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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】モールド形静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/04 20060101AFI20230328BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
H01F27/04 B
H01F27/00 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018146809
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020021907
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】中山 伸一
(72)【発明者】
【氏名】井上 新
(72)【発明者】
【氏名】城条 雅之
(72)【発明者】
【氏名】▲陦▼ 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中前 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】高井 洋輔
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/174915(WO,A1)
【文献】実開平06-029116(JP,U)
【文献】実開昭55-117816(JP,U)
【文献】実開昭55-102333(JP,U)
【文献】実開昭58-131615(JP,U)
【文献】特公昭53-005407(JP,B2)
【文献】実開昭62-145310(JP,U)
【文献】実開昭52-113213(JP,U)
【文献】実公昭49-021532(JP,Y1)
【文献】実開昭61-179720(JP,U)
【文献】特開2002-359124(JP,A)
【文献】特開平02-213106(JP,A)
【文献】実公昭51-002250(JP,Y1)
【文献】中国特許出願公開第106205965(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00-27/04、27/28-27/30
H01F 30/10-30/12、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧側巻線及び低圧側巻線と前記巻線の中心部に通された鉄心とを有し前記巻線の表面が絶縁部材で覆われて相毎に設けられた複数の機器中身と、
各前記機器中身を収容する容器と、
表面が絶縁部材で覆われて各前記機器中身の前記巻線に接続された接続導体と、
各前記機器中身の各前記接続導体に対応し前記容器の天井部に設けられ、前記容器の外部に設けられた外線及び前記接続導体に接続されることで、前記外線と前記接続導体とを電気的接続に接続する複数のブッシングと、
を備え、
各前記ブッシングのうち少なくとも前記高圧側巻線に対応した高圧側ブッシングは、それぞれ対応する各前記機器中身の上方でかつ平面視において対応する各前記機器中身と前記高圧側ブッシングの少なくとも一部とが重なる位置に設けられ、
前記高圧側巻線と前記低圧側巻線との間に冷却用の気体を流すための空隙が形成され、
前記接続導体のうち前記高圧側巻線に接続される高圧側接続導体は、前記空隙の上方を覆わない位置に設けられており、
各前記高圧側ブッシングは、それぞれ対応する前記機器中身と前記高圧側接続導体との接続部分の直上に設けられており、
各前記高圧側接続導体は、折り曲げ不可能の剛体で構成されており、垂直方向に延びている、
モールド形静止誘導機器。
【請求項2】
前記容器は、当該容器の周囲を構成する壁部のうち一の壁部に外部から内部を確認可能な開口部を有し、
各前記ブッシングのうち少なくとも前記高圧側巻線に対応したブッシングは、前記開口部側に寄せて配置されている、
請求項1に記載のモールド形静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、モールド形静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻線の表面を樹脂等の絶縁部材でモールドすることで絶縁性能を確保したモールド形静止誘導機器が知られている。このようなモールド形静止誘導機器は、モールドされた巻線を容器内に格納し、その容器内にドライエア等を充填することで、更に高電圧に適用させることが可能となる。
【0003】
このようにモールドされた巻線を容器内に格納したモールド形静止誘導機器は、外線と容器内の巻線とを電気的に接続するため、各巻線に対応したブッシング及び接続導体を備えている。ブッシングは、容器の天井部分にその天井部分を貫いて設けられている。そして、外線は、容器の外部においてブッシングに電気的に接続されており、接続導体は、容器内において巻線とブッシングとを電気的に接続している。これにより、各相の巻線は、接続導体及びブッシングを介して、外線に電気的に接続されている。
【0004】
このような構成のモールド形静止誘導機器は、接続導体についても絶縁性能を確保する必要があるため、接続導体の外側表面は絶縁部材で覆われている。しかしながら、例えばモールド形静止誘導機器を当該誘導機器の製造工場から設置場所まで搬送し設置する際などにおいては、モールド形静止誘導機器に振動が加わることが避けられない。そして、搬送及び設置の際にモールド形静止誘導機器に振動が加わると、その振動によって容器内部の接続導体が揺れて他の部品と接触したりし、その結果、接続導体の外部を覆う絶縁部材が破損するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-225894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、搬送等によって接続導体に振動が加わった場合であっても接続導体の破損を抑制することができるモールド形静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のモールド形静止誘導機器は、高圧側巻線及び低圧側巻線を鉄心と前記巻線の中心部に通された鉄心とを有し前記巻線の表面が絶縁部材で覆われて相毎に設けられた複数の機器中身と、各前記機器中身を収容する容器と、表面が絶縁部材で覆われて各前記機器中身の前記巻線に接続された接続導体と、各前記機器中身の各前記接続導体に対応し前記容器の天井部に設けられ、前記容器の外部に設けられた外線及び前記接続導体に接続されることで、前記外線と前記接続導体とを電気的接続に接続する複数のブッシングと、を備える。各前記ブッシングのうち少なくとも前記高圧側巻線に対応した高圧側ブッシングは、それぞれ対応する各前記機器中身の上方でかつ平面視において対応する各前記機器中身と前記高圧側ブッシングの少なくとも一部とが重なる位置に設けられ、前記高圧側巻線と前記低圧側巻線との間に冷却用の気体を流すための空隙が形成され、前記接続導体のうち前記高圧側巻線に接続される高圧側接続導体は、前記空隙の上方を覆わない位置に設けられており、各前記高圧側ブッシングは、それぞれ対応する前記機器中身と前記高圧側接続導体との接続部分の直上に設けられており、各前記高圧側接続導体は、折り曲げ不可能の剛体で構成されており、垂直方向に延びている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示すもので、機器中身を部分的に破断して示す縦断面図
図2】一実施形態によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示すもので、容器を部分的に破断して示す平面図
図3】比較例によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すモールド変圧器10は、モールド形静止誘導機器の適用例の一例であり、例えば電力系統や受変電設備に用いられるものである。本実施形態の場合、モールド変圧器10は、U相、V相、W相の巻線を有する三相の変圧器である。なお、モールド変圧器10は、三相変圧器に限られない。
【0010】
モールド変圧器10は、機器中身20、容器30、熱交換器40、接続導体51、52、及びブッシング61、62を備えている。機器中身20は、モールド変圧器10の各相に対応して設けられている。例えば本実施形態において、モールド変圧器10は、U相、V相、及びW相を有する三相変圧器であるため、U相、V相、及びW相のそれぞれに対応した3つの機器中身20を備えている。
【0011】
機器中身20はそれぞれ、鉄心21、高圧側巻線22、低圧側巻線23、及びスペーサ24を有している。高圧側巻線22は、モールド変圧器10を例えば電力系統に適用した際に高圧電力が入力される1次側の巻線として機能する。また、低圧側巻線23は、モールド変圧器10を例えば電力系統に適用した際に低圧電力を出力する2次側の巻線として機能する。
【0012】
高圧側巻線22及び低圧側巻線23及びは、それぞれ表面が樹脂等の絶縁部材によって覆われている。つまり、高圧側巻線22及び低圧側巻線23の表面は、電気絶縁性を有する樹脂等の絶縁部材によってモールドされている。高圧側巻線22及び低圧側巻線23は、それぞれ中心部に鉄心21が通されてコイルを構成している。この場合、高圧側巻線22は、低圧側巻線23の外周側に設けられている。
【0013】
各相の鉄心21は、共通の上部ヨーク211及び下部ヨーク212を有しており、各鉄心21の上端部及び下端部がそれぞれ上部ヨーク211及び下部ヨーク212によって相互に連結されている。そして、下部ヨーク212は、容器30の底部に支持固定されている。そのため、容器30に振動が加わった場合でも、少なくとも鉄心21の下端部は、容器30に対して相対的に移動し難い。つまり、少なくとも機器中身20の下端部は、容器30に対して相対的に移動し難くなっている。
【0014】
スペーサ24は、高圧側巻線22と低圧側巻線23との間に設けられている。つまり、スペーサ24は、高圧側巻線22の内周側でかつ低圧側巻線23の外周側に設けられている。スペーサ24は、高圧側巻線22及び低圧側巻線23の全周に亘って波型に形成されている。このスペーサ24により、高圧側巻線22と低圧側巻線23との間に空隙25が形成されて、冷却用の気体を流す空間を確保するとともに、高圧側巻線22と低圧側巻線23との間における必要な絶縁強度を確保している。なお、スペーサ24は、高圧側巻線22と低圧側巻線23と間の絶縁強度及び冷却用の空間を確保できる形状であれば波型に限られない。
【0015】
容器30は、モールド変圧器10の外郭を構成するものであり、例えば鋼板等の金属製の筐体を主体として構成されている。容器30は、気密性を有した箱状に構成されている。機器中身20は、容器30の内部に収納されている。本実施形態の場合、三相各相に対応した3つの機器中身20は、容器30内において等間隔で一列の直線状に配置されている。このため、容器30は、全体として一方向に長い形状、例えば平面視において長方形となる箱状に形成されている。
【0016】
この場合、隣接する機器中身20同士、及び機器中身20と容器30の内壁面とは、それぞれ離間している。これにより、隣接する機器中身20の間、及び機器中身20と容器30の内壁面との間には、それぞれ隙間301、302が確保されている。この隙間301、302によって、冷却用の気体を流す空間を確保するとともに、各機器中身20間、及び機器中身20と容器30の内壁との間における必要な絶縁強度を確保している。
【0017】
また、容器30は、上部接続ダクト31、下部接続ダクト32、開口部33、及び扉34を有している。上部接続ダクト31及び下部接続ダクト32は、容器30内と熱交換器40とを接続している。すなわち、容器30内と熱交換器40とは、接続ダクト31、32を通して相互に連通している。この場合、上部接続ダクト31は、容器30の上部、具体的には巻線22、23の上端よりも上側に設けられている。また、下部接続ダクト32は、上部接続ダクト31の下方でかつ容器30の下部、具体的には巻線22、23の下端よりも下側に設けられている。
【0018】
開口部33は、図2に示すように、容器30の周囲の壁部の一部を貫いて形成されており、容器30の内部と外部とを連通している。本実施形態の場合、開口部33は、容器30の周囲を構成する垂直方向に延びる4つの壁面のうち一の壁面に設けられている。具体的には、開口部33は、一列に配置された各機器中身20の全てに対向する位置に設けられている。換言すると、開口部33は、作業者が容器30の外部から開口部33を通して容器30内を見た場合に、各機器中身20を外部から同時に見ることができる位置及び大きさに設けられている。この開口部33は、作業者が容器30内の状況を点検する際の点検窓として機能する。なお、開口部33に換えて、透明のガラスや強化プラスティック等で構成した窓を設けて、外部から容器30の内部を視認できるようにしても良い。
【0019】
扉34は、例えばヒンジ開閉式の扉であって、開口部33を開閉可能に設けられている。作業者は、扉34を開いて開口部33を開放することで、容器30内の機器中身20に対して点検等の必要な作業を行うことができる。また、扉34は、閉鎖状態で開口部33を密閉することができる。そのため扉34が閉じた状態では、容器30内は気密性が維持された密閉空間となる。この場合、容器30内には大気圧よりも高い圧力のドライエア等が充填される。空気の絶縁耐力はその絶対圧力にほぼ比例する。このため、容器30内に大気圧よりも高い圧力のドライエアを充填することで、モールド変圧器10は、機器中身20を大気圧中に設置した場合に比べてより高い絶縁耐圧を得ることができる。
【0020】
熱交換器40は、容器30の長手方向の両外側にそれぞれ設けられており、上部接続ダクト31及び下部接続ダクト32を介して容器30内に連通している。熱交換器40は、機器中身20の動作によって発生した熱を大気中に放熱する機能を有する。容器30内の気体は、機器中身20で発生した熱によって熱せられると、図1の白抜き矢印で示したように、機器中身20の外部に形成された隙間301、302、及び機器中身20の内部に形成された空隙25を通って容器30内を上昇する。
【0021】
そして、容器30内を上昇した気体は、上部接続ダクト31を通って熱交換器40内に流入し、気体の熱が熱交換器40の作用によって大気中に放熱される。その後、放熱して温度が下がった気体は、下部接続ダクト32から容器30内に流入し、隙間301、302及び空隙25を通って再び上昇する。このようにして容器30内を自然循環する気体の流れが発生し、その気体の流れによって各機器中身20が自然冷却される。なお、例えば接続ダクト31、32内等に送風機を設けて、容器30内の気体を強制循環させる構成としても良い。これによれば、モールド変圧器10内の冷却効率を更に向上させることができる。
【0022】
モールド変圧器10は、図2に示すように、各機器中身20に対してそれぞれ高圧側接続導体51及び低圧側接続導体52を備えている。高圧側接続導体51は、図1に示すように、導電性を有する部材で構成された導体部511と、この導体部511の外側表面を覆う樹脂等の絶縁部材512と、を有して構成されている。つまり、高圧側接続導体51は、導体部511の外側表面が樹脂等の絶縁部材でモールドされている。導体部511は、例えば複数の導線を撚って構成しても良いし、導電性を有する金属棒等で構成しても良い。また、詳細は図示しないが、低圧側接続導体52も、高圧側接続導体51と同様に、導電性を有する導体部と、この導体の外側表面を覆う樹脂等の絶縁部材と、を有して構成されている。つまり、低圧側接続導体52も、導体部の外側表面が樹脂等の絶縁部材でモールドされている。
【0023】
この場合、高圧側接続導体51には、低圧側接続導体52よりも大電流が流れる。そのため、高圧側接続導体51の導体部511の直径は、低圧側接続導体52の導体部の直径よりも太く、また、高圧側接続導体51の絶縁部材512は、低圧側接続導体52の絶縁部材よりも厚い。このため、高圧側接続導体51は、低圧側接続導体52よりも剛性が高い。本実施形態の場合、高圧側接続導体51は、柔軟性を有しておらず、折り曲げ不可能な剛体とみなすことができる。つまり、本実施形態の場合、高圧側接続導体51は、作業者の力では容易には折り曲げることが出来ず、仮に強引に折り曲げた場合には絶縁部材512が破損してしまう程度の剛性を有している。
【0024】
一方、低圧側接続導体52は、高圧側接続導体51ほど大きな電流は流れない。そのため、低圧側接続導体52の導体部の直径は、高圧側接続導体51の導体部511の直径よりも細くすることができ、また、低圧側接続導体52の絶縁部材は、高圧側接続導体51の絶縁部材よりも薄くすることができる。そのため、低圧側接続導体52は、高圧側接続導体51よりも比較的柔軟性を有したものとすることができる。
【0025】
また、モールド変圧器10は、図2に示すように、各機器中身20に対応してそれぞれ高圧側ブッシング61及び低圧側ブッシング62を備えている。ブッシング61、62は、巻線22、23の接続導体51、52と電力系統や受変電設備等の外線91、92とを、容器30に対して絶縁を確保した状態で電気的に接続する機能を有する。各相のブッシング61、62は、それぞれ各相の機器中身20に対応しており、容器30の天井部35を貫いて設けられている。各ブッシング61、62は、一方の端部が容器30の外部に露出しており、他方の端部が容器30内に挿入されている。この場合、高圧側ブッシング61は、各機器中身20の高圧側巻線22に対応している。また、低圧側ブッシング62は、各機器中身20の低圧側巻線23に対応している。
【0026】
各高圧側ブッシング61及び各低圧側ブッシング62は、図2に示すように、それぞれ容器30の長手方向に沿って、等間隔で一列の直線状に配置されている。換言すれば、各高圧側ブッシング61及び各低圧側ブッシング62は、それぞれ各相の機器中身20の配置に沿って等間隔で一列に配置されている。この場合、各高圧側ブッシング61及び各低圧側ブッシング62の配置の間隔は、各機器中身20の配置間隔に等しい。
【0027】
また、この場合、各高圧側ブッシング61は、容器30の天井部35において、容器30の幅方向の中心でかつ各機器中身20の中心に対して開口部33側寄りに設けられている。また、各低圧側ブッシング62は、容器30の天井部35において、容器30の幅方向の中心でかつ各機器中身20の中心に対して開口部33とは反対側寄りに設けられている。
【0028】
各ブッシング61、62のうち少なくとも高圧側ブッシング61は、図2に示すように、平面視において、それぞれ対応する機器中身20以外の他の機器と完全に重ならない位置に設けられている。そして、本実施形態の場合、各ブッシング61、62のうち少なくとも高圧側ブッシング61は、平面視において、つまり上方から容器30を透かして見た場合に、それぞれ対応する各機器中身20と高圧側ブッシング61の少なくとも一部とが重なる位置に設けられている。つまり、少なくとも各高圧側ブッシング61は、それぞれ自己が接続される高圧側巻線22を有する機器中身20の上方に設けられている。この場合、各高圧側ブッシング61は、対応する機器中身20と高圧側接続導体51との接続部分、つまり高圧側巻線22と高圧側接続導体51との接続部分53の直上に設けられている。そして、各高圧側接続導体51は、垂直方向に延びている。
【0029】
また、本実施形態の場合、低圧側ブッシング62も、平面視において、それぞれ対応する機器中身20以外の他の機器と完全に重ならない位置で、かつ、それぞれ対応する各機器中身20と少なくとも一部が重なる位置に設けられている。つまり、各低圧側ブッシング62は、それぞれ自己が接続される低圧側巻線23を有する機器中身20の上方に設けられている。そして、この場合、低圧側ブッシング62は、平面視において、それぞれ対応する各機器中身20と完全に重なる位置に設けられている。
【0030】
各高圧側ブッシング61は、図1及び図2に示すように、容器30の外部において電力系統や受変電設備の高圧側の外線91に接続されており、容器30の内部において高圧側接続導体51に接続されている。また、各低圧側ブッシング62も、高圧側ブッシング61と同様に、容器30の外部において電力系統や受変電設備の低圧側の外線92に接続されており、容器30の内部において低圧側接続導体52に接続されている。これにより、容器30内の各機器中身20は、容器30から絶縁を確保した状態で外線91、92に電気的に接続される。
【0031】
以上説明した実施形態によれば、モールド変圧器10は、複数の機器中身20と、容器30と、接続導体51、52と、ブッシング61、62と、を備えている。機器中身20は、高圧側巻線22及び低圧側巻線23と、高圧側巻線22及び低圧側巻線23の中心部に通された鉄心21と、を有し、巻線22、23の表面が樹脂等の絶縁部材で覆われている。モールド変圧器10は、相毎、本実施形態の場合、三相各相に対応して3つの機器中身20を備えている。
【0032】
容器30は、内部に機器中身20を収容している。高圧側接続導体51は、表面が樹脂等の絶縁部材512で覆われており、各機器中身20の高圧側巻線22に電気的に接続されている。低圧側接続導体52は、表面が樹脂等の図示しない絶縁部材で覆われており、各機器中身20の低圧側巻線23に電気的に接続されている。
【0033】
高圧側ブッシング61は、各機器中身20の各高圧側接続導体51に対応しており、容器30の天井部35に設けられている。高圧側ブッシング61は、容器30の外部に設けられた高圧側の外線91及び高圧側接続導体51に接続されることで、外線91と高圧側接続導体51とを電気的に接続する。低圧側ブッシング62は、各機器中身20の各低圧側接続導体52に対応しており、容器30の天井部35に設けられている。低圧側ブッシング62は、容器30の外部に設けられた低圧側の外線92及び低圧側接続導体52に接続されることで、外線92と低圧側接続導体52とを電気的に接続する。
【0034】
そして、各ブッシング61、62のうち少なくとも高圧側巻線22に対応した高圧側ブッシング61は、それぞれ対応する各機器中身20の上方でかつ対応する各機器中身20と少なくとも一部が重なる位置に設けられている。この場合、各高圧側ブッシング61は、それぞれ対応する各機器中身20以外の他の機器中身20と重ならない位置に設けられている。
【0035】
この構成によれば、各高圧側巻線22は、それぞれ自己が接続された機器中身20の上方に位置しており、自己が接続された機器中身20以外の機器中身20の上方には位置していない。これによれば、例えば図3の比較例に示すように、各高圧側ブッシング61を各機器中身20のうち中心に位置する機器中身20の上方に集中させて配置した場合に比べて、高圧側巻線22と対応する高圧側ブッシング61との間の距離を極力短いものにすることができる。つまり、本実施形態によれば、高圧側接続導体51の長さを極力短いものとし、また高圧側接続導体51の弛みを極力小さい又は弛みが無いものとすることができる。
【0036】
そのため、例えば搬送時や設置作業の際にモールド変圧器10に振動が加わった場合であっても、各高圧側巻線22は揺れ難く、また、仮に揺れた場合であってもその揺れ幅を極力小さくすることができる。その結果、各高圧側接続導体51が揺れて機器中身20に接触したり各高圧側接続導体51同士が接触したりして各高圧側接続導体51の絶縁部材512が破損することを、抑制することができる。
【0037】
ここで、空隙25や隙間301、302の上方は、冷却用の気体が流れる経路となる。この場合、図3に示す比較例に示すように、高圧側接続導体51によって空隙25や隙間301、302の上方が覆われてしまうと、冷却用の気体の流れを阻害してしまい、冷却効率が低下してしまう。
【0038】
これに対し、本実施形態によれば、図1に示すように、各高圧側接続導体51は、空隙25や隙間301、302の上方を覆っていない。これによれば、高圧側接続導体51が、冷却用の気体の流れを阻害することを抑制することができ、冷却用の気体の流れを円滑にすることができる。その結果、冷却効率の向上を図ることができる。
【0039】
また、実施形態において、各高圧側ブッシング61は、それぞれ対応する機器中身20と高圧側接続導体51との接続部分53の直上に設けられている。そして、各高圧側接続導体51は、垂直方向つまり上下方向に延びている。これによれば、接続部分53と高圧側ブッシング61との間の距離、つまり高圧側接続導体51の長さを最短にすることができる。そのため、各高圧側巻線22を更に揺れ難くすることができ、また、仮に揺れた場合であってもその揺れ幅を更に小さくすることができる。その結果、各高圧側接続導体51が揺れて機器中身20に接触したり各高圧側接続導体51同士が接触したりして各高圧側接続導体51の絶縁部材512が破損することを、より確実に抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、低圧側ブッシング62においても、高圧側ブッシング61と同様に、それぞれ対応する各機器中身20の上方でかつ対応する各機器中身20と少なくとも一部が重なる位置に設けられている。具体的には、各低圧側ブッシング62も、高圧側ブッシング61と同様に、それぞれ対応する機器中身20と低圧側接続導体52との接続部分の直上に設けられており、垂直方向つまり上下方向に延びている。したがって、低圧側接続導体52についても、高圧側接続導体51と同様に、モールド変圧器10に振動が加わった際の低圧側接続導体52の揺れを抑制でき、その揺れによる低圧側接続導体52の破損を抑制することができる。
【0041】
ここで、高圧側ブッシング61は、低圧側ブッシング62よりも大きな電流を通している。このため、高圧側ブッシング61に対する点検は、低圧側ブッシング62に対する点検に比べて、その重要度が高くまた頻度も多いと考えられる。そこで、本実施形態において、容器30は、開口部33を有している。開口部33は、容器30の周囲を構成する壁部のうち一の壁部に設けられており、外部から容器30の内部を確認可能に構成されている。そして、各高圧側ブッシング61は、容器30の天井部35において開口部33側に寄せて配置されている。
【0042】
これによれば、作業者は、点検の際に、開口部33から各高圧側ブッシング61を容易に視認することができる。そのため、点検の重要度が高くまた頻度も多い各高圧側ブッシング61の点検を容易で確実なものとすることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、モールド形静止誘導機器の一例としてモールド変圧器について説明したが、これに限られず、モールド形リアクトルでも良い。
【0044】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれる内容と同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
図面中、10はモールド変圧器(モールド形静止誘導機器)、20は機器中身、21は鉄心、22は高圧側巻線(巻線)、23は低圧側巻線(巻線)、30は容器、33は開口部、35は天井部、51は高圧側接続導体(接続導体)、512は絶縁部材、52は低圧側接続導体(接続導体)、53は接続部分、61は高圧側ブッシング(ブッシング)、62は低圧側ブッシング(ブッシング)、91は高圧側の外線(外線)、92は低圧側の外線(外線)、を示す。
図1
図2
図3