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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/04 20060101AFI20230328BHJP
   A42B 3/12 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
A42B3/04
A42B3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018238200
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100908
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591182112
【氏名又は名称】NSウエスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青井 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直哉
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 海山
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-098481(JP,U)
【文献】特開2011-256505(JP,A)
【文献】中国実用新案第206699512(CN,U)
【文献】米国特許第08152322(US,B1)
【文献】特開2006-097156(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/04
A42B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメット装着者の頭部及び首部を上方及び側方から覆う形状をなすシェル本体部を有するシェルと、当該シェルの内側に設けられた衝撃吸収ライナーとを備えたヘルメットであって、
上記衝撃吸収ライナーは、上記シェルよりも熱伝導率の低い材料からなり、
上記衝撃吸収ライナーの後部の左右方向中央の下端部の後面には、前方に凹む凹所が下に開放するように形成され、
上記シェル本体部の後部の左右方向中央の下端部と、上記衝撃吸収ライナーの上記凹所形成領域との間には、バッテリケースと、当該バッテリケースに収容されたバッテリとを有するバッテリユニットが介在し
上記シェルは、上記シェル本体部の後部の下端部から前方に突出するとともに、上記バッテリユニットを下方から覆うカバー部を有していることを特徴とするヘルメット。
【請求項2】
請求項1に記載のヘルメットにおいて、
上記衝撃吸収ライナーとバッテリユニットとの間には、空気層が介在していることを特徴とするヘルメット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヘルメットにおいて、
上記シェルの熱伝導率は、0.2W/(m・K)以上であり、
上記衝撃吸収ライナーの熱伝導率は、0.05W/(m・K)以下であることを特徴とするヘルメット。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のヘルメットにおいて、
上記バッテリケースの熱伝導率は、0.2W/(m・K)未満であることを特徴とするヘルメット。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のヘルメットにおいて、
上記衝撃吸収ライナーの上記シェルとの間に上記バッテリユニットが介在する領域における厚さが、20mm以上に設定されていることを特徴とするヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルと、当該シェルの内側に設けられた衝撃吸収ライナーとを備えたヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シェルと、当該シェルの内側に設けられた衝撃吸収ライナーとを備えたヘルメットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、ヘルメットの後頭部の外面に設けられたケースに、バッテリを収容したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-115410号公報
【文献】特開2008-65593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のヘルメットのシェルの外面上に、特許文献2のようにバッテリを設けるようにすると、当該バッテリを収容するケースがシェルの外面上で露出して目立ち、ヘルメットの外側からの見栄えが悪い。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ヘルメットの外観見栄えを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、バッテリケースと、当該バッテリケースに収容されたバッテリとをシェルの内側に設けたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、第1の発明は、シェルと、当該シェルの内側に設けられた衝撃吸収ライナーとを備えたヘルメットを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明は、上記衝撃吸収ライナーは、上記シェルよりも熱伝導率の低い材料からなり、上記シェルと、上記衝撃吸収ライナーとの間には、バッテリケースと、当該バッテリケースに収容されたバッテリとを有するバッテリユニットが介在していることを特徴とする。
【0010】
これにより、バッテリユニットがシェルの外面上で露出しないので、シェルの外面上にバッテリユニットを設ける場合に比べ、ヘルメットの外観見栄えを向上させることができる。
【0011】
また、シェルの熱伝導率が衝撃吸収ライナーの熱伝導率よりも高いので、バッテリユニットの熱が衝撃吸収ライナーよりもシェルに伝わりやすい。したがって、バッテリが故障によって高温になった場合に、バッテリユニットの熱が衝撃吸収ライナーを介してヘルメット装着者の頭部に伝わるのを抑制できる。
【0012】
また、ヘルメット本体が地面等に衝突したとき、その衝撃荷重が衝撃吸収ライナーに吸収される。したがって、衝突時にバッテリユニットに作用する衝撃荷重を低減できる。
【0013】
また、シェルがバッテリユニットを外側から覆っているので、衝突時にバッテリユニットがヘルメット本体の外側に飛び出しにくい。
【0014】
第2の発明は、第1の発明のヘルメットにおいて、上記衝撃吸収ライナーとバッテリユニットとの間には、空気層が介在していることを特徴とする。
【0015】
これにより、バッテリユニットと衝撃吸収ライナーとの間に、熱伝導率の低い空気層が介在しているので、バッテリユニットの熱が衝撃吸収ライナーに伝わりにくい。したがって、バッテリユニットの熱がヘルメット装着者の頭部に伝わるのをより効果的に抑制できる。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明のヘルメットにおいて、上記シェルの熱伝導率は、0.2W/(m・K)以上であり、上記衝撃吸収ライナーの熱伝導率は、0.05W/(m・K)以下であることを特徴とする。
【0017】
これにより、シェルの熱伝導率が、0.2W/(m・K)以上に設定されているので、0.2W/(m・K)未満に設定された場合に比べ、バッテリユニットの熱がシェルに伝わりやすい。したがって、シェルと衝撃吸収ライナーとの間にバッテリユニットの熱がこもるのを防ぎ、バッテリの加熱を抑制できる。
【0018】
また、衝撃吸収ライナーの熱伝導率が、0.05W/(m・K)以下に設定されているので、0.05W/(m・K)を超える値に設定された場合に比べ、バッテリユニットの熱が衝撃吸収ライナーに伝わりにくい。したがって、バッテリユニットの熱がヘルメット装着者の頭部に伝わるのをより効果的に抑制できる。
【0019】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明のヘルメットにおいて、上記バッテリユニットは、上記シェルの下端部と上記衝撃吸収ライナーの下端部との間に介在し、下方に露出しているか、又は上記衝撃吸収ライナーよりも熱伝導率の高い材料からなる部材で下方から覆われていることを特徴とする。
【0020】
これにより、バッテリユニットの熱を下方に放出できるので、バッテリユニットの熱が衝撃吸収ライナーを介してヘルメット装着者の頭部に伝わるのを抑制できる。また、シェルと衝撃吸収ライナーとの間にバッテリユニットの熱がこもるのを防ぎ、バッテリの加熱を抑制できる。
【0021】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明のヘルメットにおいて、上記バッテリケースの熱伝導率は、0.2W/(m・K)未満であることを特徴とする。
【0022】
これにより、バッテリケースの熱伝導率が、0.2W/(m・K)未満に設定されているので、0.2W/(m・K)以上に設定された場合に比べ、バッテリの熱がバッテリケースを介して衝撃吸収ライナーに伝わりにくい。したがって、バッテリの熱がヘルメット装着者の頭部に伝わるのをより効果的に抑制できる。
【0023】
第6の発明は、第1~第5のいずれか1つの発明のヘルメットにおいて、上記衝撃吸収ライナーの上記シェルとの間に上記バッテリユニットが介在する領域における厚さが、20mm以上に設定されていることを特徴とする。
【0024】
これにより、上記衝撃吸収ライナーの上記シェルとの間に上記バッテリユニットが介在する領域における厚さを20mm未満に設定した場合に比べ、バッテリの熱が衝撃吸収ライナーを介してヘルメット装着者の頭部に伝わるのを効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ヘルメットの外観見栄えを向上させることができる
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態1に係るヘルメットを示す正面図である。
図2図1のII-II線におけるヘルメットの前方下部を除く部分の概略断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るヘルメットを示す底面図である。
図4】実施形態2の図2相当図である。
図5】実施形態2の図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0028】
(実施形態1)
図1図3は、本発明の実施形態1に係るヘルメット1を示す。このヘルメット1は、その主体をなすヘルメット本体3を有し、ヘルメット本体3の前面側には、ヘルメット装着者の額部と顎部との間に対向するように窓孔5が形成されている。該窓孔5の周縁部の左右両側には、透光性を有するシールド7が上下方向に回動することで窓孔5を開閉するように取り付けられている。ヘルメット本体3の外表面における窓孔5よりもヘルメット装着者から見て左側、詳しくはヘルメット装着者の左耳に対応する位置には、複数のスイッチ9が配設されている。また、ヘルメット本体3の窓孔5の上縁部における左右方向中央よりもヘルメット装着者から見て右寄りの箇所には、半透明の板状のコンバイナ11が、取付部材12を介して取り付けられている。
【0029】
ヘルメット本体3は、その外表面を構成するシェル13と、該シェル13の内側にシェル13の内面全体を覆うように固定された衝撃吸収ライナー15とを備えている。シェル13は、ヘルメット装着者の頭部及び首部を上方及び側方から覆う形状をなしている。シェル13は、熱伝導率が0.5~1.0W/(m・K)のFRP(Fiber-Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック)で構成されている。衝撃吸収ライナー15は、熱伝導率が0.04W/(m・K)のEPS(Expanded Poly-Styrene)で構成されている。衝撃吸収ライナー15の後部の左右方向中央の下端部(ヘルメット装着者の首の後部を覆う位置)の後面には、前方に凹む凹所15aが形成されている。衝撃吸収ライナー15の凹所15a形成領域における厚さTは、20mm以上に設定されている。
【0030】
窓孔5の下方におけるシェル13と衝撃吸収ライナー15との間には、コンバイナ11に表示させる画像を生成し、生成した画像をコンバイナ11に表示させるための表示光を出射するヘッドアップディスプレイ装置17と、当該ヘッドアップディスプレイ装置17によって出射された表示光をコンバイナ11に投射するミラー19とが介在している。一方、シェル13の後部の左右方向中央の下端部と、衝撃吸収ライナー15の後部の左右方向中央の下端部、すなわち凹所15a形成領域との間には、バッテリケース21と、当該バッテリケース21に収容されたバッテリ23とを有するバッテリユニット25が、凹所15a内に収容された状態で介在している。バッテリケース21は、熱伝導率が0.19W/(m・K)のPC(polycarbonate、ポリカーボネート)で構成されている。バッテリ23は、リチウムイオンバッテリであり、図示しない配線を介して、ヘッドアップディスプレイ装置17に電力を供給する。衝撃吸収ライナー15の凹所15aとバッテリユニット25との間には、空気層27が介在している。バッテリケース21は、シェル13の内面に図示しない固定手段によって固定され、下方に露出している。
【0031】
なお、ヘルメット1には、ヘルメット装着者の首周りを覆うネックカバ-(図3中仮想線で示す)29が、脱着可能に取り付けられる。
【0032】
したがって、本実施形態1によると、バッテリユニット25がシェル13の外面上で露出しないので、シェル13の外面上にバッテリユニット25を設ける場合に比べ、ヘルメット1の外観見栄えを向上させることができる。
【0033】
また、ヘルメット本体3が地面等に衝突したとき、その衝撃荷重が衝撃吸収ライナー15に吸収される。したがって、衝突時にバッテリユニット25に作用する衝撃荷重を低減できる。
【0034】
また、シェル13がバッテリユニット25を外側から覆っているので、衝突時にバッテリユニット25がヘルメット本体3の外側に飛び出しにくい。
【0035】
また、シェル13の熱伝導率が衝撃吸収ライナー15の熱伝導率よりも高いので、バッテリユニット25の熱が衝撃吸収ライナー15よりもシェル13に伝わりやすい。したがって、バッテリ23が故障により150℃近くの高温になった場合に、バッテリユニット25の熱が衝撃吸収ライナー15を介してヘルメット装着者の頭部に伝わるのを抑制できる。
【0036】
また、バッテリユニット25と衝撃吸収ライナー15との間に、熱伝導率の低い空気層27が介在しているので、バッテリユニット25の熱が衝撃吸収ライナー15に伝わりにくい。したがって、バッテリユニット25の熱がヘルメット装着者の頭部に伝わるのをより効果的に抑制できる。
【0037】
また、シェル13の熱伝導率が、0.2W/(m・K)以上に設定されているので、0.2W/(m・K)未満に設定された場合に比べ、バッテリユニット25の熱がシェル13に伝わりやすい。したがって、シェル13と衝撃吸収ライナー15との間にバッテリユニット25の熱がこもるのを防ぎ、バッテリ23の加熱を抑制できる。
【0038】
また、衝撃吸収ライナー15の熱伝導率が、0.05W/(m・K)以下に設定されているので、0.05W/(m・K)を超える値に設定された場合に比べ、バッテリユニット25の熱が衝撃吸収ライナー15に伝わりにくい。したがって、バッテリユニット25の熱がヘルメット装着者の頭部に伝わるのをより効果的に抑制できる。
【0039】
また、バッテリユニット25が下方に露出しているので、バッテリユニット25の熱を下方に放出でき、バッテリユニット25の熱が衝撃吸収ライナー15を介してヘルメット装着者の頭部に伝わるのを抑制できる。また、シェル13と衝撃吸収ライナー15との間にバッテリユニット25の熱がこもるのを防ぎ、バッテリ23の加熱を抑制できる。
【0040】
また、バッテリケース21の熱伝導率が、0.2W/(m・K)未満に設定されているので、0.2W/(m・K)以上に設定された場合に比べ、バッテリ23の熱がバッテリケース21を介して衝撃吸収ライナー15に伝わりにくい。したがって、バッテリ23の熱がヘルメット装着者の頭部に伝わるのをより効果的に抑制できる。
【0041】
また、衝撃吸収ライナー15のシェル13との間にバッテリユニット25が介在する領域における厚さTが、20mm以上に設定されているので、20mm未満に設定した場合に比べ、バッテリ23の熱が衝撃吸収ライナー15を介してヘルメット装着者の頭部に伝わるのを効果的に抑制できる。具体的には、衝撃吸収ライナー15のシェル13との間にバッテリユニット25が介在する領域における厚さTを20mm、衝撃吸収ライナー15の熱伝導率を0.04W/(m・K)、ヘルメット内の温度を35℃とした場合、バッテリ23が短絡等の不具合で130℃に発熱しても、衝撃吸収ライナー15の内面の温度は火傷しない温度(約45℃)となる。
【0042】
(実施形態2)
図4及び図5は、本発明の実施形態2に係るヘルメット1を示す。本実施形態2では、シェル13が、ヘルメット装着者の頭部及び首部を上方及び側方から覆う形状をなすシェル本体部13aと、該シェル本体部13aの後部の下端から前方(内側)に一体に突出するカバー部13bとを備えている。そして、バッテリユニット25が、シェル13のカバー部13bで下方から覆われている。
【0043】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0044】
したがって、本実施形態2によると、バッテリユニット25が、衝撃吸収ライナー15よりも熱伝導率の高いシェル13のカバー部13bで下方から覆われているので、バッテリユニット25の熱をシェル13のカバー部13bを介して下方に放出でき、バッテリユニット25の熱が衝撃吸収ライナー15を介してヘルメット装着者の頭部に伝わるのを抑制できる。また、シェル13と衝撃吸収ライナー15との間にバッテリユニット25の熱がこもるのを防ぎ、バッテリ23の加熱を抑制できる。
【0045】
なお、上記実施形態1,2では、バッテリケース21をシェル13の内面に固定したが、バッテリケース21を、シェル13又は衝撃吸収ライナー15に着脱可能なカートリッジとしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態2では、バッテリユニット25を下方からシェル13の一部で覆ったが、衝撃吸収ライナー15よりも熱伝導率の高い材料からなる他の部材で覆ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、シェルと、当該シェルの内側に設けられた衝撃吸収ライナーとを備えたヘルメットとして有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 ヘルメット
13 シェル
15 衝撃吸収ライナー
21 バッテリケース
23 バッテリ
25 バッテリユニット
27 空気層
図1
図2
図3
図4
図5