IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シオノギヘルスケア株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】固形状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20230328BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20230328BHJP
   A61K 31/609 20060101ALI20230328BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20230328BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20230328BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20230328BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230328BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230328BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230328BHJP
   A61P 25/26 20060101ALI20230328BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230328BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K31/485
A61K31/609
A61K31/522
A61K31/5415
A61P11/14
A61P25/04
A61P29/00
A61P43/00 121
A61P25/26
A61P43/00 111
A61K9/16
A61K9/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019099332
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2019206522
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018102053
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316008352
【氏名又は名称】シオノギヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113789
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 健一
(72)【発明者】
【氏名】和泉 光人
(72)【発明者】
【氏名】村里 博志
(72)【発明者】
【氏名】吉本 悟
(72)【発明者】
【氏名】六車 嘉貢
(72)【発明者】
【氏名】豊田 智淳
(72)【発明者】
【氏名】島田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】中井 優美
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-100924(JP,A)
【文献】国際公開第2006/129668(WO,A1)
【文献】特開2000-169367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミドを含有し、さらに無水カフェイン、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩からなる群から選択される1以上を含有する、固形状組成物(ただし、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含む場合は無水カフェインを含有する。)。
【請求項2】
無水カフェインを含有する、請求項1記載の固形状組成物。
【請求項3】
アセトアミノフェンを含有する、請求項1記載の固形状組成物。
【請求項4】
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有する、請求項1記載の固形状組成物。
【請求項5】
無水カフェインおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有する、請求項1記載の固形状組成物。
【請求項6】
無水カフェインおよびアセトアミノフェンを含有する、請求項1記載の固形状組成物
【請求項7】
無水カフェイン、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有する、請求項1記載の固形状組成物。
【請求項8】
錠剤または顆粒剤である請求項1~のいずれかに記載の固形状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミドを含有し、さらに無水カフェイン、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩からなる群から選択される1以上を含有することによって、融点の降下が抑制される固形状組成物(ただし、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含む場合は無水カフェインを含有する。)に関する。また、本発明は、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有し、さらにサリチルアミド、無水カフェインおよびアセトアミノフェンからなる群から選択される1以上を含有することによって、融点の降下が抑制される固形状組成物(ただし、サリチルアミドおよびアセトアミノフェンを含む場合は無水カフェインを含有する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
総合感冒薬は、頭痛、発熱、のどの痛み、筋肉の痛み、咳、くしゃみ、鼻水および鼻づまりなどといった、いわゆるかぜ症候群の諸症状の緩和に効果を出すように解熱剤(解熱鎮痛剤)と鎮咳去痰薬、抗ヒスタミン剤などを複合した医薬品であり、一般用医薬品(OTC)として広く発売されている。
一般用医薬品に使用される解熱鎮痛剤としては、サリチルアミドやアセトアミノフェンが挙げられる。サリチルアミドは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の一種であり、痛みを抑え、熱を下げる働きがある。また、アセトアミノフェンは、サリチルアミドと同様、痛みを抑え、熱を下げる働きがあり、その効果は、アスピリンに比べて、強力で、胃腸障害などは少ないといわれている。このサリチルアミドとアセトアミノフェンを適切な割合で配合することにより、鎮痛効果は増強され、毒性は拮抗的に弱められる。
また、鼻水、鼻づまり、くしゃみをおさえる一般用医薬品としては、抗ヒスタミン作用のほかに、抗コリン作用を有するプロメタジンメチレンジサリチル酸塩が挙げられる。さらに、痛みを抑える働きを助ける一般用医薬品としては、無水カフェインが挙げられる。サリチルアミド、アセトアミノフェン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩および無水カフェインの4成分を配合することにより、「のどの痛み」、「発熱」、「鼻水」などのかぜの諸症状にすぐれた効果を発揮することができる。
【0003】
サリチルアミド、アセトアミノフェン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩および無水カフェインは、かぜの諸症状にすぐれた効果を発揮するものの、咳を抑制することは困難である。咳を抑制する成分の一つとして、鎮咳薬であるデキストロメトルファン臭化水素酸塩がある。デキストロメトルファン臭化水素酸塩は、鎮静作用および鎮咳作用を有するモルフィナン系薬物であり、上記4成分に、デキストロメトルファン臭化水素酸塩を配合すれば、「のどの痛み」、「発熱」、「鼻水」の他、「咳」にも優れた効果を発揮することができる。
【0004】
総合感冒薬の場合、複数の有効成分が一製剤中に配合することがあるが、複数の有効成分を混合した有効成分の融点は、単一の有効成分の融点よりも低くなることがある。この現象を融点降下という。固形製剤を製造する際に、特に錠剤や顆粒剤を製造する際に、融点降下が生じると、錠剤製造時には、打錠時の熱によって、打錠障害が生じる可能性があり、また、顆粒剤製造時には、乾燥時の熱によって、顆粒剤が溶融し、顆粒剤同士が付着する恐れがある。
【0005】
本発明の発明者らは、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミド、アセトアミノフェン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩および無水カフェインについて、融点降下の現象を調べた結果、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミドの混合物の融点は、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミドのそれぞれ個々の融点に比べ、大きく低下し、また、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩の混合物の融点は、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミドのそれぞれ個々の融点に比べ、大きく低下するという新たな知見を見出した。従って、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミドを含有する錠剤、顆粒剤、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有する錠剤、顆粒剤を製造する場合、打錠障害や顆粒剤同士の付着が生じる恐れがある。
【0006】
特許文献1および2において、デキストロメトルファン臭化水素酸塩および無水カフェインを含有する錠剤やカプセル剤は開示されているが、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミド、またはデキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩の融点降下や製剤については開示も示唆もされていない。また、特許文献3および4において、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有する液状のシロップ剤は開示されているが、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩の融点降下や錠剤、顆粒剤については開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-302578号公報
【文献】特開2008-100924号公報
【文献】特表平11-512081号公報
【文献】特表2005-519923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミド、またはデキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有しても、融点が大きく降下することがない固形状組成物を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミドに、さらに無水カフェイン、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩からなる群から選択される1以上を含有する固形状組成物であれば(ただし、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有する場合は無水カフェインを含有する。)、または、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩に、さらにサリチルアミド、無水カフェインおよびアセトアミノフェンからなる群から選択される1以上を含有する固形状組成物であれば(ただし、サリチルアミドおよびアセトアミノフェンを含む場合は無水カフェインを含有する。)、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミドの融点、またはデキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩の融点の低下を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。以下、本発明で完成するに至った組成物を「本発明組成物」という場合がある。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミドを含有し、さらに無水カフェイン、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩からなる群から選択される1以上を含有する、固形状組成物(ただし、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含む場合は無水カフェインを含有する。)、
(2)デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有し、さらにサリチルアミド、無水カフェインおよびアセトアミノフェンからなる群から選択される1以上を含有する、固形状組成物(ただし、サリチルアミドおよびアセトアミノフェンを含む場合は無水カフェインを含有する。)、
(3)無水カフェインを含有する上記(1)または(2)記載の固形状組成物、
(4)錠剤または顆粒剤である上記(1)から(3)のいずれかに記載の固形状組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミドを含有し、さらに無水カフェイン、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩からなる群から選択される1以上を含有する、固形状組成物(ただし、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含む場合は無水カフェインを含有する。)、または、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有し、さらにサリチルアミド、無水カフェインおよびアセトアミノフェンからなる群から選択される1以上を含有する、固形状組成物(ただし、サリチルアミドおよびアセトアミノフェンを含む場合は無水カフェインを含有する。)であれば、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミドまたは、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩の融点降下を抑制することができ、打錠障害や製剤同士の付着等を生じることなく、製剤、特に錠剤や顆粒剤を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明組成物中の有効成分として、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、サリチルアミド、無水カフェインおよびアセトアミノフェンが挙げられる。
【0013】
デキストロメトルファン臭化水素酸塩は、鎮咳薬の一種であるモルフィナン系薬物であり、せき中枢を抑えることにより、せきを鎮める効能を発揮する。
【0014】
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩は、抗コリン作用を有するフェノチアジン誘導体であり、解熱・鎮痛作用等を示す。
【0015】
サリチルアミドは、非ステロイド性抗炎症薬の一種であり、神経痛、筋肉痛、関節リウマチの痛みや炎症を緩和する効能がある。
【0016】
無水カフェインは、中枢神経を刺激することによって眠気や疲労感をとり、頭の重い感覚を緩和する成分であり、薬の効果を高めることを目的として、医薬品に配合される。
【0017】
アセトアミノフェンは、解熱・鎮痛薬成分の一つで、脳の体温調節や痛みを感じる中枢神経に作用することによって、熱を下げ、痛みを抑制する。
【0018】
本発明組成物中のそれぞれの有効成分の含有量として、デキストロメトルファン臭化水素酸塩は、0.1~99重量%、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩は、0.1~99重量%、サリチルアミドは、0.1~99重量%、無水カフェインは、0.1~99重量%およびアセトアミノフェンは、0.1~99重量%である。
【0019】
本発明組成物中には、上記有効成分以外でも、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛成分、鎮咳成分、去痰成分、気管支拡張成分、消炎酵素成分、鎮咳去痰成分、解熱鎮痛・抗炎症成分、制酸成分、ビタミン、生薬、中枢神経興奮成分、副交感神経遮断成分又は交感神経興奮成分のいずれか1以上をさらに含むことができる。
【0020】
抗ヒスタミン剤とは、血管、平滑筋などに存在するH1受容体との結合において、ヒスタミンと拮抗する作用、すなわち抗ヒスタミン作用を有する薬理学的に許容可能な化合物をいう。さらに、広義には、ヒスタミンを含むケミカルメディエーターの遊離抑制、及び拮抗作用、すなわち、抗アレルギー作用を有する薬理学的に許容可能な化合物を含めてよい。
【0021】
抗ヒスタミン剤として、具体的には、ジフェニルピラリン、メブヒドロリン、メキタジン、dl-クロルフェニラミン、トリプロリジン、トンジルアミン、メトジラジン、カルビノキサミン、アリメマジン、クレマスチン、プロメタジン、ケトチフェン、イソチペンジル、d-クロルフェニラミン、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、トリペレナミン、シプロヘプタジン、ジフェテロール、ホモクロルシクリジン、フェネタジン又はそれらの製薬学的に許容しうる塩等が挙げられる。
【0022】
解熱鎮痛成分として、具体的には、アスピリン、エテンザミド、サザピリン、ラクチルフェネチジン、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェン、アルミノプロフェン又はそれらの製薬学的に許容しうる塩等が挙げられる。
【0023】
鎮咳成分として、具体的には、アロクラミド、クロペラスチン、ペンタトキシベリン(カルベタペンタン)、チペピジン、ジブナート、コデイン、ジヒドロコデイン、ノスカピン、メチルエフェドリン、ジメモルファン、デキストロメトルファン又はそれらの製薬学的に許容しうる塩等が挙げられる。
【0024】
去痰成分として、具体的には、ブロムヘキシン、チペピジン、メチルエフェドリン、グアヤコールスルホン酸、グアイフェネシン、アンブロキソール又はそれらの製薬学的に許容しうる塩等が挙げられる。
【0025】
気管支拡張成分として、具体的には、メチルエフェドリン又はそれらの製薬学的に許容しうる塩を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0026】
消炎酵素成分として、具体的には、リゾチーム、セラペプターゼ、セミアルカリプロティナーゼ、ブロメライン又はそれらの製薬学的に許容しうる塩等が挙げられる。
【0027】
鎮咳去痰成分として、具体的には、クレゾールスルホン酸、ブロメライン、セミアルカリプロティナーゼ、カルボシステイン、エプラジノン、セラペプターゼ、トラネキサム酸、ジメモルファン、トリメトキノール、メチコシフェナミン、チペピジン、メチルエフェドリン、エチルシステイン又はそれらの製薬学的に許容しうる塩等が挙げられる。
【0028】
解熱鎮痛・抗炎症成分として、具体的には、トラネキサム酸又はグリチルリチン酸等が挙げられる。
【0029】
制酸成分として、具体的には、グリシン、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシルアルミニウムアミノアセテート(アルミニウムグリシネート)、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0030】
ビタミンとして、ビタミンB1及びその誘導体、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ヘスペリジン及びその誘導体又はそれらの製薬学的に許容しうる塩類等が挙げられる。
【0031】
生薬として、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、シャゼンシ、シャゼンソウ、セキサン、セネガ、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、獣胆(ユウタンを含む)、シャジン、ショウキョウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、ジリュウ、チクセツニンジン、ニンジン、葛根湯、葛根湯加桔梗、桂枝湯、香蘇散、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯又は麻黄湯等が挙げられる。
【0032】
中枢神経興奮成分として、安息香酸ナトリウム、カフェイン、カフェイン水和物等が挙げられる。
【0033】
副交感神経遮断成分として、具体的には、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド等が挙げられる。
【0034】
交感神経興奮成分として、フェニルプロパノールアミン又はそれらの製薬学的に許容しうる塩等が挙げられる。
【0035】
本発明組成物の製剤としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤(粉末剤)、チュアブル剤、ドライシロップ剤、トローチ剤、カプレット剤、ゼリー剤、徐放剤、又は速溶剤を挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは錠剤、顆粒剤、散剤(粉末剤)、より好ましくは錠剤、顆粒剤である。
【0036】
本発明組成物の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態および疾患の種類によっても異なるが、通常、経口投与の場合、成人1日あたり約1mg~10000mg、好ましくは、約100mg~8000mg、さらに好ましくは、約200mg~6000mgを、要すれば分割して投与すればよい。また、非経口投与の場合、成人1日あたり約0.01mg~1000mg、好ましくは、約0.05mg~500mg、さらに好ましくは、約1mg~80mgを投与する。これを1日1回~数回に分けて投与すればよい。
【0037】
本発明組成物は、賦形剤を含有してもよい。賦形剤としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書等に収載されている賦形剤を使用することができる。具体的には、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、オリゴ糖アルコール等の糖アルコール類、キシロース、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フラクトース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)ショ糖(シュクロース)、異性化糖、水飴、精製白糖、白糖、精製白糖球状顆粒、無水乳糖、白糖・デンプン球状顆粒等の糖類、半消化体デンプン、ブドウ糖水和物、粉糖、結晶セルロース、微結晶セルロース、プルラン、β-シクロデキストリン、アミノエチルスルホン酸、アメ粉、塩化ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリシン、グルコン酸カルシウム、L-グルタミン、酒石酸、酒石酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、デキストラン40、デキストリン、乳酸カルシウム、ポビドン、マクロゴール(ポリエチレングリコール)1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、無水クエン酸、DL-リンゴ酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、L-アスパラギン酸、アルギン酸、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、クロスポビドン、グリセロリン酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、小麦粉、コムギデンプン、コムギ胚芽粉、小麦胚芽油、米粉、コメデンプン、酢酸フタル酸セルロース、酸化チタン、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、第三リン酸カルシウム、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、天然ケイ酸アルミニウム、トウモロコシデンプン、トウモロコシデンプン造粒物、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸二水素カルシウム等が挙げられる。
【0038】
本発明組成物中の賦形剤の含量は、製剤全量に対し、1~99重量%、好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~90重量%である。
【0039】
本発明組成物は、崩壊剤を含有してもよい。崩壊剤としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書等に収載されている崩壊剤を使用することができる。具体的には、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0040】
本発明組成物中の崩壊剤の含量は、製剤全量に対し、0.1~30重量%、好ましくは0.25~27.5重量%、より好ましくは0.5~25重量%である。
【0041】
本発明組成物は、結合剤を含有してもよい。結合剤としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書等に収載されている結合剤を使用することができる。具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、アラビアゴム、アラビアゴム末、ゼラチン、カンテン、デキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース等が挙げられる。
【0042】
本発明組成物中の結合剤の含量は、組成物全量に対し、0.1~30重量%、好ましくは0.25~27.5重量%、より好ましくは0.5~25重量%である。
【0043】
本発明組成物は、滑沢剤を含有してもよい。滑沢剤としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書等に収載されている滑沢剤を使用することができる。具体的には、ステアリン酸金属塩(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム)、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、含水二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
【0044】
滑沢剤の含量は、組成物全量に対し、通常、0.05~10重量%、好ましくは0.075~7.5重量%、より好ましくは0.1~5重量%である。
【0045】
本発明組成物は、高分子を含有してもよい。本明細書中、高分子としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書に収載されているものを使用することができる。具体的には、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物等のセルロース系高分子、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、2-メチル-5-ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、乾燥メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー等のアクリル系高分子、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・メチルメタクリレート・アクリル酸共重合体およびポリビニルアルコールコポリマー等のビニル系高分子、カルナバロウ、ステアリルアルコール、セラック、セタノール等が挙げられるが、好ましくは、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)である。
【0046】
本発明組成物の高分子は、組成物中に配合してもよく、また、組成物の表面に被覆してもよい。
【0047】
高分子のコーティングの作業を効率よく行うために、本発明組成物の被覆層のコーティング剤中に、可塑剤や凝集防止剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書に収載されているものを使用することができる。具体的には、クエン酸トリエチル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ヒマシ油、トリアセチン,タルク等が挙げられる。一方、マクロゴール(ポリエチレングリコール)を配合した場合、類縁物質が増加する場合もある。
【0048】
本発明組成物は、色素または着色剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格または医薬品添加物規格等に収載されている色素を使用することができる。色素は錠剤中にでも、被覆層中にでも含有することができる。色素として、具体的には、酸化鉄、タール色素および天然色素等が挙げられる。酸化鉄としては、三二酸化鉄、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄等がある。タール色素としては、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用青色1 号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色102号、食用赤色2号、食用赤色3号等がある。天然色素としては、ウコン抽出液、β-カロチン、カロチン液、銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル、ハダカムギ緑葉エキス末、裸麦緑葉青汁乾燥粉末、裸麦緑葉抽出エキス、酸化チタン、タルク等がある。色素は、光安定化物質で使用されるものも含まれる。
【0049】
本発明組成物は、さらに必要であれば、上述以外の添加剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書に収載されている添加剤を使用することができる。また、これらの添加剤の含量は、任意の割合でよい。上述以外の添加剤としては、具体的には、香料、流動化剤、矯味剤、甘味剤等が挙げられる。
香料として、具体的には、オレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油等が挙げられる。
流動化剤として、具体的には、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、タルク等が挙げられる。
矯味剤として、具体的には、アスパルテーム、スクラロース、グリシン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、希塩酸、クエン酸およびその塩、無水クエン酸、L-グルタミン酸およびその塩、コハク酸およびその塩、酢酸、酒石酸およびその塩、炭酸水素ナトリウム、フマル酸およびその塩、リンゴ酸およびその塩、氷酢酸、イノシン酸二ナトリウム、ハチミツ等が挙げられる。
甘味剤として、具体的には、アスパルテーム、還元麦芽糖水飴、カンゾウ、キシリトール、グリセリン、サッカリン、スクラロース、D-ソルビトール、還元麦芽糖水飴、アセスルファムカリウム、ステビア、タウマチン、アドパンテーム等が挙げられるが、好ましくはスクラロースである。
【0050】
本発明組成物のうち顆粒剤の製造方法は、特に制限されないが、具体的には、有効成分、崩壊剤、賦形剤等の添加剤を混合して、混合末を製造後、当該混合末を造粒する方法であり、好ましくは水や結合剤を含有する水や溶媒を添加して造粒する湿式造粒法や圧縮成形して水を使用しない乾式造粒法や溶融造粒法である。有効成分や添加剤等を混合する機械として、V型混合機やコンテナブレンダーを使用することができる。また、造粒する機械としては、湿式押出造粒機、流動層造粒機、撹拌造粒機、乾式破砕造粒機や溶融押出造粒機を使用することができる。
【0051】
本発明組成物のうち錠剤の製造方法は、特に制限されないが、具体的には、上記方法によって顆粒を製造し、さらに、この顆粒に対して、崩壊剤および滑沢剤を混合し、当該混合顆粒を打錠機で打錠する打錠法である。有効成分や添加剤等を混合する機械として、V型混合機やコンテナブレンダーを使用することができる。また、打錠機としては、単発打錠機、ロータリー式打錠機等を使用することができる。
【0052】
本発明組成物は、上記の顆粒剤や錠剤を製造後、当該顆粒剤や錠剤を光安定化物質および高分子で被覆し、被覆層を形成することがある。顆粒剤に被覆層を形成する際、流動層造粒コーティング機、流動層転動コーティング機等を用いることができる。錠剤に被覆層を形成する際、パンコーティング機、通気式コーティング機等を用いることができる。光安定化物質および高分子によって組成物表面に被覆層を形成する際、光安定化物質および高分子を水やエタノール等の溶媒中に溶解または懸濁させ、コーティング液を調製する。コーティング機の中で、顆粒剤や錠剤を流動させながら、この顆粒剤や錠剤に当該コーティング液を噴霧、乾燥し、被覆層を形成する。
【0053】
好ましい有効成分の組み合わせの態様としては、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびサリチルアミドを含有し、さらに無水カフェイン、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩からなる群から選択される1以上を含有する、固形状組成物であればよいが、アセトアミノフェンおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有する場合は無水カフェインを含有する。具体的には、(1)デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミドおよびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有する固形状組成物、(2)デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミドおよびアセトアミノフェンを含有する固形状組成物、(3)デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミドおよび無水カフェインを含有する固形状組成物、(4)デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミド、無水カフェインおよびアセトアミノフェンを含有する固形状組成物、(5)デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミド、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩および無水カフェインを含有する固形状組成物、および(6)デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミド、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、アセトアミノフェンおよび無水カフェインを含有する固形状組成物である。
【0054】
好ましい有効成分の組み合わせの別の態様としては、デキストロメトルファン臭化水素酸塩およびプロメタジンメチレンジサリチル酸塩を含有し、さらにサリチルアミド、無水カフェインおよびアセトアミノフェンからなる群から選択される1以上を含有する、固形状組成物であればよいが、サリチルアミドおよびアセトアミノフェンを含有する場合は無水カフェインを含有する。具体的には、(1)デキストロメトルファン臭化水素酸塩、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩およびアセトアミノフェンを含有する固形状組成物、(2)デキストロメトルファン臭化水素酸塩、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩および無水カフェインを含有する固形状組成物、および(3)デキストロメトルファン臭化水素酸塩、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、アセトアミノフェンおよび無水カフェインを含有する固形状組成物である。
【0055】
本発明組成物中のデキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミド、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、アセトアミノフェンおよび無水カフェインのそれぞれの量は、成人1日量として、デキストロメトルファン臭化水素酸塩は、0.01~300mg、サリチルアミドは、0.01~1000mg、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩は、0.01~200mg、アセトアミノフェンは、0.01~600mg、および無水カフェインは、0.01~500mgであり、好ましくは、デキストロメトルファン臭化水素酸塩は、0.1~200mg、サリチルアミドは、0.1~900mg、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩は、0.1~150mg、アセトアミノフェンは、0.1~500mg、および無水カフェインは、0.1~400mgであり、より好ましくは、デキストロメトルファン臭化水素酸塩は、1~100mg、サリチルアミドは、1~800mg、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩は、1~100mg、アセトアミノフェンは、1~400mg、および無水カフェインは、1~300mgであり、特に好ましくは、デキストロメトルファン臭化水素酸塩は、5~75mg、サリチルアミドは、5~700mg、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩は、5~100mg、アセトアミノフェンは、5~500mg、および無水カフェインは、5~300mgであり、極めて好ましくは、デキストロメトルファン臭化水素酸塩は、48mg、サリチルアミドは、648mg、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩は、32.4mg、アセトアミノフェンは、360mg、および無水カフェインは、144mgである。
【0056】
本発明組成物の融点は、示差走査熱量計(DSC)によって測定した。示差走査熱量計は、一定の熱を与えながら、基準物質と試料の温度を測定して、試料の熱物性を温度差として捉え、試料の状態変化による吸熱反応や発熱反応を測定する装置である。
【0057】
本発明組成物が溶融するかどうかは、各有効成分を混合して、水やエタノール等の溶液で練合し、練合物を篩等でほぐした後、乾燥機で乾燥させた際に、当該組成物が溶融しているかどうかを検討した。
【実施例
【0058】
以下、実施例、比較例および参考例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0059】
(1)固形状組成物の融点測定
固形状組成物の融点を測定するために、表1の有効成分を重量比で等量混合して固形状組成物を製造し、示差走査熱量計で融点(℃)を測定した。
【表1】



(固形状組成物の製造方法)
表1の実施例、比較例の有効成分を乳鉢内で混合し、当該混合物を水―エタノール溶液で練合した後、当該練合物を10メッシュの篩でほぐし、乾燥した後、固形状組成物を製造した。固形状組成物中の有効成分は、同一重量比で混合した。
(示差走査熱量計による融点測定法)
検体約3mgを量り取り、示差走査熱量測定装置(DSC)(Q2000型、TA Instrument社製)によって、昇温速度10℃/分(測定範囲:20~250℃)で、融点を測定した。
なお、参考例として、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミド、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、アセトアミノフェンおよび無水カフェインのみの融点を測定した。
【0060】
(結果)
示差走査熱量計により測定した吸熱ピークの値(℃)を表2に示す。その結果、参考例1のデキストロメトルファン臭化水素酸塩単体、参考例2のサリチルアミド単体の融点に比べ、比較例1のデキストロメトルファン臭化水素酸塩単体およびサリチルアミドを混合した固形状組成物の吸熱ピークの値(℃)は低下し、78.62℃であった。打錠時における打錠機の臼や杵には、約70~80℃の熱が生じることから、錠剤の打錠時において、比較例1の固形状組成物は、溶融し、打錠機の臼や杵に当該組成物が付着し、打錠障害が生じる可能性があると考えられた。一方、実施例1~6の固形状組成物であれば、比較例1に比べ吸熱ピークの値(℃)は上昇し、80℃以上になっており、錠剤の打錠時において、打錠障害が生じる可能性は少ないと考えられた。
【表2】


*:DSC曲線にベースラインがなく吸熱ピークの測定不可
【0061】
(2)加温条件下での固形状組成物の状態の確認
60℃における固形状組成物の状態を確認するために、60℃における表1の実施例1~7、比較例1および2の固形状組成物の状態を確認した。
60℃で溶融が確認された比較例2については、40℃、30℃における固形状態組成物の状態も確認した。
(固形状組成物の製造方法)
表1の実施例、比較例の有効成分を乳鉢内で混合し、当該混合物を水―エタノール溶液で練合した後、当該練合物を10メッシュの篩でほぐし、乾燥した後、固形状組成物を製造した。固形状組成物中の有効成分は、同一重量比で混合した。
(60℃における固形状組成物の状態の確認)
上記製造した固形状組成物を60℃、30分間、乾燥機に静置し、乾燥後の固形状組成物の状態を観察した。
(40℃、30℃における固形状組成物の状態の確認)
上記製造した固形状組成物を40℃または30℃で、それぞれ10分間、乾燥機に静置し、乾燥後の固形状組成物の状態を観察した。
【0062】
(60℃における固形状組成物の状態の結果)
60℃、30分間、乾燥機に静置後の固形状組成物の状態を表3に示す。その結果、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミド、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩およびアセトアミノフェンを重量比で1:1:1:1の割合で混合した固形状組成物が60℃において、溶融することが明らかとなった。
【表3】


○:60℃で溶融しない、×:60℃で溶融する

(40℃または30℃における固形状組成物の状態の結果)
60℃で溶融が確認された比較例2(デキストロメトルファン臭化水素酸塩、サリチルアミド、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩およびアセトアミノフェンを重量比で1:1:1:1の割合で混合した固形状組成物)は、40℃、30℃いずれの温度条件下においても溶融することを確認した。
製造工程では組成物を約60℃で乾燥することがあるため、30℃で溶融が確認された比較例2の固形状組成物は、製造工程中に組成物同士が付着する恐れがある。一方、実施例1~7の固形状組成物であれば、60℃においても溶融することなく、乾燥時においても、溶融せず、組成物同士が付着する可能性は少ないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明者らは、かぜの諸症状に有用な有効成分を複数含有しても、融点の低下が生じず、高温で乾燥しても溶融しない本発明組成物を見出した。本発明組成物は、「のどの痛み」、「発熱」、「鼻水」の他に「咳」に有用である。