土台2には複数の孔6が正方格子状に形成されている。各孔6は、円形を呈しており、試験管Sの下端部を挿入するために使用される。
【0028】
柱体3は、土台2の四隅に取り付けられる。各柱体3は、上下方向に延びるものであり、下端が土台2に支持される。板材4は、その四隅が柱体3の上端に支持される。
【0029】
図5(a)は、土台2の隅を拡大して示す平面図である。
図5(b)は、
図5(a)のA-A線断面図である。
図6は、柱体3の下端部を示す側面図である。
【0030】
本実施形態の保持具1は、土台2の四隅に柱体3を着脱自在にするために、第1係合手段7(
図2)を有している。当該第1係合手段7は、土台2の四隅に形成される爪部7A(
図2,
図4,
図5)と、各柱体3の下端部に形成される凹部7B(
図2,
図6)とから構成される。土台2の爪部7Aを板材4の凹部7Bに係合させることで、柱体3を土台2に取り付けることができる。爪部7Aと凹部7Bとの係合を解除することで、柱体3を土台2から取り外すことができる。
【0031】
爪部7Aは、土台2の側縁の一部が薄肉とされたものである。
図5(b)に示すように、爪部7Aは、先端側7Aa(外側)が下側に膨らむ厚肉部とされており、当該先端側7Aa(外側)の厚さは、基端側7Ab(内側)の厚さよりも大きい。
図6に示すように、土台2の凹部7Bでは、入口側7Baの径が、奥側7Bbの径よりも小さくなっている(具体的には、凹部7Bの奥側7Bbに、爪部7Aの先端側7Aaを嵌合させる嵌合部7Bb1が形成されており、入口側7Baの径は、嵌合部7Bb1の径よりも小さくなっている)。これにより、爪部7Aの先端側7Aaを凹部7Bの奥側7Bbに嵌合させることで(具体的には先端側7Aaを嵌合部7Bb1に嵌合させることで)、意図しない外力が保持具1に加わっても爪部7Aが凹部7Bから抜けることが防止される。したがって柱体3を土台2に取り付けた状態を維持できる。
【0032】
また
図6に示すように、凹部7Bの奥側7Bbが上側に延びていることで(具体的には、凹部7Bの奥側7Bbにおいて、嵌合部7Bb1から上側に延びる延伸部7Bb2が形成されていることで)、爪部7Aの挿入時に凹部7Bの入口側7Baを容易に拡げることができる。したがって爪部7Aを凹部7Bに容易に挿入できる。
【0033】
図7(a)は、板材4の隅を拡大して示す平面図である。
図7(b)は、
図7(a)のA-A線断面図である。
図8は、柱体3の上端部を示す側面図である。
【0034】
本実施形態の保持具1は、板材4の四隅に柱体3を着脱自在にするために、第2係合手段8(
図2)を有している。当該第2係合手段8は、板材4の四隅に形成される爪部8A(
図2,
図3,
図7)と、各柱体3の上端部に形成される凹部8B(
図2,
図7)とから構成される。板材4の爪部8Aを柱体3の凹部8Bに係合させることで、柱体3を板材4に取り付けることができる。凹部8Bと爪部8Aとの係合を解除することで、柱体3を板材4から取り外すことができる。
【0035】
爪部8Aは、板材4の側縁の一部が薄肉とされたものである。
図7(b)に示すように、爪部8Aは、先端側8Aa(外側)が上側に膨らむ厚肉部とされており、当該先端側8Aa(外側)の厚さは、基端側8Ab(内側)の厚さよりも大きい。
図8に示すように、板材4の凹部8Bでは、入口側8Baの径が、奥側8Bbの径よりも小さくなっている(具体的には、凹部8Bの奥側8Bbには、爪部8Aの先端側8Aaを嵌合させる嵌合部8Bb1が形成されており、入口側8Baの径は、嵌合部8Bb1の径よりも小さくなっている)。これにより、爪部8Aの先端側8Aaを凹部8Bの奥側8Bbに嵌合させることで(具体的には先端側8Aaを嵌合部8Bb1に嵌合させることで)、意図しない外力が保持具1に加わっても爪部8Aが凹部8Bから抜けることが防止される。したがって柱体3を板材4に取り付けた状態を維持できる。
【0036】
また
図8に示すように、凹部8Bの奥側8Bbが下側に延びていることで(具体的には、凹部8Bの奥側8Bbにおいて、嵌合部8Bb1から下側に延びる延伸部8Bb2が形成されていることで)、爪部8Aの挿入時に凹部8Bの入口側8Baを容易に拡げることができる。したがって爪部8Aを凹部8Bに容易に挿入できる。
【0037】
なお爪部7A,8Aや凹部7B,8Bの形状は、土台2や板材4に柱体3を着脱可能な限りにおいて種々変更され得る。例えば
図9に示すように、凹部7Bの奥側を嵌合部7Bb1(爪部7Aの先端側7Aaを嵌合させる部分)のみから構成し、凹部8Bの奥側を嵌合部8Bb1(爪部8Aの先端側8Aaを嵌合させる部分)のみから構成してもよい。このようにすれば凹部7B,8Bの入口が拡がりにくくなるので、凹部7B,8Bから爪部7A,8Aが、より一層抜けにくくなる。したがって土台2や板材4に柱体3を取り付けた状態をより安定して維持できる。
【0038】
また土台2や板材4に柱体3を着脱自在とする係合手段は、上記の爪部7A,8Aや凹部7B,8Bに限定されない。例えば、土台2と柱体3とのうち、一方の表面から突出する突起を、他方の表面に開口する凹部に係合させることで、柱体3を土台2に取り付けてもよい。また板材4と柱体3とのうち、一方の表面から突出する突起を、他方の表面に開口する凹部に係合させることで、柱体3を板材4に取り付けてもよい。以上のようにしても、突起と凹部との係合を解除することで、柱体3を板材4や土台2から取り外すことができる。なお上記のようにする場合には、突起の形状を先端側が基端側よりも太いものとし、凹部の形状を奥側の径が入口側の径よりも大きいものとすることが好ましい。この場合、突起の先端側を凹部の奥側に係合させることで、意図しない外力が加わった際に突起が凹部から抜けることを防止できる。
【0039】
図1や
図3に示すように、板材4には、複数の貫通孔9が正方格子状に形成されている。各貫通孔9は、試験管Sを通すために形成されたものであって、略円形を呈している。土台2の孔6(
図1,
図2,
図4)は、各貫通孔9の直下の位置に形成されており、貫通孔9に通した試験管Sの下端部を孔6に挿入することで、試験管Sの下端部を固定できる。なお図示例では、孔6が土台2を貫通する孔となっているが、孔6は土台2を貫通しない凹みであってもよい。この場合、孔6(凹み)の底面は、例えば試験管Sの下端部に対応する湾曲面とされる。また孔6は必ずしも必要なく、孔6は省略されてもよい(つまり、土台2は孔6を有しないものであってもよい)。
【0040】
上記の柱体3や土台2や板材4は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いて形成される。上記の熱可塑性樹脂は、PP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、POM(ポリアセタール)、PE(ポリエチレン)、PA(ポリアミド、ナイロン)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PVC(塩ビ)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PAR(ポリアリレート)、PSF(ポリサルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PES(ポリエーテルサルホン)、LCP(液晶樹脂)、ノルボルネン樹脂、或いはフッ素樹脂である。上記の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、或いはウレタン樹脂である。
【0041】
土台2や柱体3は、例えば、上記の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる素材(棒材や板材)をNC切削することで製造される(NCは、numerical controlの略語である)。なお弾性の高いPPから土台2を形成すれば、爪部7Aの損傷を防止できる(例えば凹部7Bへの挿入時に爪部7Aが折れることを防止できる)。板材4は、金型を用いて上記の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を成形することで製造される。
【0042】
保持体5は、板材4の貫通孔9に通された試験管Sを保持するために設けられる。板材4の各貫通孔9に保持体5が4つずつ設けられる(
図1~
図3参照)。各保持体5は、上端部10が貫通孔9の外縁に結合することで板材4に吊り下げられて、貫通孔9の下側に延びている。
【0043】
より具体的には、各貫通孔9では、4つの拡径部90(
図3)が、貫通孔9の周方向に90°の角度間隔をあけて形成されている。そして、4つの拡径部90の各々の外縁に、保持体5の上端部10が接合されることで、4つの保持体5が、貫通孔9の周方向に90°の角度間隔をあけて設けられている。また平面視で、各保持体5の上端部10が、拡径部90の範囲H(
図3の破線で囲んだ範囲)から貫通孔9の径方向の内側に突出しないことで、貫通孔9に試験管Sを通す際に、各保持体5の上端部10が妨げにならない。
【0044】
また
図2,
図3,
図9から明らかなように、各保持体5は、貫通孔9の下側に延び出る範囲の一部又は全体が、下側に向かって貫通孔9の径方向内側に傾斜する(後述の保持体5Aでは、貫通孔9の下側に延び出る範囲の全体が、下側に向かって貫通孔9の径方向内側に傾斜している。後述の保持体5Bでは、貫通孔9の下側に延び出る範囲のうち、後述の面接触部23を除く部分が、下側に向かって貫通孔9の径方向内側に傾斜している)。
【0045】
なお、保持体5は、貫通孔9の下側に延び出る範囲のみならず、貫通孔9の内側に位置する部分も、下側に向かって貫通孔9の径方向内側に傾斜してもよい。この場合、貫通孔9の内面は、保持体5の内面と同様の勾配で、下側に向かって径方向内側に傾斜するものとされる。
【0046】
本実施形態の保持具1は、上記の保持体5として、保持体5A及び保持体5Bを有している。
図10は、保持体5Aを拡大して示す断面図であり、
図11は、保持体5Bを拡大して示す断面図である。
図10や
図11は、貫通孔9の径方向に広がる鉛直面に沿って、板材4を切断した状態を示している。
【0047】
図10に示す保持体5Aは、上下方向の長さが長く、径方向内側に向かう勾配が緩やかなものである。
図11に示す保持体5Bは、上下方向の長さが短く、径方向内側に向かう勾配が急なものである。貫通孔9の正方格子状の配列(
図3)を、横方向に行をなし、縦方向に列をなすものとみたときに、横方向一方側の1列をなす貫通孔9A,9Dに対して、保持体5Aが4つずつ設けられている。また横方向他方側の2列をなす貫通孔9B,9C,9E,9Fに対して、保持体5Bが4つずつ設けられている。
【0048】
保持体5A,5Bの各々には、二股部20が形成されている。
図10や
図11に示すように、二股部20は、U字状を呈しており、その二股21,22が、貫通孔9の径方向に間隔のあいたものとなっている(以下、貫通孔9の径方向を、径方向と適宜記す)。
【0049】
保持体5A,5Bに形成される二股部20は、下側に開口するU字形状を呈しており、保持体5A,5Bの上端部10を構成する。そして二股部20を構成する二股21,22のうち、径方向外側に位置する股21が、板材4における貫通孔9の外縁に結合されている(具体的には拡径部90の外縁に結合されている)。
【0050】
また保持体5Bには、略鉛直方向に延びる面接触部23が形成されている(
図2,
図11)。上記の「略鉛直方向」とは、鉛直方向(重力の方向)に対して±20°以内の方向である。面接触部23は、保持体5Bの下端部を構成するものであり、略鉛直方向に延びることで試験管Sに面的に接触する。
【0051】
上記の保持体5A,5Bは、PE(ポリエチレン)、POM(ポリアセタール)、及びLCP(液晶樹脂)の少なくともいずれかを含む材料から形成される。
【0052】
PEやPOMは、ガラス転移温度が、それぞれ-125℃付近やー50℃付近であり、非常に低い。したがってPEやPOMを含む材料を用いて保持体5を形成すれば、保持具1が低温下(例えば-20℃以下)に配置されても、保持体5は、物性がゴム領域にあり、試験管Sを抑え付ける弾性力を生じる。
【0053】
また下記の表1は、低温域(-40℃)や高温域(23℃)におけるLCPの曲げ弾性率や曲げ強度を示している。下記の表2は、低温域(-40℃)や高温域(23℃)におけるLCPのIZO強度を示している。
【0054】
【0055】
【0056】
表1,2から明らかなように、LCPは、曲げ弾性率・曲げ強度・IZO衝撃強度の各々における高温域(23℃)の値と低温域(-40℃)の値との差が小さい。したがってLCPを含む材料を用いて保持体5を形成すれば、低温下に保持具1を配置しても、保持体5は、高温下と同等の大きな弾性力で、試験管Sを抑え付けるものとなる。
【0057】
なお保持体5は、PE、POM、LCPとのうちのいずれか複数を混合した材料(以下、混合材料)から製造されてもよい。以下、保持体5の製造に使用可能な混合材料の例を説明する。
【0058】
保持体5を形成する混合材料は、例えば、主材としてのメタロセンポリエチレン100重量部と、副材料としての液晶樹脂0~100重量部と、添加剤としての低分子量ポリエチレン0~60重量部とを含有するものとされる。主材であるメタロセンポリエチレンは、分子量の分布が均一なポリエチレンであり、高い柔軟性を有する。
【0059】
或いは、保持体5を形成する混合材料は、主材としてのポリアセタール100重量部と、副材料としての液晶樹脂0~100重量部と、添加剤としての低分子量ポリエチレン0~60重量部とを含有するものとされる。
【0060】
或いは、保持体5を形成する混合材料は、主材としてのポリエチレン100重量部と、副材料としての液晶樹脂0~100重量部と、添加材としての低分子量ポリエチレン0~60重量部とを含有するものとされる。
【0061】
或いは、保持体5を形成する混合材料は、主材としての液晶樹脂100重量部と、副材料としてのポリエチレン又はポリアセタール0~100重量部と、添加剤としての低分子量ポリエチレン0~60重量部とを含有するものとされる。
【0062】
本実施形態の保持具1によれば、貫通孔9の径方向に間隔のあいた二股21,22からなる二股部20が、保持体5に形成される。このため低温下においても、保持体5は、貫通孔9の径方向に弾性力を生じる。したがって、保持具1は、低温下においても、貫通孔9に通された試験管Sを確実に保持できる。
【0063】
また保持体5が、ガラス転移温度が低いPE・POMや、高温域と低温域とにおける弾性・強度の差が小さいLCPを用いて製造されることで、保持具1が低温下(例えばマイナス20℃以下)に配置されても、保持体5は試験管Sを抑え付ける弾性力を生じる。この点からも、保持具1は、低温下で確実に試験管Sを保持できる。
【0064】
また本実施形態によれば、土台2や板材4に柱体3が着脱自在であることで、保持具1を分解できる。したがって保持具1の洗浄を容易に行える。
【0065】
さらに本実施形態の保持具1は、土台2や板材4に柱体3を係合させる手段(爪部7A,8Aや凹部7B,8B)を有することで、螺子等の金属部品を用いることなく、柱体3を土台2や板材4に着脱自在にできる。このため保持具1は環境面で優れる。なお本発明は、柱体3を板材4や土台2に取り付ける手段として、螺子を使用することを排除するものではない。螺子を使用する場合でも、柱体3を着脱自在にして保持具1を分解できるので、保持具1の洗浄を容易に行える。
【0066】
また本実施形態の保持具1は、上下方向の長さが長く、径方向内側に向かう勾配が緩やかな保持体5Aと、上下方向の長さが短く、径方向内側に向かう勾配が急な保持体5Bとを有することで、様々な長さの試験管Sや、様々な径の試験管Sを保持できる(つまり、保持体5Aは、長く大径の試験管Sを保持することに適し、保持体5Bは、短く小径の試験管Sを保持することに適する)。
【0067】
また本実施形態の保持具1では、貫通孔9B,9C,9E,9Fに設けられる保持体5Bが、試験管Sに面的に接触する面接触部23を有するので、貫通孔9B,9C,9E,9Fに通される試験管Sを安定して保持できる。また貫通孔9B,9C,9E,9Fに設けられる保持体5Aによれば、上下方向の長さが長く、勾配が緩やかであることで、保持体5Aの長い範囲が試験管Sに接触する。したがって保持体5Aは、試験管Sを安定して保持可能である。なお、貫通孔9A,9B,9C,9D,9E,9Fの全てに対して、保持体5Aを設けてもよい。或いは貫通孔9A,9B,9C,9D,9E,9Fの全てに対して、保持体5Bを設けてもよい。
【0068】
また本実施形態のように貫通孔9を正方格子状に形成する場合には、一の貫通孔9の中心と他の貫通孔9の中心とを結ぶ直線のうち、最も短い直線と交差しない一の貫通孔9の外縁に、保持体5の上端部10を結合することで、保持具1の寸法を小さく抑えることができる。以下、
図12を参照して具体的に説明する。
【0069】
図12は、貫通孔9の正方格子状配列の縦方向ピッチ及び横方向ピッチが等しい場合を示している。この場合、例えば1行1列の貫通孔9Aでは、当該貫通孔9Aの中心と1行2列の貫通孔9Bの中心とを結ぶ直線X1や、貫通孔9Aの中心と2行1列の貫通孔9Dの中心とを結ぶ直線Y1が上記の「最も短い直線」に該当する。したがって直線X1,Y1と交差しない貫通孔9Aの外縁に、保持体5の上端部10が結合される。
【0070】
なお仮に、貫通孔9の横方向ピッチが縦方向ピッチよりも小さい場合には、貫通孔9Aでは、当該貫通孔9Aの中心と貫通孔9Bの中心とを結ぶ直線X1が上記の「最も短い直線」に該当し、直線X1と交差しない貫通孔9Aの外縁に、保持体5の上端部10が結合される。また貫通孔9の縦方向ピッチが横方向ピッチよりも小さい場合には、貫通孔9Aでは、当該貫通孔9Aの中心と貫通孔9Dの中心とを結ぶ直線Y1が上記の「最も短い直線」に該当し、直線Y1と交差しない貫通孔9Aの外縁に、保持体5の上端部10が結合される。
【0071】
以上のように保持体5の上端部10の結合位置が調整されることで、貫通孔9の縦方向・横方向のピッチを小さくしても、隣り合う2つの貫通孔9,9に設けた保持体5,5同士が緩衝することを回避できる。したがって、貫通孔9のピッチを小さく抑えることができるので、保持具1の寸法を小さく抑えることができる。
【0072】
なおより好ましくは、
図12に示すように、行及び列が一つずつずれた位置関係にある2つの貫通孔9,9において、当該2つ貫通孔9,9の中心同士を結ぶ直線Zと交差する貫通孔9,9の外縁に、保持体5の上端部10が結合される。例えば1行1列の貫通孔9Aと、2行2列の貫通孔9Eとでは、貫通孔9A,9Eの中心同士を結ぶ直線Z1と交差する貫通孔9A,9Eの外縁に、保持体5の上端部10が結合される。また1行2列の貫通孔9Bと、2行1列の貫通孔9Dとでは、貫通孔9B,9Dの中心同士を結ぶ直線Z2と交差する貫通孔9B,9Dの外縁に、保持体5の上端部10が結合される。以上のようにすれば、縦方向・横方向の貫通孔9,9の間隔を大きく確保できる位置に、保持体5の上端部10が配置されることになる。したがって貫通孔9のピッチをより小さく抑えることができる。
【0073】
本発明の保持具は、上記実施形態に示す例に限定されず、種々改変できる。
【0074】
例えば、保持体5の形状は、
図10や
図11に示す形状に限定されず、
図13に示すように変更され得る。以下、
図13に示す保持体5Cについて説明する。
【0075】
図13に示す保持体5Cも、上端部10が貫通孔9の外縁に結合することで板材4に吊り下げられて、貫通孔9の下側に延びるものであるが、下端部が二股部30によって構成される点で
図10や
図11に示す保持体5A,5Bと異なる。二股部30は、上側に開口するU字状を呈しており、貫通孔9の径方向に間隔のあいた二股31,32を有している。そして径方向内側に位置する股32は、略鉛直方向に延びて、試験管Sに面的に接する面接触部を構成する。上記の保持体5Cによれば、二股部40が低温下で径方向に弾性力を生じることや、股32(面接触部)が試験管Sに面的に接触することで、低温下でも試験管Sを安定して保持できる。
【0076】
また
図10,
図11,
図13に示した保持体5A,5B,5Cは1つの二股部を有するものであったが、複数の二股部が保持体5に設けられてもよい。
【0077】
例えば、保持体5は、上端部を構成する二股部20(
図11参照)と、下端部を構成する二股部30(
図13参照)とを有するものであってもよい。
【0078】
或いは、保持体5は
図14に示すように変形されてもよい。
図14に示す保持体5Dは、その下端部が2つの二股部40,50によって構成されている。二股部40は、下側に開口するU字形状を呈し、U字の頂部から下側に延びる第1股41及び第2股42を有している。そして、これら股41,42のうち、径方向内側に位置する第1股41は、略鉛直方向に延びて、試験管Sに面的に接する面接触部を構成する。二股部50は、上側に開口するU字形状を呈しており、上記の第2股42と、第3股51とから構成される。第3股51は、第2股42の下端(U字の底部)から上側且つ径方向外側へ延びる。
図14に示す保持体5Dによれば、2つの二股部40,50を有することで低温下で大きな径方向の弾性力を生じることや、第1股32(面接触部)が試験管Sに面的に接触することで、低温下でも試験管Sを安定して保持できる。
【0079】
また、保持体5は、上端部を構成する二股部20(
図11参照)と、下端部を構成する2つの二股部40,50(
図14参照)とを有するものであってもよい。
【0080】
また
図10,
図11,
図13,
図14に示した保持体5A,5B,5C,5Dでは、二股部20,30,40,50が、上側或いは下側に開口していたが、保持体5に設けられる二股部は、水平方向、斜め上方、或いは斜め下方に開口するものであってもよい(つまり、二股部は、水平方向、斜め上方、或いは斜め下方に延びる二股を有するものであってもよい)。この場合でも、二股部の二股を、貫通孔9の径方向に間隔のあいたものとすることで、保持体5は、低温下で径方向の弾性力が生じるものとなる。したがって低温下でも試験管Sを保持できる。
【0081】
また上記の例では、複数の貫通孔9が正方格子状に形成されていたが、例えば
図15に示すように、複数の貫通孔9を千鳥格子状に板材4に形成して、貫通孔9の各々の外縁に保持体5の上端部10を結合させてもよい。そしてこのようにする場合でも、一の貫通孔9の中心と他の貫通孔9の中心とを結ぶ直線のうち、最も短い直線と交差しない一の貫通孔9の外縁に、保持体5の上端部10を結合することで、保持具1の寸法を小さく抑えることができる。以下、
図15を参照して具体的に説明する。
【0082】
図15は、千鳥格子状の配列の横方向ピッチと斜め方向ピッチとが等しい場合を示している。この場合、例えば1行1列の貫通孔9Aについては、当該貫通孔9Aの中心と1行2列の貫通孔9Bの中心とを結ぶ直線X1や、貫通孔9Aの中心と2行1列の貫通孔9Dの中心とを結ぶ直線X2や、貫通孔9Aの中心と2行2列の貫通孔9Eの中心とを結ぶ直線X3が上記の「最も短い直線」に該当する。したがって直線X1,X2,X3と交差しない貫通孔9Aの外縁に、保持体5の上端部10が結合される。また仮に、貫通孔9の横方向ピッチが斜め方向ピッチよりも小さい場合には、貫通孔9Aでは、当該貫通孔9A,9Bの中心同士を結ぶ直線X1が、上記「最も短い直線」に該当し、直線X1と交差しない貫通孔9Aの外縁に、保持体5の上端部10が結合される。また貫通孔9の斜め方向ピッチが横方向ピッチよりも小さい場合には、貫通孔9Aでは、貫通孔9A,9Dの中心同士を結ぶ直線X2や、貫通孔9A,9Eの中心同士を結ぶ直線X3が上記の「最も短い直線」に該当し、直線X2,X3と交差しない貫通孔9Aの外縁に、保持体5の上端部10が結合される。
【0083】
以上のように保持体5の上端部10の結合位置が調整されることで、貫通孔9の縦方向・斜め方向の配列ピッチを小さくしても、隣り合う2つの貫通孔9,9に設ける保持体5,5同士が緩衝することを回避できる。したがって、貫通孔9の配列ピッチを小さく抑えることができるので、保持具1の寸法を小さく抑えることができる。
【0084】
なおより好ましくは、
図15に示すように、n行n列の第1貫通孔9と、n行n+1列の第2貫通孔9と、n+1行n+1列の第3貫通孔9とでは、これら貫通孔9,9,9の中心同士を結ぶことで形成される三角形の重心と、各貫通孔9の中心とを結ぶ直線上の位置に、保持体5の上端部10が結合される。上記重心は、上記三角形の3本の中線(頂点とこれに向かい合う辺の中点とを結んだ線)の交点である。
【0085】
例えば、1行1列の貫通孔9A(第1貫通孔9)と、1行2列の貫通孔9B(第2貫通孔9)と、2行2列の貫通孔9E(第3貫通孔9)とでは、これら貫通孔9A,9B,9Cの中心同士を結ぶことで形成される三角形の重心が、
図15に示す点Rとなる。
【0086】
そして貫通孔9A(第1貫通孔9)では、三角形の重心Rと貫通孔9Aの中心とを結ぶ第1直線P1と、貫通孔9Aの外縁とが交差する位置に、保持体5の上端部10が結合される。また貫通孔9B(第2貫通孔9)では、三角形の重心Rと貫通孔9Bの中心とを結ぶ第2直線P2と、貫通孔9Bの外縁とが交差する位置に、保持体5の上端部10が結合される。また貫通孔9E(第3貫通孔9)では、三角形の重心Rと貫通孔9Eの中心とを結ぶ第3直線P3と、貫通孔9Eの外縁とが交差する位置に、保持体5の上端部10が結合される。
【0087】
以上のように保持体5の上端部10の結合位置が調整されれば、横方向及び斜め方向の貫通孔9のピッチをより小さく抑えることができる。したがって保持具1の寸法をより小さく抑えることができる。
【0088】
また上記の実施形態では、貫通孔9を円形にする例を示したが、貫通孔9の形状は、試験管Sの断面形状に応じて適宜変更され得る。例えば、貫通孔9の形状は、矩形(正方形や長方形)や、矩形以外の多角形や、楕円形とされてもよい。なお貫通孔9の形状を矩形や多角形とする場合には、保持具1の寸法を抑えることを可能にする観点から、貫通孔9の形状は、外接円を有する矩形や多角形であることが好ましい。この場合には、貫通孔9の外心(外接円の中心)が、上記の貫通孔9の中心に相当するものとされる。また貫通孔9の形状を楕円形とする場合には、楕円の長軸と短軸とが交差する点が、上記の貫通孔9の中心に相当するものとされる。
【0089】
また板材4に形成する貫通孔9の数も、板材4の寸法等に応じて任意の数に設定され得る。さらに各貫通孔9に設けられる保持体5の数も、実施形態に示す4に限定されない。保持体5の数は、試験管Sを保持可能な限りにおいて、任意の複数、或いは単数とされ得る。
【0090】
なお貫通孔9に複数の保持体5を設ける場合には、貫通孔9の周方向に均等な角度間隔で保持体5を設けることが好ましい。また保持体5の数が単数とされる場合には、貫通孔9の周方向における保持体5の長さを大きくすることが好ましい(例えば、保持体5の長さを、貫通孔9の半周以上とすることが好ましい)。以上のようにすることで、試験管Sを安定して保持できる。
【0091】
また
図10,
図11,
図13,
図14に示した保持体5A,5B,5C,5Dでは、二股部20,30,40,50がU字状を呈しているが、保持体5の二股部はV字状を呈するものであってもよい。また上記の二股部20,30,40,50は、これらの二股が「貫通孔9の径方向」に間隔のあいたものであったが、保持体5の二股部は、その二股が「貫通孔9の横断方向」に間隔のあいたものであればよい。「貫通孔9の横断方向」とは、その意味するところに、貫通孔9の中心を通過する「貫通孔9の径方向」のみならず、「貫通孔9の中心を通過せずに、貫通孔9を横断する方向」も包含する。二股部の二股が上記「貫通孔9の中心を通過せずに、貫通孔9を横断する方向」に間隔があいている場合でも、当該横断方向に弾性力が生じることで、低温下で試験管Sを保持できる。
【0092】
なお、保持体5をPE・POM・LCPを用いて形成する場合には、保持体5は二股部を有しないものであってもよい(保持体5に二股部が形成されなくてもよい)。この場合でも、保持体5は材料面から弾性力を生じるので、試験管Sを安定して保持できる。
【0093】
また、保持体5に二股部を形成する場合には、保持体5は構造面から弾性力を生じるものとなるので、保持体5を、必ずしもPE・POM・LCPを含む材料から形成する必要はない。すなわち、保持体5は、PE・POM・LCP以外の熱可塑性樹脂から形成されてもよく、或いは、保持体5は、熱硬化性樹脂から形成されてもよい。熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、土台2や柱体3や板材4を形成可能な樹脂として挙げたものである。
【0094】
なお保持体5の材料には、板材4の材料が含まれることが好ましい(例えば、板材4をPEから形成する場合には、保持体5は、PEを含む材料を用いて形成されることが好ましい)。このようにすれば、材料の調達や管理が容易となる。
【0095】
またより好ましくは、板材4の材料と保持体5の材料とは同一とされる。このようにすれば板材4と保持体5との線膨張係数の差を小さく抑えることができる。
【0096】
なお、板材4と保持体5とを同一の熱可塑性樹脂から形成する場合には、例えば、以下の工程A,B,C,Dが順次実施されることで、板材4と保持体5との一体物が製造される。
【0097】
工程A:板材4と保持体5との一体物に対応した形状の内部空間を有する金型を金属から製造する。
工程B:前記金型の内部空間に溶融状態にある熱可塑性樹脂を注入する(熱可塑性樹脂の注入は、高圧下で行われる)。
工程C:前記熱可塑性樹脂を冷却固化させて、板材4と保持体5との一体物を成形する。
工程D:前記金型から板材4と保持体5との一体物を脱型する。
【0098】
また板材4と保持体5とを同一の熱硬化性樹脂から形成する場合には、以下の工程E,F,G,Hが順次実施されることで、板材4と保持体5との一体物が製造される。
【0099】
工程E:板材4と保持体5との一体物に対応した形状の内部空間を有する金型をシリコンから製造する。
工程F:前記金型の内部空間を真空脱気しつつ、金型の内部空間に熱硬化性樹脂を注入する(例えば、ウレタン樹脂あるいはエポキシ樹脂の液状の2液硬化型樹脂を金型の内部空間に注入する)。
工程G:前記金型を加熱することで、前記熱可塑性樹脂を硬化させて、板材4と保持体5との一体物を成形する。
工程H:金型から板材4と保持体5との一体物を脱型する。
【0100】
上記工程A~Dからなる製法や上記工程E~Hからなる製法によれば、板材4と保持体5との一体物が得られるため、保持具の製造手間が軽減される(例えば、板材4と保持体5とを別々に製造する場合のように、保持体5を板材4に接合する手間を要しない)。
【0101】
さらに上記工程E~Hからなる製法によれば、金型の材料であるシリコンが高い柔軟性を有するため、工程Hにおいて、二股部20等を損傷させることなく、板材4と保持体5との一体物を脱型できる。
【0102】
なお板材4と保持体5とは別々に成形されてもよい。この場合、板材4に対応した形状の内部空間を有する第1金型や、保持体5に対応した形状の内部空間を有する第2金型が、シリコン或いは金属から製造される。そして、第1金型を用いて板材4を成形し、第2金型を用いて保持体5を成形し、この後、板材4における貫通孔9の外縁に保持体5を結合することで、板材4と保持体5との一体物が得られる。以上のように板材4及び保持体5を製造する場合には、板材4と保持体5とを異なる材料から形成できるので、材料の自由度を高めることができる(例えば、保持具1の材料コストを抑えるべく、保持体5の材料よりも安価な材料で、板材4を製造することができる)。なお貫通孔9の外縁への保持体5の結合は、例えば接着剤を使用することや熱溶着等により行われる。また上記のように板材4と保持体5とを別々に成形する場合でも、板材4と保持体5との線膨張係数の差を小さく抑えるために、板材4の材料と保持体5の材料とを同一にしてよいことはもちろんである。
【0103】
また土台2は、必ずしも必要ではなく、省略されてもよい。この場合、柱体3の下端が支持面に載置される。また、柱体3によって板材4を支持可能な限りにおいて、柱体3の数も、任意の複数、或いは単数とされ得る。さらに柱体3も、必ずしも必要ではなく、省略されてもよい。この場合、試験管Sの保管・輸送に保持具1が使用される際に、例えばワイヤ等を用いて板材4が壁や柱に吊り下げられ、板材4が略水平の状態とされる。
【0104】
また上記実施形態では、本発明の保持具が試験管立てとされる例を示したが、本発明の保持具の用途は試験管立てに限定されない。本発明の保持具は、構成部品(板材・保持体・柱体・土台)の寸法や材料等を適宜調整することで、例えば以下の(1)~(4)に示す物体を保持する保持具として使用可能である。
(1)計測治具や加工治具に設けられるシャフト
(2)住宅基礎を構成するアンカーボルト
(3)傘
(4)光ファイバー
(5)植物の茎
【符号の説明】
【0105】
1 保持具
2 土台
3 柱体
4 板材
5,5A,5B,5C,5D 保持体
6 孔
7A 爪部(第2爪部)
7B 凹部(第2凹部)
7Ba 嵌合部(第2嵌合部)
7Bb 延伸部(第2延伸部)
8A 爪部(第1爪部)
8B 凹部(第1凹部)
8Ba 嵌合部(第1嵌合部)
8Bb 延伸部(第1延伸部)
9,9A,9B,9C,9D,9E 貫通孔
20 二股部(第1二股部)
23 面接触部
30 二股部(第2二股部)
40 二股部(第3二股部)
50 二股部(第4二股部)
90 拡径部
S 試験管