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  • 特許-レーザ加工方法及レーザ加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】レーザ加工方法及レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/09 20060101AFI20230328BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20230328BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230328BHJP
【FI】
C03B33/09
B23K26/382
B23K26/00 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019126915
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021011410
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】市川 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】西部 達矢
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第6482740(JP,B1)
【文献】特開平08-103879(JP,A)
【文献】特開平10-263873(JP,A)
【文献】特許第6443251(JP,B2)
【文献】特開2018-202449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/09
B23K 26/00 -26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ照射により基板に貫通穴をあけるレーザ加工方法において、加工動作時での前記基板の端面での光検出レベルを検出し、当該光検出レベルが所定のレベルまで下がったことを検出することにより穴が貫通したことを検知することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
レーザ照射により基板に貫通穴をあけるレーザ加工方法において、加工動作時での前記基板の端面での光検出レベルを検出し、前記光検出レベルが穴の貫通前でのものに対し所定の比率まで下がったことを検出することにより穴が貫通したことを検知することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工方法において、前記貫通前としてレーザ照射開始時としたことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項4】
加工すべき基板が載置されるテーブルと、前記基板にレーザを照射するーザ照射系と、加工動作を行うために装置各部を制御する制御部とを有するレーザ加工装置において、前記制御部は加工動作時での前記基板の端面での光検出レベルが所定のレベルまで下がったことを検出することにより穴が貫通したことを検知することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
加工すべき基板が載置されるテーブルと、前記基板にレーザを照射するーザ照射系と、加工動作を行うために装置各部を制御する制御部とを有するレーザ加工装置において、前記制御部は加工動作時での前記基板の端面での光検出レベルが穴の貫通前でのものに対し所定の比率まで下がったことを検出することにより穴が貫通したことを検知することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工装置において、前記貫通前としてレーザ照射開始時としたことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にガラス基板にレーザで穴をあける場合において、穴が貫通したことを検知することができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザで穴をあける場合において、穴が貫通したことを確実に検出したい場合がある。
加工動作が正常に行われたかどうかを検証するものとして、例えば特許文献1に開示されているように加工エネルギーを穴毎に累積しそれぞれを所定値と比較するものや、特許文献2に開示されているようにレーザ照射時の反射強度を穴毎に測定し、それぞれを所定値と比較するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-308977号公報
【文献】特開2004-9074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの方法においては、レーザが正常に照射されたかどうかを判定するものにすぎず、穴があいたこと、まして穴が貫通したことを検出するためのものではない。
そこで本発明は、特にガラス基板にレーザで穴をあける場合において、穴が貫通したことを検知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される代表的なレーザ加工方法は、レーザ照射により基板に貫通穴をあけるレーザ加工方法において、加工動作時での前記基板の端面での光検出レベルを検出し、当該光検出レベルが所定のレベルまで下がったことを検出することにより、穴が貫通したことを検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ガラス基板にレーザで穴をあける場合において、穴が貫通したことを検知できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例における貫通判定動作を説明するための図である。
図2】本発明の一実施例で用いるレーザ加工装置の概略ブロック図である。
図3】トレパニング加工の例を説明するための図である。
図4】本発明の一実施例において加工される穴の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0008】
本発明の一実施例について説明する。
図2は本発明の一実施例で用いるレーザ加工装置の概略ブロック図である。各構成要素や接続線は、主に本実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、レーザ加工装置として必要な全てを示している訳ではない。
図2において、ガラス基板1はレーザ加工装置のテーブル2の上に吸着治具3を介して載置され、装置各部の動作を制御する制御部4の制御の下で、レーザ照射系5によりUVレーザ6が照射されることにより多数の穴があけられるようになっている。
吸着治具3は、これに設けられた吸着孔7によりガラス基板1を下から吸引し、浮上がりを防止する役目をするものである。制御部4はプログラム制御の処理装置を中心にして構成され、ここで説明するもの以外の制御機能を有し、図示されていないブロックにも接続されているものとする。
【0009】
ここまでの構成はこの分野ではよく知られたものである。8はガラス基板1の端面9に接して配置され、端面9に屈折された光の大小を検出する光学センサであり、本発明の従い設けられるものである。この場合の光学センサ8は、複数の光検出素子をガラス基板1の端面9に沿って並べ、感度を向上させたものでもよい。
制御部4は後述するように、光学センサ8からの検出信号により穴の貫通状態を判別できるようになっている。
【0010】
制御部4は、装置各部の動作を制御することにより、穴あけすべき位置を中心にして複数箇所へのレーザ照射を連続して行い、貫通穴をあけることができるようになっている(以下、一つの穴位置の複数箇所へ連続して照射を行って加工することをトレパニング加工と呼ぶ)。
トレパニング加工の方法としては、渦巻状(螺旋状)の軌跡を描かせるように位置を変えていくものや、図3に示すようにレーザ照射Sを穴あけすべき位置の中心Pを中心にして円を描かせるように繰返した後、円の径を変えて同様に繰返ていくものがある。
【0011】
図4は、本発明の一実施例において加工される穴の形状を示す断面図である。
UVレーザ6がガラス基板1に照射されると、UVレーザ6がガラス基板1の内部で屈折されてガラス基板1の端面9に入射される。ガラス基板1への照射開始時を図4の(a)に示すが、この時期でのガラス基板1の端面9への屈折光は強い。しかし、その後、加工が進むと穴あけ位置でのガラス部分が徐々に減っていくので、端面9への屈折光も減っていく。図4の(b)は穴10が貫通時の状態を示している。
【0012】
ガラス基板1の端面9への屈折光は、照射開始時と貫通時とで変わるだけではなく、穴あけ位置やすでに貫通した穴の位置や数が異なれば変わってしまう。
そこで本実施例では、穴あけを行うガラス基板に対し、全ての穴あけ位置毎に貫通した状態での光学センサ8の出力レベル(以下、貫通レベルと呼ぶ)を予め実験等により検出し、その中で最も低くなる出力レベル(以下、最低貫通レベルと呼ぶ)を把握しておくことにより、トレパニング加工の進行に伴って出力レベルが徐々に下がって最低貫通出力レベルに達したら貫通したものと判定するようにする。
貫通レベルは穴あけ位置やすでに貫通した穴の位置や数が異なれば変わるので、上記のように最低貫通レベルとなった時に貫通したものと判定するようにすれば、いずれの穴位置においても確実に貫通したことを検知できる。
【0013】
図1は制御部4における貫通判定動作を説明するための図である。
図1(a)は、ガラス基板1におけるある一つの穴あけ位置での様子を示す。制御部4は、UVレーザ6の照射開始時での光学センサ8の出力レベルVを監視し、トレパニング加工の進行に伴って出力レベルが徐々に下がって最低貫通レベルとなるLに達したら貫通したものと判定する。
制御部4は穴が貫通したものと判定したら、その穴あけ位置へのレーザ照射系5によるレーザ照射を止め、次の穴位置へのレーザ照射を開始する。
【0014】
また図1(b)は、ガラス基板1における別の穴あけ位置での様子を示す。ここでの制御部4は、UVレーザ6の照射開始時での光学センサ8の出力レベルVを監視し、トレパニング加工の進行に伴って出力レベルが徐々に下がって最低貫通レベルとなるLに達したら貫通したものと判定する。
制御部4は穴が貫通したものと判定したら、上記と同様にして、その穴あけ位置へのレーザ照射系5によるレーザ照射を止め、次の穴位置へのレーザ照射を開始する。
【0015】
以上の実施例においては、最低貫通出力レベルを予め把握しておくことにより、トレパニング加工の進行に伴って出力レベルが徐々に下がって最低貫通出力レベルに達したら貫通したものと判定するようにしているが、他の方法で貫通したことを判定するようにしてもよい。
例えば、貫通時における光学センサ8の出力レベルがレーザ照射開始時における光学センサ8の出力レベルに対してどのくらい下がるかの比率(以下、貫通比率と呼ぶ)を予め実験等により検出し、その中で最も低くなる比率(以下、最低貫通比率と呼ぶ)を把握しておくことにより、トレパニング加工の進行に伴って出力レベルが徐々に下がって最低貫通出力レベルに達したら貫通したものと判定してもよい。この方法においても、いずれの穴位置においても確実に貫通したことを検知するため、最低貫通比率となった時に貫通したものと判定する。
なお、この方法の場合、レーザ照射開始時における光学センサ8の出力レベルの代わりにレーザ照射開始直後の光学センサ8の出力レベルを採用してもよい。さらに、貫通時の出力レベルが貫通前に比べて圧倒的に小さいならば、レーザ照射開始直後よりも後の時期での光学センサ8の出力レベルを採用してもよい。
【0016】
なお、以上の実施例において、ガラス基板の寸法、穴あけ位置、穴寸法、穴あけ順序及びガラス材料の仕様が変わらなければ、最低貫通出力レベルあるいは最低貫通比率は同じになるはずである。従って、穴あけするガラス基板毎に最低貫通出力レベルあるいは最低貫通比率を予め把握する必要はなく、上記仕様が変わらない範囲で一つのガラス基板について把握すればよい。
しかしながら、ガラス基板毎の微妙な変化を避けたいならば、例えばロット毎に最低貫通出力レベルあるいは最低貫通比率を予め把握するようにしてもよい。
【0017】
さらに、以上の実施例においては、UVレーザによるトレパニング加工を行う場合について説明したが、本発明においては、UVレーザの代わりにCO2レーザを使用しても、また一つの穴位置に対して1回あるいは同一箇所へ複数回の照射を行って加工する、いやゆるパンチング加工でもよい。
【符号の説明】
【0018】
1:ガラス基板、2:テーブル、4:制御部、5:レーザ照射系、6:UVレーザ、
8:光センサ、9:端面、10:穴
図1
図2
図3
図4